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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042419
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230317BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C02F1/00 T
C02F1/00 V
G01N33/18 106D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149702
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】前田 桃子
(57)【要約】
【課題】測定領域内の正確な水質測定結果に基づき、水質制御が可能な水処理システムを提供する。
【解決手段】本実施形態による水処理システムは、水槽内を移動する発信器と、発信器からの信号を受信する受信器と、受信器に接続された制御部と、水槽内の水質を調整する設備機器を備え、発信器は、水槽内の水質を測定した測定結果を受信器に送信し、制御部は、受信器が受信した測定結果に基づいて、設備機器を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内を移動する発信器と、
前記発信器からの信号を受信する受信器と、
前記受信器に接続された制御部と、
前記水槽内の水質を調整する設備機器を備え、
前記発信器は、前記水槽内の水質を測定した測定結果を受信器に送信し、
前記制御部は、前記受信器が受信した前記測定結果に基づいて、前記設備機器を制御する、水処理システム。
【請求項2】
前記発信器は、前記水槽内を移動するための移動装置と、前記移動装置を駆動する電源装置を有する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記発信器は、前記水槽内の処理水を導入する導入部と、前記処理水に反応させる試薬を保存する試薬部と、前記処理水、又は、前記処理水と前記試薬との混合液から水質指標を検出する検出部と、検出後の廃液を回収する廃液回収部と、を含む、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記発信器は、前記測定結果に基づいた光信号を発する発光装置を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記発光装置は、青色発光ダイオードを含む、請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記発信器を前記水槽内に投入するホッパーをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記水槽内の前記発信器を前記水槽から回収するスクリーンをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続測定が可能な水質センサは、定点で水質測定を行うこと前提としており、処理系全体の水質の変化を連続的に検知できるものではない。水質センサを設置した代表地点での測定値が、他の場所で測定した測定値と異なる場合が考えられ、処理系全体の水質を正確に測定することは困難である。そのため、測定した水質を指標として制御を行う薬品注入量や曝気風量などを精密に管理できていない可能性が高い。
【0003】
また、従来の水質測定装置において、試料となる水は採水ノズルからポンプによって吸い上げられ、検出体素子を有する水槽に導かれる。すなわち、採水地点は水質の測定地点と異なり、採水から測定までの時間経過や、前回採水した不純物が残留することによって、水質を正確に測定できないという問題がある。
【0004】
さらに、採水ノズルは、水面に対する水中での移動方向が垂直方向に限られ、水質の測定領域は限定される。すなわち、測定領域全体の水質を測定できず、水質を正確に測定できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-145982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
測定領域内の正確な水質測定結果に基づき、水質制御が可能な水処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による水処理システムは、水槽内を移動する発信器と、前記発信器からの信号を受信する受信器と、前記受信器に接続された制御部と、前記水槽内の水質を調整する設備機器を備え、前記発信器は、前記水槽内の水質を測定した測定結果を受信器に送信し、前記制御部は、前記受信器が受信した前記測定結果に基づいて、前記設備機器を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による水処理システムを概略的に示す正面図。
図2】一実施形態による発信器を示す斜視図。
図3】一実施形態による発信器の内部を示す側面図。
図4】一実施形態による導入部、試薬部、検出部、及び廃液回収部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、一実施形態による水処理システムを概略的に示す正面図である。本実施形態による水処理システム1は、例えば、上下水道処理場等の水処理施設や、ダム等の貯水施設に用いることができる。
【0011】
図1に示すように、水処理システム1は、水槽10内を移動する発信器20と、発信器20からの信号を受信する受信器30と、受信器30に接続された制御部40と、水槽10内の水質を調整する設備機器50と、を有している。発信器20は、水槽10内の水質を測定した測定結果を受信器30に送信する。制御部40は、受信器30が受信した測定結果に基づいて、設備機器50を制御する。
【0012】
水槽10は、処理水を収容する。水槽10は、処理水を収容できる形状であれば、いかなる形状であってもよい。図1に示された例において、水槽10は、全体として略直方体状の形状を有している。水槽10の幅(紙面の左右方向)及び奥行(紙面に直交する方向)は、1m以上10m以下としてもよい。水槽10の深さは、例えば1m以上10m以下としても良く、例えば約5mとしてもよい。水槽10は、上方に開口している。水槽10には、上方から、発信器20を投入できる。
【0013】
なお、本明細書において、「処理水」とは、水処理システム1の処理対象となる水であって、試料となる水を意味する。処理水として、上水や下水等が例示される。
【0014】
図1に示された例において、幅方向及び奥行方向に広がる水面は、水平面となっている。深さ方向(紙面の上下方向)は、鉛直方向を意味する。
【0015】
水槽10内の処理水には、図1の矢印に示されるように、幅方向に流れが生じている。図1における幅方向が、処理水の流れ方向DAとなっている。流れ方向DAにおける一側SA1は、下流側となっている。流れ方向DAにおける他側SA2は、上流側となっている。水槽10は、上流側あるいは下流側において、他の水槽に接続していてもよい。水槽10には、他の水槽又は水源から他側SA2に処理水が流入してもよい。
【0016】
発信器20は、水槽10内に収容された処理水の水質を測定し、発信する。図1に破線矢印として示されるように、発信器20は、処理水の水質の測定結果を受信器30に送信する。図示された例において、詳しくは後述するように、発信器20は、信号源として、光信号を発する発光装置24を有しているが、これに限られない。発信器20は、例えばミリ波レーダー等の電磁波や音波等の信号波を発する素子を、信号源として含むこともできる。図1に示されるように、発信器20は、水質の測定結果を、複数の受信器30に送信してもよい。
【0017】
発信器20は、水槽10内を移動する。図1に示された例において、発信器20は、処理水とともに、水槽10内を流れ方向DAに移動し得る。言い換えると、水槽10の上流側(流れ方向DAにおける他側SA2)から投入された発信器20は、水槽10内の流れにより、水槽10の下流側(流れ方向DAにおける一側SA1)に移動してもよい。
【0018】
発信器20は、水槽10内を移動するための移動装置21と、移動装置21を駆動する電源装置22と、水槽10内の水質を測定する測定装置23と、光信号を発する発光装置24と、測定装置23を洗浄する洗浄装置25と、水質測定結果を記録する記録装置26と、を有している。図2に示された例において、外部からは、移動装置21と、発光装置24の一部分が観察され得る。
【0019】
移動装置21は、発信器20を水槽10内の所定の位置に移動させる。図1に示された例において、発信器20は、移動装置21により、水槽10内に生じる流れ方向DAに関わらず、水槽10内を移動し得る。発信器20は、移動装置21により、例えば流れ方向DAとは逆方向、すなわち下流側から上流側に、水槽10内を移動し得る。発信器20は、移動装置21により、深さ方向にも水槽10内を移動し得る。発信器20は、移動装置21により、幅方向及び奥行方向にも水槽10内を移動し得る。すなわち発信器20は、処理水の水面を浮遊しても良く、あるいは、処理水の水中に潜水して移動してもよい。移動装置21は、例えば図2に示されるような、スクリューであってもよい。発信器20は、自ら移動装置21を駆動することにより水槽10内を移動してもよい。あるいは、発信器20は、水槽10の外部から移動装置21を遠隔操作することにより水槽10内を移動してもよい。
【0020】
電源装置22は、発信器20の内部に設けられている。電源装置22は、移動装置21と電気的に接続している。電源装置22は、移動装置21を駆動する。なお、電源装置22は、図3に示されるように、後述の測定装置23、発光装置24、洗浄装置25、及び記録装置26とも、それぞれ、電気的に接続していてもよい。この場合、電源装置22は、測定装置23、発光装置24、洗浄装置25、及び記録装置26を駆動させてもよい。電源装置22として、充電式のリチウムイオン電池等が例示される。
【0021】
測定装置23は、シート状の部材であってもよい。測定装置23は、発信器20の内部に設けられ、発信器20の外部に接続していてもよい。あるいは、測定装置23は、発信器20の外部に露出していてもよい。測定装置23は、発信器20の外部から浸入する処理水の水質を測定する。
【0022】
測定装置23としては、マイクロデバイスを用いてもよい。具体的には、処理水の浸入を容易にするため、測定装置23は、図示しないマイクロポンプ等のポンプ機構を有していてもよい。測定装置23としてマイクロデバイスを用いることで、測定装置23は、少量の処理水によって、水質を測定できる。また、マイクロデバイスを用いることで、測定装置23を小型化できる。
【0023】
測定装置23は、複数の測定ユニット23aに区分けされてもよい。図示された例において、測定装置23には、16個の測定ユニット23aが含まれている。複数の測定ユニット23aが測定する処理水の水質指標は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。測定ユニット23aが測定する処理水の水質指標として、水温、溶存酸素濃度、残留塩素濃度、pH(ペーハー)、濁度等が例示される。複数の測定ユニット23aによる水質指標の計測時期は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。測定ユニット23aは、発信器20を水槽10内に投入してから回収するまでの間に、水質指標を複数回測定してもよい。以下、測定ユニット23aについて詳述する。
【0024】
図4に示されるように、測定ユニット23aは、処理水を導入する導入部231と、処理水に反応する試薬を保存する試薬部232と、処理水の水質指標を検出する検出部233と、検出後の廃液を回収する廃液回収部234と、を有している。導入部231と、試薬部232と、検出部233と、廃液回収部234は、それぞれ流体的に接続されている。
【0025】
導入部231からは第1流路235が延び出している。試薬部232からは第2流路236が延び出している。第1流路235と第2流路236とは、合流部238で合流する。合流部238と廃液回収部234とは第3流路237によって連結されている。検出部233は、第3流路237の途中に設けられている。これら第1流路235と第2流路236と第3流路237とは、平面視でY字形状を有している。
【0026】
導入部231は、処理水を導入し、第1流路235に送り込む。この導入部231は、例えばバルブであってもよい。導入部231は、例えば毛細管現象によって、処理水を導入してもよい。
【0027】
試薬部232は、処理水に反応する試薬を保存し、第2流路236に送り込む。試薬は、導入部231から浸入した処理水と混合する。これにより、処理水と試薬との混合液が得られる。水質指標の検出に試薬を必要としない場合、試薬部232は、測定ユニット23aに設けられなくてもよい。試薬として、蒸留水やDPD試薬等が例示される。試薬部232に保存される試薬の量は、例えば5mL(ミリリットル)以上10mL(ミリリットル)以下としてもよい。
【0028】
検出部233は、処理水、又は、処理水と試薬との混合液から水質指標を検出する。検出部233は、例えば金属製の電極であってもよい。
【0029】
廃液回収部234は、水質指標を検出した後の廃液を回収する。廃液の回収を必要としない場合、廃液回収部234は、測定ユニット23aに設けられなくてもよい。とりわけ、水質指標の検出に試薬を必要としない場合、廃液回収部234は、設けられなくてもよい。
【0030】
図1に示された例において、水槽10内に投入された発信器20の周囲に存在する処理水は、導入部231から第1流路235を介して合流部238に送り込まれる。一方、試薬は、試薬部232から第2流路236を介して合流部238に送り込まれる。導入部231からの処理水と試薬部232からの試薬とは、合流部238で合流し、第3流路237側に送り込まれる。第3流路237に位置する検出部233において、処理水と試薬とが反応し、水質指標が測定される。この測定された水質指標は発光装置24側に送られる。その後、測定が終了した処理水及び試薬は、第3流路237から廃液回収部234に送り込まれる。
【0031】
なお、導入部231から処理水が導入されない場合、水槽10内に投入された発信器20の周囲に存在する処理水は、試薬部232、検出部233、及び、廃液回収部234に浸入しない。
【0032】
発光装置24は、発信器20の内部に設けられている。発光装置24は、測定装置23による水質の測定結果に基づいた光信号を発する。光信号は、例えば発信器20の位置、及び測定装置23からの処理水の水質指標等を含んでもよい。発光装置24から発せられた光信号は、受信器30に受信され得る。図1において、受信器30に受信される発信器20からの光信号は、破線矢印により示されている。発光装置24として、発光ダイオードやレーザ光源等が例示される。
【0033】
発光装置24は、とりわけ、青色発光ダイオードを含むことが好ましい。青色発光ダイオードから発せられた光の強度は、処理水内を進む場合であっても減衰しにくい。これにより、受信器30は、より正確な水質測定結果を受信できる。したがって、このような具体例によれば、水処理システム1は、より正確な水質測定結果に基づき、水槽10内の水質を制御できる。
【0034】
洗浄装置25は、発信器20の内部に設けられている。洗浄装置25は、測定装置23を洗浄する。洗浄装置25は、例えば蒸留水により、測定装置23を洗浄し得る。洗浄された測定装置23は、水質を正確に且つ継続的に測定できる。したがって、このような具体例によれば、水処理システム1は、水槽10内に投入されてから、回収されるまで、発信器20をより効率的に使用できる。
【0035】
記録装置26は、発信器20の内部に設けられている。記録装置26は、水質測定結果を保存する。図3に示された例において、記録装置26は、測定装置23、とりわけ、各測定ユニット23aの検出部233と電気的に接続している。これにより、記録装置26は、検出部233によって検出された水質指標を保存できる。記録装置26として、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記録媒体が用いられてもよい。
【0036】
以上のような構成を有する発信器20として、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)や、水中ドローン等が例示される。しかしながら、これに限られず、人の操作を介さず受動で行動するロボットや、手動で遠隔操作されるロボットを、発信器20として使用できる。
【0037】
図1に示されるように、受信器30は、水槽10内の処理水に浮かんでいる。受信器30は、発信器20からの信号を受信する。受信器30として、電磁波や音波等の波動を検出するための種々のセンサを用いることができる。図示された例において、受信器30は、発信器20の発光装置24から発せられた光信号を受信する。言い換えると、受信器30に受信される光信号は、発光装置24から発せられ、受信器30に入射する。受信器30は、例えば、発信器20から発せられる光信号の強度を検出してもよい。受信器30は、例えば発信器20の位置、及び水質の測定結果に基づいた光信号を受信する。受信器30は、光信号が入射した方向を検出してもよい。水処理システム1は、複数の受信器30を有していてもよいし、単一の受信器30を有していてもよい。図1に示された例において、受信器30は、水槽10の上流側及び下流側に1つずつ設けられている。幅方向における受信器30の水面上の位置は、固定されていてもよいし、移動可能であってもよい。奥行方向における受信器30の水面上の位置は、固定されていてもよいし、移動可能であってもよい。受信器30は、ホッパー60に内蔵されていてもよい。受信器30は、スクリーン70に内蔵されていてもよい。
【0038】
図1に示されるように、制御部40は、受信器30に電気的に接続されている。受信器30は、制御部40との電気的な接続を通して、受信結果を制御部40に転送する。制御部40は、受信器30が受信した受信結果に基づいて、設備機器50を制御する。より具体的には、制御部40は、受信器30が受信した受信結果と、制御部40内に保存された目標値とを比較して、設備機器50の動作を決定する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを含んでもよい。制御部40は、ROMやRAM等のメモリを更に含んでもよい。制御部40は、メモリに記録されたプログラムを実行することにより、設備機器50を制御してもよい。
【0039】
設備機器50は、水槽10内の水質を調整する。設備機器50として、他の水槽に接続されたバルブやポンプ、あるいは、ブロワ等が例示される。図1に示されるように、設備機器50は、制御部40に電気的に接続されている。制御部40には、複数の設備機器50が電気的に接続されていてもよい。制御部40は、複数の設備機器50を、別々に制御してもよい。制御部40は、設備機器50との電気的な接続を通して、設備機器50の動作及び動作停止のための信号を、設備機器50に転送する。設備機器50は、制御部40から転送された信号に基づき、水槽10内の水質を調整する。制御部40による設備機器50の制御項目として、バルブの目標開度、ポンプの動作台数及び目標回転数、及び、ブロワの目標風量等が例示される。本実施形態において、設備機器50による処理水への薬品注入量や、処理水の曝気風量等が、制御部40によって調節される。
【0040】
図1に示されるように、水処理システム1は、水槽10の上流側(流れ方向DAにおける他側SA2)に、ホッパー60をさらに備えてもよい。ホッパー60は、発信器20を水槽10内に投入する。ホッパー60は、水面よりも上方に位置している。ホッパー60は、例えばステンレス等の金属製であってもよい。
【0041】
また、図1に示されるように、水処理システム1は、水槽10の下流側(流れ方向DAにおける一側SA1)に、スクリーン70をさらに備えてもよい。スクリーン70は、水槽10内の発信器20を水槽10から回収する。スクリーン70の下端は、水面よりも下方に位置する。スクリーン70の上端は、水面よりも上方に位置する。スクリーン70は、例えば図1に示されるように、コンベアであってもよい。スクリーン70は、コンベアの移動により、コンベア上の発信器20を、水槽10内から水槽10外へ移動させる。
【0042】
次に、このような構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0043】
まず、予め準備した発信器20を、水槽10に投入する。発信器20は、例えば手動で水槽10に投入されてもよい。
【0044】
図1に示された例において、水処理システム1は、発信器20を水槽10内に投入するホッパー60を有している。このような具体例によれば、ホッパー60を介して、発信器20を容易に水槽10に投入できる。
【0045】
水槽10に投入された発信器20は、水槽10に収容された処理水の水質を測定する。発信器20は、水槽10内を移動しながら、処理水の水質を測定する。図1に示された例において、発信器20は、処理水の流れ方向DAに移動しながら、処理水の水質を測定している。
【0046】
ところで、従来の水処理システムにおいて、連続測定が可能な水質センサは、定点で水質観測を行う。このような水質センサは、水処理システム全体の水質の変化を連続的に検知することは難しい。また、従来の水処理システムにおいて、処理水の採取地点は水質測定地点と異なる。処理水の水質は、採取から測定までの時間経過によって変化し得る。したがって、測定した水質を指標として設備機器を正確に制御できない問題がある。
【0047】
これに対して本実施形態における水処理システム1は、水槽10内を移動する発信器20を有している。発信器20は、水槽10内の水質を測定した測定結果を受信器30に送信する。すなわち、発信器20は、水槽10内を移動しながら、処理水の水質を測定できる。これにより、受信器30は、位置や時間に応じて変化する水槽10内の正確な水質測定結果を受信できる。そして、本実施形態による水処理システム1における制御部40は、受信器30の受信した測定結果に基づいて、設備機器50を制御する。結果として、本実施形態による水処理システム1は、正確な水質測定結果に基づき、水質を制御できる。
【0048】
本実施形態において、発信器20は、水槽10内を移動するための移動装置21と、移動装置21を駆動する電源装置22を有している。発信器20は、水槽10内において、幅方向、深さ方向、及び、奥行方向に移動してもよい。これにより、発信器20は、処理水における流れの有無や流れの方向に関わらず、水槽10内の任意の地点における水質を測定できる。発信器20は、測定領域である処理水全体の水質を正確に測定できる。結果として、水処理システム1は、より正確な水質測定結果に基づき、水質を制御できる。
【0049】
本実施形態において、発信器20は、処理水を導入する導入部231と、処理水に反応させる試薬を保存する試薬部232と、水質指標を検出する検出部233と、検出後の廃液を回収する廃液回収部234を含む測定ユニット23aを有している。これにより、発信器20は、試薬を必要とする指標を測定できる。また、発信器20は、測定後の廃液による処理水の汚染を抑制できる。
【0050】
本実施形態において、発信器20は、水槽10内の水質測定結果に基づいた光信号を発する発光装置24を有する。このような具体例によれば、発信器20によって発せられた水質測定結果が、受信器30によって受信されるまでの時間は、低減される。これにより、制御部40は、水槽10内の水質変化を迅速に検出できる。結果として、水処理システム1は、より正確な水質測定結果に基づき、水質を制御できる。
【0051】
本実施形態において、受信器30は、複数設けられている。より具体的には、受信器30は、水槽10の上流側及び下流側に1つずつ設けられている。このような具体例によれば、各受信器30は、発信器20から発せられる信号を、別々に受信する。これにより、発信器20による水質測定結果の信頼性は、向上する。また、別々に受信される信号において、図1に示されるように、発信器20から発せられた信号の入射方向は、各受信器30間で異なっている。これにより、制御部40は、各受信器30によって検出された信号の入射方向をもとに、発信器20の位置を推定することもできる。したがって、水処理システム1は、より正確な水質測定結果に基づき、水質を制御できる。
【0052】
水質の測定が終了すると、発信器20は、水槽10外に回収される。発信器20は、例えば手動で水槽10外に回収されてもよい。
【0053】
また、発信器20は、図1に示されるように、スクリーン70によって水槽10外に回収されてもよい。このような具体例によれば、水槽10内の発信器20に触れることなく、発信器20を回収できる。これにより、処理水の水質に関わらず、発信器20を容易に回収できる。
【0054】
回収された発信器20から、廃液回収部234によって発信器20内に回収された廃液が、発信器20外に排出される。これにより、廃液回収部234を含む測定ユニット23aは、繰り返し水質を測定できる。
【0055】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で、実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1・・・水処理システム、10・・・水槽、20・・・発信器、21・・・移動装置、22・・・電源装置、23・・・測定装置、23a・・・測定ユニット、24・・・発光装置、25・・・洗浄装置、26・・・記録装置、30・・・受信器、40・・・制御部、50・・・設備機器、60・・・ホッパー、70・・・スクリーン、231・・・導入部、232・・・試薬部、233・・・検出部、234・・・廃液回収部、235・・・第1流路、236・・・第2流路、237・・・第3流路、238・・・合流部、DA・・・流れ方向、SA1・・・一側、SA2・・・他側
図1
図2
図3
図4