(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042260
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】外壁取付金具、外壁取付構造、及び外壁取付構造の施工方法。
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
E04F13/08 101Q
E04F13/08 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149469
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110664
【氏名又は名称】ナンカイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一也
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 克己
(72)【発明者】
【氏名】枩林 邦生
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB27
2E110BC09
2E110BC14
2E110CA09
2E110CC04
2E110CC14
2E110CC17
2E110DA08
2E110DC03
2E110DC12
2E110GA33W
2E110GB02Z
2E110GB23W
(57)【要約】
【課題】 1人作業を可能とし作業性を高めることができる外壁取付金具、外壁取付構造、及び外壁取付構造の施工方法を提供する。
【解決手段】外壁取付金具1は、鉛直部40と水平部41とを有する断面L字に形成された外壁材4を、少なくとも下端に水平な平板状の下フランジ部30を有する梁3に固定する外壁取付金物1であって、外壁材4の鉛直部40の屋内側の面に固定される鉛直な平板状の第一板部10と、前記第一板部10の下端から水平に延び、前記下フランジ部30の下面に当接して固定される第二板部11と、前記第一板部10から水平に延び、前記下フランジ部30の上面に当接する係止腕部12と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直部と水平部とを有する断面L字に形成された外壁材を、少なくとも下端に水平な平板状の下フランジ部を有する梁に固定する外壁取付金物であって、
外壁材の鉛直部の屋内側の面に固定される鉛直な平板状の第一板部と、
前記第一板部の下端から水平に延び、前記下フランジ部の下面に当接して固定される第二板部と、
前記第一板部から水平に延び、前記下フランジ部の上面に当接する係止腕部と、
を備えることを特徴とする外壁取付金具。
【請求項2】
下端に下フランジ部が設けられる梁と、
鉛直部と水平部とを有するL字に形成され、前記鉛直部の裏面に沿って水平方向にC形鋼の溝部が形成された外壁材と、
請求項1に記載の外壁取付金具と、
を備えることを特徴とする外壁取付構造。
【請求項3】
前記溝部内に収納され、ネジ孔を有する取付プレートと、
前記第一板部に形成される取付孔に挿入されるとともに、前記ネジ孔に螺着して、前記外壁材に前記外壁取付金具を取り付ける取付ボルトと、をさらに備え、
前記取付孔は鉛直方向に長い長孔であることを特徴とする請求項2に記載の外壁取付構造。
【請求項4】
前記取付ボルトは、極低頭ボルトであることを特徴とする請求項3に記載の外壁取付構造。
【請求項5】
前記梁の下フランジ部に固定ボルトが挿入される固定孔が形成されるとともに、前記第二板部に、前記固定ボルトが挿入される挿入孔が形成されており、
前記挿入孔は、前記第二板部の延出方向に長い長孔であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の外壁取付構造。
【請求項6】
前記固定ボルトは、下方から前記挿入孔及び前記固定孔に挿入されて、前記下フランジ部の上側でナットが締結されることを特徴とする請求項5に記載の外壁取付構造。
【請求項7】
前記外壁材の水平部は、上側に前記下フランジ部の一部が重なるように前記鉛直部の下端から突出して形成されており、
前記固定孔は、前記水平部が重ならない位置の前記下フランジ部に形成されており、
前記第二板部は、前記下フランジ部よりも水平方向に延びて、前記固定孔と重なる位置に挿入孔が形成されることを特徴とする請求項6に記載の外壁取付構造。
【請求項8】
前記梁は、H形鋼の下面に上下逆向きのT字に形成された形鋼を固定して形成される補強梁であることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の外壁取付構造。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれかに記載の外壁取付構造の施工方法であって、
前記外壁材の前記鉛直部の屋内側の面に前記外壁取付金具の前記第一板部を取り付ける工程と、
前記外壁材が取り付けられた前記外壁取付金具の前記係止腕部と前記第二板部とで、前記梁の前記下フランジ部を挟み込んで保持する工程と、
前記下フランジ部と前記第二板部とを固定する工程と、
を備えることを特徴とする外壁取付構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁に断面L字に形成された外壁材を固定する外壁取付金物、当該外壁取付金物を用いた外壁取付構造、及び当該外壁取付構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁材に固定したアングル状の外壁取付金具を梁や柱などの建物の躯体に固定して、外壁材を建物躯体に取り付ける外壁取付構造が知られている(特許文献1から特許文献3参照)。このような外壁取付構造は、具体的には例えば、外壁材の裏面に形成された枠状又はレール状の鋼材に外壁取付金具の一方の取付面を当接させてボルト及びナットで固定するとともに、建物の躯体に水平板状に形成された取付部に、外壁取付金具の他方の取付面を当接させてボルト及びナットで固定する。
【0003】
このような外壁取付構造の中には、例えば特許文献1に記載されているように、外壁取付金具の一方の取付面にはボルトを挿入する鉛直な長孔が形成され、外壁取付金具の他方の取付面にはボルトを挿入する水平な長孔が形成されることで、外壁材の不陸やレベルの調整を行うことができるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-311847号公報
【特許文献2】特開平6-185149号公報
【特許文献3】特開平10-169058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような外壁取付構造を施工する際には、外壁材を所望の位置に保持しつつ、ボルト及びナットを締め付ける作業が必要であり、少なくとも外壁材を保持する者と、ボルト及びナットを締め付ける者の2人以上の作業者が必要となる。また、不陸やレベルを調整する際にも同様に外壁を保持する者と、ボルト及びナットを緩める作業や再度締め付ける作業に2人以上の作業者が必要となる。
【0006】
本発明は、1人作業を可能とし作業性を高めることができる外壁取付金具、外壁取付構造、及び外壁取付構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の外壁取付金具は、鉛直部と水平部とを有する断面L字に形成された外壁材を、少なくとも下端に水平な平板状の下フランジ部を有する梁に固定する外壁取付金物であって、外壁材の鉛直部の屋内側の面に固定される鉛直な平板状の第一板部と、前記第一板部の下端から水平に延び、前記フランジ部の下面に当接して固定される第二板部と、前記第一板部から水平に延び、前記下フランジ部の上面に当接する係止腕部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の外壁取付構造は、下端に下フランジ部が設けられる梁と、鉛直部と水平部とを有するL字に形成され、前記鉛直部の裏面に沿って水平方向にC形鋼の溝部が形成された外壁材と、上記の外壁取付金具と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の外壁取付構造は、前記溝部内に収納され、ネジ孔を有する取付プレートと、前記第一板部に形成される取付孔に挿入されるとともに、前記ネジ孔に螺着して、前記外壁材に前記外壁取付金具を取り付ける取付ボルトと、をさらに備え、前記取付孔は鉛直方向に長い長孔であることを特徴としている。
【0010】
本発明の外壁取付構造は、前記取付ボルトは、極低頭ボルトであることを特徴としている。
【0011】
本発明の外壁取付構造は、前記梁の下フランジ部に固定ボルトが挿入される固定孔が形成されるとともに、前記第二板部に、前記固定ボルトが挿入される挿入孔が形成されており、前記挿入孔は、前記第二板部の延出方向に長い長孔であることを特徴としている。
【0012】
本発明の外壁取付構造は、前記固定ボルトは、下方から前記挿入孔及び前記固定孔に挿入されて、前記下フランジ部の上側でナットが締結されることを特徴としている。
【0013】
本発明の外壁取付構造は、前記外壁材の水平部は、上側に前記下フランジ部の一部が重なるように前記鉛直部の下端から突出して形成されており、前記固定孔は、前記水平部が重ならない位置の前記下フランジ部に形成されており、前記第二板部は、前記下フランジ部よりも水平方向に延びて、前記固定孔と重なる位置に挿入孔が形成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の外壁取付構造は、前記梁は、H形鋼の下面に上下逆向きのT字に形成された形鋼を固定して形成される補強梁であることを特徴としている。
【0015】
本発明の外壁取付構造の施工方法は、上記のいずれかの外壁取付構造の施工方法であって、前記外壁材の鉛直部の屋内側の面に前記外壁取付金具の第一板部を取り付ける工程と、前記外壁材が取り付けられた前記外壁取付金具の前記係止腕部と前記第二板部とで、前記梁の前記下フランジ部を挟み込んで保持する工程と、前記下フランジ部と前記第二板部とを固定する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の外壁取付金具によると、断面L字の外壁材の鉛直部の屋内側の面に第一板部が固定された状態で、梁の下フランジ部の上面に係止腕部が当接し、当該下フランジ部の下面に第二板部が当接するので、下フランジ部を係止腕部と第二板部とで挟み込んで保持することができる。したがって、外壁材が第一板部に固定された状態で、外壁取付金具を下フランジ部に仮置きすることができ、外壁材を固定すべき位置に持ち上げながら、第二板部と下フランジ部とを固定する必要がないので、外壁材を梁に取り付ける作業を一人で行うことができる。また第二板部と下フランジ部とを固定する前に仮置きするので、外壁材の位置を調整する作業を容易なものとすることができる。
【0017】
本発明の外壁取付構造によると、下端に下フランジ部が設けられる梁と、鉛直部と水平部とを有するL字に形成され、鉛直部の裏面に沿って水平方向にC形鋼の溝部が形成された外壁材と、上記の外壁取付金具と、を備えるので、外壁材が第一板部に固定された状態で、下フランジ部を係止腕部と第二板部とで挟みこむことで、外壁取付金具を下フランジ部に仮置きすることができ、外壁材を梁に取り付ける作業を安全に一人で行うことができる。また仮置きすることで、外壁材の位置を調整する作業を容易なものとすることができる。
【0018】
本発明の外壁取付構造によると、外壁材の鉛直部の裏面に形成される溝部内に取付プレートが収納され、外壁取付金具の第一板部に形成される取付孔に挿入される取付ボルトが取付プレートのネジ孔に螺着して、外壁材に外壁取付金具が固定されており、取付ボルトが挿入される取付孔が鉛直方向に長い長孔であるので、外壁材の外壁取付金具に対する位置を上下に調整することができ、梁に取り付けられた外壁材の上下方向の位置を調整することができる。
【0019】
本発明の外壁取付構造によると、前述の通り取付孔が鉛直方向に長い長孔であることから取付ボルトは取付孔の範囲で外壁取付金具に対する位置を上下に移動可能となっており、取付ボルトのボルト頭が梁等と干渉する可能性が生じるが、取付ボルトが極低頭ボルトであるので当該干渉を抑制することができる。
【0020】
本発明の外壁取付構造によると、梁の下フランジ部に形成される固定孔と、外壁取付金具の第二板部に形成される挿入孔とに、固定ボルトを挿入することで、梁と外壁取付金具とが固定されるものであり、挿入孔は第二板部の延出方向に長い長孔であるので、梁に対して、外壁取付金具及び当該外壁取付金具に固定されている外壁材を移動させることができ、外壁材の不陸を調整することができる。
【0021】
本発明の外壁取付構造によると、固定ボルトは、下方から挿入孔及び固定孔に挿入されて、下フランジ部の上側でナットが締結されるものであるので、固定ボルトの下方にはボルト頭のみが形成されることとなるので、固定ボルトが大きく下方に突出することがなく、外壁材の水平部や軒裏の野縁等の部材が固定ボルトと干渉することを抑制できる。
【0022】
本発明の外壁取付構造によると、外壁材の水平部は、上側に下フランジ部の一部が重なるように鉛直部の下端から突出して形成されており、下フランジ部に形成される固定孔は、水平部が重ならない位置に形成されており、第二板部は下フランジ部よりも水平方向に延びて、固定孔と重なる位置に挿入孔が形成されているので、固定ボルトを挿入して、外壁材が固定された外壁取付金具と梁とを固定する際に、外壁材の水平部が邪魔になることがないので、梁への固定作業を比較的簡単なものとすることができる。
【0023】
本発明の外壁取付構造によると、梁は、H形鋼の下面に上下逆向きのT字に形成された形鋼を固定して形成される補強梁であるので、単なるH形鋼の梁の場合に比べて作業者が腕や工具等を挿入するスペースが小さいが、仮置きして下方から固定する構成であるので比較的容易に外壁材を工程する作業を行うことができる。
【0024】
本発明の外壁取付構造の施工方法によると、外壁材の鉛直部の屋内側の面に外壁取付金具の第一板部を取り付ける工程と、外壁材が取り付けられた外壁取付金具の係止腕部と第二板部とで、梁の下フランジ部を挟み込んで保持する工程と、下フランジ部と前記第二板部とを固定する工程と、を備えるので、作業者が一人で比較的容易に外壁取付構造の施工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】外壁取付金具の全体構造を示す別の角度から見た斜視図。
【
図4】外壁材に外壁取付金具を取り付ける工程を示す図。
【
図5】外壁材の外壁取付金具に対する高さ方向の位置を調整する工程を示す図。
【
図6】外壁取付金具を取り付けた外壁材を梁の下フランジ部に仮置きする工程を示す図。
【
図8】野縁及び軒裏板材を取り付ける状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る外壁取付金具1、外壁取付構造2、及び外壁取付構造の施工方法について各図を参照しつつ説明する。本実施形態の外壁取付構造2が配置される建物は、例えば鉄骨造の住宅である。本発明における外壁取付構造2が設けられる建物は住宅に限定されるものではなく、居住性・非居住性を問わず様々な施設に用いることができる。本実施形態における外壁取付構造2は、図示しない開口部の屋外側の上縁に形成されるまぐさ部に配置される梁3に外壁取付金具1を介して外壁材4を固定する構造である。
【0027】
梁3は、
図3に示すように、上下のフランジをウェブで繋いで形成されているH形鋼の下面に上下逆向きのT字に形成された形鋼が固定され、平行に上下3段のフランジが幅方向の中央に設けられたウェブによって繋がって形成された形状の補強梁である。梁3の3段のフランジのうち、最も下側の下フランジ部30に外壁取付金具1は固定される。本発明の外壁取付構造2における梁3の形状は、上述の補強梁に限定されるものではないが、少なくとも梁3の最下端には下フランジ部30が形成されている。
【0028】
外壁材4は、鉛直部40と鉛直部40の下端から屋内側に延びる水平部41とを有する断面L字に形成された例えばコンクリート製の板材である。外壁材4の鉛直部40の裏面には水平方向に延びるC形鋼が埋設されて溝部42を形成している。外壁材4の鉛直部40の屋外側の面には、図示しないが凹凸模様が形成されている。
【0029】
外壁取付金具1は、
図1から
図3に示すように、鋼板を折り曲げて形成されるものであって、鉛直に形成された平板状の第一板部10と、第一板部10の下端から水平に折り曲げて延びる第二板部11と、第一板部10の左右の側端からそれぞれ水平に折り曲げて延びる2つの係止腕部12と、を備える。第一板部10は、外壁材4の鉛直部40の屋内側の面に固定される矩形の平板状である。第一板部10には、外壁取付金具1を外壁材4の溝部42に固定するための取付孔13が形成されている。取付孔13は、第一板部10の幅方向の中心線に沿って形成される鉛直方向に長い長孔である。取付孔13は取付ボルト14のネジ部を挿入可能であるとともに、取付ボルト14の頭部が挿入不能となっている。取付プレート15は、平板上に形成され、中央に取付ボルト14のネジ部が螺着可能なネジ孔16を有している。取付ボルト14は極低頭ボルトである。極低頭ボルトの頭部の高さは、例えば1.5mm以下であり、外壁材4及び外壁取付金具1の必要な接合強度を備える範囲で、より低いほうが好ましい。
【0030】
第二板部11は、第一板部10の下端から水平に延びて、梁3の下フランジ部30の下面に当接し、固定される。第二板部11の第一板部10の下端からの延出長さは、梁3の下フランジ部30の幅よりも僅かに長く、第二板部11は下フランジ部30の外壁材4から離反する端縁にまで延びている。第二板部11は、外壁材4の水平部41の突出長さよりも長く屋内側に延出しており、第二板部11の先端は外壁の水平部41から突き出すように形成されている。第二板部11は、固定ボルト17をを挿入可能な挿入孔18が形成されており、固定ボルト17は下から挿入孔18に挿入され、さらに、梁3の下フランジ部30に形成された固定孔19に挿入されてナット20を締め付けることで、下フランジ部30に第二板部11を固定する。固定孔19は下フランジ部30の外壁材4から離反する位置に形成されており、挿入孔18は、第二板部11の固定孔19と重なる位置に形成されている。挿入孔18が形成される位置は、第二板部11が外壁材4の水平部41から突き出した位置であり、外壁材4の水平部41が邪魔になることなく、下フランジ部30に外壁取付金具1を固定することができる。梁3の下フランジ部30に形成された固定孔19は、固定ボルト17のネジ部の呼び径よりも僅かに大きい貫通孔であり、第二板部11に形成された挿入孔18は、第二板部11の延出方向に長い長孔である。挿入孔18が長孔であることで、挿入孔18に固定ボルト17を挿入した状態で外壁取付金具1を挿入孔18の長さ方向に沿って移動させることができ、外壁材4の鉛直部40の不陸を調整することができる。
【0031】
係止腕部12は、第一板部10の両側縁からそれぞれ第二板部11の上方に水平に延びて形成されている。係止腕部12は第二板部11と平行であり、第二板部11との間に下フランジ部30の厚さと略等しい間隙を形成している。梁3を外壁取付金具1の係止腕部12及び第二板部11で挟んで配置することで、外壁取付金具1は梁3に仮置きすることができ、外壁取付金具1に固定されている外壁材4も仮に配置することができる。このように、外壁材4を第一板部10に固定して、外壁取付金具1を下フランジ部30に仮置きすることで、外壁材4を固定すべき位置に持ち上げる作業を行った後に、固定ボルト17で第二板部11と下フランジ部30とを固定する作業を行うことができ、外壁材4を梁3に取り付ける作業を一人で行うことができる。また第二板部11と下フランジ部30とを固定する前に仮置きするので、外壁材4の位置を調整する作業を容易なものとすることができる。
【0032】
外壁材4の鉛直部40の上側には、
図3に示すように、建物の躯体に固定される上部外壁材5が外壁材4の上端から目地幅を開けて配置されており、バックアップ材21及び目地材22が充填されて水平目地を形成している。また、外壁材4の水平部41の屋内側には、野縁23が設けられ、軒裏板材24が敷設されている。軒裏板材24の端縁と外壁材4の水平部41との間には、隙間が形成されており、軒裏見切材25が設けられている。
【0033】
以上のような外壁取付構造を施工する外壁取付構造の施工方法は、まず、
図4に示すように、外壁材4に外壁取付金具1を取り付ける工程を行う。具体的には、まず、外壁材4の鉛直部40の屋内側の面に形成されている溝部42内に取付プレート15を挿入する。取付プレート15は短辺の長さが溝部42のリップ間の開口よりも短く形成され、長辺がリップ間の開口よりも長く形成されている。したがって、取付プレート15の短辺が溝部42の開口の幅方向を向くようにして、取付プレート15を開口から溝部42に挿入した後、当該取付プレート15を90度回転させることで、溝部42内に収納させる。そして、外壁取付金具1の第一板部10を溝部42のリップに当接させて、取付ボルト14を第一板部10に形成される取付孔13に挿入し、取付プレート15のネジ孔16に螺着させて、更に取付ボルト14を締め付けることで、溝部42のリップを取付プレート15及び第一板部10で挟み込んで、外壁取付金具1を外壁材4に取り付ける。外壁材4を外壁取付金具1に取り付けると、外壁取付金具1の第二板部11は、外壁材4の水平部41よりも長く延びて形成されており、第二板部11の挿入孔18が外壁材4の水平部41と重ならない位置に配置される。
【0034】
そして、
図6に示すように、外壁取付金具1が取り付けられた外壁材4を当該外壁材4が配置される位置に持ち上げて、外壁取付金具1の係止腕部12と第二板部11とで、梁3の下フランジ部30を挟み込むことで、外壁材4を梁3に仮置きする。次に、梁3に仮置きした状態の外壁材4の高さ位置を確認し、当該外壁材4の高さを上下に調整する必要がある場合には、一旦、外壁材4を梁3から取り外す。このとき外壁材4に取り付けられている外壁取付金具1は、係止腕部12と第二板部11とで梁3の下フランジ部30を挟み込んでいるだけなので、極めて簡単に外壁材4を梁3から取り外すことができる。その後、取付ボルト14を緩めて、取付孔13に沿って外壁取付金具1に対する外壁材4の高さ方向の位置を調整し、再び取付ボルト14を締め付けて、外壁材4に外壁取付金具1を取り付けて、再度、外壁取付金具1の係止腕部12と第二板部11とで、梁3の下フランジ部30を挟み込んで、外壁材4を梁3に仮置きする。このとき、
図5に示すように、外壁材4の高さ方向の位置を調整することで、取付ボルト14のボルト頭は、鉛直方向に長い長孔である取付孔13に沿って上下に移動することとなり当該ボルト頭と梁3の下フランジ部30とが接近するが、取付ボルト14が極低頭ボルトであるのでボルト頭と下フランジ部30とが干渉することなく、外壁材4の高さ方向の位置調整を適切に行うことができる。
【0035】
そして、
図7に示すように、外壁取付金具1の第二板部11に形成された挿入孔18に固定ボルト17を下から挿入し、さらに梁3の下フランジ部30に形成された固定孔19に固定ボルト17を挿入し、下フランジ部30の上で固定ボルト17にナット20を締め付けることで、第二板部11と下フランジ部30を連結する。固定ボルト17は下側から挿入されるので、第二板部11の下側には固定ボルト17のボルト頭のみが突き出すこととなり、上側から固定する場合のように固定ボルト17のネジ部が下方に突出することがなく、
図8に示すように、軒先の野縁23等の他の部材に干渉することを防止できる。また、外壁取付金具1は係止腕部12と第二板部11とで下フランジ部30を挟みこむことで、外壁材4及び外壁取付金具1が仮置きされているので、下側から固定ボルト17を挿入孔18及び固定孔19に挿入して固定する作業を行うときに、作業者が外壁材4及び外壁取付金具1を支える必要がなく、作業者が一人で比較的簡単に作業を行うことができる。このとき、固定ボルト17及びナット20を完全に締め付ける前に、外壁材4の鉛直部40の不陸を調整する。第二板部11に形成され固定ボルト17が挿入される挿入孔18は、長孔であり、外壁取付金具1は、係止腕部12と第二板部11とで下フランジ部30を挟み込んで仮置きされている状態であるので、外壁取付金具1を屋外方向に引き出し又は屋内方向に押し込むことで不陸を調整することができる。不陸が調整されると、固定ボルト17を十分に締め付けて外壁取付金具1と下フランジ部30とを固定して、外壁材4を梁3に固定する。
【0036】
その後、
図8に示すように、野縁23を固定し、軒裏板材24を敷設し、更に、
図3に示すように、軒裏板材24の端縁に軒裏見切材25を設置する。また、外壁材4の鉛直部40の上側には、上部外壁材5との間に形成された間隙にバックアップ材21及び目地材22を充填して水平目地を形成する。
【0037】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る外壁取付金具1、外壁取付構造2、及び外壁取付構造の施工方法は、住宅の開口部の屋外側の上縁に形成されるまぐさ部に配置される梁3に断面L字の外壁材4を取り付ける外壁取付金具1、外壁取付構造2、及び外壁取付構造の施工方法として好適である。
【符号の説明】
【0039】
1 外壁取付金具
2 外壁取付構造
3 梁
4 外壁材
10 第一板部
11 第二板部
12 係止腕部
13 取付孔
14 取付ボルト
15 取付プレート
16 ネジ孔
17 固定ボルト
18 挿入孔
19 固定孔
30 下フランジ部
40 鉛直部
41 水平部
42 溝部