(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004236
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】クラフト紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/36 20060101AFI20230110BHJP
D21H 21/16 20060101ALI20230110BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
D21H21/36
D21H21/16
D21H21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105809
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】信田 博司
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AF09
4L055AG08
4L055AG23
4L055AG28
4L055AG47
4L055AG48
4L055AG50
4L055AH09
4L055AH11
4L055AH13
4L055AH21
4L055CD01
4L055CF36
4L055EA10
4L055FA30
4L055GA27
(57)【要約】
【課題】抗菌性を有し、経時による抗菌性の低下が抑制されたクラフト紙を提供する。
【解決手段】クラフトパルプ及びサイズ剤を少なくとも含有する原紙と、前記原紙に対して、表面サイズ剤及び抗菌剤を含むサイズプレス液を用いたサイズプレスにより表面サイズ剤及び抗菌剤とを含有し、前記表面サイズ剤の少なくとも一種が澱粉類であり、前記抗菌剤の少なくとも一種が金属及び/又は金属イオンを保持したゼオライトであり、接触時間30秒におけるCobbサイズ度が11g/m2以上18g/m2以下であるクラフト紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフトパルプ及びサイズ剤を少なくとも含有する原紙と、前記原紙に対して、表面サイズ剤及び抗菌剤を含むサイズプレス液を用いたサイズプレスにより表面サイズ剤及び抗菌剤とを含有し、前記表面サイズ剤の少なくとも一種が澱粉類であり、前記抗菌剤の少なくとも一種が金属及び/又は金属イオンを保持したゼオライトであり、接触時間30秒におけるCobbサイズ度が11g/m2以上18g/m2以下であるクラフト紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性を有するクラフト紙に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト紙は、クラフト法によって製造されたパルプを原料とした、紙の強度に優れる紙である。クラフト紙は、例えば、包装材料、紙袋、封筒、段ボール材料及び粘着テープ等に従来から使用される。例えば、耐水性を有しかつ退色性の少ないクラフト紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
一方、抗菌性を有する紙が公知である。例えば、殺菌作用を有する金属を保持したゼオライトを紙の表面に付着又は内部に含有してなる抗菌及び防カビ機能を有する紙が公知である(例えば、特許文献2参照)。また、銀ゼオライトと、水溶性ワニスと、金属キレート剤とを含有する紙用塗料が紙の表面に塗布された紙製品が公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-255146号公報
【特許文献2】特開昭62-238900号公報
【特許文献3】特開2009-203600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パルプを原料とするクラフト紙は、原料のパルプが天然由来のセルロースであることから、微生物及び菌によって攻撃を受けて劣化しやすい。クラフト紙は、前記劣化によって優れた特徴である強度が低下する。
特許文献2に記載されるが如くの紙の内部に抗菌剤を有する場合、紙の表面における抗菌性が不十分である。また、特許文献2及び特許文献3に記載されるが如くの紙の表面に抗菌剤を付着又は塗布では、経時によって抗菌剤が不活性化されて抗菌性が低下する場合がある。特許文献2は、抗菌剤として金属を担持したゼオライトを用いることによって抗菌効果がある程度持続するものの、クラフト紙の用途では更なる持続性が必要である。引用文献3は、抗菌液が塗布された紙の抗菌性の寿命ではなく、金属ゼオライトを含有する抗菌液としての寿命を改善するものである。
【0005】
本発明の課題は、抗菌性を有し、経時による抗菌性の低下が抑制されたクラフト紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記のクラフト紙によって解決できる。
[1]クラフトパルプ及びサイズ剤を少なくとも含有する原紙と、前記原紙に対して、表面サイズ剤及び抗菌剤を含むサイズプレス液を用いたサイズプレスにより表面サイズ剤及び抗菌剤とを含有し、前記表面サイズ剤の少なくとも一種が澱粉類であり、前記抗菌剤の少なくとも一種が金属及び/又は金属イオンを保持したゼオライトであり、接触時間30秒におけるCobbサイズ度が11g/m2以上18g/m2以下であるクラフト紙。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクラフト紙は、抗菌性を有し、経時による抗菌性の低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
クラフト紙は、クラフトパルプ及びサイズ剤を少なくとも含有する原紙と、前記原紙に対して表面サイズ剤及び抗菌剤を含むサイズプレス液を用いたサイズプレスにより表面サイズ剤及び抗菌剤とを含有する。
さらに、上記原紙は、製紙分野で従来公知の添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、填料、紙力剤、定着剤、歩留り剤、耐水化剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、及び防バイ剤を挙げることができる。
【0010】
クラフト紙は、クラフトパルプを水に分散したスラリーに、サイズ剤及び紙力剤、並びに必要に応じてその他の添加剤を混合した紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機及びツインワイヤー抄紙機など従来公知の抄紙機を用いて抄造して原紙を得て、前記原紙に対して表面サイズ剤及び抗菌剤を含むサイズプレス液を用いたサイズプレスによって、製造することができる。さらに、必要に応じて抄造後に及び/又はサイズプレス後に、カレンダー処理を施すことができる。カレンダーの例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、及びマルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0011】
上記サイズプレスは、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置を用いて行う。サイズプレス装置の例としては、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス及びブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー及びフィルムプレスを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを挙げることができる。その他にビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス及びカレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0012】
クラフトパルプは、クラフト法によって製造された化学パルプの一種である。パルプの原料は、従来公知の木材又は非木材である。パルプの原料は、例えば、針葉樹及び広葉樹、麻、リンター、わら、竹、サトウキビ、ヨシ、果実、コウゾ、ミツマタ、並びにガンピなどを挙げることができる。クラフトパルプは、パルプの原料が針葉樹であれば針葉樹クラフトパルプとなり、パルプの原料が広葉樹であれば広葉樹クラフトパルプとなる。いくつかの実施態様において、パルプの原料は針葉樹及び広葉樹から選ばれる一種又は二種以上である。少なくとも一つの実施態様において、パルプは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)である。この理由は、クラフト紙の強度、白さ及び印刷適性が良好になるからである。
【0013】
クラフト紙は、クラフトパルプ以外に機械パルプ及び脱墨古紙パルプなど従来公知のパルプを含有することができる。いくつかの実施態様において、クラフト紙中のクラフトパルプの含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して900質量部以上である。この理由は、クラフト紙の強度が良化するからである。
【0014】
いくつかの実施態様において、クラフトパルプの濾水度は400ml以上600ml以下である。この理由は、クラフト紙の強度及び平滑性が良化するからである。
濾水度は、ISO5267-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part2 : Canadian Standard Freeness method」に準拠して求められる、一般にCSF濾水度と称される値である。濾水度は、パルプの叩解によって調整できる。パルプの叩解を進めると、濾水度の値は小さくなる。
【0015】
サイズ剤は、サイズ性を付与するために紙料に配合する内部サイズ剤である。サイズ剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。サイズ剤の例としては、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、脂肪酸系サイズ剤、及びカチオン性スチレンアクリル系樹脂サイズ剤などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、サイズ剤は、ロジン及び強化ロジンなどのロジン系サイズ剤である。この理由は、ロジン系サイズ剤であると、その後に付与されるサイズプレス液の浸透を良好に抑えることができるためにクラフト紙の抗菌性が良化するからである。
【0016】
いくつかの実施態様において、原紙は、紙力剤を含有する。この理由は、クラフト紙の強度が増すからである。紙力剤は、紙力増強剤とも呼ばれ、紙の強度を付与するために抄紙工程で使用される内添紙力剤である。紙力剤は、製紙分野で従来公知であって、特に限定されない。紙力剤の例としては、澱粉類、グァーガム、ローカストビーンガム及びトラガントガムなどの植物性ガム類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース類、並びにポリアクリルアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレンオキサイド及びポリビニルアルコールなどの合成高分子などを挙げることができる。
【0017】
いくつかの実施態様において、紙力剤は澱粉類である。澱粉類は、例えば、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉である。この理由は、紙の強度だけでなく上記サイズ剤の定着性を向上し、サイズプレスで付与される抗菌剤の原紙への埋没が抑えられて、結果的にクラフト紙の抗菌性が良化するからである。少なくとも一つの実施態様において、紙力剤はカチオン化澱粉である。
いくつかの実施態様において、クラフト紙中の紙力剤の含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して10質量部以上である。この理由は、クラフト紙の抗菌性が良化するからである。いくつかの実施態様において、クラフト紙中の紙力剤の含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して15質量部以下である。この理由は、紙力が飽和するからである。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙中の紙力剤の含有量は、クラフト紙が含有するパルプ1000質量部に対して10質量部以上15質量部以下である。
【0018】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、填料を含有する。この理由は、填料を含有することでクラフト紙の柔軟性が向上するからである。ただし、填料は、クラフト紙の強度を低下する場合がある。いくつかの実施態様において、クラフト紙は、実質的に填料を含有しない。「実質的に」とは、紙の強度を低下させる程の量で填料を含有しない意味を指す。少なくとも一つの実施態様において、クラフト紙は、填料を含有しない。
【0019】
填料は、製紙分野で従来公知の白色無機顔料である。填料の例としては、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム及びアルミナなどを挙げることができる。填料の含有量は、灰分から見積もることができる。
【0020】
いくつかの実施態様において、クラフト紙は、硫酸アルミニウムを含有する。この理由は、上記サイズ剤の定着性を向上し、サイズプレスで付与される抗菌剤の原紙への埋没が抑えられて、結果的にクラフト紙の抗菌性が良化するからである。ただし、過剰量の硫酸アルミニウムは、紙の劣化に影響する。硫酸アルミニウムの含有量は、灰分から見積もることができる。
【0021】
灰分は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps-Determination of residue (ash) on ignition at 525 degree C」に準拠して求められる値である。いくつかの実施態様において、灰分は1質量%以上3質量%以下である。
【0022】
表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、アクリルアミド系重合体、アクリル系重合体、スチレン-アクリル酸系共重合体、スチレン-メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル-ビニルホルマール-アクリル酸エステル系共重合体、スチレン-マレイン酸系共重合体、オレフィン-マレイン酸系共重合体、各種ポリビニルアルコール、各種変性ポリビニルアルコール、澱粉類、及びカルボキシエチルセルロースなどを挙げることができる。
【0023】
表面サイズ剤の少なくとも一種は澱粉類である。澱粉類は、例えば、澱粉、並びにジアルデヒド澱粉、酸化澱粉及びカチオン化澱粉などの変性澱粉である。いくつかの実施態様において、表面サイズ剤として澱粉類は、表面サイズ剤中の80質量%以上を占める。この理由は、経時による抗菌性の低下が抑制できるからである。
【0024】
抗菌剤は、従来公知の無機系の抗菌剤又は有機系の抗菌剤である。無機系の抗菌剤は、例えば、銀系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、カドミウム系抗菌剤、錫系抗菌剤、銅系抗菌剤、金系抗菌剤、コバルト系抗菌剤、鉄系抗菌剤、マンガン系抗菌剤及びニッケル系抗菌剤などを挙げることができる。有機系の抗菌剤は、例えば、フェノール系抗菌剤、ピリジン・キノリン系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、イソチアゾロン系抗菌剤、アニリド系抗菌剤、ニトリル系抗菌剤、イミダゾール・チアゾール系抗菌剤、カルボン酸系抗菌剤、脂肪酸エステル系抗菌剤及び脂肪酸エーテル系抗菌剤などを挙げることができる。
【0025】
抗菌剤は、少なくとも一種が無機系の抗菌剤であって、銀、亜鉛、カドミウム、錫、銅、金、コバルト、鉄、マンガン及びニッケルなどの金属及び/又は金属イオンを保持したゼオライトである。いくつかの実施態様において、金属の種類としては銀である。この理由は、銀が抗菌性に優れるからである。このような抗菌剤は、例えば、シナネンゼオミック社などから市販される。
【0026】
いくつかの実施態様において、抗菌剤の付与量は、原紙の片面あたり0.14g/m2以上2.6g/m2以下である。この理由は、経時による抗菌性の低下が抑制されるからである。
【0027】
クラフト紙の接触時間30秒におけるCobbサイズ度は11g/m2以上18g/m2以下である。Cobbサイズ度では、紙の片面が一定時間水に接触する場合の吸水量を測定する。Cobbサイズ度は、製紙分野で従来公知の方法によって調整することができる。例えば、パルプの種類及び叩解度、並びにサイズ剤及び表面サイズ剤の添加及び含有量によって調整することができる。一般に、Cobbサイズ度は、サイズ剤及び/又は表面サイズ剤を用いる方法が調整し易い。本発明のCobbサイズ度は、ISO535:2014「Paper and board - Determination of water absorptiveness - Cobb method」に準じて求められる、クラフト紙と測定溶媒との接触時間を30秒とした吸水度試験方法(Cobb法)による測定値である。Cobbサイズ度が18g/m2超であると、抗菌性の悪化及び/又は経時による抗菌性が低下する場合がある。Cobbサイズ度が11g/m2未満であると、クラフト紙の品質トラブルを生じるばかりか、製造コスト増につながる。Cobbサイズ度を11g/m2未満にするには、通常、サイズ剤及び/又は表面サイズ剤を多く使用する必要がある。例えば、サイズ剤及び表面サイズ剤が過剰になると、これらサイズ剤を含有する紙料及びサイズプレス液が泡立ち易くなって泡による品質トラブルをもたらす場合がある。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量部は、乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。
【0029】
<クラフトパルプ>
過酸化水素法で漂白されてハンター白色度が81%である、叩解によってCSF濾水度460mlとしたLBKP及び580mlとしたNBKPを調製した。
【0030】
<原紙>
上記LBKP500質量部及び上記NBKP500質量部の合計1000質量部になるクラフトパルプを水に分散したスラリーに、ロジン系サイズ剤(星光PMC社、CC-1404)、紙力剤としてカチオン化澱粉(Grain Processing Corporation社、CHARGEMASTER R462)11質量部、及び硫酸アルミニウム10質量部を混合して紙料を得た。前記紙料を長網抄紙機を用いて抄造して、坪量70g/m2及び灰分2.3質量%の原紙を得た。
なお、実施例6では、上記ロジン系サイズ剤に替えてアルキルケテンダイマー系サイズ剤(星光PMC社、SS362)を配合した。比較例5では、ロジン系サイズ剤を配合しない原紙とした。
【0031】
<クラフト紙>
得た原紙に対して、表面サイズ剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ社、王子エースA)及び/又はスチレン-アクリル酸系共重合体(荒川化学工業社、ポリマロン(登録商標)1308S)、並びに抗菌剤を含有するサイズプレス液を用いてサイズプレスしてクラフト紙を得た。
また、抗菌性を評価するための基準試料として、表面サイズ剤を含有しつつ抗菌剤を含有しないサイズプレス液を用いてサイズプレスしたクラフト紙を作製した。
【0032】
サイズ剤の含有量及び表面サイズ剤の付着量は、所望のCobbサイズ度になるように適宜調整した。また、抗菌剤の種類は表1に記載する。抗菌剤の片面当たりの付着量は0.2g/m2になるように調整した。
【0033】
【0034】
得たクラフト紙について、以下の項目を評価した。
【0035】
銀担持ゼオライトには、シナネンゼオミック社のゼオミック(登録商標)を用いた。銀担持リン酸ガラスには、興亜硝子社のミリオンガード(登録商標)を用いた。酸化亜鉛には、本荘ケミカル社の酸化亜鉛を用いた。
【0036】
<抗菌性>
抗菌性の評価は、JIS Z2801:2010「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に従い行った。試験菌には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)及び大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用い、黄色ブドウ球菌の菌液濃度5.5×105個/ml及び大腸菌の菌液濃度4.0×105個/mlとし、接種0.4mlとした。
実施例及び比較例のクラフト紙、並びに基準試料用のクラフト紙を試験片として24時間培養した。24時間後、各実施例及び各比較例のクラフト紙の生菌数対数値(At)並びに基準試料用クラフト紙の生菌数対数値(Ut)から抗菌活性値(R)を求めた。Rは、下記式で算出する値である。各試験片は、調製してから24時間以内のものを用いた。
R=Ut-At
得たRの値から下記の基準で評価した。本発明において、クラフト紙は、(1)黄色ブドウ球菌の評価結果及び(2)大腸菌の評価結果が共にA又はBであれば抗菌性を有するものとする。
(1)黄色ブドウ球菌
A:Rが3.5以上
B:Rが3.0以上3.5未満
C:Rが2.0以上3.0未満
D:Rが2.0未満
(2)大腸菌
A:Rが5.0以上
B:Rが3.5以上5.0未満
C:Rが2.0以上3.5未満
D:Rが2.0未満
【0037】
<経時の抗菌性>
基準試料用のクラフト紙を除き各実施例及び各比較例のクラフト紙は、疑似的な経時処理を施した。処理は、ウエザーメーター(スガ試験機社、NX25型)にて、63℃、40%RH、キセノンランプにて40時間とした。処理後に、上記<抗菌性>と同様にして抗菌性を評価した。本発明において、クラフト紙は、(1)黄色ブドウ球菌の評価結果及び(2)大腸菌の評価結果が共にA又はBであれば経時による抗菌性の低下が抑制されたものとする。
【0038】
評価結果を表1に示す。
【0039】
表1から、本発明に該当する実施例1~6は、抗菌性を有し、経時による抗菌性の低下が抑制されたクラフト紙であるとわかる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~5は、これら効果のいずれか一つを満足しないとわかる。また、比較例6では、サイズを効かせるためにサイズ剤及び表面サイズ剤の量が多目になり、紙料及びサイズプレス液に泡立ちが発生し易くなって品質の点で好ましくなかった。