(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042360
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】筆記具及びペン先部品
(51)【国際特許分類】
B43K 5/00 20060101AFI20230317BHJP
B43K 1/02 20060101ALI20230317BHJP
B43K 3/00 20060101ALN20230317BHJP
【FI】
B43K5/00 100
B43K1/02
B43K3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149613
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002314
【氏名又は名称】セーラー万年筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中台 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350HA01
2C350HA15
2C350HC03
2C350KF01
(57)【要約】
【課題】筆記部に対する手指の案内部の周方向の位置を調整できる筆記具及びペン先部品を提供することを目的とする。
【解決手段】筆記具1及びペン先部品2は、筆記部22を有し、筆記部22の筆記の方向規定を有するペン先11と、ペン先11を固定する円筒状の内筒13と、内筒13を挿入できる、外周面に手指の案内部41を有する円筒状の外筒14と、外筒14を内筒13に固定する固定具15と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記部を有し、前記筆記部の筆記の方向規定を有するペン先と、
前記ペン先を固定する円筒状の内筒と、
前記内筒を挿入できる、外周面に手指の案内部を有する円筒状の外筒と、
前記外筒を前記内筒に固定する固定具と、
前記内筒に固定される胴と、
を備える筆記具。
【請求項2】
前記内筒は、一端側に形成され、前記外筒の軸方向の一方の端部と当接する座部と、他端側に形成された雄螺子部と、を有し、
前記固定具は、前記外筒の他方の端部と当接する円筒状に形成され、内周面に前記雄螺子部と螺合する雌螺子部を有する、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記内筒は、前記座部及び前記雄螺子部との間の前記外筒と対向する外周面の一部に形成され、周方向に配置された複数の突起部を有し、
前記外筒は、内周面の前記複数の突起部と対向する部位に形成され、前記複数の突起部が配置される、周方向に配置された複数の窪みと、を有する、請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記複数の突起部及び前記複数の窪みは、軸方向に沿って延びる、請求項3に記載の筆記具。
【請求項5】
前記突起部の数は、前記窪みの数よりも少なく、
前記窪みは、周方向に等間隔に配置される、請求項4に記載の筆記具。
【請求項6】
筆記部を有し、前記筆記部の筆記の方向規定を有するペン先と、
前記ペン先を固定する内筒と、
前記内筒の外周側に設けられ、前記内筒に対して周方向に移動できる外筒と、
前記外筒を前記内筒に固定する固定具と、
を備えるペン先部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン先により筆記を行う筆記具及び筆記具用のペン先部品である。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の紙面上にペン先で筆記する筆記具が知られている。このような筆記具は、使用者の手指によって保持される。このため、筆記具は、グリップ部の形状や素材などに様々な工夫を行い、握りやすさ、滑りにくさ、疲れ軽減などの工夫がされたものが知られている。ボールペンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
筆記具のボールペンのグリップ部の形状として、例えば、円柱形状、円錐台形状、円柱形状又は円錐台形状の1箇所もしくは複数箇所を削ぎ落したような形状、一部全円周を凹ませたものや凸状としたものなど様々である。また、グリップ部を形成する樹脂材料は、その硬度が種々設定され、硬いものから柔らかいもの等があり、更にはエアやジェルを内蔵したもの知られている。また、グリップ部の材料として、金属材料を用いた筆記具も知られている。
【0004】
また、筆記具である万年筆として、本体の紋章や模様とペン先との位置合わせを行うために、筆記部ユニットを万年筆本体に対し回転自在に配置可能で、装着する弾性体の増減で回転抵抗を変化・設定できる技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、竹製のペン先本体をペン軸に差し込む竹ペンも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-178852号公報
【特許文献2】特許第4972934号公報
【特許文献3】特開2007-331364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、持ち易くはあるが、例えば、ボールペンといったように、筆記具の種類によっては筆記部と紙面が一定に接触することから、筆記時に手指で握ったときの筆記具の姿勢が変わっても、安定して筆記を行うことができる。一方で、ボールペンのような筆記具は、手指に対するグリップ部が一定とならず、持ち替えるたびに筆記時のフィット感が変わることがあり、使用時に好みのフィット感を得られない場合がある。
【0008】
例えば、グリップ部が円柱のも、円錐台のものであれば自身の握り方を変える事により調整は可能だが、持ち替えるたびにフィット感を得られる握り方を探す必要がある。
【0009】
また、グリップ部の形状を1箇所もしくは複数個所を窪ませる等、手指で保持するときの目印を筆記具に設けることも考えられるが、自身の握り方がその目印から設定された筆記部と紙面の沿いに合わなければ、好みのフィット感を感じることができない。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3の技術は、組立時やインクを装着していないドライの状態で有れば、筆記部付近を掴んで、位置を調整することが可能であるが、インクを装着した状態であれば、調整時に手指の汚れの原因となる。
【0011】
また、万年筆のように、組み立て後に筆記部へ強い力を加えることが好ましくない筆記具もあり、このような筆記具は、筆記後に、筆記部を調整することが難しい。
【0012】
また、ボールペン等のように、筆記部の先端形状が球体で、常に紙面と一定に接触するものであれば特に問題ないが、筆記部と紙面が個々の持ち方により一定に接触し難い筆記具もある。これは、製品自体の設定やバラツキ、個々の持ち方や書き方のクセに原因がある。そして、このような問題が生じる代表的な筆記具として、ペン先を研いで仕上げる万年筆や、方向性のあるチップ形状をした例えばマーカーなど、毛の束ね方により最適な筆記方向やコシが変わる筆などがあげられる。そして、これらの筆記具は、ペン先の筆記部の位置(方向)により、筆記時の引っかかりや、筆記線のカスレ、筆記線の割れ等が生じ、筆記をする際に煩わしいと感じる場合がある。
【0013】
そこで本発明は、筆記部に対する手指の案内部の周方向の位置を調整できる筆記具及びペン先部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による筆記具は、筆記部を有し、前記筆記部の筆記の方向規定を有するペン先と、前記ペン先を固定する円筒状の内筒と、前記内筒を挿入できる、外周面に手指の案内部を有する円筒状の外筒と、前記外筒を前記内筒に固定する固定具と、前記内筒に固定される胴と、を備える。
【0015】
本発明の一態様によるペン先部品は、筆記部を有し、前記筆記部の筆記の方向規定を有するペン先と、前記ペン先を固定する円筒状の内筒と、前記内筒を挿入できる、外周面に手指の案内部を有する円筒状の外筒と、前記外筒を前記内筒に固定する固定具と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、筆記部に対する手指の案内部の周方向の位置を調整できる筆記具及びペン先部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る筆記具の構成を示す断面図。
【
図5】同ペン先部品の内筒及び外筒の構成を示す断面図。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る筆記具のペン先部品の構成を示す断面図。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る筆記具のペン先部品の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る筆記具1及び筆記具1に用いられるペン先部品2について、
図1乃至
図7を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る筆記具1の構成を示す断面図である。
図2は、筆記具1のペン先部品2の構成を示す断面図、
図3は、ペン先部品2の構成を示すとともに、使用の一例を示す断面図である。
図4は、ペン先部品2の構成を示す斜視図である。
図5は、ペン先部品2の内筒13及び外筒14の構成を示す断面図である。
図6は、筆記具1の使用の一例を示す説明図であり、
図6中の左図が外筒14の位置調整前を示し、右図が外筒14の位置調整後を示す。
図7は、筆記具1の使用の一例として、ペン先11の筆記部22に対する外筒14の案内部41の位置関係を示す説明図である。
【0020】
本実施形態において、筆記具1は、筆記の方向規定を有する。ここで、筆記の方向規定とは、筆記具1を用いて紙葉類の紙面上にインクを塗布するときに、筆記具1の周方向の位置が特定の位置であるときに、所定の筆記ができることを意味する。また、ここで、所定の筆記とは、例えば、ペン先の筆記部の位置(方向)により、筆記時の引っかかりや、筆記線のカスレ、筆記線の割れ等が生じることがない筆記である。
【0021】
例えば、筆記の方向規定を有する筆記具1として、ペン先を研いで仕上げる万年筆、方向性のあるチップ形状をした例えばマーカー、毛の束ね方により最適な筆記方向やコシが変わる筆等が挙げられる。なお、筆記具1は、これらの筆記具に限定されないが、本実施形態において、筆記具1を万年筆の例を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、筆記具1は、例えば、ペン先11と、ペン芯12と、内筒13と、外筒14と、固定具15と、胴16と、インクタンク17と、を備える。例えば、
図2及び
図3に示すように、筆記具1のペン先11、ペン芯12、内筒13、外筒14及び固定具15は、ペン先部品2を構成する。
【0023】
ペン先11は、筆記の方向規定を有する。
図1乃至
図4、
図6及び
図7に示すように、ペン先11は、ペン体21と、ペン体21の先端に形成された筆記部22と、を備える。ペン体21は、薄板状で先端が尖った形状に形成される。ペン体21は、例えば、インクに強い材料に形成される。
【0024】
本実施形態のように、筆記具1が万年筆である場合には、ペン体21は、酸やアルカリに強い金属材料、例えば、金合金やステンレスにより形成される。筆記部22は、ペン体21の先端に形成され、インクを紙面に塗布可能に形成される。
【0025】
具体例として、
図2、
図4、
図6及び
図7に示すように、ペン体21は、先端にペンポイント23が設けられる。また、ペン体21は、
図4に示すように、ペン体21の先端側から中央側の間にハート穴24が形成され、ペンポイント23を含むペン体21の先端からハート穴24まで切り割り(スリット)25が形成される。ペン体21は、例えば、溝、刻印、印刷、メッキ等により、文字や図形等の意匠や標章等の表示を有する。筆記部22は、スリット25が形成されたペンポイント23である。
【0026】
ペン先11は、ペン体21に形成されたスリット25によってインクがペン体21の先端まで毛細管現象により供給され、ペンポイント23を筆記部22として、スリット25を介して供給されたインクを紙葉類の紙面上に塗布できる。
【0027】
ペン芯12は、ペン先11にインクを供給する。例えば、ペン芯12は、毛細管現象によりインクがインクタンク17からペン先11にインクを流す。また、ペン芯12は、ペン先11に流れたインク分だけ、空気を取り込む、所謂気液交換を行い、インクタンク17からペン先11へのインクフローを行う。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、ペン芯12は、ペン先11に一端側が固定され、そして、他の部位が内筒13内に固定される。例えば、ペン芯12の他端は、他の部位よりも小径に形成され、インクタンク17内に配置される。
【0029】
内筒13は、所謂軸筒や首筒である。
図1乃至
図3に示すように、内筒13は、ペン先11の先端である筆記部22及びハート穴が少なくとも外部に露出するように、ペン先11が装着されたペン芯12を保持する。例えば、内筒13は、内部にペン芯12を嵌合することで、ペン芯12を保持する。
【0030】
図1乃至
図4に示すように、内筒13は、例えば、座部31と、雄螺子部32と、突起部33と、固定部34と、を備える。
【0031】
座部31は、例えば、内筒13の軸方向で一方の端部の外周面に形成される。座部31は、内筒13の一方の端部の外周面に形成され、径方向外方に突出する円環状の突起である。座部31の端面は、外筒14の端部と当接する。
【0032】
雄螺子部32は、内筒13の軸方向で他方の端部の外周面に形成される。
【0033】
突起部33は、座部31及び雄螺子部32の間の内筒13の外周面の一部に形成される突起である。
図2に示すように、突起部33は、内筒13が外筒14内に配置されたときに、外筒14と径方向で対向する一部に形成される。例えば、突起部33は、座部31に隣接する内筒13の外周面に形成される。
図2乃至
図4に示すように、突起部33は、例えば、内筒13の軸方向に延びる突起である。
【0034】
図5に示すように、突起部33は、内筒13の周方向に所定の間隔を空けて複数設けられる。ここで、複数の突起部33は、内筒13の周方向に、等間隔に配置されてもよく、非等間隔に配置されてもよい。本実施形態において、突起部33は、
図5に示すように、内筒13の周方向に、90°間隔で四つ設けられる。また、突起部33の長手方向に直交する断面形状が、例えば、頂部の幅が小さい台形状に形成される。
【0035】
固定部34は、例えば、内筒13の内部に設けられ、内筒13の内径よりも小径の円筒状に形成される。
図1に示すように、固定部34は、インクタンク17を固定可能に形成される。固定部34の先端は、例えば、軸方向に対して傾斜する。固定部34は、内部に、ペン芯12の他端が配置される。
【0036】
外筒14は、円筒状に形成される。外筒14は、例えば、内筒13に挿入可能に、内筒13の外径よりも若干大径に形成される。外筒14は、筆記具1のグリップ部を構成する。
図4に及び
図7に示すように、外筒14は、外周面に、使用者が手指でグリップするための案内部41を有する。
【0037】
また、外筒14は、例えば、
図4に示すように、内筒13の座部31と対向する一方の端部側の内周面に、周方向に所定の間隔を空けて配置された複数の溝42が形成される。また、例えば、外筒14は、他方の端部の内径が、一方の端部から他方の端部側の内径よりも大径に形成される。
【0038】
案内部41は、使用者の手指が接触する窪み、突起又は所定の形状により外筒14の外周面側に形成された部位である。案内部41は、使用者の手指の配置を案内する。例えば、本実施形態において、案内部41は、
図4及び
図7に示すように、外筒14の外周面の周方向の二箇所に配置された二つの窪み41a、41aである。
図7に示すように、二つの窪み41a、41aは、例えば、同形状に形成され、親指及び人差し指が接触可能に、筆記具1が筆記の姿勢において外筒14の外周面のうち上方側に配置される。
【0039】
図2乃至
図4に示すように、溝42は、軸方向に延びる窪みである。例えば、溝42は、外筒14の周方向に所定の間隔を空けて複数設けられる。溝42は、外筒14の内周面を切欠することで形成されていてもよく、また、外筒14の内周面に複数の軸方向に延びる複数の突起を形成することで、複数の突起の間に形成される構成であってもよい。溝42は、突起部33を配置可能、且つ、配置された突起部33と周方向で係合する。溝42は、外筒14の内周面のうち、内筒13が外筒14内に配置されたときに、内筒13に形成された突起部33と径方向で対向する部位に形成される。溝42は、外筒14の内筒13と当接する端部側の内周面に形成される。
【0040】
複数の溝42は、複数の突起部33が挿入配置され、そして、突起部33が配置された溝42が周方向で突起部33と係合することで、内筒13及び外筒14の周方向の相対的な移動を規制する。
【0041】
図5に示すように、複数の溝42は、内筒13に形成された複数の突起部33よりも数が多く設定される。例えば、複数の溝42は、外筒14の周方向に等間隔に配置されている。なお、複数の溝42は、複数の突起部33が配置可能であれば、外筒14の周方向に非等間隔に配置されてもよい。本実施形態において、
図5に示すように、溝42は、例えば、内筒13の周方向に、10°間隔で36箇所に設けられる。また、溝42の長手方向に直交する開口断面形状が、例えば、底部の幅が小さい台形状に形成される。
【0042】
固定具15は、内筒13の外周面側に配置された外筒14を内筒13に固定する。具体例として、固定具15は、軸方向の一方の端部が外筒14の他方の端部と当接する円筒状に形成される。固定具15の軸方向の長さは、内筒13の雄螺子部32の軸方向の長さよりも小さい。
【0043】
図2乃至
図4固定具15は、内周面に形成される雌螺子部51を有する。即ち、固定具15は、所謂ネジリングである。また、
図2乃至
図4に示すように、固定具15は、例えば、外筒14と当接する端部の径方向で中心側に形成された突起部52を有する。
【0044】
雌螺子部51は、固定具15の内周面に形成され、内筒13の雄螺子部32と螺合する。
【0045】
突起部52は、軸方向に延びる、固定具15と同軸上に形成された円環状の突起である。突起部52の外径は、外筒14の他方の端部の内径と同一径又は外筒14の他方の端部の内径よりも若干大径に形成される。突起部52の外周面は、外筒14の他方の端部の内周面と当接し、外筒14の他方の端部を径方向で支持する。
【0046】
胴16は、内筒13に固定される。胴16は、有底円筒状に形成され、内部にインクタンク17を配置できる。胴16の開口する一端の内周面に形成された雌螺子部61を有する。雌螺子部61は、内筒13の雄螺子部32に螺合する。
【0047】
インクタンク17は、インクを貯留する。インクタンク17は、例えば、使い切りのインクカートリッジや、インクを補充可能な吸入器であるコンバータなどである。インクタンク17は、内筒13の固定部34に固定され、固定部34に配置されたペン芯12にインクを供給する。
【0048】
このように構成された筆記具1(ペン先部品2)は、例えば、
図5に示すように、複数の突起部33及び複数の溝42の軸方向の長さが、固定具15を内筒13の雄螺子部32のペン先11側とは反対の後端側に移動させた状態で、突起部33及び溝42が離れ、外筒14を内筒13に対して周方向に回転可能な長さに設定される。換言すると、複数の突起部33及び複数の溝42の軸方向の長さは、内筒13の座部31から後端までの長さから、外筒14の長さ及び固定具15の突起部52を除く長さの和を差し引いた長さよりも短く設定される。さらに換言すると、複数の突起部33及び複数の溝42の軸方向の長さが、固定具15が雄螺子部32と螺合できる軸方向の長さ、即ち、固定具15が雄螺子部32における螺合した状態での移動できる距離よりも小さい。
【0049】
このように構成された筆記具1(ペン先部品2)によれば、
図2及び
図5に示すように、複数の突起部33及び複数の溝42が係合していると、内筒13及び外筒14は、相対的な周方向の移動が規制される。また、
図2に示すように、固定具15を内筒13の雄螺子部32に螺合させて外筒14を内筒13の座部31及び固定具15の端面に当接させることで、内筒13及び外筒14の相対的な軸方向の移動を規制する。また、
図2に示すように、外筒14の一端側は、複数の溝42が内筒13の複数の突起部33と径方向で当接することで、内筒13に径方向で支持され、外筒14の他端側は、内周面が固定具15の突起部52の外周面と径方向で当接することで、内筒13に螺合された固定具15に径方向に支持される。これにより、内筒13に対して外筒14が両端で径方向に支持されることから、内筒13に対して径方向に移動することが規制される。これらにより、外筒14は、内筒13に固定される。
【0050】
よって、筆記具1(ペン先部品2)は、外筒14を内筒13に対して軸方向及び周方向に移動可能な構成としても、使用時に、外筒14が移動することを防止できる。また、使用者が筆記のために筆記具1を手指により握るときは、案内部41によって手指が案内されることから、一定の握り方で筆記具1を使用することができる。
【0051】
また、筆記具1(ペン先部品2)は、ペン先11が筆記の方向規定を有するが、外筒14を内筒13に対して回転できる構成であることから、使用者が手指を接触させる案内部41のペン先11の筆記部22に対する周方向の位置を調整することができる。これにより、
図6の左図に示すように、紙葉類100の筆記を行う紙面100aの面方向に対して、ペン先11の筆記部22の紙面100aへの接触面が、紙面100aに対して傾いており、好適な筆記ができない場合に、使用者が同じ持ち方で筆記具1を持った状態でも、
図6の右図に示すように、紙面100aに対する筆記部22の紙面100aへの接触面を好適な位置に調整することができる。
【0052】
具体的に説明すると、内筒13及び外筒14は、
図2に示すように、複数の突起部33及び複数の溝42が係合することで、相対的な周方向の移動が規制される。そして、内筒13及び外筒14は、
図3に示すように、複数の突起部33及び複数の溝42が非係合となるまで内筒13及び外筒14を軸方向にずらすことで、外筒14を内筒13に対して周方向に回転させることができる。
【0053】
図7に矢印で示すように、ペン先11の筆記部22に対して使用者の手指と案内部41とが好適な位置関係に外筒14を内筒13に対して周方向に回転させ、そして、固定具15によって外筒14を固定することで、ペン先11の筆記部22に対して外筒14の案内部41の位置を調整することが可能となる。このため、筆記具1は、ペン先11の筆記部22とグリップ部である外筒14の案内部41の相対位置を使用者の筆記具1の持ち方に対して適切な位置となるように調整できる。よって、筆記具1は、筆記時に筆記部22が紙面100aと好適な当たりとすることができるため、使用者毎の持ち方でも筆記部22が紙面100aにフィットし、筆記時の引っかかりや、筆記線のカスレ、筆記線の割れ等が生じることを防止できる。
【0054】
また、ペン先11の筆記部22に対する外筒14の周方向の位置は、溝42の数と同数の位置に調整できる。例えば、本実施形態においては、溝42が36設けられることから、外筒14は周方向で36の位置に固定できる。即ち、本実施形態においては、10°間隔で外筒14をペン先11の筆記部22に対して回転させることができる。
【0055】
また、この外筒14の調整において、固定具15は、内筒13の雄螺子部32から完全に取り外すことなく、複数の突起部33及び複数の溝42が軸方向で非係合となる位置まで回して、外筒14を内筒13に対して軸方向に移動してから、外筒14を回転させ、固定具15を締め付ける方向に回転させるだけでよい。また、突起部33及び溝42の係合を解除すれば、外筒14の回転は規制されることがなく、このため、大きな力を加えることなく、外筒14を回転させることができる。これらのことから、筆記具1(ペン先部品2)は、外筒14の調整を容易に行うことができる。また、内筒13にペン先11、ペン芯12及びインクタンク17が固定される構成であることから、外筒14の調整を行う時に、使用者は、内筒13を摘まみ、固定具15を回転させた後、外筒14をスライド及び回転移動させるだけでよい。よって、外筒14の調整において、インクが使用者の手指に付着することを防止できる。
【0056】
また、筆記具1及びペン先部品2は、内筒13に外筒14、固定具15、胴16及びインクタンク17を着脱できることから、例えば、メンテナンスやインクの色変え等において、必要な部品だけを洗浄することができる。よって、筆記具1及びペン先部品2は、洗浄に伴う部品間への液体の侵入および液体残りを防止できる。
【0057】
このように構成された筆記具1及びペン先部品2は、筆記部22に対するグリップ部である外筒14の周方向の位置を調整できる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、案内部41は、外筒14の外周面の周方向の二箇所に同形状の二つの窪み41a、41aを設ける構成を説明したがこれに限定されない。例えば、二つの窪み41a、41aは、例えば、親指及び人差し指が接触可能に、一方の窪み41aが親指用、他方の窪み41aが人差し指用に設定されていてもよい。また、一方の窪み41aが親指用、他方の窪み41aが人差し指用に設定された案内部41を有する外筒14は、右利き用及び左利き用のいずれかとなる。また、例えば、一方の窪み41aが親指用、他方の窪み41aが人差し指用に設定された案内部41を有する外筒14とする場合には、両端の内周面の径を、他の部位よりも大径とし、そして、両端に複数の溝42を設ける構成とすることで、軸方向において、端部の向きを反転させることで、一つの外筒14によって右利き用及び左利き用に変更可能とする構成としてもよい。
【0059】
また、上述した例では、複数の突起部33及び複数の溝42の数の一例を示したが、複数の突起部33及び複数の溝42の数は適宜設定できる。例えば、複数の溝42の数を多くすることで、ペン先11の筆記部22に対する外筒14の周方向の位置を調整できる角度を小さくすることができるため、より詳細な調整が可能となる。
【0060】
また、上述した例では、複数の突起部33を内筒13の外周面に設け、複数の溝42を外筒14の内周面に設ける構成を説明したがこれに限定されない。例えば、複数の突起部33を内筒13の座部31の端面に設け、複数の溝42を外筒14の座部31と対向する端面に設ける構成としてもよい。
【0061】
また、例えば、筆記具1及びペン先部品2は、他の実施形態として、上述した実施形態の構成に加え、
図8に示すように、内筒13の座部31及び外筒14の一方の端部、並びに、外筒14の他方の端部及び固定具15の端部との間に、緩み防止のためのパッキン18を設ける構成としてもよい。
【0062】
また、パッキン18を設ける構成とした場合には、パッキン18の摩擦により、外筒14の周方向の移動が規制できるため、例えば、
図9に示すように、内筒13に複数の突起部33を設けず、外筒14に複数の溝42を設けない構成としても良い。このような筆記具1(ペン先部品2)によれば、外筒14を内筒13の周方向に回転させて、ペン先11の筆記部22に対する位置を調整した後、固定具15を締め付けることで、外筒14を軸方向及び周方向の移動を規制することができる。よって、このような筆記具1(ペン先部品2)は、内筒13に対する外筒14の周方向の位置を無段階で調整することができ、さらに詳細な外筒14の位置調整が可能となる。
【0063】
また、上述した例では、筆記具1は、固定具15及び胴16を有し、固定具15及び胴16を内筒13の雄螺子部32に螺合させる構成を説明したがこれに限定されず、胴16の開口する端部を固定具として機能させる構成としてもよい。即ち、固定具15を設けず、胴16を固定具としてもよい。このような固定具としての胴16は、例えば、開口する端部に、突起部52を設けて、胴16の端部を外筒14の端部と軸方向に当接させ、そして、外筒14を径方向に支持する構成とすればよい。
【0064】
また、上述した例では、固定具15又は胴16に、外筒14を径方向で支持する突起部52を設ける構成を説明したがこれに限定されず、内筒13及び外筒14の径方向のクリアランスを小さくするか、又は、外筒14の内周面に支持ようの突起を設けることで、内筒13によって外筒14を径方向で支持する構成としてもよい。
【0065】
また、上述にもあるように、筆記具1(ペン先部品2)は、ペン先11の筆記部22に筆記の方向規定があり、ペン先11の筆記部22に対してグリップ部である外筒14の手指の位置を案内する案内部41の位置を調整可能であればよく、筆記具1(ペン先部品2)は、万年筆に限定されず、種々の筆記具に適用できる。
【0066】
また、ペン先11の筆記部22に筆記の方向規定がない場合でも、上述した外筒14を内筒13に対して周方向に位置を調整できる構成を適用することができる。このような筆記具は、例えば、内筒13及び外筒14に連続する意匠を持たせ、この意匠の位置合わせを行う場合に効果を発揮する。例えば、このような意匠としては、装飾効果のあるデザインが挙げられる。また、このような意匠の他の例としては、内筒13の座部31の外面に矢印や点等を設け、外筒14にインクの色を表す表示を行い、内筒13及び外筒14の位置を該当するインクの位置に合わせることで、インクの色を表す情報表示等が挙げられる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0068】
1…筆記具、2…ペン先部品、11…ペン先、12…ペン芯、13…内筒、14…外筒、15…固定具、16…胴、17…インクタンク、18…パッキン、21…ペン体、22…筆記部、23…ペンポイント、24…ハート穴、25…スリット、31…座部、32…雄螺子部、33…突起部、34…固定部、41…案内部、42…溝、51…雌螺子部、52…突起部、61…雌螺子部、100…紙葉類、100a…紙面。