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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042602
(43)【公開日】2023-03-27
(54)【発明の名称】潜在顧客発掘支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0202 20230101AFI20230317BHJP
【FI】
G06Q30/0202
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014538
(22)【出願日】2023-02-02
(62)【分割の表示】P 2022092018の分割
【原出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2021104209
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022023758
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000247719
【氏名又は名称】株式会社伊予エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭廣
(72)【発明者】
【氏名】山本 是樹
(57)【要約】
【課題】ライフスタイルを基準としたLSV値を算出し、プロファイリングやランキングによって町ないし丁目単位の潜在収益を算出し(LSVナビ)、地図情報と連携して潜在顧客を発掘して企業の営業活動を支援する電子情報処理的なロジックを有する潜在顧客発掘支援システムを提供する。
【解決手段】データベースと、統計情報に基づいてライフスタイルクラスターデータ生成部で生成されたライフスタイルクラスターデータと、既存顧客のユーザ保有データと、行政界データとを入力するLSVナビシステムと、演算部及び入出力部とを備え、町丁目毎に既存顧客のLSV値を算出し、町丁目毎に商品契約実績の比較を行い、商品契約実績の高い地域のLSV値に基づいて、商品契約実績の低い地域の潜在顧客リストを作成し、潜在顧客リストを参照して潜在顧客を発掘する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースと、
統計情報に基づいてライフスタイルクラスターデータ生成部で生成されたライフスタイルクラスターデータと、既存顧客のユーザ保有データと、行政界データとを入力するLSVナビシステムと、
演算部及び入出力部と、
を備え、町丁目毎に前記既存顧客のLSV値を算出し、前記町丁目毎に商品契約実績の比較を行い、前記商品契約実績の高い地域のLSV値に基づいて、前記商品契約実績の低い地域の潜在顧客リストを作成し、前記潜在顧客リストを参照して潜在顧客を発掘することを特徴とする潜在顧客発掘支援システム。
【請求項2】
前記LSVナビシステムが、
前記LSV値を算出するLSV値算出部と、
潜在顧客の順位付けを行うランキング部と、
前記潜在顧客にライフスタイルクラスターコードを付与して推計するプロファイリング部と、
町丁目にグループ化するセグメンテーション部と、
で構成されている請求項1に記載の潜在顧客発掘支援システム。
【請求項3】
前記LSV値を、ライフスタイルクラスターデータの類似性×潜在収益×(100-リスク値(%))で算出する請求項1又は2に記載の潜在顧客発掘支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引先既存顧客の傾向を分析した情報や、公開されている国勢調査などの統計情報や地図情報などの営業に関連する種々の情報を用いて、ライフスタイルを基準とした価値(LSV:Life Style Value)を示すLSV値を算出し、LSV値を利用して同じ範疇若しくは類似の行動パターンに属すると思われる潜在顧客を発掘するようにし、金融機関や企業等の営業活動を効率良く支援する電子情報処理的なロジックを有する潜在顧客発掘支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関や企業等(以下、単に「企業」とする)が営業活動を行うには、大きく分けて2通りのパターンがある。1つは「既存取引先への追加営業」、もう1つは既存顧客ではない「新規顧客への開拓営業」である。「既存取引先への追加営業」の場合、取引実績や顧客情報(年齢、性別など)などを参考に分析し、営業マンが顧客のニーズを推測し、商品やサービスを提案することができる。しかし、既存取引先であっても、自社がメイン顧客になっていない顧客(利用が停滞している顧客など)のニーズは、取引の変化や新たな情報が蓄積されることがないため、想定が一層困難となる問題がある。
【0003】
従来のマーケティングは、個人商品の販売では潜在顧客選定作業がベースとなっている。そのためには、例えばMCIF(Marketing Customer Information File:マーケティング用顧客情報データベース)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理(若しくは顧客関係性マネジメント))などに備えられている顧客DB(Data Base)の検索機能から、潜在顧客リストを商品毎に別々の作業として切り出している。
【0004】
図1は従来のマーケティングの一般的な手順を示しており、先ずMCIFやCRMの顧客DBにアクセスし(ステップS1)、対象商品の選定を行う(ステップS2)。そして、性別、年齢、流動性平残(平均残高)、給振(給与振込)などの検索項目を使用し(ステップS3)、ターゲット顧客をリストアップする(ステップS4)。リストアップされたターゲット顧客には、店CIF(店舗の顧客情報ファイル:Customer Information File)、口座名、住所、電話番号、メールアドレスなどが付記されている。
【0005】
次に、リストアップされた顧客にコンタクトする方法を選定するが(ステップS5)、コンタクト方法にはDM(Direct Mail)、ポスティング、折り込み広告、電子メール、コールセンター(CC)、ATM(Automatic Teller Machine)、渉外訪問などがある。これらの中から顧客への最適なコンタクト方法を選定して後、そのコンタクト方法実行後の結果を確認し(ステップS6)、更に実行後のPDCA(plan(計画)-do(実行)-check(評価)-action(改善))を行ってマーケティングを終了している(ステップS7)。例えば、DMの実行後の成果を示すヒット率(DMの出状数に対して実際に商品を購入する割合)は、一般的に出状数の約1%と言われている。
【0006】
MCIFなどの顧客DBには住所、氏名等が登録されているので、このマーケティング方法の出力は、取引のある個人顧客名となる。従って、この顧客名に対して、様々な営業活動のチャネルを使用するが、検索項目が、ターゲット顧客を適切に選び出す項目であるかどうかは、DMのヒット率に依存するが、DMのヒット率は通常1%前後と低い。また、検索項目自体が検索者たる営業マンとしてのノウハウによるところが大きいため、複数の営業マンが同じような検索項目を使用する場合が多い。従って、コンタクト実行後にPDCAを繰り返し実施したとしても、マーケティングの効率が改善される余地は極めて小さい。更にこのマーケティング方法は、商品1つ1つについて行われるため、商品毎に同じプロセスが繰り返され、非効率である問題がある。
【0007】
なお、PDCAは、品質管理などの業務管理における継続的な改善手法として広く知られており、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する一般的な手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-096209号公報
【特許文献2】特開2007-310851号公報
【特許文献3】特開2004-118571号公報
【特許文献4】特開2020-194288号公報
【特許文献5】特開2020-149706号公報
【特許文献6】特開2019-179498号公報
【特許文献7】特開2017-49784号公報
【特許文献8】特許第6729877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の営業活動においてはLTV(顧客生涯価値:Life Time Value)が利用されており(図1のステップS1~S4)、LTVを求めるための基本となる式は、下記数1である。
(数1)
LTV=年間取引額×収益率×継続年数(滞在期間)

ただし、この数1を使用することは殆どない。なぜなら、LTVは顧客1人毎に異なるものであり、売上や経費を個別に計算することが不可能に近いためである。実務レベルでは、顧客全体(N)をベースにして求めることが多い。例えば、リピート顧客数(数2)、顧客収入(数3)、顧客維持費用(数4)、単年度利益(数5)、初期投資額(数6)、LTV合計(数7)、1人当たりLTV(数8)などを求めて、平均的なLTVを数9によって求める。
(数2)
リピート顧客数=新規顧客数×顧客維持率
(数3)
顧客収入=顧客単価×リピート顧客数
(数4)
顧客維持費用=新規又はリピート顧客数×1人当たり顧客維持費用
(数5)
単年度利益=顧客収入-顧客維持費用
(数6)
初期投資額=初年度の顧客を獲得するために投下した費用
(数7)
LTV合計=単年度利益の累積金額

(数8)
1人当たりLTV=LTV合計/初年度新規顧客数
(数9)
平均的なLTV=1人当たりLTVの加算値/N

そして、LTVの値を最大化するには、数2における「顧客維持率」を高めることがポイントであり、コストをかけ過ぎると数4で示される「顧客維持費用」が増加してしまうため、収益率が低下する。
【0010】
また、LTVは、下記に記載するような問題点や付随する条件も多く、かかる問題点が解消されればLTVの算出も有効な手段であるが、経済環境を含め、問題点が解消できなければ、ライフスタイルを基準とした価値を示すLSV(Life Style Value)値を算出し、LSV値をプロファイリング(ある人の個人情報や過去の行動を分析し、今後の行動などを推測すること)及びランキング(順位付け)して潜在収益を算出すること(LSVナビゲーション(Life Style Value navigation)(以下では、単に「LSVナビ」とする)が、潜在顧客発掘の営業支援に有効である。ここで、「潜在顧客」とは、未だ商品やサービスが必要と感じていない顧客や、具体的なニーズを認識できていない顧客を意味する。一方、商品やサービスの必要性を感じている顧客を「見込顧客」とする。
【0011】
LTVは、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益のことを指し、一般的には、顧客の商品やサービスに対する愛着(顧客ロイヤリティ)が高い企業ほどLTVの値が高くなる傾向が強い。図2は、一般的なLTVを時間軸に沿って模式的に示しており、社会人になってから老後に至るまでの主なイベント(レジャー、結婚、住宅購入等)と、各イベントに関連する資金ニーズとの一般的な関係を相関的に示している。社会人になってから老後に至るまでの価値(取引額:value)は中途までは上昇し、その後は加齢に従って次第に減少し、イベントと資金ニーズの横軸が生涯(Lifetime)を時間的な流れで示している。そして、数10に示すように、価値と生涯との加算値がLTVとなるが、これは数1と同じことを示している。LSV値については後述するが、図2に示すように資金が必要となるイベント(図2では、住宅購入と住宅ローンの対などを示している)毎に、その時点での顧客のLSV値を算出する。
(数10)
LTV=生涯+価値

数10で計算されるLTVの値はあくまでも疑似的な数字であり、1人の顧客からの収益を正確に求めるためには、何十年もの取引データの蓄積が必要になるが、そのような取引データは入手がほぼ不可能である。そこで、同じグループに住んでいる人々は、同じ消費者行動バターンを採ると仮定すれば、そのグループエリアに住む人々の金融機関との取引結果の累積が、LTVの推計値に近くなると考えることができる。その限りでは、ここで計算されるLTVの値はクロスセクションとしての、ある時点での収益である。通常、収益計算を行う場合には、初期投資や資産価値の計算、販売管理費等が必要となる。金融機関はこれらの計算を行った上で、収益見通しを立てるための粗利金利を商品毎に所有している。この粗利金利を提示してもらえば、後は、商品毎に残額に対する金利収入を求めることができる。しかしながら、ここで求めるのは、1人1人の金利収益ではなく、グループエリアで口座を持つ全ての口座の合計として計算される。後は個別の商品の特徴、例えば住宅ローンの金利はローン申し込み期間によって大幅に異なり、この金利体系は金融機関側が持っているので、今現在の住宅ローンの加重平均金利を提出してもらえば、その際に、高金利の住宅ローンの割合が大きな意味を持つことになる。現在のように、低金利で借りている住宅ローンの比重が高くなればなるほど、住宅ローンの粗利金利は低下することになり、ひいては全体の収益が減少することになる。
【0012】
本発明は上述したような事情からなされたものであり、本発明の目的は、ライフスタイルを基準とした価値を示すLSV値を算出し、プロファイリングやランキング等の分析によって町ないし丁目単位の潜在収益を算出し(LSVナビ)、地図情報と連携して潜在顧客を発掘して企業の営業活動を支援する電子情報処理的なロジックを有する潜在顧客発掘支援システムを提供することにある。既存の顧客を、新商品の新たな顧客として再活用すること、出来る限り効率良く適正顧客を導き出し、営業活動のコストダウンに資することに活用することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、情報処理的なロジックで潜在顧客の発掘を支援する潜在顧客発掘支援システムであり、本発明の上記目的は、データベースと、統計情報に基づいてライフスタイルクラスターデータ生成部で生成されたライフスタイルクラスターデータと、既存顧客のユーザ保有データと、行政界データとを入力するLSVナビシステムと、演算部及び入出力部とを備え、町丁目毎に前記既存顧客のLSV値を算出し、前記町丁目毎に商品契約実績の比較を行い、前記商品契約実績の高い地域のLSV値に基づいて、前記商品契約実績の低い地域の潜在顧客リストを作成し、前記潜在顧客リストを参照して潜在顧客を発掘することにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、国勢調査などで公開されている人口統計データなどの統計情報を用いて、町ないし丁目毎にグループ化(セグメンテーション)して、町ないし丁目毎に各人のライフスタイルを基準とした価値(LSV:Life Style Value)を示すLSV値を算出すると共に、町ないし丁目の総口座数又は総人口を用いて、潜在顧客数を含んだ潜在収益を算出している。市町村単位でLSV値を算出すると対象領域が広くなり過ぎ、確率の高いLSV値を算出することができないので、本発明では町ないし丁目単位にLSV値を算出している。
【0015】
本発明のLSVナビを用いた潜在顧客発掘支援システムは、提供したい新商品をリスクが少なく、長期にわたって取引が可能である顧客を見つけ出す手法である。そのために、本発明では過去・現在・未来の時間軸上で、顧客が所有する「運・能力・人脈」の成分(元)を科学的に分析し、それらを評価することを目指している。
【0016】
「運・能力・人脈」の成分とは、有限群によって表現された集合を想定した場合、家系、土地、資産、家族と親戚及び友人達、土地の風水、母の遺伝子や運、能力、人脈、父の遺伝子や運、能力、人脈など等が挙げられる。町丁目も成分の1つであり、住んでいる所や家柄などの限られた成分が、そこの町丁目に住む人間を作り出す複数の成分によって、個々の人の「運・能力・人脈」が育成されることから、成長と共に人間の内部の成分により、その人の「運・能力・人脈」が時間と共に変化するという考えである。
【0017】
「運・能力・人脈」の成分である項目には量や単位がなく、自然言語で表現されるものが多くあり、図16図17図18のそれぞれの項目は分離量なのか、あるいは連続量なのかの問題もある。分離量と連続量の違いは、分離量は数える、連続量は測ることであり、こうした個人を評価する各項目の単位に値するものを決めるという問題をクリアするために、「運」の項目は「預貯金・不動産・職業」、「能力」は「信用実績・所得」、「人脈」は「家族構成・年齢」とし、「興味・購買力・年齢」のリスク項目を従属変数として、「運には興味」を、「能力には購買力」を、「人脈には年齢」に関わる項目をそれぞれ加えて分析・解析を行う。
【0018】
従来の非効率なマーケティング手法を改善するため、公開されている国勢調査などの統計情報を利用し、クラスターリング分析で生成されたエリア毎の消費者行動特性(地理的人口統計データ)を示すライフスタイルクラスターデータと、企業が所有する大量の顧客情報(CRM/SFA(Sales Force Automation))のデータと、人口や面積データを含む行政界データと、既存顧客のライフスタイルに基づくLSV値を算出しており、LSV値の算出には、既存顧客の購買力、興味、年齢の3大リスク要因を各々分析して求めたリスク値を反映させている。
【0019】
購買力、興味、年齢の3大リスク要因に基づくリスク値を考慮したLSV値を求めることにより、LSV値が近似するランキングの高い潜在顧客を、ランキングに従って上位から順次ピンポイントで選定する。選定された潜在顧客に対して、個人向け商品のエリア毎の潜在収益(潜在顧客数を含む)を算出し、従来よりも確率の高い個人向け商品販売を推進して支援する。潜在顧客先発掘を求める金融機関や企業などに対し、顧客のLSV値に基づいた効率的な潜在顧客発掘支援システムの提供が可能となる。
【0020】
LSV値は生活様式の類似性を示す数値であり、本発明のLSVナビは、所定演算式で導き出されたLSV値を、プロファイリングやランキングなどを行う潜在顧客発掘支援システムやGIS(地図情報システム)のフロービジネス(毎回の取引で売り切り、収益を上げていくスタイルのビジネス)での活用や、顧客ランキングや町ないし丁目の価値(潜在収益)の算出及びプロファイリングを提供するストックビジネス(顧客と契約を結び、会員の確保によって、継続的な利益を得るビジネススタイル)に活用できるツールである。
【0021】
また、発掘された潜在顧客情報を住宅地図や広域地図上に表示することにより、金融機関や企業などの支店毎に地域特性などが得られるなど、可視化に繋がる有効なツールとなる。地域特性としては、人口規模、人口密度、地域区分、気候、交通の状況などがある。
【0022】
本発明に係る潜在顧客発掘支援システムは、異なる多面的な要素を多様性として表現しそれを利用目的に合わせ直観的に理解しやすいユークリッド平面に写像するものであり、銀行などの金融機関のみならず、販売会社などの他業界の企業においても広く活用できる。また、5年毎に実施される国勢調査などの統計情報を利用し、クラスターリング分析で生成されたエリア毎の消費者行動特性や、企業が所有するCRM/SFA等に蓄積されている顧客取引データから得られたターゲット(顧客対象)となる顧客情報は、他のシステムでも共有して活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来のマーケティングの手順を説明するためのフローチャートである。
図2】LTVを説明するための模式図である。
図3】本発明で使用するLSVナビの原理を示す模式的フローチャートである。
図4】LSVナビによるターゲット抽出の流れを示す図である。
図5】分析結果報告書の一例を示す図である。
図6】本発明の構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の全体動作例を示すフローチャートである。
図8】潜在顧客数の商品総合計を求める例を示すフローチャートである。
図9】ツリー分析の動作例を示すフローチャートである。
図10】ツリーの一例を示す線図である。
図11】商品契約の確率を求める動作例を示すフローチャートである。
図12】潜在顧客抽出処理の動作例を示すフローチャートである。
図13】生活レベルとライフスタイルグループの関係の一例を示す図表である。
図14】ライフスタイルコードとセグメントの一例を示す図表である。
図15】住所と生活レベルの関係の一例を示す地図である。
図16】購買力に関するリスク値算出の模式図である。
図17】興味に関するリスク値算出の模式図である。
図18】年齢に関するリスク値算出の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、既存顧客のライフスタイルを分析することにより得られたライフスタイルクラスターデータの類似性、将来顧客となることにより予測される潜在収益、年齢などのリスク要因に関するリスク値を分析して数値化したLSV値を算出し、営業対象として設定された商品に対するLSV値を参照して、効率良く他地域の潜在顧客をピンポイントで発掘する潜在顧客発掘支援システムである。即ち、本発明は異なる多面的な要素を多様性として表現し、それを利用目的に合わせ、直観的に理解し易いユークリッド平面に写像するものであり、企業内のCRM、SFA、MCIF等に蓄積されている既存の顧客データ(ユーザ保有データ)、公開されている国勢調査などの統計情報、公開されている地形データを含む行政界データを用いてライフスタイルを分析することにより得られたライフスタイルクラスターデータを算出し、ライフスタイルクラスターデータの類似性を求める。店VCIF口座を町ないし丁目(以下、単に「町丁目」とする)毎にグループ化(セグメンテーション)すると共に、営業対象として設定(入力)された商品に対して、潜在収益とリスク値を算出する。そして、ライフスタイルクラスターデータの類似性、潜在収益及びリスク値に基づき、町丁目毎にライフスタイルを基準とした価値を示すLSV値を求め、町丁目単位の商品契約実績の高い顧客を求め、別の町丁目単位の潜在顧客率を計算し、潜在顧客数の商品総合計から、総口座数又は総人口を用いて潜在顧客数の潜在収益を推計し、銀行などの企業における個人向け商品の販売を強力に推進し、当該商品が購買されている他地域の潜在顧客の発掘に、科学的に資することが可能な革新的な営業支援システムである。
【0025】
ここで、「潜在収益」とは、潜在顧客と見込顧客を合算し、将来顧客が商品やサービスを必要と感じ、顧客となることにより予測される収益を意味しており、下記数11によって算出される。そして、「潜在顧客数」は、未だ商品やサービスが必要と感じていないか、或いは必要と感じているが導入又は購入していない顧客の予測数(潜在顧客や見込顧客を合わせた予測数)である。潜在顧客数は下記数12によって算出される。
(数11)
潜在収益=(統計情報を用いた町丁目の年間収入又は年間取引額)/(町丁目の総人口又は総口座数)
(数12)
潜在顧客数=町丁目の総世帯数又は総人口-名寄せ後の既存顧客口座数又は既存顧客数

また、「潜在顧客の契約率」は、町丁目で最も高い既存顧客の契約率を下記数13に従って求め、各町丁目の既存顧客の契約率を減算して、町丁目で最も高い既存顧客の契約率で除算して求める。即ち、下記数14によって、潜在顧客の契約率を算出する。
(数13)
既存顧客の契約率=(町丁目の名寄せ後の既存顧客口座数又は顧客数)/(町丁目の総世帯数又は総人口)
(数14)
潜在顧客の契約率=(町丁目で最も高い既存顧客の契約率-各町丁目の既存顧客の契約率)/(町丁目で最も高い既存顧客の契約率)

本発明では、町丁目単位の潜在収益を算出すると共に、価値観に大きく影響する技術の進歩や、景気や政治、世界経済の影響によるリスクを、人の持つ特性によるリスク要因(購買力、興味、年齢など)でリスク値として客観的に数値化し、年単位(例えば1年~5年)で見直すようにする。本発明ではリスク値を、運に繋がる可能性が高い購買力、能力に繋がる可能性が高い興味、人脈に繋がる可能性が高い年齢から求めている。なお、既存顧客の目に見えない人の信用力(身分特質、履行能力、信用歴史、人脈関係、行為偏好などを指す)とリスク値とは反比例の関係であり、リスク値が大きいと信用力が小さく、逆にリスク値が小さいと信用力は大きく評価される。その関係は、後述の数15に示されている。本発明では数値的に算出が容易なリスク値を求め、リスク値を用いてLSV値を算出している。
【0026】
現在の市場、例えばSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)関連、自動車、造船業界などでは、新たなルール作りによって生まれ変わらせる手法が多く採られている。つまり、新たな別の市場(業界作り)を求めるのではなく、殆ど既存の市場を再利用することで成り立っていることが多い。既存の市場に対して、より効果的に新たな商品を提案するため、既存の顧客生涯価値(LTV)から、より現状に近い顧客価値を算出する仕組みが求められているが、LTVの評価に問題のあることは前述の通りである。従って、本発明では、既存顧客のライフスタイルを分析し、その人のライフスタイル価値(LSV値)を算出すると共に、営業業績の芳しくない地域の潜在顧客を発掘する方法として、LSV値を用いたLSVナビを新たに提案する。本発明のLSVナビを例えれば、公開されている国勢調査などの統計情報と行政界データ(地形データ)を利用し、クラスターリング分類で生成されたエリア毎のライフスタイルクラスターデータを、好漁場(Good fishing grounds)情報の例えとして活用すると共に、金融機関などの企業が所有するCRM/SFA等に蓄積されている顧客データから,ターゲットとなる顧客(潜在顧客)を抽出して獲得(ピンポイントで「ヒット」)する仕組み(ナビゲーション)である。
【0027】
図3は、本発明で使用するLSVナビの概略を示す模式的なフローチャートであり、図3(A)に示すように先ずターゲット(営業対象とする商品を購入する顧客)を定め、次に図2(B)に示すようにターゲットが居住する丁目町(好漁場の例え)を特定する。例えば営業対象とする商品の購買量が高い地域と共通し、富裕層が多く居住する地域などである。そして、LSVナビを用いて図3(C)に示すようにターゲットの絞り込みを行い、次いで図3(D)に示すようにDB(データベース)の解析からリストアップの突合せを行い、営業地域でのターゲット(潜在顧客)の獲得、つまり1本釣り(ヒット)を行って商品の販売促進を図るようにしている(図3(E))。
【0028】
図4は、LSVナビによるターゲット(潜在顧客)発掘の流れを示しており、金融機関等のユーザ企業が保有するユーザ保有データは、図4(A)に示すように顧客番号、氏名、性別、住所、生年月日などを付記されて分類されており、このユーザ保有データに、図4(B)に示すようなライフスタイルクラスター分類で得られたライフスタイルクラスターデータLDと、図4(C)に示すような行政界データとを用いて、図4(D)に示すようなLSV値を下記数16に従って算出し、LSV値を参照して営業を企図する地域に対して、図4(E)に示すような分析された潜在顧客リスト(ランキング)を得る。LSV値は、ライフスタイルクラスターデータLDの類似性を求め、町丁目毎の潜在顧客数から潜在収益を算出し、顧客毎にライフスタイルクラスターデータLDの類似性、潜在収益、リスク値を乗算して求める。ライフスタイルクラスターデータLDの「類似性」とは、図13及び図14のライフスタイルに示されているように、公開されている国勢調査などのデータ情報を利用し、消費者行動特性(地理的人口統計データ)で分類されたグループの町丁目エリアに住む人々は、基本的に同じ消費者行動をとると予想されている。預かり資産の代表である普通預金、定期預金は地域的に差がないことから、町丁目単位の消費者行動パターンには類似性があると考えられる。
【0029】
しかしながら、リスク値をそのまま乗算すると、リスク値が大きいほどLSV値も大きくなってしまうので、信用力に換算した値を乗じる。即ち、リスクと信用が相反関係にあることから、リスク値と信用力を最大値”100(%)”の数値で表わした場合、リスク値は下記数15で表わされる。
(数15)
リスク値(%)=100-信用力 → 信用力=100-リスク値(%)

よって、LSV値は下記数16で算出する。
(数16)
LSV値=ライフスタイルクラスターデータLDの類似性×潜在収益
×(100-リスク値(%))

分析結果を示す潜在顧客リストの個別顧客(例えばランク1)の詳細は図5であり、潜在顧客リストには、ランク、氏名、グループ、セグメント、リスク値などが含まれている。リスク値は、人の持つ特性によるリスク要因、例えば購買力、興味、年齢に対してリスクを数値化したものであり、裏返せば信用力ともいえる。グループ(コード)とセグメントの対で成るライフスタイルクラスターデータLDには、後述するライフスタイルコードが付されており、ライフスタイルクラスターデータLDは、近くに住む人たちは似たような属性やステータスを持ち、ライフスタイルや行動、態度を共有するであろうという仮定に基づき、国勢調査などの統計情報をベースに、ライフスタイルクラスターデータ生成部(210)でクラスターリング分類することによって得られる。詳細は後述するが、例えば、大都市で活躍するエリートのグループA(都会の高層マンション等に暮らし、日本の経済と文化を牽引する高学歴・高収入のエリートたち)、高級住宅地のエグゼクティブのグループB(大都市郊外の高級住宅地で暮らす。大企業で出世して社会的な地位を手にした裕福な家族世帯)のようにクラスターリング分類される。また、行政界データには、町丁目単位毎に人口と面積が付記されている。
【0030】
図6は、本発明システム100が連携する全体構成例を示しており、本発明に係る潜在顧客発掘支援システム100はDB(データベース)110と、DB110に連携するLSVナビシステム120とを具備すると共に、一般的なコンピュータと同様に、キーボード、マウス等の入力部111と、データ出力、送信、プリンタなどの出力部112と、ディスプレイ画面などの表示部113と、CPU、メモリなどで構成される演算部114とを有しており、LSVナビシステム120は、LSV値を算出するLSV値算出部121と、潜在顧客の順位付けを行うランキング部122と、潜在顧客にライフスタイルラスターデータを付与して推計するプロファイリング部123と、町丁目にグループ化するセグメンテーション部124とで構成されている。
【0031】
LSVナビシステム120には、ユーザ保有データ200からの顧客データ、ライフスタイルクラスターデータ生成部210からのライフスタイルクラスターデータLD、行政界データ220が入力される。行政界データ220は全国の行政界について、都道府県名、支庁・振興局名、郡、政令指定都市名、市区町村名、行政区域コード等をGISデータとして整備したものである。ライフスタイルクラスターデータLDは、国勢調査などによる統計情報からライフスタイルクラスターデータ生成部210で生成される。一般的に「統計情報」とは、国勢調査や商業統計など一定の条件下で調査した結果を集計して加工したものであるが、本発明で使用する統計情報250には、各省庁(国勢調査も含む)や自治体・各種業界団体が調査した情報が包含されている。例えば野菜=統計情報、キャベツ=国勢調査、大根=商業統計であり、既存のエリアマーケティングシステムで利用する際に良く用いられる区画が「メッシュ」や「行政界」である。本発明では、図3に対応させれば、好漁場を示す区画が「行政界」で、その中にどのような魚が存在するかを調べた統計が「国勢調査」となる。
【0032】
金融機関等の顧客200はCRM/SFA205を備えており、ユーザ保有データとして個人顧客データ201,法人顧客データ202,取引データ203,商品データ204を有している。SFA(Sales Force Automation)は営業支援システムであり、CRMの中には営業活動の支援・管理が含まれているので、CRM/SFA205はCRMを実践するパーツの1つとしてSFAを含む構成である。正確にはマーケティングからサポートサービスまでの幅広い業務で活用されるCRMに、営業を支援するSFAが一機能として含まれていることになる。ユーザ保有データは金融機関などのユーザ企業が保持しており、金融機関の場合はホストコンピュータや各種システム(CRMやSFAも含む)に取得目的毎に格納されており、必要に応じて個人顧客データ201,法人顧客データ202,取引データ203,商品データ204などのデータとして抽出することができる。これらユーザ保有データ群をLSVナビシステム120に取り込み、求めたLSV値をCRM/SFA205へ戻すことになるが、本例のようにユーザが既にCRM/SFA205を保有している場合は、一時保管用のDB110に格納される。
【0033】
LSVナビシステム120は、ユーザ(購入者若しくは使用者)が保有する各種データ(個人顧客データ201,法人顧客データ202,取引データ203,商品データ204)に対し、ライフスタイルクラスターデータ生成部210からのライフスタイルクラスターデータLD及び行政界データ220を用いて、数16に基づいてLSV値を算出し、ランキング部122により順位付けされた潜在顧客リストを作成して出力部112から出力すると共に、表示部113に表示する。LSV値算出部121は、マーケティング活動を支援する統計手法やツールの集合体において、取得した各種データを分析してLSV値を算出し、セグメンテーション部124は、ある市場から分割された近似な性質(考え方や価値観)を持つ顧客層に対し、市場を細かく分け(町丁目単位)、ニーズ(販売したい取り扱い商品(例えば新製品、顧客が所有していない商品など))毎にグループ化する。また、ランキング部122は、得られた集合体にLSV値を基に順位付けを行い、プロファイリング部123は、自社製品やサービスの顧客となり得る潜在的な顧客に対し、ライフスタイルクラスターデータを付与して推計する。
【0034】
図7は、地銀A銀行が「町丁目単位の人口統計データ」を導入すると想定した場合の、営業支援のフローチャートであり、LSVナビシステム120は、先ず町丁目のグループであるライフスタイルクラスターデータLDを入力すると共に、ユーザ保有データから地銀A銀行取引先の町丁目の顧客データの導入を行う(ステップS10)。次いで、セグメンテーション部124は、店CIF(店-顧客情報ファイル)の町丁目別のグループ化(セグメンテーション)を行い(ステップS11)、名寄せ後、店CIF口座の名義者の年齢とライフスタイルクラスターデータLDのグループ毎の集計を行う(ステップS12)。CIFは、口座を開設した際に顧客毎に割り振られる一意の管理番号であり、これに金融機関の店舗(支店)を特定する店番号を紐付けして店CIFと称している。また、「名寄せ」とは、複数に分散されているデータベースの同一人物、同一企業、同一世帯に対し、同一のIDを付与するなどして、データを単一の主体に統合することである。
【0035】
次に、前記数16により、各顧客のLSV値をLSV値算出部121で算出し(ステップS20)、更にLSV値の算出に用いているリスク値から年齢区分別のグループ別に、入力部111を介して対象商品(営業対象の商品(例えば「5年定期預金100万円」))の設定を行う(ステップS30)。LSV値は数16のように、ライフスタイルクラスターデータLDの類似性を求め、町丁目毎の潜在顧客数から潜在収益を算出し、顧客毎にリスク値を乗じて求めるが、各個人(既存顧客)の持つ特性によるリスク要因も存在するため、例えば購買力、興味、年齢に対して顧客のリスクを数値化したリスク値を用いる。LSV値の算出は全ての町丁目の顧客について行い、年齢区分別、グループ別、商品別に収益計算(業務純益ベース)、潜在収益、リスク値を用いて行う。なお、LSV値、リスク値の算出については後述する。
【0036】
そして、ユーザ保有データから、算出されたLSV値に基づいて町丁目単位(例えば地域X)の商品契約実績の抽出を設定された商品について行い(ステップS31)、町丁目単位における商品契約実績の高い顧客をランキング部122で、ランキングを付して求める(ステップS32)。町丁目単位毎に商品契約実績の高低が分かると共に、全顧客のLSV値も分かっているので、商品契約実績の高い顧客のLSV値も分かる。演算部114は、商品契約実績の最も高い地域と商品契約実績の低い地域の既存顧客の契約率の差に基づいて潜在顧客の契約見込率を求め(ステップS33)、町丁目単位の潜在顧客見込数を求める。潜在顧客の契約見込率は、下記数17に従って求める。
(数17)
潜在顧客の契約見込率=町丁目において最も高い既存顧客の契約率-契約実績の低い地域の既存顧客の契約率

数17によって潜在顧客の契約見込率が求められて後、町丁目の既存顧客を除いた潜在顧客数に対して潜在顧客の契約見込率を乗算して、潜在顧客見込数の最大値を求める。
(数18)
潜在顧客見込数=潜在顧客数×潜在顧客の契約見込率

次いで、同じ年齢区分の全てのグループの集計、全ての年齢区分の集計、全ての商品の同様の集計により、潜在顧客見込数の商品総合計を求め(ステップS40)、プロファイリング部123により潜在顧客見込数の潜在収益を前記数11に従って算出し(ステップS50)、丁目単位の潜在顧客見込数からの営業(通常の営業業務)を行う(ステップS51)。潜在収益を算出し、実際の取引先における収益との差異を把握することにより、既存の取引を掘り起こすのか、或いは新たな商品の発掘先として見直すのかなど、市場価値を判定することになる。数11の潜在顧客見込数の潜在収益の推計は、現在の商品口座数との比較により、LSV値による収益を求めることにより実施される。
【0037】
図8は上記ステップS40の詳細を示しており、先ず最も契約率の高い口座の属性項目、取引項目の組み合わせを調べ、商品別・グループ別契約率を予測し(ステップS41)、該当する町丁目の商品の持っている口座、町丁目の中で商品を持っていない口座に基づき、母集団の特定化を行う(ステップS42)。即ち、母集団の特定化は、先ず商品、年齢区分、性別、グループを特定する。グループは特定されているので、町丁目の中で、商品を持っている名寄せ後の店CIF口座(以下、単に「口座」とする)を集計すると共に、同じ町丁目の範囲で、商品を持っていない全ての口座を集計する。双方の合計件数が母集団となり、これが5000件を下回るような場合には、特定化の条件を緩和する。例えば、年齢区分(5才刻み)では5000件が無い場合、10才刻みとし、必要があれば、ある条件項目は完全に外す。口座の持つ属性情報及び取引項目は予め決めておく。例えば店CIF(名寄せ後)にグループ付与する場合、名寄せ後の店CIFにグループを付与し、口座にはモザイクのグループ名、氏名、年齢、性別、住所、取引項目が付与され、口座の属性情報項目及び取引項目は事前に決めておき、全ての口座で同じとする。
【0038】
次いでツリー分析を行い(ステップS43)、ツリー分析結果を各町丁目口座に当てはめる(ステップS44)。ツリー分析の詳細については後述する。各町丁目口座への当てはめは、各町丁目のツリー分析で得られた取引項目の組み合わせを持ち、かつその商品を現在未だ持っていない口座を、契約率の高い順に整列させたランキングリストを作成し、当該商品を契約する確率の高い潜在顧客のリストと顧客数を求める。潜在顧客リスト(図4(E)参照)には、店CIF、氏名、住所、電話番号などが含まれる。上記ステップS44の各町丁目口座への当てはめ後、潜在顧客リストに個人格付けを付与する(ステップS45)。個人格付けは個人顧客のリスクの推計データベースになり、営業推進とリスクコントロールの同時実施が可能となる。その際、潜在顧客が商品を契約する確率が高くても、リスク値の高い顧客(例えば営業推進とリスクコントロールの同時実施が可能となる。その際、潜在顧客が商品を契約する確率が高くても、リスク値95以上)は、コンタクトする前に事前に除外しておくことが必要であり、同様にコンタクト禁止先の口座等も事前に除外しておく。ローン商品では、契約率が高く、かつ個人格付けの低い口座が最も契約率が高くなる。預かり資産系の商品では契約率が高く、個人格付けの高い顧客が最も契約率が高くなる口座である。いずれの場合にも、リスク値の高い口座は事前に除外しておく。
【0039】
上記ステップS43のツリー分析の詳細を、図10のツリー図を参照して説明する。母集団(全サンプル数「1000」、全口座数「1500」)は先ず男性(全サンプル数「6000」、全口座数「1200」)と、女性(全サンプル数「4000」、全口座数「300」)とに分類され、男性及び女性共に、更にクレジットカード所持の有無で細分類され、それぞれにノード「001」~「004」が付与されている。図10の各項目の括弧の中はいずれも、分類されたサンプル数と、その中でクレジットカードを持っている口座数と、その割合とを示している。変数は全てアンド条件となっているので、ノード「001」は、男性で銀行クレジットカードを所持している口座、ノード「002」は、男性で銀行クレジットカードを所持していない口座、ノード「003」は、女性で銀行クレジットカードを所持している口座、ノード「004」は、女性で銀行クレジットカードを所持していない口座となる。実際には、変数(全サンプル数と全口座数)は次々と現れるが、ここでは2変数とし、変数の組み合わせをノードと呼び、ここでは4ノード(「001」~「004」)が示されている。ノードには、変数の組み合わせと、その組み合わせで示されるクレジットカード商品の契約率(カード保有割合)が表示される。ほぼ全ての金融機関では、クレジットカード一体型のキャシュカードを顧客に付与しているが、クレジットを利用しない顧客もいるため、クレジットカード不所持でも、カード保有割合がゼロではない。
【0040】
図10に示されるツリー分析では、最もクレジットカードの契約率が高いのは、ノード「001」の男性でクレジットカード所持(有)と言う口座であれば、クレジットカード商品の契約率は27.5%と高く、反面ノード「004」の女性でクレジットカード不所持(無)の口座の、クレジットカード契約率は1.1%と非常に低くなっている。ツリー分析が終了した後、契約率の高い順にノードを並べ、それぞれのノードで属性項目、取引項目の組み合わせが決まる。図10の例であれば、契約率の高い順は、(1)男性でクレジットカード所持、(2)女性でクレジットカード所持、(3)男性でクレジットカード不所持、(4)女性でクレジットカード不所持となる。
【0041】
上記ステップS44の詳細は図9のフローチャートであり、ツリー分析結果を各町丁目の口座に適用する処理である。先ず商品を契約する確率を算出し(ステップS44-1)、属性項目及び取引項目の組み合わせによりリスク(若しくは信用)を分析する(ステップS44-2)。商品契約の確率を求める手法については後述するが、ライフスタイルコートやユーザ保有データを使用する。同じグループの各町丁目の口座の中で、契約率の高いノードと同じ属性項目、取引項目の口座で、なおかつクレジットカード商品を持っていない口座を選び出してリストアップする共に、ノードの契約率の高い順に、順次上記選び出しを行い(ステップS44-3)、各ノードで取引情報の組み合わせを決定する(ステップS44-4)。選び出された口座は特定の口座であり、氏名、住所、電話番号が付与されているので、コンタクトがDMであれ、渉外担当者であれ、特定個人に対する営業活動になる。ここでは、リストアップされた口座の顧客リストに対し、更に個人格付けを付与する。個人格付けに際して、例えばリスク値が“95”以上の顧客はリストから除外される。
【0042】
ここで、商品契約の確率を求める手法の動作例を、図11のフローチャートに示して説明する。
【0043】
先ず、口座の町丁目、年齢、町丁目の商品毎の契約率等に基づいて、口座リストからグループ毎に口座を分類し(ステップ44A)、商品を特定する(ステップ44B)。次いで、同じグループの口座間で決められた特定商品の契約確率1を算出し(ステップ44C)、特定商品を持つ口座と、特定商品を持たない口座を1つの母集団として、特定商品の契約確率2を算出する(ステップ44D)。その後、ツリー分析を使用し(ステップ44E)、特定商品の契約確率が終端ノードに示され(ステップ44F)、終端ノードには、当該ノードに含まれるサンプル数及び契約口座数が示され、その割合が契約確率として出される(ステップ44G)。
【0044】
潜在顧客発掘支援システム100による潜在顧客抽出処理を、図12のフローチャート(図7の詳細版)を参照して詳細に説明する。
【0045】
同一顧客が複数の口座を保有している場合、顧客属性情報(名前、住所、生年月日(個人)、設立年月日(法人)等)を用いて既存口座との属性一致を確認し、一致する場合は同一顧客の複数口座として「一元管理」する必要がある。この一元管理のための名寄せ処理(ステップS100)の後、セグメンテーション部124により口座所有者の住所の町丁目に従ってグループを付与し(ステップS110)、年齢によって口座を、例えば5歳刻みに分類する(ステップS111)。年齢区分によって分類された口座を更に外部データとして購入する、クラスターリング分析で生成された消費者行動の類似性(ライフスタイルクラスターデータLD)を,ライフスタイルコードやユーザ保有データより求めたエリア毎の分類結果をグループに分け(ステップS112)、グループの口座を再度町丁目毎に分ける(ステップS113)。購入する外部データとCRM/SFA110に蓄積されている顧客取引データを組み合わせることで、主要な個人商品をベースとしたLSV値(疑似値ではあるが)が生成される。生成されたLSV値はその定義上最大化されることが求められ、最大化の処理を行う。LSVナビシステムの目的は「潜在顧客発掘」と「顧客維持率」を高めることがポイントである。コストをかけ過ぎると「顧客維持費用」が増えてしまうため、収益率が低下する。作業の効率化によって、コストを抑えながら、「潜在顧客発掘」と「顧客維持率(契約利用率)」を高めることが重要である。
【0046】
特定した営業地域に居住するターゲットを町丁目毎の取引価格を高めるため、購入頻度及び既存顧客の新規顧客化の可能性を最大化することにより潜在顧客を予測する。つまり、現状取引先との差異を確認する。この処理で得られたLSV値をベースに全ての個人商品のエリア毎のターゲット顧客の規模が計算される。そして、各町丁目の口座数と商品の契約数の合計を算出し(ステップS114)、各町丁目の人口を算出し(ステップS115)、各町丁目の商品毎の契約率を算出する(ステップS116)。この契約率は、人口1人当たり或いは口座1口座当たりの契約率である。
【0047】
次に、商品毎に、契約率の最も高い町丁目の契約率を決定し(ステップS117)、最も高い契約率から各町丁目の契約率を減算して潜在顧客の契約見込率を算出し(ステップS118)、潜在顧客の契約見込率にその町丁目の人口或いは口座数を乗算して潜在顧客見込数を決定する(ステップS119)。潜在顧客見込数が決まっても、顕在化させるためには通常の営業努力が要求される。上記ステップS110~ステップS119が分類処理である。
【0048】
上記ステップS110で求められた口座リストから、個人商品のエリア毎の潜在顧客をグループ毎に口座を分類し(ステップS120)、商品を特定する(ステップS121)。次いで、同じグループの口座間で決められた特定商品の契約率を算出し(ステップS122)、特定商品を持つ口座と持たない口座を1つの母集団として、特定商品の契約率を算出し(ステップS123)、図10に示すツリー分析を実施する(ステップS124)。特定商品の契約率は終端にノードとして示され、ノードには、図10に示されるようにそのノードに含まれるサンプル数、契約口座数が示されると共に、その割合が契約率として表示される。
【0049】
次に、契約率の最も高いノードから順に全てのノードを並べ換え(ステップS125)、契約率の最も高いノードのサンプルの中で、特定商品を持たない口座数が表示される(ステップS126)。次いで、特定商品を持たない口座を町丁目で分類してリストアップし(ステップS127)、上記方法を契約率の高いノード毎に順次行う(ステップS130)。同じグループの町丁目毎に特定承認の契約率の高い順に口座をリストアップし(ステップS131)、上記方法を全てのグループ毎に行い(ステップS132)、更に上記方法を全ての商品について行う(ステップS133)。この方法では特定商品を持たない口座の全てが契約の対象となる可能性がある。しかし、現状の取引状況の中で、契約率の高い口座を指定することが肝要である。このため、各町丁目で契約率の高い順にリストアップされた口座にキャップを乗算する必要があり、そのキャップとなるのは、上記ステップS127で示される各町丁目の潜在顧客数である。上記潜在顧客数の算出は年齢区分毎に行われる。町丁目毎にリストアップされた口座を年齢区分で再分類し(ステップS134)、その結果を潜在顧客数と比較する。最終アウトプットは、グループ毎、商品毎、町丁目毎にその商品を購入する契約率の高い口座リストとなる(ステップS140)。
【0050】
生活レベルを含むライフスタイルの分類は、例えば図13に示されるものが知られており、都市化度は「田舎エリア」、「郊外エリア」、「シティエリア」、「都心エリア」に分類され、富裕度も「田舎エリア」、「郊外エリア」、「シティエリア」、「都心エリア」毎に定められている。例えば「都心エリア」の富裕度は「トレンディライフ」、「アーバンミドルクラス」、「下町」に分類される。各分類に割り当てられるライフスタイルクラスターデータを一覧にすると図13のようになり、顧客の住所に対する生活レベルの関係も、例えば図15に示すようなエリア情報で定められているので、これらの情報に基づいてライフスタイルコードを自動的に付与することができる。
【0051】
また、ライフスタイルクラスターデータLDの内容は、例えば図14であり、ライフスタイルクラスターデータはライフスタイルコードとセグメントで構成されている。
【0052】
次に、企業が所有すると思われるデータとして取り上げる分析項目は、例として、預貯金・投資、職業、不動産、信用実績、所得、家族構成、年齢などの各項目に、それぞれベクトル空間を対応させ、個人を含め、企業を示す地図情報及び個人名(家系図情報に関する)に対応する。
【0053】
図16は、3大リスクの内の購買力についてのリスク算出例を示す模式図であり、学歴、職業、所得、信用、家族構成、趣味及び不動産を特性要因としており、学歴には海外留学の有無、最終学歴(専門学校、高校、大学など)などが含まれ、職業には経営者(創業者、後継者など)、規模、勤労者(大手企業、公務員、中小企業など)などが含まれ、所得には年齢、配当金所得、給与などが含まれている。家族構成には、年代別に2世帯以上同居、核家族、独身などが含まれ、趣味には、高級志向の車やヨット、旅行、女性関係(噂有り、噂無し、不明など)、ギャンブル(強運、好き、普通、しない、など)などが含まれ、不動産には、遺産・相続(事業用地、自宅、農地、貸マンションなど)、自己取得(事業用地、自宅、農地、貸マンションなど)、不動産賃貸(事業用地、農地、貸マンションなど)などが含まれ、信用実績には、取引実績良好、まずまず、劣る、反社関係などが含まれる。
【0054】
リスク分析の対象商品は資産運用(投資信託)、生命保険、流動性預金(外貨預金、定期預金など)、住宅ローン(個人、法人)、クレジットカードで、物品販売にも適用される。リスク要因の興味のリスク算出の例は図17であり、年齢についてのリスク算出の例は図18である。図17における投資には、投信、預金、株については、実績有り、興味有り、なしが含まれ、図18における健康には、病気・障害について、加齢による、持病有り、障害有り、健康が含まれる。
【0055】
「興味=興味がない」で、”90”を仮にリスク値とした場合、信用力に換算した値を求める。諦めたほうが良い、迷いは仮にリスク値40、興味があればリスク値15として信用力に換算する。また、「購買力=金がない」であり、学歴、職業、所得、信用、家族構成、趣味、不動産が要因となり、「年齢=あとがない」であり、年齢がリスク値となり、年齢が高いほど復活が難しく、後がないとなる。そして、興味がない(A)、買う金がない(B)、年齢的にもう後がない(C)が3大リスクであり、全て揃えば最悪リスクとなる。上記3つの要因の組み合わせ(A、B、C、AB、AC、BC、ABC)で信用力を求める。例えば「金がないけど、興味があり若い」、「金があり、若いけど興味がない」、「金も興味もあるが後がない」などである。
【符号の説明】
【0056】
100 潜在顧客発掘支援システム
110 DB(データベース)
111 入力部
112 出力部
113 表示部
114 演算部
120 LSVナビシステム
121 LSV値算出部
122 ランキング部
123 プロファイリング部
124 セグメンテーション部
200 顧客システム
201 個人顧客データ
202 法人顧客データ
203 取引データ
204 商品データ
205 CRM/SFA
210 ライフスタイルクラスターデータ生成部
220 行政界データ
250 統計データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18