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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042279
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/08 20060101AFI20230317BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20230317BHJP
   B62M 9/122 20100101ALI20230317BHJP
   B62M 9/132 20100101ALI20230317BHJP
【FI】
B62M25/08
B62J45/41
B62M9/122
B62M9/132
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149500
(22)【出願日】2021-09-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井土垣 慧
(72)【発明者】
【氏名】黒飛 忠治
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 浩司
(57)【要約】
【課題】ディレイラを好適な状態で制御できる人力駆動車用制御装置を提供する。
【解決手段】人力駆動車の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の変化に基づいて前記人力駆動車に搭載されたディレイラを制御する制御部を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の変化に基づいて前記人力駆動車に搭載されたディレイラを制御する制御部を備える、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
所定時間内の前記タイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上の場合に、前記ディレイラを第1制御状態で制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
所定時間内の前記タイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満の場合に、前記ディレイラを第2制御状態で制御する、
請求項2に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、
前記第1制御状態において前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、前記第1制御状態において前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する、
請求項3に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2制御状態において、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させることを許可する、
請求項4に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は自動変速モードを含み、
前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、
前記所定の閾値は前記第1制御状態の場合と前記第2制御状態の場合と、で、異なる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項7】
前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、
前記制御部は、
前記第1制御状態において、前記閾値を増加させる、
請求項6に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項8】
前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、
前記制御部は、
前記第2制御状態において、前記閾値を減少させる、
請求項6に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項9】
前記ディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、
前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、
前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、
前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、
前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、
前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み、
前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、
前記制御部は、
前記第1制御状態において、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する、
請求項3から8のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第2制御状態において、前記回転抵抗力が前記第2抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する、
請求項9に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項11】
前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、
前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、
前記第1制御状態において、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第1変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記第2制御状態において、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第2変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記第1変速ルートと、前記第2変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる、
請求項3から10のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項12】
前記変速テーブルは、
チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出される変速比に関する、請求項11に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項13】
前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、
前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、
前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、
変速比を大きくさせる変速順序において、前記第1変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い、
請求項12に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項14】
前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、
前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、
前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、
変速比を小さくさせる変速順序において、前記第1変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い、
請求項12、または、13に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記第1制御状態における変速比の最大値が、前記第2制御状態における変速比の最大値よりも小さくなるように、前記ディレイラを制御する、
請求項6から8、11から14のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記第1制御状態における変速比の最小値が、前記第2制御状態における変速比の最小値よりも小さくなるように、前記ディレイラを制御する、
請求項6から8、11から15のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項17】
前記ディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、
前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、
前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、
前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、
前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、
前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み、
前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、
前記制御部は、
所定時間内における前記気圧検出部によって検出された検出値の変動が所定以上の場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、
前記気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の変化に基づいて、前記人力駆動車の傾斜状態を検出した場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する、
請求項1から17のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、
前記人力駆動車の前輪のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、前記人力駆動車の後輪のタイヤの気圧が大きくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を大きく変化させることを禁止する、
請求項18に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項20】
前記制御部は、
前記人力駆動車の前輪のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、前記人力駆動車の後輪のタイヤの気圧が小さくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を小さく変化させることを禁止する、
請求項18、または、19に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項21】
前記制御部は、
前記気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の検出値に応じて、前記ディレイラを制御する、
請求項1から20のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項22】
前記制御部は自動変速モードを含み、
前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記所定の閾値を増加させる、
請求項21に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項23】
前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は、前記ケイデンスに関する値であり、
前記制御部は、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記閾値を増加させる、
請求項22に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項24】
前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させ変速比大きくすることを禁止する、
請求項21から23のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項25】
前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、
前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第3変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第4変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記第3変速ルートと、前記第4変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる、
請求項21から24のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項26】
前記変速比は、チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出され、
前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、
前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、
前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、
変速比を大きくする変速順序において、前記第3変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第4変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い、
請求項25に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項27】
前記ディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、
前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、
前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、
前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、
前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、
前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み
前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、
前記制御部は、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項28】
人力駆動車の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の検出値が基準値未満の場合において前記人力駆動車に搭載されたディレイラを第1制御状態で制御し、前記検出値が前記基準値以上の場合において前記ディレイラを前記第1制御状態とは異なる第2制御状態で制御する制御部を備える、人力駆動車用制御装置。
【請求項29】
前記制御部は自動変速モードを含み、
前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、
前記所定の閾値は前記第1制御状態の場合と前記第2制御状態の場合と、で、異なる、
請求項28に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項30】
前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、
前記制御部は、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記閾値を増加させる、
請求項29に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項31】
前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させ変速比を大きくすることを禁止する、
請求項28から30のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項32】
前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、
前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第1変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第2変速ルートで前記ディレイラを制御し、
前記第1変速ルートと、前記第2変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる、
請求項28から31のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項33】
前記変速比は、チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出され、
前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、
前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、
前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、
変速比を大きくする変速順序において、前記第1変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い、
請求項32に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項34】
前記ディレイラは、
前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、
前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、
前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、
前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、
前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、
前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み
前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、
前記制御部は、
前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する、
請求項28から33のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人力駆動車のコンポーネントを制御する人力駆動車用制御装置が知られている。例えば、特許文献1では、タイヤの気圧に基づいて路面の荒さを検知し、サスペンションやアジャスタブルシートポストを制御する人力駆動車用制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-18587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人力駆動車の快適性の向上を図る観点から、人力駆動車のタイヤの気圧の変化に基づいて、ディレイラを好適な状態で制御する技術が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、ディレイラを好適な状態で制御できる人力駆動車用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の変化に基づいて前記人力駆動車に搭載されたディレイラを制御する制御部を備える。
第1側面の電子装置によれば、人力駆動車のタイヤの気圧の変化に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【0007】
第1側面に従う第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、所定時間内の前記タイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上の場合に、前記ディレイラを第1制御状態で制御する。
第2側面の電子装置によれば、人力駆動車のタイヤの気圧の変化に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【0008】
第2側面に従う第3側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、所定時間内の前記タイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満の場合に、前記ディレイラを第2制御状態で制御する。
第3側面の電子装置によれば、人力駆動車のタイヤの気圧の変化に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【0009】
第3側面に従う第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、前記第1制御状態において前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、前記第1制御状態において前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する。
第4側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0010】
第4側面に従う第5側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させることを許可する。
第5側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0011】
第3から第5側面のいずれか一つに従う第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は自動変速モードを含み、前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、前記所定の閾値は前記第1制御状態の場合と前記第2制御状態の場合と、で、異なる。
第6側面の電子装置によれば、第1制御状態および第2制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0012】
第6側面に従う第7側面の人力駆動車用制御装置において、前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、前記制御部は、前記第1制御状態において、前記閾値を増加させる。
第7側面の電子装置によれば、ケイデンスに基づいて、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0013】
第6側面に従う第8側面の人力駆動車用制御装置において、前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、前記制御部は、前記第2制御状態において、前記閾値を減少させる。
第8側面の電子装置によれば、ケイデンスに基づいて、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0014】
第3から第8側面のいずれか一つに従う第9側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、前記制御部は、前記第1制御状態において、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する。
第9側面の電子装置によれば、チェーンの弛みを抑制できる。
【0015】
第9側面に従う第10側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において、前記回転抵抗力が前記第2抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する。
第10側面の電子装置によれば、好適に変速を行うことができる。
【0016】
第3から第10側面のいずれか一つに従う第11側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、前記第1制御状態において、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第1変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記第2制御状態において、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第2変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記第1変速ルートと、前記第2変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。
第11側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0017】
第11側面に従う第12側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速テーブルは、チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出される変速比に関する。
第12側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0018】
第12側面に従う第13側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、変速比を大きくさせる変速順序において、前記第1変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。
第13側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0019】
第12または第13側面に従う第14側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、変速比を小さくさせる変速順序において、前記第1変速ルートで前記第1フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第1フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。
第14側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0020】
第6から第8、第11から第14側面のいずれか一つに従う第15側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態における変速比の最大値が、前記第2制御状態における変速比の最大値よりも小さくなるように、前記ディレイラを制御する。
第15側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0021】
第6から第8、第11から第15側面のいずれか一つに従う第16側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態における変速比の最小値が、前記第2制御状態における変速比の最小値よりも小さくなるように、前記ディレイラを制御する。
第16側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0022】
第1から第8側面のいずれか一つに従う第17側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、前記制御部は、所定時間内における前記気圧検出部によって検出された検出値の変動が所定以上の場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する。
第17側面の電子装置によれば、チェーンの弛みを抑制できる。
【0023】
第1から第17側面のいずれか一つに従う第18側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、前記気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の変化に基づいて、前記人力駆動車の傾斜状態を検出した場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する。
第18側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0024】
第18側面に従う第19側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の前輪のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、前記人力駆動車の後輪のタイヤの気圧が大きくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を大きく変化させることを禁止する。
第19側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0025】
第18または第19側面に従う第20側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の前輪のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、前記人力駆動車の後輪のタイヤの気圧が小さくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を小さく変化させることを禁止する。
第20側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0026】
第1から第20側面のいずれか一つに従う第21側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の検出値に応じて、前記ディレイラを制御する。
第21側面の電子装置によれば、人力駆動車のタイヤの気圧に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【0027】
第21側面に従う第22側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は自動変速モードを含み、前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記所定の閾値を増加させる。
第22側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0028】
第22側面に従う第23側面の人力駆動車用制御装置において、前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、前記制御部は、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記閾値を増加させる。
第23側面の電子装置によれば、ケイデンスに基づいて、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0029】
第21から第23側面のいずれか一つに従う第24側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させて変速比を大きくすることを禁止する。
第24側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0030】
第21から第24側面のいずれか一つに従う第25側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第3変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第4変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記第3変速ルートと、前記第4変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。
第25側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0031】
第25側面に従う第26側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速比は、チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出され、前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、変速比を大きくする変速順序において、前記第3変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第4変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。
第26側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0032】
第1から第8側面のいずれか一つに従う第27側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、前記制御部は、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する。
第27側面の電子装置によれば、チェーンの弛みを抑制できる。
【0033】
本開示の第28側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部によって検出された前記タイヤの気圧の検出値が基準値未満の場合において前記人力駆動車に搭載されたディレイラを第1制御状態で制御し、前記検出値が前記基準値以上の場合において前記ディレイラを前記第1制御状態とは異なる第2制御状態で制御する制御部を備える。
第28側面の電子装置によれば、人力駆動車のタイヤの気圧に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【0034】
第28側面に従う第29側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は自動変速モードを含み、前記制御部は前記自動変速モードにおいて、前記人力駆動車の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合に前記ディレイラを制御し、前記所定の閾値は前記第1制御状態の場合と前記第2制御状態の場合と、で、異なる。
第29側面の電子装置によれば、第1制御状態および第2制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0035】
第29側面に従う第30側面の人力駆動車用制御装置において、前記参照値は、前記人力駆動車に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は前記ケイデンスに関する値であり、前記制御部は、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記閾値を増加させる。
第30側面の電子装置によれば、ケイデンスに基づいて、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0036】
第28から第30側面のいずれか一つに従う第31側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる操作部へ入力される操作に応じて前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記操作部に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させて変速比を大きくすることを禁止する。
第31側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0037】
第28から第31側面のいずれか一つに従う第32側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、フロントディレイラと、リアディレイラと、を含み、前記制御部は変速比に関する変速テーブルに基づいて前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第1変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、前記制御部は前記変速テーブルに基づく第2変速ルートで前記ディレイラを制御し、前記第1変速ルートと、前記第2変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。
第32側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0038】
第32側面に従う第33側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速比は、チェーンが係合するフロントスプロケットの丁数を、前記チェーンが係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出され、前記変速テーブルは、丁数の異なる複数の前記フロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリと、丁数の異なる複数の前記リアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリに関連し、前記フロントスプロケットアセンブリは、少なくとも第1フロントスプロケットと、前記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有し、前記第1フロントスプロケットの丁数は、前記第2フロントスプロケットの丁数よりも多く、変速比を大きくする変速順序において、前記第1変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲は、前記第2変速ルートで前記第2フロントスプロケットに前記チェーンが係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。
第33側面の電子装置によれば、ディレイラを好適な状態で制御できる。
【0039】
第28から第33側面のいずれか一つに従う第34側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレイラは、前記人力駆動車のフレームに取り付け可能に構成される固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成される可動部と、前記固定部に前記可動部を移動可能に接続するリンク機構と、前記可動部に連結し、プーリアセンブリ旋回軸心周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリと、前記プーリアセンブリを前記可動部に対して第1方向に付勢する付勢部材と、前記可動部と前記プーリアセンブリとの間に配置され、前記プーリアセンブリの前記第1方向とは異なる第2方向への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構と、を含み前記ダンピング機構は、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、前記プーリアセンブリの前記第2方向への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータを含み、前記制御部は、前記タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるように前記アクチュエータを制御する。
第34側面の電子装置によれば、チェーンの弛みを抑制できる。
【発明の効果】
【0040】
本開示の人力駆動車用制御装置によれば、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1実施形態に係る人力駆動車用制御装置、を含む人力駆動車を示す側面図。
図2】人力駆動車が備える電子システムを示すブロック図。
図3】リアディレイラを示す側面図。
図4】リアディレイラの内部構造を示す側面図。
図5】人力駆動車の傾斜状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図6】路面の状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図7】人力駆動車の跳躍状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図8】気圧の検出値に基づく制御フローを示すフローチャート。
図9】第2実施形態における、人力駆動車の傾斜状態および搭乗者の着座の有無に基づく制御フローを示すフローチャート。
図10】第3実施形態における、路面の状態および人力駆動車の傾斜状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図11図10の処理の続きを示すフローチャート。
図12】第4実施形態における、人力駆動車が備える電子システムを示すブロック図。
図13】変速テーブルおよび変速ルートの一例を示す図。
図14】路面の状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図15】変速テーブルおよび第2変速ルートの一例を示す図。
図16】変速テーブルおよび第2変速ルートの他の例を示す図。
図17】最大値付近のギア比の使用が禁止された状態の変速テーブルを示す図。
図18】最小値付近のギア比の使用が禁止された状態の変速テーブルを示す図。
図19】人力駆動車の跳躍状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図20】人力駆動車の傾斜状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図21】第5実施形態における、人力駆動車の傾斜状態に基づく制御フローを示すフローチャート。
図22】第6実施形態における、気圧の検出値に基づく制御フローを示すフローチャート。
図23】第7実施形態における、人力駆動車が備える電子システムを示すブロック図。
図24】タイヤ気圧検出装置からの無線信号に基づく制御フローを示すフローチャート。
図25】タイヤ気圧検出装置と電子装置の信号の送受信の様子を示すタイムチャート。
図26】第8実施形態における、外部の装置からの無線信号に基づく制御フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1実施形態)
図1および図2を用いて、第1実施形態に係る人力駆動車用制御装置80を含む人力駆動車1が説明される。人力駆動車1は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車1は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車1が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車1は、例えば1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物を含む。人力駆動車1は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車1は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車1は自転車として説明される。
【0043】
人力駆動車1は、クランク10、後輪20、前輪30、フレーム40、駆動機構50、バッテリ60、人力駆動車用コンポーネント70、および、制御装置80を含む。
【0044】
図1に示すクランク10は、フレーム40に対して回転可能なクランク軸11、クランク軸11の軸方向の両端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12を含む。一対のクランクアーム12には夫々ペダル13が連結される。
【0045】
後輪20および前輪30は、フレーム40に支持される。前輪30は、フレーム40の前部に設けられたフロントフォーク41に取り付けられる。フロントフォーク41には、ステム42を介してハンドルバー43が連結される。後輪20は、フレーム40の後部に取り付けられる。フレーム40の上部には、シート44が設けられる。
【0046】
駆動機構50は、クランク10と後輪20とを連結する。駆動機構50は、クランク軸11に連結されるフロントスプロケットアセンブリ51、後輪20に連結されるリアスプロケットアセンブリ52、および、フロントスプロケットアセンブリ51とリアスプロケットアセンブリ52とを連結するチェーン53を含む。
【0047】
フロントスプロケットアセンブリ51は、少なくとも1つのフロントスプロケットを含む。フロントスプロケットアセンブリ51は、丁数が異なる2つのフロントスプロケットを含む。フロントスプロケットアセンブリ51は、丁数が異なる2以上のフロントスプロケットを含んでいてもよい。フロントスプロケットアセンブリ51が丁数の異なる2以上のフロントスプロケットを含む場合、フロントスプロケットアセンブリ51が人力駆動車1に取り付けられた状態において、最も丁数が多いフロントスプロケットは、最も丁数が少ないフロントスプロケットよりも、自転車のフレームの中心面から離れて配置される。リアスプロケットアセンブリ52は、少なくとも1つのリアスプロケットを含む。
【0048】
リアスプロケットアセンブリ52は、丁数が異なる2以上のリアスプロケットを含む。リアスプロケットアセンブリ52は、丁数が異なる2以上のリアスプロケットを含んでいてもよい。リアスプロケットアセンブリ52が2以上のリアスプロケットを含む場合、リアスプロケットアセンブリ52が人力駆動車1に取り付けられた状態において、最も丁数が多いリアスプロケットは、最も丁数が少ないリアスプロケットよりも、自転車のフレームの中心面の近くに配置される。チェーン53は、フロントスプロケットアセンブリ51に含まれる1つのフロントスプロケットと、リアスプロケットアセンブリ52に含まれる1のリアスプロケットと連結する。チェーン53を介して、フロントスプロケットアセンブリ51の回転力がリアスプロケットに伝達される。
【0049】
本実施形態の駆動機構50はフロントスプロケットアセンブリ51およびリアスプロケットアセンブリ52と、チェーン53を用いて回転力を伝達するように構成されるが、駆動機構50の構成は、特に限らない。例えばフロントスプロケットアセンブリ51およびリアスプロケットアセンブリ52は、スプロケットに代えて、プーリ、ベベルギア等を含んでもよい。チェーン53に代えて、ベルト、シャフト等を使用してよい。
【0050】
クランク軸11とフロントスプロケットアセンブリ51との間には、第1ワンウェイクラッチを設けてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク10が前転した場合にフロントスプロケットアセンブリ51を前転させ、クランク10が後転した場合にクランク軸11とフロントスプロケットアセンブリ51との相対回転を許容するように構成される。リアスプロケットアセンブリ52と後輪20との間には、第2ワンウェイクラッチが設けられる。第2ワンウェイクラッチは、リアスプロケットアセンブリ52が前転した場合に後輪20を前転させ、リアスプロケットアセンブリ52が後転した場合にリアスプロケットアセンブリ52と後輪20との相対回転を許容するように構成される。
【0051】
バッテリ60は、人力駆動車1に設けられる電気部品に供給される電力の供給源である。バッテリ60は、フレーム40の内部および外部の少なくとも1つに設けられる。バッテリ60は、人力駆動車用コンポーネント70に電力を供給可能に構成される。バッテリ60はドライブユニット71に電力可能に構成されてもよい。バッテリ60は、複数のバッテリを含み、複数の人力駆動車用コンポーネント70に夫々電力を供給するように構成されてもよい。単一のバッテリ60が、人力駆動車用コンポーネント70と、ドライブユニット71と、に電力を供給するように構成されてもよい。バッテリ60は人力駆動車用コンポーネント70に直接設けられてもよい。
【0052】
図1および図2に示す人力駆動車用コンポーネント70は、ドライブユニット71、リアディレイラ72、サスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74を含む。ドライブユニット71は、人力駆動車1の推進を補助するように構成される。ドライブユニット71は、モータ71aおよび制御部71bを含む。
【0053】
モータ71aは、ペダル13から後輪20までの人力駆動力の動力伝達経路、または、前輪30に回転を伝達するように設けられる。本実施形態では、モータ71aは、クランク軸11からフロントスプロケットアセンブリ51までの動力伝達経路に回転を伝達するように設けられる。モータ71aとクランク軸11との間には、クランク軸11を人力駆動車1が前進する方向に回転させた場合にクランク軸11の回転力によってモータ71aが回転しないようにワンウェイクラッチが設けられるのが好ましい。
制御部71bは、モータ71aを制御するように構成される。制御部71bは、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。制御部71bは、インバータ回路をさらに含む。制御部71bは、モータ71aに供給される電力を制御できる。制御部71bは、通信部を介して導電線によって後述する制御部81と電気的に接続される。導電線は、電気ケーブル、および、回路基板に形成される電気配線の少なくとも1つを含む。制御部71bは、無線通信装置を介して制御部81と電気的に接続されてもよい。制御部71bは、制御部81からの制御信号に応じてモータ71aを駆動させる。制御部71bは、制御部81に含まれていてもよい。
【0054】
リアディレイラ72は、クランク軸11の回転速度に対する後輪20の回転速度の比率である変速比を変更する変速装置である。変速比は、チェーン53が係合するフロントスプロケットの丁数を、チェーン53が係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出される。
リアディレイラ72は、チェーン53を複数のリアスプロケットの間で掛け替えることによって、変速比を変更できる。リアディレイラ72は、可動部120およびプーリアセンブリ140を固定部110に対して移動するように構成されるシフトモータ160、リアディレイラ72の動作状況を検出するように構成されるシフト段位置センサ170、および、後述するワンウェイクラッチ183のモードを切り替えるためのクラッチモータ184aを含む。シフトモータ160、シフト段位置センサ170、および、クラッチモータ184aは、通信部を介して導電線によって後述する制御部81と電気的に接続される。シフトモータ160、シフト段位置センサ170、および、クラッチモータ184aは、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。シフトモータ160およびクラッチモータ184aは、制御部81からの制御信号に応じて駆動する。シフト段位置センサ170は、検出値に応じた信号を制御部81に出力する。リアディレイラ72の具体的な構成については後述する。シフトモータ160は、モータ、減速機構、シフト段位置センサ170、および、出力軸を含むように構成されてもよい。シフト段位置センサ170は、減速機構の回転を検知するように構成されてもよい。
【0055】
サスペンション73は、人力駆動車1に加わる衝撃を吸収するように構成される。サスペンション73は、ロックアウト状態とアンロック状態との切り替え、ならびに、減衰率およびストロークの変更を行うためのアクチュエータ73aを含む。ロックアウト状態とは、サスペンション73の伸縮が規制される状態である。アンロック状態とは、サスペンション73の伸縮が許容される状態である。本実施形態においては、サスペンション73は、後輪20に対応するように設けられるリアサスペンション、および、前輪30に対応するように設けられるフロントサスペンションを含む。アクチュエータ73aは、通信部を介して導電線によって後述する制御部81と電気的に接続される。アクチュエータ73aは、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。アクチュエータ73aは、制御部81からの制御信号に応じて駆動する。制御部81は、アクチュエータ73aの状態を常時把握できる。アクチュエータ73aの状態は、例えば、ロックアウト状態またはアンロック状態の区別、減衰率、および、ストローク等を含む。
【0056】
アジャスタブルシートポスト74は、シート44の高さを変更するように構成される。アジャスタブルシートポスト74は、シートポスト74aおよびアクチュエータ74bを含む。
【0057】
シートポスト74aは、フレーム40の上部に設けられ、シート44を支持する。アクチュエータ74bは、シートポスト74aの位置を上下に変更可能となるように構成される。アクチュエータ74bは、通信部を介して導電線によって後述する制御部81と電気的に接続される。アクチュエータ74bは、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。アクチュエータ74bは、制御部81からの制御信号に応じて駆動する。制御部81は、アクチュエータ74bの状態を常時把握できる。アクチュエータ74bの状態は、シートポスト74aの位置等を含む。
【0058】
図2に示すように、制御装置80は、制御部81、記憶部82、通信部83、操作部84、第1タイヤ気圧検出装置85、第2タイヤ気圧検出装置86、車速センサ87、クランク回転センサ88、駆動力センサ89、および、着座センサ90を含む。
【0059】
制御部81は、人力駆動車1に関する制御を行うように構成される。制御部81は、予め定められた制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)、または、MPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部81は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。
【0060】
記憶部82は、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部82は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。
【0061】
通信部83は、制御部81と他の機器と通信を行うように構成される。通信部83は、導電線を介して制御部81に電気的に接続される。通信部83は、無線通信によって外部の機器と接続される。通信部83は、BluetoothおよびANT+などの既存の通信規格によって通信するように構成されてもよく、独自の通信規格によって通信するように構成されてもよい。
【0062】
操作部84は、搭乗者が操作可能に構成される。操作部84は、人力駆動車1に搭乗した搭乗者が操作可能な位置に配置される。操作部84は、例えばハンドルバー43に設けられる。操作部84は、ボタン、レバー、および、タッチパネル等を含む。操作部84は、通信部を介して導電線によって制御部81と電気的に接続される。操作部84は、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。操作部84は、例えば、制御部81による制御に関する各種モードの切り替え、搭乗者の手動操作による変速、その他各種操作および設定等に用いることができる。操作部84が操作されると、操作に応じた信号が制御部81に出力される。
【0063】
第1タイヤ気圧検出装置85は、前輪30のタイヤの気圧を検出するように構成される。第1タイヤ気圧検出装置85は、前輪30に設けられ、前輪30のタイヤの気圧を検出できる。第1タイヤ気圧検出装置85は、例えばタイヤのバルブに設けられる。第1タイヤ気圧検出装置85は、第1タイヤ気圧センサ85a、第1制御部85b、および、第1通信部85cを含む。
【0064】
第1タイヤ気圧センサ85aは、タイヤの内部の気圧を検出するセンサである。第1タイヤ気圧センサ85aは、空気および窒素などの気圧を検出するように構成される。第1制御部85bは、第1タイヤ気圧検出装置85に関する制御を行うように構成される。第1制御部85bは、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。第1通信部85cは、他の機器と通信するように構成される。第1通信部85cは、無線通信によって制御装置80の通信部83と接続される。第1通信部85cは、例えばスリップリングを含む導電路を介して制御部81と電気的に接続されてもよい。第1通信部85cは、第1タイヤ気圧センサ85aによって検出される前輪30のタイヤの気圧に関する情報を制御部81に出力する。
【0065】
第2タイヤ気圧検出装置86は、後輪20のタイヤの気圧を検出するように構成される。第2タイヤ気圧検出装置86は、後輪20に設けられ、後輪20のタイヤの気圧を検出できる。第2タイヤ気圧検出装置86は、例えばタイヤの空気バルブに設けられる。第2タイヤ気圧検出装置86は、第2タイヤ気圧センサ86a、第2制御部86b、および、第2通信部86cを含む。
【0066】
第2タイヤ気圧センサ86aは、後輪20のタイヤの内部の気圧を検出するセンサである。第2タイヤ気圧センサ86aは、空気および窒素などの気圧を検出するように構成される。第2制御部86bは、第2タイヤ気圧検出装置86に関する制御を行うように構成される。第2制御部86bは、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。第2通信部86cは、他の機器との通信するように構成される。第2通信部86cは、無線通信によって制御装置80の通信部83に接続される。第2通信部86cは、例えばスリップリングを含む導電路を介して制御部81と電気的に接続されてもよい。第2通信部86cは、第2タイヤ気圧センサ86aによって検出される後輪20のタイヤの気圧に関する情報を制御部81に出力する。
【0067】
車速センサ87は、人力駆動車1の車速を検出するように構成される。車速センサ87は、車輪の回転速度を検出する。車速センサ87は、導電線によって制御部81と電気的に接続される。車速センサ87は、無線通信によって制御部81に接続されてもよい。車速センサ87は、車輪の回転速度に応じた信号を制御部81に出力する。制御部81は、車輪の回転速度に基づいて人力駆動車1の車速を算出する。車速センサ87の構成は特に限定されないが、例えば、車速センサ87は、フレーム40またはフロントフォーク41に取り付けられて、後輪20または前輪30に設けられる磁石の磁気を検出する磁気センサによって構成されてもよい。
【0068】
クランク回転センサ88は、人力駆動車1のクランク10の回転速度を検出するように構成される。クランク回転センサ88は、例えばフレーム40に設けられる。クランク回転センサ88は、フレーム40に対するクランク10の回転を検出する。クランク回転センサ88の構成は特に限定されないが、クランク回転センサ88は、例えば、磁界の強度に応じて信号を出力する磁気センサを含んで構成される。クランク回転センサ88は、例えば、クランク軸11またはクランク軸11からフロントスプロケットアセンブリ51までの間の動力伝達経路に設けられ、周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石の磁気を検出する。クランク回転センサ88は、通信部を介して導電線によって制御部81と電気的に接続される。クランク回転センサ88は、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。クランク回転センサ88は、クランク10の回転に応じた信号を制御部81に出力する。
【0069】
駆動力センサ89は、ペダル13に入力される人力駆動力を検出するように構成される。駆動力センサ89は、例えばペダル13からフロントスプロケットアセンブリ51までの間の駆動力の伝達経路に設けられる。駆動力センサ89は、ペダル13に加えられる人力駆動力に応じた信号を出力する。駆動力センサ89としては、例えば歪センサ、磁歪センサ、光学センサ、および、圧力センサ等を用いることができる。駆動力センサ89は、導電線によって制御部81と電気的に接続される。駆動力センサ89は、無線通信によって制御部81と接続されてもよい。駆動力センサ89は、人力駆動力に応じた信号を制御部81に出力する。
【0070】
着座センサ90は、搭乗者がシート44に着座しているか否かを検出するように構成される。着座センサ90は、例えばアジャスタブルシートポスト74またはシート44に設けられる。着座センサ90としては、例えば荷重センサ、圧力センサ、および、スイッチ等を用いることができる。着座センサ90は、導電線によって制御部81と電気的に接続される。着座センサ90は、無線通信によって制御部81と接続されてもよい。着座センサ90は、搭乗者の着座状態に応じた信号を制御部81に出力する。
【0071】
バッテリ60、人力駆動車用コンポーネント70、および、制御装置80によって、電子システムSが構成されている。
【0072】
図2から図4に示すリアディレイラ72は、固定部110、可動部120、リンク機構130、プーリアセンブリ140、軸部材150、シフトモータ160、シフト段位置センサ170、ダンピング機構180、および、付勢部材190を含む。
【0073】
固定部110は、人力駆動車1のフレーム40に取り付け可能に構成される。固定部110は、ボルト等によってフレーム40に固定される。可動部120は、リンク機構130を介して固定部110に対して移動可能となるように接続される。リンク機構130は、アウターリンク131およびインナーリンク132を含んでいる。
【0074】
プーリアセンブリ140は、可動部120に対して回転可能に設けられた軸部材150に固定される。プーリアセンブリ140は、軸部材150を介して、可動部120に対して旋回軸心Aの周りを旋回可能となるように連結される。プーリアセンブリ140には、少なくとも1つのプーリを含む。プーリアセンブリ140は、第1のプーリP1、および、第2のプーリP2を含む。
【0075】
図2に示すシフトモータ160は、電動モータである。シフトモータ160の出力軸は、リンク機構130に接続される。シフトモータ160の回転によって、可動部120およびプーリアセンブリ140は、リンク機構130を介して、固定部110に対して移動するように構成される。リアディレイラ72と、リアスプロケットアセンブリ52と、が、人力駆動車1に取り付けられた状態において、可動部120およびプーリアセンブリ140は、固定部110に対して、最も丁数が少ないリアスプロケットから最も丁数が多いリアスプロケットの方向で定義されるインワード方向に移動可能に構成される。リアディレイラ72と、リアスプロケットアセンブリ52と、が、人力駆動車1に取り付けられた状態において、可動部120およびプーリアセンブリ140は、固定部110に対して、最も丁数が多いリアスプロケットから最も丁数が少ないリアスプロケットの方向で定義されるアウトワード方向に移動可能に構成される。シフトモータ160の動作に基づき、可動部120およびプーリアセンブリ140は固定部110に対して、最も丁数が多いリアスプロケットであるローギア方向、または、ローギア側と反対側の丁数が最も少ないリアスプロケットであるトップギア方向に移動可能である。図2示すシフト段位置センサ170は、シフトモータ160の回転数等を検出することによって、可動部120およびプーリアセンブリ140の位置を検出できる。
【0076】
図4に示すダンピング機構180は、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して回転抵抗を付与可能に構成される。ダンピング機構180は、摩擦要素181、調整ボルト182、ワンウェイクラッチ183、および、アクチュエータ184を含む。
【0077】
摩擦要素181は、帯状に形成される。摩擦要素181は、後述するワンウェイクラッチ183を外周から巻くように配置される。摩擦要素181は、ワンウェイクラッチ183を介して軸部材150の第2の回転方向D2への回転に抵抗を加えることができる。調整ボルト182を用いて摩擦要素181の両端の隙間を調整することによって、摩擦要素181によって軸部材150の第2の回転方向D2への回転に加えられる回転抵抗を調整できる。回転抵抗はワンウェイクラッチ183と摩擦要素181との間に生じる摩擦抵抗である。
【0078】
ワンウェイクラッチ183は、可動部120とプーリアセンブリ140との間に配置され、プーリアセンブリ140が第2の回転方向D2に回転する際に摩擦要素181の抵抗を受ける。ワンウェイクラッチ183は、ローラクラッチによって形成されている。ワンウェイクラッチ183は、軸部材150、アウターレース183b、および、複数のローラ183cを含む。
【0079】
軸部材150は、ワンウェイクラッチ183のインナーレースを形成している。軸部材150とアウターレース183bとの間には複数のローラ183cが配置される。軸部材150が第2の回転方向D2に回転する場合、複数のローラ183cによって軸部材150の回転がアウターレース183bに伝達されることによって、アウターレース183bは第2の回転方向D2に回転する。軸部材150が第2の回転方向D2とは反対方向の第1の回転方向D1に回転する場合、複数のローラ183cは、軸部材150の第1の回転方向D1の回転をアウターレース183bに実質的に伝達しない。言い換えると、軸部材150が第1の回転方向D1に回転する場合、軸部材150はアウターレース183bと相対的に回転することが可能に構成される。ダンピング機構180は、第1クラッチモードと第2クラッチモードとを切り替え可能に構成される。
【0080】
第1クラッチモードの場合、アウターレース183bと摩擦要素181との間に第1の摩擦力が生じる。第1クラッチモードの場合に、軸部材150が第2の回転方向D2に回転すると、複数のローラ183cを介して軸部材150に第1の摩擦力が伝達される。軸部材150が第1の回転方向D1に回転する場合、軸部材150はアウターレース183bに対して相対的に回転するため、アウターレース183bと摩擦要素181との間に発生する第1の摩擦力の影響を実質的に受けない。
【0081】
第2クラッチモードの場合、アウターレース183bと摩擦要素181との間に第2の摩擦力が生じる。第2の摩擦力は、第1の摩擦力よりも小さい。第2クラッチモードの場合に、軸部材150が第2の回転方向D2に回転すると、複数のローラ183cを介して軸部材150に第2の摩擦力が伝達される。軸部材150が第1の回転方向D1に回転する場合、軸部材150はアウターレース183bに対して相対的に回転するため、アウターレース183bと摩擦要素181との間に発生する第2の摩擦力の影響を実質的に受けない。第2クラッチモードにおいて、アウターレース183bが摩擦要素181に全く接触しないように構成されてもよい。
【0082】
アクチュエータ184は、ワンウェイクラッチ183を第1クラッチモードと第2クラッチモードとの間で切り替えるように構成される。アクチュエータ184は、電動アクチュエータを含む。アクチュエータ184は、クラッチモータ184aを含む。クラッチモータ184aが回転することによって、ワンウェイクラッチ183を第1クラッチモードと、第2クラッチモードと、が切り替わる。
【0083】
付勢部材190は、第2の回転方向D2とは反対の第1の回転方向D1に、プーリアセンブリ140を付勢するように構成される。付勢部材190の一例は、ねじりバネである。付勢部材190の一端は可動部120に連結され、付勢部材190の他端はプーリアセンブリ140に連結される。
【0084】
第1のプーリP1および第2のプーリP2には、フロントスプロケットアセンブリ51のフロントスプロケットおよびリアスプロケットアセンブリ52のリアスプロケットを連結するチェーン53が巻回される。
【0085】
シフトモータ160の駆動によって、可動部120およびプーリアセンブリ140はアウトワード方向、または、インワード方向に移動可能である。チェーン53は、可動部120およびプーリアセンブリ140の移動に応じて、リアスプロケットアセンブリ52の任意のスプロケットに係合させることができる。これによって、リアディレイラ72は変速比を変更できる。
【0086】
クラッチモータ184aを適宜駆動させることによって、ワンウェイクラッチ183の第1クラッチモードと第2クラッチモードとを切り替えることができる。第1クラッチモードでは、プーリアセンブリ140が可動部120に対して第2の回転方向D2に回転する際に、摩擦要素181による回転抵抗がアウターレース183bを介して軸部材150に付与される状態となる。これによって、プーリアセンブリ140が第2の回転方向D2に回転してチェーン53が弛むのを抑制できる。第2クラッチモードでは、プーリアセンブリ140が可動部120に対して第2の回転方向D2に回転する際に、摩擦要素181による回転抵抗が軸部材150に付与されない状態となる。第1クラッチモードは、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態であり、第2クラッチモードは、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態である。第1抵抗力は、第2抵抗力よりも大きい。
【0087】
制御部81は、リアディレイラ72のシフトモータ160およびクラッチモータ184aの動作を制御することによって、リアディレイラ72の動作を制御できる。
【0088】
リアディレイラ72は、人力駆動車1のフレーム40に取り付け可能に構成される固定部110と、固定部110に対して移動可能に構成される可動部120と、固定部110に可動部120を移動可能に接続するリンク機構130と、可動部120に連結し、旋回軸A周りに旋回可能に構成されたプーリアセンブリ140と、プーリアセンブリ140を可動部120に対して第1の回転方向D1に付勢する付勢部材190と、可動部120とプーリアセンブリ140との間に配置され、プーリアセンブリ140の第1の回転方向D1とは異なる第2の回転方向D2への回転に対して回転抵抗を付与可能なダンピング機構180と、を含み、ダンピング機構180は、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して所定回転抵抗力以上の回転抵抗力を付与する第1抵抗力付与状態と、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して前記所定回転抵抗力未満の回転抵抗力を付与する第2抵抗力付与状態と、を切り替え可能なアクチュエータ184を含む。アクチュエータ184は、電動アクチュエータを含む。
【0089】
図5を用いて、制御部81を含む制御装置80による人力駆動車1の制御が説明される。図5に示されるように、制御部81は、人力駆動車1のタイヤの少なくとも1つの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の傾斜状態を検出した場合、人力駆動車1に搭載されたサスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74のうち少なくとも1つを制御する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。傾斜状態には、人力駆動車1が前上がりに傾斜した状態、および、人力駆動車1が前下がりに傾斜した状態が含まれる。以降、人力駆動車1が前上がりに傾斜した状態を上り傾斜状態、人力駆動車1が前下がりに傾斜した状態を下り傾斜状態、と表現する。
【0090】
ここで、制御部81は、人力駆動車1の前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、人力駆動車1の後輪20のタイヤの気圧が大きくなった場合、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出し、人力駆動車1の前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、人力駆動車1の後輪20のタイヤの気圧が小さくなった場合、人力駆動車1が下り傾斜状態であると検出する。
【0091】
制御部81は、タイヤの気圧が、所定の基準値から所定の閾値以上変化したかどうかを判定することによって、タイヤの気圧が小さくなった、または、タイヤの気圧が大きくなったことを検出できる。例えば制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が所定の基準値から所定の閾値以上小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が所定の基準値から所定の閾値以上大きくなった場合には、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出できる。
【0092】
タイヤの気圧の変化を検出するための基準値および各閾値は、任意の方法で決定できる。例えば、非走行時のタイヤの気圧を基準値とすること、および、気圧が変化する直前のタイヤの気圧を基準値とすることが可能である。例えば、各閾値を、予め定められた一定の値とすることや、非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値とすることが可能である。非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値は、例えば、非走行時のタイヤの気圧に所定の割合を乗じた値等があげられる。
【0093】
図6に示されるように、制御部81は、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れている状態に対応する場合、人力駆動車1に搭載されたサスペンション73のストロークを大きくする制御、サスペンション73の減衰力を低下させる制御、および、人力駆動車1に搭載されたアジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を下げる制御のうち、少なくとも1つを行う。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0094】
ここで、制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上の場合に、タイヤの気圧の変化が路面が荒れている状態に対応すると判定できる。タイヤの気圧の変化が路面が荒れている状態に対応すると判定する場合の基準となる閾値である、所定時間、気圧の所定値、および、所定回数は、任意の方法で決定できる。
【0095】
図7に示されるように、制御部81は、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の跳躍状態を検出した場合、人力駆動車1に搭載されたサスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74のうち少なくとも1つを制御する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0096】
ここで、制御部81は、人力駆動車1の前輪30、および、後輪20のタイヤの気圧が所定時間内に小さくなった場合、人力駆動車1の跳躍状態を検出する。
【0097】
制御部81は、タイヤの気圧が、所定の基準値から所定の閾値以上小さく変化したかどうかを判定することによって、タイヤの気圧が小さくなったことを検出できる。例えば制御部81は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧が所定時間内に所定の基準値から所定の閾値以上小さくなった場合には、人力駆動車1が跳躍していることを検出できる。以降、人力駆動車1が跳躍した状態を跳躍状態と表現する。
【0098】
タイヤの気圧が小さくなったことを検出するための基準値および閾値は、任意の方法で決定できる。例えば、非走行時のタイヤの気圧を基準値とすることや、気圧が変化する直前のタイヤの気圧を基準値とすることが可能である。例えば、閾値を、予め定められた一定の値とすることや、非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値とすることが可能である。非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値は、例えば、非走行時のタイヤの気圧に所定の割合を乗じた値等があげられる。
【0099】
図8に示されるように、制御部81は、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の検出値が所定の基準値未満の場合に人力駆動車1に搭載されたサスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74の少なくとも1つを第1制御状態で制御し、前記検出値が前記基準値以上の場合にサスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74の少なくとも1つを前記第1制御状態とは異なる第2制御状態で制御する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0100】
第1制御状態、および、第2制御状態のいずれかを選択する判定の基準となる基準値は、任意の方法で決定できる。例えば、基準値を、予め定められた一定の値とすることや、非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値とすることが可能である。非走行時のタイヤの気圧に基づいて算出した値は、例えば、非走行時のタイヤの気圧に所定の割合を乗じた値等があげられる。
【0101】
以下、制御部81を含む制御装置80による人力駆動車1の制御の具体的なフローチャートの一例について説明される。
【0102】
制御部81は、所定のタイミングで図5図6図7、および、図8に示すフローチャートに従った制御を開始する。制御を開始するタイミングには、例えば制御部81への電力供給が開始されたタイミングや、搭乗者が操作部84で所定の操作を行ったタイミングが含まれる。制御部81は、所定周期ごとに以下で説明されるフローチャートに従った制御を繰り返す。制御部81は、所定のタイミングで以下に説明されるフローチャートに従った制御フローを終了する。制御フローを終了するタイミングには、例えば制御部81への電力供給が終了したタイミングや、搭乗者が操作部84で所定の操作を行ったタイミングが含まれる。記載の簡略化のため、図中ではサスペンションをSUS、アジャスタブルシートポストをASPと、それぞれ表記する。
【0103】
図5は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧のうち、が増加すると共に他方が減少したことを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。
【0104】
ステップS101において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。
【0105】
制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS102に移行する。前輪30に加わる荷重が減少し、後輪20に加わる荷重が増加していることから、制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS103に移行する。
【0106】
ステップS102において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。これによって、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。
【0107】
ステップS102において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ下げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ下げる。制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出した場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を下げる。これによって、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1を立ち漕ぎし易い状態にできる。シート44を下げた後の位置を任意に設定することも可能である。シート44を所定の量だけ下げるのではなく、所定の目標位置まで下げることも可能である。
【0108】
制御部81は、ステップS102の処理を行った後、図5の制御フローを終了する。
【0109】
ステップS101から移行したステップS103において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったか否かを判定する。
【0110】
制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、ステップS104に移行する。前輪30に加わる荷重が増加し、後輪20に加わる荷重が減少していることから、制御部81は、人力駆動車1が下り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が小さくなっていないと判定した場合、図5の制御フローを終了する。
【0111】
ステップS104において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をアンロック状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をアンロック状態に切り替える。制御部81は、人力駆動車1が下り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73をアンロック状態に切り替える。これによって、下り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の乗り心地を好適な状態にできる。
【0112】
ステップS104において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ上げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ上げる。前記制御部81は、人力駆動車1が下り傾斜状態であると検出した場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を上げる。これによって、下り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1を着座してペダリングし易い状態にできる。シート44を上げた後の位置を任意に設定することも可能である。制御部81は、ステップS104の処理を行った後、図5の制御フローを終了する。
【0113】
図5のフローチャートでは、ステップS102およびステップS104において、サスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74を制御する例を示すが、例えばサスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74のうち1つのみを制御する構成とすることも可能である。さらに、ステップS101とステップS103とを入れ替え、かつ、ステップS102とステップS104とを入れ替えて、下り傾斜状態検出を行った後に上り傾斜状態検出を行ってもよい。
【0114】
図6は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であることを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。ステップS111において、制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であるか否かを判定する。判定の対象となるタイヤは、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤであればよい。前輪30および後輪20のうち、いずれかのタイヤの気圧を判定してもよいし、両方のタイヤの気圧を判定してもよい。
【0115】
制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であると判定した場合、ステップS112に移行する。タイヤの気圧がある程度大きく変化し、かつ、ある程度頻繁に変化していることから、人力駆動車1が走行している路面が比較的荒れている状態である、つまり、気圧の変化が路面が荒れている状態に対応している、ことが推定される。制御部81は、路面が比較的荒れている状態であることを検出できる。
【0116】
制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満であると判定した場合、ステップS113に移行する。タイヤの気圧があまり大きく変化していない、または、それほど頻繁に変化していないことから、人力駆動車1が走行している路面がそれほど荒れていない状態である、つまり、気圧の変化が路面が荒れていない状態に対応している、ことが推定される。制御部81は、路面がそれほど荒れていない状態であることを検出できる。
【0117】
ステップS112において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを大きくするための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73のストロークを大きくする。ステップS112において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を低下させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を低下させる。ステップS112において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ下げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ下げる。これによって、荒れた路面状態において、自動的に人力駆動車1の乗り心地を好適な状態にできる。サスペンション73のストローク、減衰力、および、シート44の高さは、任意に設定することも可能である。制御部81は、ステップS112の処理を行った後、図6の制御フローを終了する。
【0118】
ステップS111から移行したステップS113において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを小さくするための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73のストロークを小さくする。ステップS113において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を増加させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を増加させる。これによって、平滑な路面状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。サスペンション73のストロークおよび減衰力は、任意に設定することも可能である。
【0119】
ステップS113において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ上げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ上げる。これによって、平滑な路面状態において、自動的に人力駆動車1を着座してペダリングし易い状態にできる。シート44の高さは、任意に設定することも可能である。制御部81は、ステップS113の処理を行った後、図6の制御フローを終了する。
【0120】
図6のフローチャートでは、ステップS112およびステップS113において、サスペンション73のストローク、サスペンション73の減衰力、および、アジャスタブルシートポスト74を制御する例を示すが、本発明はこれに限らない。
【0121】
例えば、制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応する場合、サスペンション73のストロークを小さくする制御、サスペンション73の減衰力を増加させる制御、および、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を上げる制御のうち、少なくとも1つを行うように構成されてもよい。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0122】
例えば、制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応する場合、サスペンション73のストロークを小さくする制御、および、サスペンション73の減衰力を増加させる制御のうち、少なくとも1つを行うように構成されてもよい。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86を含む。
【0123】
例えば、制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応する場合、人力駆動車1に搭載されたアジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を上げる制御を行うように構成されてもよい。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0124】
図7は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧の双方が減少したことを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。ステップS121において、制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上小さくなったか否かを判定する。
【0125】
制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上小さくなったと判定した場合、ステップS122に移行する。前輪30および後輪20に加わる荷重がいずれも減少していることから、制御部81は、人力駆動車1が跳躍状態、つまり、前輪30および後輪20がいずれも地面から浮いている状態、であることを検出できる。制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のうち少なくとも1つのタイヤの気圧が、所定時間内に所定以上小さくなっていないと判定した場合、図7の制御フローを終了する。
【0126】
ステップS122において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をアンロック状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をアンロック状態に切り替える。制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の跳躍状態を検出した場合、サスペンション73をアンロック状態に切り替える。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。これによって、人力駆動車1のタイヤの気圧から人力駆動車1の跳躍状態を検出し、自動的にサスペンション73を人力駆動車1の着地に関して好適な状態にできる。
【0127】
ステップS122において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を低下させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を低下させる。制御部81は、人力駆動車1の跳躍状態を検出した場合、サスペンション73の減衰力を低下させる。これによって、人力駆動車1のタイヤの気圧から人力駆動車1の跳躍状態を検出し、自動的にサスペンション73を人力駆動車1の着地に関して好適な状態にできる。サスペンション73の減衰力は、任意に設定することも可能である。サスペンション73の減衰力を所定値だけ低下させるのではなく、所定の目標値まで低下させることも可能である。
【0128】
ステップS122において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ下げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ下げる。制御部81は、人力駆動車1の跳躍状態を検出した場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を下げる。これによって、人力駆動車1のタイヤの気圧から人力駆動車1の跳躍状態を検出し、自動的にシートポスト74aを人力駆動車1の着地に関して好適な状態にできる。シート44の高さは、任意に設定することも可能である。制御部81は、ステップS122の処理を行った後、ステップS123に移行する。
【0129】
ステップS123において、制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上大きくなったか否かを判定する。制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上大きくなったと判定した場合、ステップS124に移行する。前輪30および後輪20に加わる荷重がいずれも増加していることから、制御部81は、人力駆動車1が接地状態、つまり、前輪30および後輪20がいずれも地面に接している状態、であることを検出できる。制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のうち少なくとも1つのタイヤの気圧が、所定時間内に所定以上大きくなっていないと判定した場合、ステップS123の処理を再度行う。
【0130】
ステップS124において、制御部81は、サスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74の状態を、ステップS122の処理以前の状態に戻す。具体的には、制御部81は、ステップS122の処理以前にサスペンション73がロックアウト状態であった場合には、ステップS124において、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。制御部81は、ステップS124において、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力をステップS122の処理以前の値まで増加させるための信号を出力する。制御部81は、ステップS124において、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aをステップS122の処理以前の位置まで上げるための信号を出力する。制御部81は、ステップS124の処理を行った後、図7の制御フローを終了する。
【0131】
図7のフローチャートでは、ステップS122において、サスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74を制御する例を示すが、本発明はこれに限らない。例えば制御部81は、人力駆動車1に搭載されたサスペンション73のアンロック状態への切り替え、サスペンション73の減衰力の低下、および、アジャスタブルシートポスト74によるシート44の位置の下降のうち、少なくとも1つを制御してもよい。
【0132】
図7のフローチャートでは、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧に基づいて人力駆動車1が接地状態であることを検出する例を示すが、例えば、ステップS121の人力駆動車1が跳躍状態となってから、または、ステップS122の処理を行ってから、所定の時間が経過した時点で人力駆動車1が接地状態になったと推定し、ステップS124の処理を行うことも可能である。
【0133】
図8は、前輪30または後輪20のタイヤの気圧が基準値未満であることを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。ステップS131において、制御部81は、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤの気圧が基準値未満であるか否かを判定する。制御部81は、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤの気圧が基準値未満であると判定した場合、ステップS132に移行する。制御部81は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも基準値以上であると判定した場合、ステップS133に移行する。
【0134】
ステップS131の処理は、傾斜状態、跳躍状態、および、振動状態等の人力駆動車1の走行状態に伴う一時的なタイヤの気圧の減少を検出することを意図した処理ではなく、継続的なタイヤの気圧の減少、つまり、タイヤの空気が抜けていること、を検出することを意図した処理である。したがって、ステップS131の処理においては、継続的なタイヤの気圧の減少を検出するために、タイヤの気圧が基準値未満である状態が、所定の時間以上継続しているか否かを判定してもよい。
【0135】
ステップS132において、制御部81は、サスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74の少なくとも1つを第1制御状態で制御する。サスペンション73は、フロントサスペンション、および、リアサスペンションの少なくとも1つを含む。第1制御状態には、少なくとも、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えた状態、サスペンション73のストロークを小さくした状態、サスペンション73の減衰力を増加させた状態、および、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を所定の位置に変更した状態のうち、少なくとも1つが含まれる。
【0136】
例えば制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。制御部81は、タイヤの気圧が基準値未満である場合、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えることによって、人力駆動車1のタイヤの気圧が低い状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。
【0137】
制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを小さくするための信号を出力する。制御部81は、タイヤの気圧が基準値未満である場合、サスペンション73のストロークを小さくすることによって、人力駆動車1のタイヤの気圧が低い状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。
【0138】
制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を増加させるための信号を出力する。制御部81は、タイヤの気圧が基準値未満である場合、サスペンション73の減衰力を増加させることによって、人力駆動車1のタイヤの気圧が低い状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。
【0139】
制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ上下させるための信号を出力する。制御部81は、タイヤの気圧が基準値未満である場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を上下いずれかに変更することによって、人力駆動車1のタイヤの気圧が低い状態において、自動的にシート44を好適な状態にできる。シート44の位置をどのような位置に変更するかは、搭乗者が任意に決定できる。制御部81は、ステップS132の処理を行った後、図8の制御フローを終了する。
【0140】
ステップS131から移行したステップS133において、制御部81は、サスペンション73、および、アジャスタブルシートポスト74の少なくとも1つを第1制御状態とは異なる第2制御状態で制御する。第2制御状態には、少なくとも、サスペンション73をアンロック状態に切り替えた状態、サスペンション73のストロークを第1制御状態よりも大きくした状態、サスペンション73の減衰力を第1制御状態よりも減少させた状態、および、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を第1制御状態とは異なる所定の位置に変更した状態のうち、少なくとも1つが含まれる。制御部81は、ステップS133の処理を行った後、図8の制御フローを終了する。
【0141】
第1実施形態に係る制御において、制御部81は所定の場合にサスペンション73をロックアウト状態またはアンロック状態に切り替えるための信号を出力する例を示すが、例えば、すでにサスペンション73が所望の状態に切り替えられている状態では、この信号を出力する処理をキャンセルしてもよい。例えば、サスペンション73が現在ロックアウト状態である場合には、ロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する処理をキャンセルすることが可能である。
【0142】
第1実施形態に係る制御において、制御部81は所定の場合にサスペンション73のストロークを大きくするための信号、または、小さくするための信号を出力する例を示すが、例えば、サスペンション73のストロークの調整可能範囲を超える場合には、この信号を出力する処理をキャンセルしてもよい。例えば、現在のサスペンション73のストロークが最小である場合には、ストロークを小さくするための信号を出力する処理をキャンセルすることが可能である。
【0143】
同様に、サスペンション73の減衰力を低下または増加させるための信号、ならびに、アジャスタブルシートポスト74を所定の量だけ上げるまたは下げるための信号についても、サスペンション73やアジャスタブルシートポスト74の調整可能範囲を超える場合には、この信号を出力する処理をキャンセルしてもよい。以下で説明される各実施形態についても同様である。
【0144】
(第2実施形態)
図9を用いて、第2実施形態が説明される。第2実施形態は、図5に示すフローチャートに代えて、図9に示すフローチャートを用いる点以外は、第1実施形態と同様である。以下、図9に示すフローチャートが説明される。
【0145】
ステップS141において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS142に移行する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、人力駆動車1が上り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS145に移行する。
【0146】
ステップS142において、制御部81は、搭乗者がシート44に着座しているか否かを判定する。制御部81は、搭乗者がシート44に着座していると判定した場合、ステップS143に移行する。制御部81は、搭乗者がシート44に着座していないと判定した場合、ステップS144に移行する。
【0147】
ステップS143において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。
【0148】
ステップS143において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ上げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ上げる。制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出し、かつ、搭乗者がシート44に着座しているか否かを検出する着座検出部によって搭乗者がシート44に着座していると検出した場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を上げる。これによって、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1を着座してペダリングし易い状態にできる。制御部81は、ステップS143の処理を行った後、図9の制御フローを終了する。着座検出部は、着座センサ90を含む。
【0149】
ステップS142から移行したステップS144において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。
【0150】
ステップS144において、制御部81は、アジャスタブルシートポスト74のアクチュエータ74bに対して、シートポスト74aを所定の量だけ下げるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ74bは、シートポスト74aおよびシート44を所定の量だけ下げる。制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出し、かつ、搭乗者がシート44に着座しているか否かを検出する着座検出部によって搭乗者がシート44に着座していないと検出した場合、アジャスタブルシートポスト74によってシート44の位置を下げる。これによって、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1を立ち漕ぎし易い状態にできる。制御部81は、ステップS144の処理を行った後、図9の制御フローを終了する。着座検出部は、着座センサ90を含む。
【0151】
ステップS141から移行したステップS145およびステップS146の処理は、図5のステップS103およびステップS104の処理と同様であるため、説明を省略する。図9のフローチャートでは、ステップS143、ステップS144、および、ステップS146において、サスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74を制御する例を示すが、例えばサスペンション73およびアジャスタブルシートポスト74のうち1つのみを制御する構成とすることも可能である。
【0152】
(第3実施形態)
図10および図11を用いて、第3実施形態が説明される。第3実施形態は、図6に示すフローチャートに代えて、図10および図11に示すフローチャートを用いる点以外は、第1実施形態と同様である。以下、図10および図11に示すフローチャートが説明される。
【0153】
ステップS151において、制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であるか否かを判定する。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であると判定した場合、ステップS152に移行する。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であると判定した場合、人力駆動車1が走行している路面が比較的荒れている状態である、つまり、気圧の変化が、路面が荒れている状態に対応している、ことを検出できる。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満であると判定した場合、ステップS156に移行する。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満であると判定した場合、人力駆動車1が走行している路面がそれほど荒れていない状態である、つまり、気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応している、ことを検出できる。
【0154】
ステップS152において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS153に移行する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、人力駆動車1が上り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS154に移行する。
【0155】
ステップS153において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを大きくするための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73のストロークを大きくする。ステップS153において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を低下させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を低下させる。サスペンション73のストローク、および、減衰力は、任意に設定することも可能である。例えば、サスペンション73のストロークを所定の量だけ大きくするのではなく、所定の目標値まで大きくすることも可能である。
【0156】
制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れている状態に対応し、かつ、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73のストロークを大きくする制御、および、サスペンション73の減衰力を低下させる制御のうち、少なくとも1つを行う。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。これによって、荒れた路面状態、かつ、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の乗り心地を好適な状態にできる。制御部81は、ステップS153の処理を行った後、図10および図11の制御フローを終了する。
【0157】
ステップS152から移行したステップS154において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、ステップS155に移行する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、人力駆動車1が下り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が小さくなっていないと判定した場合、図10および図11の制御フローを終了する。
【0158】
ステップS155において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを大きくするための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73のストロークを大きくする。ステップS153において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を低下させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を低下させる。サスペンション73のストローク、および、減衰力は、任意に設定することも可能である。
【0159】
制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れている状態に対応し、かつ、人力駆動車1が下り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73のストロークを大きくする制御、および、サスペンション73の減衰力を低下させる制御のうち、少なくとも1つを行う。これによって、荒れた路面状態、かつ、下り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の乗り心地を好適な状態にできる。制御部81は、ステップS155の処理を行った後、図10および図11の制御フローを終了する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0160】
ステップS151から移行したステップS156において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS157に移行する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、人力駆動車1が上り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS158に移行する。
【0161】
ステップS157において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73をロックアウト状態に切り替えるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。これによって、平滑な路面状態、かつ、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。
【0162】
制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応し、かつ、人力駆動車1が上り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73をロックアウト状態に切り替える。これによって、平滑な路面状態、かつ、上り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。制御部81は、ステップS157の処理を行った後、図10および図11の制御フローを終了する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0163】
ステップS156から移行したステップS158において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、ステップS159に移行する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、人力駆動車1が下り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が小さくなっていないと判定した場合、図10および図11の制御フローを終了する。
【0164】
ステップS159において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73のストロークを小さくするための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73のストロークを小さくする。ステップS159において、制御部81は、サスペンション73のアクチュエータ73aに対して、サスペンション73の減衰力を増加させるための信号を出力する。当該信号を受けたアクチュエータ73aは、サスペンション73の減衰力を増加させる。サスペンション73のストロークおよび減衰力は、任意に決定することが可能である。
【0165】
制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化が、路面が荒れていない状態に対応し、かつ、人力駆動車1が下り傾斜状態であると検出した場合、サスペンション73のストロークを小さくする制御、および、サスペンション73の減衰力を増加させる制御のうち、少なくとも1つを行う。これによって、平滑な路面状態、かつ、下り傾斜状態において、自動的に人力駆動車1の駆動効率を好適な状態にできる。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0166】
図10および図11のフローチャートでは、ステップS153、ステップS155、および、ステップS159において、サスペンション73のストローク、および、減衰力を制御する例を示すが、例えばサスペンション73のストローク、および、減衰力のうち1つのみを制御する構成とすることも可能である。
【0167】
(第4実施形態)
以下では、図12から図20を用いて、第4実施形態が説明される。第4実施形態に係る人力駆動車1の構成は、変速装置として、リアディレイラ72に加えてフロントディレイラ75を含んでいる点以外は、第1実施形態と同様である。本実施形態では、ディレイラは、フロントディレイラ75と、リアディレイラ72と、を含んでいる。以下の説明では、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0168】
図12に示すフロントディレイラ75は、リアディレイラ72と共に変速比を変更する変速装置である。フロントディレイラ75は、チェーン53を複数のフロントスプロケットの間で掛け替えることによって、変速比を変更できる。フロントディレイラ75は、フロントディレイラ75を動作するよう構成されるシフトモータ75a、および、フロントディレイラ75の動作状況を検出するように構成されるシフト段位置センサ75bを含む。シフトモータ75aおよびシフト段位置センサ75bは、有線によって制御部81と電気的に接続される。シフトモータ75aおよびシフト段位置センサ75bは、無線によって制御部81と電気的に接続されてもよい。シフトモータ75aは、制御部81からの制御信号に応じて駆動する。シフト段位置センサ75bは、検出値に応じた信号を制御部81に出力する。
【0169】
図1を参照し、本実施形態に係るフロントスプロケットアセンブリ51およびリアスプロケットアセンブリ52が以下で説明される。本実施形態に係るフロントスプロケットアセンブリ51およびリアスプロケットアセンブリ52は、それぞれ複数のスプロケットを含んでいる。フロントスプロケットアセンブリ51は、丁数の異なる複数のフロントスプロケットを含む。フロントスプロケットアセンブリ51は、少なくとも第1フロントスプロケットと、記第1フロントスプロケットとは異なる第2フロントスプロケットと、を有している。本実施形態では、フロントスプロケットアセンブリ51は、第1フロントスプロケット、および、第2フロントスプロケットを有している。第1フロントスプロケットの丁数は、第2フロントスプロケットの丁数よりも多い。フロントスプロケットアセンブリ51は丁数の異なる3以上のフロントスプロケットを含んでいてもよい。フロントスプロケットアセンブリ51が丁数の異なる2以上のフロントスプロケットを含む場合、フロントスプロケットアセンブリ51が人力駆動車1に取り付けられた状態において、最も丁数が多いフロントスプロケットは、最も丁数が少ないフロントスプロケットよりも、自転車のフレームの中心面から離れて配置される。
【0170】
リアスプロケットアセンブリ52は、丁数の異なる複数のリアスプロケットを含む。リアスプロケットアセンブリ52は、少なくとも第1リアスプロケットと、第1リアスプロケットとは異なる第2リアスプロケットと、を有している。本実施形態では、リアスプロケットアセンブリ52は、10個のリアスプロケットを有している。リアスプロケットアセンブリ52は丁数の異なる11以上のリアスプロケットを含んでいてもよく、丁数の異なる9以下のスプロケットで構成されてもよい。リアスプロケットアセンブリ52が2以上のリアスプロケットを含む場合、リアスプロケットアセンブリ52が人力駆動車1に取り付けられた状態において、最も丁数が多いリアスプロケットは、最も丁数が少ないリアスプロケットよりも、自転車のフレームの中心面の近くに配置される。チェーン53は、フロントスプロケットアセンブリ51に含まれる1つのフロントスプロケットと、リアスプロケットアセンブリ52に含まれる1のリアスプロケットと連結する。チェーン53を介して、フロントスプロケットアセンブリ51の回転力がリアスプロケットに伝達される。
【0171】
図13に示される変速テーブルTは、丁数の異なる複数のフロントスプロケットを含むフロントスプロケットアセンブリ51と、丁数の異なる複数のリアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリ52に関連する。変速テーブルTは、チェーン53が係合するフロントスプロケットの丁数を、チェーン53が係合するリアスプロケットの丁数で割った値で算出される変速比に関する。変速テーブルTでは、フロントスプロケットアセンブリ51が有する2個のフロントスプロケットと、リアスプロケットアセンブリ52が有する10個のリアスプロケットと、の組み合わせによって、20種類の変速比が規定されている。図13で示す変速テーブルTでは、フロントスプロケットを「FC」、リアスプロケットを「CS」と表記する。
【0172】
図13の例ではフロントスプロケットの丁数をリアスプロケットの丁数で割ることによって変速比を算出しているため、シフトアップすることによって変速比の値が大きくなるが、変速テーブルTで規定される変速比の算出方法は特に限定されない。
例えば、変速テーブルTで規定される変速比が、リアスプロケットの丁数をフロントスプロケットの丁数で割ることによって算出された値を変速比とすることも可能である。リアスプロケットの丁数をフロントスプロケットの丁数で割ることによって算出された値を変速比とする場合、図13の例とは異なり、シフトアップするほど変速比の値は小さくなるため、変速比を用いた各種制御の判断における大小関係も逆になる。以下の本実施形態においては、フロントスプロケットの丁数をリアスプロケットの丁数で割ることによって算出する値を変速比とする。
【0173】
図13に示す変速テーブルTでは、フロントスプロケットアセンブリ51が有する2個のフロントスプロケットのうち、丁数が多いフロントスプロケットである第1フロントスプロケットを「Top」と称し、丁数が少ないフロントスプロケットである第2フロントスプロケットを「Low」と称している。変速テーブルTでは、リアスプロケットアセンブリ52が有する10個のリアスプロケットを、丁数が多いリアスプロケットから丁数が少ないリアスプロケットの順に「1st」、「2nd」、「3rd」、・・・、「10th」と称している。図13に示す変速テーブルTでは、説明のため、各スプロケットの具体的な丁数と具体的な変速比の数値の一例が示される。フロントディレイラ75およびリアディレイラ72は、フロントスプロケットアセンブリ51およびリアスプロケットアセンブリ52のスプロケットのうち、任意のスプロケットにチェーン53を係合させることによって、人力駆動車1の変速比を、変速テーブルTで規定された任意の変速比に変更、つまり、変速できる。
【0174】
本実施形態では、制御部81は、手動変速モードと、自動変速モードと、の、2つの変速モードを含んでいる。制御部81は手動変速モードにおいて、搭乗者による操作部84の操作に従ってディレイラに信号を出力する。これによって手動変速モードでは、搭乗者による操作部84の操作に応じた変速が行われる。制御部81は自動変速モードにおいて、人力駆動車1の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合にディレイラを制御する。制御部81は自動変速モードにおいて、人力駆動車1の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合にディレイラのシフトモータを駆動する。これによって自動変速モードでは、人力駆動車1の走行状態に応じて自動的に変速が行われる。人力駆動車1の走行状態に関する参照値には、例えば、人力駆動車1の速度、人力駆動車1の傾き、人力駆動車1に入力されるケイデンス、人力駆動車1に入力されるトルク等に関する値が含まれる。手動変速モードと自動変速モードとは、操作部84に入力される操作によって任意に切り替えることができる。制御部81は、人力駆動車1の状態に応じて、手動変速モードと、自動変速モードと、を自動で切り替えてもよい。
【0175】
手動変速モードおよび自動変速モードは、フロントディレイラ75とリアディレイラ72とを協調して制御するシンクロモードと、フロントディレイラ75とリアディレイラ72とを個別に制御するノンシンクロモードとの、2つの変速モードをさらに含む。シンクロモードとノンシンクロモードとは、操作部84に入力される操作によって任意に切り替えることができる。制御部81は、人力駆動車1の状態に応じて、シンクロモードと、ノンシンクロモードと、を自動で切り替えてもよい。
【0176】
変速モードがシンクロモードである場合には、例えば図13において、シフトアップルートLU1およびシフトダウンルートLD1で示すように、変速テーブルTにおける所定の変速ルートを通るように、制御部81がフロントディレイラ75とリアディレイラ72を協調させて制御する。シフトアップルートLU1は、変速比を大きく変化させる際に使用される変速ルートである。またシフトダウンルートLD1は、変速比を小さく変化させる際に使用される変速ルートである。
【0177】
例えば図13に示す例では、チェーン53が係合しているフロントスプロケットが「Low」、かつ、チェーン53が係合しているリアスプロケットが「1st」の状態から操作部84によってシフトアップ操作が行われると、チェーン53が係合するリアスプロケットが「1st」から「6th」まで順に切り替えられる。さらにシフトアップ操作が行われると、チェーン53が係合しているフロントスプロケットが「Low」から「Top」に切り替えられると共に、チェーン53が係合しているリアスプロケットが「6th」から「4th」に切り替えられる。チェーン53と係合しているリアスプロケットが丁数の多いリアスプロケットに切り替えられるが、変速比は増加しており、滑らかな変速を行うことができる。さらにシフトアップ操作が行われると、チェーン53が係合しているリアスプロケットが「4th」から「10th」まで順に切り替えられる。制御部81は、シフトアップ操作が行われた場合、シフトアップルートLU1を通るようにフロントディレイラ75とリアディレイラ72を協調させて制御する。
【0178】
シフトダウン操作が行われた場合も同様に、制御部81は、シフトダウンルートLD1を通るようにフロントディレイラ75とリアディレイラ72を協調させて制御する。図13に示すシフトアップルートLU1およびシフトダウンルートLD1は一例であり、任意に設定できる。図13に示す例ではシフトアップルートLU1とシフトダウンルートLD1が異なっている例が示されるが、例えばシフトアップルートLU1とシフトダウンルートLD1を同一としてもよい。
【0179】
手動変速モードにおいては、制御部81は、人力駆動車1に設けられる操作部84へ入力される操作に応じてディレイラを制御する。制御部81は、人力駆動車1に設けられる操作部84へ入力される操作に応じてフロントディレイラ75またはリアディレイラ72を制御する。手動変速モードにおいては、操作部84の操作に応じて、1段変速による変速と、多段変速による変速を行うことができる。1段変速は、操作部84に入力される第1操作に応答してフロントディレイラ75またはリアディレイラ72を所定変速時間内に第1変速量動作させる。具体的には、制御部81は、操作部84に第1操作が入力された場合、フロントディレイラ75のシフトモータ75aまたはリアディレイラ72のシフトモータ160を所定時間内に第1変速量だけ駆動するように制御する。制御部81は、操作部84に第1操作が入力された場合、フロントディレイラ75のシフトモータ75aおよびリアディレイラ72のシフトモータ160を所定時間内に第1変速量だけ駆動するように制御してもよい。第1操作には、例えば操作部84のスイッチを1度だけ押す、操作部84のレバーを一度だけ操作する等の操作が含まれる。1段変速によって、チェーン53が係合するフロントスプロケットアセンブリ51またはリアスプロケットアセンブリ52のスプロケットを1段ずつ変更できる。
【0180】
多段変速は、第1操作とは異なる第2操作に応答してフロントディレイラ75またはリアディレイラ72を所定変速時間内に第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させる。具体的には、制御部81は、操作部84に第2操作が入力された場合、フロントディレイラ75のシフトモータ75aまたはリアディレイラ72のシフトモータ160を所定時間内に第2変速量だけ駆動するように制御する。多段変速は、チェーン53を、チェーン53が係合しているスプロケットと隣接するスプロケットに係合させることなく、2枚以上離れたスプロケットに係合される変速動作を含んでいてもよい。制御部81は、操作部84に第2操作が入力された場合、フロントディレイラ75のシフトモータ75aおよびリアディレイラ72のシフトモータ160を所定時間内に第2変速量だけ駆動するように制御してもよい。第2操作には、例えば操作部84のスイッチを所定時間内に複数回押す連打操作、操作部84のスイッチを所定時間以上押し続ける長押し操作、操作部84のレバーを所定時間以上操作し続ける等の操作が含まれる。多段変速によって、チェーン53が係合するフロントスプロケットアセンブリ51またはリアスプロケットアセンブリ52のスプロケットを複数段まとめて変更できる。多段変速によって、チェーン53が係合するリアスプロケットアセンブリ52のリアスプロケットを複数段変更できる。
【0181】
以下では、第4実施形態に係る、制御部81を含む制御装置80による人力駆動車1の制御が説明される。制御部81は、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて人力駆動車1に搭載されたディレイラを制御する。気圧検出部91は第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。
【0182】
制御部81は、所定時間内における気圧検出部91によって検出された検出値の変動が所定以上の場合、回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御する。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85と、第2タイヤ気圧検出装置86と、を含む。
【0183】
図20に示すように、制御部81は、人力駆動車1に設けられる操作部84へ入力される操作に応じてディレイラを制御し、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の傾斜状態を検出した場合、操作部84に入力される第1操作に応答してディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答してディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止できる。制御部81は、第1気圧検出部と、第2気圧検出部と、の検出値に基づいて、人力駆動車1の傾斜状態を検出する。
【0184】
以下では、制御部81を含む制御装置80による人力駆動車1の制御の具体的なフローチャートの一例が説明される。制御部81は、所定のタイミングで図14図19、および、図20に示すフローチャートに従った制御を開始する。制御を開始するタイミングには、例えば制御部81への電力供給が開始されたタイミングや、搭乗者が操作部84で所定の操作を行ったタイミングが含まれる。制御部81は、所定周期ごとに以下で説明されるフローチャートに従った制御を繰り返す。また制御部81は、所定のタイミングで以下で説明されるフローチャートに従った制御フローを終了する。制御フローを終了するタイミングには、例えば制御部81への電力供給が終了したタイミングや、搭乗者が操作部84で所定の操作を行ったタイミングが含まれる。
【0185】
図14は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であることを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。ステップS161において、制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であるか否かを判定する。判定の対象となるタイヤは、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤであればよい。前輪30および後輪20のうち、いずれかのタイヤの気圧が判定されてもよいし、両方のタイヤの気圧が判定されてもよい。
【0186】
制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上であると判定した場合、ステップS162に移行する。人力駆動車1が走行する路面が荒れている場合、人力駆動車1が平坦な路面を走行する場合と比較して、路面に接地するタイヤへの衝撃が強くなることが想定される。タイヤに加わる衝撃によって、タイヤ内の気圧が変化する。タイヤの気圧のある程度大きな変化が、ある程度頻繁に発生している場合、人力駆動車1が走行している路面が比較的荒れている状態であると推定できる。制御部81は、路面が比較的荒れている状態であることを検出できる。
【0187】
制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満であると判定した場合、ステップS163に移行する。タイヤの気圧があまり大きく変化していない、または、それほど頻繁に変化していないことから、人力駆動車1が走行している路面荒さが所定以下の状態であると推定できる。制御部81は、路面がそれほど荒れていない状態であることを検出できる。
【0188】
ステップS162において、制御部81は、後述する第1制御状態によるディレイラの制御を開始する。ディレイラは、フロントディレイラ75およびリアディレイラ72の少なくとも1つを含む。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数以上の場合に、ディレイラを第1制御状態で制御する。制御部81は、ステップS162の処理を行った後、図14の制御フローを終了する。
【0189】
ステップS163において、制御部81は、後述する第2制御状態によるディレイラの制御を開始する。ディレイラは、フロントディレイラ75およびリアディレイラ72の少なくとも1つを含む。制御部81は、所定時間内のタイヤの気圧の所定値以上の変化が、所定回数未満の場合に、ディレイラを第2制御状態で制御する。制御部81は、ステップS163の処理を行った後、図14の制御フローを終了する。
【0190】
以下では、第1制御状態および第2制御状態について具体的に説明される。制御部81は、第1制御状態および第2制御状態において、以下で説明される第1処理から第5処理までの少なくとも1つを行うことが可能である。
【0191】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、多段変速による変速を禁止または許可する処理である第1処理を行うことが可能である。
【0192】
制御部81は、第1制御状態において、1段変速による変速を許可すると共に、多段変速による変速を禁止する処理である第1禁止処理を行うことが可能である。制御部81は、第1制御状態において操作部84に入力される第1操作に応答してディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、第1制御状態において第1操作とは異なる第2操作に応答してディレイラを所定変速時間内に第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する。これによって、第1制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていることが推定される場合には多段変速による変速を禁止することによって、荒れた路面を走行している際の人力駆動車1の快適性の向上を図ることができる。
【0193】
制御部81は、第2制御状態において、1段変速による変速、および、多段変速による変速を許可する処理である第1許可処理を行うことが可能である。制御部81は、前記第2制御状態において、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させることを許可する。これによって、第2制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていないことが推定される場合には多段変速による変速を許可することによって、人力駆動車1の操作性の向上を図ることができる。
【0194】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、自動変速モードにおける変速の閾値を異ならせる処理である第2処理を行うことが可能である。制御部81は自動変速モードを含み、制御部81は自動変速モードにおいて、人力駆動車1の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合にディレイラを制御し、前記所定の閾値は第1制御状態の場合と第2制御状態の場合と、で、異なる。
【0195】
具体例を挙げると、前記参照値は、人力駆動車1に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値はケイデンスに関する値であり、制御部81は、第1制御状態において、前記閾値を増加させる処理である第2増加処理を行う。制御部81は、自動変速モードにおいてケイデンスを参照値としてディレイラを制御して変速動作を行う場合、第1制御状態における閾値を、第2制御状態における閾値よりも大きい値に設定する。これによって、第1制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていると推定できる状況では、ケイデンスに関する閾値を増加させることによってケイデンスが多い状況でも変速比が小さい状態を維持できるため、荒れた路面の走行時における快適性が向上する。
【0196】
第1制御状態におけるケイデンスの閾値を増加させるのではなく、第2制御状態におけるケイデンスの閾値を減少させる構成とすることも可能である。具体的には、前記参照値は、人力駆動車1に入力されるケイデンスを含み、前記閾値はケイデンスに関する値であり、制御部81は、前記第2制御状態において、前記閾値を減少させる処理である第2減少処理を行う。制御部81は、自動変速モードにおいてケイデンスを参照値としてディレイラを制御して変速動作を行う場合、第2制御状態における閾値を、第1制御状態における閾値よりも小さい値に設定する。これによって、第2制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていないことが推定できる状況では、ケイデンスに関する閾値を減少させることによって、ケイデンスが多くなると変速比を早期に大きくできるため、荒れていない路面の走行時における快適性が向上する。
【0197】
第2処理は、第2増加処理および第2減少処理の少なくともいずれかを含んでいればよい。第2処理は、第2増加処理または第2減少処理のいずれかのみを行ってもよく、第2増加処理および第2減少処理の双方を行ってもよい。
【0198】
自動変速モードで用いる人力駆動車1の走行状態に関する参照値としては、ケイデンス以外にも、例えば人力駆動車1の車速、ペダル13に入力されるトルク、および、人力駆動車1の傾斜状態、等を含んでもよい。複数の参照値の組み合わせを用いることも可能である。
【0199】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、ダンピング機構180によるプーリアセンブリ140の回転に対する回転抵抗力を変更する処理である第3処理を行うことが可能である。
【0200】
具体例を挙げると、制御部81は、第1制御状態において、ワンウェイクラッチ183を第1クラッチモードにするように、アクチュエータ184に信号を出力する。制御部81は、第1制御状態において、回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御する。制御部81は、第1制御状態において、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して比較的大きな回転抵抗力を付与する。したがって、路面が荒れていることが推定される第1制御状態において、チェーン53の弛みを抑制できる。
【0201】
制御部81は、第2制御状態において、ワンウェイクラッチ183を第2クラッチモードにするように、アクチュエータ184に信号を出力する。制御部81は、第2制御状態において、回転抵抗力が前記第2抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御する。これによって制御部81は、第2制御状態において、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して比較的小さな回転抵抗力を付与する。したがって、第2制御状態において、好適に変速を行うことができる。変速に応じたチェーン53のテンションの変化に応じてプーリアセンブリ140が回転し易くなり、好適に変速を行うことができる。アクチュエータ184は電動アクチュエータであってもよい。
【0202】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、シンクロモードで用いられる変速ルートを少なくとも部分的に異ならせる処理である第4処理を行うことができる。制御部81は変速比に関する変速テーブルTに基づいてディレイラを制御し、第1制御状態において、制御部81は変速テーブルTに基づく第1変速ルートでディレイラを制御し、第2制御状態において、第2変速ルートでディレイラを制御し、第1変速ルートと、第2変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。第1変速ルートは、シフトアップルートLU1、および、シフトダウンルートLD1を含む。第2変速ルートは、シフトアップルートLU2、および、シフトダウンルートLD2を含む。
【0203】
具体例を挙げると、図13および図15に示すように、制御部81は、第1制御状態と、第2制御状態と、で、チェーン53が「Low」のフロントスプロケットに係合している場合における変速ルートの変速比の有効範囲を異ならせる処理を行うことができる。
【0204】
具体的には、図13に示す第1制御状態のシフトアップルートLU1では、チェーン53が「Low」のフロントスプロケットに係合している場合における変速比の有効範囲は、0.67~1.26となっている。これに対して図15に示す第2制御状態のシフトアップルートLU2では、チェーン53が「Low」のフロントスプロケットに係合している場合における変速比の有効範囲は、0.67~1.14となっている。
【0205】
変速比を大きくさせる変速順序において、第1変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲は、第2変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていることが推定される場合には、「Low」のフロントスプロケットにチェーン53が係合している期間を長く確保することによって、シフトアップする際に「Low」から「Top」への切り替えが生じ難くなる。
【0206】
他の例として、図13および図16に示すように、制御部81は、第1制御状態と、第2制御状態とで、フロントスプロケットが「Top」に係合している場合における変速ルートの変速比の有効範囲を異ならせる処理を行うことができる。
【0207】
具体的には、図13に示す第1制御状態のシフトダウンルートLD1では、チェーン53が「Top」のフロントスプロケットに係合している場合における変速比の有効範囲は、1.19~3.45となっている。これに対して図16に示す第2制御状態のシフトダウンルートLD2では、チェーン53が「Top」のフロントスプロケットに係合している場合における変速比の有効範囲は、1.36~3.45となっている。
【0208】
変速比を小さくさせる変速順序において、第1変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲は、第2変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広い。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていることが推定される場合には、「Top」のフロントスプロケットにチェーン53が係合している期間を長く確保することによって、シフトダウンする際に「Top」から「Low」への切り替えが生じ難くなる。
【0209】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、変速比の最大値や最小値を異ならせる処理である第5処理を行うことができる。具体例を挙げると、図17および図18に示すように、制御部81は、第1制御状態と、第2制御状態とで、変速比の最大値および最小値を異ならせる処理を行うことができる。
【0210】
具体的には、制御部81は、第1制御状態において、図17に示すように、変速テーブルTの変速比のうち、最大値から少なくとも1つの変速比の使用を禁止する。制御部81は、第1制御状態において、変速テーブルTの変速比のうち、最大値から2つ以上の変速比の使用を禁止してもよい。制御部81は、禁止された変速比を使用しないようにディレイラを制御する。制御部81は、第1制御状態における変速比の最大値が、第2制御状態における変速比の最大値よりも小さくなるように、ディレイラを制御することができる。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていることが推定される場合には、路面が滑らかであると推定される場合に比べて変速比の最大値を小さくすることによって人力駆動車1の車速を抑制し、荒れた路面を安定して走行し易くできる。
【0211】
制御部81は、第2制御状態において、図18に示すように、変速テーブルTの変速比のうち、最小値から少なくとも1つの変速比の使用を禁止する。制御部81は、第2制御状態において、変速テーブルTの変速比のうち、最小値から2つ以上変速比の使用を禁止してもよい。制御部81は、禁止された変速比を使用しないようにディレイラを制御する。制御部81は、第1制御状態における変速比の最小値が、第2制御状態における変速比の最小値よりも小さくなるように、ディレイラを制御することができる。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が荒れていることが推定される場合には、路面が滑らかであると推定される場合に比べて変速比の最小値を小さくすることによって人力駆動車1の車速を抑制し、荒れた路面を安定して走行し易くできる。
【0212】
制御部81は、上述の第1処理~第5処理を適宜組み合わせて実行することが可能である。制御部81は、上述の第1処理~第5処理のいずれか1つのみを実行することや、2つ以上の処理を組み合わせて実行することが可能である。どの処理を実行するかは、任意に決定できる。
【0213】
図19は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧の双方が減少したことを検出して、人力駆動車1の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。ステップS171において、制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上小さくなったか否かを判定する。
【0214】
制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上小さくなったと判定した場合、ステップS172に移行する。前輪30および後輪20に加わる荷重がいずれも減少していることから、制御部81は、人力駆動車1が跳躍状態であることを推定できる。跳躍状態は、例えば前輪30、および、後輪20の少なくとも1つが地面から浮いている状態である。跳躍状態は、例えば前輪30、および、後輪20の両方が地面から浮いている状態である。制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のうち少なくとも1つのタイヤの気圧が、所定時間内に所定以上小さくなっていないと判定した場合、図19の制御フローを終了する。
【0215】
ステップS172において、制御部81は、ワンウェイクラッチ183を第1クラッチモードにするように、アクチュエータ184に信号を出力する。制御部81は、所定時間内における気圧検出部91によって検出された検出値の変動が所定以上の場合、回転抵抗力が前記第1抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御する。これによって制御部81は、ディレイラを好適な状態で制御できる。人力駆動車1のタイヤの気圧から人力駆動車1の跳躍状態を検出し、プーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して比較的大きな回転抵抗力を付与することによって、人力駆動車1の振動によってプーリアセンブリ140が第2の回転方向D2へ回転するのを抑制できる。それによって、人力駆動車1の振動による、チェーン53の大きな弛みを抑制できる。制御部81は、ステップS172の処理を行った後、ステップS173に移行する。気圧検出部91は第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。好ましくは、気圧検出部91は第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86の両方を含む。
【0216】
ステップS173において、制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上大きくなったか否かを判定する。
ステップS173において、制御部81は、ステップS171で検知した気圧の変化量と同じ値の気圧の増加を検知したか否かを判定するように構成されてもよい。
【0217】
制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも所定時間内に所定以上大きくなったと判定した場合、ステップS174に移行する。前輪30および後輪20に加わる荷重がいずれも増加していることから、制御部81は、人力駆動車1が接地状態であると推定できる。接地状態とは、前輪30、および、後輪20の少なくとも1つが地面に接している状態である。接地状態とは、前輪30、および、後輪20の両方が地面に接している状態である。
【0218】
制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20のうち少なくとも1つのタイヤの気圧が、所定時間内に所定以上大きくなっていないと判定した場合、ステップS173の処理を再度行う。制御部81は、人力駆動車1の前輪30および後輪20の両方のタイヤの気圧が、所定時間内に所定以上大きくなっていないと判定した場合に、ステップS173の処理を再度行うように構成されてもよい。
【0219】
ステップS174において、制御部81は、ワンウェイクラッチ183の状態を、ステップS172の処理以前の状態に戻す。具体的には、制御部81は、ステップS172の処理以前にワンウェイクラッチ183が第2クラッチモードであった場合には、アクチュエータ184に対して、ワンウェイクラッチ183を第2クラッチモードに切り替えるための信号を出力する。これによって、プーリアセンブリ140が第2抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御できる。制御部81は、ステップS174の処理を行った後、図19の制御フローを終了する。
【0220】
図19のフローチャートでは、人力駆動車1の前輪30および後輪20のタイヤの気圧に基づいて人力駆動車1が接地状態であることを検出する例が示されるが、例えば人力駆動車1がステップS171で示す跳躍状態となってから、または、ステップS172の処理を行ってから、所定の時間が経過した時点で人力駆動車1が接地状態になったと推定し、ステップS174の処理を行うことも可能である。
【0221】
図20は、気圧検出部91によって検出された気圧の変化に基づいて、制御部81がリアディレイラ72の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。より具体的には、気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86を含む。制御部81が、第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、リアディレイラ72の制御を行うためのフローチャートの一例を示す。第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の変化を検知することによって、人力駆動車1の傾斜状態に応じてリアディレイラ72を制御できる。
【0222】
ステップS181において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS183に移行する。前輪30に加わる荷重が減少し、後輪20に加わる荷重が増加していることから、制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であると推定できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS182に移行する。
【0223】
ステップS182において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、ステップS183に移行する。前輪30に加わる荷重が増加し、後輪20に加わる荷重が減少していることから、制御部81は、人力駆動車1が下り傾斜状態であると推定できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が小さくなっていないと判定した場合、図20の制御フローを終了する。
【0224】
ステップS183において、制御部81は、1段変速による変速を許可すると共に、多段変速による変速を禁止する。制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の傾斜状態を検出した場合、操作部84に入力される第1操作に応答してディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答してディレイラを前記所定変速時間内に第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する。気圧検出部91は第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86と、を含み、制御部81は、第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86と、によって検出されたタイヤの気圧の変化に基づいて、人力駆動車1の傾斜状態を検出した場合、操作部84に入力される第1操作に応答してディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答してディレイラを前記所定変速時間内に第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させることを禁止する。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。路面が傾斜していることが推定される場合には多段変速による変速を禁止することによって、傾斜した路面を走行している際の人力駆動車1の快適性の向上を図ることができる。制御部81は、ステップS183の処理を行った後、図20の制御フローを終了する。
【0225】
図20のフローチャートでは、人力駆動車1が上り傾斜状態、または、下り傾斜状態の少なくともいずれかである場合に多段変速を禁止する例が示されるが、例えば人力駆動車1が上り傾斜状態である場合にのみ、または、下り傾斜状態である場合にのみ、多段変速を禁止することも可能である。
【0226】
(第5実施形態)
以下では、図21を用いて、第5実施形態が説明される。第5実施形態は、図20に示すフローチャートに代えて、図21に示すフローチャートを用いる点以外は、第4実施形態と同様である。よって以下では、図21に示すフローチャートが説明される。
【0227】
ステップS191において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、ステップS192に移行する。前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が大きくなったと判定した場合、制御部81は、人力駆動車1が上り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が小さくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が大きくなっていないと判定した場合、ステップS193に移行する。
【0228】
ステップS192において、制御部81は、変速比を大きく変化させるシフトアップの際の多段変速による変速を禁止する。制御部81は、人力駆動車1の前輪30のタイヤの気圧が小さくなり、かつ、人力駆動車1の後輪20のタイヤの気圧が大きくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を大きく変化させることを禁止する。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。人力駆動車1が上り傾斜状態であることが推定される場合には多段変速による変速を禁止することによって、傾斜した路面を走行している際の人力駆動車1の快適性の向上を図ることができる。ステップS192の処理では変速比を大きく変化させる際の多段変速は禁止されが、変速比を小さく変化させるシフトダウンの際の多段変速は禁止されることはない。
【0229】
ステップS191から移行したステップS193において、制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったか否かを判定する。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、ステップS194に移行する。前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、後輪20のタイヤの気圧が小さくなったと判定した場合、制御部81は、人力駆動車1が下り傾斜状態であることを検出できる。制御部81は、前輪30のタイヤの気圧が大きくなっていない、または、後輪20のタイヤの気圧が小さくなっていないと判定した場合、図21の制御フローを終了する。
【0230】
ステップS194において、制御部81は、変速比を小さく変化させるシフトダウンの際の多段変速による変速を禁止する。制御部81は、人力駆動車1の前輪30のタイヤの気圧が大きくなり、かつ、人力駆動車1の後輪20のタイヤの気圧が小さくなった場合、前記第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第2変速量で動作させて変速比を小さく変化させることを禁止する。これによって、ディレイラを好適な状態で制御できる。人力駆動車1が下り傾斜状態であると推定できる場合には多段変速による変速を禁止することによって、傾斜した路面を走行している際の人力駆動車1の快適性の向上を図ることができる。
【0231】
ステップS194の処理では変速比を小さく変化させる際の多段変速は禁止されるが、変速比を大きく変化させるシフトアップの際の多段変速は禁止されることはない。制御部81は、ステップS192またはステップS194の処理を行った後、図21の制御フローを終了する。
【0232】
(第6実施形態)
以下では、図22を用いて、第6実施形態が説明される。第6実施形態において、制御部81は、気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の検出値に応じて、ディレイラを制御することができる。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85、および、第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。第6実施形態は、図14に示すフローチャートに代えて、図22に示すフローチャートを用いる点以外は、第4実施形態と同様である。よって以下では、図22に示すフローチャートが説明される。
【0233】
ステップS201において、制御部81は、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤの気圧が基準値未満であるか否かを判定する。制御部81は、前輪30および後輪20のうち、少なくとも1つのタイヤの気圧が基準値未満であると判定した場合、ステップS202に移行する。制御部81は、前輪30および後輪20のタイヤの気圧が、いずれも基準値以上であると判定した場合、ステップS203に移行する。
【0234】
ステップS202において、制御部81は、後述する第1制御状態によるディレイラの制御を開始する。制御部81は、ステップS202の処理を行った後、図22の制御フローを終了する。
【0235】
ステップS203において、制御部81は、後述する第2制御状態によるディレイラの制御を開始する。制御部81は、ステップS203の処理を行った後、図22の制御フローを終了する。
【0236】
以下では、第1制御状態および第2制御状態が具体的に説明される。第6実施形態の第1制御状態および第2制御状態で制御部81が行う処理は、第4実施形態の第1制御状態および第2制御状態で制御部81が行う処理と概ね同様である。したがって以下では、第4実施形態と同様の点は説明を簡略化し、異なる点が詳細に説明される。
【0237】
制御部81は、第6実施形態の第1制御状態および第2制御状態において、第4実施形態と同様の第1処理から第5処理までに加えて、後述する第6処理を行うことができる。第6実施形態では、制御部81は、第1処理から第6処理までの少なくとも1つを行うことができる。
【0238】
制御部81は、第1制御状態において、1段変速による変速を許可すると共に、多段変速による変速を禁止する処理である第1禁止処理を行うことが可能である。また制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、自動変速モードにおける変速の閾値を異ならせる処理である第2処理を行うことが可能である。制御部81は自動変速モードを含み、制御部81は自動変速モードにおいて、人力駆動車1の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合にディレイラを制御し、前記所定の閾値は第1制御状態の場合と第2制御状態の場合と、で、異なる。具体的には、制御部81は自動変速モードを含み、制御部81は自動変速モードにおいて、人力駆動車1の走行状態に関する参照値が所定の閾値に達した場合にディレイラを制御し、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記所定の閾値を増加させることが可能である。また前記参照値は、人力駆動車1に入力されるケイデンスに関する値を含み、前記閾値は、前記ケイデンスに関する値であり、制御部81は、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、前記閾値を増加させることが可能である。
【0239】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、ダンピング機構180によるプーリアセンブリ140の第2の回転方向D2への回転に対して付与する回転抵抗力を変更する処理である第3処理を行うことが可能である。具体的には、制御部81は、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、回転抵抗力が第1抵抗力付与状態になるようにアクチュエータ184を制御することが可能である。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。アクチュエータ184は、電動アクチュエータであってもよい。
【0240】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、シンクロモードで用いられる変速ルートを少なくとも部分的に異ならせる処理である第4処理を行うことができる。制御部81は変速比に関する変速テーブルTに基づいてディレイラを制御し、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、制御部81は変速テーブルTに基づく第3変速ルートで前記ディレイラを制御し、タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、制御部81は変速テーブルTに基づく第4変速ルートでディレイラを制御し、第3変速ルートと、第4変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。第3変速ルートは、シフトアップルートLU1、および、シフトダウンルートLD1を含む。第4変速ルートは、シフトアップルートLU2、および、シフトダウンルートLD2を含む。
【0241】
例えば、変速比を大きくする変速順序において、第3変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲は、第4変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広くすることが可能である。第3変速ルートは、シフトアップルートLU1を含む。第4変速ルートは、シフトアップルートLU2を含む。
【0242】
制御部81は変速比に関する変速テーブルTに基づいてディレイラを制御し、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、制御部81は変速テーブルTに基づく第1変速ルートで前記ディレイラを制御し、タイヤの気圧が所定の基準値以上である場合、制御部81は変速テーブルTに基づく第2変速ルートでディレイラを制御し、第3変速ルートと、第4変速ルートと、は少なくとも部分的に異なる。第1変速ルートは、シフトアップルートLU1、および、シフトダウンルートLD1を含む。第2変速ルートは、シフトアップルートLU2、および、シフトダウンルートLD2を含む。
【0243】
例えば、変速比を大きくする変速順序において、第1変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲は、第2変速ルートで第2フロントスプロケットにチェーン53が係合している場合における前記変速比の有効範囲よりも広くすることが可能である。第1変速ルートは、シフトアップルートLU1を含む。第2変速ルートは、シフトアップルートLU2を含む。
【0244】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、変速比の最大値や最小値を異ならせる処理である第5処理を行うことができる。第1処理から第5処理までは第4実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0245】
制御部81は、第1制御状態の場合と第2制御状態の場合とで、変速比を大きく変化させるシフトアップの際の多段変速による変速を禁止または許可する処理である第6処理を行うことが可能である。
【0246】
具体例を挙げると、制御部81は、第1制御状態において、変速比を大きく変化させるシフトアップの際には、1段変速による変速を許可すると共に、多段変速による変速を禁止する処理である第6禁止処理を行うことが可能である。制御部81は、タイヤの気圧が所定の基準値未満である場合、操作部84に入力される第1操作に応答して前記ディレイラを所定変速時間内に第1変速量動作させ、かつ、前記第1操作とは異なる第2操作に応答して前記ディレイラを前記所定変速時間内に前記第1変速量よりも大きい第2変速量で動作させて変速比を大きくすることを禁止する。これによって、第1制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。人力駆動車1のタイヤの気圧が低い状態において、多段変速による変速比を大きく変化させる変速を禁止することによって、人力駆動車1の快適性の向上を図ることができる。
【0247】
制御部81は、第2制御状態において、変速比を大きく変化させる際に、1段変速による変速、および、多段変速による変速を許可する処理である第6許可処理を行うことが可能である。これによって、第2制御状態において、ディレイラを好適な状態で制御できる。人力駆動車1のタイヤの気圧が大きい状態において、多段変速による変速を許可することによって、人力駆動車1の操作性の向上を図ることができる。
【0248】
第6実施形態に係る人力駆動車1は、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出されたタイヤの気圧の検出値が基準値未満の場合において人力駆動車1に搭載されたディレイラを第1制御状態で制御し、前記検出値が前記基準値以上の場合においてディレイラを第1制御状態とは異なる第2制御状態で制御する制御部81を備える。これによって、人力駆動車1のタイヤの気圧に基づいて、自動的にディレイラを好適な状態で制御できる。第6実施形態の第1制御状態および第2制御状態において第1処理から第6処理を行う場合、各処理に用いられる変速ルート、各種閾値等は、第5実施形態の場合と異ならせることが可能である。
【0249】
(第7実施形態)
図23から図25を用いて、第7実施形態が説明される。第7実施形態に係る人力駆動車1は、第1タイヤ気圧検出装置85、第2タイヤ気圧検出装置86、および、リアディレイラ72の構成が第1実施形態と異なっており、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0250】
図23に示す第7実施形態に係る第1タイヤ気圧検出装置85は、電子装置85Eを含む。電子装置85Eは、第1タイヤ気圧センサ85a、第1制御部85b、第1通信部85c、および、第1タイヤ加速度センサ85dを含む。第1タイヤ気圧センサ85a、第1制御部85b、および、第1通信部85cの構成は、第1実施形態と同様である。
【0251】
第1タイヤ加速度センサ85dは、前輪30の加速度を検出するように構成される。第1タイヤ加速度センサ85dは、前輪30に設けられ、前輪30の角加速度に応じた情報を出力する。
【0252】
第7実施形態に係る第1制御部85bは、第1タイヤ気圧検出装置85の動作モードを、第1モードと第2モードとの間で変更可能である。第1モードにおける第1タイヤ気圧検出装置85の消費電力は、第2モードにおける第1タイヤ気圧検出装置85の消費電力よりも小さい。第1制御部85bは、第1モードにおいて、タイヤの気圧の検出に関する処理を実行することなく、電力の消費を抑制する。第1制御部85bは、第2モードにおいて、タイヤの気圧の検出に関する処理を実行する。第1モードは、スリープモードに対応する。
【0253】
例えば第1制御部85bは、第2モードにおいて、第1タイヤ気圧センサ85aによって前輪30のタイヤの気圧を検出し、検出された気圧に関する情報を、第1通信部85cを介して外部に出力する。第1制御部85bは、例えば、気圧に関する情報を、制御部81および後述するリアディレイラ72の通信部72bに出力する。例えば第1制御部85bは、第1モードにおいて、第1タイヤ気圧センサ85aによる前輪30のタイヤの気圧の検出、および、第1通信部85cを介した信号の出力を行わない。
【0254】
第1制御部85bは、第1タイヤ加速度センサ85dによる加速度の検出結果に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替える。第1モードにおいて、第1タイヤ加速度センサ85dが所定の閾値以上の加速度を検出した場合、第1制御部85bは第1モードから第2モードに移行する。第1タイヤ加速度センサ85dによって検出される加速度が所定の閾値以上の場合は、前輪30が回転していると推定される。前輪30が回転していると推定される場合には、第1制御部85bは自動的に第2モードに移行できる。
【0255】
第2モードにおいて、第1タイヤ加速度センサ85dが所定の時間、所定の閾値以上の加速度を検出しないで、かつ、第1タイヤ気圧センサ85aから出力される信号が所定の時間変化しない場合、第1制御部85bは第2モードから第1モードに移行する。第1タイヤ加速度センサ85dが所定の時間、所定の閾値以上の加速度を検出しないで、かつ、第1タイヤ気圧センサ85aから出力される信号が所定の時間変化しない場合は、前輪30が回転していないと推定される。前輪30が回転していないと推定される場合には、第1制御部85bは自動的に第1モードに移行できる。
【0256】
第7実施形態に係る第2タイヤ気圧検出装置86は、電子装置86Eを含む。電子装置86Eは、第2タイヤ気圧センサ86a、第2制御部86b、第2通信部86c、および、第2タイヤ加速度センサ86dを含む。第2タイヤ気圧センサ86aは、第1タイヤ気圧センサ85aと同様な構成を有する。第2制御部86bは、第1制御部85bと同様な構成を有する。第2通信部86cは、第1通信部85cと同様な構成を有する。第2タイヤ加速度センサ86dは、第1タイヤ加速度センサ85dと同様な構成を有する。第2タイヤ気圧検出装置86の構成は、後輪20に設けられ、後輪20のタイヤの気圧を検出する点を除いて、第1タイヤ気圧検出装置85の構成と同様であるため、第2タイヤ気圧検出装置86の構成についての詳細な説明は省略される。
【0257】
第7実施形態に係るリアディレイラ72は、電子装置72Eを含む。電子装置72Eは、シフトモータ160、シフト段位置センサ170、クラッチモータ184a、制御部72a、通信部72b、および、記憶部72cを含む。概念的に、電子装置72Eには、後述する情報取得部を含むことも可能である。シフトモータ160、シフト段位置センサ170、および、クラッチモータ184aの構成は、第1実施形態の構成と同様である。第7実施形態に係るリアディレイラ72は、他の機器との通信を行うように構成される。第7実施形態に係るリアディレイラ72は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86と無線通信によって接続される。
【0258】
制御部72aは、リアディレイラ72を制御するように構成される。制御部72aは、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。
【0259】
通信部72bは、リアディレイラ72に設けられる。通信部72bは、例えば、固定部110、可動部120、または、リンク機構130に設けられる。通信部72bは、他の機器との通信を行うように構成される。通信部72bは、無線通信によって第1タイヤ気圧検出装置85の第1通信部85c、および、第2タイヤ気圧検出装置86の第2通信部86cと接続される。
【0260】
記憶部72cは、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部82は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。
【0261】
リアディレイラ72の制御部72aは、動作モードを、第3モードと第4モードとの間で変更可能である。第3モードにおける制御部72aの消費電力は、第4モードにおける制御部72aの消費電力よりも小さい。例えば制御部72aは、第3モードにおいて、シフトモータ160およびクラッチモータ184aを動作させることなく、電力の消費を抑制する。制御部72aは、第4モードにおいて、制御部81からの信号に応じて、シフトモータ160およびクラッチモータ184aを動作させる。制御部72aは、第3モードにおいて、シフト段位置センサ170による検出、および、信号の出力を行わない。制御部72aは、第4モードにおいて、シフト段位置センサ170の検出に応じた信号を制御部81に出力する。
【0262】
制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86から直接受信する無線信号に基づいて、シフトモータ160およびクラッチモータ184aを制御する構成としてもよい。制御部72aは、例えば第4実施形態、第5実施形態、および、第6実施形態において示される例と同様に、タイヤの気圧の検出値、および、タイヤの気圧の変化の少なくとも1つに基づいて、リアディレイラ72の動作を制御してもよい。制御部72aが、タイヤの気圧の検出値、および、タイヤの気圧の変化の少なくとも1つに基づいて、リアディレイラ72の動作を制御する場合、制御部72aは、リアディレイラ72を好適に制御できる。
【0263】
制御部72aは、第4モードにおいて、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86によって検出されるタイヤの気圧に関する第1情報を、記憶部72cに記憶させるように構成される。制御部72aは、第2モードにおいて、人力駆動車1に関する情報、および、人力駆動車用コンポーネント70に関する情報の少なくとも1つに関する第2情報を、記憶部72cに記憶させるように構成される。制御部72aは、第1情報および第2情報を対応付けて、記憶部72cに記憶させるように構成される。
【0264】
制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86から受信する無線信号によって、第1情報を取得できる。人力駆動車1に関する情報には、例えば人力駆動車1の車速、ケイデンス、人力駆動力、および、乗車状態の少なくとも1つが含まれる。人力駆動車1に関する情報を取得する第1情報取得部92は、車速センサ87、クランク回転センサ88、駆動力センサ89、および、着座センサ90の少なくとも1つを含む。
【0265】
人力駆動車用コンポーネント70に関する情報には、例えばドライブユニット71の動作状況に関する情報、サスペンション73の動作状況に関する情報、および、アジャスタブルシートポスト74の動作状況に関する情報の少なくとも1つが含まれる。ドライブユニット71の動作状況に関する情報は、人力駆動車1の推進の補助の有無に関する情報、モータ71aの回転数に関する情報、ドライブユニット71の温度に関する情報、モータ71aの温度に関する情報、制御基板の温度に関する情報、および、補助力に関する情報の少なくとも1つを含む。サスペンション73の動作状況に関する情報は、ストロークに関する情報、減衰力に関する情報、ロックアウト状態に関する情報、および、アンロック状態に関する情報の少なくとも1つを含む。アジャスタブルシートポスト74の動作状況に関する情報は、シートポスト74aの長さに関する情報を含む。人力駆動車用コンポーネント70に関する情報を取得する第2情報取得部は、各コンポーネントに設けられるアクチュエータ、および、各コンポーネントに設けられるセンサを含む。
【0266】
制御部72aは、第1情報取得部92および第2情報取得部からの情報を、制御部81を介して受信するように構成される。通信部72bは、第1情報取得部92および第2情報取得部からの情報を、無線通信によって直接受信するように構成され、制御部72aは通信部72bを介して第1情報取得部92および第2情報取得部からの情報を受信してもよい。
【0267】
電子装置72Eは、人力駆動車1に関する情報、および、人力駆動車用コンポーネント70に関する情報の少なくとも1つを取得するように構成される情報取得部と、気圧検出部91によって検出される第1情報、および、前記情報取得部によって取得される第2情報を対応付けて記憶するように構成される記憶部72cと、を含む。電子装置72Eは、人力駆動車1に関する情報、および、人力駆動車1に搭載されるコンポーネントに関する情報の少なくとも1つを取得するように構成される情報取得部と、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91によって検出される第1情報、および、前記情報取得部によって取得される第2情報を対応付けて記憶するように構成される記憶部72cと、を含む。コンポーネントは、人力駆動車用コンポーネント70を含む。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。情報取得部は、第1情報取得部92、および、第2情報取得部の少なくとも1つを含む。
【0268】
記憶部72cに記憶される第1情報と第2情報とが対応付けられる情報は、人力駆動車1のユーザが人力駆動車1の乗車テクニックを向上させるために用いられたり、人力駆動車1の開発企業が人力駆動車1の開発に役立てたりできる。例えば、記憶部72cには、タイヤの気圧から人力駆動車1の傾斜状態におけるドライブユニット71の動作状況および人力駆動力等の変化に関する情報が記録される。
【0269】
人力駆動車用の電子装置72Eは、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91と無線通信するように構成される通信部72bを備え、人力駆動車1に搭載される変速機、人力駆動車1に搭載されるサスペンション73、および、人力駆動車1に搭載されるアジャスタブルシートポスト74の少なくとも1つを含む人力駆動車用コンポーネント70に設けられる。人力駆動車用の電子装置72Eは、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91と無線通信するように構成され、人力駆動車1に搭載される人力駆動車用コンポーネント70に設けられる通信部72bを備える。人力駆動車用の電子装置72Eは、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91と無線通信するように構成される通信部72bを備える。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。電子装置72Eは、通信部72bが気圧検出部91から受信する情報に応じて、人力駆動車用コンポーネント70を制御する制御部72aをさらに備える。
【0270】
制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つからの無線信号に基づいて、第3モードから第4モードに移行するように構成される。図24は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つからの無線信号に応じて、制御部72aの動作モードが第3モードから第4モードに移行する制御フローの一例を示すフローチャートである。制御部72aは、第3モードにおいて、図24に示すフローチャートの処理を実行する。
【0271】
ステップS211において、制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86のうち少なくとも1つから無線信号を受信したか否かを判定する。無線信号には、第2モードである第1タイヤ気圧検出装置85または第2タイヤ気圧検出装置86が検出したタイヤの気圧に関する信号が含まれる。制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86のうち少なくとも1つから無線信号を受信した場合、人力駆動車1が走行していると推定される。
【0272】
制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86のうち少なくとも1つから無線信号を受信したと判定した場合、ステップS212に移行する。制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86から無線信号を受信していないと判定した場合、図24の制御フローを終了する。
【0273】
ステップS212において、制御部72aは、動作モードを第3モードから第4モードに移行する。例えば、制御部72aは、第4モードにおいて、制御部81からの信号に応じて、シフトモータ160およびクラッチモータ184aの動作を制御するように構成される。制御部72aは、ステップS212の処理が終了すると、図24の制御フローを終了する。
【0274】
制御部72aは、電力消費状態が、第1電力状態と、前記第1電力状態よりも消費電力が多い第2電力状態との間で切替わるように構成され、第1電力状態において、気圧検出部91から無線信号を通信部72bが受信した場合、第1電力状態から第2電力状態に切り替わる。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。制御部72aの第1電力状態は、制御部72aの第3モードに対応する。制御部72aの第2電力状態は、制御部72aの第4モードに対応する。
【0275】
制御部72aは、制御モードが、第3モードから第4モードに切り替わった後、予め定める条件が満たされると、制御モードが第4モードから再び第3モードに切り替わるように構成される。例えば制御部72aは、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86から無線信号を所定時間以上受信しない場合、および、操作部84によって所定の操作が行われた場合の少なくとも1つにおいて、制御モードを第4モードから第3モードに切り替えるように構成されてもよい。
【0276】
図25を参照して、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86と、リアディレイラ72の電子装置72Eとの間における無線通信の処理が説明される。図25は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86が送信する無線信号の送信タイミングと、電子装置72Eの通信部72bが信号を受信する受信タイミングを示すタイムチャートである。
図25に示すように、電子装置72Eの通信部72bは、間欠的に無線信号を受信するように構成される。通信部72bは、第1状態を受信時間T1の間継続し、第2状態を非受信時間T2の間継続する。通信部72bは、信号を受信可能な第1状態と、信号を受信不能な第2状態とを、繰り返し切り替えている。受信時間T1は、非受信時間T2と同じであってもよいし、非受信時間T2よりも短くてもよく、非受信時間T2よりも長くてもよい。
【0277】
第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86は、通信部72bに信号を出力する場合、所定の送信時間Toutの間継続して信号を出力する。送信時間Toutは、通信部72bの非受信時間T2よりも長い。好ましくは、送信時間Toutは、通信部72bの非受信時間T2よりも1.5倍以上よりも長い。通信部72bは、気圧検出部91からの無線信号を間欠的に受信し、非受信時間T2が気圧検出部91による信号の送信時間Toutよりも短くなるように構成される。
【0278】
通信部72bが間欠的に信号を受信することによって、通信部72bの消費電力を抑制できる。送信時間Toutを非受信時間T2よりも長く設定することによって、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つから出力される信号を受信しやすくできる。
【0279】
第7実施形態では、一例として電子装置72Eをリアディレイラ72に設ける例を示すが、電子装置72Eと同様の電子装置をリアディレイラ72以外の人力駆動車用コンポーネント70に設けることも可能である。例えば、電子装置72Eと同様の電子装置を、ドライブユニット71、サスペンション73、アジャスタブルシートポスト74、および、フロントディレイラ75の少なくとも1つに設けてもよい。人力駆動車用コンポーネント70は、電子装置72Eと同様の電子装置を含む場合、制御部81からの信号によらず、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86から直接受信した無線信号に基づいて、動作が制御されるように構成されてもよい。
【0280】
電子装置72Eと同様の電子装置を、人力駆動車用コンポーネント70に限らず、制御装置80に設けてもよい。制御装置80は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86からの無線信号に応じて、動作モードを第3モードから第4モードに移行するように構成されてもよい。第1情報と第2情報とを対応付けて制御装置80の記憶部82に記憶させてもよい。
【0281】
(第8実施形態)
図26を用いて、第8実施形態の電子装置85E、および、電子装置86Eが説明される。第8実施形態の電子装置85E、および、電子装置86Eは、リアディレイラ72ではなく、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つに設けられる。第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つは、外部の装置からの無線信号に応じて第1モードから第2モードに移行するように構成される。第8実施形態における第1タイヤ気圧検出装置85の基本的な構成は、第7実施形態における第1タイヤ気圧検出装置85と同様である。第8実施形態における第2タイヤ気圧検出装置86の基本的な構成は、第7実施形態における第2タイヤ気圧検出装置86と同様である。図26を参照して、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを第1モードから第2モードに移行させるための処理が説明される。
【0282】
図26は、第1タイヤ気圧検出装置85の動作モードが第1モードの場合に、外部の装置からの無線信号に応じて、第2モードに移行する制御フローの一例を示すフローチャートである。第1制御部85bは、第1モードにおいて、図26に示すフローチャートの処理を実行する。
【0283】
ステップS221において、第1制御部85bは、外部の装置から無線信号を受信したか否かを判定する。無線信号の発信元となる外部の装置には、種々の装置が含まれる。例えば外部の装置には、人力駆動車1に設けられる操作部84、制御部81等が含まれる。ユーザが操作部84に所定の操作を行う場合、操作部84から直接出力される無線信号、および、操作部84の操作に基づいて制御部81が通信部83から出力する無線信号を、第1タイヤ気圧検出装置85は受信するように構成される。
【0284】
外部の装置には、人力駆動車1に設けられる装置以外の装置も含まれる。例えば外部の装置には、人力駆動車1のユーザが所有する携帯型通信装置等が含まれる。具体的には、携帯型端末によって所定の操作が行われた場合、携帯型通信装置から出力された無線信号を、第1タイヤ気圧検出装置85が受信してもよい。携帯型通信装置は、例えば、スマートフォン、または、タブレット型コンピュータを含む。
【0285】
第1制御部85bは、外部の装置から第1通信部85cが無線信号を受信したと判定する場合、ステップS222に移行する。第1制御部85bは、外部の装置から無線信号を受信していないと判定した場合、図26の制御フローを終了する。
【0286】
ステップS222において、第1制御部85bは、第1モードから第2モードに移行する。第1制御部85bは第2モードにおいて、第1タイヤ気圧センサ85aによって前輪30のタイヤの気圧を検出し、検出された気圧に応じた信号を無線通信によって外部に出力するように構成される。第1制御部85bは、ステップS222の処理を行った後、図26の制御フローを終了する。
【0287】
第1制御部85bは、第2モードにおいて、所定の場合に再び第1モードに移行できる。例えば第1制御部85bは、第1タイヤ加速度センサ85dが所定の時間、所定の閾値以上の加速度を検出しない場合、外部の装置から無線信号を所定時間以上受信しない場合、および、操作部84によって所定の操作が行われた場合の少なくとも1つにおいて、第2モードから第1モードに移行するように構成される。
【0288】
第8実施形態において、第1タイヤ気圧検出装置85が外部の装置と無線信号を送受信する場合にも、第7実施形態と同様に、第1タイヤ気圧検出装置85は、間欠的な信号の送受信を行ってもよい。
【0289】
電子装置85Eは、人力駆動車用の電子装置85Eであって、人力駆動車1の少なくとも1つのタイヤの気圧を検出する気圧検出部91と、外部の装置と無線通信するように構成される通信部と、を備え、前記気圧検出部91は、電力消費状態が、第1電力状態と、前記第1電力状態よりも消費電力が多い第2電力状態との間で切替わるように構成され、前記第1電力状態において、前記外部の装置から無線信号を前記通信部が受信した場合、前記第1電力状態から前記第2電力状態に切り替わるように構成される。気圧検出部91は、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つを含む。通信部は、第1通信部85cおよび第2通信部86cの少なくとも1つを含む。
【0290】
図26を用いて第1タイヤ気圧検出装置85が第1モードから第2モードに移行する処理について説明したが、第2タイヤ気圧検出装置86も第1タイヤ気圧検出装置85と同様に、外部の装置からの無線信号に基づいて第1モードから第2モードに移行ように構成されてもよい。
【0291】
第7実施形態における電子装置72E、電子装置85Eおよび電子装置86Eの少なくとも1つと、第8実施形態における電子装置85Eおよび電子装置86Eの少なくとも1つと、を共に含む電子システムSが構成されてもよい。電子システムSは、第7実施形態における電子装置72Eと、気圧検出部91または第8実施形態における電子装置85Eおよび電子装置86Eと、を備えていてもよい。電子システムSは、電子装置72Eと、電子装置85Eおよび電子装置86Eの少なくとも1つと、を備えていてもよい。電子装置72Eと、電子装置85Eおよび電子装置86Eの少なくとも1つと、を備える場合、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つが外部の装置からの無線信号に応じて第1モードから第2モードに移行し、第1タイヤ気圧検出装置85および第2タイヤ気圧検出装置86の少なくとも1つからの無線信号に応じて、リアディレイラ72が第3モードから第4モードに移行するように構成される。
【0292】
(変形例)
各実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用制御装置、電子装置、および、電子システムが取り得る形態の例示であり、本発明を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車用制御装置、電子装置、および、電子システムは、例えば以下に示す各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わされた形態を取り得る。
【0293】
例えば、各実施形態における人力駆動車1の構成は一例であり、人力駆動車1は、各実施形態において示されない各種装置を含んでいてもよく、各実施形態において示す各種装置のうち一部を含まない構成としてもよい。各実施形態において、変速装置としてリアディレイラ72およびフロントディレイラ75を示すが、変速装置は、ディレイラ以外の構成を含んでいてもよい。例えば、変速装置は、内装変速機を含んでいてもよい。
【0294】
各実施形態において例示される構成は、相互に矛盾しない範囲において互いに組み合わせられてもよい。各実施形態において示す各フローチャートの全てを実行する必要はなく、一部のフローチャートの処理を適宜省略することも可能である。各実施形態において例示されるフローチャートの処理内容および処理順序は一例であり、本発明の範囲内において適宜処理内容および処理順序を変更することが可能である。
【0295】
実施形態において例示される制御において用いられる各種の閾値は限定されず、任意に設定されてもよい。各種の閾値は、操作部84の操作等によって任意に変更されてもよい。
【0296】
各実施形態において例示される変速テーブルTは一例であり、変速テーブルTの具体的な内容は限定されない。例えば、リアスプロケットおよびフロントスプロケットの個数や丁数は、任意に変更されてもよい。変速テーブルTに示す変速ルートは一例であり、限定されない。変速ルートを、操作部84の操作等によって任意に変更可能とできる。図25に示されるタイミングチャートは一例であり、無線信号送信タイミング、および、受信タイミングは、任意に変更されてもよい。
【0297】
各実施形態において、人力駆動車1の状態および路面の状態に応じる各種制御が例示されるが、制御において、人力駆動車1の状態、および、路面の状態が推定され得る物理量を検出し、検出結果に基づいて制御を行うように構成されてもよい。例えば、タイヤの気圧、タイヤの気圧の変化量、人力駆動車1の状態や路面の状態を推定するための物理量は、各実施形態において例示する物理量に限らず、その他種々の物理量から各状態を推定されてもよい。その他種々の物理量は、例えば、振動、衝撃、および、加速度の少なくとも1つを含む。
【0298】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0299】
1…人力駆動車、20…後輪、30…前輪、50…駆動機構、70…人力駆動車用コンポーネント、71…ドライブユニット、72…リアディレイラ、72a…制御部、72b…通信部、72c…記憶部、72E…電子装置、73…サスペンション、74…アジャスタブルシートポスト、75…フロントディレイラ、80…制御装置、81…制御部、82…記憶部、83…通信部、84…操作部、85…第1タイヤ気圧検出装置、85a…第1タイヤ気圧センサ、85b…第1制御部、85c…第1通信部、85d…第1タイヤ加速度センサ、85E…電子装置、86…第2タイヤ気圧検出装置、87…車速センサ、88…クランク回転センサ、89…駆動力センサ、90…着座センサ、110…固定部、120…可動部、130…リンク機構、140…プーリアセンブリ、180…ダンピング機構、184…電動アクチュエータ、190…付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26