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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042239
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】搬送装置及び電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/00 20060101AFI20230317BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20230317BHJP
   G21K 5/10 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G21K5/00 S
G21K5/04 E
G21K5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149437
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山下 将卓
(57)【要約】
【課題】遮蔽部材に係る構成の簡素化とともに、遮蔽部材を通過する物品の搬送に係る時間の短縮が図れる搬送装置及び電子線照射装置を提供する。
【解決手段】搬送装置13に用いられる遮蔽部材14,15には、第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yが一体的に設けられる。遮蔽部材14,15の第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yは、物品Wの搬送移動に合わせて交互に動作する。第1遮蔽部14x,15xにおいて物品Wの搬送移動を許容する状態では、第2遮蔽部14y,15yがX線区画12xの搬入口12a及び搬出口12bを閉状態とする。第2遮蔽部14y,15yにおいて物品Wの搬送移動を許容する状態では、第1遮蔽部14x,15x側が閉状態とする。更にその動作過程において第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yの少なくとも一方側にてその閉状態が維持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線の生じ得るX線区画内外に搬入口及び搬出口を介して物品の搬入及び搬出を行う搬送装置であって、
前記搬入口及び前記搬出口の少なくとも一方側において前記物品の搬送移動の許容と前記X線の遮蔽のための閉状態の維持とを図るための遮蔽部材を備え、
前記遮蔽部材は、搬送方向上流側に第1遮蔽部と搬送方向下流側に第2遮蔽部とを一体的に有しており、
前記物品の搬送移動に合わせて、前記第1遮蔽部において前記物品の搬送移動を許容する状態では前記第2遮蔽部にて前記搬入口又は前記搬出口を閉状態とし、前記第2遮蔽部において前記物品の搬送移動を許容する状態では前記第1遮蔽部にて前記搬入口又は前記搬出口を閉状態となるように前記第1及び第2遮蔽部が交互に動作し、更にその動作過程において前記第1及び第2遮蔽部の少なくとも一方側による前記搬入口又は前記搬出口の閉状態が維持されるように構成されている、
搬送装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記搬入口及び前記搬出口のそれぞれに備えられている入口側遮蔽部材及び出口側遮蔽部材である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、少なくとも前記第1及び第2遮蔽部において前記X線の遮蔽可能な板状部材を用いて作製されており、前記第1及び第2遮蔽部が交互の動作となるように前記搬送装置に対して揺動可能に支持されて構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、初期状態において前記第1遮蔽部が前記搬送装置の搬送面の下側に収納されるとともに前記第2遮蔽部が前記搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にて突出するように支持されており、前記物品の搬送に伴い前記物品が前記第2遮蔽部に載置されると前記物品の自重にて前記第2遮蔽部が前記搬送面の下側に収納されるとともに前記第1遮蔽部が前記搬送面から突出する揺動動作を行うように構成されている、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材の揺動動作を補助するための補助部材が装着可能に構成されている、
請求項3又は請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
電子線の照射に伴いX線の生じ得るX線区画内外に搬入口及び搬出口を介して物品の搬入及び搬出を行う搬送装置を備え、前記搬送装置にて搬送される前記物品に対して前記電子線の照射を行う電子線照射装置であって、
前記搬送装置は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置を用いて構成されている、
電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線区画内外に物品の搬入及び搬出を行う搬送装置及び電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子線照射装置等、X線の生じ得る区画を有するものでは、X線の外部への漏洩を抑止するためのX線区画を設ける必要がある。X線区画は、この電子線照射装置においては照射対象に電子線を照射する区画でもある。そのため、X線の外部への漏洩を抑止しつつ、電子線の照射対象の物品のX線区画への搬入とX線区画からの搬出とを行う搬送装置が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1に開示のX線検査装置に用いられる搬送装置は、搬入口側と搬出口側とでそれぞれ2つ、計4つの遮蔽体を備えている。搬入口側及び搬出口側の各遮蔽体は、互いに独立したものであり、順次一つずつ自身の下端部側から上下方向の開閉作動を行う構成である。そして、搬入口側及び搬出口側のそれぞれにおいて、少なくとも1つの遮蔽体が閉状態に維持される搬送が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-134298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記開示技術等のように、搬入口側と搬出口側とでそれぞれ独立した遮蔽体を順次一つずつ開閉させる態様、すなわち上流側の遮蔽体の閉作動が完了した後に下流側の遮蔽体の開作動を開始させる必要のある態様では、搬送に時間がかかる。また、複数の遮蔽体が個々に独立しているため、遮蔽体に係る構成部品が多くなり得ることが懸念されるところである。本発明者は、遮蔽部材に係る構成の簡素化とともに、遮蔽部材を通過する物品の搬送に係る時間の短縮を図ることを検討課題としていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する搬送装置は、X線の生じ得るX線区画内外に搬入口及び搬出口を介して物品の搬入及び搬出を行う搬送装置であって、前記搬入口及び前記搬出口の少なくとも一方側において前記物品の搬送移動の許容と前記X線の遮蔽のための閉状態の維持とを図るための遮蔽部材を備え、前記遮蔽部材は、搬送方向上流側に第1遮蔽部と搬送方向下流側に第2遮蔽部とを一体的に有しており、前記物品の搬送移動に合わせて、前記第1遮蔽部において前記物品の搬送移動を許容する状態では前記第2遮蔽部にて前記搬入口又は前記搬出口を閉状態とし、前記第2遮蔽部において前記物品の搬送移動を許容する状態では前記第1遮蔽部にて前記搬入口又は前記搬出口を閉状態となるように前記第1及び第2遮蔽部が交互に動作し、更にその動作過程において前記第1及び第2遮蔽部の少なくとも一方側による前記搬入口又は前記搬出口の閉状態が維持されるように構成されている。
【0007】
上記構成によれば、遮蔽部材に一体的に設けられた第1及び第2遮蔽部が物品の搬送移動に合わせて交互に動作する。第1遮蔽部において物品の搬送移動を許容する状態では、第2遮蔽部がX線区画の搬入口又は搬出口を閉状態とする。第2遮蔽部において物品の搬送移動を許容する状態では、第1遮蔽部が搬入口又は搬出口を閉状態とする。更にその動作過程においても、第1及び第2遮蔽部の少なくとも一方側による搬入口又は搬出口の閉状態が維持される。つまり、遮蔽部材の第1及び第2遮蔽部の連動した動作により、搬入口又は搬出口の閉状態を常に維持して外部へのX線の漏洩を抑止しつつも物品の搬送を効率的に行うことが可能である。物品の搬送に係る時間の短縮が十分に期待できる。また、遮蔽部材に第1及び第2遮蔽部を一体的に設ける構成のため、構成の簡素化が十分に期待できる。
【0008】
上記搬送装置において、前記遮蔽部材は、前記搬入口及び前記搬出口のそれぞれに備えられている入口側遮蔽部材及び出口側遮蔽部材である。
上記構成によれば、搬入口及び搬出口のそれぞれに入口側遮蔽部材及び出口側遮蔽部材が備えられる。各遮蔽部材の第1及び第2遮蔽部の連動した動作により、搬入口及び搬出口のそれぞれの閉状態を常に維持して外部へのX線の漏洩を抑止しつつ、搬入口及び搬出口における物品の搬送がそれぞれ効率的に行われる。
【0009】
上記搬送装置において、前記遮蔽部材は、少なくとも前記第1及び第2遮蔽部において前記X線の遮蔽可能な板状部材を用いて作製されており、前記第1及び第2遮蔽部が交互の動作となるように前記搬送装置に対して揺動可能に支持されて構成されている。
【0010】
上記構成によれば、遮蔽部材は、少なくとも第1及び第2遮蔽部においてX線の遮蔽可能な板状部材を用いて作製される。遮蔽部材は、第1及び第2遮蔽部の上記交互の動作を行うべく搬送装置に対して揺動可能に支持される。つまり、遮蔽部材に係る構成を簡素な構成にて実現可能である。
【0011】
上記搬送装置において、前記遮蔽部材は、初期状態において前記第1遮蔽部が前記搬送装置の搬送面の下側に収納されるとともに前記第2遮蔽部が前記搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にて突出するように支持されており、前記物品の搬送に伴い前記物品が前記第2遮蔽部に載置されると前記物品の自重にて前記第2遮蔽部が前記搬送面の下側に収納されるとともに前記第1遮蔽部が前記搬送面から突出する揺動動作を行うように構成されている。
【0012】
上記構成によれば、遮蔽部材は、初期状態では第1遮蔽部が搬送面の下側に収納され、第2遮蔽部が搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にて突出する。搬送移動にて物品が第2遮蔽部に載置されると、物品の自重にて第2遮蔽部が搬送面の下側に収納され、第1遮蔽部が搬送面から突出する。つまり、搬送移動する物品の自重を利用して遮蔽部材の上記揺動動作が行われるため、遮蔽部材に係る構成を簡素な構成にて実現可能である。また、物品の載置される第2遮蔽部は、搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にて待機するため、搬送されてくる物品の載置からその後の遮蔽部材の揺動に繋がる一連の動作を円滑に行わせることが可能である。
【0013】
上記搬送装置において、前記遮蔽部材の揺動動作を補助するための補助部材が装着可能に構成されている。
上記構成によれば、遮蔽部材の揺動動作を補助するための補助部材が装着可能なため、遮蔽部材の上記揺動動作を円滑に行わせることが可能である。遮蔽部材の揺動動作に物品の自重を用いるものでは、特に効果が期待できる。
【0014】
上記課題を解決する電子線照射装置は、電子線の照射に伴いX線の生じ得るX線区画内外に搬入口及び搬出口を介して物品の搬入及び搬出を行う搬送装置を備え、前記搬送装置にて搬送される前記物品に対して前記電子線の照射を行う電子線照射装置であって、前記搬送装置は、上記いずれかに記載の搬送装置を用いて構成されている。
【0015】
上記構成によれば、電子線照射装置の搬送装置において遮蔽部材の構成の簡素化が図れ、また物品の搬送に係る時間の短縮化、ひいては物品の電子線の照射に係る時間の短縮化が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の搬送装置及び電子線照射装置によれば、遮蔽部材に係る構成の簡素化とともに、遮蔽部材を通過する物品の搬送に係る時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態における搬送装置を有する電子線照射装置の構成を示す側面図である。
図2】同形態における搬送装置の動作態様を説明するための側面図である。
図3】同形態における搬送装置の動作態様を説明するための側面図である。
図4】同形態における搬送装置の動作態様を説明するための側面図である。
図5】同形態における搬送装置の動作態様を説明するための側面図である。
図6】変更例における搬送装置の構成を示す側面図である。
図7】別の変更例における搬送装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、搬送装置及び電子線照射装置の一実施形態について説明する。
[電子線照射装置の全体構成]
図1に示す本実施形態の電子線照射装置10は、電子線生成部11と、遮蔽室12と、搬送装置13とを備えている。電子線生成部11は、真空チャンバ内にてフィラメントの加熱により放出される熱電子から電子線eを生成する。電子線eは、電子線生成部11の出射窓に取り付けられた金属製の窓箔を透過して出射される。電子線生成部11は、生成した電子線eを下方に向けて出射、この場合遮蔽室12内に向けて出射する。遮蔽室12内では、搬送装置13にて搬送される物品Wに対して電子線eの照射が行われる。電子線eの照射された物品Wは、素材の性質改善、機能付加、殺菌滅菌等の照射効果を取得する。
【0019】
[遮蔽室の構成]
遮蔽室12は、X線の遮蔽機能を有する壁面にて囲われて構成されている。ここで、電子線生成部11から出射された電子線eが出射後の空気中を進む際や搬送装置13上の物品W及び搬送装置13自身に当たる際に、周囲へのX線の放射が生じる。つまり、遮蔽室12の内側空間は、X線の存在するX線区画12xである。遮蔽室12は、電子線eの出射の伴って生じ得るX線の外部への漏洩を抑止する。遮蔽室12内外に物品Wの搬入及び搬出は、搬送装置13により行われる。遮蔽室12には、搬送装置13の搬送方向上流側に搬入口12aが設けられるとともに、搬送方向下流側に搬出口12bが設けられている。搬入口12a及び搬出口12bは、搬送方向から見て例えば矩形の開口形状をなしている。
【0020】
[搬送装置の構成]
搬送装置13は、遮蔽室12に付随して設けられている。搬送装置13は、例えばローラコンベアである。搬送装置13は、上面の搬送面13aが水平方向に沿った搬送態様である。搬送装置13は、電子線eの照射対象である物品Wを搬送面13a上に載置した状態にて搬送する。搬送装置13は、搬入口12a及び搬出口12bの水平方向の開口幅よりも大きいものである。搬送装置13は、物品Wを遮蔽室12の外部から搬入口12a内に搬送し、遮蔽室12内での電子線eの照射後、搬出口12bから遮蔽室12の外部に搬送する。すなわち、搬送装置13は、遮蔽室12の搬入口12a及び搬出口12bを介してX線区画12x内外に物品Wの搬入及び搬出を行う。
【0021】
搬送装置13は、搬入口12a側に入口側遮蔽部材14が、搬出口12b側に出口側遮蔽部材15がそれぞれ一体に組み付けられている。搬入口12a及び搬出口12bは、X線区画12xから外部にX線が揺曳し得る経路であるためである。入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15は、搬入口12a及び搬出口12bにおける物品Wの搬送移動を許容しつつ、搬入口12a及び搬出口12bを都度閉状態として外部に向かうX線を遮蔽する。
【0022】
[入口側遮蔽部材の構成]
入口側遮蔽部材14は、X線を遮蔽可能とする例えば鉄系の金属材料から作製されている。入口側遮蔽部材14は、例えば金属製の矩形板材を用い、矩形の第1方向の一方側端部が直角に折り曲げられて作製されている。
【0023】
すなわち、図2に示すように、入口側遮蔽部材14は、側方視でL字状をなしており、それぞれ矩形状をなす平板部14aと折曲部14bとを有している。入口側遮蔽部材14は、折曲部14bを有する基端部側が搬送装置13の搬送方向上流側に、先端部側が搬送方向下流側にそれぞれ向くようにして配置されている。また、入口側遮蔽部材14は、折曲部14bが搬入口12aの近傍に位置するように配置されている。折曲部14b及び平板部14aを有する入口側遮蔽部材14は、上記矩形の第1方向と直交する第2方向、この場合搬送直交方向の幅が搬入口12a(又は搬出口12b)と略同等に設定されている。
【0024】
入口側遮蔽部材14は、平板部14aにおける搬送方向の略中間部に軸部14cを有している。軸部14cは、平板部14aにおける搬送直交方向の両側に対で設けられている。入口側遮蔽部材14は、搬送装置13に対して一対の軸部14cにて支持されている。軸部14cによる入口側遮蔽部材14の支持位置は、搬送装置13の搬送面13aより若干下側の搬送面13aの近傍に設定されている。また、入口側遮蔽部材14は、一対の軸部14cにて搬送装置13に対して揺動可能となっている。
【0025】
すなわち、入口側遮蔽部材14は、軸部14cを支点に自身が揺動すると、先端部側と基端部側とが交互に上下方向に変位する。無負荷状態での入口側遮蔽部材14は、折曲部14bを含む軸部14cよりも基端部側が搬送面13aよりも下側に収納され、また軸部14cよりも先端部側が搬送面13aよりも上側に突出する。入口側遮蔽部材14は、自身の先端部が搬送方向下流側の斜め上方に向いて平板部14aが傾斜する姿勢であり、自身の揺動過程における一方側の揺動端位置である。換言すると、入口側遮蔽部材14は、一方側の揺動端位置に維持されるような支持態様となっている。一方側の揺動端位置における入口側遮蔽部材14の先端部側の搬送面13aからの突出高さは、搬入口12aの高さよりも十分に高く設定されている。
【0026】
一方、物品Wが入口側遮蔽部材14の先端部側に載置されると、物品Wの自重の作用にて、軸部14cよりも先端部側が下方に変位する。やがて、軸部14cよりも先端部側が搬送面13aよりも下側に収納される他方側の揺動端位置となる。この場合、入口側遮蔽部材14は、平板部14aの全体が搬送面13aよりも下側に位置し、平板部14aの板面が搬送面13aに沿うような略水平状態となる。またこの場合、折曲部14bは、その全体が搬送面13aよりも上側に突出する。折曲部14bの先端部は、略鉛直上方向に向く姿勢となる。他方側の揺動端位置における入口側遮蔽部材14の折曲部14bの搬送面13aからの突出高さは、搬入口12aの高さよりも十分に高く設定されている。
【0027】
本実施形態の入口側遮蔽部材14は、折曲部14bが第1遮蔽部14xとして機能し、軸部14cから先端側部位が第2遮蔽部14yとして機能する。無負荷状態で一方側の揺動端位置にある入口側遮蔽部材14は、折曲部14bである第1遮蔽部14xが搬送面13aの下側に収納されている。つまり、第1遮蔽部14xの位置する搬送面13a上の物品Wの搬送移動が許容されている。またこの場合、入口側遮蔽部材14の軸部14cよりも先端側部位である第2遮蔽部14yの先端部が搬送方向視で搬入口12aよりも高い位置にあり、第2遮蔽部14yが搬入口12aを閉状態としている。入口側遮蔽部材14が他方側の揺動端位置まで変位すると、第2遮蔽部14yが搬送面13aの下側に収納される。つまり、第2遮蔽部14yの位置する搬送面13a上の物品Wの搬送移動が許容される。またこの場合、第1遮蔽部14xの先端部が搬送方向視で搬入口12aよりも高い位置にあり、第1遮蔽部14xが搬入口12aを閉状態とする。
【0028】
更に、入口側遮蔽部材14の揺動動作途中において、第1遮蔽部14xと第2遮蔽部14yとが同じ高さとなる揺動位置がある(図3参照)。この場合でも、第1及び第2遮蔽部14x,14yの先端部がともに搬送方向視で搬入口12aよりも若干高い位置となるような設定となっている。つまり、入口側遮蔽部材14は、自身の揺動範囲内のいずれの位置であっても、第1及び第2遮蔽部14x,14yの少なくとも一方側が搬入口12aを閉状態とするようになっている。換言すると、入口側遮蔽部材14の形状及び搬送装置13に対する支持態様等がそのように設定されている。
【0029】
[出口側遮蔽部材の構成]
出口側遮蔽部材15は、入口側遮蔽部材14と同一材料及び同一形状にて構成されている。図2に示すように、出口側遮蔽部材15は、入口側遮蔽部材14と同様に、平板部15a、折曲部15b及び軸部15cを有している。
【0030】
出口側遮蔽部材15は、折曲部15bを有する基端部側が搬送装置13の搬送方向上流側に、先端部側が搬送方向下流側にそれぞれ向くようにして配置されている。出口側遮蔽部材15は、軸部15cにて搬送装置13に揺動可能に支持されるが、搬送装置13に対する組み付け位置が上記した搬入口12a寄りの入口側遮蔽部材14とは異なり搬出口12b寄りである。出口側遮蔽部材15は、先端部側が搬出口12bの近傍に位置するように配置されている。出口側遮蔽部材15は、搬送直交方向の幅が搬出口12b(又は搬入口12a)と略同等に設定されている。
【0031】
本実施形態の出口側遮蔽部材15についても、折曲部15bが第1遮蔽部15xとして機能し、軸部15cから先端側部位が第2遮蔽部15yとして機能する。無負荷状態で一方側の揺動端位置にある出口側遮蔽部材15は、第1遮蔽部15xが搬送面13aの下側に収納されている。つまり、第1遮蔽部15xの位置する搬送面13a上の物品Wの搬送移動が許容されている。またこの場合、第2遮蔽部15yの先端部が搬送方向視で搬出口12bよりも高い位置にあり、第2遮蔽部15yが搬出口12bを閉状態としている。出口側遮蔽部材15が他方側の揺動端位置まで変位すると、第2遮蔽部15yが搬送面13aの下側に収納される。つまり、第2遮蔽部15yの位置する搬送面13a上の物品Wの搬送移動が許容される。またこの場合、第1遮蔽部15xの先端部が搬送方向視で搬出口12bよりも高い位置にあり、第1遮蔽部15xが搬出口12bを閉状態とする。
【0032】
更に、出口側遮蔽部材15の揺動動作途中において、第1及び第2遮蔽部15x,15yが同じ高さとなる揺動位置があり、この場合でも第1及び第2遮蔽部15x,15yの先端部がともに搬送方向視で搬出口12bよりも若干高い位置となる設定である。つまり、出口側遮蔽部材15は、自身の揺動範囲内のいずれの位置であっても、第1及び第2遮蔽部15x,15yの少なくとも一方側が搬出口12bを閉状態とする。換言すると、出口側遮蔽部材15についても自身の形状及び搬送装置13に対する支持態様等がそのような設定となっている。
【0033】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、電子線照射装置10による照射対象への照射は、電子線eの照射対象である物品Wを搬送装置13の搬送面13aに載置した状態で搬送させながら行われる。初期状態として、入口側遮蔽部材14の第1遮蔽部14xは搬送面13aより下側に収納された状態、第2遮蔽部14yは搬送面13aから最も突出した状態である。遮蔽室12の搬入口12aは、突出状態の第2遮蔽部14yにて閉状態である。また、出口側遮蔽部材15についても同様に、第1遮蔽部15xは搬送面13aより下側に収納された状態、第2遮蔽部15yは搬送面13aから最も突出した状態である。搬入口12aは、突出状態の第2遮蔽部15yにて閉状態である。つまり、遮蔽室12内のX線区画12xから外部に搬入口12a及び搬出口12bを介してのX線の揺曳が抑止された状態である。
【0034】
搬送装置13の動作により物品Wが搬入口12aから搬入されると、入口側遮蔽部材14の第1遮蔽部14xの位置する搬送面13a上を通過した後(図2参照)、第2遮蔽部14yである入口側遮蔽部材14の平板部14aの先端側部位に到達する。物品Wが入口側遮蔽部材14の平板部14aの先端側部位に載ると(図3参照)、物品Wの自重の作用にて入口側遮蔽部材14の揺動、すなわち入口側遮蔽部材14の先端部の下方への変位、同時に基端部の上方への変位が生じる。第2遮蔽部14yの下方への変位にて搬入口12aが上側から開状態に変化しようとするのと同時に、第1遮蔽部14xの上方への変位にて搬入口12aが下側から閉状態に変化しようとする。入口側遮蔽部材14の揺動過程で第1及び第2遮蔽部14x,14yが同じ高さとなるのを境に、搬入口12aが主として第2遮蔽部14yによる閉状態から、主として第1遮蔽部14xによる閉状態に切り替わる。このような切り替わりが生じても、搬入口12aの閉状態は常に維持されている。
【0035】
物品Wの搬送が停止することなく更に進み、搬入口12aが入口側遮蔽部材14の第1遮蔽部14xにて閉状態となるとともに、入口側遮蔽部材14の第2遮蔽部14yが搬送面13aより下側に収納される(図4参照)。物品Wは、入口側遮蔽部材14の第2遮蔽部14yの位置する搬送面13a上を通過する。物品Wが第2遮蔽部14yを通過した後では、入口側遮蔽部材14に対する物品Wの自重作用が無くなるため、入口側遮蔽部材14は、第1遮蔽部14xが搬送面13aより下側に収納、第2遮蔽部14yが突出する元の揺動端位置に戻る(図5参照)。この場合の入口側遮蔽部材14の揺動過程においても、第1遮蔽部14xの下方への変位にて搬入口12aが上側から開状態に変化しようとし、また第2遮蔽部14yの上方への変位にて搬入口12aが下側から閉状態に変化しようとする。第1及び第2遮蔽部14x,14yの少なくとも一方側による搬入口12aの閉状態が維持される。
【0036】
物品Wが電子線生成部11の下方位置まで進むと、電子線生成部11から出射される電子線eの照射を受ける(図1参照)。物品Wは、搬送されながら電子線eの照射が行われる。物品Wは、素材の性質改善、機能付加、殺菌滅菌等の照射効果を取得する。電子線eの照射を受けた物品Wは、搬送面13a上を更に下流側に向けて搬送される。
【0037】
物品Wが出口側遮蔽部材15の第1遮蔽部15xの位置する搬送面13a上を通過した後、第2遮蔽部15yである出口側遮蔽部材15の平板部15aの先端側部位に到達すると、それ以降は入口側遮蔽部材14と同様の動作が行われる(図2図5参照)。物品Wの自重の作用により、出口側遮蔽部材15の第2遮蔽部15yの下方への変位にて搬出口12bが上側から開状態に変化しようとし、また第1遮蔽部15xの上方への変位にて搬出口12bが下側から閉状態に変化しようとする。第1及び第2遮蔽部15x,15yの少なくとも一方側による搬出口12bの閉状態が維持される。また、物品Wの第2遮蔽部15yの通過後においても同様に、出口側遮蔽部材15の元の揺動端位置に戻る過程でも第1及び第2遮蔽部15x,15yの少なくとも一方側による搬出口12bの閉状態が維持される。そして、電子線eの照射を受けた物品Wは、搬出口12bから搬出されて取り出し可能な状態となる。
【0038】
上記では1つの物品Wに着目した動作であったが、搬送装置13による物品Wの搬送は順次行われ、物品Wに対する電子線eの照射が連続的に行われる。その際、入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15は、物品Wの連続的な搬送移動を許容しつつも搬入口12a及び搬出口12bの閉状態を常に維持し、外部へのX線の漏洩を抑止している。このように本実施形態の電子線照射装置10では、X線の外部への漏洩を抑止しつつ効率的な搬送及び電子線照射を行うことが可能となっている。
【0039】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の搬送装置13に用いられる入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15には、それぞれ第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yが一体的に設けられる。各遮蔽部材14,15に設けられた第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yは、それぞれ物品Wの搬送移動に合わせて交互に動作する。第1遮蔽部14x,15xにおいて物品Wの搬送移動を許容する状態では、第2遮蔽部14y,15yがX線区画12xの搬入口12a及び搬出口12bをそれぞれ閉状態とする。第2遮蔽部14y,15yにおいて物品Wの搬送移動を許容する状態では、第1遮蔽部14x,15xが搬入口12a及び搬出口12bをそれぞれ閉状態とする。更にその動作過程においても、第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yの少なくとも一方側による搬入口12a及び搬出口12bの閉状態はそれぞれ維持される。
【0040】
つまり、各遮蔽部材14,15の第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yの連動した動作により、搬入口12a及び搬出口12bの閉状態を常に維持して外部へのX線の漏洩を抑止しつつも物品Wの搬送を効率的に行うことができる。また、本実施形態では搬入口12a及び搬出口12bの両方への適用であり、両方において効果を得ることができる。物品Wの搬送が効率的となることにより、物品Wの搬送に係る時間の短縮、ひいては物品Wの電子線eの照射に係る時間の短縮を十分に図ることができる。また、各遮蔽部材14,15にそれぞれ第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yを一体的に設ける構成としたため、搬送装置13の構成、ひいては電子線照射装置10の簡素化を十分に図ることができる。
【0041】
(2)入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15は、少なくとも第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yにおいてX線の遮蔽可能な板状部材、本実施形態ではX線の遮蔽可能な単一の金属製板材を用いてそれぞれ作製される。各遮蔽部材14,15は、第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yの上記交互の動作を行うべく搬送装置13に対して揺動可能にそれぞれ支持される。つまり、本実施形態のように、各遮蔽部材14,15に係る構成を簡素な構成にて実現することができる。また、各遮蔽部材14,15をそれぞれ単一の金属製板材にて容易に作製することができる。
【0042】
(3)入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15は、初期状態では第1遮蔽部14x,15xが搬送面13aの下側にそれぞれ収納され、第2遮蔽部14y,15yが搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にてそれぞれ突出する。搬送移動にて物品Wが第2遮蔽部14y,15yにそれぞれ載置されると、物品Wの自重にて第2遮蔽部14y,15yが搬送面13aの下側にそれぞれ収納され、第1遮蔽部14x,15xが搬送面13aからそれぞれ突出する。
【0043】
つまり、搬送移動する物品Wの自重を利用して各遮蔽部材14,15の上記揺動動作が行われるため、本実施形態のように各遮蔽部材14,15に係る構成を簡素な構成にて実現することができる。また、物品Wの載置される第2遮蔽部14y,15yは、搬送方向下流側の斜め上方に向く傾斜姿勢にてそれぞれ待機するため、搬送されてくる物品Wの載置からその後の各遮蔽部材14,15の揺動に繋がる一連の動作を円滑に行わせることができる。
【0044】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・各遮蔽部材14,15に対して自身の揺動動作を補助するための補助部材をそれぞれ装着可能に構成してもよい。
例えば図6に示すように、補助部材の一例としては、各遮蔽部材14,15を初期状態に戻し易くする付勢部材16である。付勢部材16を用いることで、各遮蔽部材14,15が初期状態に保持されるようになる。また、揺動動作した各遮蔽部材14,15が速やかに初期状態に復帰するようになる。
【0046】
また、補助部材の別の例としては、各遮蔽部材14,15の揺動を生じ易くする調整錘17である。調整錘17を用いることで、各遮蔽部材14,15の揺動が速やかに行われるようになる。各遮蔽部材14,15の揺動動作に物品Wの自重を用いる態様においては、特に効果が期待できる。
【0047】
・各遮蔽部材14,15をX線の遮蔽可能な単一の金属製板材を用いてそれぞれ作製したが、少なくとも第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yを他の部位よりもX線の遮蔽効果が高くなるように構成してもよい。
【0048】
例えば図7に示すように、各遮蔽部材14,15の他の部位に例えば鉄、ステンレス等が用いられる一方で、第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yに鉛等のX線の遮蔽効果の高い遮蔽金属18を一体的に設けてもよい。
【0049】
・各遮蔽部材14,15を物品Wにて直接的に揺動させる構成としたが、搬送される物品Wにて間接的に揺動する構成としてもよい。
・各遮蔽部材14,15を上下方向に揺動させる構成としたが、例えば水平方向に揺動する構成としてもよい。
【0050】
・各遮蔽部材14,15は矩形状の板状部材をL字状に折り曲げて作製されたものであったが、形状及び製法はこれに限らない。例えば、第1遮蔽部14x,15x及び第2遮蔽部14y,15yは搬入口12a及び搬出口12bを閉状態とするために搬送方向視の形状に合わせるのが好ましいが、これ以外の部位として平板部14a,15aの基端側部位の形状は適宜変更可能である。平板部14a,15aの基端側部位は常に搬送面13aの下側に位置するため、例えば物品Wの搬送を優先する形状を採用してもよい。
【0051】
・搬送装置13を例えばローラコンベアとしたが、ベルトコンベア、ホイールコンベア等の他の構成のものを用いてもよい。
・搬入口12a及び搬出口12bの両方への適用であったが、片方だけでも効果が期待できる。すなわち、入口側遮蔽部材14及び出口側遮蔽部材15の片方だけを用いてもよい。
【0052】
・電子線照射装置10の搬送装置13に適用したが、X線検査装置等、X線区画を有するその他の装置に併用される搬送装置に適用してもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0053】
(イ)遮蔽部材は、X線の遮蔽可能な単一の金属製板材を用いて作製されている、搬送装置。
(ロ)遮蔽部材は、第1及び第2遮蔽部が他の部位よりもX線の遮蔽効果が高く構成されている、搬送装置。
【符号の説明】
【0054】
e …電子線
W …物品
10 …電子線照射装置
12a…搬入口
12b…搬出口
12x…X線区画
13 …搬送装置
13a…搬送面
14 …入口側遮蔽部材(遮蔽部材)
14x…第1遮蔽部
14y…第2遮蔽部
15 …出口側遮蔽部材(遮蔽部材)
15x…第1遮蔽部
15y…第2遮蔽部
16 …付勢部材(補助部材)
17 …調整錘(補助部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7