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特開2023-42435魚介類加工品の製造方法及び魚介類加工品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042435
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】魚介類加工品の製造方法及び魚介類加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20230317BHJP
   A23D 7/01 20060101ALN20230317BHJP
   A23L 29/20 20160101ALN20230317BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23D7/01
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149729
(22)【出願日】2021-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 純子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC02
4B026DG05
4B026DL01
4B026DL03
4B026DL04
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX04
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE04
4B041LH13
4B041LH16
4B041LK03
4B041LK18
4B041LP04
4B041LP25
4B042AC02
4B042AD08
4B042AE03
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP07
4B042AP18
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】魚介類の表面に油脂を添加するにあたり、照り感を付与しながら油脂含有組成物の残存が視認されにくく、加熱後の見栄えを効果的に向上させることができる魚介類加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し、1質量%以上30質量%以下の量で付着させる工程と、
前記ホイップド組成物を付着させた前記食材を加熱する工程と、を有する魚介類加工品の製造方法である。前記ホイップド組成物として、ゲル化剤又は増粘剤を含有するものを用いることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し、1質量%以上30質量%以下の量で付着させる工程と、
前記ホイップド組成物を付着させた前記食材を加熱する工程と、を有する魚介類加工品の製造方法。
【請求項2】
前記ホイップド組成物としてゲル化剤又は増粘剤を含有するものを用いる、請求項1に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項3】
前記ホイップド組成物として、ゼラチンを含有するものを用いる、請求項1又は2に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項4】
前記ホイップド組成物として、10℃以上15℃以下での比重が0.2g/cm3以上0.85g/cm3以下であるものを前記食材に付着させる、請求項1~3の何れか1項に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項5】
前記ホイップド組成物を付着させた前記食材を加熱する工程が焼成工程である、請求項1~4の何れか1項に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項6】
前記魚介類が魚類であり、魚介類加工品として魚を含む惣菜を製造する、請求項1~5の何れか1項に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項7】
品温20℃以下の魚介類を含む食材に対し、前記ホイップド組成物を付着させる、請求項1~6の何れか1項に記載の魚介類加工品の製造方法。
【請求項8】
油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し1質量%以上30質量%以下の量で付着させた後、加熱してなる、魚介類加工品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含むホイップド組成物を用いた魚介類加工品の製造方法及び魚介類加工品に関する。
【0002】
従来、油脂を用いた組成物にて、加熱前の魚介類を処理する方法が種々知られている。
特許文献1には、熱凝固性蛋白質等の蛋白質、増粘多糖類、カルシウム剤、可食性繊維、化工澱粉の1種又は2種以上の混合物と、動物性及び/又は植物性油脂と、水を魚肉に注入する技術が記載されている。同文献には、油脂含量の低い魚肉に油脂を強化し、食感、風味を改良し、更に歩留まりを向上させ焼き縮みを少なくする魚食材とすることが記載されている。
特許文献2には、融点が12℃から42℃の油脂を9重量%から19重量%含み、味噌を43重量%から63重量%含む、25℃での粘度が5,700から26,000mPa・sであることを特徴とするたれ漬け用液状調味料が記載されている。同文献には、当該調味料は、たれ漬け時の作業性向上とドリップ抑制、たれのロス率が低い効果を持つと記載されている。
【0003】
一方、中食市場は拡大を続けており、市販の惣菜として様々なものが提案されている。中食市場において、惣菜に対する見た目への要求はますます強いものとなっている。魚の切り身等の魚介類を用いた惣菜にとって、美味しそうに見せるため、照り感のある外観は大切な要素であり特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-173022号公報
【特許文献2】特開2002-000218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、これまで一定の粘度を有する油脂含有組成物を魚介類表面に塗布して加熱することで照り感のある外観を得ることを試みた。
しかしながら上記の方法では、加熱後の魚介類に照り感のある外観を得ようとすると、加熱後に油脂含有組成物が魚介類の表面上に残って視認されることに起因して、外観を向上しにくいことを見出した。
一方、特許文献1及び2は、粘度を有する油脂含有組成物を魚介類に適用することが記載されている一方で、上記の課題は検討されていない。
【0006】
従って本発明の課題は、魚介類の表面に油脂を付与するにあたり、加熱後に油脂含有組成物が表面上に残って視認され見栄えを低下させる現象を防止でき、魚介類の外観を効果的に向上させることができる魚介類加工品の製造方法を提供することにある。また本発明の課題は、魚介類の表面に照り感を有しつつ付与された油脂含有組成物が視認されにくく良好な外観を付与された魚介類加工品を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は魚介類の表面に油脂を付与して魚介類の外観を向上させる方法を鋭意検討していたところ、起泡した乳化物として魚介類に付着させた後に加熱すると、該魚介類の表面の照り感を得ながら油脂含有組成物が視認されにくく、魚介類表面の見栄えを向上させることができることを見出した。
【0008】
本発明は上記知見に基づくものであり、油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し、1質量%以上30質量%以下の量で付着させる工程と、
前記ホイップド組成物を付着させた前記食材を加熱する工程と、を有する魚介類加工品の製造方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し1質量%以上30質量%以下の量で付着させた後、加熱してなる、魚介類加工品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、魚介類の表面に油脂を添加するにあたり、照り感を付与しながら油脂含有組成物の残存が視認されにくく、加熱後の見栄えを効果的に向上させることができる魚介類加工品の製造方法及び魚介類加工品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施態様に基づき説明する。
本発明は油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し、1質量%以上30質量%以下の量で付着させる工程と、
前記ホイップド組成物を付着させた前記食材を加熱する工程と、を有する魚介類加工品の製造方法に関する。
また本発明は、油脂を含む乳化物であるホイップド組成物を、魚介類を含む食材に対し1質量%以上30質量%以下の量で付着させた後、加熱してなる、魚介類加工品に関する。
【0012】
まずは本発明で用いる魚介類について説明する。
本発明で用いる魚介類は、サケ、タラ、マグロ、マス、ムツ、タイ、サワラ、ブリ、カレイ、カツオ、アジ、イワシ、サンマ、アカウオ等の魚類、ハマグリ、ホタテ等の貝類、イカ、タコなどの頭足類、エビ、カニなどの甲殻類等、海や川、湖に生息する生物などが挙げられる。なかでも魚類を用いることが、本発明による外観向上効果及びそれによる商品価値向上の効果に優れる点で好ましく、とりわけサケ、タラ、ムツ、タイ、サワラ、ブリ、カレイ、アカウオ等から選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。尚アカウオは、タイセイヨウアカウオやアコウダイ、アラスカメヌケの総称であり、赤魚とも記載される場合がある。
【0013】
本発明で用いる魚介類は種々の形態であってよく、例えば魚類であれば、丸ごと一匹であってもよく、内臓を除去した形態であってもよく、頭部や尾部を除去して切り身にした形態であってもよい。切り身の場合は、例えば一切れが20~200g程度で使用されることが喫食容易性などの点から好ましい。本発明で用いる魚介類が魚類の場合は、皮や内臓、骨、頭部や尾部、魚卵等を有していてもよいし、それらの何れか、あるいは全てを除去したものであってもよい。貝類としては通常身の部分が用いられる。頭足類や甲殻類についても適宜喫食に適した形態、例えばエビであれば殻や頭部を除去した形態、タコやイカであれば適宜その身を切断した形態で用いられる。
【0014】
魚介類は、ホイップド組成物を付着させる段階で未加熱状態であっても加熱された状態であってもよい。未加熱状態であることは、得られる魚介類加工品の食感の柔らかさや歩留り向上の点で好ましい。未加熱状態とは例えば65℃以上5分以上の加熱処理が施されていないことを指し、60℃以上10分以上の加熱処理が施されていないことを指すことが好ましく、50℃以上5分以上の加熱処理が施されていないことを指すことが特に好ましい。
【0015】
本発明で用いる魚介類を含む食材(以下、「魚介類含有食材」ともいう。)としては、魚介類そのものであってもよく、或いは、魚介類に対して、ホイップド組成物に付着させる前の段階における何らかの処理が施されたものであってもよい。そのような前処理としては、洗浄のほかに、浸漬処理やインジェクション処理等が挙げられる。浸漬処理は、得られる魚介類加工品に調味を施すほか、臭みを除去したり、風味を向上させたり、歩留まりを向上させたり、軟化させる等の目的でなされる。前処理としての浸漬処理に用いる浸漬液に含まれる成分としては、食塩、リン酸塩等の無機塩や、有機酸、核酸、アミノ酸等のほか、調味料が挙げられる。浸漬処理に用いられる調味料としては、味噌、みりん、酒、醤油、麹、酒粕、出汁、酢、食塩等の塩、胡椒、砂糖、砂糖以外の甘味料、コンソメ、ケチャップ、カレー粉、アミノ酸、核酸、有機酸、pH調整剤等が挙げられる。浸漬処理は、一段階であってもよく、二段階以上であってもよい。浸漬処理の時間は例えば一種の浸漬液について通常10分~48時間程度であることが好ましい。
【0016】
上述した通り、ホイップド組成物を付着させる前の魚介類含有食材は、魚介類以外に浸漬液に含まれる成分を含有していてもよい。またホイップド組成物を付着させる前の魚介類含有食材は、その他、野菜類、穀類、乳製品、油脂、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、微量元素、着色料、保存料、安定剤、酸化防止剤、発色剤などの食品添加物を含んでいてもよい。
前記魚介類含有食材は魚介類を主成分とすることが好ましく、魚介類の含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、75質量%以上であることが特に好ましい。望ましくは魚介類含有食材は、魚介類又は魚介類に浸漬処理を施したものである。この場合、魚介類及び浸漬液に含まれる成分が合計で魚介類含有食材中90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0017】
次いで、ホイップド組成物について説明する。
本発明で用いるホイップド組成物とは、油脂を含んだ乳化物であって起泡されたものである。本発明者は魚介類の表面に油脂を付与する際に、油脂としてホイップした乳化物を用いることで、塗布性が向上し、加熱後の魚介類表面に油脂含有組成物を均一に付着でき、魚介類表面上の油脂含有組成物が優れて目立ちにくくなることを見出した。これにより、本発明では、魚介類表面へ油脂含有組成物の存在に起因した外観の質低下を改善しながら照り感を得ることができる。特に、従来、油脂やゲル化剤又は増粘剤を一定量以上含む組成物は照り感を向上させやすい一方、魚介類の表面に残ると外観上における油脂の残存感を生じさせたり、ゲル化剤等の存在に起因して表面に変色を生じることがあった。本発明では、そのような場合であっても、ホイップド組成物を用いることで、魚介類表面への油脂残存感やゲル化剤等の残存に起因した変色を防止できる。また、ホイップド組成物を用いる場合、均一に油脂が塗布され、変色等が防止されることに起因して照り感を向上させやすい。
【0018】
ホイップド組成物の比重は0.85g/cm3以下であることが照りのある外観を魚介類に付与しやすく、また塗布性を向上させやすい点で好ましく、0.2g/cm3以上であることが塗布のしやすさ、ホイップド組成物の保形性がよく、食材への付着性の良さという利点がある等の点で好ましい。これらの点から、ホイップド組成物における比重は0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下であることがより好ましい。とりわけ、ホイップド組成物の魚介類への塗布性を高める点から、ホイップド組成物における比重は0.4g/cm3以上0.7g/cm3以下であることが特に好ましい。ホイップド組成物の比重を上記範囲に調整するためには起泡の程度を調整するほか、水の量や油脂の量、油脂種類やゲル化剤、増粘剤の種類や量を調整したり、起泡時の温度の調整をすること等が挙げられる。比重はホイップド組成物が10~15℃の状態で測定され、当該温度範囲の何れかの温度で上記範囲内であればよい。
【0019】
乳化物は水中油型であっても油中水型であってもよいが、水中油型であることが調味の容易さ、保形性の調整の点から好ましい。
【0020】
ホイップド組成物に含まれる油脂としては、食用油脂であれば特に限定はされず、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ココアバター、シア脂、サル脂、牛脂、豚脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、アマニ油、オリーブ油、サラダ油、乳脂等や、これらの加工油脂(水素添加油、分別油、エステル交換油)など特に限定なく使用することができる。特に本発明では25℃で常温の液状油を用いることが作業の容易性の点から好ましい。25℃で常温の液状油としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、アマニ油、オリーブ油、サラダ油等が挙げられる。
【0021】
ホイップド組成物に含まれる油脂の量はホイップド組成物中、10質量%以上であることが照り感を付与しやすい点や焼成時の水分保持の点で好ましく、70質量%以下であることが、ホイップド組成物の保形性の点で好ましい。これらの点から、油脂の量はホイップド組成物中、15質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
乳化物であるホイップド組成物には水が含有されていることが好ましい。水の量は、ホイップド組成物中、30質量%以上90質量%以下であることが、ホイップド組成物の魚介類への付着させやすさや保形性の点で好ましく、35質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
ホイップド組成物は、形状の安定性や付着性を目的にゲル化剤又は増粘剤を含んでいることが好ましい。ゲル化剤としては、例えばゼラチン、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、寒天などを例示することができる。また、増粘剤としては、例えばファーセレラン、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、タラガム、プルラン、トラガントガム、カラヤガム、ラムザンガム、ウェランガム、サイリウムシードガム等が挙げられる。中でも本発明で用いるホイップド組成物は、ゲル化剤又は増粘剤として、ゼラチン、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガムから選ばれる少なくとも一種を用いることが照り感のある外観を魚介類に付与しやすい点で好ましく、とりわけ、ゼラチンを用いることが最も好ましい。ホイップド組成物としてゼラチンを用いたものを用いると、起泡性、保形性に優れる利点があるためである。
【0024】
ホイップド組成物中のゲル化剤の量は、乾燥質量にてホイップド組成物中、1質量%以上20質量%以下であることがゲル化剤を使用することによる上記の効果が得やすい点や風味の点で好ましく、乾燥質量にてホイップド組成物中、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
ホイップド組成物中の増粘剤の量は、乾燥質量にてホイップド組成物中、0.1質量%以上10質量%以下であることが増粘剤を使用することによる上記の効果が得やすい点や風味の点で好ましく、乾燥質量にてホイップド組成物中、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
ホイップド組成物は水、油脂、ゲル化剤若しくは増粘剤以外の成分を含有できる。その様な成分としては、調味料が挙げられる。調味料としては、上述した浸漬液に含まれる成分である調味料として上記で挙げたものを適宜挙げることができる。ホイップド組成物が調味料を含む場合、ホイップド組成物中の調味料の量は他の成分の量を確保する点や調味効果を得る点から、乾燥質量にてホイップド組成物中、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0027】
ホイップド組成物における、水、油脂、ゲル化剤、増粘剤及び調味料以外のその他の成分としては、着色素材、糖類等が挙げられる。その他の成分の量には特に制限はないが、例えばホイップド組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
ホイップド組成物は、水、油脂、好ましくはゲル化剤又は増粘剤を撹拌混合して起泡させることにより得られる。起泡はワイヤーホイップの付いたミキサー、圧力を用いた起泡方法、プッシュ式起泡容器などを用いて行うことができる。起泡の程度としては比重が上記範囲内となるように行うことが好ましい。
【0029】
ホイップド組成物は、流動性を有していることが塗布性の点で好ましい。この観点からホイップド組成物は25℃の粘度が200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましい。なおホイップド組成物の25℃の粘度の下限としては、10mPa・s以上であることがホイップド組成物が適度に魚介類表面上から流れ落ちずに保持されやすい点や起泡性の点で好ましい。ホイップド組成物の粘度を上記範囲に調整するためには水の量や油脂の量、油脂種類やゲル化剤、増粘剤の量を調整するとともに起泡の程度を調整する、起泡時の温度調整が挙げられる。
【0030】
ホイップド組成物は、魚介類含有食材100質量部に対し1~30質量部の量にて付着させる。ホイップド組成物は、魚介類含有食材における魚介類の表面に付着されるものであり、特に魚介類の皮及び/又は肉にホイップド組成物を付着させることが照りの付与効果に優れる点から好ましい。またホイップド組成物が魚介類含有食材における魚介類の少なくとも上側の表面に付着した状態で魚介類含有食材を加熱することが好ましい。
【0031】
ホイップド組成物を付着させる際の魚介類の品温は20℃以下であることが、魚介類表面に付着したホイップド組成物の起泡状態が維持されて加熱できることの利点が得やすいため好ましく、-20℃以上20℃以下であることがより好ましい。
【0032】
ホイップド組成物は、魚介類含有食材100質量部に対し1質量部以上の量にて付着させることで、魚介類への照り付与向上効果が得られる。またホイップド組成物は、魚介類含有食材100質量部に対し30質量部以下の量にて付着させることで、適切な焼成をおこなうことができ、適度な照りを付与できる利点が得られる。これらの点から、ホイップド組成物の使用量は、魚介類含有食材100質量部に対し2質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0033】
次いで、ホイップド組成物を付着させた魚介類含有食材を加熱する。加熱により魚介類含有食材を焼成することが好ましい。
加熱方法としては、直火、熱気流、遠赤外線、赤外線、マイクロ波、過熱水蒸気等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。本発明では、ホイップド組成物を魚介類含有食材における魚介類の上側に付着した状態において、魚介類におけるホイップド組成物が付着した部分に対して直接的な加熱を行うことができる点で、直火、熱気流、遠赤外線、赤外線、過熱水蒸気から選ばれる少なくとも一種を用いた加熱工程であることが好ましく、とりわけ、直火、熱気流、遠赤外線、赤外線、過熱水蒸気から選ばれる少なくとも一種を用いた焼成工程であることが好ましい。例えば具体的な加熱装置としては、直火を利用するものとしてグリルが挙げられ熱気流を利用したものとして、コンベクションオーブンが挙げられ、赤外線や遠赤外線を利用するものとしてオーブンやトースターが挙げられ、過熱水蒸気を利用するものとしてスチームオーブンやその他の過熱水蒸気式加熱装置等が挙げられる。従って、好ましい加熱装置としては、トースター、オーブン、グリル、過熱水蒸気式加熱装置が挙げられる。ここでいうオーブンには、コンベクションオーブン、オーブントースター、ジェットオーブン、ロースターオーブンが含まれる。また過熱水蒸気式加熱装置にはバッチ式のものも、連続式のものも含まれる。
【0034】
ホイップド組成物を付着させた魚介類含有食材を加熱するために好ましい加熱温度としては、照りのある外観が得やすい点や魚の食感の点から、80~500℃が挙げられ、100~300℃であることがより好ましい。過熱水蒸気を用いる場合は、過熱水蒸気が100℃超500℃以下であることも好ましく、より好ましくは100℃超300℃以下である。
【0035】
ホイップド組成物を付着させた魚介類含有食材を加熱するために好適な加熱時間としては、2分以上30分以下であることが、照りのある外観が得やすい点や食感の点で好ましく、より好ましくは3分以上20分以下である。
【0036】
上記で得られた魚介類加工品は、そのまま焼き物類、蒸し物類等の惣菜とすることができるほか、惣菜の製造材料として用いることもでき、魚介類として魚類を用いた場合には魚を含む惣菜となる。惣菜の種類としては、上述した焼き物類、蒸し物類のほか、煮物類、茹で物類、炒め物類、揚げ物類、汁物類、丼もの類、丼もの以外の飯類、麺類、サラダ類等が挙げられる。得られた魚介類加工品は既に加熱済みであることから、そのまま盛り付けに使用したり、他具材や調味液等と混合する等、簡便な工程により、惣菜を完成させることが可能である。
【0037】
魚介類加工品は、レトルト、冷凍及びチルドのいずれの方法で保管・流通されてもよい。魚介類加工品は例えば冷凍又はチルドにより保管・流通されることが、風味、外観、食感の点で好ましい。冷凍又はチルド品である場合、喫食時における魚介類加工品の加熱方法は、マイクロウェーブ加熱、オーブン加熱等が挙げられ、また、フライパンやトースター等を用いて魚介類加工品を温めたり、食品を包材に密閉した状態でボイル加熱したりしてもよく、特に限定されない。
【実施例0038】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1〕
(1)ホイップド組成物の調製
ゼラチン(AP-200微粉:新田ゼラチン)5gを100gの水に分散させた後、85℃まで加熱し溶解させた。得られたゼラチン液に、大豆油25g、食塩2gを入れ、bamix M300((株)チェリーテラス製)を用いて撹拌強度:1、30秒間、被撹拌物の温度25℃の条件にて起泡させ、水中油型乳化物であるホイップド組成物を得た。
(2)切り身への付着、焼成
未加熱状態の冷凍赤魚を1時間、流水で解凍し、一切れ130~150gにカットして切り身とした。得られた切り身(25℃)の表面に、切り身100質量部に対し、(1)で得られたホイップド組成物を10質量部付着させ、表面全体に塗り伸ばした。塗布から30分以内に、組成物付着後の切り身を網に乗せ、コンビオーブン(フジマック社製)にて、水蒸気100%、庫内温度200℃の条件にて、7分焼成した。冷風冷却を10℃20分行った後、-40℃に設定したエアブラストフリーザーにて冷凍させた。ナイロン製のパウチに入れシールして-18℃の冷凍庫に入れ、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0040】
〔実施例2~4〕
大豆油の量を表1の記載の量に変更した以外、実施例1と同様として魚介類加工品を得た。
【0041】
〔実施例5〕
ゼラチンの量を2gとした。その点以外、実施例2と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0042】
〔実施例6〕
ゼラチンの量を10gとした。その点以外、実施例2と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0043】
〔実施例7〕
ゼラチンの代わりに増粘剤としてキサンタンガム(ATIAXANETMCX 90:ユニテックフーズ)1gを用いた。実施例1と同様の手順で撹拌混合してホイップド組成物を得た。その点以外は実施例2と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0044】
〔比較例1〕
実施例1においてbamix M300((株)チェリーテラス製)を用いた撹拌混合に変えて、組成物の起泡を行わずにスプーンで混合した。
その点以外は実施例1と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0045】
〔比較例2〕
実施例2においてbamix M300((株)チェリーテラス製)を用いた撹拌混合に変えて、組成物の起泡を行わずにスプーンで混合した。
その点以外は実施例2と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0046】
〔比較例3〕
実施例5においてbamix M300((株)チェリーテラス製)を用いた撹拌混合に変えて、組成物の起泡を行わずにスプーンで混合した。
その点以外は実施例5と同様にして、冷凍品である魚介類加工品を得た。
【0047】
(物性測定)
・粘度
B型粘度計(東機産業株式会社製、TVB-20L)を用いて、品温25℃にて、ローターM1、回転数60rpmの条件で、ローターの回転開始から1分後に測定した値である。
・比重
比重の測定は、10℃~15℃のホイップド組成物約90mlを100mlのメスシリンダーに隙間なく充填し、充填前後のメスシリンダーの重量差と、容量の値により求めた。
【0048】
(評価)
・歩留
各実施例・比較例において、組成物付着後の未加熱状態の切り身の重量1を測定した。次いで、焼成後、冷風冷却後の切り身の重量2を測定し、重量2/重量1を求めた。
・外観評価(照り)
各実施例・比較例で得た冷凍品である魚介類加工品について、冷凍状態のままパウチから取り出して皿に置き、ラップをかけ、1切れを電子レンジで600W1分間加熱した。加熱解凍後の魚介類加工品について、以下の基準で評価した。なお、下記の「外観評価(均一付着性)」においては、切り身における塗布部位の全体に亘る組成物の付着状態を評価したものである。均一付着性は、組成物の塗布性が良好なことを示す。
【0049】
●外観評価(照り)
〇:良好な照りが付いている。
△:照りがやや付いている。
×:照りが付いていない。
【0050】
●外観評価(均一付着性)
〇:塗布した組成物が均一に付着しており、油脂残り又は変色がみられない。
△:塗布した組成物がやや均一に付着しており、油脂残り又は変色が僅かに視認される。
×:塗布した組成物が不均一に付着しており、油脂残り又は変色がある。
【0051】
●総合外観評価
++ 大変良好である。
+ 良好である。
- やや不良である。
-- 不良である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す通り、起泡した乳化物を用いた各実施例では、照り及び均一付着性がいずれの中等以上の評価であり、見栄えが向上していた。これに対し、比較例1~3では均一付着性に大きく劣り、照りも同等以下であった。
【0054】
〔実施例8〕
実施例2の(1)ホイップド組成物の調製において、使用する大豆油を20gとし、味噌及び砂糖(質量比1:1)からなる調味料40gを追加した以外は実施例2と同様にしてホイップド組成物を調製した。赤魚を解凍して切断後、食塩水に1時間浸漬させ、次いで酒、砂糖、塩及び水からなる調味液に24時間浸漬させた。浸漬後、液切りをした赤魚切り身の表面に、ホイップド組成物を液切り後の切り身の質量に対し10質量%の量で添加した。また焼成時間は8分とした。その点以外は実施例2と同様にして冷凍品である魚介類加工品を得た。得られた切り身の外観を実施例2と同様に評価したところ、実施例2と同様に、照り及び均一付着性に優れていた。