(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042601
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の構築装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20230317BHJP
E04G 17/06 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
E04G17/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014403
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2021137765の分割
【原出願日】2021-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人土木学会 JSCE 令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会,講演概要集 第VI部門 施工技術(7)VI-524 2021年8月 2日発行
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】槇島 修
(72)【発明者】
【氏名】桃木 昌平
(72)【発明者】
【氏名】折田 現太
(57)【要約】
【課題】本発明は、先に打込んだコンクリート(以下、旧コンクリート)が硬化した後、鉛直打継部となる面にコンクリートの流出を防止するために設置された型枠を取り外すことなく、また、旧コンクリートの打継面を粗面にするなどの打継処理をすることなく、新たなコンクリートを前記打継面と密着するように打込むことができるコンクリート構造物の構築装置を提供する。
【解決手段】縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置で、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間がある浮かし型枠を用いることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置で、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間がある浮かし型枠を用いる構築装置であり、
前記隙間には、該隙間を塞ぐ閉鎖板と、閉鎖板に貫挿して取り付けられた連結筋と、を備えた埋設部材が取り付けられ、前記連結筋は、横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋された補強筋と連結できる構成にされた、
ことを特徴とするコンクリート構造物の構築装置。
【請求項2】
縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置で、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間がある浮かし型枠を用いた構築装置であり、
前記隙間には、該隙間を塞ぐ埋設部材が設置され、該埋設部材は、上下方向に分割された複数の閉鎖板ブロックを上下方向に繋げて一体可能に構成され、閉鎖板ブロックの繋ぎ目部分は横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋される横補強筋のスペーサとして使用できると共に、横補強筋が貫挿する貫挿孔が形成できる、
ことを特徴とするコンクリート構造物の構築装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の構築装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下方向に立ち上がる壁などのコンクリート構造物を横方向に長くして構築する場合においては、隣り合う型枠を厚み分の間隔をあけて上下方向に向けて枠組みし、この枠組みした型枠内にコンクリートを打ち込み、コンクリート硬化後、脱型して壁などの横方向に長く続くコンクリート構造物を構築する。
【0003】
ここで、従来では、前記のような横方向に長い壁面となる壁などを構築する場合、長い横方向にすべて繋がる型枠を枠組みし、この型枠内にコンクリートを打ち込み、コンクリート構造物を構築することが考えられる。
【0004】
しかしながら、長い横方向にすべて繋がる型枠を枠組みし、この型枠内にコンクリートを打ち込むには、1回で打設できる量のコンクリートを現場で生成でき、貯留できる装置が必要となる。既に枠組みした型枠内には一気にコンクリートを打ち込まなければならず、日時を分けてコンクリートを打ち込むとコンクリートの劣化を招くからである。
【0005】
よって、型枠内に1回でコンクリートを打ち込むことができない場合には、例えば横方向所定個所でいったん区切ってコンクリート打ち込みスペースを設け、該ブロックに型枠を設置してコンクリートを打ち込み、次いで、次のブロックに型枠を設置してコンクリートを打ち込むと共に、前のブロックで打ち込んだコンクリートと次のブロックで打ち込んだコンクリートとを打継部で接続して横方向に長いコンクリート構造物を構築するものとしていた。
【0006】
すなわち、上下方向に設置された型枠間内に打設されるコンクリートの厚み部分となる端面個所に、鉛直打継部となる打止め型枠を設置し、もって区切られたブロックに設置した型枠内にコンクリートを打ち込んで部分的にコンクリート構造物を構築し、次に、横方向に新たなブロックを設けて型枠を設置し、該型枠内にコンクリートを打ち込んで新しい部分のコンクリート構造物を構築し、これを前に構築した部分のコンクリート構造物と繋ぎ、もって横方向に連続するコンクリート壁などのコンクリート構造物を構築していたのである。
【0007】
しかしながら、このような従来の構築装置では、前述したように、鉛直打継部となる面には、コンクリートの流出を仕切るための打止め型枠を設置しなければならい。そして、先に打込んだコンクリート(以下、旧コンクリート)が硬化した後、前記打止め型枠を取外し、旧コンクリートの打継面を粗面にするなどの打継処理をし、新たなコンクリート(以下、新コンクリート)を前記打継処理をした打継面と密着するように打込み、締固めを行わなければならなかった。
【0008】
また、コンクリート構造物の構築に際しては、型枠内にあらかじめ補強筋を配筋してコンクリートを打ち込むが、前記鉛直打継部の個所においても補強筋の配筋作業をしなければならず、この鉛直打継部個所の配筋作業によっては、前記打止め型枠の設置・取外しや、旧コンクリートの打継処理が煩雑化し、多大な労力を要する。
【0009】
そして、場合によっては、前記打止め型枠に金網等を使用したり、凹凸状の樹脂製シートを貼付けたりして打継処理を省力化する方法や、補強筋の配筋後、挿入可能なばら板やエアホースを使用し、これを打止め型枠の代用品として設置・取外しを行う方法も試されたが、新コンクリートの差し筋との隙間などを完全に塞ぐことは不可能であり、隙間からのコンクリートの流出に伴う打継面の品質低下や、流出したコンクリートを処理する手間が生じるとの課題がある。
【0010】
次に、従来の床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)とを一体化したコンクリート構造物とするため、いわゆる浮かし型枠を用いたコンクリート構造物の基礎一体打ち構築装置についての課題の解消も要請されている。
該浮かし型枠を使用したコンクリート構造物の構築装置では、立上りコンクリート部材として打込んだコンクリートが床側へ噴出してしまうことがある。
【0011】
よって、従来では、床の設計厚さ以上に溢れることがないよう、コンクリートの性状を確認しながら時間をかけて慎重に立上りコンクリート部材を打込み、締固めを行わなければならなかった。
【0012】
ところが、浮かし型枠を使用する場合、前記立上りコンクリート部材の打込みの慎重さから締固めが不十分になりやすくコンクリートの打ち込み不良を招いたり、時間をかけすぎたことでコールドジョイントが生じたりするとの課題があった。ここで、流動コンクリートにより打設性の向上と時間短縮を図る方法も考えられるが、コンクリートが溢れる可能性が高まり、現状は流動コンクリートの適用も困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7-119215号公報
【特許文献2】特開平8-135246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくして本発明は、前記従来の課題を解消するために創案されたものであって、1回のコンクリートの打ち込みではコンクリート構造物の構築が完了せず、打ち込むコンクリートのブロックを複数個に区切って行うタイプでの横方向に連続するコンクリート構造物の構築装置において、先に打込んだコンクリート(以下、旧コンクリート)が硬化した後、鉛直打継部となる面にコンクリートの流出を防止するために設置された型枠(以下、打止め型枠)を取り外すことなく、また、旧コンクリートの打継面を粗面にするなどの打継処理をすることなく、新たなコンクリート(以下、新コンクリート)を前記打継面と密着するように打込むことができ、さらには、鉛直打継部の個所の補強筋の配筋によっても、前記打止め型枠の設置・取外しや、旧コンクリートの打継処理が煩雑化し、多大な労力を要することなく、隙間からのコンクリートの流出に伴う打継面の品質低下や、流出したコンクリートを処理する手間が生じることのないコンクリート構造物の構築装置を提供するものであり、また、床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)を一体とするため、いわゆる浮かし型枠を使用したコンクリート構造物の構築では、立上りコンクリート部材として打込んだコンクリートが床側へ噴出してしまうことがなく、床の設計厚さ以上に溢れることがないよう、コンクリートの性状を確認しながら時間をかけて慎重に立上りコンクリート部材を打込み、締固めを行う必要がなく、浮かし型枠を使用する場合に、前記立上りコンクリート部材の打込みの慎重さから締固めが不十分になりやすく打設不良を招いたり、時間をかけすぎたことでコールドジョイントが生じたりすることがないコンクリート構造物の構築装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置で、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間がある浮かし型枠を用いる構築装置であり、
前記隙間には、該隙間を塞ぐ閉鎖板と、閉鎖板に貫挿して取り付けられた連結筋と、を備えた埋設部材が取り付けられ、前記連結筋は、横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋された補強筋と連結できる構成にされた、
ことを特徴とし、
または、
縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置で、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間がある浮かし型枠を用いた構築装置であり、
前記隙間には、該隙間を塞ぐ埋設部材が設置され、該埋設部材は、上下方向に分割された複数の閉鎖板ブロックを上下方向に繋げて一体可能に構成され、閉鎖板ブロックの繋ぎ目部分は横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋される横補強筋のスペーサとして使用できると共に、横補強筋が貫挿する貫挿孔が形成できる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1回のコンクリートの打ち込みでは構築が完了せず、打ち込むコンクリートのブロックを複数個に区切って行うタイプの横方向に連続するコンクリート構造物を構築する装置において、先に打込んだコンクリート(以下、旧コンクリート)が硬化した後、鉛直打継部となる面にコンクリートの流出を防止するために設置された型枠(以下、打止め型枠)を取り外すことなく、また、旧コンクリートの打継面を粗面にするなどの打継処理をすることなく、新たなコンクリート(以下、新コンクリート)を前記打継面と密着するように打込むことができ、さらには、鉛直打継部の配筋によっても、前記打止め型枠の設置・取外しや、旧コンクリートの打継処理が煩雑化し、多大な労力を要することなく、隙間からのコンクリートの流出に伴う打継面の品質低下や、流出したコンクリートを処理する手間が生じることのないとの優れた効果を奏するものであり、また、床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)を一体とするため、いわゆる浮かし型枠を使用したコンクリート構造物の構築では、立上りコンクリート部材として打込んだコンクリートが床側へ噴出してしまうことがなく、床の設計厚さ以上に溢れることがないよう、コンクリートの性状を確認しながら時間をかけて慎重に立上りコンクリート部材を打込み、締固めを行う必要がなく、浮かし型枠を使用する場合に、前記立上りコンクリート部材の打込みの慎重さから締固めが不十分になりやすく打設不良を招いたり、時間をかけすぎたことでコールドジョイントが生じたりすることがないとの優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図2】第1実施例の構成を説明する説明図(2)である。
【
図3】第1実施例の構成を説明する説明図(3)である。
【
図4】第1実施例の構成を説明する説明図(4)である。
【
図5】第1実施例の構築工程を説明する説明図である。
【
図6】第2実施例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図7】第2実施例の構成を説明する説明図(2)である。
【
図8】第2実施例の構成を説明する説明図(3)である。
【
図9】第2実施例の構築手順の概略を説明する説明図である。
【
図10】従来例の構成を説明する説明図(1)である。
【
図11】従来例の構成を説明する説明図(2)である。
【
図12】従来例の構成を説明する説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
本実施例は、コンクリートの打ち込みスペース15を横方向に向けて複数個に区切り、区切った打ち込みスペース15毎にコンクリートの打ち込みが行え、打ち込みスペース15毎に打ち込まれたコンクリートの接触面を繋いで横方向に連続するコンクリート構造物を構築する構築装置であり、
前記打ち込みスペース15の表裏面側に間隔をおいて設置される縦型枠6と、前記間隔内に配筋される縦、横の補強筋4と、横方向に隣り合う打ち込みスペース15の接触面に設置される埋設部材と、を備え、前記埋設部材は、閉鎖板としての鉛直打継部埋め殺し部材1と、該鉛直打継部埋め殺し部材1に貫挿して取り付けられた連結筋2と、を有し、
前記鉛直打継部埋め殺し部材1は、前記打ち込みスペース15の接触面を塞ぐべく略長方形をなす板状部材に構成すると共に、両表面部は粗面14として構成し、
前記連結筋2と前記横補強筋4とは連結できる構成とし、
前記横方向に隣り合う打ち込みスペース15にコンクリートが打ち込まれ、隣り合うコンクリートは前記埋設部材を介して一体化されるものとなる。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例である1回のコンクリートの打ち込みでは構造物の構築が完了せず、打ち込むコンクリートの打ち込みスペース15を複数個に区切ってコンクリートの打ち込みを行うタイプにより横方向に連続するコンクリート構造物を構築する装置の構成を説明する説明図である。
【0020】
符号13は、横方向に連続するコンクリート構造物の構築に際し、コンクリートの打ち込みスペース15を横方向に複数個に区切り、区切られた打ち込みスペース15ごとにコンクリートの打ち込みを行う際の型枠装置であり、符号1は前記型枠装置13内において、前記打ち込みスペース15に打ち込まれたコンクリートを横方向に繋ぐべく鉛直打継部であるコンクリートの接触面に設置された鉛直打継部埋め殺し部材である。
【0021】
該鉛直打継部埋め殺し部材1は、前記接触面、すなわち鉛直打継部の高さ、鉛直打継部の幅に合わせて作製され、略長方形の板状部材で形成される。
この鉛直打継部埋め殺し部材1は、あらかじめ工場で例えばプレキャストコンクリート部材によって前述の如く略長方形状の板状をなし、かつ所定の厚みを有して形成されるものである。
そして、該鉛直打継部埋め殺し部材1の両側表面部は、後述する打設コンクリートとの密着度を向上させるために略凹凸状の粗面14に形成される。
【0022】
ここで、前記粗面14の形成については、略長方形の板状をなす鉛直打継部埋め殺し部材1を形成すべく型枠で囲むが、該型枠の内側面をあらかじめ凹凸面にしておき、脱型後にできあがる鉛直打継部埋め殺し部材1の両側表面部が粗面14になるよう構成する。
【0023】
また、前記凹凸面に形成された内側面を有する型枠を使用しない場合でも、該型枠により両表面が平滑面となった鉛直打継部埋め殺し部材1に、例えば粗面14に構成されたシート部材を貼着することにより粗面14の両表面に形成できるものとなる。いずれにせよ、鉛直打継部埋め殺し部材1の両側表面部を例えば粗面14などにして、確実な打継処理をしておくことが重要である(
図4参照)。
【0024】
次に、鉛直打継部埋め殺し部材1には
図2に示すように、鉛直打継部埋め殺し部材1を貫通し、両側表面部から外側へ向かい突出部を有する複数本の連結筋2が貫挿状態にされて取り付けられている。
【0025】
すなわち、
図1から理解される様に、
図1において鉛直打継部埋め殺し部材1が設置された例えば左側の打ち込みスペース15からコンクリートが打ち込まれるが、その際、前記左側の打ち込みスペース15の内部には縦方向及び横方向に複数本の補強筋4が配筋される。そして、鉛直打継部においては、そのまま埋設される鉛直打継部埋め殺し部材1が設置されており、この鉛直打継部埋め殺し部材1には、前記横方向に配筋された補強筋4と連結できる個所、すなわち、補強筋4の長手方向延長方向に前記連結筋4が取り付けられているのである。そして、複数本の横方向に配筋された補強筋4と連結筋2の突出部とを連結できるようにしてある。
【0026】
前記連結方法については何ら限定はないが、
図2に示すように、重ね継手として連結しても構わないし、カップラー5などを用いた機械式継手にして連結しても構わない。
【0027】
尚、
図1において、鉛直打継部埋め殺し部材1の右側の打ち込みスペース15は、次にコンクリートを打ち込む個所であるが、この打ち込みスペース15にも同様に補強筋4が配筋され、複数本の横方向に配筋された補強筋4と連結筋2の突出部とが同様に連結されることになる。また、
図1において、符号6は前記打ち込みスペース15の表裏面側に設置される縦型枠である。
【0028】
以上において、
図5に第1実施例の構築工程を示す。
まず、複数本の連結筋2が貫挿した鉛直打継部埋め殺し部材1を型枠装置13内の所定位置、すなわち隣り合う打ち込みスペース15の横側連結面、すなわち隣り合う打ち込みスペース15に各々打ち込まれたコンクリートが接触する接触面、すなわち鉛直打継部に設置する。次に、鉛直打継部埋め殺し部材1に貫挿して取り付けられた複数本の連結筋2と型枠装置13内において横方向に配筋された補強筋4とを連結する。
【0029】
その後、左側の打ち込みスペース15にコンクリートを打ち込む。次いで、右側の打ち込みスペース15にコンクリートを打ち込み、この構築工程を順次繰り返して横方向に連続するコンクリート構造物を構築していく。
【0030】
上記のような構築方法を採用せざるを得ない理由につき、再度説明するが、それは、横方向に連続するコンクリート構造物を大型の型枠装置13で囲み、その型枠装置13内にすべて打ち込める量のコンクリート量が一気に生成できず、貯留する場所も確保できないことによる。
【0031】
現場において大型の型枠装置13内に一気に打ち込める量のコンクリートを生成し、それを貯留しておくには限度があり、横方向に連続するコンクリート構造物を構築する大型の型枠装置13内に打ち込むコンクリートの量は日時を異ならせて複数個に分けて生成し、かつ貯留しておかなければならない。
【0032】
したがって、コンクリートの打ち込みスペース15を横方向に複数個に区切り、区切った打ち込みスペース15ごとにコンクリートの打ち込みを行い、隣り合う打ち込みスペース15の接触面を繋いで横方向に連続する大型のコンクリート構造物を構築している。
【0033】
しかし、従来のように前記接触面、すなわち鉛直打継部に打止め型枠を配置し、それを脱型していくのは極めて作業手間となり、コスト高になってしまっていた。第1実施例の発明が創案された所以である。
【0034】
ここで、第1実施例の発明の概略構成につき説明する。
鉛直打継部の寸法(高さ・幅)に合わせ、かつ、鉛直打継面に平行に配筋される、すなわち縦方向に配される縦方向の補強筋4の間に収まる厚さにし、例えば表面が凹凸状にされた樹脂製シートなどを貼付けた型枠を用いて製作し、もって新・旧コンクリートに接する面に粗面14が形成されて打継処理が施されたコンクリート版からなる鉛直打継部埋め殺し部材1に連結筋2を貫通させて取り付けた埋設部材をあらかじめ工場などで作製しておく。
【0035】
そして、補強筋4の配筋前に、鉛直打継部埋め殺し部材1が鉛直打継部の箇所に位置するよう埋設部材を設置し、その後、縦型枠6、補強筋4などによって型枠装置13を組立てると共に、横方向の補強筋4と連結筋2とを連結する。
【0036】
すなわち、埋設部材におけるコンクリート版からなる鉛直打継部埋め殺し部材1を、区切られた打ち込みスペース15での打止め型枠として使用する。しかしながら、埋設部材は取外さずに埋設した状態で、次の打ち込みスペース15において新コンクリートを打込む。すなわち、旧コンクリートと鉛直打継部埋め殺し部材1と新コンクリートとを一体化すべく鉛直打継部埋め殺し部材1を埋設したままとするのである。
【0037】
また、埋設部材として鉛直打継部をプレキャスト化したことにより、従来は打継処理面が1面のみだった鉛直打継部が、鉛直打継部埋め殺し部材1の両表面部での2面の打継処理面になるが、この前記両表面部の打継処理面には粗面14が形成されて確実な打継処理が施してあり一体化は確実に確保される。
【0038】
なお、埋設部材を取外さず埋設できることにより、煩雑な工程(打止め型枠などの取外し・打継処理)を省略でき、さらには、埋設部材として鉛直打継部を先行製作してあるため、新コンクリートをすぐに打込むことができ、工期短縮が期待できる。
【0039】
また、補強筋4との連結は、埋設部材の作製時、すなわちプレキャスト化鉛直打継部製作時に、新・旧コンクリート双方への差し筋となるよう鉛直打継部埋め殺し部材1に連結筋2を貫通配置して製作することで、隙間のない、すなわち新コンクリートが打ち込まれる打ち込みスペース15側へ旧コンクリートを流入させない埋設部材となるのである。
【0040】
このように本実施例では、横方向に連続するコンクリート構造物の構築に際し、打ち込みスペースを横方向に分割することにより、打止め型枠を設けなければならなかった鉛直打継部に、現場またはプレキャスト工場で製作した埋設部材、すなわちプレキャスト化された鉛直打継部を設置し、縦型枠6や補強筋4などの型枠装置13の組立後、前記の打ち込みスペース15内にコンクリートの打込みを行う。
【0041】
従来法であれば、旧コンクリート打込み後、コンクリートが硬化して充分な強度が発現した後に鉛直打継部に設置した打止め型枠を取外し、旧コンクリートにおける鉛直打継部の打継処理が完了してから新コンクリートを打込まなければならず、工期の長期化が懸念されるが、本実施例であれば、最短で旧コンクリート打込みの翌日にも新コンクリートの打込みが可能となるのである。
【0042】
次に、本発明の第2実施例につき説明する。
本実施例は、縦方向に立ち上がるコンクリート構造物と該縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部から略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物とにより略L字状をなして一体化されたコンクリート構造物の構築装置である。
【0043】
そして、構築すべき縦方向に立ち上がるコンクリート構造物の下部と、該下部より略直角に折曲し横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物の先端部との境目に隙間が設けられた浮かし型枠7を用いる構築装置である。
【0044】
前記隙間には、該隙間を塞ぐ閉鎖板、すなわち埋め殺し閉鎖板8と、該埋め殺し閉鎖板8に貫挿して取り付けられた連結筋2と、を備えた埋設部材が取り付けられ、前記連結筋2は、横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋された横補強筋4と連結できる構成にされている。
【0045】
また、前記埋設部材は、上下方向に分割された複数の閉鎖板横ブロック9を上下方向に繋げて一体可能に構成され、閉鎖板横ブロック9の繋ぎ目部分は横方向延出コンクリート構造物の構築個所に配筋される横補強筋4のスペーサとして使用できると共に、横補強筋4が貫挿する貫挿孔が形成できる構成とされている。
【0046】
図6は第2実施例の構成を示す説明図であり、縦方向に立ち上がるコンクリート構造物である立上りコンクリート部材(壁・柱など)と横方向に伸びる横方向延出コンクリート構造物である床(スラブ・ベース)とを略L字状に一体化するため、いわゆる浮かし型枠7を使用したコンクリート構造物の構築を説明した図である。
【0047】
図6に示す様に例えば壁形成のために設置された浮かし型枠7の上方からコンクリートを打ち込んでいく。すると、従来では
図11に示すようにコンクリートの打ち込み速度が速いと前記浮かし型枠7の下方の隙間から床面個所にコンクリートが大量に流出する。すると、床面個所の上部にコンクリートがあふれてしまう。
【0048】
また、
図12に示すように、逆にコンクリートの打ち込み速度が遅いとコンクリート打ち込み個所において不連続面16が発生してしまう。
そこで、本実施例では、上記の課題解決のため前記浮かし型枠7の下方の隙間を塞ぐべく埋設部材を設置するものとした。すなわち、埋設部材は、横方向に長い床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)との境目に用いられ、横方向に長い長方形の板状をなす埋め殺し閉鎖板8により前記隙間を塞ぐべく構成される。
【0049】
しかし、横方向に連続して構築される床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)の横方向長さが長い場合には、該埋め殺し閉鎖板8につき、複数枚の閉鎖板横ブロック9を横方向に繋いで構成するタイプにしても構わないものである(
図8参照)。
【0050】
ここで、埋設部材は、あらかじめ工場で作製され、埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9は、例えばプレキャストコンクリート部材によって略長方形状をなし、かつ所定の厚みを有して形成される。また、埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9の両側表面部は、打ち込まれるコンクリートとの密着度を向上させるために粗面14に形成される。そして、前記粗面14の形成方法は第1実施例の場合とほぼ同様である。
【0051】
また、
図9から理解されるように、床面にコンクリートを打ち込む場合にも、補強筋4を配筋しなければならない。しかるに、本実施例の閉鎖板横ブロック9はこの補強筋4についてのスペーサとしても兼用できるものとなっている。
図9に示すように閉鎖板横ブロック9は上下方向に向かい分割できる様構成できる。すなわち、
図9(b)に示すように、第1閉鎖板縦ブロック10は高さの低いブロックとして構成され、その上面に補強筋4が載置できるようになっている。
【0052】
そして、比較的高さのある第2閉鎖板縦ブロック11を第1閉鎖板縦ブロック10の上に重ね合わせ、補強筋4を挟み込むように保持する(
図9(c)参照)。
次いで第2閉鎖板縦ブロック11の上に2つ目の補強強筋4を載置し、その上に第3閉鎖板縦ブロック12を重ね合わせ、2つ目の補強強筋4を挟み込む(
図9(d)参照)。
【0053】
このように、本実施例の閉鎖板横ブロック9は浮かし型枠7の上方から打ち込まれたコンクリートが床面個所に流れ込まないようにすると共に、補強筋4を保持するスペーサの機能も果たすことになる。
【0054】
尚、
図9の(a)に示すように埋め殺し閉鎖板8に、あらかじめ連結筋2を埋め殺し閉鎖板8の長手方向と略直角方向に貫挿させて取り付けておき、第1実施例と同様にこの連結筋2を補強筋4と連結するタイプでも構わないものである。この場合の連結方法は、第1実施例で説明した場合と同様である。
【0055】
尚、本実施例の埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9を構成する例えば各々の第1閉鎖板縦ブロック10、第2閉鎖板縦ブロック11、第3閉鎖板縦ブロック12も第1実施例の説明した鉛直打継部埋め殺し部材1と同様にあらかじめ工場でプレキャストコンクリート部材などによって形成すること前述の通りである。
【0056】
ところで、第1実施例の鉛直打継部埋め殺し部材1についても、上下方向に分割できる分割ブロックとして構成し、補強筋4を挟み込んだ後、前記分割ブロックを接続し一体化して埋設部材を構成しても構わないものである。かかる場合は、鉛直打継部埋め殺し部材1に連結筋2を貫挿させて取り付けておく必要がない。
【0057】
ここで、本実施例においては、まず、浮かし型枠7の上方からコンクリートを打ち込み、壁を構築していく。しかし、この打ち込まれたコンクリートは埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9の一体板が堰板となり床面個所へのコンクリートの流れ込みが阻止される。よって、コンクリートの打ち込み速度に関係なく強固な壁が作製できる。
【0058】
次に、床面個所の上方からコンクリートを打ち込む。床面個所の上方からの打ち込みのため、従来の課題であった床面上部に打ち込んだコンクリートが床面側へあふれたり、打ち込みコンクリートの不連続面が生じることもない。
【0059】
しかも、このように埋設タイプの埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9を有する埋設部材は、例えばあらかじめ工場で作製してあり、浮かし型枠7の上部や床面個所の上部から打ち込むコンクリートとは密着性がよく、強固に一体化した床(スラブ・ベース)と立上りコンクリート部材(壁・柱など)を有する略L字状をなすコンクリート構造物が作製できる。これにより構造物の耐久性がより向上するものとなる。
【0060】
例えば、橋梁上部工横桁の構築をする場合には、箱桁下床版との強固な一体性を確保するため、浮かし型枠7を用いる構築となるが、横桁は下部工からの差し筋もあり過密配筋となるため、打込み時に入念に締固めを行わなければならなかった。
【0061】
しかしながら、本実施例では、横桁と箱桁下床版との浮かし型枠7が設置された箇所の隙間にプレキャスト鉛直打継部部材(埋設部材)を設置して、埋め殺し閉鎖板8あるいは閉鎖板横ブロック9を一体化したものを堰板としてあり、横桁と箱桁下床版の構築を一時的に分けることとした。これにより、過密配筋となる横桁へ打込んだコンクリートの入念な締固めも行えるし、また横桁への高流動コンクリートの適用も可能となったのである。
【符号の説明】
【0062】
1 鉛直打継部埋め殺し部材
2 連結筋
3 突出部
4 補強筋
5 カップラー
6 縦型枠
7 浮かし型枠
8 埋め殺し閉鎖板
9 閉鎖板横ブロック
10 第1閉鎖板縦ブロック
11 第2閉鎖板縦ブロック
12 第3閉鎖板縦ブロック
13 型枠装置
14 粗面
15 打ち込みスペース