(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042417
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】静電容量型湿度センサー
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
G01N27/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149700
(22)【出願日】2021-09-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「粉体成膜プロセス研究のハイスループット化のためのデータ駆動型プロセス・インフォマティクス」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 航平
(72)【発明者】
【氏名】黒須 雅人
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB02
2G060AE19
2G060AF10
2G060AG11
2G060AG15
2G060BA09
2G060BB10
2G060JA02
2G060KA04
(57)【要約】
【課題】良好な感度を有する静電容量型湿度センサーを提供する。
【解決手段】感湿層と、電極層と、絶縁層とを備えた静電容量型湿度センサーであって、電極層及び絶縁層は、感湿層の表面及び裏面に、それぞれ、感湿層側からこの順で積層されており、感湿層の表面及び裏面に設けられた電極層は、それぞれ、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第1電極層と、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第2電極層とが、交互に、且つ、合計で3層以上積層されてなり、第1電極層と第2電極層とが異なる種類の金属組成で構成されている、静電容量型湿度センサー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感湿層と、電極層と、絶縁層とを備えた静電容量型湿度センサーであって、
前記電極層及び前記絶縁層は、前記感湿層の表面及び裏面に、それぞれ、前記感湿層側からこの順で積層されており、
前記感湿層の表面及び裏面に設けられた前記電極層は、それぞれ、
Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第1電極層と、
Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第2電極層と、
が、交互に、且つ、合計で3層以上積層されてなり、
前記第1電極層と前記第2電極層とが異なる種類の金属組成で構成されている、静電容量型湿度センサー。
【請求項2】
前記感湿層の表面及び裏面に設けられた前記電極層は、それぞれ、前記第1電極層と、前記第2電極層とが、交互に、且つ、合計で4層または6層積層されてなる請求項1に記載の静電容量型湿度センサー。
【請求項3】
前記感湿層と、前記絶縁層とが同じ材料で形成されている請求項1または2に記載の静電容量型湿度センサー。
【請求項4】
前記感湿層の表面及び裏面に設けられた電極層は、互いに、前記感湿層を挟んで一部が重なることで感湿部を構成し、
前記感湿部を構成する前記電極層の幅が200μm以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の静電容量型湿度センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型湿度センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
積層構造の静電容量型湿度センサーは、一般に、雰囲気の相対湿度に応じて水分を吸収または放出することにより、誘電率が変化する感湿層を備え、当該感湿層と電極層とが積層された構造を有している。
【0003】
このような技術として、特許文献1には、内部電極層と感湿体層とを交互に積層して多層構造とし、該積層体の積層面に直交する一組の対向面に外部電極層を設けると共に、該対向する外部電極層に前記内部電極層を交互に接続させたことを特徴とする積層構造型湿度センサー素子が開示されている。そして、このような構成によれば、強度があり、かつ検出感度が良い湿度センサー素子を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電容量型湿度センサーの感度の向上には改善の余地があり、特に小型の静電容量型湿度センサーにおいて感度が低下する問題が生じており、その改善の要求が高まっている。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、良好な感度を有する静電容量型湿度センサーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記課題は、感湿層と、所定の金属及び所定の層構造で構成された電極層と、絶縁層とを備えた静電容量型湿度センサーを提供することによって解決できることを見出した。
【0008】
本発明は一側面において、感湿層と、電極層と、絶縁層とを備えた静電容量型湿度センサーであって、前記電極層及び前記絶縁層は、前記感湿層の表面及び裏面に、それぞれ、前記感湿層側からこの順で積層されており、前記感湿層の表面及び裏面に設けられた前記電極層は、それぞれ、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第1電極層と、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第2電極層とが、交互に、且つ、合計で3層以上積層されてなり、前記第1電極層と前記第2電極層とが異なる種類の金属組成で構成されている、静電容量型湿度センサーである。
【0009】
本発明の静電容量型湿度センサーは一実施形態において、前記感湿層の表面及び裏面に設けられた前記電極層は、それぞれ、前記第1電極層と、前記第2電極層とが、交互に、且つ、合計で4層または6層積層されてなる。
【0010】
本発明の静電容量型湿度センサーは別の一実施形態において、前記感湿層と、前記絶縁層とが同じ材料で形成されている。
【0011】
本発明の静電容量型湿度センサーは更に別の一実施形態において、前記感湿層の表面及び裏面に設けられた電極層は、互いに、前記感湿層を挟んで一部が重なることで感湿部を構成し、前記感湿部を構成する前記電極層の幅が200μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な感度を有する静電容量型湿度センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る静電容量型湿度センサーの断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態に係る静電容量型湿度センサーの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る静電容量型湿度センサーの電極端子の構造を示すための上面図である。
【
図4】実施例の2層、4層、6層センサーの感度比較試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<静電容量型湿度センサーの構成>
図1は、本発明に係る静電容量型湿度センサー10の断面図である。静電容量型湿度センサー10は、感湿層11と、電極層と、絶縁層12とを備える。電極層及び絶縁層12は、感湿層11の表面及び裏面に、それぞれ、感湿層11側からこの順で積層されている。
【0015】
(感湿層)
感湿層11は、電子絶縁性を備えた高分子有機材料等で形成することができる。このような材料としては、パラキシリレン系高分子化合物であるパリレン(商品名,日本パリレン合同会社製)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、サイトップ(旭化成株式会社製)等が挙げられる。このうち、金属の真空での気相合成ができピンホールができ難いという観点から、パリレンがより好ましい。パリレンは、置換基に応じてパリレンC、パリレンHT、パリレンD、パリレンN等の誘導体が存在する。また、プラズマ重合法作成によっても作成が可能であり、スチレン、アリルアルコール、アリルアミン、メタクロイレン等が挙げられる。
【0016】
感湿層11の厚みは、静電容量型湿度センサーのサイズまたは所望の特性に応じて適宜設計可能であるが、例えば、100μm以下が好ましく、さらにセンサーを高感度とする観点からは20μm以下が好ましい。
【0017】
(電極層)
感湿層11の表面及び裏面に設けられた電極層は、第1電極層13と、第2電極層14とが、交互に、且つ、合計で3層以上積層されることで構成されている。
図1に示す形態では、感湿層11の表面及び裏面に設けられた電極層が、それぞれ、感湿層11側から順に、第1電極層13/第2電極層14/第1電極層13/第2電極層14の合計4層で構成されている。感湿層11の表面及び裏面に設けられた電極層は、それぞれ、上述のように4層の積層体に限られず、感湿層11側から順に、第1電極層13/第2電極層14/第1電極層13の合計3層で構成されていてもよく、
図2の静電容量型湿度センサー20に示すように、感湿層11側から順に、第1電極層13/第2電極層14/第1電極層13/第2電極層14/第1電極層13/第2電極層14の合計6層で構成されていてもよい。
【0018】
電極層における、第1電極層13と第2電極層14との合計積層数は、静電容量型湿度センサー10での所望のサイズや性能など、適宜設計変更が可能である。第1電極層13及び第2電極層14の積層数が少ないほど、コンパクトな静電容量型湿度センサー10を作製することができる。一方、第1電極層13及び第2電極層14の積層数が多いほど、静電容量型湿度センサー10の感度及び強度が向上する傾向にある。
【0019】
第1電極層13は、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる。このような構成によれば、第1電極層13を有する電極層の強度が向上する。また、電極層と感湿層11との接着力が向上する。第1電極層13は、電極層の強度及び感湿層11との接着力の向上および電極そのものの水分吸着性の観点から、Cr、Niまたはこれらの酸化物を主成分とする合金であることがより好ましい。なお、第1電極層13には、その物性に大きな影響を与えない範囲内で不純物が含まれていてもよい。
【0020】
第2電極層14は、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる。このような構成によれば、電極層の強度が向上する。また、これらの金属からなる層は、横方向への引っ張りに対して耐久性が良好であるため、電極層の破損を良好に抑制することができる。第2電極層14は、電極層の強度及び横方向への引っ張りに対する耐久性の向上の観点から、Cu、Au、Ag、Ptまたはこれらを主成分とする合金であることがより好ましい。なお、第2電極層14には、その物性に大きな影響を与えない範囲内で不純物が含まれていてもよい。また、第1電極層13と第2電極層14とは、異なる種類の金属組成で構成されている。
【0021】
第1電極層13及び第2電極層14の厚みは、それぞれ、静電容量型湿度センサーのサイズまたは所望の特性に応じて適宜設計可能であるが、例えば、10nm~10μmに形成してもよい。
【0022】
第1電極層13及び第2電極層14の積層順は、特に限定されないが、感湿層11の表面側及び裏面側の電極層において、それぞれ、感湿層11に接触する位置に第1電極層13を設けることが好ましい。このような構成によれば、より良好に電極層を感湿層11に接着させることができる。
【0023】
(絶縁層)
絶縁層12は、無機材料の酸化シリコンまたは窒化シリコン、有機材料のポリイミド、含フッ素高分子、パリレン(商品名,日本パリレン合同会社製)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、サイトップ(旭化成株式会社製)等が挙げられる。このうち、気相合成ができ、ピンホールができ難いという観点から、パリレンがより好ましい。
【0024】
絶縁層12は、感湿層11と同じ材料で形成されているのが好ましい。このような構成によれば、静電容量型湿度センサー10の製造効率が良好となる。例えば、感湿層11がパリレンC、パリレンHT、パリレンD、パリレンN等のパリレンで形成されている場合、絶縁層12も同じ種類のパリレンで形成されているのが好ましい。
【0025】
絶縁層12の厚みは、それぞれ、静電容量型湿度センサーのサイズまたは所望の特性に応じて適宜設計可能であるが、例えば、10nm~100μmに形成してもよく、1μm~10μmに形成してもよい。
【0026】
<静電容量型湿度センサーの作用>
図1の点線で囲まれた領域は、静電容量型湿度センサー10の感湿部Aを示す。感湿層11の表面及び裏面に設けられた電極層が、互いに、感湿層11を挟んで一部が重なることで、当該感湿部Aを構成している。静電容量型湿度センサー10の感湿層11中に水分が浸透すると、浸透した水分量に応じて感湿層11の比誘電率が変化して、感湿部Aを誘電体の一部とする、各電極層間の静電容量が変化する。このため、各電極層の静電容量値の変化を検出することによって、湿度の変化を検出することができる。
【0027】
静電容量型湿度センサー10は、感湿層11の表面及び裏面に設けられた前記電極層が、それぞれ、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第1電極層13と、Ag、Cu、Fe、Zn、Ni、Co、Al、Sn、Cr、Mo、Mn、Mg、Au、Pt、Ti、Ru、Rh、Pd、Ir、これらの酸化物、及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種からなる第2電極層14とが、交互に、且つ、合計で3層以上積層されてなる。第1電極層13と第2電極層14とが異なる種類の金属組成で構成されている。すなわち、感湿部Aを構成する各電極層が、それぞれ第1電極層13と第2電極層14とが、交互に、且つ、合計で3層以上積層された構成となっている。このため、感度及び強度がともに良好な静電容量型湿度センサー10が得られる。
【0028】
また、例えば、静電容量型湿度センサーの各電極層を、例えば、第1電極層13と第2電極層14との2層が積層された構造とした場合と比べると、本発明の実施形態に係る静電容量型湿度センサー10は、第1電極層13と第2電極層14との3層以上が積層されているため、単位湿度当たりの静電容量が増加し、感度が向上する。また、電極層の積層数が増すため、強度も向上する。なお、電極層を、第1電極層13と第2電極層14との2層が積層された構造とすることは、感湿層との接着力のみに着目した形態であるが、これを3層以上の構造とすることは、感湿層との接着力の観点からは、メリットが無く、むしろ製造コストの面から避けようとする形態である。このように、本発明の実施形態に係る静電容量型湿度センサー10は、強度及び感度の向上という課題を認識して初めて想到し得るものであると言える。
【0029】
図3は、静電容量型湿度センサー10の電極端子16の構造を示すための上面図である。
図1の断面図で示される各電極層は、上面から見ると、
図3に例示した形状の電極端子16を構成している。ここでは、感湿層11の表面及び裏面に設けられた電極層が、互いに、感湿層11を挟んで一部が重なることで感湿部Aを構成していることが示されている。電極端子16の両端には、それぞれ配線15が電気的に接続されている。静電容量型湿度センサー10は、このような電極端子16を複数本有してもよい。また、電極端子16の長さは、例えば、10~300mmに形成することができる。
【0030】
また、静電容量型湿度センサー10は、上述のように、所定の構成の各電極層が3層以上の積層構造で設けられているため、感湿部Aを構成する電極層の幅wが200μm以下、または100μm以下であるような、感湿部Aが極小面であるマイクロ湿度センサーであっても、良好な感度及び強度が得られる。なお、感湿部Aを構成する電極層の幅wは、1mm以下であってもよい。
【0031】
<静電容量型湿度センサーの製造方法>
次に、本発明の実施形態に係る静電容量型湿度センサー10の製造方法について詳述する。まず、シリコン、ガラス、金属等の基板材料で形成された支持基板を準備し、当該支持基板上にレジスト膜をコーティングする。レジスト膜は、後述のように、溶剤によって除去されるため、半導体用及び電子基板用レジスト等で形成することが好ましい。
【0032】
次に、絶縁層の材料を成膜することで、レジスト膜をコーティングした支持基板上に絶縁層を形成する。このとき、パリレン等を絶縁層の材料として用いると、そのまま、感湿層としても機能するため、製造効率が向上する。
【0033】
次に、絶縁層上に、感湿層の裏面側の電極層を形成する。具体的には、2種類の所定の金属材料を、交互に、スパッタリングにより成膜することで、第1電極層及び第2電極層を交互に、合計3層以上積層する。これによって、感湿層の裏面側の電極層を形成する。
【0034】
次に、感湿層の裏面側の電極層を覆うように、感湿層の材料を成膜することで、感湿層を形成する。
【0035】
次に、感湿層上に、感湿層の表面側の電極層を形成する。具体的には、2種類の所定の金属材料を、交互に、スパッタリングにより成膜することで、第1電極層及び第2電極層を交互に、合計3層以上積層する。これによって、感湿層の表面側の電極層を形成する。
【0036】
次に、感湿層の表面側の電極層を覆うように、絶縁層の材料を成膜することで、絶縁層を形成する。
【0037】
次に、レジスト膜を溶解できる溶媒を用いて溶解させて、支持基板を除去することで、絶縁層/電極層/感湿層/電極層/絶縁層で構成された静電容量型湿度センサー10を作製する。
【0038】
なお、上述の製造方法は一例を示すものであり、各工程は、公知の成膜技術に基づいて、適宜設計変更が可能である。
【実施例0039】
以下に、本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.静電容量型湿度センサーの製造
(A)4層センサー
以下のようにして、
図1に示す構造と同様の、4層の静電容量型湿度センサーを作製した。
まず、シリコン製支持基板を準備し、当該支持基板上に、溶剤によって除去されるレジスト膜をコーティングし、厚さ3μmのパリレンCを成膜することで、レジスト膜をコーティングした支持基板上に絶縁層(
図1の絶縁層12に対応)を形成した。
【0040】
次に、絶縁層上に、感湿層(
図1の感湿層11に対応)の裏面側の電極層を形成した。具体的には、CrとAuとを、交互に、スパッタリングにより成膜することで、第1電極層(厚さ30nmのCr層:
図1の第1電極層13に対応)、及び、第2電極層(厚さ120nmのAu層:
図1の第2電極層14に対応)を交互に、合計4層積層した。
【0041】
次に、感湿層の裏面側の電極層を覆うように、厚さ0.5μmのパリレンCを成膜することで、感湿層を形成した。
【0042】
次に、感湿層上に、感湿層の表面側の電極層を形成した。具体的には、CrとAuとを、交互に、スパッタリングにより成膜することで、第1電極層(厚さ30nmのCr層:
図1の第1電極層13に対応)、及び、第2電極層(厚さ120nmのAu層:
図1の第2電極層14に対応)を交互に、合計4層積層した。
【0043】
次に、感湿層の表面側の電極層を覆うように、厚さ3μmのパリレンCを成膜することで、絶縁層を形成した。
【0044】
次に、レジスト膜を溶解できる溶媒を用いて溶解させて、支持基板を除去することで、絶縁層/電極層/感湿層/電極層/絶縁層で構成された静電容量型湿度センサーを作製した。
【0045】
(B)6層センサー
図2に示す構造と同様の、6層の静電容量型湿度センサーを作製した。当該6層の静電容量型湿度センサーは、上記(A)の4層の静電容量型湿度センサーに対し、Au層とCr層をさらに1層ずつ追加し、Au層は80nmの厚さとし、Cr層は20nmの厚さとした以外は同様の手順にて、合計6層の静電容量型湿度センサーを作製した。
【0046】
(C)2層センサー
上記(A)の4層の静電容量型湿度センサーに対し、Au層とCr層を1層ずつ少なくし、Au層は200nmの厚さとし、Cr層は20nmの厚さとした以外は同様の手順にて、合計2層の静電容量型湿度センサーを作製した。
【0047】
2.感度比較試験
得られた2層センサー、4層センサー及び6層センサーに対し、それぞれ、静電容量変化率の比較試験(センサーの感度比較試験)を密閉容器内に設けた。
【0048】
次に、密閉容器内に、所望の湿度の窒素ガスを供給して容器内の相対湿度(RH)を調製し、定常待ちを行った後、基準温度25℃において、LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製4284A)を用いて、使用温度Tでのインピーダンス(静電容量CT)を測定した。このようにして、所定の相対湿度(RH)ごとに、測定した静電容量CTと、基準温度T0での静電容量CT0とから、以下のように静電容量変化率を求めた。
静電容量変化率={(CT-CT0)/CT0}×100[%]
【0049】
図4に、2層、4層、6層センサーの感度比較試験結果を示す。この結果が示すように、特に4層、6層センサーで良好な感度を示し、また、感度が層数に大きく影響されることがわかる。