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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042238
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】無機質感成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20230317BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20230317BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20230317BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20230317BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20230317BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20230317BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C70/42
B29C70/06
B29K101:12
B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149435
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】西川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】西野 彰馬
(72)【発明者】
【氏名】石田 卓輝
(72)【発明者】
【氏名】三原 健陽
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA11
4F204AB25A
4F204AC01
4F204AD16A
4F204AF13
4F204AR15
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FN11
4F204FN15
4F205AA11
4F205AB25A
4F205AC01
4F205AD16A
4F205AF13
4F205AR15
4F205HA01
4F205HA25
4F205HA34
4F205HA36
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC12
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
(57)【要約】
【課題】無機物である石調の模様を表現した成形品を提供する。
【解決手段】成形品は、セルロース系繊維と母材である熱可塑性樹脂とを複合化して構成されるセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品であって、セルロース系繊維複合樹脂の全体100重量%においてセルロース系繊維含有率が30~90重量%であり、成形品の表面は、セルロース系繊維が褐色化している第一領域と、第一領域よりも褐色化が低く、明度が高い第二領域と、第一領域及び第二領域の間及び周囲に広がっており、母材である熱可塑性樹脂の割合が第一領域及び前記第二領域よりも多い第三領域と、で構成されている。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維と母材である熱可塑性樹脂とを複合化して構成されるセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品であって、
前記セルロース系繊維複合樹脂の全体100重量%においてセルロース系繊維含有率が30~90重量%であり、
前記成形品の表面は、
前記セルロース系繊維が褐色化している第一領域と、
前記第一領域よりも褐色化が低く、明度が高い第二領域と、
前記第一領域及び前記第二領域の間及び周囲に広がっており、母材である前記熱可塑性樹脂の割合が前記第一領域及び前記第二領域よりも多い第三領域と、
で構成されている、セルロース系繊維複合樹脂を含む成形品。
【請求項2】
前記第一領域と前記第二領域との間の前記第三領域には、V字状の溝を有し、
前記成形品の厚さ方向について、前記第一領域及び前記第二領域は、前記第三領域よりも厚い、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記第一領域、前記第二領域、そして前記第三領域の色を、CIE L*a*b*表色系において色調を表す値である、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*を用い、
前記第一領域:L1、a1、b1
前記第二領域:L2、a2、b2
前記第三領域:L3、a3、b3
とした時に、前記第一領域と前記第二領域との色差ΔE1、前記第二領域と前記第三領域との色差ΔE2、前記第三領域と前記第一領域との色差ΔE3は、それぞれ


と表せ、
前記色差ΔE1、ΔE2、ΔE3は、それぞれ、
3≦ΔE1≦30 且つ 3≦ΔE2≦30 且つ 3≦ΔE3≦30
である、請求項1又は2に記載の成形品
【請求項4】
前記第三領域は、前記第一及び第二領域よりもセルロース系繊維含有率が低く、4%以上のセルロース系繊維含有率差がある、請求項1から3のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項5】
前記セルロース系繊維は、植物由来である、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、
前記一対の金型を圧縮加工して、前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、
を含む、成形品の製造方法であって、
複数の前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットは、少なくとも2種類の高さが高い高背ペレット群と高さが低い低背ペレット群と、を含み、
前記複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを前記一対の金型の間に配置する工程において、前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットの高さ方向を前記圧縮加工における圧縮方向に合わせるように配置する、成形品の製造方法。
【請求項7】
前記高背ペレット群の平均高さをR大とし、前記低背ペレット群の平均高さをR小とすると、
R大≧1.15×R小
の関係式を満たす、請求項6に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記一対の金型を圧縮加工する工程において、前記一対の金型を圧縮状態で保持し、前記一対の金型の温度(℃)と前記圧縮状態の時間(s)とを乗じたものを積算熱量(℃・s)とした場合に、
前記一対の金型の温度が180℃以上250℃以下であって、且つ、前記積算熱量が、32400℃・s以上52500℃・s以下の範囲である、請求項6又は7に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記一対の金型を圧縮加工する工程において、前記セルロース系繊維複合樹脂に熱を加えることで、前記セルロース系繊維を変性させることで褐色化させ、CIE L*a*b*表色系において色調を表す値である、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*を用い、
熱する前:L1、a1、b1
熱した後:L2、a2、b2
とした時に、熱する前と熱した後の色差ΔEが
で表され、
3≦ΔE≦30
である、請求項6から8のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
前記高背ペレット群の平均粒径をR大avとし、前記成形品の厚さをdとすると、
R大av≧1.5d
の関係式を満たす、請求項6から9のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項11】
前記高背ペレット群の平均高さをR大とし、前記低背ペレット群の平均高さをR小とすると、
R大≧1.17×R小
の関係式を満たし、
前記一対の金型を前記圧縮加工する工程の前に、前記高背ペレット群と前記低背ペレット群とを予備加熱手段にて予備加熱し、半溶融状態にする工程を行う、
請求項6から10のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項12】
前記予備加熱し、半溶融状態にする工程では、加熱冷却機構を備えた、可動圧縮手段の金型の加工面を熱可塑性樹脂の融点以上、250℃以下の範囲で加熱する、請求項11に記載の成形品の製造方法。
【請求項13】
前記予備加熱し、半溶融状態にする工程において、加熱温度が、180℃以上250℃以下であって、且つ、
前記予備加熱し、半溶融状態にする工程時の積算熱量は32400℃・s以上であって、
且つ、
前記圧縮加工工程の温度が160℃以上250℃以下であって、且つ、
前記圧縮加工工程時の積算熱量が2700℃・s以上9720℃・s以下であって、且つ、
前記予備加熱し、半溶融状態にする工程での積算熱量と前記圧縮加工する工程での積算熱量との合計が52500℃・s以下である、請求項12に記載の成形品の製造方法。
【請求項14】
前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットに用いられるセルロース系繊維は、植物から得られた漂白処理後のパルプが原料である、請求項6から13のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項15】
セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、
前記一対の金型を圧縮加工して、前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、
を含む、成形品の製造方法であって、
複数の前記セルロース系繊維複合樹脂ペレットは、セルロース系繊維の含有比率が大きい濃厚ペレット群と、セルロース系繊維の含有比率が小さい希薄ペレット群との、少なくとも2種類を有し、前記濃厚ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をc、前記希薄ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をdとすると、
c-d≧4
の関係式を満たす、成形品の製造方法。
【請求項16】
前記濃厚ペレットと前記希薄ペレット群とを、加熱冷却機構を備えた可動圧縮手段の金型を用いて、前記濃厚ペレットと前記希薄ペレット群とを圧縮して変形させて、圧縮状態で保持する工程と、
前記濃厚ペレットと前記希薄ペレット群とを加熱して、変性させる工程と、
を含み、
前記変性させる工程において、前記金型の温度(℃)と前記圧縮状態の時間(s)とを乗じたものを積算熱量(℃・s)とした場合に、金型温度が180℃以上250℃以下であって、且つ、積算熱量が32400℃・s以上52500℃・s以下である、請求項15に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系繊維複合樹脂からなる無機質感を有する成形品及び該成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセルロース系繊維複合樹脂を成形品とする場合、着色剤を用いて色むらや色の濃淡をつけることで模様を表現することが出来る。しかし、セルロース系繊維の他にヘミセルロース、リグニン、タンパク質、灰分が含まれており、素材の色がそのまま出てくるために着色自由度が低い。また、セルロース系繊維以外の成分を取り除いた場合でも、樹脂への複合化の時点で化学処理と熱処理とを行う過程でセルロース系繊維が変性して、茶褐色化してしまう。このようにセルロース系繊維複合樹脂は意匠性が低い材料であった。
【0003】
特許文献1では、セルロース系繊維を変性させることで生成される、2-フルアルデヒド等の褐色成分(以下、「フルフラール」と称する)を生成させ、その生成量を制御する技術が開示されている。これによって、天然の木の経年変化及び成長によって生まれる自然な変色・色むらを成形品に形成しつつ、成形品の基本的な色味をコントロールする方法が示されている。また、セルロース系繊維は、漂白され、ヘミセルロースなどのセルロース系繊維以外の成分を極力排除したものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-115989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1でも、天然の木の風合いを出すことはできるものの、無機質感を出すことはできなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、無機物である石調の模様を表現した成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るセルロース系複合樹脂を含む成形品は、セルロース系繊維と母材である熱可塑性樹脂とを複合化して構成されるセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品であって、セルロース系繊維複合樹脂中のセルロース系繊維含有率が30~90重量%であり、成形品の表面は、セルロース系繊維が褐色化している第一領域と、第一領域よりも褐色化が進んでいない第二領域と、第一領域及び第二領域の間及び周囲に広がっており、母材の熱可塑性樹脂の割合が第一領域及び第二領域よりも多い第三領域と、で構成されている。
【0008】
本発明に係る成形品の製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、一対の金型を圧縮加工して、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、を含む、成形品の製造方法であって、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットは、少なくとも2種類の高さが高い高背ペレット群と高さが低い低背ペレット群と、を含み、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程において、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの高さを圧縮加工における圧縮方向に合わせるように配置する。
【0009】
本発明に係る成形品の製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、一対の金型を圧縮加工して、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、を含む、成形品の製造方法であって、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットは、セルロース系繊維の含有比率が大きい濃厚ペレット群と、セルロース系繊維の含有比率が小さい希薄ペレット群との、少なくとも2種類を有し、濃厚ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をc、希薄ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をdとすると、c-d≧4の関係式を満たす。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係る成形品及びその製造方法によれば、着色剤を用いることなく、セルロース系繊維複合樹脂を用いて、石調の模様を有する成形品を提供することが出来る。例えば、白色から半透明までの様々な色を持つ多数の領域がランダムに点在する石調の模様を有する成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施の形態1に係る石調模様を有する成形品の表面を示す概略図である。
図1B】実施の形態1に係る石調模様を有する成形品の表面の模式図である。
図2】実施の形態1に係る成形品の製造方法において、一対の金型の間に配置したセルロース系繊維複合樹脂ペレットを示す概略斜視図である。
図3A】高さの低いセルロース系繊維複合樹脂ペレットの概要を示す概略斜視図及び含まれるセルロース系繊維を示す部分拡大図である。
図3B】高さの高いセルロース系繊維複合樹脂ペレットの概要を示す概略斜視図及び含まれるセルロース系繊維を示す部分拡大図である。
図4】実施の形態1に係る成形品の製造方法において、一対の金型を圧縮加工して、金型の間のセルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程を示す概略斜視図である。
図5】(a)は、圧縮加工前の高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットを示す概略図であり、(b)は、圧縮加工後の高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットの状態を示す概略図である。
図6】(a)は、隣接するペレットから流出した樹脂が圧縮加工によって圧縮方向と垂直な方向に広がる様子を示す概略図であり、(b)は、(a)の後、隣接する樹脂が接触する様子を示す概略図であり、(c)は、(b)の後、隣接する樹脂が接合して一つの領域を形成する様子を示す概略図である。
図7】(a)は、圧縮加工後の高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットの状態を示す概略図であり、(b)は、冷却時の樹脂の収縮の様子を示す概略図である。
図8】(a)は、高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットを示す概略図であり、(b)は、予備加熱後の高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットの状態を示す概略図であり、(c)は、圧縮加工時の高さの異なる2つのセルロース系繊維複合樹脂ペレットの状態を示す概略図であり、(d)は、冷却後のセルロース系繊維複合樹脂ペレットの状態を示す概略図である。
図9】実施の形態2に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表1である。
図10】実施の形態3に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表2である。
図11】実施の形態4に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表3である。
図12】実施の形態6に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表4である。
図13】実施の形態7に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表5である。
図14】実施の形態8に係る実施例及び比較例のプレス条件及び各領域の色差等の評価を示す表6である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様に係るセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品は、セルロース系繊維と母材である熱可塑性樹脂とを複合化して構成されるセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品であって、セルロース系繊維複合樹脂中のセルロース系繊維含有率が30~90重量%であり、成形品の表面は、セルロース系繊維が褐色化している第一領域と、第一領域よりも褐色化が低く、明度が高い第二領域と、第一領域及び第二領域の間及び周囲に広がっており、母材である熱可塑性樹脂の割合が第一領域及び第二領域よりも多い第三領域と、で構成されている。
【0013】
第2の態様に係る成形品は、上記第1の態様において、第一領域と第二領域との間の第三領域には、V字状の溝を有し、成形品の厚さ方向について、第一領域及び第二領域は、第三領域よりも厚くてもよい。
【0014】
第3の態様に係る成形品は、上記第1又は第2の態様において、第一領域、第二領域、そして第三領域の色を、CIE L*a*b*表色系において色調を表す値である、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*を用い、第一領域:L1、a1、b1第二領域:L2、a2、b2第三領域:L3、a3、b3とした時に、第一領域と第二領域との色差ΔE1、第二領域と第三領域との色差ΔE2、第三領域と第一領域との色差ΔE3は、それぞれ


と表せ、色差ΔE1、ΔE2、ΔE3は、それぞれ、3≦ΔE1≦30 且つ 3≦ΔE2≦30 且つ 3≦ΔE3≦30であってもよい。
【0015】
第4の態様に係る成形品は、上記第1から第3のいずれかの態様において、第三領域は、第一及び第二領域よりもセルロース系繊維含有率が低く、4%以上のセルロース系繊維含有率差があってもよい。
【0016】
第5の態様に係る成形品は、上記第1から第4のいずれかの態様において、セルロース系繊維は、植物由来であってもよい。
【0017】
第6の態様に係る成形品の製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%を含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、一対の金型を圧縮加工して、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、を含む、成形品の製造方法であって、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットは、少なくとも2種類の高さが高い高背ペレット群と高さが低い低背ペレット群と、を含み、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程において、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの高さ方向を圧縮加工における圧縮方向に合わせるように配置する。
【0018】
第7の態様に係る成形品の製造方法は、上記第7の態様において、高背ペレット群の平均高さをR大とし、低背ペレット群の平均高さをR小とすると、R大≧1.15×R小の関係式を満たしてもよい。
【0019】
第8の態様に係る成形品の製造方法は、上記第6又は第7の態様において、一対の金型を圧縮加工する工程において、一対の金型を圧縮状態で保持し、一対の金型の温度(℃)と圧縮状態の時間(s)とを乗じたものを積算熱量(℃・s)とした場合に、一対の金型の温度が180℃以上250℃以下であって、且つ、積算熱量が、32400℃・s以上52500℃・s以下の範囲であってもよい。
【0020】
第9の態様に係る成形品の製造方法は、上記第6から第8のいずれかの態様において、一対の金型を圧縮加工する工程において、セルロース系繊維複合樹脂に熱を加えることで、セルロース系繊維を変性させることで褐色化させ、CIE L*a*b*表色系において色調を表す値である、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*を用い、熱する前:L1、a1、b1、熱した後:L2、a2、b2とした時に、熱する前と熱した後の色差ΔEが
で表され、3≦ΔE≦30であってもよい。
【0021】
第10の態様に係る成形品の製造方法は、上記第6から第9のいずれかの態様において、高背ペレット群の平均粒径をR大avとし、成形品の厚さをdとすると、R大av≧1.5dの関係式を満たしてもよい。
【0022】
第11の態様に係る成形品の製造方法は、上記第6から第10のいずれかの態様において、高背ペレット群の平均高さをR大とし、低背ペレット群の平均高さをR小とすると、R大≧1.17×R小の関係式を満たし、一対の金型を圧縮加工する工程の前に、高背ペレット群と低背ペレット群とを予備加熱手段にて予備加熱し、半溶融状態にする工程を行ってもよい。
【0023】
第12の態様に係る成形品の製造方法は、上記第11の態様において、前記予備加熱し、半溶融状態にする工程では、加熱冷却機構を備えた、可動圧縮手段の金型の加工面を熱可塑性樹脂の融点以上、250℃以下の範囲で加熱してもよい。
【0024】
第13の態様に係る成形品の製造方法は、上記第12の態様において、予備加熱し、半溶融状態にする工程において、加熱温度が、180℃以上250℃以下であって、且つ、予備加熱し、半溶融状態にする工程時の積算熱量は32400℃・s以上であって、且つ、圧縮加工工程の温度が160℃以上250℃以下であって、且つ、圧縮加工工程時の積算熱量が2700℃・s以上9720℃・s以下であって、且つ、予備加熱し、半溶融状態にする工程での積算熱量と圧縮加工する工程での積算熱量との合計が52500℃・s以下であってもよい。
【0025】
第14の態様に係る成形品の製造方法は、上記第6から第13のいずれかの態様において、セルロース系繊維複合樹脂ペレットに用いられるセルロース系繊維は、植物から得られた漂白処理後のパルプが原料であってもよい。
【0026】
第15の態様に係る成形品の製造方法は、セルロース系繊維複合樹脂の全体を100重量%としてセルロース系繊維を30~90重量%含有する複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程と、一対の金型を圧縮加工して、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る工程と、を含む、成形品の製造方法であって、複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットは、セルロース系繊維の含有比率が大きい濃厚ペレット群と、セルロース系繊維の含有比率が小さい希薄ペレット群との、少なくとも2種類を有し、濃厚ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をc、希薄ペレット群のセルロース系繊維の含有比率をdとすると、c-d≧4の関係式を満たす。
【0027】
第16の態様に係る成形品の製造方法は、上記第15の態様において、濃厚ペレットと希薄ペレット群とを、加熱冷却機構を備えた可動圧縮手段の金型を用いて、濃厚ペレットと希薄ペレット群とを圧縮して変形させて、圧縮状態で保持する工程と、濃厚ペレットと希薄ペレット群とを加熱して、変性させる工程と、を含み、変性させる工程において、金型の温度(℃)と圧縮状態の時間(s)とを乗じたものを積算熱量(℃・s)とした場合に、金型温度が180℃以上250℃以下であって、且つ、積算熱量が32400℃・s以上52500℃・s以下であってもよい。
【0028】
以下、実施の形態に係るセルロース系繊維複合樹脂を含む成形品及びその製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0029】
(実施の形態1)
<無機質感成形品>
図1Aは、本実施の形態1に係る石調模様を有する成形品110の表面を示す概略図である。また、図1Bは、実施の形態1に係る石調模様を有する成形品110の表面の模式図である。
実施の形態1に係る石調模様を有する成形品110は、セルロース系繊維と母材である熱可塑性樹脂とを複合化して構成されるセルロース系繊維複合樹脂からなる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレンである。なお、熱可塑性樹脂は、これに限定されない。また、セルロース系繊維複合樹脂中のセルロース系繊維含有率が30~90重量%である。さらに、成形品110は、その表面において、第一領域111と、第二領域112と、第三領域113と、で構成されている。第一領域111は、セルロース系繊維が褐色化している領域であり、第二領域112は、第一領域よりも褐色化が低く、明度が高い。第三領域113は、第一領域111及び第二領域112の間及び周囲に広がっており、母材である熱可塑性樹脂の割合が第一領域111及び第二領域112よりも多い。
【0030】
第一領域111と第二領域112との間の第三領域113には、V字状の溝を有してもよい。また、成形品110の厚さ方向について、第一領域111及び第二領域112は、第三領域113よりも厚い。
【0031】
第一領域、第二領域、そして第三領域の色を、CIE L*a*b*表色系において色調を表す値である、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*を用い、
第一領域:L1、a1、b1
第二領域:L2、a2、b2
第三領域:L3、a3、b3
とした時に、第一領域と第二領域との色差ΔE1、第二領域と第三領域との色差ΔE2、第三領域と第一領域との色差ΔE3は、それぞれ


と表せ、
色差ΔE1、ΔE2、ΔE3は、それぞれ、
3≦ΔE1≦30 且つ 3≦ΔE2≦30 且つ 3≦ΔE3≦30
であってもよい。
【0032】
第三領域は、第一及び第二領域よりもセルロース系繊維含有率が低く、4%以上のセルロース系繊維含有率差があってもよい。
【0033】
<無機質感成形品の製造方法>
本実施の形態1に係る成形品の製造方法では、以下の工程を含む。
(i)複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する。複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットは、少なくとも2種類の高さが高い高背ペレット群と高さが低い低背ペレット群と、を含む。複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを一対の金型の間に配置する工程において、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの高さを圧縮加工における圧縮方向に合わせるように配置する、
(ii)一対の金型を圧縮加工して、セルロース系繊維複合樹脂ペレットの圧縮加工品である成形品を得る。
【0034】
実施の形態1に係る成形品の製造方法によれば、セルロース系繊維複合樹脂ペレットが白色であり、セルロース系繊維と母材樹脂との流動性・強度に差があることを応用している。圧縮方向の高低差のある高背ペレットと低背ペレットとを用いることで、圧縮により流出する母材樹脂の量が、高背ペレットと低背ペレットとの間で異なる。高さが高い高背ペレットのほうが低背ペレットよりも早く圧縮され、母材樹脂が流出するため、残存するセルロース繊維の割合が高くなる。その後の加熱で褐色化するセルロース繊維の量がより多い高背ペレットがより濃くなり、低背ペレットはより薄くなる。また、ペレット間の隙間に母材樹脂が流出し、ペレットとの間に高低差ができる。濃さの異なる領域とペレット間の透明な領域とによって、大理石調の模様を表現することができる。このように着色剤無しに、セルロース系複合樹脂1種類のみで有機物でありながら、セルロース系繊維複合樹脂を用いて、石調の模様を有する成形品を提供することができる。
【0035】
<プレス金型>
セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)を加熱圧縮、冷却を行うパンチ金型(106)、ダイ金型(107)、ヒータ(108)、冷却管(109)からなるプレス金型を用いる。ヒータ(108)は、パンチ金型(106)、ダイ金型(107)のそれぞれの内部に埋め込まれている。成形品の形状としては、例えば、スマートフォンのケースとし、サイズは、(縦144mm、横71mm、高さ8mm、厚み1.3mm)とする。冷却管(109)は、パンチ金型(106)、ダイ金型(107)内部に埋め込まれ、パッチ金型(106)、ダイ金型(107)それぞれおの冷却時には、冷却液を循環させて熱された金型を冷却する。
【0036】
<セルロース系繊維複合樹脂ペレット>
ポリプロピレン(101)100部に対して、セルロース系繊維(102)を85部含有するセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)を、圧縮成形に用いる。セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)は、直径が例えば3mmの円柱状であって、高さが異なり、高さが例えば2~4mmの低背ペレット群(104)と、高さが例えば4~6mmの高背ペレット(105)と、がある。圧縮加工成形には、上記の低背ペレット群(104)と、高背ペレット群(105)との少なくとも2種類を用いる。
【0037】
<セルロース繊維>
使用したセルロース系繊維は木材から抽出された漂白済みの針葉樹パルプを平均直径が50μm、平均長さ300μmになるように予備粉砕し粉末状になったパルプを、混練機で母材となるポリプロピレン(以下、PPと記載)と混ぜ合わせ混練することで得られるセルロース系繊維複合樹脂を用いた。
混練機の設定温度は190℃に設定し、極力パルプが変色(褐色化)しないように低温で混練した。また、混練機内での生じるせん断力により繊維の解繊(繊維を解きほぐし直径が微細化)が生じ、混練前の粉末状パルプに比べ、混練後のセルロース系繊維複合樹脂ペレット内の繊維アスペクト比(繊維長/繊維径)が高くなっている。上記製造方法によって得られるペレットはセルロース系繊維が熱の影響で変色等を起こさないため白色(パルプ色)のまま製造することができる。
【0038】
セルロース系繊維複合樹脂ペレット群(103)の形状は、円柱状でなくても構わず、多面体、楕円体、錐台など、特に指定はない。
【0039】
<配置工程>
複数のセルロース系繊維複合樹脂ペレットを前記一対の金型の間に配置する工程では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット群103の高さ方向を圧縮加工における圧縮方向に合わせるように配置する。
【0040】
<圧縮加工工程>
圧縮加工成形の工程としては、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)を母材であるポリプロピレン(101)の融点以上、セルロース系繊維(102)が炭化する250℃以下の範囲で加熱したパンチ金型(106)、ダイ金型(107)内部に配置し、パンチ金型(106)とダイ金型(107)とで圧縮加工を施す。一定の圧力付加後に冷却管(109)に冷却液を流すことで成形品(110)を冷却し、パンチ金型(106)、ダイ金型(107)を開いて成形品(110)を取り出すという手順となる。圧縮成形の条件としては、例えば、210℃、60MPaで圧縮加工する。加圧圧縮の保持時間が180s(180秒)であり、冷却は、パンチ金型(106)、ダイ金型(107)が100℃以下になるまで行う。
なお、成形品の製造方法は、上記工程に限られず、例えば、セルロース複合樹脂を変性させる工程と、冷却する工程と、熱可塑性樹脂の融点以下まで冷却した後に金型を開き、成形品を取出す工程と、を含む。
【0041】
図5から図7に、プレス時のペレットの変化を示す概略断面図を示す。図5は、圧縮加工工程におけるセルロース系繊維複合樹脂ペレット(104、105)の変形挙動の詳細を示す概略図である。図6は、ペレット同士が変形し、ペレットから流出した樹脂(103)が一体化する際の様子を示す概略図である。図7は、冷却時の樹脂の収縮の様子を示す概略図である。
【0042】
図5(a)及び(b)は、低背ペレット群(104)、高背ペレット群(105)をダイ金型(107)に設置する工程を示す。ダイ金型(107)がヒータ(108)により熱されて210℃になった状態で、低背ペレット群(104)及び高背ペレット群(105)をダイ金型(107)へ置く(図5(a))。このとき、低背ペレット群(104)及び高背ペレット群(105)の高さ方向を圧縮方向に合わせるように配置する。
【0043】
パンチ金型(108)を下げていき、60MPaで一対のダイ金型(107)とパンチ金型(108)とを圧縮加工(プレス)する。プレスの際、高背ペレット(105)が低背ペレット(104)よりも早くパンチ金型(106)に押しつぶされるために高背ペレット群(105)は低背ペレット群(104)よりも多くの量が変形する(図5(b))。そして、変形の際に、母材のポリプロピレン(101)とセルロース系繊維(102)とで粘弾性挙動に差があり、ポリプロピレン(101)が優先的に流れ出す。変形量が多い高背ペレット群(105)は、ポリプロピレン(101)の流出量が多く、低背ペレット群(104)に比べて、高背ペレット群(105)は、セルロース系繊維の含有濃度が高くなる。低背ペレット群(104)及び高背ペレット群(105)のそれぞれから流れ出したポリプロピレン(101)は、低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)との隙間に流れ込む(図6(a))。
【0044】
さらに、圧縮状態で保持されている間に、熱によってセルロース系繊維(102)が変性し褐色化する。高背ペレット群(105)の方が、低背ペレット群(104)よりもセルロース系繊維(102)の濃度が高いためにより褐色化し、色の差が出来る(図5(b)、図7(a))。加熱圧縮の保持時間は、短すぎるとペレットが溶け切らずに成形品が出来ない。一方、加熱圧縮の保持時間が長すぎるとセルロース系繊維(102)の変性が進み過ぎてしまい、低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)との色の差はほとんどなくなってしまう。
【0045】
冷却時、ポリプロピレン(101)が流れ込んだ領域は、低背ペレット群(104)と、高背ペレット群(105)とがつぶれて出来た領域よりもセルロース系繊維(102)の濃度が低いために収縮率が大きくなり、凹む(118)(図7(b))。つまり、低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)は、収縮(117)が少なく、その間の樹脂であるポリプロピレン(101)よりも厚さ方向について厚い。
【0046】
また、樹脂(101)が流動する際に、流動層の中心から、吹き出すように流れる。この噴出するような流れはペレット毎に発生しており、流動する樹脂(101)の先端同士が合流し(図6(b))、流れが停止することで固化し、その際にはV字状溝(116)が発生する(図6(c))。V字状溝(116)は、例えば、低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)との間のポリプロピレン(101)の上に形成される。なお、V字状溝(116)は、低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)との間の真ん中に形成されるとは限らない。低背ペレット群(104)と高背ペレット群(105)とから流出する樹脂の量がそれぞれ異なるからである。
【0047】
以上から、プレスによって高背ペレット群(105)が押しつぶされると濃い褐色の領域(111)となり、低背ペレット群(104)が押しつぶされると薄い褐色の領域(112)となる。高背ペレット群(105)は、低背ペレット群(104)より大きく、変形量も大きいために濃い褐色の領域(111)の方が、薄い褐色の領域(112)よりも表面積は大きくなる。また、ポリプロピレン(101)が低背ペレット群(104)と、高背ペレット群(105)との隙間に流れ込んで固まってできた半透明の領域(113)が出来る。これら3つの領域がまばらに配置される状態になることで、石調のような模様となる。更に、半透明の領域(113)は、濃い褐色の領域(111)や薄い褐色の領域(112)よりも凹んでいるために凹凸形状を有し、石調の質感を表現する。
出来上がった成形品(110)は、色調にて評価を行う。
【0048】
(実施例1-1)
成形品(110)の濃い褐色の領域(111)、薄い褐色の領域(112)、半透明の領域(113)の色調を、分光測定器を用いて測定した結果、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*の値、黄と青の尺度b*の値が、それぞれ
濃い褐色の領域(111)では、
1*=70.1、a1*=2.21、b1*=20.1
薄い褐色の領域(112)では、
2*=84.1、a1*=2.21、b1*=18
半透明の領域(113)では、
3*=80.7、a3*=2.51、b3*=15
であった。
【0049】
以上の結果から濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)との2色間の差を表す色差ΔE1、薄い褐色の領域(112)と半透明の領域(113)との2色間の差を表す色差ΔE2、濃い褐色の領域(111)と半透明の領域(113)との2色間の差を表す色差ΔE3は、(式1)、(式2)、(式3)より、


となった。つまり、明暗を意味するL*の値、赤と緑の尺度a*、黄と青の尺度b*に差異があり、濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)、薄い褐色の領域(112)と半透明の領域(113)、半透明の領域(113)と濃い褐色の領域(111)とでのそれぞれの色差ΔE1は14.12となり、ΔE2は4.54となり、ΔE3は11.8となった。すなわち、人間の目視で認識できる色差ΔEが3以上のため、成形品(110)上の濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)と半透明の領域(113)とは、異なった色に見え、且つランダムに配置しているために石調のような模様となる。
【0050】
また、濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)と半透明の領域(113)との各セルロース繊維濃度を評価できるように比重での評価を行った。比重評価には、電子天秤にて、空気中の重量測定と水中での重量測定を行い、その重量差から比重を算出するアルキメデスの原理を用いて測定した。セルロース系繊維(102)の比重をa、樹脂の比重をb、セルロース系繊維濃度(重量部、重量%)をcとすると、セルロース系繊維複合樹脂の比重dは、下記式(4)で表される。
【0051】
よって、セルロース系繊維濃度を知るには、下記式(5)を用いればよい。
【0052】
今回の場合、
a=1.35、b=0.9、として
濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)と半透明の領域(113)のそれぞれの密度をd1、d2、d3、それぞれのセルロース系繊維(102)の濃度(重量%)をc1、c2、c3として測定すると、
d1=1.286、d2=1.268、d3=1.233
であり、(式5)を用いることで、セルロース系繊維(102)の濃度は、
c1=90、c2=87、c3=81
である。
【0053】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、プレス時の温度を175℃から255℃まで変更し、プレス時間も150sから300sまで変更することで積算熱量(℃・s)を変更した。この積算熱量(℃・s)は、セルロース系繊維複合樹脂に与えた実際の熱量(J)ではなく、プレス時の温度(℃)とプレス時間(s)との積として表した数値であり、簡易的に加熱条件を表すものである。
なお、本実施の形態2では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、ペレット(104)、ペレット(105)を用いた。製造プロセスとしても実施の形態1と同様である。
【0054】
図9の表1には、本実施の形態2における様々なプレス温度、プレス時間の代表的なものを調査した結果を示す。色差測定は、実施の形態1と同様に行う。
【0055】
図9の表1において、実施例2-1は、プレス温度180℃、プレス時間180s、積算熱量32400℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超えた。
【0056】
実施例2-2は、プレス温度180℃、プレス時間291s、積算熱量52380℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超え、ΔE1は30となった。
【0057】
実施例2-3は、プレス温度190℃、プレス時間210s、積算熱量39900℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超えた。
【0058】
実施例2-4は、プレス温度210℃、プレス時間210s、積算熱量44100℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超えた。
【0059】
実施例2-5は、プレス温度240℃、プレス時間150s、積算熱量44100℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超えた。
【0060】
実施例2-6は、プレス温度250℃、プレス時間210s、積算熱量52500℃・sでプレスを行った。色差は全て3を超えた。
【0061】
比較例2-1は、プレス温度175℃、プレス時間210s、積算熱量36750℃・sでプレスを行った。色差は全て3を越えなかった。
【0062】
比較例2-2は、プレス温度175℃、プレス時間300s、積算熱量52500℃・sプレスを行った。色差は全て3を越えなかった。
【0063】
比較例2-3は、プレス温度210℃、プレス時間150s、積算熱量31500℃・sプレスを行った。色差は全て3を越えなかった。
【0064】
比較例2-4は、プレス温度255℃、プレス時間210s、積算熱量53550℃・sプレスを行った。色差はΔE2が3を越えなかった。
【0065】
比較例2-5は、プレス温度255℃、プレス時間210s、積算熱量53550℃・sプレスを行った。色差はΔE2が3を越えなかった。
【0066】
実施例2-1と比較例2-1、比較例2-2より、プレス温度は180℃以上である必要があることが分かる。セルロースが変性する温度以上になるかどうかが重要と考えられる。
【0067】
実施例2-1と実施例2-2より、積算熱量が増えると、セルロース系繊維(102)の変性が進んで褐色化が進んで且、半透明な領域(113)の樹脂の変色は進まず、色差が大きくなった。
【0068】
実施例2-6と比較例2-4と比較例2-5より、プレス温度が250℃を超えると積算熱量の違いに関わらず、色差が出なかった。これは、セルロース繊維(102)が完全に炭化したためと考えられる。
【0069】
実施例2-6と比較例2-6より、積算熱量が一定値を超えるとセルロース繊維の炭化が進行し、色差が3より小さくなったと考えられる。
【0070】
実施例2-2、実施例2-3、実施例2-4、実施例2-5より、プレス温度を抑えた上で積算熱量が増加する程、色差が大きくなったことから樹脂の熱劣化による変色を抑えてセルロース繊維(102)を変性させることで色差を大きくつけ、より鮮明な石調の模様を表現することが出来ると考えられる。最大ΔEを30まで大きくすることが出来た。
【0071】
実施例2-4と比較例2-3より、積算熱量が32400℃・sを下回るとセルロース繊維(102)の変性が不十分で色差をつけることが出来なかったと考えられる。
【0072】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)含有量を10部から90部まで変更し、ペレットの種類もペレット群(105)のみを用い、群の中でのサイズを変更した。なお、本実施の形態3では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、製造プロセスとしても実施の形態1と同様である。
【0073】
図10の表2は、本実施の形態3における様々なセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度と円柱状形状であるペレット(104)、ペレット(105)の代表的な高さの差と色差の変化を調査した結果を示すものである。
色差測定は実施の形態1と同様に行う。また、密度測定からc1、c2、c3を算出する方法も実施の形態1と同様に行う。
【0074】
図10の表2において、実施例3-1は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を30部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てについて3より大きい値となり、石調模様に見えた。また、c1とc2の濃度差は4、c2とc3の濃度差は10、c1とc3の濃度差は14となった。
【0075】
実施例3-2は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を55部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てについて3より大きい値となり、石調模様に見えた。また、c1とc2の濃度差は4、c2とc3の濃度差は6、c1とc3の濃度差は10となった。
【0076】
実施例3-3は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てについて3より大きい値となり、石調模様に見えた。また、c1とc2の濃度差は3、c2とc3の濃度差は6、c1とc3の濃度差は9となった。
【0077】
実施例3-4は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より大きい値となり、石調模様に見えた。また、c1とc2の濃度差は3、c2とc3の濃度差は5、c1とc3の濃度差は7となった。
【0078】
更に、実施例3-5は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.725mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より大きい値となり、石調模様に見えた。
また、c1とc2の濃度差は2、c2とc3の濃度差は2、c1とc3の濃度差は4となった。
【0079】
実施例3-6は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmのペレット(104)と1.725mmのペレット(105)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より大きい値となり、石調模様に見えた。また、c1とc2の濃度差は4、c2とc3の濃度差は5、c1とc3の濃度差は9となった。
【0080】
一方、比較例3-1では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を10部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。また、c1とc2の濃度差は1、C2とc3の濃度差は1、c1とc3の濃度差は2となった。
【0081】
比較例3-2では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を25部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
また、c1とc2の濃度差は2、c2とc3の濃度差は1、c1とc3の濃度差は3となった。
【0082】
比較例3-3では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.6mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。また、c1とc2の濃度差は1、c2とc3の濃度差は1、c1とc3の濃度差は2となった。
【0083】
比較例3-4では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.7mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3は、全て3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。また、c1とc2の濃度差は1、c2とc3の濃度差は2、c1とc3の濃度差は3となった。
【0084】
実施例3-1、比較例3-1、比較例3-2より、セルロース系繊維(102)の量が少ないと色差が出ず、石調模様に見えないことが分かった。樹脂量が多いと、半透明の領域(113)が大半を占め、半透明の領域(113)の中に濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)とが隣接することなく点在する状態となり、石調模様に見えない。この場合、樹脂成分が多く、表層にセルロース系繊維(102)があまりない状態であるため、変性による色差の変化が出にくいと考えられる。
【0085】
実施例3-4、実施例3-5、そして実施例3-6より、セルロース系繊維(102)の濃度が高いほど、ペレットサイズ差が大きい程、色差の変化は大きくなった。これは、濃度が多いほど、セルロース系繊維(102)の変性の差による色差の違いが出やすいからと考えられる。また、ペレットの変形量が多い程、濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)とのセルロース系繊維(102)濃度差が大きくなるためと考えられる。
【0086】
また、実施例3-5、比較例3-3、そして比較例3-4より、ペレットサイズ差が0.2までは、樹脂が押しのけられる量に差がつかず、色差に変化が現れるようなセルロース系繊維(102)濃度差が出来ないと考えられる。なお、ペレットサイズが大きくなれば、より樹脂が押しのけられる量が多くならないとセルロース系繊維(102)濃度差がつかないために、ペレット(104)とペレット(105)のサイズの比率が重要である。
【0087】
また、実施例3-1~実施例3-6より、c1とc3、c2とc3のそれぞれの濃度差は4%以上であった。
【0088】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、ペレット(104)、ペレット(105)を用い、群の中でのサイズを変更した。更に、成形品形状の厚みを変化させ、なお、本実施の形態4では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、製造プロセスとしても実施の形態1と同様である。
【0089】
図11の表3は、本実施の形態4における様々な円柱状形状であるペレット(104)、またはペレット(105)の最低高さと成形品(110)の厚みが変化した際の色差の変化を調査した結果を示すものである。色差測定は実施の形態1と同様に行う。
また、成形品が隙間なく成形されているかを外観で確認する。
色差が3より大きく、外観で隙間なく成形されているものを〇とし、どちらか一方でも満たしていなければ×と判定する。
【0090】
図11の表3において、実施例4-1は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが1.5mm、成形品(110)の厚みが1mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0091】
実施例4-2は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが2mm、成形品(110)の厚みが1mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0092】
実施例4-3は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが3mm、成形品(110)の厚みが2mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0093】
実施例4-4は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが4mm、成形品(110)の厚みが2mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0094】
一方、比較例4-1は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが1.1mm、成形品(110)の厚みが1mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間がところどころ出来ており、ΔE1~ΔE3の全てで3より小さく、石調模様に見えなかった。
【0095】
比較例4-2は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが1.3mm、成形品(110)の厚みが1mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より小さく、石調模様に見えなかった。
【0096】
比較例4-3は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが2.2mm、成形品(110)の厚みが2mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間がところどころ出来ており、ΔE1~ΔE3の全てで3より小さく、石調模様に見えなかった。
【0097】
比較例4-4は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の最低高さが2.6mm、成形品(110)の厚みが2mmとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てで3より小さく、石調模様に見えなかった。
【0098】
実施例4-1と実施例4-2より、成形品(110)厚みに対してペレット高さがより高い時、色差は全体的に大きくなる。これは、プレス時の変形量が大きくなることで、セルロース系繊維濃度が大きくなったためと考えられる。
【0099】
実施例4-3,4-4より、成形品(110)厚みとセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)の最低高さの関係は比率で表されると考えられる。
【0100】
比較例4-1より、プレス時の変形量が少ない場合、ペレット間同士の一体化が不十分となり、成形品(110)は形状を保てない状態になる。
【0101】
実施例4-1と比較例4-2より、プレス時に成形品(110)の形状を保てる程度に変形できても、よりセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)から樹脂が押し出されなと色差が出ないことが分かった。
【0102】
(実施の形態5)
本実施の形態5では、ペレット(104)、ペレット(105)をダイ金型(107)に設置した後、プレスを行う前に、事前に低背ペレット(104)と、高背ペレット(105)とを予備加熱する工程を追加する。プレス時間は変更した。その他の製造プロセスは実施の形態1と同様である。
【0103】
図8(a)乃至(d)に、予備加熱工程と圧縮加工工程におけるセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)の変形挙動詳細を示す。
【0104】
図8(a)は、ダイ金型(107)とパンチ金型(106)との間に低背ペレット(104)と高背ペレット(105)とを配置した様子を示す概略図である。
図8(b)は、低背ペレット(104)、高背ペレット(105)を焦がして褐色化させる工程を示す。ダイ金型(107)は210℃に設定しており、パンチ金型(106)を降ろしてダイ金型(110)に置かれた低背ペレット(104)、高背ペレット(105)に近づけ、低背ペレット(104)、高背ペレット(105)周囲を210℃雰囲気にする。ダイ金型(107)に置いた低背ペレット(104)、高背ペレット(105)全ての表面近傍が焦げて褐色に変色する。
【0105】
図8(c)に圧縮成形工程を示す。パンチ金型(106)を下げていき、60MPaでプレスする。プレスの際、高背ペレット(105)が低背ペレット(104)よりも早くパンチ金型(106)に押しつぶされるために高背ペレット(105)は低背ペレット(104)よりも多くの量が変形し、高背ペレット(105)内部の焦がされていない部分が表面に現れる。一方、低背ペレット(104)は、変形量が少ないために、焦がされていない部分が少量しか表に出ず、高背ペレット(105)がプレスされたものよりも褐色となる。また、半溶融状態でプレスされるために、母材のポリプロピレン(101)とセルロース系繊維(102)で粘弾性挙動に差があり、ポリプロピレン(101)が優先的に流れ出す。低背ペレット(104)、高背ペレット(105)のそれぞれから流れ出したポリプロピレン(101)は、低背ペレット(104)と、高背ペレット(105)との隙間に流れ込む。
【0106】
図8(d)は、冷却時の様子を示す概略断面図である。ポリプロピレン(101)が流れ込んだ半透明の領域(113(118))は、低背ペレット(104)、高背ペレット(105)がつぶれて出来た領域(117)よりもセルロース系繊維(102)の濃度が低いために収縮率が大きくなり、凹む。一方、低背ペレット(104)、高背ペレット(105)がつぶれて出来た領域(117)は、セルロース系繊維を含むために収縮率が小さい。
以上から、プレスによって低背ペレット(104)が押しつぶされると濃い褐色の領域(111)となり、高背ペレット(105)が押しつぶされると薄い褐色領域(112)となる。高背ペレット(105)は低背ペレット(104)より大きく、変形量も大きいために濃い褐色の領域(111)よりも薄い褐色の領域(112)の方が表面積は大きくなる。また、ポリプロピレン(101)が低背ペレット(104)、高背ペレット(105)の隙間に流れ込んで固まってできた半透明の領域(113)が出来る。これら3つの領域がまばらに配置される状態になることで、石調のような模様となる。更に、半透明の領域(113)は濃い褐色の領域(111)や薄い褐色の領域(112)よりも凹んでいるために凹凸形状を有し、石調の質感を表現する。
色調を測定し、色差を算出したところ、以下のようになった。
【0107】
ΔE1=6.24 ΔE2=8.5 ΔE3=3.84
【0108】
(実施の形態6)
本実施の形態6では、予備加熱温度を175℃から255℃まで変更し、プレス時の温度を155℃から255℃まで変更し、プレス時間も150sから300sまで変更することで積算熱量(℃・s)を変更した。また、パンチ金型(106)とダイ金型(107)に加えて、隣接するようにパンチ金型(106)とダイ金型(107)と同様の金型をパンチ金型(601)、ダイ金型(602)として用意し、予備加熱とプレスで別々の温度設定が行えるようにした。予備加熱後、ペレット(104)、ペレット(105)は、パンチ金型(601)、ダイ金型(602)に速やかに移動し、プレスを行う。予備加熱とプレスの温度が同じ場合であれば、パンチ金型(106)とダイ金型(107)だけあれば十分である。なお、本実施の形態6では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、ペレット(104)、ペレット(105)を用いた。製造プロセスとしても実施の形態1と同様である。
【0109】
図12の表4は、本実施の形態6における様々な予備加熱温度と時間、プレス温度と時間が変化した際の色差の変化を調査した結果をさせるものである。色差測定は実施の形態1と同様に行う。また、成形品が隙間なく成形されているかを外観で確認する。
色差が3より大きく、外観で隙間なく成形されているものを〇とし、どちらか一方でも満たしていなければ×と判定する。
【0110】
図12の表4において、実施例6-1は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が32400℃・s、プレス温度160℃、プレス時間30sでプレス時の積算熱量が4800℃・s、総積算熱量37200℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0111】
実施例6-2は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が32400℃・s、プレス温度180℃、プレス時間54sでプレス時の積算熱量が9720℃・s、総積算熱量42120℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0112】
実施例6-3は、予備加熱温度210℃、予備加熱時間230sで予備加熱時の積算熱量が48300℃・s、プレス温度210℃、プレス時間20sでプレス時の積算熱量が4200℃・s、総積算熱量52500℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0113】
実施例6-4は、予備加熱温度250℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が45000℃・s、プレス温度210℃、プレス時間20sでプレス時の積算熱量が2560℃・s、総積算熱量49200℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形され、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0114】
比較例6-1は、予備加熱温度175℃、予備加熱時間250sで予備加熱時の積算熱量が43750℃・s、プレス温度180℃、プレス時間30sでプレス時の積算熱量が5400℃・s、総積算熱量43750℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形されたが、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0115】
比較例6-2は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間170sで予備加熱時の積算熱量が30600℃・s、プレス温度180℃、プレス時間30sでプレス時の積算熱量が5400℃・s、総積算熱量36000℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形されたが、ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0116】
比較例6-3は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が32400℃・s、プレス温度155℃、プレス時間30sでプレス時の積算熱量が4650℃・s、総積算熱量37050℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形できなかった。ΔE1~ΔE3は全て3より大きい値となったが、成形品が形状を維持できなかった。
【0117】
比較例6-4は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が32400℃・s、プレス温度160℃、プレス時間16sでプレス時の積算熱量が2560℃・s、総積算熱量34960℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形できなかった。ΔE1~ΔE3は全て3より大きい値となったが、成形品が形状を維持できなかった。
【0118】
比較例6-5は、予備加熱温度180℃、予備加熱時間180sで予備加熱時の積算熱量が32400℃・s、プレス温度180℃、プレス時間55sでプレス時の積算熱量が9900℃・s、総積算熱量42300℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形されたが、ΔE1のみ3を越えたが、ΔE2とΔE3とは3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0119】
比較例6-6は、予備加熱温度210℃、予備加熱時間230sで予備加熱時の積算熱量が48300℃・s、プレス温度210℃、プレス時間21sでプレス時の積算熱量が4410℃・s、総積算熱量52710℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形されたが、ΔE1のみ3を越えたが、ΔE2とΔE3とは3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0120】
比較例6-7は、予備加熱温度255℃、予備加熱時間150sで予備加熱時の積算熱量が38250℃・s、プレス温度210℃、プレス時間20sでプレス時の積算熱量が4200℃・s、総積算熱量42450℃・sとなるように成形した。成形品(110)は隙間なく成形されたが、ΔE1とΔE3が3を越えたが、ΔE2は3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0121】
(実施の形態7)
本実施の形態7では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)含有量を10部から90部まで変更し、ペレットの種類もペレット群(105)のみを用い、群の中でのサイズを変更した。なお、本実施の形態2では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、製造プロセスとしても実施の形態5と同様である。
【0122】
図13の表5は、本実施の形態7における様々なセルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度と円柱状形状であるペレット(104)、ペレット(105)の代表的な高さの差と色差の変化を調査した結果を示すものである。
色差測定は実施の形態1と同様に行う。
【0123】
図13の表5において、実施例7-1は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を30部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmとの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0124】
実施例7-2は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を55部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0125】
実施例7-3は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を85部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmとの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0126】
実施例7-4は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmとの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0127】
更に、実施例7-5は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.725mmとの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり、石調模様に見えた。
【0128】
実施例7-6は、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmのペレット(104)と1.725mmのペレット(105)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より大きい値となり石調模様に見えた。
【0129】
一方、比較例7-1では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を10部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0130】
比較例7-2では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を25部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと2mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0131】
比較例7-3では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.6mmの二種類を含むペレット群(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり、石調模様に見えなかった。
【0132】
比較例7-4では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)濃度を90部、円柱状形状の主な高さが1.5mmと1.7mmの二種類を含むペレット(104)を用いた。ΔE1~ΔE3の全てにおいて3より小さい値となり石調模様に見えなかった。
【0133】
実施例7-1、比較例7-1、比較例7-2より、セルロース系繊維(102)の量が少ないと色差が出ず、石調模様に見えないことが分かった。樹脂量が多いと、半透明の領域(113)が大半を占め、半透明の領域(113)の中に濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)とが隣接することなく点在する状態となり、石調模様に見えず、樹脂成分が多く、表層にセルロース系繊維(102)があまりない状態であるため、変性による色差の変化が出にくいと考えられる。
【0134】
実施例7-4、実施例7-5、そして実施例7-6より、セルロース系繊維(102)の濃度が高いほど、ペレットサイズ差が大きい程色差の変化は大きくなった。これは、濃度が多いほど、セルロース系繊維(102)の変性の差による色差の違いが出やすいからと考えられる。また、ペレットの変形量が多い程、濃い褐色の領域(111)と薄い褐色の領域(112)とのセルロース系繊維(102)濃度差が大きくなるためと考えられる。
【0135】
また、実施例7-5、比較例7-3、そして比較例7-4より、ペレットサイズ差が0.2までは、樹脂が押しのけられる量に差がつかず、色差に変化が現れるようなセルロース系繊維(102)濃度差が出来ないと考えられる。なお、ペレットサイズが大きくなれば、より樹脂が押しのけられる量が多くならないとセルロース系繊維(102)濃度差がつかないために、低背ペレット(104)と高背ペレット(105)とのサイズの比率が重要である。
【0136】
(実施の形態8)
本実施の形態8では、セルロース系繊維複合樹脂ペレット(103)のセルロース系繊維(102)含有量が異なるものを2種類用意し、それぞれの含有量をc1部、c2部とした。ペレットのサイズもペレット群(105)のみを用い、円柱状形状の高さが2.5mm前後のものを用いた。プレス時の温度を175℃から255℃まで変更し、プレス時間も150sから300sまで変更することで積算熱量(℃・s)を変更した。なお、本実施の形態2では、ポリプロピレン(101)、セルロース系繊維(102)には同様のものを用い、製造プロセスとしても実施の形態1と同様である。
【0137】
セルロース系繊維の濃度の異なるペレットがあることで、サイズに大きく左右されることなく、濃い褐色の領域(111)、薄い褐色の領域(112)、半透明の領域(113)が出来、各領域の間の色差も3より大きい値となる。
【0138】
図14の表6には、本実施の形態8における様々なプレス温度、プレス時間の代表的なものを調査した結果を示す。色差測定は、実施の形態1と同様に行う。
【0139】
図14の表6において、実施例8-1は、c1が60部、c2は50部とし、プレス温度180℃、プレス時間180s、積算熱量32400℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えた。
【0140】
実施例8-2は、c1が60部、c2は50部とし、プレス温度180℃、プレス時間291s、積算熱量52380℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えた。
【0141】
実施例8-3は、c1が70部、c2は50部とし、プレス温度190℃、プレス時間210s、積算熱量39900℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えた。
【0142】
実施例8-4は、c1が70部、c2は66部とし、プレス温度210℃、プレス時間210s、積算熱量44100℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えた。
【0143】
実施例8-5は、c1が60部、c2は50部とし、プレス温度250℃、プレス時間210s、積算熱量52500℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えた。
【0144】
比較例8-1は、c1が60部、c2は50部とし、圧縮プレス温度175℃、圧縮時間210s、積算熱量36750℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えなかった。
【0145】
比較例8-2は、c1が60部、c2は50部とし、圧縮温度175℃、圧縮時間300s、積算熱量52500℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えなかった。
【0146】
比較例8-3は、c1が70部、c2は67部とし、圧縮温度210℃、圧縮時間210s、積算熱量44100℃・sで圧縮加工を行った。色差はΔE1、ΔE3では3を超えたが、ΔE2では、3を越えなかった。
【0147】
比較例8-4は、c1が60部、c2は50部とし、圧縮温度255℃、圧縮時間210s、積算熱量53550℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えなかった。
【0148】
比較例8-5は、c1が60部、c2は50部とし、圧縮温度255℃、圧縮時間150sで積算熱量38250℃・sで圧縮加工を行った。色差は全て3を超えなかった。
【0149】
実施例8-1と比較例8-1、比較例8-2より、圧縮温度は180℃以上である必要があることが分かる。セルロース系繊維が変性する温度以上になるかどうかが重要と考えられる。
【0150】
実施例8-1と実施例8-2より、積算熱量が増えると、セルロース系繊維(102)の変性が進んで褐色化が進んで且、半透明な領域(113)の樹脂の変色は進まず、色差が大きくなった。
【0151】
実施例8-5と比較例8-4と比較例8-5より、圧縮温度が250℃を超えると積算熱量の違いに関わらず、色差が出なかった。これは、セルロース系繊維(102)が完全に炭化したためと考えられる。
【0152】
実施例8-4と比較例8-3より、c1とc2との濃度差が4より小さい場合、色差が十分出るほどの褐色度合いの差が出ないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明に係る成形品は、セルロース系繊維複合樹脂を用いて、今まで表現出来なかった石調模様をセルロース系繊維複合樹脂の特性を活用し、圧縮成形のみによって得ることが出来る。
【符号の説明】
【0154】
101 ポリプロピレン
102 セルロース系繊維
103 セルロース系繊維複合樹脂ペレット
104 低背ペレット群
105 高背ペレット群
106 パンチ金型
107 ダイ金型
108a、108b ヒータ
109a、109b 冷却管
110 成形品
111 濃い褐色の領域(第一領域)
112 薄い褐色の領域(第二領域)
113 半透明の領域(第三領域)
116 V字状溝
117 収縮が少ない箇所
118 収縮が多い箇所
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14