(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042314
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
G01G 23/01 20060101AFI20230317BHJP
G01G 11/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G01G23/01 Z
G01G11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149553
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 平之助
(57)【要約】
【課題】物品を搬送しながら、搬送中の物品を計量する計量装置であって、不具合要因を精度よく推定可能な計量装置を提供する。
【解決手段】計量装置100は、物品Pを搬送しながら物品の重量を計量する。計量装置は、物品を搬送する第2コンベア14と、ロードセル28と、制御部84と、を備える。第2コンベアは、搬送速度が可変である。ロードセルは、第2コンベアの重量、又は、第2コンベアに物品を搬送している場合には、第2コンベアの重量及び第2コンベア上の物品の重量、を検出して計量信号を出力する。制御部は、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が第2コンベア上に無い状態でロードセルが出力する計量信号から統計情報を生成する。制御部は、搬送速度毎の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送しながら物品の重量を計量する計量装置であって、
物品を搬送する、搬送速度が可変の搬送部と、
前記搬送部の重量、又は、前記搬送部に前記物品を搬送している場合には、前記搬送部の重量及び前記搬送部上の前記物品の重量、を検出して計量信号を出力する検出部と、
複数の前記搬送速度のそれぞれについて、物品が前記搬送部上に無い状態で前記検出部が出力する前記計量信号から統計情報を生成し、前記搬送速度毎の前記統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する制御部と、
を備える計量装置。
【請求項2】
前記制御部が生成する前記統計情報には、前記搬送速度がゼロの場合に、物品が前記搬送部上に無い状態で前記検出部が出力する前記計量信号から生成される統計情報を含む、
請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記不具合要因には、前記計量装置の設置状態に関する不具合要因、及び、前記計量装置の設置環境に関する不具合要因の少なくとも一方を含む、
請求項2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記計量信号のフィルタリングに使用する、互いに特性の異なる複数のフィルタを有し、
前記制御部は、複数の前記搬送速度のそれぞれについて、物品が前記搬送部上に無い状態で前記検出部が出力する前記計量信号を前記複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から前記統計情報を生成し、前記搬送速度毎かつ前記フィルタ毎の前記統計情報に基づき、前記不具合要因の候補を決定して出力する、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の計量装置。
【請求項5】
前記搬送速度毎かつ前記フィルタ毎に、前記統計情報の基準が記憶されている記憶部を更に有し、
前記制御部は、生成した前記搬送速度毎かつ前記フィルタ毎の前記統計情報を、前記記憶部に記憶されている、対応する前記搬送速度及び前記フィルタの前記基準と比較した結果に基づいて、前記不具合要因の候補を決定して出力する、
請求項4に記載の計量装置。
【請求項6】
前記記憶部には、前記基準として、前記計量装置の試運転時に、複数の前記搬送速度のそれぞれについて、物品が前記搬送部上に無い状態で前記検出部が出力する前記計量信号を前記複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された前記統計情報が記憶される、
請求項5に記載の計量装置。
【請求項7】
前記統計情報には、標準偏差、分散、最大値と最小値との差、最大値、及び最小値の少なくとも1つを含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特開2020-148589号公報)のように、物品を搬送しながら、搬送中の物品の重量を計量する計量装置が知られている。
【0003】
このような計量装置では、構成機器の経年劣化等により、計量に不具合が発生する場合がある。不具合を発生させる要因は複数存在するため、その原因の特定には、一般に長時間を要する。これに対し、特許文献1(特開2020-148589号公報)には、単一の搬送速度について、物品が搬送部上に無い状態で搬送部を駆動した際に検出部が出力する計量信号を取得し、振動成分ごとにばらつき量を計算し、計算結果に基づいて回転部位の不具合箇所を特定することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、計量に不具合を生じさせる要因は多数存在するため、特許文献1(特開2020-148589号公報)の方法では、種々の不具合要因の中から、その要因を精度良く推定することは困難な場合がある。
【0005】
本発明の課題は、物品を搬送しながら、搬送中の物品を計量する計量装置であって、不具合要因を精度よく推定可能な計量装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の計量装置は、物品を搬送しながら物品の重量を計量する。計量装置は、物品を搬送する搬送部と、検出部と、制御部と、を備える。搬送部は、搬送速度が可変である。検出部は、搬送部の重量、又は、搬送部に物品を搬送している場合には、搬送部の重量及び搬送部上の物品の重量、を検出して計量信号を出力する。制御部は、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が搬送部上に無い状態で検出部が出力する計量信号から統計情報を生成する。制御部は、搬送速度毎の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0007】
第1観点の計量装置では、複数の搬送速度について得られる統計情報に基づいて不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を精度良く推定できる。そのため、計量装置のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0008】
第2観点の計量装置は、第1観点の計量装置であって、制御部が生成する統計情報には、搬送速度がゼロの場合に、物品が搬送部上に無い状態で検出部が出力する計量信号から生成される統計情報を含む。
【0009】
第2観点の計量装置では、搬送速度がゼロの場合、すなわち搬送部が停止中に得られる統計情報に基づいて計量装置の不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を特に精度良く推定できる。そのため、計量装置のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0010】
第3観点の計量装置は、第2観点の計量装置であって、不具合要因には、計量装置の設置状態に関する不具合要因、及び、計量装置の設置環境に関する不具合要因の少なくとも一方を含む。
【0011】
第3観点の計量装置では、計量装置の構成部品の不具合だけではなく、他の種類の不具合の可能性を検出することができ、計量装置のメンテナンス作業者が不具合の原因特定に要する時間を短縮できる。
【0012】
第4観点の計量装置は、第1観点から第3観点のいずれかの計量装置であって、制御部は、計量信号のフィルタリングに使用する、互いに特性の異なる複数のフィルタを有する。制御部は、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が搬送部上に無い状態で検出部が出力する計量信号を複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から統計情報を生成する。制御部は、搬送速度毎かつフィルタ毎の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0013】
第4観点の計量装置では、信号を異なるフィルタで処理した信号から得られる統計情報を用いて不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を精度良く推定できる。そのため、計量装置のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0014】
第5観点の計量装置は、第4観点の計量装置であって、記憶部を更に有する。記憶部には、搬送速度毎かつフィルタ毎に、統計情報の基準が記憶されている。制御部は、生成した搬送速度毎かつフィルタ毎の統計情報を、記憶部に記憶されている、対応する搬送速度及びフィルタの基準と比較した結果に基づいて、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0015】
第5観点の計量装置では、生成された統計情報を基準と比較することで、精度良く不具合要因の候補を推定できる。
【0016】
第6観点の計量装置は、第5観点の計量装置であって、記憶部には、基準として、計量装置の試運転時に、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が搬送部上に無い状態で検出部が出力する計量信号を複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された統計情報が記憶される。
【0017】
第6観点の計量装置では、計量装置の試運転時に得られた統計情報が基準として用いられるため、各計量装置に固有の特性を踏まえて不具合要因の候補を推定できる。
【0018】
第7観点の計量装置は、第1観点から第6観点のいずれかの計量装置であって、統計情報には、標準偏差、分散、最大値と最小値との差、最大値、及び最小値の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の計量装置は、複数の搬送速度について得られる統計情報に基づいて不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を精度良く推定できる。そのため、計量装置のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る計量装置を正面から見た概略正面図である。
【
図3】
図1の計量装置の主要部分を上方から見た概略平面図である。
【
図4】
図1の計量装置の、搬送装置の第2コンベア及び計量装置の概略構成図である。
【
図5】
図1の計量装置の制御装置の、重量算出処理のための構成のブロック図である。
【
図6】
図1の計量装置のロードセルの計量信号と、フィルタリング後の計量信号とを模式的に示す図である。
【
図7A】
図1の計量装置の制御装置が行う診断処理のフローチャートの一例である。
【
図7B】
図1の計量装置の制御装置が行う診断処理のフローチャートの他の例である。
【
図8A】計量装置の設置環境に関する不具合がある場合や、計量装置の設置状態に不良がある場合に、フィルタリングした信号に表れる異常の傾向を示した図である。
【
図8B】第2コンベアの第2コンベアベルトに問題がある場合に、フィルタリングした信号に表れる正常・異常の傾向を示した図である。
【
図8C】第2コンベアのローラに問題がある場合に、フィルタリングした信号に表れる正常・異常の傾向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の計量装置の一実施形態に係る計量装置100について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する計量装置100の実施形態は一実施例に過ぎず、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。
【0022】
(1)全体構成
計量装置100の全体構成を、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、計量装置100を正面から見た概略正面図である。
図2は、計量装置100のブロック図である。
図3は、計量装置100の主要部分を上方から見た概略平面図である。
【0023】
計量装置100は、物品Pを搬送しながら、物品Pを計量する計量装置である。
【0024】
計量装置100は、
図1のように、主に、搬送装置10と、検出装置20と、を有する。また、計量装置100は、搬送装置10及び検出装置20の動作を制御する制御装置80(
図2参照)を有する。
【0025】
なお、制御装置80は、搬送装置10及び検出装置20の動作を制御する機能に加え、計量装置100の計量に不具合が存在するかを判断する機能を有する。さらに、制御装置80は、計量装置100の計量に不具合が存在する場合、計量装置100の不具合要因の候補を決定し、決定した計量装置100の不具合要因の候補を出力する機能を有する。
【0026】
搬送装置10は、図示しない上流側の工程(例えば物品Pの製造工程)から供給される物品Pを受けとり搬送する。具体的には、搬送装置10は、物品Pを検出装置20による重量の検出場所へ搬送する。
【0027】
検出装置20は、搬送装置10の搬送する物品Pの重量を検出し、検出した重量に応じた計量信号を制御装置80に対して出力する。制御装置80は、検出装置20が物品Pの重量検出時に出力した計量信号に基づいて、物品Pの重量Wを算出する。さらに、制御装置80は、算出した物品Pの重量Wが、許容重量範囲内であるか否かを判断する。物品Pの重量Wが許容重量範囲内であるとは、物品Pの重量が、許容最小重量以上、かつ許容最大重量以下であることを意味する。
【0028】
なお、計量装置100の後段には、例えば図示しない振分装置が配置される。振分装置は、制御装置80が算出する物品Pの重量Wに基づいて、物品Pを振り分ける。例えば、振分装置は、物品Pの重量Wが許容重量範囲内である場合、物品Pを物品Pの搬送ラインから除去する。
【0029】
(2)詳細構成
以下に、計量装置100の詳細について詳細に説明する。
【0030】
なお、以下では、方向や位置関係を説明する際に「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いる場合があるが、これらの表現は説明のための便宜上のものであり、本願発明の内容を限定するものではない。「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現は、特に断りのない限り、図中の矢印の示す向きに従う。
【0031】
(2-1)搬送装置
搬送装置10は、搬送方向A1(
図1及び
図3参照)に沿って物品Pを搬送する。
【0032】
搬送装置10は、第1コンベア12及び第2コンベア14と、第1駆動部18a及び第2駆動部18bと、を含む。第1駆動部18a及び第2駆動部18bは、例えばモータである。
【0033】
搬送装置10では、
図1及び
図3に示すように、物品Pの搬送方向A1における上流側から順に、第1コンベア12、第2コンベア14、が配置される。
【0034】
第1コンベア12は、
図3のように、第1コンベア12及び第2コンベア14の中で、搬送方向A1における上流に配置されている。第1コンベア12は、計量装置100の上流側の工程から搬送されてくる物品Pを計量装置100に取り込む取込コンベアとして機能する。第1コンベア12は、物品Pを搬送方向A1に搬送し、第2コンベア14に物品Pを受け渡す。
【0035】
第1コンベア12は、第1コンベアベルト12a(
図1参照)を含む。第1コンベアベルト12aは、例えば平ベルトである。第1駆動部18aが、第1コンベアベルト12aが巻き掛けられている駆動ローラ122a及び従動ローラ122bのうち、駆動ローラ122aを駆動することで、第1コンベア12は、第1コンベアベルト12a上の物品Pを搬送方向A1に搬送する。
【0036】
第2コンベア14は、
図3のように、第1コンベア12及び第2コンベア14の中で、搬送方向A1における下流に配置されている。第2コンベア14は、第1コンベア12が搬送してくる物品Pを受け取り搬送する。検出装置20は、第2コンベア14が搬送中の物品Pの重量を検出して、計量信号を出力する。第2コンベア14は、物品Pを搬送方向A1に搬送し、計量装置100の後段の工程(例えば、図示しない振分装置)に物品Pを受け渡す。
【0037】
第2コンベア14は、第2コンベアベルト14a(
図1参照)を含む。第2コンベアベルト14aは、例えば平ベルトである。第2駆動部18bが、第2コンベアベルト14aが巻き掛けられているローラ144a,144bのうち、ローラ(駆動ローラ)144aを駆動することで、第2コンベア14は、第2コンベアベルト14a上の物品Pを搬送方向A1に搬送する。
【0038】
なお、第1コンベア12及び第2コンベア14は、搬送速度が可変である。言い換えれば、第1駆動部18a及び第2駆動部18bのモータは、回転数が可変である。
【0039】
(2-2)検出装置
検出装置20について、
図4を更に参照しながら説明する。
図4は、搬送装置10の第2コンベア14及び検出装置20の概略構成図である。
【0040】
検出装置20は、
図3及び
図4のように、センサ25と、検出部(重量センサ)の一例としてのロードセル28を主に有する。
【0041】
センサ25は、第1コンベア12が搬送してくる物品Pが、第2コンベア14に到達したことを検出する。センサ25は、例えば、光電センサである。ただし、センサ25の種類は、光電センサに限定されるものではなく、物品Pの第2コンベア14への到達を検出可能なセンサであれば、センサ25の種類は問わない。
【0042】
制御装置80は、センサ25の検出結果、搬送装置10の搬送速度V、及び物品Pの搬送方向A1における長さL1に基づき、物品Pの全体が第2コンベアベルト14a上に存在するタイミングを検出する。制御装置80は、物品Pの全体が第2コンベアベルト14a上に存在する間にロードセル28が出力する計量信号に基づき、物品Pの重量Wを算出する。
【0043】
ロードセル28は、作用する力に比例して歪む起歪体28aと、起歪体28aに貼り付けられてひずみを電気信号(この信号を計量信号と呼ぶ)に変換して出力するひずみゲージ(図示省略)と、を含む。要するに、ロードセル28は、作用する力に応じた計量信号を送信する。ロードセル28は、第2コンベア14の下方に配されたケース26の内部に収容されている(
図4参照)。
【0044】
ロードセル28による重量の検出について説明する。ロードセル28による重量の検出の説明にあたり、初めに搬送装置10の第2コンベア14の構造の詳細を説明する。
【0045】
第2コンベア14は、前述した第2コンベアベルト14aに加え、フレーム142と、駆動ローラ144a及び従動ローラ144bと、を主に有する(
図4参照)。
【0046】
第2コンベア14のフレーム142は、ケース26から上方に延びるブラケット24により支持されている。ケース26は、
図4のように、計量装置100のフレーム50に固定されている。
【0047】
駆動ローラ144a及び従動ローラ144bは、
図4のように、フレーム142の両端に設けられている。駆動ローラ144a及び従動ローラ144bは、フレーム142に回転自在に支持されている。第2コンベアベルト14aは、駆動ローラ144a及び従動ローラ144bに巻き掛けられている。第2駆動部18bが駆動ローラ144aを駆動することで、第2コンベアベルト14aは回転し、第2コンベア14は、第2コンベアベルト14a上の物品Pを搬送方向A1に搬送する。
【0048】
上記構造を取るため、ロードセル28は、第2コンベアベルト14a上に物品Pが存在していない時には、搬送部としての第2コンベア14の重量(第2コンベア14がロードセル28に作用させる力)を検出して、計量信号を出力する。なお、ここで第2コンベア14の重量とは、概ね、フレーム142、駆動ローラ144a及び従動ローラ144b、及び第2コンベアベルト14aの合計重量である。また、第2コンベアベルト14aが物品Pを搬送している時には、ロードセル28は、第2コンベア14の重量及び第2コンベア14上の物品Pの重量を検出して、計量信号を出力する。
【0049】
(2-3)制御装置
制御装置80は、計量装置100の各部の動作を制御する。また、制御装置80は、検出装置20が送信してくる計量信号に基づいて物品Pの重量Wを算出する処理を行う。
【0050】
また、制御装置80は、計量装置100の計量に不具合が存在するかを判断する機能を有する。さらに、制御装置80は、計量装置100の計量に不具合が存在する場合、計量装置100の不具合要因の候補を決定し、決定した計量装置100の不具合要因の候補を出力する機能を有する。
【0051】
制御装置80の配置を限定するものではないが、制御装置80は、例えば、後述する入力装置60及び出力装置70が設けられており、搬送装置10の側方に配置されている、計量装置100の本体部100aに搭載されている。
【0052】
本実施形態の制御装置80は、CPUと、ROM、RAM、補助記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等からなるメモリ、各種の電子回路等を主に含む。制御装置80は、CPUがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、計量装置100の各部の動作を制御したり、各種処理を行ったりする。
【0053】
なお、ここで説明する制御装置80の構成は、制御装置80の構成の一例に過ぎず、本実施形態の制御装置80と同様の機能を、論理回路等のハードウェアにより実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実現してもよい。
【0054】
また、制御装置80は、1台の装置により実現されるものであっても、複数台の装置により実現されるものであってもよい。例えば、制御装置80は、本体部100aに搭載されている制御装置と、制御装置と通信可能に接続されている本体部100aとは別の場所に配置されている装置と、を有していてもよい。そして、本体部100aに搭載されている制御装置と、本体部100a外の装置とが協働することで、ここで説明する制御装置80として機能してもよい。
【0055】
制御装置80は、搬送装置10の第1駆動部18a及び第2駆動部18bと、検出装置20のセンサ25及びロードセル28と、電気的に接続されている。
【0056】
また、制御装置80は、本体部100aに設けられている入力装置60及び出力装置70に電気的に接続されている(
図2参照)。入力装置60は、計量装置100のオペレータの入力する各種指令や、オペレータの入力する各種情報を受け付ける。例えば、入力装置60は、タッチパネル式のディスプレイである。入力装置60に対する入力された指令や情報は、制御装置80に対して送信される。出力装置70は、制御装置80により制御されて、各種情報を出力する。例えば、出力装置70は、各種情報を表示するディスプレイである。つまり、本実施形態では、タッチパネル式のディスプレイが入力装置60及び出力装置70として機能する。
【0057】
なお、入力装置及び出力装置は、ここで例示する機器に限定されるものではない。例えば、入力装置は、計量装置100のオペレータ等が操作する携帯端末(図示せず)や、計量装置100の上位の中央制御装置(図示せず)から送信されてくる指令や情報を受け付ける機器や、計量装置100に設けられたスイッチ等であってもよい。また、出力装置は、例えば、計量装置100のオペレータ等が保持する携帯端末(図示せず)や、計量装置100の上位の中央制御装置(図示せず)に対して各種情報を出力(送信)する機器であってもよい。
【0058】
制御装置80のメモリは、各種情報を記憶する記憶部82を含む。記憶部82に記憶される情報の例については後述する。
【0059】
制御装置80のCPUは、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部84及び取得部86として機能する。
【0060】
(2-4-1)取得部
取得部86は、入力装置60に対して入力される各種情報を取得する。取得部86が取得した各種情報は、記憶部82に記憶される。
【0061】
取得部86が取得する情報には、例えば、搬送装置10により搬送される物品Pの規定重量Wtを含む。規定重量Wtとは、言い換えれば、物品Pの本来あるべき重量(物品Pの目標重量)である。
【0062】
また、取得部86が取得する情報には、第2コンベア14により搬送される物品Pの長さL1を含む。ここでは、第2コンベア14により搬送される物品Pの長さL1は、物品Pが第2コンベア14により搬送される状態における、搬送方向A1における物品Pの長さである。
【0063】
なお、ここでは、入力装置60に、物品Pの規定重量Wtと、物品Pの長さL1と、がそれぞれ入力されるがこれに限定されるものではない。例えば、記憶部82には、物品Pの種類毎に、物品Pの規定重量Wt及び物品Pの長さL1の情報が記憶されており、取得部86は、入力装置60に入力された物品Pの種類を特定する識別子を取得してもよい。このように構成される場合にも、取得部86は、記憶部82を参照することで、物品Pの規定重量Wt及び物品Pの長さL1を取得できる。
【0064】
また、取得部86が取得する情報には、計量装置100で物品Pの計量を行う際の、搬送装置10による物品Pの搬送速度Vを含む。なお、取得部86は、搬送装置10による物品Pの搬送速度Vの情報として、物品Pの搬送速度Vを特定可能な情報(例えば、第2駆動部18bのモータの回転数)を取得してもよい。
【0065】
(2-4-2)制御部
制御部84は、計量装置100が物品Pの計量を行う際に、入力装置60に対して入力される指令や、取得部86が取得する、物品Pの規定重量Wt、物品Pの長さL1、及び搬送装置10による物品Pの搬送速度V等に基づいて、計量装置100の動作を制御する。
【0066】
例えば、制御部84は、入力装置60に対して運転指令が入力されると、第1コンベア12及び第2コンベア14による物品Pの搬送速度が、取得部86が取得した搬送速度Vになるように、第1駆動部18a及び第2駆動部18bの動作を制御する。
【0067】
また、例えば、制御部84は、ある物品Pが第2コンベア14により搬送されている際にロードセル28の出力する計量信号に基づいて、その物品Pの重量Wを算出する。具体的には、制御部84は、センサ25の検出結果、搬送装置10の搬送速度V、物品Pの長さL1に基づいて、物品Pの全体が第2コンベアベルト14a上に存在しているタイミングを検出する。制御部84は、物品Pの全体が第2コンベアベルト14a上に存在する間にロードセル28が出力する計量信号に基づき、物品Pの重量Wを算出する。制御部84による物品Pの重量Wの算出については後述する。
【0068】
また、例えば、制御部84は、算出した物品Pの重量が、許容重量範囲内であるかを判断する。例えば、制御部84は、算出した物品Pの重量Wが、許容最小重量(物品の規定重量Wt-α)と、許容最大重量(物品の規定重量Wt+β)と、の間の値であるかを判断する(α及びβは、設定済みの数値)。制御部84は、算出した物品Pの重量Wが許容重量範囲内であればその物品Pを合格品と判断し、算出した物品Pの重量Wが許容重量範囲外であればその物品Pを不合格品と判断する。
【0069】
また、例えば、制御部84は、計量装置100の計量に不具合が存在するかを判断する。さらに、制御部84は、計量装置100の計量に不具合が存在する場合、計量装置100の不具合要因の候補を決定し、決定した計量装置100の不具合要因の候補を出力する。
【0070】
(A)物品の重量の算出処理
制御部84による物品Pの重量Wの算出処理について説明する。まず、制御装置80の重量算出処理のための構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、制御装置80の重量算出処理のための構成のブロック図である。
【0071】
制御装置80は、アンプ182と、アナログフィルタ184と、A/D変換器186と、を含む。また、制御部84は、物品Pの重量の算出処理のための機能部として、信号処理部188を含む。
【0072】
アンプ182は、ロードセル28から入力された計量信号を増幅し、増幅信号としてアナログフィルタ184に出力する。アナログフィルタ184は、増幅信号から不要な高域成分を除去してアナログ信号として出力する。A/D変換器186は、アナログフィルタ184から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換して信号処理部188に出力する。信号処理部188は、所定の有限インパルス応答(FIR)型のフィルタ(以後、単にフィルタと呼ぶ)を用いて、デジタル信号をフィルタリングする。要するに、信号処理部188は、所定のフィルタを用いて、アンプ182、アナログフィルタ184、及びA/D変換器186により前処理をした計量信号(以後、前処理後の計量信号をロードセル28の計量信号と呼ぶ)をフィルタリングする。制御部84は、信号処理部188によりフィルタリングされたロードセル28の計量信号に基づいて物品Pの重量Wを算出する。
【0073】
なお、前述のように、ロードセル28は、第2コンベアベルト14aが物品Pを搬送している場合には、第2コンベア14の重量及び第2コンベア14上の物品Pの重量、を検出して計量信号を出力している。そのため、制御部84が、第2コンベアベルト14aが物品Pを搬送している場合に、ロードセル28からの計量信号に基づいてそのまま重量を算出すると、制御部84は、第2コンベア14と物品Pとの合計重量を算出することになる。そこで、制御部84は、実際に物品Pの重量の計量を開始する前に、第2コンベアベルト14a上に物品Pが存在しない状態でロードセル28が出力する計量信号に基づいて、ゼロ点を導出する処理を実施している。言い換えれば、制御部84は、実際に物品Pの重量の計量を開始する前に、第2コンベア14と第2コンベア14上の物品Pとの合計重量から、減じるべき第2コンベア14の重量を算出する処理を予め実施している。
【0074】
なお、信号処理部188がロードセル28の計量信号のフィルタリングを行う理由は、ロードセル28の計量信号に、計量装置100の固有振動(物品Pが第2コンベア14に受け渡される際の衝撃による振動)や、計量装置100が使用しているモータ(例えば第2駆動部18bとして用いられるモータ)やローラ(例えば第2コンベア14の駆動ローラ144a及び従動ローラ144b)の回転振動などを原因とするノイズが含まれるためである。
【0075】
図6を参照して説明すると、ロードセル28の計量信号は、
図6に破線で示すように、振幅の比較的大きな振動成分(ノイズ)を含む信号である。物品Pの重量は、このような振動成分を含む計量信号からは精度良く算出できない。そこで、信号処理部188は、所定のフィルタを用いて、ロードセル28の計量信号をフィルタリングして(ノイズを低減して)、
図6に実線で示すような、ノイズの少ない信号(概ね、物品Pがロードセル28に作用させる力だけを示す信号)を取り出している。
【0076】
制御部84は、信号処理部188によるフィルタリング後の計量信号とゼロ点との差の値に基づいて、物品Pの重量Wを算出している。具体的には、制御部84は、物品Pの全体が第2コンベアベルト14a上に存在している期間の計量信号(
図6における実線の台地部分の計量信号)と、物品Pが第2コンベアベルト14a上に存在していない期間の計量信号との差の値に基づいて、物品Pの重量Wを算出している。
【0077】
なお、ロードセル28の計量信号に含まれるノイズの周波数は、種々の条件により変化する。
【0078】
例えば、計量装置100の固有振動の周波数は、20~100Hz程度の比較的大きな周波数である。固有振動の周波数は、例えば、搬送装置10の搬送方向A1における第2コンベア14の長さLc1、搬送装置10の搬送方向A1に直交する方向における第2コンベア14の長さLc2、(
図3参照)、物品Pの規定重量Wt、搬送方向A1における物品Pの長さL1等により変化する。
【0079】
また、モータやローラの回転振動の周波数は、10~30Hz程度の周波数である。回転振動の周波数は、例えば、物品Pの搬送速度V(第2コンベアベルト14aの搬送速度)、搬送装置10の搬送方向A1における第2コンベア14の長さLc1、搬送装置10の搬送方向A1に直交する方向における第2コンベア14の長さLc2、駆動ローラ144a及び従動ローラ144bの径、駆動ローラ144aの歯数、第2駆動部18bとして用いられるモータの歯数、第2コンベア14のタイミングベルト144cの歯数、第2コンベアベルト14aの周長等により変化する。
【0080】
例えば、ローラの振動の周波数は、第2コンベアベルト14aの搬送速度[m/s]/ローラ径[m]×πで算出される。例えば、モータの振動の周波数は、ローラの振動の周波数×ローラの歯数/モータの歯数で計算される。例えば、タイミングベルトの振動の周波数は、ローラの振動の周波数×ローラの歯数/タイミングベルトの歯数で計算される。例えば、第2コンベアベルト14a(平ベルト)の振動の周波数は、第2コンベアベルト14aの搬送速度[m/s]/第2コンベアベルト14aの周長[m]で算出される。
【0081】
また、工場の床振動等の外乱周波数は、10Hz以下の比較的小さな周波数である場合がある。
【0082】
このように、ロードセル28の計量信号に含まれるノイズの周波数は、様々な条件により変化し得ることから、信号処理部188は、フィルタリングに使用するフィルタの設定が可変に構成されている。言い換えれば、計量装置100の制御装置80は、信号処理部188が計量信号のフィルタリングに使用する、互いに特性の異なる複数のフィルタを有する。信号処理部188がフィルタリングに使用するフィルタの設定が可変な理由は、信号処理部188の使用するフィルタには、全ての周波数域のノイズを十分に低減可能な単一のフィルタ存在しないためである。
【0083】
なお、制御装置80で設定可能なフィルタには、所定の周波数以上のノイズを十分に低減可能なフィルタを含む。限定するものではないが、制御装置80が複数有するフィルタには、例えば、計量信号から、5Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタAと、10Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタBと、15Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタCと、20Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタDと、を含む。ここで、所定の周波数以上のノイズを十分に低減可能とは、例えば、所定の周波数以上の信号の振幅を所定の低減率以下に低減可能なフィルタである。
【0084】
また、信号処理部188で設定可能なフィルタには、コンビネーションフィルタを含む。ここで、コンビネーションフィルタとは、複数のベースとなるフィルタを掛け合わせて生成されたフィルタである。コンビネーションフィルタを用いてフィルタリングを行うことで、ある周波数以上の周波数のノイズについて十分に(例えば1/10000以下に)低減可能であって、なおかつ、その周波数より小さな周波数についても、所定の周波数については振幅を比較的大きく低減することが可能となる。
【0085】
計量装置100で物品Pの計量を行う際に信号処理部188が使用するフィルタは、例えば、技術者が、試運転を行いながら、計量信号に含まれるノイズが抑制されるように設定(選択)する。あるいは、計量装置100で物品Pの計量を行う際に信号処理部188が使用するフィルタは、制御部84が、試運転の結果等に基づき自動で設定してもよい。
【0086】
(B)診断処理
(B-1)概要
制御装置80は、ロードセル28が出力する計量信号を取得し、計量装置100において計量の不具合が発生しているかを判断し、不具合要因の候補を決定して出力する。これらの一連の処理を、診断処理と呼ぶ。
【0087】
制御装置80の行う診断処理について説明する。
【0088】
診断処理における主要な処理には、計量装置100において計量の不具合が発生しているかの判断と、計量の不具合が発生している場合の、不具合要因の候補の決定及び出力処理を含む。制御装置80では、特に制御部84が、計量装置100において計量の不具合が発生しているかを判断する。具体的には、制御部84は、計量装置100において、計量装置100の計量精度に悪影響を与える/与える可能性のある振動が存在しているか判断する。また、制御装置80では、制御部84が、計量装置100の計量に不具合が存在すると判断する場合に、不具合要因の候補を決定する。そして、制御部84は、計量装置100に不具合が存在すると判断する場合に、決定した不具合要因の候補を出力装置70に出力する。
【0089】
なお、制御部84が候補として決定し得る不具合要因には、計量装置100の不具合(故障・経年劣化・整備不良等)を含む。計量装置100の故障には、例えば、第2コンベア14のローラ144a,144bの破損を含む。計量装置100の経年劣化には、例えば、第2コンベアベルト14aの摩耗を含む。計量装置100の整備不良には、例えば、第2コンベアベルト14aのテンション調整不良や、第2コンベアベルト14aへの汚れの付着等を含む。
【0090】
また、制御部84が候補として決定し得る不具合要因には、計量装置100の設置状態の不良を含んでもよい。計量装置100の設置状態の不良には、例えば、搬送装置10及び検出装置20を支持するフレーム50の脚部52(
図1参照)の1つ以上が、計量装置100の設置面から浮いている状態を含む。言い換えれば、計量装置100の設置状態の不良には、フレーム50の脚部52のいずれかが、搬送装置10及び検出装置20を支持していない状態を含む。
【0091】
また、制御部84が候補として決定し得る不具合要因には、計量装置100の設置環境に関する不具合を含んでもよい。計量装置100の設置環境に関する不具合には、例えば、計量装置100の設置場所の床の振動を含む。また、計量装置100の設置環境に関する不具合には、例えば、計量装置100の設置場所の気流(例えば、エアコンの風が強い等)を含む。
【0092】
制御装置80は、例えば、入力装置60に対し、計量装置100の診断指令が入力されると、診断処理を実行する。また、制御装置80は、入力装置60に対して計量装置100の診断指令が入力されるという条件に加えて、又は、入力装置60に対して計量装置100の診断指令が入力されるという条件に代えて、所定のタイミングで診断処理を実行してもよい。例えば、制御装置80は、計量装置100の電源が投入する度に、診断処理を実行してもよい。また、例えば、制御装置80は、入力装置60に対して計量装置100の運転指令が入力される度に、診断処理を実行してもよい。
【0093】
(B-2)診断処理の具体例
制御装置80が実行する診断処理の具体例を、
図7Aのフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
制御装置80は、上述したような所定の条件(例えば計量装置100の診断指令が入力されたという条件)が成立すると、例えば
図7Aのフローチャートに基づいて診断処理を実行する。
【0095】
ステップS1では、制御装置80は、第2コンベア14上に物品Pが存在せず、第2コンベア14の搬送速度がゼロの状態(すなわち第2コンベア14が停止している状態)で、所定時間(例えば数十秒)にロードセル28が出力する計量信号を取得する。より具体的には、制御装置80は、第2コンベア14の搬送速度がゼロで、物品が第2コンベア14上に無い状態で、所定時間にロードセル28が出力する計量信号を、アンプ182で増幅し、アナログフィルタ184及びA/D変換器186で処理したもの(説明が冗長になるのを避けるため、以下では、ロードセル28の計量信号と呼ぶ場合がある)を取得する。制御装置80が取得したロードセル28の計量信号は、記憶部82に記憶される。
【0096】
なお、この時には、搬送装置10は動作しておらず、搬送装置10は振動を発生させないので、ロードセル28は、例えば、工場の床振動や、第2コンベア14に吹き付ける気流等の外乱を検出する。特に、計量装置100の設置状況が不良で、フレーム50の脚部52のいずれかが床面から浮いており、計量装置100が容易にがたつく場合には、比較的小さな工場の床振動等の外乱であっても、ロードセル28は振動を検出しやすい。
【0097】
次に、ステップS2では、制御装置80は、物品が第2コンベア14上に無い状態で(第2コンベア14に物品Pは供給せずに)、第2コンベア14を搬送速度Va[m/s]で運転する。言い換えれば、制御装置80は、第2コンベア14が、物品は搬送せずに、第2コンベアベルト14aだけを搬送速度Vaで運転するように、第2コンベア14の動作を制御する。なお、この際、制御装置80は、第1コンベア12も同時に、例えば搬送速度Vaで運転してもよい。
【0098】
次に、ステップS3では、制御装置80は、第2コンベア14上に物品Pが無く、第2コンベア14が搬送速度Vaで運転されている状態で、所定時間(例えば数十秒)にロードセル28が出力する計量信号を取得する。より具体的には、制御装置80は、第2コンベア14が、物品Pを搬送せずに、搬送速度Vaで運転されている状態で、所定時間にロードセル28が出力する計量信号を、アンプ182で増幅し、アナログフィルタ184及びA/D変換器186で処理したもの(説明が冗長になるのを避けるため、以下では、ロードセル28の計量信号と呼ぶ場合がある)を取得する。制御装置80が取得したロードセル28の計量信号は、記憶部82に記憶される。
【0099】
次に、ステップS4では、制御装置80は、物品が第2コンベア14上に無い状態で(第2コンベア14に物品Pは供給せずに)、第2コンベア14を搬送速度Vb[m/s]で運転する。搬送速度Vbは、搬送速度Vaより高速である。例えば、限定するものではないが、搬送速度Vbは、搬送速度Vaの2倍である。言い換えれば、制御装置80は、第2コンベア14が、物品は搬送せずに、第2コンベアベルト14aだけを搬送速度Vaで運転するように、第2コンベア14の動作を制御する。なお、この際、制御装置80は、第1コンベア12も同時に、例えば搬送速度Vbで運転してもよい。
【0100】
次に、ステップS5では、制御装置80は、第2コンベア14上に物品Pが無く、第2コンベア14が搬送速度Vbで運転されている状態で、所定時間(例えば数十秒)にロードセル28が出力する計量信号を取得する。より具体的には、制御装置80は、第2コンベア14が、物品Pを搬送せずに、搬送速度Vbで運転されている状態で、所定時間にロードセル28が出力する計量信号を、アンプ182で増幅し、アナログフィルタ184及びA/D変換器186で処理したもの(説明が冗長になるのを避けるため、以下では、ロードセル28の計量信号と呼ぶ場合がある)を取得する。制御装置80が取得したロードセル28の計量信号は、記憶部82に記憶される。
【0101】
なお、ステップS3及びステップS5では、第2コンベア14は物品を搬送していないので、理想的にはロードセル28は何も検出しない。しかし、実際には、ロードセル28は、工場の床振動や、第2コンベア14に吹き付ける気流等の外乱の他、搬送装置10が発生する振動等も検出する。
【0102】
次に、ステップS6では、制御装置80の信号処理部188は、ステップS1,ステップS3及びステップS5で取得されたロードセル28の計量信号のそれぞれを、複数のフィルタでフィルタリングする。例えば、ステップS6では、信号処理部188は、ステップS1,ステップS3及びステップS5で取得されたロードセル28の計量信号(3つのロードセル28の計量信号)を、それぞれ、4つのフィルタA~Dでフィルタリングする。限定するものではないが、例えば、フィルタAは5Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタであり、フィルタBは10Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタであり、フィルタCは15Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタであり、フィルタDは20Hz以上のノイズを十分に低減可能なフィルタである。したがって、フィルタAにより処理されたロードセル28の計量信号には、概ね、5Hzより小さな周波数の信号だけが含まれる。フィルタBにより処理されたロードセル28の計量信号には、概ね、10Hzより小さな周波数の信号だけが含まれる。フィルタCにより処理されたロードセル28の計量信号には、概ね、15Hzより小さな周波数の信号だけが含まれる。フィルタDにより処理されたロードセル28の計量信号には、概ね、20Hzより小さな周波数の信号だけが含まれる。ここでは、信号処理部188は、3つのロードセル28の計量信号のそれぞれを、4つのフィルタA~Dで処理するので、合計12個のフィルタリングされた信号が得られる。フィルタリングされた信号は記憶部82に記憶される。
【0103】
次に、ステップS7では、制御部84は、記憶部82に記憶されている、複数のフィルタA~Dのそれぞれによりフィルタリングされた、複数の信号(本実施形態では、搬送速度ゼロ(搬送停止中)、搬送速度Va、搬送速度Vbの場合の信号)のそれぞれについて、統計情報を生成する。ここでの統計情報は、例えば、フィルタリング後の各信号の、標準偏差、分散、最大値と最小値との差、最大値、及び最小値の少なくとも1つ(1種類)である。好ましくは、統計情報には、フィルタリング後の各計量信号の、標準偏差、分散、及び最大値と最小値との差のうちの1つを、少なくとも含む。なお、制御部84は、記憶部82に記憶されている、複数のフィルタA~Dのそれぞれによりフィルタリングされた、複数の計量信号のそれぞれについて、1種類だけ統計情報を生成してもよいし、複数種類の統計情報を生成してもよい。
【0104】
次に、ステップS8では、制御部84は、複数のフィルタA~Dのそれぞれによりフィルタリングされた複数の信号のそれぞれについて生成した統計情報を、記憶部82に記憶されている、搬送速度毎かつフィルタ毎に記憶されている統計情報の基準と比較する。
【0105】
制御部84が実行する、統計情報と統計情報の基準との比較処理について、具体例を挙げて説明する。ここでは、制御部84が、分散と、最大値と最小値との差と、を統計情報として生成し、これを統計情報の基準と比較する場合を想定する。
【0106】
なお、ステップS8を行う前提として、記憶部82には、搬送速度ゼロ、搬送速度Va、及び搬送速度Vbの3種類の搬送速度と、フィルタA~フィルタDの4つのフィルタと、のそれぞれの組合せについて、分散の基準値及び最大値と最小値との差の基準値の組合せが記憶されている。
【0107】
なお、記憶部82に記憶されているこれらの情報は、例えば、コンピュータ上でのシミュレーションや理論的な計算から算出された、搬送速度毎かつフィルタ毎の分散及び最大値と最小値との差であってもよい。また、記憶部82に記憶されているこれらの情報は、例えば、不具合が無いことが分かっている計量装置100の試験機(診断対象の計量装置100とは別の装置)を用いて、上記のステップS1~S7と同様の方法で得た、搬送速度毎かつフィルタ毎の分散及び最大値と最小値との差であってもよい。
【0108】
あるいは、記憶部82に記憶されているこれらの情報は、例えば、(不具合が無いことが分かっている)計量装置100(診断対象の計量装置100自体)の試運転時に、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品Pが第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号を複数のフィルタA~Dのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された、搬送速度毎かつフィルタ毎の分散及び最大値と最小値との差であってもよい。
【0109】
また、例えば、記憶部82には、デフォルトとして、例えば計量装置100の試験機を用いて上記のステップS1~S7と同様の方法で得られた、計量信号の分散及び最大値と最小値との差が記憶されていてもよい。そして、試運転後には、記憶部82に、診断対象の計量装置100の試運転時に、上記のステップS1~S7と同様の方法で得られた、計量信号の分散及び最大値と最小値との差が記憶されてもよい。
【0110】
制御部84は、ステップS7において、各搬送速度について各フィルタでフィルタリングした信号から生成された分散及び最大値と最小値との差を、記憶部82に記憶されている、同一搬送速度かつ同一フィルタと関連付けられている、分散の基準値及び最大値と最小値との差の基準値の組合せとを比較する。そして、制御部84は、各搬送速度について各フィルタでフィルタリングした信号から生成された分散が、分散の基準値よりも所定値以上大きい、又は、各搬送速度について各フィルタでフィルタリングした信号から生成された最大値と最小値との差が、最大値と最小値との差の基準値よりも所定値以上大きい場合に、この統計情報には異常がある(統計情報が正常値から外れている)と判断する。なお、制御部84は、各搬送速度について各フィルタでフィルタリングした信号から生成された分散が、分散の基準値よりも所定値以上大きく、かつ、各搬送速度について各フィルタでフィルタリングした信号から生成された最大値と最小値との差が、最大値と最小値との差の基準値よりも所定値以上大きい場合に、この統計情報には異常があると判断してもよい。
【0111】
なお、例えば、統計情報が最大値である場合には、制御部84は、最大値が基準値よりも所定値以上大きい場合に、統計情報に異常があると判断してもよい。また、例えば、統計情報が最小値である場合には、制御部84は、最小値が基準値よりも所定値以上小さい場合に、統計情報に異常があると判断してもよい。
【0112】
制御部84は、ステップS8では、このような統計情報と統計情報の基準との比較を、搬送速度ゼロ、搬送速度Va、及び搬送速度Vbの3種類の搬送速度と、フィルタA~フィルタDの4つのフィルタと、のそれぞれの組合せについて、実行する。本実施形態であれば、制御部84は、搬送速度とフィルタの種類との12個の組合せのそれぞれについて、統計情報と統計情報の基準との比較を実行する。
【0113】
次に、ステップS9では、制御部84は、搬送速度とフィルタの種類との組合せ毎に生成された複数の統計情報の中に(本実施形態では12個の統計情報の中に)、異常があるものが存在するかを判断する。異常がある統計情報が存在すれば、診断処理はステップS10に進み、異常がある統計情報が存在しなければ、診断処理はステップS20に進む。
【0114】
ステップS10では、制御部84は、搬送速度とフィルタの種類との組合せ毎に生成した複数の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定する。
図8A~
図8Cを参照しながら、具体例を説明する。
【0115】
例えば、
図8Aのように、少なくとも搬送速度がゼロの場合(第2コンベア14が停止している場合)のロードセル28の計量信号を、フィルタB、フィルタC及びフィルタDのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された統計情報が異常であると判断した場合には、制御部84は、計量装置100の設置環境に関する不具合及び、計量装置100の設置状態の不良を、計量装置100の不具合要因の候補に決定する。
【0116】
例えば、
図8Bのように、制御部84が、搬送速度がゼロの場合のロードセル28の計量信号を、フィルタB、フィルタC及びフィルタDのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された統計情報は正常であると判断したとする。一方で、制御部84は、搬送速度がVa,Vbの場合のロードセル28の計量信号を、フィルタAでフィルタリングした信号から生成された統計情報は異常であると判断したとする。この場合には、制御部84は、第2コンベアベルト14aの経年劣化又は整備不良を、計量装置100の不具合要因の候補に決定する。このような判断を行う理由は、搬送速度がゼロの場合の統計情報には異常はないことから、計量装置100の設置環境や計量装置100の設置状態には問題が無いと推定され、第2コンベアベルト14a(平ベルト)に不具合がある場合には、比較的低い周波数の振動が発生しやすいためである。
【0117】
例えば、
図8Cのように、制御部84が、搬送速度がゼロの場合のロードセル28の計量信号を、フィルタB、フィルタC及びフィルタDのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された統計情報は正常であると判断したとする。さらに、制御部84は、搬送速度がVaの場合のロードセル28の計量信号を、フィルタDでフィルタリングした信号から生成された統計情報は異常であると判断したとする。また、制御部84は、搬送速度がVbの場合のロードセル28の計量信号を、フィルタC及びフィルタDでフィルタリングした信号から生成された統計情報は異常であると判断したとする。この場合には、制御部84は、ローラ144a,144b又は第2駆動部18bの故障を、計量装置100の不具合要因の候補に決定する。このような判断を行う理由は、搬送速度がゼロの場合の統計情報には異常はないことから、計量装置100の設置環境や計量装置100の設置状態には問題が無いと推定され、ローラ144a,144b又は第2駆動部18bに不具合がある場合に、比較的低い周波数の振動が発生しやすいからである。
【0118】
なお、第2駆動部18bとしてのモータは、自らの破損を検知し、検知結果を制御装置80に出力する機能を有する場合がある。このような場合には、第2駆動部18bに問題があれば、第2駆動部18bの異常が制御装置80に報知されることになる。そのため、このような場合には、制御部84は、
図8Cのような結果が得られた場合であっても、第2駆動部18bからの異常の報知が無ければ、第2駆動部18bの故障を計量装置100の不具合要因の候補から除外してもよい。
【0119】
ステップS10において、不具合要因の決定が終了すると、制御部84は、ステップS10で決定した計量装置100の不具合要因の候補を、出力装置70に出力する(ステップS11)。例えば、制御部84は、ステップS10で決定した計量装置100の不具合要因の候補を、出力装置70としてのディスプレイに表示する。他の例では、制御部84は、ステップS10で決定した計量装置100の不具合要因の候補の情報を、計量装置100のオペレータ等が操作する携帯端末等に送信してもよい。
【0120】
ステップS20では、制御部84は、計量装置100には不具合が無いと判断する。そして、ステップS21では、制御部84は、計量装置100に不具合が無いことを出力装置70に出力する。
【0121】
なお、以上で説明した診断処理は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0122】
例えば、ステップS1~ステップS5の順序は、適宜変更可能である。例えば、ステップS2,ステップS3が最初に、ステップS4,ステップS5が次に、ステップS1が最後に実行されてもよいし、ステップS4,ステップS5が最初に、ステップS2,ステップS3が次に、ステップS1が最後に実行されてもよい。
【0123】
また、
図7Aのフローチャートでは、ステップS1,S3,S5で取得されたロードセル28の計量信号のフィルタリングが、ステップS6でまとめて行われているが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS1,S3,S5のそれぞれでロードセル28の計量信号が取得されると、引き続いて信号処理部188がフィルタリングを行ってもよい。また、ステップS7の統計情報を取得する処理も、ロードセル28の計量信号のフィルタリングに引き続き行われてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、計量装置100に不具合が無い場合にも、ステップS21において、不具合が無いという判断結果が出力装置70に出力されるが、このような態様に限定されるものではない。例えば、ステップS20及びステップS21の処理は省略されてもよい。
【0125】
また、
図7Aのフローチャートでは、計量装置100は、搬送速度をゼロ、Va、Vbとの3段階でしか変更しないが、これに限定されるものではなく、計量装置100は、搬送速度を4段階以上で変更してもよい。搬送速度を多段階で変更することで、多数ある不具合要因から、不具合要因の候補をより精度良く決定しやすくなる。
【0126】
また、以上の説明では、計量装置100は、診断処理で使用されるフィルタは4種類であるが、これに限定されるものではなく、計量装置100は、2種類、3種類、又は5種類以上のフィルタをロードセル28の計量信号のフィルタリングに用いてもよい。
【0127】
さらに、
図7Aを参照して説明したフローチャートでは、制御装置80は、搬送ゼロの時の1つの計量信号を複数のフィルタA~Dでフィルタリングし、搬送速度Vaの時の1つの計量信号を複数のフィルタA~Dでフィルタリングし、搬送速度Vbの時の1つの計量信号を複数のフィルタA~Dでフィルタリングしている。ただし、これに限定されるものではなく、制御装置80は、
図7Bのように、搬送ゼロ、搬送速度Va、及び搬送速度Vbの際に取得したロードセル28の計量信号を、直接、複数のフィルタA~Dのいずれかでフィルタリングしてもよい。言い換えれば、制御装置80は、
図7AにおけるステップS1とステップS6とをステップS1aとして同時に行い、
図7AにおけるステップS2と、ステップS3と、ステップS6とをステップS2aとして同時に行い、
図7AにおけるステップS4と、ステップS5と、ステップS6とをステップS3aとして同時に行ってもよい。なお、
図7BのステップS7以降の処理は、
図7Aと同様であるので、説明は省略する。
【0128】
(3)特徴
(3-1)
上記実施形態の計量装置100は、物品Pを搬送しながら物品Pの重量を計量する。計量装置100は、物品Pを搬送する搬送部の一例としての第2コンベア14と、検出部の一例としてのロードセル28と、制御部84と、を備える。第2コンベア14は、搬送速度が可変である。ロードセル28は、第2コンベア14の重量、又は、第2コンベア14に物品Pを搬送している場合には、第2コンベア14の重量及び第2コンベア14上の物品Pの重量、を検出して計量信号を出力する。制御部84の制御部84は、複数の搬送速度(上記実施形態では、搬送速度ゼロ、搬送速度Va,搬送速度Vb)のそれぞれについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から統計情報を生成する。制御部84の制御部84は、搬送速度毎の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0129】
この計量装置100では、複数の搬送速度Va,Vbについて得られる統計情報に基づいて不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を精度良く推定できる。そのため、計量装置100のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0130】
(3-2)
上記実施形態の計量装置100では、制御部84が生成する統計情報には、搬送速度がゼロの場合に、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報を含む。
【0131】
この計量装置100では、搬送速度がゼロの場合、すなわち第2コンベア14が停止中に得られる統計情報に基づいて計量装置100の不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を特に精度良く推定できる。そのため、計量装置100のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0132】
(3-3)
上記実施形態の計量装置100では、不具合要因には、計量装置100の設置状態に関する不具合要因、及び、計量装置100の設置環境に関する不具合要因の少なくとも一方を含む。
【0133】
この計量装置100では、計量装置100の構成部品の不具合だけではなく、他の種類の不具合の可能性を検出することができ、計量装置100のメンテナンス作業者が不具合の原因特定に要する時間を短縮できる。
【0134】
(3-4)
上記実施形態の計量装置100では、制御部84は、計量信号のフィルタリングに使用する、互いに特性の異なる複数のフィルタを有する。制御部84は、複数の搬送速度(本実施形態では、搬送速度ゼロ,搬送速度Va,搬送速度Vb)のそれぞれについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号を複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から統計情報を生成する。例えば、上記実施形態では、制御部84は、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号を4種類のフィルタA~Dのそれぞれでフィルタリングした信号から統計情報を生成する。制御部84は、搬送速度毎かつフィルタ毎の統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0135】
この計量装置100では、信号を異なるフィルタで処理した信号から得られる統計情報を用いて不具合要因の候補が決定されるため、計量に不具合が生じている場合に、不具合要因の候補を精度良く推定できる。そのため、計量装置100のメンテナンス作業者は、短時間で不具合の解消を図ることができる。
【0136】
(3-5)
上記実施形態の計量装置100は、記憶部82を有する。記憶部82には、搬送速度毎かつフィルタ毎に、統計情報の基準が記憶されている。制御部84は、生成した搬送速度毎かつフィルタ毎の統計情報を、記憶部82に記憶されている、対応する搬送速度及びフィルタの基準と比較した結果に基づいて、不具合要因の候補を決定して出力する。
【0137】
この計量装置100では、生成された統計情報を基準と比較することで、精度良く不具合要因の候補を推定できる。
【0138】
(3-6)
上記実施形態の計量装置100では、記憶部82には、基準として、計量装置100の試運転時に、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号を複数のフィルタのそれぞれでフィルタリングした信号から生成された統計情報が記憶されてもよい。
【0139】
この計量装置100では、計量装置100の試運転時に得られた統計情報が基準として用いられるため、各計量装置100に固有の特性を踏まえて不具合要因の候補を推定できる。
【0140】
(3-7)
上記実施形態の計量装置100は、統計情報には、標準偏差、分散、最大値と最小値との差、最大値、及び最小値との差の少なくとも1つを含む。
【0141】
(4)変形例
以下に、上記実施形態の変形例を示す。なお、変形例の内容は、互いに矛盾しない範囲で、他の変形例の一部又は全部と組み合わされてもよい。
【0142】
(4-1)変形例A
上記実施形態では、診断処理に、搬送速度がゼロで(言い換えれば第2コンベア14が停止しており)、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報が利用されるが、これに限定されるものではない。
【0143】
言い換えれば、診断処理に利用される統計情報は、第2コンベア14が運転中であって、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報だけであってもよい。
【0144】
なお、計量装置100の設置環境に関する不具合及び、計量装置100の設置状態の不良を原因として計量に不具合が生じている場合には、搬送速度を変更しても、計量に影響を与えている振動成分には大きな違いが生じない。そのため、このような現象を観察すれば、搬送速度がゼロで、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報を用いなくても、計量装置100の設置環境に関する不具合及び計量装置100の設置状態の不良が不具合要因の候補であると判断できる。
【0145】
(4-2)変形例B
上記実施形態では、診断処理の際に、第2コンベア14の搬送速度を搬送速度Vaと、搬送速度Vbとで変化させ、それぞれの搬送速度Va,Vbについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報を使用している。ただし、これに限定されるものではなく、診断処理には、第2コンベア14の搬送速度がゼロの際のロードセル28の計量信号から生成される統計情報と、第2コンベア14の搬送速度が搬送速度Vaの際のロードセル28の計量信号から生成される統計情報と、だけが使用されてもよい。ただし、不具合要因の候補を精度良く決定するためには、第2コンベア14の動作時の搬送速度を2段階以上で変化させ、それぞれの搬送速度について、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から生成される統計情報を使用することが好ましい。
【0146】
(4-3)変形例C
上記実施形態では、診断処理の際に、複数のフィルタを利用する例について説明しているが、これに限定されるものではなく、診断処理では1つのフィルタだけが使用されてもよい。このような場合であっても、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品が第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号から統計情報を生成し、搬送速度毎の統計情報に基づいて、不具合要因の候補を決定することができる。
【0147】
例えば、第2コンベア14のローラ144a,144bの振動の周波数や、第2コンベアベルト14aの振動の周波数は、第2コンベア14の搬送速度により変化する。そのため、第2コンベア14のローラ144a,144bや第2コンベアベルト14aに不具合が生じている場合には、1つのフィルタだけを用いる場合であっても、第2コンベア14の搬送速度によってフィルタリング後の信号に、振動が強く検知されたり、振動がほとんど検知されなくなったりする。このような現象を観察すれば、1種類しかフィルタを用いなくても、不具合要因の候補を決定できる。
【0148】
また、制御部84は、診断処理にフィルタを利用しなくてもよい。例えば、制御部84は、複数の搬送速度のそれぞれについて、物品に第2コンベア14上に無い状態でロードセル28が出力する計量信号に対して周波数解析を実施した上で、周波数帯毎に統計情報を生成し、生成した統計情報に基づき、不具合要因の候補を決定して出力してもよい。
【0149】
(4-4)変形例D
上記実施形態の計量装置100は、搬送装置10と、検出装置20と、制御装置80とを有するが、計量装置100は、これら以外の構成を有する装置であってもよい。例えば、上記実施形態では、計量装置100の後段に、計量装置100とは別の振分装置が配置される例を説明しているが、計量装置100は、物品Pの計量結果に基づいて物品Pの振り分けを行う振分機構を有するものであってもよい。
【0150】
(4-5)変形例E
上記実施形態では、フィルタの一例としてFIRフィルタを例示したが、フィルタの種類はFIRフィルタに限定されるものではなく、計量信号のフィルタリングが可能な他のタイプのフィルタであってもよい。
【0151】
(4-6)変形例F
上記実施形態では、検出部(重量センサ)としてひずみゲージを有するロードセル28を備えた計量装置100について説明している。しかし、計量装置が有する検出部の種類は、ひずみゲージを用いるロードセルに限定されない。例えば、ロードセル28は、油圧式ロードセルや空気圧式ロードセルであってもよい。また、検出部は、音叉振動式重量センサ、電磁平衡式重量センサ、静電容量式重量センサ等の、ロードセル式以外の重量センサであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、搬送中の物品を計量する計量装置に広く適用でき有用である。
【符号の説明】
【0153】
14 第2コンベア(搬送部)
28 ロードセル(検出部)
82 記憶部
84 制御部
100 計量装置
A 第1フィルタ(フィルタ)
B 第2フィルタ(フィルタ)
C 第3フィルタ(フィルタ)
D 第4フィルタ(フィルタ)
V 搬送速度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0154】