IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キーエンスの特許一覧

特開2023-42499レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置
<>
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図1
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図2
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図3
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図4
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図5
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図6
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図7
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図8
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図9
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図10
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図11
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図12
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図13
  • 特開-レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042499
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230317BHJP
   B23K 26/062 20140101ALI20230317BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20230317BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/00 N
B23K26/062
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021186970
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須崎 亮平
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168CA14
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA04
4E168DA06
4E168DA24
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA43
4E168EA11
4E168EA15
4E168JA17
4E168JA18
4E168JA27
4E168KA04
(57)【要約】
【課題】十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現する。
【解決手段】レーザマーキング装置Lは、レーザ光を出力するレーザ光出力部3と、レーザ光をワークWの表面上で走査するレーザ光走査部4と、文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データDfを記憶する記憶部102と、文字をマーキングするようにレーザ光出力部3およびレーザ光走査部4を制御するマーキング制御部104と、を備える。マーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち文字の線要素が太る方向に隣合う走査線については、該太線用印字データDfに対応した文字の線要素の中心線Mcに近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線よりも該中心線Mcから離間する外側の走査線に沿ってUVレーザ光を走査する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、
マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、該印字データの走査線に沿ってレーザ光を走査することで文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置であって、
前記マーキング制御部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向に隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線に沿ってレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザマーキング装置において、
直交座標系により規定された設定平面を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された設定平面上に配置され、マーキングされるべき文字の入力を受け付ける文字入力手段と、
前記文字入力手段によって入力が受け付けられた文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを生成する印字データ生成部と、を備え、
前記記憶部は、前記印字データ生成部により生成された太線用印字データを記憶する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたレーザマーキング装置において、
前記線要素が太る方向は、前記線要素の中心線と直交する方向からなる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記レーザ光出力部は、
励起光に基づいて基本波のレーザ光を生成する固体レーザ結晶と、
前記固体レーザ結晶によって生成された基本波のレーザ光に基づいてUVレーザ光を生成する非線形光学結晶と、を備え、
前記レーザ光として、前記非線形光学結晶によって生成されたUVレーザ光を出力する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたレーザマーキング装置において、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線には、前記文字の輪郭を形成する走査線が含まれ、
前記マーキング制御部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記文字の外輪郭を形成する走査線から順にUVレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載されたレーザマーキング装置において、
前記ワークは、シート状の多層フィルムによって構成され、
前記多層フィルムには、少なくとも、表面層、前記UVレーザ光と化学反応するUV反応層、および該UV反応層を該表面層との間で挟み込むシーラント層が含有される
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線には、前記文字の中心線に沿って延びる走査線が含まれる
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記マーキング制御部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のそれぞれにおいて、前記文字の端部を構成する部分が分断されるように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線には閉曲線が含まれ、
前記マーキング制御部は、前記閉曲線に沿ってUVレーザ光が走査される場合には、該閉曲線の始点と終点との間に隙間を設けるように前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記レーザ光出力部は、0.8W以上1.6W以下の範囲内でUVレーザ光のレーザパワーを調整する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項11】
励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、
マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、該印字データの走査線に沿ってレーザ光を走査することで文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置であって、
前記マーキング制御部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記文字の輪郭を形成する走査線を他の走査線よりも優先した順番でUVレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
前記マーキング制御部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうちの一部が交差する場合には、2回目以降の交点箇所を無効部分として処理し、前記レーザ光走査部により該無効部分にレーザ光が走査されるときには、非無効部分と比べて微小なレーザ光が出力されるよう、前記レーザ光出力部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載されたレーザマーキング装置において、
移動するワークの移動情報を取得する手段を備え、
前記マーキング制御部は、
前記ワークの移動情報により特定される移動スピード及び移動方向に基づいて、前記太線用印字データを構成する複数の走査線がワークの移動に追従するように、前記レーザ光走査部を制御する
ことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項14】
励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該文字の線要素が太る方向に並んだ複数の該走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、レーザ光を該印字データの走査線に沿って走査して文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置を用いることで、ワークの表面に文字をマーキングするマーキング方法であって、
前記マーキング制御部が前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御することで、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向に隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線に沿ってレーザ光が走査されるように、文字をマーキングする
ことを特徴とするマーキング方法。
【請求項15】
励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部、および、該レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部を備えるレーザマーカに接続され、該レーザ光走査部によりマーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データを生成する印字設定装置であって、
直交座標系により規定された設定平面を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された設定平面上に配置され、マーキングされるべき文字の入力を受け付ける文字入力手段と、
前記文字入力手段によって入力された文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを生成する印字データ生成部と、
前記印字データ生成部により生成された太線用印字データを前記レーザマーカに送信する印字データ送信部と、を備え、
前記印字データ生成部は、
前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向において隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線が走査される順番となるように太線用印字データを生成する
ことを特徴とする印字設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、レーザマーキング装置、マーキング方法および印字設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザマーキング装置の一例が開示されている。具体的に、この特許文献1に開示されているレーザマーキング装置は、ワークの表面上でレーザビームをらせん状に走査することで、該ワークにウォブル加工を施すことができる。
【0003】
前記特許文献1のようなウォブル加工を用いることで、印字されるべき文字が太線化された、いわゆる太線印字をワークの表面に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-046330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されているようなウォブル加工を用いた場合、印字タクトが長くなる可能性がある。そこで、ウォブル加工を用いる代わりに、印字されるべき文字の中心線に沿って複数の走査線を設定することで、太線印字を実現することが考えられる。
【0006】
複数の走査線によって太線印字を実現する場合、それら複数の走査線は、文字の中心線に略一致する走査線を最初に印字した後、その中心線の線幅を広げていくような順番でそれに隣接する他の走査線を印字したり、複数の走査線のうちの一部が閉曲線を形成する場合における閉曲線の内側での熱エネルギーの蓄積を抑制すべく、文字の内輪郭に近接した走査線から順番に各走査線を印字したりすることが従来検討されていた。
【0007】
前者の順番を採用した場合、文字の中心線から最も離間した走査線は、該中心線に近接する走査線よりも後の順番で印字されることになる。また、後者の順番を採用した場合、文字の内輪郭から最も離間した走査線は、他の走査線よりも後の順番で印字されることになる。文字の中心線または内輪郭から最も離間した走査線は、ほぼ最後に印字されることになる走査線に相当し、いずれも、太線化された文字の外輪郭を形成することになる。
【0008】
ここで、レーザ光としてUVレーザ光を採用するとともに、そのUVレーザ光と化学反応を生じるようなワークに対し、前述のように複数の走査線を用いた太線印字を行うケースを考える。
【0009】
この場合、複数の走査線のうちの一走査線に沿ってUVレーザ光を照射すると、その照射部分からヒューム(Fume)が発生し、その部分に僅かな空間が発生する。その後、その一走査線に隣接する他の走査線に沿ってUVレーザ光を照射すると、その照射部分に同様のヒュームが発生するとともに、そのヒュームが前述した僅かな空間に流れ込むことになる。これにより、後の順番で印字される走査線(一走査線に隣接する他の走査線)については、十分に印字されない可能性がある。なぜなら、ヒュームが空間壁に付着することで印字の発色に繋がるからである。この場合、付着したヒューム量が印字の濃さに影響する。
【0010】
したがって、前述のような順番で各走査線を印字した場合、ほぼ最後に印字される走査線は、ヒュームの流れ込みに起因して十分に印字されない虞がある。その走査線が文字の外輪郭を形成することを考慮すると、従来検討されてきた順番では、十分な線幅をもった太線印字を実現するのが困難である。
【0011】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザ光を用いた文字のマーキングにおいて、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様は、励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、該印字データの走査線に沿ってレーザ光を走査することで文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置に係る。
【0013】
そして、本開示の第1の態様によれば、前記マーキング制御部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向に隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線に沿ってレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する。
【0014】
ここでいう「走査線」とは、ワークの表面上でのレーザ光の軌跡を指す。この走査線は、文字を構成する一線要素に沿って延びるように設定される。一線要素に沿って延びる走査線の本数を増やすことで、当該一線要素を太らせることができる。複数の線要素を太らせることで、それらの線要素によって構成される文字を太文字化することができる。
【0015】
本開示の第1の態様によると、マーキング制御部は、文字の線要素の中心線を基準として、各走査線を走査する順序を決定する。具体的に、隣接する2本の走査線については、中心線から離れた走査線が先に走査される。これにより、外輪郭を形成する走査線が従来よりも早い順番で走査されることになり、より高品質な印字を実現することができる。その結果、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができるようになる。
【0016】
また、本開示の第2の態様によれば、前記レーザマーキング装置は、直交座標系により規定された設定平面を表示する表示手段と、前記表示手段により表示された設定平面上に配置され、マーキングされるべき文字の入力を受け付ける文字入力手段と、前記文字入力手段によって入力が受け付けられた文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを生成する印字データ生成部と、を備え、前記記憶部は、前記印字データ生成部により生成された太線用印字データを記憶する、としてもよい。
【0017】
前記第2の態様によると、レーザマーキング装置は、太線用印字データを生成するための各種ユーザインターフェースを具備することになる。これにより、太線印字を容易に実現させつつ、ユーザビリティとの両立を図ることができる。
【0018】
また、本開示の第3の態様によれば、前記線要素が太る方向は、前記線要素の中心線と直交する方向からなる、としてもよい。
【0019】
前記第3の態様によると、文字を構成する各線要素を適切に太らせることができる。
【0020】
また、本開示の第4の態様によれば、前記レーザ光出力部は、励起光に基づいて基本波のレーザ光を生成する固体レーザ結晶と、前記固体レーザ結晶によって生成された基本波のレーザ光に基づいてUVレーザ光を生成する非線形光学結晶と、を備え、前記レーザ光として、前記非線形光学結晶によって生成されたUVレーザ光を出力する、としてもよい。
【0021】
前記第4の態様によると、前述したヒュームに係る問題を生じることなく、太線印字を容易に実現することができる。
【0022】
また、本開示の第5の態様によれば、前記太線用印字データを構成する複数の走査線には、前記文字の輪郭を形成する走査線が含まれ、前記マーキング制御部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記文字の外輪郭を形成する走査線から順にUVレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0023】
前記第5の態様によると、制御部は、文字の外輪郭を形成する走査線を優先的に走査する。これにより、文字の輪郭を高品質で印字することができ、ひいては、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現する上で有利になる。
【0024】
また、本開示の第6の態様によれば、前記ワークは、シート状の多層フィルムによって構成され、前記多層フィルムには、少なくとも、表面層、前記UVレーザ光と化学反応するUV反応層、および該UV反応層を該表面層との間で挟み込むシーラント層が含有される、としてもよい。
【0025】
本開示の第6の態様によると、前記レーザマーキング装置は、UV反応層が含有されたフィルムへの印字に適したものとして構成することができる。
【0026】
また、本開示の第7の態様によれば、前記太線用印字データを構成する複数の走査線には、前記文字の中心線に沿って延びる走査線が含まれる、としてもよい。
【0027】
前記第7の態様によると、前記複数の走査線には、文字の中心線に沿って延びる走査線を含めることができる。
【0028】
また、本開示の第8の態様によれば、前記マーキング制御部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のそれぞれにおいて、前記文字の端部を構成する部分が分断されるように、前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0029】
前記第8の態様によると、マーキング制御部は、文字の端部に対応する部分の走査線を分断し、UVレーザ光の照射対象から除外する。一般に文字の端部は縮退が生じ易いため、そのような部分をUVレーザ光の照射対象から除外することで、太線印字の品質を高める上で有利になる。
【0030】
また、本開示の第9の態様によれば、前記太線用印字データを構成する複数の走査線には閉曲線が含まれ、前記マーキング制御部は、前記閉曲線に沿ってUVレーザ光が走査される場合には、該閉曲線の始点と終点との間に隙間を設けるように前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0031】
前記第9の態様によると、複数の走査線に閉曲線が含まれる場合、マーキング制御部は、その閉曲線の始点と終点とを直に接続せず、その間に隙間を設ける。これにより、デラミネーションの発生等を抑制し、ひいては太線印字の品質を高める上で有利になる。
【0032】
また、本開示の第10の態様によれば、前記レーザ光出力部は、0.8W以上1.6W以下の範囲内でUVレーザ光のレーザパワーを調整する、としてもよい。
【0033】
本開示の第11の態様は、励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、該印字データの走査線に沿ってレーザ光を走査することで文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置に係る。
【0034】
そして、本開示の第11の態様によれば、前記マーキング制御部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記文字の輪郭を形成する走査線を他の走査線よりも優先した順番でUVレーザ光を走査するように、前記レーザ光走査部を制御する。
【0035】
ここで、「文字の輪郭」の語は、広義で用いる。例えば、数字の「0」の場合、文字の輪郭には、「0」の字の内周に沿った内輪郭と、「0」の字の外周に沿った外輪郭と、の双方が含まれる。一方、数字の「1」の場合、文字の輪郭には「外輪郭」のみが含まれることになる。
【0036】
また、ここでいう「優先した順番」とは、複数の走査線の走査順をより早い前半部と、より遅い後半部とに二分したときの、前半部に属することを意味する。本開示の第8の態様によると、文字の輪郭を形成する走査線は、前記前半部に属する順番で走査されることになる。
【0037】
本開示の第11の態様によると、マーキング制御部は、文字の輪郭を基準として、各走査線を走査する順序を決定する。具体的に、文字の輪郭を形成する走査線は、他の走査線よりも優先的に走査される。これにより、外輪郭を形成する走査線が従来よりも早い順番で走査されることになり、より高品質な印字を実現することができる。その結果、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができるようになる。
【0038】
また、本開示の第12の態様によれば、前記マーキング制御部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうちの一部が交差する場合には、2回目以降の交点箇所を無効部分として処理し、前記レーザ光走査部により該無効部分にレーザ光が走査されるときには、非無効部分と比べて微小なレーザ光が出力されるよう、前記レーザ光出力部を制御する、としてもよい。
【0039】
また、本開示の第13の態様によれば、前記レーザマーキング装置は、移動するワークの移動情報を取得する手段を備え、前記マーキング制御部は、前記ワークの移動情報により特定される移動スピード及び移動方向に基づいて、前記太線用印字データを構成する複数の走査線がワークの移動に追従するように、前記レーザ光走査部を制御する、としてもよい。
【0040】
また、本開示の第14の態様は、励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部と、マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データであって、該文字の線要素が太る方向に並んだ複数の該走査線を有する太線用印字データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された印字データに基づいて、レーザ光を該印字データの走査線に沿って走査して文字をマーキングするように前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御するマーキング制御部と、を備えるレーザマーキング装置を用いることで、ワークの表面に文字をマーキングするマーキング方法に係る。
【0041】
そして、本開示の第14の態様によれば、前記マーキング方法は、前記マーキング制御部が前記レーザ光出力部および前記レーザ光走査部を制御することで、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向に隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線に沿ってレーザ光が走査されるように、文字をマーキングする。
【0042】
また、本開示の第15の態様は、励起光に基づいてレーザ光を生成して出力するレーザ光出力部、および、該レーザ光出力部から出力されたレーザ光をワークの表面上で走査するレーザ光走査部を備えるレーザマーカに接続され、該レーザ光走査部によりマーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有する印字データを生成する印字設定装置に係る。
【0043】
そして、本開示の第15の態様によれば、前記印字設定装置は、直交座標系により規定された設定平面を表示する表示手段と、前記表示手段により表示された設定平面上に配置され、マーキングされるべき文字の入力を受け付ける文字入力手段と、前記文字入力手段によって入力された文字の線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する太線用印字データを生成する印字データ生成部と、前記印字データ生成部により生成された太線用印字データを前記レーザマーカに送信する印字データ送信部と、を備え、前記印字データ生成部は、前記太線用印字データを構成する複数の走査線のうち、前記線要素が太る方向において隣合う走査線については、該太線用印字データに対応した文字の線要素の中心線に近接する内側の走査線よりも先に、該内側の走査線と比較して前記中心線から離間する外側の走査線が走査される順番となるように太線用印字データを生成する。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように、本開示によれば、レーザ光を用いた文字のマーキングにおいて、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、レーザマーキングシステムの全体構成を例示する図である。
図2図2は、レーザマーキング装置の概略構成を例示するブロック図である。
図3図3は、印刷装置とマーカヘッドとの置換について説明するための図である。
図4図4は、太線用印字データについて説明する図である。
図5図5は、本実施形態に係る走査順の基本概念について説明する図である。
図6図6は、走査順の第1比較例を示す図である。
図7図7は、走査順の第1実施例を示す図である。
図8図8は、走査順の第2比較例を示す図である。
図9図9は、走査順の第2実施例を示す図である。
図10図10は、走査順の第3実施例を示す図である。
図11図11は、走査順の決定手順を例示するフローチャートである。
図12図12は、走査順に係るユーザインターフェースを例示する図である。
図13図13は、走査順に係るユーザインターフェースを例示する図である。
図14図14は、走査順の決定手順の別例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0047】
すなわち、本実施形態では、UVレーザ光を用いたマーキングの代表例として印字加工(以下、「マーキング」と呼称したり、単に「加工」と呼称したりする)について説明するが、本開示は、図形のマーキング等、複数の走査線からなる任意のマーキングに適用することができる。
【0048】
<全体構成>
図1は、レーザマーキングシステムSの全体構成を例示する図であり、図2は、レーザマーキングシステムSにおけるレーザマーキング装置Lの概略構成を例示する図である。また、図3Aは、印刷装置1001とマーカヘッド1との置換について説明するための図である。
【0049】
図1に例示されるレーザマーキングシステムSは、レーザマーキング装置Lと、これに接続される外部機器400と、レーザマーキング装置Lが取り付けられるとともにワークWを搬送する加工設備500と、を備えている。このうち、図1および図2に例示されるレーザマーキング装置Lは、所定の照射エリアR1に向けてレーザ光を照射することで、ワークWに対して所定の印字パターンPpに対応したマーキングを行うように構成されている。
【0050】
なお、ここでいう照射エリアR1とは、ワークWの表面上に設定される領域であり、後述の設定平面R2に予め対応づけられた印字面に相当する領域である。印字面としての照射エリアR1は、レーザマーキング装置LとワークWとの相対的な位置関係、レーザマーキング装置Lの仕様、ワークWの移動経路等に応じて、種々の形態を取り得る。例えば、2次元平面に沿って移動するワークWの照射エリアR1は、その移動経路に沿った平面となる。一方、3次元空間内を移動するワークWの照射エリアR1は、その移動経路に沿った曲面となり得る。
【0051】
また、以下の記載における印字パターンPpには、ワークWにマーキングされるべき文字のパターンに加え、「:」、「×」、バーコードやQRコード(登録商標)等、ワークWにマーキングされるべき図形のパターンが含まれる。
【0052】
特に、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、ワークWを加工するためのレーザ光として、350nm付近の波長を有するレーザ光を出射することができる。この波長は、紫外線の波長域に含まれる。そのため、以下の記載では、ワークWを加工するためのレーザ光を「UVレーザ光」と呼称して、近赤外線等、他のレーザ光と区別する場合がある。
【0053】
以下、シート状のフィルムによって構成されたワークWをマーキング対象とし、かつ、そのフィルムにUVレーザ光と化学反応するUV反応層Xが含有された場合について説明する。
【0054】
しかしながら、本開示においてマーキング対象として利用可能なワークWは、シート状のフィルムによって構成されたワークWには限定されない。プラスチックフィルムに加え、アルミ層を含んだフィルム、アルミ蒸着層を含んだフィルム、紙層を含んだフィルム等、種々の素材からなるワークWをマーキング対象としてもよい。また、ワークWは、表面層、UV反応層、シーラント層からなる三層構造であってもよい。三層構造では、UV反応層は表面層とシーラント層によって挟み込まれている。表面層は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)や延伸PP(OPP)などを採用してもよい。UV反応層は、例えば、酸化チタンを含有する層を採用してもよい。シーラント層は、例えば、熱溶融接着が可能なポリオレフィンフィルムなどを採用してもよい。その他、付加的に他の層を設け、四層構造や五層構造としてもよい。この場合、ワークWは、シート状の多層フィルムによって構成されることになる。
【0055】
また、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、レーザ光を2次元走査することで、いわゆる2次元印字を行うように構成されているが、このレーザマーキング装置Lは従来品よりも焦点深度が深くなるように構成されているため、いわゆる3次元印字を行うこともできる。そのため、このレーザマーキング装置Lは、3次元的な移動経路に沿って搬送されるワークWさえもマーキング対象とすることができる。
【0056】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、マーカヘッド1と、マーカコントローラ100と、電気ケーブル200と、操作用端末300と、を備えている。
【0057】
このうち、マーカコントローラ100は、印字パターンPpに関する設定を受け付けることができ、マーカヘッド1を制御するためのコントローラとして構成されている。
【0058】
一方、マーカヘッド1は、マーカコントローラ100により制御されることで、照射エリアR1に向けてUVレーザ光を出射することができる。
【0059】
マーカヘッド1およびマーカコントローラ100は、本実施形態においては互いに別体とされており、電気ケーブル200によって接続されている。この電気ケーブル200は、マーカコントローラ100の内部(具体的には、後述の電力供給部105)から外部に電力を伝送する電気配線を少なくとも含む。具体的に、本実施形態に係る電気ケーブル200は、電力を伝送するための電気配線と、アナログ信号、ディジタル信号等を送受するための信号配線と、を束ねることで構成されている。
【0060】
本実施形態に係るマーカヘッド1は、シート状のフィルムにより構成されたワークWを加工対象とした加工設備500上に設置される。この加工設備500は、図3に示すように、マーカヘッド1を支持する支持部材501と、ワークWが巻き掛けられる搬送ローラ502と、を備える。
【0061】
このうち、支持部材501は、図3に示すように、レーザマーキング装置L、特にマーカヘッド1の筐体10を所定の被取付位置に取り付けることができる。図1および図3には、筐体10を上方から吊り下げるように構成された支持部材501が例示されているが、側方等、他の方向から筐体10を支持してもよい。
【0062】
一方、搬送ローラ502は、ワークWの短尺方向に延びる中心軸を有する円筒状に構成されている。この場合、ワークWは、搬送ローラ502の回転によって、所定の移動経路に沿って長尺方向に搬送されることになる。
【0063】
ここで、本実施形態に係る加工設備500は、図3の上図および下図に示すように、本実施形態に係るマーカヘッド1と、レーザ光によるマーキング以外の方式を用いて印刷する印刷装置1001と、の間で共有化されている。
【0064】
すなわち、本実施形態に係るマーカヘッド1は、印刷装置1001を取り付けるべく構成された加工設備500の支持部材501に対し、その印刷装置1001の代わりに取り付けることができるように構成されている。
【0065】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば熱転写式産業用サーマルプリンタ(Thermal Transfer Overprinter:TTO)が挙げられるが、他の印刷装置1001と置換することもできる。
【0066】
マーカヘッド1と置換可能な印刷装置1001としては、例えば、ワークW上の印刷エリアに接触する印刷部1006を露出させてなる印刷面1010dと、該印刷面1010dと相違しかつ支持部材501に接続可能な接続面1010uと、を備える略直方体状に構成された筐体1010を具備するものであればよい。
【0067】
この場合、図3の上図および下図に示すように、接続面1010uに接続可能な支持部材501によって、印刷装置1001と同様にマーカヘッド1が支持されることになる。そうして支持されたマーカヘッド1は、印刷エリア(印刷装置1001において印刷部1006と接触する領域)に対応して設定される照射エリアR1に向けてUVレーザ光を照射することで、ワークWに対してマーキングを行うことになる。
【0068】
一方、操作用端末300は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)およびメモリを有しており、マーカコントローラ100に対し、有線または無線により電気信号を送受可能に接続されている。
【0069】
なお、操作用端末300は、本実施形態ではデスクトップコンピュータまたはラップトップコンピュータ等のパーソナルコンピュータによって構成されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、タッチパネル式のコンソール等、レーザマーキング装置Lに接続可能な専用端末によって操作用端末300を構成してもよい。また、操作用端末300は、例えばマーカコントローラ100に組み込んで一体化することもできる。
【0070】
操作用端末300は、文字のサイズなど、種々の印字条件を設定するとともに、ワークWに対するマーキングに関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。この操作用端末300は、ユーザに情報を表示するための表示部301と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部302と、種々の情報を記憶するための記憶装置303と、を備えている。なお、操作用端末300は、種々の印字条件を設定するための印字設定装置と呼んでもよい。また、マーカヘッド1とマーカコントローラ100を纏めてレーザマーカと呼んでもよい。
【0071】
表示部301は、直交座標により規定された設定平面R2を表示することができる。この表示部301は、本実施形態における「表示手段」の例示である。また、図1に示すように、表示部301により表示された設定平面R2上には、マーキングされるべき文字(以下、「印字パターンPp」という)の入力を受け付ける入力インターフェースIuが配置される。詳細は後述するが、この入力インターフェースIuは、設定平面R2の範囲を示す枠、設定平面R2上での印字パターンPpの位置を示す図形等のユーザインターフェースからなり、操作部302に対する操作入力に基づいて、印字パターンPpの入力を受け付けるとともに、受け付けた印字パターンPpの内容を設定平面R2上に表示することができる。入力インターフェースIuは、本実施形態における「文字入力手段」の例示である。
【0072】
具体的に、表示部301は、液晶ディスプレイ又は有機ELパネルによって構成することができる。操作用端末300をマーカコントローラ100に組み込んだり、タッチパネル式のコンソールを用いたりした場合、マーカコントローラ100またはコンソールに設けられた表示画面を表示部とすることができる。
【0073】
操作部302は、キーボード、ポインティングデバイスによって構成することができる。ポインティングデバイスには、マウス、ジョイスティック等が含まれる。操作用端末300をマーカコントローラ100に組み込んだり、タッチパネル式のコンソールを用いたりした場合、マーカコントローラ100またはコンソールに設けられたスイッチ、ボタン等を操作部とすることができる。
【0074】
前述のように構成される操作用端末300は、ユーザによる操作入力に基づいて、マーキングにおける印字条件を設定することができる。この印字条件には、印字パターンPpの詳細に加え、レーザ光の目標出力(レーザパワー)およびワークW上でのレーザ光の走査速度(スキャンスピード)等が含まれる。
【0075】
操作用端末300により設定される印字条件は、マーカコントローラ100に出力されて、該マーカコントローラ100における記憶部102に記憶される。必要に応じて、操作用端末300における記憶装置303が印字条件を記憶してもよい。
【0076】
外部機器400は、必要に応じてマーカコントローラ100に接続される。図1および図2に示す例では、外部機器400として、搬送速度センサ401およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)402が設けられている。
【0077】
搬送速度センサ401は、例えばロータリエンコーダによって構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ401は、その検出結果を示す信号(検出信号)をマーカコントローラ100へ出力する。マーカコントローラ100は、搬送速度センサ401から入力された検出信号に基づいて、レーザ光の2次元走査等を制御する。
【0078】
PLC402は、例えばマイクロプロセッサによって構成されており、マーカコントローラ100に制御信号を入力することができる。PLC402は、予め定めたシーケンスに従ってレーザマーキングシステムSを制御するために用いられる。
【0079】
レーザマーキング装置Lには、上述した機器および装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を無線または有線で接続することができる。
【0080】
<マーカヘッド1>
図2に示すように、マーカヘッド1は、主たる構成要素として、励起光生成部2と、レーザ光出力部3と、レーザ光走査部4と、を備えている。励起光生成部2は、電気ケーブル200を介してマーカコントローラ100から供給される電力に基づいて、UVレーザ光を励起するための励起光を生成する。レーザ光出力部3は、励起光生成部2によって生成された励起光に基づいてUVレーザ光を生成し、該UVレーザ光を出力する。レーザ光走査部4は、レーザ光出力部3から出力されたUVレーザ光を偏向することで、該UVレーザ光をワークWの表面上で走査する。
【0081】
マーカヘッド1はまた、前述した構成要素、すなわち、励起光生成部2と、レーザ光出力部3と、レーザ光走査部4と、を収容する筐体10を備えている。この筐体10には、レーザ光走査部4によって偏向されたUVレーザ光を透過する出射窓6が形成されている。詳細は省略するが、この筐体10は、略直方体状の外形を有しており、出射窓6が形成された出射面10dと、該出射面10dと相違しかつ支持部材501に接続可能な取付面10uと、を有している。取付面10uは、アタッチメント7を介して支持部材501に接続されている。
【0082】
(励起光生成部2)
励起光生成部2は、電気ケーブル200を介して電力供給部105から電力が供給されるとともに、その電力に応じた励起光を生成するように構成されている。本実施形態に係る励起光生成部2は、例えばレーザダイオード(Laser Diode:LD)で構成された励起光源(不図示)を有している。なお、励起光生成部2、特に励起光源を筐体10内に収容する構成は必須ではなく、マーカコントローラ100内に収容してもよい。
【0083】
(レーザ光出力部3)
レーザ光出力部3は、励起光に基づいて基本波(基本波のレーザ光)を生成する固体レーザ結晶31と、固体レーザ結晶31によって生成された基本波(基本波のレーザ光)に基づいてUVレーザ光を生成する非線形光学結晶32と、を有している。レーザ光出力部3は、マーキング用のレーザ光として、非線形光学結晶32によって生成されたUVレーザ光を出力する。
【0084】
本実施形態では、固体レーザ結晶31を構成するレーザ媒質として、ロッド状のNd:YVO(イットリウム・バナデイト)が用いられている。ロッド状とされた固体レーザ結晶31の一端面からレーザ励起光が入射するとともに、その他端面から基本波長を有するレーザ光(いわゆる基本波)を出射するようになっている(いわゆるエンドポンピングによる1方向励起方式)。本実施形態では、基本波長は1064nmに設定されている。一方、励起光の波長は、誘導放出を促すべく、Nd:YVOの吸収スペクトラムの中心波長付近に設定されている。ただし、この例に限らず、他のレーザ媒質として、例えば希土類をドープしたYAG、YLF、GdVO等を用いることもできる。
【0085】
また本実施形態に係る非線形光学結晶32は、基本波の波長(基本波長)よりも高い波長を有する第2高調波を生成する第1波長変換素子(不図示)と、その第2高調波よりも高い波長を有する第3高調波を生成する第2波長変換素子(不図示)と、を組合わせて構成されている。
【0086】
第2高調波は、基本波の周波数を2倍にしたものである。第2高調波の波長は、本実施形態では532nmに設定されている。第2高調波は、基本波の周波数を3倍にしたものである。第3高調波の波長は、本実施形態では355nmに設定されており、紫外域に収まるように設定されている。
【0087】
なお、本実施形態では、第1波長変換素子および第2波長変換素子としてLBO(LiB)が用いられている。ただし、LBO(LiB)に限らず、第1波長変換素子および/または第2波長変換素子として、種々の有機非線形光学材料、無機非線形光学材料等を利用することができる。
【0088】
(レーザ光走査部4)
レーザ光走査部4は、いわゆる2軸(X軸およびY軸)式のガルバノスキャナを用いて構成されており、Yスキャナとしての第1スキャナ41と、Xスキャナとしての第2スキャナ42と、を有している。
【0089】
第1スキャナ41は、レーザ光出力部3によって生成されたUVレーザ光を反射する第1ミラー41aを有している。第2スキャナ42は、第1ミラー41aによって反射されたUVレーザ光を反射する第2ミラー42aを有している。
【0090】
レーザ光走査部4は、予め作成された印字データにしたがって第1ミラー41aおよび第2ミラー42aを駆動することで、照射エリアR1に向かって照射されるように、レーザ光出力部3によって生成されたUVレーザ光を偏光する。そうして偏向されたUVレーザ光は、出射窓6を透過して照射エリアR1に照射される。
【0091】
<マーカコントローラ100>
図4は、太線用印字データDfについて説明する図である。図5は、本実施形態に係る走査順の基本概念について説明する図である。図2に示すように、マーカコントローラ100は、印字条件の設定を受け付ける受付部101と、その印字条件を記憶する記憶部102と、印字条件に含まれる印字パターンPpに基づいて印字データDpを生成する印字データ生成部103と、印字データDpに基づいてマーカヘッド1を制御するマーキング制御部104と、マーカヘッド1に電力を供給する電力供給部105と、を備えている。
【0092】
なお、これらの要素のうちの1つ以上を操作用端末300(印字設定装置)またはマーカヘッド1に設けてもよい。例えば、操作用端末300内に印字データ生成部103を実装してもよいし、マーカヘッド1内に電力供給部105を設けてもよい。
【0093】
(受付部101)
受付部101は、操作用端末300を介して設定された印字条件を受け付けるとともに、受け付けた印字条件を記憶部102および/または印字データ生成部103に出力するように構成されている。
【0094】
具体的に、本実施形態に係る受付部101は、操作用端末300と電気的に接続されており、表示手段としての表示部301上に設定平面R2を表示するとともに、その設定平面R2上に、文字入力手段としての入力インターフェースIuを配置する。
【0095】
受付部101は、入力インターフェースIuを通じて入力された内容を各印字条件に反映し、反映後の印字条件を記憶部102および/またはマーキング制御部104に出力することができる。
【0096】
(記憶部102)
記憶部102は、受付部101によって受け付けられた印字条件を一時的にまたは継続的に記憶するとともに、必要に応じて、記憶された印字条件を印字データ生成部103、マーキング制御部104、表示部301等へ出力するように構成されている。
【0097】
具体的に、本実施形態に係る記憶部102は、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等の不揮発メモリ、あるいは、揮発性メモリによって構成されており、印字設定を示すデータを一時的にまたは継続的に記憶することができる。
【0098】
(印字データ生成部103)
印字データ生成部103は、文字入力手段としての入力インターフェースIuが受け付けた印字パターンPpに基づいて、直交座標により規定された設定平面R2に対応付けて印字データDpを生成する。この印字データDpは、マーキングされるべき文字の線要素に沿った走査線を有するデータである。文字の太線化を伴う場合、印字データDpは、いわば「太線化印字データ」と呼ぶことができる。太線化印字データDfとしての印字データDpは、前記線要素が太る方向に並んだ複数の走査線を有する。
【0099】
具体的に、本実施形態に係る印字データ生成部103は、入力インターフェースIuによって入力が受け付けられた印字パターンPpの文字サイズに応じて、その印字パターンPpが太線化されるように、該印字パターンPpの走査方向と直交する方向である文字幅方向に複数の走査線を並べてなる印字データDpを生成する。本明細書における「文字幅方向」とは、あくまでも各走査線と直交する方向を意味するものであり、左右方向、上下方向、斜め方向等、走査線の各部において様々な方向となり得るものである。ここでいう「文字幅方向」は、各文書における文字の並び方向、または、当該並び方向に直交する方向等、特定の一方向を意味するものではない。換言すれば、印字パターンPpの走査方向と直交する方向とは、当該印字パターンDpに対応した文字をなす線要素の各中心線と直交する方向であって、その文字の線要素が太る方向の一例であると言える。
【0100】
なお、ここでいう走査線とは、ワークWの表面(特に、照射エリアR1内の表面)上でのUVレーザ光の照射位置の軌跡を指す。この走査線は、印字パターンPpに対応して設定されるものであり、印字パターンPpに応じて走査線の形状が変化するとともに、印字パターンPpの文字の形態および太さに応じて走査線の本数が変化することになる。本実施形態に係る印字データDpには、走査線の本数と、各走査線の形状と、を示すデータが含まれる。
【0101】
例えば図4の左図に示すように、可能な限り細線化された小文字の「l」を印字パターンPpに設定した場合、走査線の本数は1本となり、その走査線の形状は縦線となる。この場合、印字パターンPpの走査方向は、走査線が延びる方向(紙面縦方向)となる。
【0102】
一方、図4の中央図に示すように、ある程度太線化された小文字の「l」を印字パターンPpに設定した場合、走査線の本数は例えば奇数本となり、各走査線の形状は縦線となる。この場合、奇数本の走査線は、互いに略平行に延びる。また、奇数本の走査線のうち真ん中の1本は、文字の線要素の中心線(以下、単に「文字の中心線」ともいう)Mcと略一致することになる。この場合、印字パターンPpの走査方向は、走査線が延びる方向(紙面縦方向)となり、走査線の並び方向である文字幅方向は、走査線が延びる方向に直交する方向(紙面横方向)となる。
【0103】
あるいは、図4の右図に示すように、走査線の本数を偶数本としてもよい。この場合、文字の中心線Mcは、偶数本の走査線のうち中央の2本の走査線の間を延びることになる。図4の右図に示すように、中心線Mcは走査線と一致するとは限らない。
【0104】
以下、印字データDpのうち、太線化された印字パターンPpに対応した印字データDp、つまり、走査線の本数が複数本となる印字データDpを「太線用印字データ」と呼称し、これに符号「Df」を付す場合がある。以下、印字データDpとして太線用印字データDfが生成される場合について説明を進める。
【0105】
印字データ生成部103によって生成された太線用印字データDfは、記憶部102に記憶されるか、マーキング制御部104に直に入力される。
【0106】
(マーキング制御部104)
マーキング制御部104は、印字データ生成部103により生成された印字データDpに基づいてレーザ光出力部3およびレーザ光走査部4を制御することで、印字面としての照射エリアR1上に配置されたワークWに対し、UVレーザ光を用いたマーキングを行うように構成されている。
【0107】
例えば印字データDpとして太線用印字データDfが生成された場合、マーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する各走査線の本数と、各走査線の形状と、を読み込む。そして、複数の走査線を、所定の走査順(各走査線を走査する順番)にしたがって、印字面上で1本ずつ順番に走査する。
【0108】
一般に、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち、前述の線要素が太る方向(文字幅方向Dw)に隣合う走査線は、文字の中心線Mcに相対的に近接する(または、中心線Mcと略一致する)内側の走査線(以下、「内側走査線」という)Liと、内側走査線Liと比較して中心線Mcから相対的に離間する外側の走査線(以下、「外側走査線」という)Loと、に区分することができる。文字幅方向Dwは、本実施形態では中心線Mcと直交する方向として定義されている。
【0109】
ここで、図5に示すように、印字パターンPpとして小文字の「o」が入力され、かつその印字パターンPpに対応した太線用印字データDfとして、円形状を有する第1走査線La、第1走査線Laよりも小径の円形状を有する第2走査線Lb、および、第2走査線Lbよりも小径の円形状を有する第3走査線Lcが設定された場合を考える。
【0110】
第1走査線Laは文字の外輪郭を形成し、第2走査線Lbは文字の中心線Mcに沿って延び、第3走査線Lcは文字の内輪郭を形成する。また、第1走査線La、第2走査線Lbおよび第3走査線Lcが有する円形状は、閉曲線に他ならない。このように、太線用印字データDfを構成する複数の走査線には、文字の輪郭(内輪郭または外輪郭)を形成する走査線が含まれてもよいし、文字の中心線に沿って延びる走査線が含まれてもよいし、円形状等の閉曲線が含まれてもよい。
【0111】
この場合、第1走査線La、第2走査線Lbおよび第3走査線Lcのうち、第1走査線Laと第2走査線Lbとが隣接し、第2走査線Lbと第3走査線Lcとが隣接することになる。
【0112】
2通りのペアのうち、第1走査線Laおよび第2走査線Lbのペアについては、第1走査線Laが外側走査線Loに相当し、第2走査線Lbが内側走査線Liに相当する。また、第2走査線Lbおよび第3走査線Lcのペアについては、第2走査線Lbが内側走査線Liに相当し、第3走査線Lcが外側走査線Loに相当する。
【0113】
なお、外側走査線Loおよび内側走査線Liの振り分けは、走査線の本数およびペアの内訳に応じて変化する。例えば、第1走査線Laよりもさらに外側に第4走査線(不図示)が存在する場合、その第4走査線および第1走査線Laのペアについては、第4走査線が外側走査線Loに相当し、第1走査線Laが内側走査線Liに相当することになる。
【0114】
そして、本実施形態に係るマーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち、文字幅方向Dwにおいて隣合う走査線の各ペアについては、内側走査線Liよりも先に外側走査線Loに沿ってUVレーザ光を走査するように、レーザ光走査部4を制御する。
【0115】
図5に示す例では、マーキング制御部104は、第1走査線Laおよび第3走査線Lcのうちの一方に沿ってUVレーザ光を走査した後、第1走査線Laおよび第3走査線Lcのうちの他方に沿ってUVレーザ光を走査する。その後、マーキング制御部104は、残りの第2走査線Lbに沿ってUVレーザ光を走査する。
【0116】
こうした走査順については、太線用印字データDfの生成に際して印字データ生成部103が決定し、太線用印字データDfと関連付けて、または、太線用印字データDfの一要素として記憶部102等に記憶させてもよい。あるいは、UVレーザ光の走査に際し、マーキング制御部104が、その都度、走査順を決定してもよい。
【0117】
また、本実施形態に係るマーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち、該太線用印字データDfに対応した文字の輪郭を形成する走査線から順にUVレーザ光を走査するように、レーザ光走査部4を制御する。
【0118】
具体的に、図5に示す例では、文字の輪郭を形成する走査線として第1走査線Laおよび第3走査線Lcから順にUVレーザ光が走査されるようになっている。これに代えて、第1走査線Laが文字の外輪郭の若干内側に位置し、かつ第3走査線Lcが文字の内輪郭の若干内側に位置する場合において、例えば、第1走査線Laよりもさらに外側に、文字の外輪郭に一致する第4走査線(不図示)が存在する場合を考える。
【0119】
この場合、マーキング制御部104は、第1走査線Laおよび第3走査線Lcよりも先に、外輪郭に一致する第4走査線から順にUVレーザ光を走査することになる。第3走査線Lcよりもさらに内側に、文字の内輪郭に一致する第5走査線(不図示)が存在する場合も同様である。この場合、マーキング制御部104は、第1走査線Laおよび第3走査線Lcよりも先に、内輪郭に一致する第5走査線から順にUVレーザ光を走査することになる。
【0120】
また、マーキング制御部104は、複数の走査線に閉曲線が含まれかつ該閉曲線に沿ってUVレーザ光が走査される場合には、該閉曲線の始点と終点との間に隙間を設けるようにレーザ光走査部4を制御する。
【0121】
具体的に、図5に示す例では、円形状の第1走査線La、第2走査線Lbおよび第3走査線Lcが閉曲線に該当する。この場合、第1走査線Laに対応した円形の始点と終点との間に隙間Gpが設けられることになる。なお、ここでは閉曲線の始点と終点との間に隙間を設けるよう構成したが、必ずしもこの隙間を設けなくてもよい。また、UVレーザ光のON/OFFを調整することで、隙間Gpの幅も調整可能である。
【0122】
また、マーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のそれぞれにおいて、文字の端部を構成する部分が分断されるように、前記レーザ光走査部4を制御する。
【0123】
例えば、図5に示す小文字の「o」の場合、そもそも、文字の端部を定義することができないが、図4に示す小文字の「l」の場合、「l」の上端部および下端部が、文字の端部に相当する。
【0124】
そして、本実施形態に係るマーキング制御部104は、複数の走査線のそれぞれについて、「l」の上端部および下端部に相当する部分を断絶させる。言い換えると、「l」の上端部および下端部は、双方とも、1筆書きではなく、2本以上の走査線で構成されることになる。この構成については、後述の実施例2-3および実施例2-4を参照して説明する。
【0125】
また、本実施形態に係るマーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち、文字の輪郭を形成する走査線を他の走査線よりも優先した順番でUVレーザ光を走査するようにレーザ光走査部4を制御する、と構成することもできる。
【0126】
ここで、数字「0」のようにマーキング対象とされた文字が外輪郭と内輪郭とを有する場合、マーキング制御部104は、外輪郭および内輪郭のうちの一方を形成する走査線を一番目に走査し、外輪郭および内輪郭のうちの他方を形成する走査線を二番目に走査することが好ましい。
【0127】
一方、数字「1」のようにマーキング対象とされた文字が外輪郭のみを有する場合、マーキング制御部104は、外輪郭を形成する走査線を一番目に走査することが好ましい。外輪郭を形成する走査線を二番目以降に走査してもよい。
【0128】
また、マーキング制御部104は、太線用印字データを構成する複数の走査線のうちの一部が交差する場合には、2回目以降の交点箇所を無効部分として処理し、レーザ光走査部4により該無効部分にレーザ光が走査されるときには、非無効部分と比べて微小なレーザ光が出力されるよう、レーザ光出力部3を制御してもよい。なお、ここでいう「微少なレーザ光」とは、相対的に小さなレーザパワーを有するレーザ光を指す。
【0129】
また、ワークWが移動する場合、(ユーザ入力または自動的に)ワークの移動情報が入力される。例えば、ワークの移動スピードやワークの移動方向、エンコーダ入力パルスなどである。或いは、印字タイミングを特定するトリガや、印字タイミングを遅延させるトリガディレイ等が含まれていてもよい。マーキング制御部104は、少なくとも、ワークの移動情報により特定される移動スピード及び移動方向に基づいて、太線用印字データを構成する複数の走査線がワークの移動に追従するように、レーザ光走査部4を制御してもよい。
【0130】
以下、様々な印字パターンPpについて、走査順および隙間Gp等の具体例を示す。
【0131】
-走査順の第1比較例および第1実施例-
図6は、走査順の第1比較例を示す図である。図7は、走査順の第1実施例を示す図である。ここでは、印字パターンPpとして数字の「0」が入力され、かつその印字パターンPpに対応した太線用印字データDfとして、文字幅方向Dwに並んだ5本の走査線が設定された場合を考える。
【0132】
5本の走査線は、数字「0」の外輪郭に近接する走査線から順に、第1走査線Le11、第2走査線Le12、第3走査線Le13、第4走査線Le14および第5走査線Le15と呼称することができる。5本の走査線のうち、第3走査線Le13が文字の中心線(図示省略)と略一致し、第1走査線Le11が文字の外輪郭と略一致し、第5走査線Le15が文字の内輪郭と略一致することになる。また、第1走査線Le11~第5走査線Le15は、全て閉曲線となる。
【0133】
図6に示すように、従来知られた走査順の場合、文字の中心線に近接する走査線から順番に走査するか、あるいは、文字の内輪郭に近接する走査線から順番に走査することになる。
【0134】
前者の走査順(比較例1-1)を採用した場合、マーキング制御部104は、第3走査線Le13、第2走査線Le12、第4走査線Le14、第1走査線Le11、および、第5走査線Le15の順番でUVレーザ光を走査することになる。その際、第2走査線Le12および第4走査線Le14の走査順、ならびに、第1走査線Le11および第5走査線Le15の走査順は、それぞれ入替可能である。
【0135】
後者の走査順(比較例1-2)を採用した場合、マーキング制御部104は、第5走査線Le15、第4走査線Le14、第3走査線Le13、第2走査線Le12、および、第1走査線Le11の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0136】
一方、本実施形態に係る走査順の場合、第1走査線Le11および第2走査線Le12のペアにおいては第1走査線Le11が先に走査され、第2走査線Le12および第3走査線Le13のペアにおいては第2走査線Le12が先に走査され、第3走査線Le13および第4走査線Le14のペアにおいては第4走査線Le14が先に走査され、第4走査線Le14および第5走査線Le15のペアにおいては第5走査線Le15が先に走査されることになる。
【0137】
本実施形態に係る走査順の一例(実施例1-1)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le11、第5走査線Le15、第2走査線Le12、第4走査線Le14、および、第3走査線Le13の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0138】
また、本実施形態に係る走査順の別例(実施例1-2)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le11、第2走査線Le12、第5走査線Le15、第4走査線Le14、および、第3走査線Le13の順番でUVレーザ光を走査することになる。また、第1走査線Le11~第5走査線Le15は全て閉曲線となることから、実施例1-2では、第1走査線Le11~第5走査線Le15の始点と終点との間に隙間Gpが設けられるようになっている。
【0139】
実施例1-1および実施例1-2の例に限らず、前述した各ペアの優先順位を満たすような順番であれば、任意の走査順を採用することができる。
【0140】
-走査順の第2比較例および第2実施例-
図8は、走査順の第2比較例を示す図である。図9は、走査順の第2実施例を示す図である。ここでは、印字パターンPpとして数字の「1」が入力され、かつその印字パターンPpに対応した太線用印字データDfとして、文字幅方向Dwに並んだ3本の走査線が設定された場合を考える。
【0141】
3本の走査線は、数字「1」の外輪郭に近接する走査線から順に、第1走査線Le21、第2走査線Le22および第3走査線Le23と呼称することができる。3本の走査線のうち、第3走査線Le23が文字の中心線(図示省略)と略一致し、第3走査線Le23が文字の外輪郭と一致することになる。また、3本の走査線のうち、第1走査線Le21と第2走査線Le22は、どちらも閉曲線となる。
【0142】
図9に示すように、従来知られた走査順の場合、文字の中心線に近接する走査線から順番に走査することになる。
【0143】
そうした走査順(比較例2)を採用した場合、マーキング制御部104は、第3走査線Le23、第2走査線Le22および第1走査線Le21の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0144】
一方、本実施形態に係る走査順の場合、第1走査線Le21および第2走査線Le22のペアにおいては第1走査線Le21が先に走査され、第2走査線Le22および第3走査線Le23のペアにおいては第2走査線Le22が先に走査されることになる。
【0145】
本実施形態に係る走査順の一例(実施例2-1)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le21、第2走査線Le22、および、第3走査線Le23の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0146】
本実施形態に係る走査順の別例(実施例2-2)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le21、第3走査線Le23、および、第2走査線Le22の順番でUVレーザ光を走査することになる。この場合、マーキング制御部104は、他の走査線(第2走査線Le22および第3走査線Le23)よりも優先的に、文字の輪郭を形成する第1走査線Le21に沿ってUVレーザ光を走査することになる。
【0147】
また、数字の「1」は、数字の「0」と異なり文字の端部を定義することができる。実施例2-3の破線に示すように、第1走査線Le21および第2走査線Le22は、それぞれ、「1」の上端部および下端部にて2本に分断されている。
【0148】
したがって、本実施形態に係る走査順の別例(実施例2-3)を採用した場合、マーキング制御部104は、2分された第1走査線Le21の一方、2分された第1走査線Le21の他方、2分された第2走査線Le22の一方、2分された第2走査線Le22の他方、および、第3走査線Le23の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0149】
なお、第1走査線Le21および第2走査線Le22を両方とも2本に分断することは必須ではなく、少なくとも1つ以上の走査線を2本に分断すればよい。
【0150】
第1走査線Le21および第2走査線Le22のうち、第2走査線Le22のみを2本に分断した場合、走査順のさらなる別例(実施例2-4)における破線に示すように、マーキング制御部104は、第1走査線Le21、2分された第2走査線Le22の一方、2分された第2走査線Le22の他方、および、第3走査線Le23の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0151】
-走査順の第3実施例-
図10は、走査順の第3実施例を示す図である。ここでは、印字パターンPpとして数字の「8」が入力され、かつその印字パターンPpに対応した太線用印字データDfとして、9本の走査線が設定された場合を考える。
【0152】
9本の走査線は、数字「8」の外輪郭に近接する走査線から順に、第1走査線Le31、第2走査線Le32、第3走査線Le33、第4走査線Le34、第5走査線Le35、第6走査線Le36、第7走査線Le37、第8走査線Le38および第9走査線Le39と呼称することができる。
【0153】
9本の走査線のうち、第1走査線Le31および第2走査線Le32は、数字「8」の上半部と下半部に共通である。第3走査線Le33、第6走査線Le36および第8走査線Le38は、数字「8」の上半部を構成する。第4走査線Le34、第7走査線Le37および第9走査線Le39は、数字「8」の下半部を構成する。また、第5走査線Le35は、前記上半部の第3走査線Le33と、前記下半部の第4走査線Le34と、を接続する走査線である。
【0154】
また、9本の走査線のうち、第3走査線Le33、第4走査線Le34および第5走査線Le35が文字の中心線Mcと略一致し、第1走査線Le31が文字の外輪郭と略一致し、第8走査線Le38が前記上半部の内輪郭と略一致し、第9走査線Le39が前記下半部の内輪郭と略一致することになる。また、第3走査線Le33、第4走査線Le34および第5走査線Le35以外の走査線は、閉曲線となる。
【0155】
本実施形態に係る走査順の場合、第1走査線Le31および第2走査線Le32のペアにおいては第1走査線Le31が先に走査され、第2走査線Le32および第3走査線Le33のペアにおいては第2走査線Le32が先に走査され、第2走査線Le32および第4走査線Le34のペアにおいては第2走査線Le32が先に走査され、第3走査線Le33および第6走査線Le36のペアにおいては第6走査線Le36が先に走査され、第4走査線Le34および第7走査線Le37のペアにおいては第7走査線Le37が先に走査されることになる。
【0156】
また、第5走査線Le35および第6走査線Le36のペアにおいては第6走査線Le36が先に走査され、第5走査線Le35および第7走査線Le37のペアにおいては第7走査線Le37が先に走査され、第6走査線Le36および第8走査線Le38のペアにおいては第8走査線Le38が先に走査され、第7走査線Le37および第9走査線Le39のペアにおいては第9走査線Le39が先に走査されることになる。
【0157】
本実施形態に係る走査順の一例(実施例3-1)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le31、第8走査線Le38、第9走査線Le39、第2走査線Le32、第6走査線Le36、第7走査線Le37、第3走査線Le33、第4走査線Le34および第5走査線Le35の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0158】
また、本実施形態に係る走査順の別例(実施例3-2)を採用した場合、マーキング制御部104は、第1走査線Le31、第2走査線Le32、第8走査線Le38、第6走査線Le36、第3走査線Le33、第9走査線Le39、第7走査線Le37、第4走査線Le34および第5走査線Le35の順番でUVレーザ光を走査することになる。
【0159】
(電力供給部105)
電力供給部105は、マーキング制御部104から出力された制御信号に基づいて、励起光生成部2に駆動電流を供給する。詳細は省略するが、電力供給部105は、マーキング制御部104から入力された目標出力に基づいて駆動電流を決定し、そうして決定した駆動電流を、電気ケーブル200を介して励起光生成部2へ供給する。電力供給部105の詳細は省略する。
【0160】
<レーザマーキング装置Lの主要処理およびユーザインターフェースについて>
図11は、走査順の決定手順を例示するフローチャートである。また、図12および図13は、それぞれ、走査順に係るユーザインターフェースを例示する図である。以下、レーザマーキング装置Lの主要処理およびユーザインターフェースについて、図11図13を参照しながら説明する。
【0161】
まず、図11のステップS1で、マーカコントローラ100は、表示部301上に設定平面R2を表示させるとともに、その設定平面R2上に、印字パターンPpの入力を受け付ける入力インターフェースIuを配置する。
【0162】
ステップS1に際し、表示部301には、例えば図12および図13に示すような表示画面が表示される。図12および図13において、第1インターフェースIは、印字内容(印字パターンPp)の入力を受け付けるべく、設定平面R2が配置された入力画面を表示するための切替タブである。また、第2インターフェースIは、印字パターンPpの位置調整を受け付けるべく、設定平面R2を拡大表示するための切替タブであり、第3インターフェースIは、印字パターンPpの詳細設定を入力するための入力欄等が配置された入力画面を表示するための切替タブである。図12は第1インターフェースIが選択された状態に相当し、図13は第2インターフェースIが選択された状態に対応する。
【0163】
また、図12の画面右上に表示された第4インターフェースIは、複数の印字パターンPpをひとまとめにしてなる印字ブロックに割り振られた識別番号(ブロックNo.)を表示するとともに、その識別番号を介して印字パターンPpを切り替えるためのユーザインターフェースである。
【0164】
また、図12の画面左側に表示された第5インターフェースIは、レーザマーキング装置Lの動作を停止させるためのボタンであり、第6インターフェースIは、印字パターンPpよりも早いタイミングで決定されるべき設定項目の入力画面に遷移させるためのボタンであり、第7インターフェースIは、印字パターンPpの内容を記憶部102等に保存させるためのボタンである。
【0165】
また、図12の画面中央部から右側にかけて表示された第8インターフェースIは、印字内容(印字パターンPp)の入力を受け付ける入力欄であり、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。
【0166】
また、第8インターフェースIの画面左側には、設定平面R2によって構成された第9インターフェースIが表示される。この第9インターフェースIは、印字パターンPpのレイアウトを表示する表示欄として機能するものであり、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。
【0167】
また、図12において、第9インターフェースIの画面下側には、印字パターンPpの文字サイズの入力を受け付ける第10インターフェースI10と、印字パターンPpの文字幅の入力を受け付ける第11インターフェースI11と、印字パターンPpを構成する文字の太さの入力を受け付ける第12インターフェースI12と、が表示される。
【0168】
一方、図13には、図12に示した状態よりも拡大表示された第9インターフェースIが表示される。図13における第9インターフェースIには、位置調整の対象となった印字パターンPpを示す第13インターフェースI13と、位置調整の目安となる十字線を示す第14インターフェースI14と、が表示される。第13インターフェースI13は、本実施形態における入力インターフェースIuを構成している。
【0169】
また、図13において、第9インターフェースIの画面右側には、設定平面R2内で印字ブロックを移動させるための第15インターフェースI15と、印字ブロック全体の幅を調整するための第16インターフェースI16と、印字ブロック全体の高さを調整するための第17インターフェースI17と、が表示される。
【0170】
第1インターフェースI~第17インターフェースI17は、いずれも、操作部302を介した入力を受け付けるように構成されている。
【0171】
続いて、図11のステップS2で、マーカコントローラ100は、図12および図13に示すような入力インターフェースIuを介して、印字パターンPpの入力を受け付ける。その際、マーカコントローラ100は、文字の太さ等、印字データDpを構成する他の設定も受け付ける。
【0172】
続くステップS3では、印字データ生成部103が、ステップS2で受け付けられた印字パターンPpに基づいて、設定平面R2に対応付けられた印字データDpを生成する。このステップS3では、印字データ生成部103は、文字の太さ等の設定に応じて、印字データDpとして太線用印字データDfを生成する。
【0173】
続くステップS4では、図5を用いて説明したように、印字データ生成部103またはマーキング制御部104が、文字の中心線Mcに対する各走査線の位置関係を判定する。具体的に、このステップS4では、印字データ生成部103またはマーキング制御部104は、複数の走査線のうち、隣合う走査線を外側走査線Loおよび内側走査線Liに分類する。
【0174】
続くステップS5では、印字データ生成部103またはマーキング制御部104は、内側走査線Liよりも外側走査線Loが先に走査されるように、走査順を決定する。
【0175】
続くステップS6では、マーキング制御部104は、ステップS5で決定された走査順にしたがって、各走査線に沿ってUVレーザ光を走査する。
【0176】
前述のように、ワークWを構成するシート状のフィルムには、UVレーザ光と化学反応するUV反応層Xが含有されている。UV反応層Xが含有されたワークW上でUVレーザ光を走査することで、照射エリアR1としての印字面には、印字パターンPpに対応したマーキングが施されることになる。そうしたワークWに適した印字条件として、本実施形態に係るレーザ光出力部3は、0.8W以上1.6W以下の範囲内でUVレーザ光のレーザパワーを調整するようになっている。なお、0.8W以上1.6W以下の範囲は、好ましい一例であって、この範囲の外に調整されてもよい。
【0177】
UV反応層Xが含有されたワークWの一例として、一般的なラミネートフィルムをマーキング対象とした場合の種パラメータを表1に示す。表1において、第1列の「No.」は各実施例を識別するための番号を示す。表1では、実施例A~実施例Cと、比較例D~比較例Gが例示されている。
【0178】
また、第2列の「走査速度」はUVレーザ光のスキャンスピードを示し、第3列の「周波数」はQスイッチ周波数を示し、第4列の「レーザパワー」は前述したUVレーザ光のレーザパワーを示し、第5列の「dotサイズ」はワークW表面上でのUVレーザ光のスポット径を示し、第6列の「dot間隔」はワークW表面上でのUVレーザ光のスポット間隔を示し、第7列の「1dotパワー密度」は1スポットあたりのUVレーザ光のパワー密度を示し、第8列の「1ラインパワー密度」は1走査線あたりのUVレーザ光のパワー密度(より詳細には、1dotパワー密度に単位長さあたりのスポット数を乗算した数値)を示す。第2列~第8列に示すパラメータは、前述した印字条件として事前設定可能なパラメータである。
【0179】
そして、第7列は、UVレーザ光がワークWに与えるダメージの大小を示す。「GOOD」はダメージが相対的に小さいことを示し、「BAD」はダメージが相対的に大きいことを示す。また、第8列は、ワークWに施されるマーキングの視認性の優劣を示す。「GOOD」は視認性が相対的に優れることを示し、「BAD」は視認性が相対的に劣ることを示す。
【0180】
表1に示すように、実施例A~Cはダメージおよび視認性の双方に優れ、比較例D~Gはダメージおよび視認性のいずれか一方に劣る。詳しくは、比較例Dのように1dotパワー密度が高い場合、ワークWに与えるダメージは相対的に大きくなるため、1dotパワー密度[mW/mm2]を80以下に設定することが好ましい。
【0181】
また、比較例Eのように1ラインパワー密度が高い場合、ワークWに与えるダメージは相対的に大きくなるため、1ラインパワー密度[mW/mm]を510以下に設定することが好ましい。
【0182】
また、比較例Fのように1dotパワー密度が低い場合、発色が薄くなって視認性に劣るため、1dotパワー密度[mW/mm2]を1.2以上に設定することが好ましい。
【0183】
また、比較例Gのように1ラインパワー密度が低い場合、発色が薄くなって視認性に劣るため、1ラインパワー密度[mW/mm]を20以上に設定ることが好ましい。
【0184】
以上に鑑みて、本願発明者らは、UV反応層Xが含有されたワークWに好適な印字条件として、1dotパワー密度[mW/mm2]を1.2以上80以下の範囲内に設定し、かつ、1ラインパワー密度[mW/mm]を20以上510以下の範囲内に設定することを見出した。表1から明らかなように、前記実施例A~実施例Cに係る1dotパワー密度および1ラインパワー密度は、いずれも、これらの範囲内に収まるように設定されている。
【0185】
【表1】
【0186】
<太線印字の高品質化について>
以上説明したように、本実施形態によれば、マーキング制御部104は、文字の中心線Mcを基準として、各走査線の走査順を決定する。具体的に、隣接する2本の走査線については、中心線Mcから離れた外側走査線Loが先に走査される(図5参照)。これにより、外輪郭を形成する走査線が従来よりも早い順番で走査されることになり、より高品質な印字を実現することができる。その結果、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができるようになる。
【0187】
また、図7図9および図10に示したように、マーキング制御部104は、太線用印字データDfを構成する複数の走査線のうち、文字の外輪郭を形成する走査線を優先的に走査する。これにより、文字の輪郭を高品質で印字することができ、ひいては、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現する上で有利になる。
【0188】
また、表1を参照して説明したように、本実施形態に係るレーザマーキング装置Lは、UV反応層Xが含有されたフィルムへの印字に適したものとして構成することができる。
【0189】
また、図6に示したように、マーキング制御部104は、文字の端部に対応する部分の走査線を分断し、UVレーザ光の照射対象から除外する。一般に文字の端部は縮退が生じ易いため、そのような部分をUVレーザ光の照射対象から除外することで、太線印字の品質を高める上で有利になる。
【0190】
また、図5に示したように、内輪郭などを形成する閉曲線が走査線に含まれる場合、マーキング制御部104は、その閉曲線の始点と終点とを直に接続せず、その間に隙間Gpを設ける。これにより、デラミネーションの発生等を抑制し、ひいては太線印字の品質を高める上で有利になる。
【0191】
また、図9等に示したように、マーキング制御部104は、文字の輪郭を基準として、各走査線を走査する順序を決定する。具体的に、図9の第1走査線Le21等、文字の輪郭を形成する走査線は、他の走査線よりも優先的に走査される。これにより、外輪郭を形成する走査線が従来よりも早い順番で走査されることになり、より高品質な印字を実現することができる。その結果、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができるようになる。
【0192】
≪他の実施形態≫
前記実施形態では、文字の中心線Mcに基づいた走査順の設定手順について、図11を参照して説明したが、本開示は、図11に示すフローには限定されない。図14に示すフローに基づいて走査順を設定することもできる。
【0193】
例えば、図9に示すような数字「1」を印字パターンPpとした場合、その太線化の際には、第3走査線Le23のみからなる単線データ(1本の走査線からなる印字データDp)から外側に向けて第2走査線Le22および第1走査線Le21の順で走査線が追加されていくことになる。本開示に係るマーキング制御部104は、そうした走査線の追加順と逆順となるように、走査順を設定することができる。この場合、走査されるタイミングが早いものから順に、第1走査線Le21、第2走査線Le22および第3走査線Le23の順番で各走査線が走査されていくことになる。この走査順は、実施例2-1に示した走査順と一致し、かつ、文字の輪郭を形成する走査線(第1走査線Le21)を優先した走査順となる。
【0194】
また、例えば図7に示すような数字「0」を印字パターンPpとした場合、その太線化の際には、第3走査線Le13のみからなる単線データから、例えば、第4走査線Le14、第2走査線Le12、第5走査線Le15および第1走査線Le11の順番で走査線が追加されていくことになる。本開示に係るマーキング制御部104は、そうした走査線の追加順と逆順となるように、走査順を設定することができる。この場合、走査されるタイミングが早いものから順に、第1走査線Le11、第5走査線Le15、第2走査線Le12、第4走査線Le23および第3走査線Le13の順番で、各走査線が走査されていくことになる。この走査順は、実施例1-1に示した走査順と一致する。
【0195】
図14は、走査順の決定手順の別例を示すフローチャートである。
【0196】
まず、図14のステップS101で、マーカコントローラ100は、表示部301上に設定平面R2を表示させるとともに、その設定平面R2上に、印字パターンPpの入力を受け付ける入力インターフェースIuを配置する。
【0197】
続いて、図14のステップS102で、マーカコントローラ100は、図12および図13に示すような入力インターフェースIuを介して、印字パターンPpの入力を受け付ける。その際、マーカコントローラ100は、文字の太さ等、印字データDpを構成する他の設定も受け付ける。
【0198】
続くステップS103では、印字データ生成部103が、ステップS102で受け付けられた印字パターンPpに基づいて、設定平面R2に対応付けられた印字データDpを生成する。このステップS103では、印字データ生成部103は、文字の太さ等の設定に応じて、単線データから外側に向けて走査線を追加することで太線用印字データDfを生成する。
【0199】
続くステップS104では、図5を用いて説明したように、印字データ生成部103またはマーキング制御部104が、ステップS103で用いた走査線の追加順と逆順になるように走査順を決定する。
【0200】
続くステップS105では、マーキング制御部104は、ステップS104で決定された走査順にしたがって、各走査線に沿ってUVレーザ光を走査する。これにより、前記実施形態と同様に、十分な線幅をもった太線印字を従来よりも容易に実現することができる。
【0201】
なお、既述したように、受付部101や印字データ生成部103は、印字設定装置としての操作用端末300に設けられていてもよい。この場合、操作用端末300は、マーカヘッド1とマーカコントローラ100からなるレーザマーカに電気的に接続される。この場合、印字設定装置としての操作用端末300は、印字データ生成部103により生成された印字データ(太線用印字データ)をレーザマーカに送信する印字データ送信部を備える。
【符号の説明】
【0202】
S レーザマーキングシステム
L レーザマーキング装置
1 マーカヘッド
2 励起光生成部
3 レーザ光出力部
4 レーザ光走査部
100 マーカコントローラ
102 記憶部
103 印字データ生成部
104 マーキング制御部
300 操作用端末
301 表示部(表示手段)
Li 内側走査線
Lo 外側走査線
Mc 文字の中心線
Dp 印字データ
Df 太線用印字データ
Dw 文字幅方向
Gp 隙間
Iu 入力インターフェース(文字入力手段)
R1 照射エリア(印字面)
R2 設定平面
W ワーク
X UV反応層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14