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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042284
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230317BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149510
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA47
2H199CA66
2H199CA68
2H199CA75
2H199CA84
2H199CA85
2H199CA87
2H199CA92
2H199CA93
2H199CA94
2H199CA95
(57)【要約】
【課題】
広画角な映像を表示可能でかつ色ムラのない映像を表示可能なヘッドマウントディスプレイを提供すること。
【解決手段】
ユーザの視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、表示する映像を生成する映像表示部と、映像表示部からの映像光を複製する第1導光板と第2導光板とを備え、第1導光板及び第2導光板は夫々映像光を内部反射で閉じ込める平行な1組の主面を有し、第1導光板は映像光を内部へ反射する入射面と第2導光板へ映像光を出射する2つ以上の出射反射面を備え、第2導光板は第1導光板からの映像光を内部へ結合する入力部とユーザの瞳へ映像光を出射する出力部を備え、第1導光板の入射面から一番遠い出射反射面において青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高い構成とする。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、
表示する映像を生成する映像表示部と、
前記映像表示部からの映像光を複製する第1導光板と第2導光板とを備え、
前記第1導光板及び前記第2導光板は夫々映像光を内部反射で閉じ込める平行な1組の主面を有し、
前記第1導光板は映像光を内部へ反射する入射面と前記第2導光板へ映像光を出射する2つ以上の出射反射面を備え、
前記第2導光板は前記第1導光板からの映像光を内部へ結合する入力部とユーザの瞳へ映像光を出射する出力部を備え、
前記第1導光板の前記入射面から一番遠い出射反射面において青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高いことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高い前記出射反射面において、
青色波長領域の反射率は赤色波長領域の反射率の1.0倍~2.0倍の範囲にあることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第1導光板の2つ以上の出射反射面において、青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高いことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第1導光板の2つ以上の出射反射面において、青色波長領域の反射率と赤色波長領域の反射率の比は前記入射面から遠くなるほど大きくなることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高い前記出射反射面において、
該出射反射面の反射率は、(青色波長領域の反射率)>(緑色波長領域の反射率)>(赤色波長領域の反射率)の波長依存性を持つことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項6】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記映像表示部の映像光を拡大し前記第1導光板に投射する投射部を有し、
前記第1導光板の2つ以上の出射反射面の面間隔は前記投射部の光径よりも小さいことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項7】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第1導光板の前記入射面と前記出射反射面は互いに平行かつ前記主面とは異なる角度であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項8】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第1導光板の主面に対する前記出射反射面の傾き角度は所定の角度θであって、
前記角度θは20°~40°の範囲にあることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項9】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第1導光板の2つ以上の出射反射面の反射率は前記入射面から遠くなるほど高いことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項10】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第2導光板の出力部は2つ以上の部分反射面であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項11】
請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記部分反射面の反射率が10%以下であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項12】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第2導光板の入力部は2つ以上の入力反射面であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
請求項12に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記2つ以上の入力反射面の反射率は前記第2導光板の出力部に近いほど低くなることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項14】
請求項12に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記2つ以上の入力反射面の前記出力部から一番遠い入力反射面において青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高いことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項15】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
前記第2導光板は回折格子又は体積ホログラムを備えた導光板であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項16】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
電力を供給する電力供給部と、
ユーザの位置や姿勢を検出するセンシング部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
前記電力供給部と前記センシング部と前記音声処理部の制御を行う制御部を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項17】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイであって、
ユーザの頭の動きを検出する加速度センサと、
前記加速度センサで検出したユーザの頭の動きに応じて表示コンテンツを変えるヘッドトラッキング部と、
電力を供給する電力供給部と、
音声信号の入力または出力を行う音声処理部と、
前記加速度センサと前記ヘッドトラッキング部と前記電力供給部と前記音声処理部の制御を行う制御部を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの頭部に装着され視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも略す)のようなウェアラブルデバイスは、良好な視界の確保や映像の視認性といった表示性能だけでなく、小型であるとともに軽量であり、装着性に優れる構造が要求される。HMDは、導光板を用いることでシースルー性を備えた映像表示装置を実現できる。また、導光板は、映像光を複製してユーザに投射するので、広いアイボックス(ユーザが映像を視認できるエリア)を実現できる。また、導光板は、全反射による光の閉じ込めを用いて映像光をユーザの目に伝搬させるため、薄型化と、小型、軽量化が図れるという特徴がある。
【0003】
本技術分野における先行技術文献として特許文献1がある。特許文献1には、投射部からの映像光を複製する第1導光板と第2導光板とを備え、第1導光板は映像光を内部へ反射する入力部と、第2導光板へ映像光複製して出射する部分反射面を備え、第2導光板は第1導光板からの映像光を内部へ結合する結合部と、ユーザの瞳へ映像光を複製して出射する出力部とを備えたHMDが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-116261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、第1導光板と第2導光板とを備えることで、表示映像の大視野角化を実現している。
【0006】
しかしながら、薄型化と、小型、軽量化を図りながら、さらなる表示映像の広画角化を図るには、導光板が全反射で映像光を伝搬できるように導光板硝材の屈折率を大きくする必要がある。ここで、導光板硝材の高屈折率化は、特に青色波長側で導光板による光吸収が大きくなり、特に導光板内部の伝搬経路が長く入射面から一番遠い反射面から出射される映像光の青色波長側の出射効率が低下する。そのため表示映像に色ムラが発生するという課題が生じる。
【0007】
特許文献1では、上記、導光板硝材の高屈折率化に伴う表示映像の色ムラについて考慮されていない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、薄型化と、小型、軽量化を図りながら、さらなる広画角な映像を表示可能でかつ色ムラのない映像を表示可能なHMDを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一例を挙げるならば、ユーザの視野内に映像を表示するヘッドマウントディスプレイであって、表示する映像を生成する映像表示部と、映像表示部からの映像光を複製する第1導光板と第2導光板とを備え、第1導光板及び第2導光板は夫々映像光を内部反射で閉じ込める平行な1組の主面を有し、第1導光板は映像光を内部へ反射する入射面と第2導光板へ映像光を出射する2つ以上の出射反射面を備え、第2導光板は第1導光板からの映像光を内部へ結合する入力部とユーザの瞳へ映像光を出射する出力部を備え、第1導光板の入射面から一番遠い出射反射面において青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高い構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄型化と、小型、軽量化を図りながら、さらなる広画角な映像を表示可能でかつ色ムラのない映像が表示可能なHMDを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施例1におけるHMDの機能ブロック構成図である。
図1B図1Aに示したHMDのハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。
図2】実施例1における虚像映像生成部のブロック構成図である。
図3】実施例1におけるHMDの使用形態を示す図である。
図4】実施例1における第1導光板及び第2導光板の構成図である。
図5A】実施例1における課題を説明するための虚像の光路を説明する図である。
図5B】実施例1における課題を説明するための虚像の明るさの分布を説明する図である。
図6A】実施例1における第1導光板の出射反射面の反射率の波長特性を説明する図である。
図6B】実施例1における虚像の明るさの分布を説明する図である。
図7A】実施例1における第1導光板の出射反射面の反射率の他の波長特性を説明する図である。
図7B】実施例1における第1導光板の出射反射面の反射率の他の波長特性を説明する図である。
図7C】実施例1における虚像の明るさの他の分布を説明する図である。
図8A】実施例1における第1導光板及び第2導光板の詳細な構成を説明する上面図である。
図8B】実施例1における第1導光板及び第2導光板の詳細な構成を説明する側面図である。
図9A】実施例1における第1導光板及び第2導光板の詳細な構成および光路を説明する図である。
図9B】実施例1における第1導光板及び第2導光板の詳細な構成および光路を説明する図である。
図10】実施例2における第1導光板及び第2導光板の構成図である。
図11】実施例2における第2導光板の構成を説明する図である。
図12】実施例2における第2導光板の変形例を説明する図である。
図13】実施例3におけるHMDの使用例を示す図である。
図14】実施例3におけるHMDの機能ブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例0013】
図1Aは、本実施例におけるHMDの機能ブロック構成図である。図1Aにおいて、HMD1は、虚像映像生成部101と、制御部102と、画像信号処理部103と、電力供給部104と、記憶部105と、センシング部106と、通信部107と、音声処理部108と、撮像部109と、入出力部91~93とを有する。
【0014】
虚像映像生成部101は、後述する小型ディスプレイ部で生成した映像を虚像として拡大投射して、装着者(ユーザ)の視界に拡張現実(AR:Augmented Reality)や混合現実(MR:Mixed Reality)の映像を表示する。
【0015】
制御部102は、HMD1全体を統括的に制御する。制御部102は、CPU等の演算装置によってその機能が実現される。画像信号処理部103は、虚像映像生成部101内の表示部に対し、表示用の映像信号を供給する。電力供給部104は、HMD1の各部に対し電力を供給する。
【0016】
記憶部105は、HMD1の各部の処理に必要な情報や、HMD1の各部で生成された情報を記憶する。また、制御部102の機能がCPUによって実現される場合、CPUが実行するプログラムやデータを記憶する。記憶部105は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイスで構成される。
【0017】
センシング部106は、コネクタである入出力部91を介して各種センサと接続され、各種センサによって検出された信号に基づいて、HMD1の姿勢(すなわちユーザの姿勢、ユーザの頭の向き)や、動き、周囲温度等を検出する。各種センサとして、例えば、傾斜センサや加速度センサ、温度センサ、ユーザの位置情報を検出するGPS(Global Positioning System)のセンサ等が接続される。
【0018】
通信部107は、コネクタである入出力部92を介して、近距離無線通信、遠距離無線通信、または有線通信によって、外部の情報処理装置と通信を行う。具体的には、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、移動体通信ネットワーク、ユニバーサルシリアルバス(USB、登録商標)、高精細度マルチメディアインターフェース(HDMI(登録商標))等によって通信を行う。
【0019】
音声処理部108は、コネクタである入出力部93を介して、マイクやイヤホン、スピーカ等の音声入出力装置と接続され、音声信号の入力または出力を行う。撮像部109は、例えば小型カメラや小型TOF(Time Of Flight)センサであり、HMD1のユーザの視界方向を撮影する。
【0020】
図1Bは、HMD1のハードウェア構成の一例を示すブロック構成図である。図1Bに示すように、HMD1は、CPU201と、システムバス202と、ROM(Read Only Memory)203と、RAM204と、ストレージ210と、通信処理器220と、電力供給器230と、ビデオプロセッサ240と、オーディオプロセッサ250と、センサ260とを有して構成されている。
【0021】
CPU201は、HMD1全体を制御するマイクロプロセッサユニットである。CPU201は図1Aにおける制御部102に対応するものである。システムバス202は、CPU201とHMD1内の各動作ブロックとの間でデータを送受信するためのデータ通信路である。
【0022】
ROM203は、オペレーティングシステム等の基本動作プログラムやその他の動作プログラムが格納されたメモリであり、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュROMのような書き換え可能なROMを用いることができる。
【0023】
RAM204は、基本動作プログラムやその他の動作プログラム実行時のワークエリアとなる。ROM203及びRAM204は、CPU201と一体の構成であってもよい。また、ROM203は、図1Bに示したような独立構成ではなく、ストレージ210内の一部記憶領域を使用してもよい。
【0024】
ストレージ210は、HMD1の動作プログラムや動作設定値、HMD1を使用するユーザの個人情報210a等を記憶する。以下では特に例示していないが、ネットワーク上からダウンロードした動作プログラムや、その動作プログラムが作成した各種データを記憶してもよい。また、ストレージ210の一部記憶領域をROM203の機能の一部または全部を代替してもよい。ストレージ210には、例えば、フラッシュROMやSSD、HDD等のデバイスを用いてよい。ROM203、RAM204、ストレージ210は、記憶部105に対応するものである。なお、ROM203やストレージ210に記憶された上記動作プログラムは、ネットワーク上の各装置からダウンロード処理を実行することにより、更新及び機能拡張することができる。
【0025】
通信処理器220は、LAN(Local Area Network)通信器221、電話網通信器222、NFC(Near Field Communication)通信器223、BlueTooth通信器224を有して構成される。通信処理器220は図1Aにおける通信部107に対応するものである。図1Bでは、通信処理器220にLAN通信器221、NFC通信器223、BlueTooth通信器224が含まれる場合を例示しているが、図1Aで説明したように、これらが入出力部92を介してHMD1外部の機器として接続されていてもよい。LAN通信器221は、アクセスポイントを介してネットワークと接続され、ネットワーク上の装置との間でデータを送受信する。NFC通信器223は、対応するリーダ/ライタが近接した際に無線通信してデータを送受信する。BlueTooth通信器224は、近接する情報処理装置と無線通信してデータを送受信する。なお、HMD1は、移動体電話通信網の基地局との間で通話およびデータを送受信する電話網通信器222を有していてもよい。
【0026】
虚像映像生成機構225は図1Aにおける虚像映像生成部101に対応するものである。虚像映像生成機構225の具体的な構成については、図2を用いて後述する。
【0027】
電力供給器230は、所定の規格でHMD1に電力を供給する電源機器である。電力供給器230は、図1Aにおける電力供給部104に対応するものである。図1Bでは、HMD1に電力供給器230が含まれる場合を例示しているが、これらが入出力部91~93のいずれかを介してHMD1の外部機器として接続され、HMD1が当該外部機器から電源の供給を受けてもよい。
【0028】
ビデオプロセッサ240は、ディスプレイ241と、画像信号処理プロセッサ242と、カメラ243とを有して構成される。画像信号処理プロセッサ242は図1Aにおける画像信号処理部103に対応するものである。また、カメラ243は図1Aにおける撮像部109に対応するものであり、ディスプレイ241は後述する小型ディスプレイ部に対応するものである。図1Bでは、ビデオプロセッサ240にディスプレイ241とカメラ243とが含まれる場合を例示しているが、図1Aで説明したように、これらが入出力部93を介してHMD1の外部機器として接続されていてもよい。
【0029】
ディスプレイ241は、画像信号処理プロセッサ242が処理した画像データを表示する。画像信号処理プロセッサ242は、入力された画像データをディスプレイ241に表示させる。カメラ243は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の電子デバイスを用いてレンズから入力した光を電気信号に変換することにより、周囲や対象物の画像データを入力する撮像装置として機能するカメラユニットである。
【0030】
オーディオプロセッサ250は、スピーカ251と、音声信号プロセッサ252と、マイク253とを有して構成される。オーディオプロセッサ250は図1Aにおける音声処理部108に対応するものである。図1Bでは、オーディオプロセッサ250にスピーカ251とマイク253とが含まれる場合を例示しているが、図1Aで説明したように、これらが入出力部93を介してHMD1の外部機器として接続されていてもよい。
【0031】
スピーカ251は、音声信号プロセッサ252が処理した音声信号を出力する。音声信号プロセッサ252は、入力された音声データをスピーカ251に出力する。マイク253は、音声を音声データに変換し、音声信号プロセッサ252に出力する。
【0032】
センサ260は、HMD1の状態を検出するためのセンサ群であり、GPS受信機261と、ジャイロセンサ262と、地磁気センサ263と、加速度センサ264と、照度センサ265と、近接センサ266とを有して構成される。センサ260はセンシング部106に対応するものである。図1Bでは、センサ260にGPS受信機261と、ジャイロセンサ262と、地磁気センサ263と、加速度センサ264と、照度センサ265と、近接センサ266とが含まれる場合を例示しているが、図1Aで説明したように、これらが入出力部91を介してHMD1の外部機器として接続されていてもよい。これらの各センサは従来から知られている一般的なセンサ群であるため、ここではその説明を省略する。また、図1Bに示したHMD1の構成はあくまで一例であり、必ずしもこれらの全てを備えていなくてもよい。
【0033】
図2は、本実施例における虚像映像生成部101のブロック構成図である。虚像映像生成部101は、映像表示部120、投射部121、第1導光板122、および第2導光板123で構成される。映像表示部120は、表示する映像を生成する装置であって、LEDやレーザなどの光源からの光を内蔵する小型ディスプレイ部に照射する。小型ディスプレイ部は、映像を表示するための素子であり、液晶ディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、ファイバスキャニングデバイス等が用いられる。投射部121は、投射レンズを有し、映像表示部120の映像光を拡大し、虚像として投射する装置である。第1導光板122はアイボックス拡大のために映像光の複製を行う。第2導光板123は、第1導光板122とは異なる方向にアイボックス拡大の為の映像光複製を行いかつ投射部121および第1導光板122からの映像光をユーザの瞳20へ伝達する。ユーザは、映像光が瞳20内の網膜に結像されることで映像を視認できる。
【0034】
図3は、本実施例におけるHMD1の使用形態を示す図である。図3は、ユーザ2の頭上方向から見下ろした状態を示し、X軸は水平方向、Y軸は垂直方向、Z軸はユーザ2の視線方向である視軸方向である。以後の図面においても、X、Y、Z軸の方向を同様に定義する。
【0035】
図3に示すように、HMD1は、ユーザ2の頭部に装着され、虚像映像生成部101で生成した映像を第2導光板123を介してユーザの瞳20に伝播させる。その際ユーザ2は、視野内の一部の映像表示領域111に、外界が視認可能な状態(シースルー型)で映像(虚像)を視認できる。なお、図3では片眼に映像を表示する構成を示しているが、両眼の構成としても構わない。また、HMD1は、図1Aの撮像部109において、ユーザ2の視野範囲を撮影することも可能である。
【0036】
図4は、本実施例における第1導光板及び第2導光板の構成図である。虚像映像生成部101により形成されるアイボックスは、映像の視認性の観点から2次元方向に拡大されることが望ましい。アイボックスを2次元に拡大するために、図4では第1導光板122によって水平方向のアイボックスを拡大する。第1導光板122は、映像光を第1導光板122の内部へ反射する入射面130と映像光を内部反射となる全反射で閉じ込める主要な2つの平行平面である主面131、132と、内部の映像光を第1導光板外へ出射する2つ以上の出射反射面群133とを備える。第2導光板123は、映像光を第2導光板123の内部へ反射する入射面140(入力部)と映像光を全反射で閉じ込める主要な2つの平行平面である主面141、142と、内部の映像光を第2導光板外へ出射する出射反射面群143(出力部)とを備える。第2導光板123はユーザの瞳20に向かって映像を出射する。このように、本実施例における虚像映像生成部101は、第1導光板122及び第2導光板123は夫々映像光を内部反射で閉じ込める平行な1組の主面131、132及び141、142を有し、第1導光板122は映像光を内部へ反射する入射面130と、第2導光板123へ映像光を出射する2つ以上の出射反射面群133を備え、入射面130と出射反射面群133は互いに平行かつ主面とは異なる角度であり、第2導光板123は第1導光板122からの映像光を内部へ結合する入射面140(入力部)と、ユーザの瞳20へ映像光を出射する出射反射面群143(出力部)を有している。
【0037】
第1導光板122の出射反射面群133と第2導光板123の出射反射面群143は一部の光を反射し、一部の光を透過又は吸収する部分反射面であり、部分反射面はアレイ状に配列する。第1導光板122の出射反射面群133の配列方向と第2導光板123の出射反射面群143の配列方向とが異なることでアイボックスの2次元方向拡大を実現できる。したがって映像表示部120及び投射部121の光径Pを小さく(F値を大きく)でき虚像映像生成部101の大幅な小型化を実現できる。
【0038】
第1導光板122の出射反射面群133は画質の観点から反射映像光に角度ズレが生じないよう互いに平行であることが望ましい。同様に第2導光板123の出射反射面群143も互いに平行であることが望ましい。平行度が低下すると出射反射面群133または143の反射後の光線角度が反射面毎に異なり迷光が生じて画質が劣化する。
【0039】
また、第1導光板122の入射面130と出射反射面群133も平行とすると加工工程が簡素化され製造コストを低減できる。これは各反射膜を製膜した平板を積み上げて接着一体化し切り出すことで、入射面から出射反射面までをまとめて加工できる上、複数枚の第1導光板を切り出すことが可能となる。入射面130の角度が異なる場合、導光板を切り出し、更に入射面を所定の角度に切断する工程の後に入射面を製膜する必要がある。第2導光板123の入射面140と出射反射面群143も同様に平行であることで加工を簡素化しコストを抑制できる。
【0040】
また、図4では表示映像(虚像)の4つの隅の画角の大まかな光路を太線の矢印で示している。画角左側(位置1、位置3)の光は、第1導光板122の入射面130に近い側の出射反射面から瞳20に伝搬し、画角右側(位置2、位置4)の光は第1導光板122の入射面130から遠い側の出射反射面から瞳20に伝搬する。また、画角上側(位置1、位置2)の光は、第2導光板123の入射面140に近い側の出射反射面から瞳20に伝搬し、画角下側(位置3、位置4)の光は第2導光板123の入射面140から遠い側の出射反射面から瞳20に伝搬する。
【0041】
以上、第1導光板122と第2導光板123は、図4に示したように、第1導光板122から出射した映像光を第2導光板123は受け取るため、第1導光板の主面131、132と第2導光板の主面141、142は異なる平面内にあり、第1導光板の主面131、132は第2導光板の主面141、142より投射部121に近い側に配置され、夫々の2つの主面131、132と141、142は平行に配置される。また第1導光板の主面131から出射した映像光を第2導光板の入射面140が効率よく受け取る為には第1導光板122と第2導光板123が近接している必要がある。
【0042】
次に導光板硝材の屈折率について述べる。導光板は全反射により映像光を伝搬している。そのため導光板が伝搬できる映像光の画角は導光板硝材の屈折率で決まる臨界角度で制限されている。導光板硝材の屈折率を大きくすると臨界角度が小さくなるため、より画角の広い映像光を伝搬できるようになる。また、導光板硝材の屈折率を高くすることで光の広がりが抑制されるので、導光板を小型、軽量化できるメリットがある。
【0043】
しかし、通常よく用いられるBK7のような硝材と比較して高屈折率の硝材の場合は、光吸収が大きくなる。また、高屈折率硝材の光吸収は波長が短くなるにつれて増加し、特に青色波長側で大きい。そのため高屈折率硝材からなる導光板では、特に、導光板内部の伝搬経路が長く入射面から一番遠い反射面から出射される映像光の青色波長側の出射効率が低下する。そのため表示映像に色ムラが発生するという課題が生じる。
【0044】
この課題の詳細について図5A図5Bを用いて説明する。図5Aは上部から見た虚像映像生成部101と、虚像映像生成部101が表示する虚像と各画角P1、P2、P3に対応する光路を示している。ここで、P1、P2、P3は、それぞれ、映像表示領域111の左端、中央、右端の画角である。図5B図5Aの虚像の点線Qでの明るさを示したものである。
【0045】
図5Aの虚像の画角P1、P2、P3に対応する映像光はそれぞれ第1導光板122の出射反射面R1、R(N/2)、RNで反射して瞳20に伝搬される。ここで、第1導光板122の出射反射面群はN枚の出射反射面からなり、入射面130に近い側からR1~RNとする(Nは整数)。
【0046】
図5Aの画角左端P1の虚像は出射反射面R1で反射して瞳20に伝搬した光である。出射反射面R1で反射した光は、その他の出射反射面から反射される光と比較して第1導光板122内部を伝搬する距離が小さく、第1導光板122の硝材の吸収による影響は少ない。そのため虚像の明るさは図5BのP1のように赤、緑と青で差は小さい。
【0047】
図5Aの画角中央P2の虚像は、第1導光板122の出射反射面群のうち中央に配置された出射反射面R(N/2)で反射して瞳20に伝搬した光である。この出射反射面R(N/2)で反射した光は、画角左端P1と比較して第1導光板122内部を伝搬する距離が大きくなる。そのため硝材の光吸収の影響を受ける。高屈折率の硝材の光吸収は波長が短くなるにつれて増加し、特に青色波長領域で光吸収が大きいため青色波長領域の出射効率が低下する。結果として図5BのP2のように赤色波長領域、緑色波長領域の明るさと比較して青色波長領域の明るさが低下する。
【0048】
図5Aの画角右端P3の虚像は出射反射面RNで反射して瞳20に伝搬した光である。この光は導光板の出射反射面のうち入射面から最も遠い、すなわち最も奥に配置された出射反射面RNで反射して出射された光であり、画角の中で第1導光板122内部を伝搬する距離が最も大きい。そのため硝材の光吸収の影響が最も顕著に現れる。結果として図5BのP3に示すように赤色波長領域、緑色波長領域の明るさと比較して青色波長領域の明るさが低下し、最も顕著に色むらが生じる。
【0049】
以上のように、導光板の入射面から導光板内部の伝搬経路が長いほど、すなわち入射面から奥に行くほど導光板硝材の光吸収の影響が大きくなり、結果として図5Bのように画角の右側にいくにつれて赤色に対して青色の明るさが小さくなり、表示映像に色むらが生じることとなる。以下、これらの解決法について説明する。
【0050】
図6A図6Bを用いて、本実施例における第1導光板122で生じる色むらの解決手法を述べる。図6Aは出射反射面R1、R(N/2)、RNそれぞれの反射率の波長特性を示している。図6Bは本解決手法を用いた場合の図5Aの虚像の点線Qでの明るさを示したものである。
【0051】
前述したように入射面130から離れた位置にある出射反射面から反射して出射される光ほど導光板内部を伝搬する距離が長くなるので、導光板硝材の吸収の影響を大きく受けることとなる。そのため、導光板硝材の光吸収の大きさを考慮して出射反射面の反射率の波長特性を決めることで色むらを改善することができる。
【0052】
図6Aに本解決手法による出射反射面R1、R(N/2)、RNの反射率の波長特性の一例を示す。画角左端P1の映像光を出射する出射反射面R1では硝材による吸収による影響が小さいため、波長依存性を略無くすことで、青色波長領域、緑色波長領域、赤色波長領域の映像光を略均一に出射することができる。
【0053】
画角中央P2の映像光を出射する出射反射面R(N/2)では硝材による光吸収を考慮して、青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすることで導光板硝材による光吸収による出射効率低下をキャンセルして色むらを改善することができる。
【0054】
さらに画角右端P3の映像光を出射する出射反射面RNでも同様に青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすることで導光板硝材による光吸収による出射効率低下をキャンセルして色むらを改善することができる。また出射反射面RNは、出射反射面R(N/2)と比較して入射面130から離れた位置に配置されており、第1導光板122を伝搬する距離が大きく、より導光板硝材の光吸収の影響をより受けるので、青色波長領域の反射率と赤色波長領域の反射率の比、(青色波長領域の反射率)/(赤色波長領域の反射率)を出射反射面R(N/2)よりも大きくすることで、より色むらをより改善することができる。なお、図6Aにおいて、出射反射面R1、R(N/2)、RNの反射率の絶対値がRNのほうが大きくなっている理由は、出射反射面RNでは出射反射面R1、R(N/2)を透過した光が入射するため光量が出射反射面R1、R(N/2)に比して減るため、それをカバーするためである。
【0055】
また、ここでいう青色波長領域、緑色波長領域、赤色波長領域は、プロジェクタ光源の三原色波長領域に対応したものであることが好ましく、例えば青色波長領域が380nm~480nm、緑色波長領域が480nm~580nm、赤色波長領域が580nm~680nmである。
【0056】
なお、図6A図6Bでは、出射反射面R1、R(N/2)、RNの3か所の反射特性を説明したが、同様の考え方で他の出射反射面の反射特性を定めることで画角全体の色むらを改善することができる。
【0057】
上記をまとめると、少なくとも、第1導光板の入射面から一番遠い出射反射面において青色波長領域の反射率が緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすることで色むらを改善できる。
【0058】
より好ましくは、第1導光板の入射面から一番遠い出射反射面において、それよりも1つ手前の出射反射面よりも、青色波長領域の反射率を緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすることでより広い画角の色むらを改善することができる。
【0059】
また、2つ以上の出射反射面において青色波長領域の反射率を緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くした場合、青色波長領域の反射率と赤色波長領域の反射率の比、すなわち、(青色波長領域の反射率)/(赤色波長領域の反射率)を入射面130から遠くなる出射反射面ほど大きくすることで、光伝搬につれて大きくなる色むらを改善することができる。
【0060】
次に具体的な反射率の波長特性について述べる。通常光学部品として使用される高屈折率硝材において厚さ10mm当たりの透過率は赤色波長領域では略100%であるのに対して青色波長領域では99%~95%である。
【0061】
映像光が導光板に入射して導光板の最も奥に配置された出射反射面で反射して出射される場合、映像光が導光板を伝搬する光路の長さを概算すると、図5Aに示す、導光板の入射面130と、入射面130から最も離れた出射反射面までの距離Lwと全反射で伝搬する全反射角度φを用いて、Lw/sinφ 式(1)と書ける。
【0062】
導光板の入射面130から最も離れた出射反射面までの距離Lwは、通常の導光板サイズから20mm~60mmである。映像光が導光板の最も奥に配置された出射反射面で反射して出射される場合、臨界角度に近い全反射角度で伝搬しているため全反射角度φは約30度~40度の範囲にある。以上より映像光が導光板に入射して導光板の最も奥に配置された出射反射面で反射して出射される場合、映像光が導光板を伝搬する光路の長さは、式(1)から一番広い範囲として30mm~120mmとなる。
【0063】
通常光学部品として使用される高屈折率硝材において厚さ10mm当たりの透過率tは青色波長領域では95%~99%である。映像光が導光板に入射して導光板の最も奥に配置された出射反射面で反射して出射される場合、青色波長領域の映像光の透過率TはT= t^(S ÷10mm)で計算でき、透過率Tは50%~96%となる。よって赤色波長領域の略100%の反射率に対して青色波長領域の反射率を1.0倍~2.0倍程度の範囲で高くすると色むらが改善されることとなる。
【0064】
図6Aで説明した反射特性では出射反射面R1の反射率の波長依存性が略無い反射特性としていたが、波長依存性が略無い反射特性を実現することは反射膜製造の観点で困難であることが多い。また、異なる波長依存性を有する誘電体を多層化して平均化する目的で、反射面を形成する誘電体を波長依存性が略無くなるまで多層化しようとすると、反射膜の製造難易度が高くなり、加えて反射膜の蒸着に要する時間が多くなるため導光板の製造コストが高くなる。
【0065】
また、出射反射面R1のように入射面130から近い側に配置された出射反射面は、映像光が出射反射面に入射する入射角度が他の出射反射面と比較して大きいため波長依存性が略無い反射特性を実現することがより難しくなり、誘電体をより多層化する必要が出てくる。この課題は、表示映像を広画角化すると、出射反射面に入射する入射角度も大きくなるので表示映像の広画角化の際により顕著化する。
【0066】
そこで出射反射面R1の反射特性を波長依存性が略無い反射特性としなくとも、次のようにすることで解決できる。例えば図7Aに示すように、出射反射面R1の反射率を、(青色波長領域の反射率)>(緑色波長領域の反射率)>(赤色波長領域の反射率)のように波長が大きくなるにつれて反射率が低下する反射特性とする。加えて(青色波長領域の反射率)および(緑色波長領域の反射率)および(赤色波長領域の反射率)の比率を出射反射面群133で略等しくする。なお、出射反射面R1、R(N/2)、RNでの反射率の絶対値が異なるのは、入射光量の減少に対して出射光量を均一化するためである。
【0067】
そして、図6A図6Bで説明したように、導光板の青色波長領域の吸収による色むらを低減するために、青色波長領域の反射率と赤色波長領域の反射率の比、すなわち(青色波長領域の反射率)/(赤色波長領域の反射率)を入射面130から遠くなるほど大きくする。そうすることで、導光板の青色波長領域の吸収による青色波長領域の出射効率低下分も考慮して色むらを低減することができる。一例としてこの場合の反射特性を図7Bに示している。
【0068】
このようにすると、図7Cに示すように映像のどの画角においても映像光の青色波長領域、緑色波長領域、赤色波長領域の明るさの比率を一定とすることができ、色むらを低減することができる。なお、このような反射特性とした場合、映像表示部120が表示する映像の色度と最終的に第2導光板123が出射して瞳20に届く映像の色度が異なる。例えば図7Cでは、青色が強い映像となる。そのため瞳20に届く映像の色度を所望の値になるように、あらかじめ映像表示部120の色度を調整する必要がある。
【0069】
以上のような反射膜特性とすることで、反射膜の製造難易度が大幅にさがり、低コストな薄い反射膜であってもユーザにとって色むらのない映像を表示可能な導光板とすることができる。
【0070】
次に、図8A図8Bを用いて本実施例における第1導光板及び第2導光板の構成の詳細について説明する。図8Aは本実施例における第1導光板122及び第2導光板123をY軸の垂直方向の上部から示した上面図であり、図8Bは本実施例における第1導光板122及び第2導光板123をX軸の水平方向から示した側面図である。
【0071】
本実施例では、図8Aに示すように、第1導光板122の出射反射面群133はN枚の出射反射面から構成されており、N枚の出射反射面を入射面130に近い側からR1~RNとする(Nは整数)。また、出射反射面の間隔を入射面130に近い側からL1~LN-1とする。また、図8Bに示すように、第2導光板123の出射反射面群143はM枚の出射反射面から構成されており、M枚の出射反射面を入射面140に近い側からV1~VMとする(Mは整数)。また、出射反射面の間隔を入射面140に近い側からH1~HM-1とする。
【0072】
第1導光板122内の映像光は出射反射面群133の部分反射面で徐々に反射され光量を減らしながら内部を進み、最終的に出射反射面群133の最終面RNで全ての映像光が第2導光板123へ出力されることで効率を向上できる。したがって、出射反射面群133の出射反射面は入射面に近い側から最終面RNに向かって反射率が徐々に高くなる構成とすることでアイボックス内での映像光の光量均一性が向上する。
【0073】
第2導光板はHMDとしてのシースルー性を保持するために出射反射面群143の反射率は出射反射面群133の反射率よりも低くなる。反射率が低いため出射反射面群143の反射率はすべて同じ(同じ反射膜)としても大きな輝度ムラ要因とはならず、むしろ同一の成膜工程で加工でき製造コストを低減できる。特に輝度均一性とシースルー性の確保の観点で第2導光板の出射反射面群143の反射率は10%以下とするのが望ましい。
【0074】
一方で、シースルー性よりも光利用効率を重視して反射率を高めの設定とした場合は、出射反射面群143の反射膜は入射面に近い側から徐々に反射率を高めた膜としてアイボックス内での映像光の光量均一性をよくして画質を向上しても良い。
【0075】
第1導光板122の出射反射面群133の面間隔L1~LN-1及び第2導光板123の出射反射面群143の面間隔H1~HM-1が投射部121の光径Pよりも広い場合、隣接する複製映像光同士のオーバーラップが不十分となり映像光量の少ないアイボックス領域が生じる。そこで、出射反射面群133の面間隔L1~LN-1及び第2導光板123の出射反射面群143の面間隔H1~HM-1は投射部121の光径Pより小さくすることでアイボックスや視認映像内の輝度均一性が向上する。
【0076】
次に、詳細な出射反射面の傾き角度θと全反射臨界角の幾何学的条件について図9A図9Bを用いて説明する。平行平面である主面131、132に対して出射反射面群133は導光板外へ映像光を出射するよう方向を変える為に所定の傾き角θを持つ。図9Aにおいて実線Aは画角中央の光線、1点鎖線Bと2点鎖線Cは画角端の光線を夫々表す。画角中心の光線Aは入射面130で反射後に、平行な主面131及び132に対して入射角度2θで進む。また光線BとCは入射面130での屈折を考慮すると、導光板内での主面131及び132に対する入射角は2θに±arcsin[sin(Φ/2)/n]の範囲となる。迷光回避の観点から光線Bは、
2θ+arcsin[sin(Φ/2)/n]<90° 式(2)
を満たす必要がある。また全反射条件を満たすために光線Cは、
2θ-arcsin[sin(Φ/2)/n]<arcsin[1/n] 式(3)
を満たす必要がある。nは基板の屈折率である。通常屈折率nは1.5~2.0程度であり、画角Φ20~50°程度の映像を表示する場合、入射面130と出射反射面群133の傾き角θは20°~40°の範囲となる。
【0077】
第2導光板においても同様の条件を満たす必要があり、入射面140と出射反射面群143の傾き角θは20°~40°の範囲となる。
【0078】
図9Bは、第1導光板122及び第2導光板123内での反射面への光線の入射と反射の様子を示した概略図である。図9Bにおいて、第1導光板122及び第2導光板123内で所定の画角をもった映像光は出射面群に所定の角度範囲で入射し導光板外へ出力される(正常反射)。一方で、導光板内で光線は閉じ込めを受けている為、出射反射面群133、143の裏面から入射して反射光の発生する状態(裏面反射)が生じる。この裏面反射は不要な反射であり迷光の発生や効率低下の要因となる。
【0079】
幾何学的な配置から出射反射面群133、143の反射面に対する入射角度の範囲は、正常反射はθ±arcsin[sin(Φ/2)/n]であり、裏面反射は3θ±arcsin[sin(Φ/2)/n]となる。通常、部分反射面を成す反射膜と導光板硝材は屈折率差があるため、裏面反射は入射角度θbが90度に近づくにつれて急激に高くなる。そのためすべての映像光でθbを90度以下、好ましくは86度以下、より好ましくは83度以下にする必要がある。よって少なくとも次の式(4)、
3θ+arcsin[sin(Φ/2)/n]<90° 式(4)
を満たす必要がある。
【0080】
次に、第2導光板123のシースルー性について説明する。図8Bにおいて、光線400は、第2導光板123の出射反射面群143を通過して瞳20に入射する外界からの光線を表しており、一例として外界からの光線400が出射反射面群143の出射反射面V1に入射する例を示している。
【0081】
外界からの光線400は出射反射面V1を透過して瞳20に届く光路と出射反射面V1で反射して、隣接する出射反射面V2で反射して瞳20に光路に分かれる。出射反射面V1を透過して瞳に届く光量をI1、隣接する出射反射面V2で反射して瞳20に届く光量をI2とする。
【0082】
I1とI2の光量が同程度である場合、外界の光が出射反射面群143によって分裂するためユーザにとって外界が二重に見えるという課題が生じる。そのためI2の光量をI1の光量よりも十分小さくする必要がある。外界からの光線400の光量をI0、出射反射面V1の反射率をr1、出射反射面V2の反射率をr2とすると、I1=(1-r1)×I0,I2=r1×r2×I0,となる。分裂した光のコントラストCをC=I1/I2で定義すると、C=(1-r1)/r1×r2となる。
【0083】
ユーザは二重像を視認できないようにするにはI1に対してI2の光量を100分の1以下にすることが望ましく、150分の1以下にすることがより望ましい。つまりコントラストCを100以上となることが望ましく、150以上とすることがより望ましい。
【0084】
同一の成膜工程で加工でき製造コストを低減できるように出射反射面群143をすべて同一膜とした場合を考える。このとき出射反射面群143の反射率はすべて等しく、その反射率をrとする。コントラストはC=(1-r)/r^2となる。前述した二重像の視認性の観点から、コントラストCを100以上となることが望ましく、150以上とすることが望ましいので、反射率rは10%以下であることが望ましく、8%以下であることがより望ましい。
【0085】
以上のように、本実施例によれば、薄型化と小型、軽量化を図りながら、さらなる広画角な映像を表示可能でかつ色ムラのない映像が表示可能な導光板を用いたHMDを提供できる。
【実施例0086】
図10は、本実施例における導光板の構成図である。図10において、図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図10において、図4と異なる点は、第2導光板123の入射面140が複数の入力反射面から構成されている点である。
【0087】
図10には、例として第1導光板122の入射面130から遠い側の出射反射面から第2導光板123に入射し瞳20に伝搬する画角右側の画角位置2と画角位置4の光路を図示している。第1導光板122からの映像光を結合する第2導光板123の入射面140は所定の幅の広さがないと映像光を受け取ることができない。所定の幅の広さがないと特に画角位置2と画角位置4で映像光を受け取ることが困難となり、画角位置2と画角位置4の部分の映像が表示できなかったり、画角位置2と画角位置4の部分の輝度が低下したりするという課題が生じる。特に表示映像を広画角化しようとするとこの課題が顕著化する。
【0088】
しかし第2導光板の入射面140の面積を増やすために導光板を厚くした場合、内部で閉じ込められた映像光の全反射の間隔が広くなり複製映像光の出射間隔が広くなり輝度ムラを生じる。また厚み増加による重量や製造コストの増加も生じる。
【0089】
そこで、第2導光板123の厚みを増やさずに第1導光板122からの映像光の結合効率を高める方法として、入射面140を複数の反射面から構成する方法がある。入射面を複数枚設けることで厚みを増やさずに実効的な入射面の面積を増大できる。
【0090】
図11は本実施例における導光板をX軸の水平方向から図示したものである。図11では、第2導光板123の入射面140は4枚の入力反射面から構成されており、4枚の入力反射面を出射反射面群143(出力部)から遠い側からC0~C3とする。また入力反射面の間隔を出射反射面群143(出力部)から遠い側からW1~W3とする。
【0091】
映像光の画質を維持する為には複数の入力反射面C0~C3は夫々平行であることが望ましい。
【0092】
また、入力反射面C0を反射した映像光は入力反射面C1及び入力反射面C2及び入力反射面C3を透過する必要がある。したがって、第1導光板122からの映像光の結合効率を高めるためには入力反射面C0は100%に近い高い反射率とするのが良い。
【0093】
また、複数の入力反射面C0~C3は第2導光板123の出射反射面群143(出力部)に近づくほど反射率を低くすることで、第1導光板122からの映像光を第2導光板と結合するときに生じる映像の輝度ムラを少なくすることができる。
【0094】
また、第2導光板123の吸収で生じる色むらを複数の入力反射面の反射率の波長依存性により低減することができる。図11に、画角下側の光が瞳20に入射する光路を矢印500で示し、画角上側の光が瞳20に入射する光路を点線矢印501で示す。また、画角下側の光が第1導光板122から第2導光板123に結合するときの光路を矢印502で示し、画角下側の光が第1導光板122から第2導光板123に結合するときの光路を点線矢印503で示す。
【0095】
図11に示すように、画角上側よりも画角下側の方が第2導光板を伝搬する光路が長い。そのため画角下側の映像光は導光板硝材の青色波長領域の吸収による影響が大きく、青色波長側の出射効率が低下し、色むらが発生する。
【0096】
画角下側の映像光は第1導光板から第2導光板の結合時、複数の入力反射面のうち出射反射面群143(出力部)に遠い入力反射面で結合する。したがって、少なくとも、複数の入力反射面のうち出射反射面群143(出力部)から一番遠い入力反射面(図11ではC0)の青色波長領域の反射率を緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすれば画角下側の映像光の青色波長側の出射効率が向上し、色むらを低減することができる。
【0097】
より好ましくは、第2導光板の出力部から一番遠い入力反射面において、それよりも1つ手前の入力反射面よりも、青色波長領域の反射率を緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くすることでより広い画角の色むらを改善することができる。
【0098】
また、2つ以上の入力反射面において青色波長領域の反射率を緑色波長領域および赤色波長領域の反射率よりも高くした場合、青色波長領域の反射率と赤色波長領域の反射率の比、すなわち、(青色波長領域の反射率)/(赤色波長領域の反射率)を出力部から遠くなる入力反射面ほど大きくすることで、光伝搬につれて大きくなる色むらを改善することができる。
【0099】
また、複数の入力反射面の隣接する反射面の間隔W1~W3が投射部121の光径Pよりも広い場合、隣接する複製映像光同士のオーバーラップが不十分となり映像光量の少ないアイボックス領域が生じる。そこで、隣接反射面の間隔W1~W3は投射部121の光径Pより小さくすることでアイボックスや視認映像内の輝度均一性が向上する。
【0100】
以上、本実施例に示した構成により、広画角の映像光が入射された場合にも、導光板のサイズ増加を抑制しつつアイボックスを拡大して高品質な映像を表示できる。
【0101】
なお、ここまでは第1導光板122と第2導光板123に出射反射面群を用いた構成について説明してきたが、異なる方式を用いた導光板でアイボックスを拡大してもよい。例えば図12は、第2導光板に回折格子や体積ホログラムを用いた導光板の例を示している。図12において、第2導光板123には入射面140の代わりに入力部146が設けられる。入力部146は表面レリーフ回折格子や体積ホログラムであり、入力された映像光の進行方向を偏向し導光板内部へと導く。出力部147にも同様に表面レリーフ回折格子や体積ホログラムが形成されており導光板内を伝搬した映像光の一部を瞳20へ偏向することで、アイボックスを拡大しつつ映像表示を実現する。出力部147の表面レリーフ回折格子や体積ホログラムは外界の光に対する回折効率を低減させた設計とすることで、第2導光板はシースルー性を持つ。
【実施例0102】
本実施例では、上記実施例1、2で述べたHMDの応用例について説明する。図13は、本実施例におけるHMDの使用例を示す図である。
【0103】
図13において、ユーザ2の視界には、HMD1からの映像(虚像)表示領域111にコンテンツが表示される。例えば産業機器の点検や組立て等における作業手順書301や図面302が表示される。映像表示領域111には限りがあるので、これら作業手順書301や図面302を同時に表示するとコンテンツが小さくなり視認性が悪くなる。そこでユーザ2の頭の向きを加速度センサで検出するヘッドトラッキングを行い、頭の向きに応じて表示コンテンツを変えることで視認性を改善できる。すなわち、図13において、ユーザ2は左を向いた状態で映像表示領域111に作業手順書301が表示されているが、ユーザが右を向くと、映像表示領域111に図面302が表示され、あたかも、作業手順書301と図面302を広い視野で視認できる仮想の映像表示領域112があるように表示することができる。
【0104】
これにより、視認性が改善されるとともに、ユーザ2は、作業対象物(機器や工具など)と作業指示を同時に視認しながら作業を実行することができるので、より確実な作業が可能となりミスを低減することができる。
【0105】
図14は、本実施例におけるHMDの機能ブロック構成図である。図14において、図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。図14において、図1と異なる点は、特にヘッドトラッキング機能を付加した点である。すなわち、HMD1の画像信号処理部103Aには、ヘッドトラッキング部103Hを設けている。ヘッドトラッキング部103Hはセンシング部106Aの加速度センサ106Hの情報をもとにユーザ2の頭の向きを検出し、頭の向きに応じて表示コンテンツを変更する。
【0106】
また、HMDは屋内外で使用する。従って、周囲環境の明るさに応じて表示映像の輝度も調節する必要がある。一例として、センシング部106Aに照度センサ106Mを搭載し、照度センサの出力に応じて画像信号処理部103Aが表示する映像の輝度を調節すればよい。
【0107】
以上実施例について説明したが、本発明は、薄型化と小型、軽量化を図りながら、さらなる広画角な映像を表示可能でかつ色ムラのない映像が表示可能なHMDを提供することで、加工材料の量を抑えることができる。そのため、炭素排出量を減らし、地球温暖化を防止することができ、SDGs(Sustainable Development Goals)を実現するための特に項目7のエネルギーに貢献する。
【0108】
また、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記のHMDおよび虚像映像生成部の機能構成は、理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本発明が制限されることはない。HMDおよび虚像映像生成部の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0109】
また、本発明はHMDだけでなく、各実施例で説明した虚像映像生成部の構成を有する他の映像(虚像)表示装置にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0110】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0111】
1:ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、101:虚像映像生成部、102:制御部、103:画像信号処理部、104:電力供給部、105:記憶部、106:センシング部、107:通信部、108:音声処理部、109:撮像部、91~93:入出力部、111:映像表示領域、112:仮想の映像表示領域、120:映像表示部、121:投射部、122:第1導光板、123:第2導光板、131、132、141、142:主面、130、140:入射面、133、143:出射反射面群、146:入力部、147:出力部、103H:ヘッドトラッキング部、106H:加速度センサ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14