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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042617
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20230320BHJP
   H10K 39/10 20230101ALI20230320BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149815
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】519259342
【氏名又は名称】株式会社エネコートテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】徳田 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】高濱 豪
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA18
5F151CB14
5F151CB15
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA18
5F151GA03
5F151GA05
5F151JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デバイス内への水分や酸素の侵入を防止し,耐久性の高いペロブスカイト太陽電池を提供する。
【解決手段】支持体11と,支持体11上に設けられた太陽電池素子12と,太陽電池素子12全体を覆う接着剤層13と,接着剤層13の全体を覆う封止剤層14を含み,太陽電池素子13は,透明電極と,ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と,裏面電極と,をこの順に含み,封止剤層14は,接着剤層13を覆う本体部と,本体部と接続された端部領域15とを含み,端部領域15の平均密度は,本体部の平均密度の1.01倍以上2倍以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と,
前記支持体上に設けられた太陽電池素子と,
前記太陽電池素子を覆う接着剤層と,
前記接着剤層を覆う封止剤層と,を含み,
前記太陽電池素子は,
電極と,
ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と,
裏面電極と,をこの順に含み,
前記封止剤層は,
前記接着剤層を覆う本体部と,
前記本体部と接続された端部領域とを含み,
前記端部領域の平均密度は,前記本体部の平均密度の1.01倍以上2倍以下である,
太陽電池。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池であって,
前記前記端部領域の幅が,0.5mm以上1.5cm以下である,太陽電池。
【請求項3】
太陽電池の製造方法であって,
支持体上に太陽電池素子を設ける工程と,
前記太陽電池素子の全体を覆う接着剤層を設ける工程と,
前記接着剤層の全体を覆う封止剤層を設ける工程と,
前記封止剤層のうち端部に圧力を印加し端部領域を形成する端部加圧工程と,を含む,
太陽電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池の製造方法であって,
前記端部加圧工程において,前記封止剤層のうち端部領域の厚さが前記端部加圧工程の前の厚さの55%以上90%以下となるように圧縮される,太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はペロブスカイト太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト太陽電池は水に弱く,デバイス内部に水が入らないようなデバイスの構造を作ることが課題である。WO2018/052032号公報には,ペロブスカイト太陽電池の全体を覆う有機絶縁層の側面全体を封止する構造が記載されている。このデバイスは,金属箔からなるフレキシブル基材と透明電極の間に設けられた有機絶縁層から水が浸入しやすいため,その有機絶縁層をバリア層で封止する。しかしながら,バリア層と透明電極の界面から水が浸入する問題は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2018/052032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は,耐久性の高いペロブスカイト太陽電池を提供することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書に記載される太陽電池は,支持体と,支持体上に設けられた太陽電池素子と,太陽電池素子を覆う接着剤層と,接着剤層を覆う封止剤層端部領域を含む。封止剤層は,接着剤層を覆う本体部と,本体部と接続された端部領域とを含み,端部領域の平均密度は,本体部の平均密度の1.01倍以上2倍以下である。そして,太陽電池素子は,電極と,ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と,裏面電極と,をこの順に含む。
【0006】
上記の太陽電池の好ましいものは,端部領域の幅が,0.5mm以上1.5cm以下である。端部領域
【0007】
上記の太陽電池の好ましいものは,端部領域が不透明である。
【0008】
この明細書に記載される太陽電池の製造方法は,
支持体上に太陽電池素子を設ける工程と,
太陽電池素子の全体を覆う接着剤層を設ける工程と,
接着剤層の全体を覆う封止剤層を設ける工程と,
封止剤層のうち端部に圧力を印加し端部領域を形成する端部加圧工程と,を含む。
【0009】
端部加圧工程において,封止剤層のうち端部領域の厚さが端部加圧工程の前の厚さの55%以上90%以下となるように圧縮されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば,水の侵入を防止でき,耐久性の高いペロブスカイト太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は,本発明の太陽電池の断面図の一例を示す概念図である。
図2図2は,本発明の太陽電池を上から見た図の一例を示す概念図である。
図3図3は,本発明の太陽電池の断面図の一例を示す概念図である。
図4図4は,本発明の太陽電池の断面図の一例を示す概念図である。
図5図5は,ペロブスカイト太陽電池素子(順型)の構造の一例を示す概念図である。
図6図6は,ペロブスカイト太陽電池素子(逆型)の構造の一例を示す概念図である。
図7図7は,実験例の太陽電池の断面図を示す概念図である。
図8図8は,実験例の太陽電池を上から見た図を示す概念図である。
図9図9は,実験例の太陽電池の断面図の一例を示す概念図である。
図10図10は,実験例の太陽電池の断面図の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0013】
太陽電池
最初の発明は,太陽電池に関する。図1図3,及び図4は,太陽電池の断面図を,図2図1に示した太陽電池を上方から見た図を示す概念図である。図1図4に示されるように,この太陽電池1は,第1の支持体11と,(ペロブスカイト)太陽電池素子12(4)と,接着剤層13と,接着剤層全体を覆う封止剤層の本体部14と,封止剤層の端部領域15を有する。封止剤層の本体部と端部領域とは連続的につながっていることが好ましい。
【0014】
支持体11
支持体11として,有機系太陽電池や有機EL素子における公知の基板を適宜用いることができる。基板の例は,ガラス,プラスティック板,プラスティック膜,無機結晶体などが挙げられる。また,これらの表面の一部又は全部の上に,金属膜,半導体膜,導電性膜及び絶縁性膜の少なくとも1種の膜が形成されている基板も好適に用いることができる。特に,薄型化,軽量化のため,支持体は,可撓性基板(フレキシブル基板)であるのが好ましい。
【0015】
太陽電池素子12
太陽電池素子は,太陽光などの光を受けて発電する機能を有する素子を意味する。太陽電池素子は,電子輸送層とホール輸送層でペロブスカイト層(光吸収層・光電変換層)を挟んだ形状を有するものが好ましい。ペロブスカイト層は,有機無機ハイブリッド化合物からなるペロブスカイト層が好ましい。図5に示されるように,太陽電池素子4は,透明電極40側から電子輸送層46,ペロブスカイト層47,正孔(ホール)輸送層48,及び裏面電極49が形成された順型構造でもよい。また,図6に示されるように,太陽電池素子4は,透明電極40側から正孔輸送層48,ペロブスカイト層47,電子輸送層46,及び裏面電極49が形成された逆型構造の何れであっても構わない。
【0016】
電極40
電極は,光を透過させるため透明電極であることが好ましい。透明電極は,電子輸送層の支持体であるとともに,ペロブスカイト層(光吸収層・光電変換層)より電子を取り出す機能を有する層である。電極は,支持体11上に形成される。透明電極は,導電体から形成されており,具体例としては,スズドープ酸化インジウム(ITO)膜,不純物ドープの酸化インジウム(In)膜,不純物ドープの酸化亜鉛(ZnO)膜,フッ素ドープ二酸化スズ(FTO)膜,これらを積層してなる積層膜,金,銀,銅,アルミニウム,タングステン,チタン,クロム,ニッケル,コバルトなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上の混合であっても,また,単層でも積層であっても構わない。これらの膜は,例えば拡散防止層として機能するものであってもよい。これら電極の厚みは特に制限されず,通常,シート抵抗が5~15Ω/□(単位面積当たり)となるように調整することが好ましい。電極は,形成する材料に応じ,公知の成膜方法により得ることができる。また,これらの電極は,膜状であっても,メッシュ状のような格子状に形成されていても構わない。支持体上に電極を形成する方法は公知のものを用い,真空蒸着やスパッタリング等の真空製膜が好ましい。また透明電極は,パターニングされたものを用いてもよく,その方法としてはレーザーやエッチング液に浸す方法,真空製膜時にマスクを用いてパターニングする方法が挙げられ,本発明においては何れの方法であっても構わない。
【0017】
電子輸送層46
電子輸送層46は,電子輸送性の半導体が好ましく,チタン,スズ,亜鉛,鉄,タングステン,ジルコニウム,インジウム,セリウム,イットリウム,アルミニウム,マグネシウム,バナジウム,ニオブの酸化物,カドミウム,亜鉛,鉛,銀,アンチモン,ビスマスの硫化物,カドミウム,鉛のセレン化物,カドミウムのテルル化物等の金属カルコゲニドが挙げられ,これらの中でも酸化物が特に好ましい。その中でも,特に酸化亜鉛,酸化スズ,酸化チタンが特に好ましい。電子輸送層は単層であっても多層であってもよく,多層の場合,粒径の異なる半導体微粒子が多層塗布された多孔質形状であっても構わない。多孔質形状の場合,半導体微粒子の粒径は3~100nmが好ましく,5~70nmがより好ましい。膜厚は5~1000nmが好ましく,10~500nmがより好ましい。
【0018】
電子輸送層の形成方法は特に制限は無い。スパッタリングやイオンプレーティング等の真空製膜やゾル-ゲル等の湿式製膜の何れであっても構わない。
【0019】
正孔輸送層48
正孔輸送層48は,電荷を輸送する機能を有する層である。正孔輸送層には,例えば,導電体,半導体,有機正孔輸送材料等を用いることができる。当該材料は,ペロブスカイト層(光吸収層)から正孔を受け取り,正孔を輸送する正孔輸送材料として,機能し得る。当該導電体及び半導体としては,例えば,CuI,CuInSe,CuS等の1価銅を含む化合物半導体;GaP,NiO,CoO,FeO,Bi,MoO,Cr等の銅以外の金属を含む化合物が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,1価銅を含む半導体が好ましく,CuIがより好ましい。有機正孔輸送材料としては,例えば,ポリ-3-ヘキシルチオフェン(P3HT),ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](PTAA)等のトリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等が挙げられる。なかでも,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,トリフェニルアミン誘導体,フルオレン誘導体等が好ましく,PTAA,Spiro-OMeTADなどがより好ましい。
【0020】
正孔輸送層中には,正孔輸送特性をさらに向上させることを目的として,リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI),銀ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,トリフルオロメチルスルホニルオキシ銀,NOSbF6,SbCl5,SbF5,トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリ[ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド]等の酸化剤を含むこともできる。また,正孔輸送層中には,t-ブチルピリジン(TBP),2-ピコリン,2,6-ルチジン等の塩基性化合物を含むこともできる。酸化剤及び塩基性化合物の含有量は,従来から通常使用される量とすることができる。正孔輸送層の膜厚は,より効率的に正孔のみを受け取り,より高い正孔移動度を得る観点から,例えば,50~800nmが好ましく,100~600nmがより好ましい。正孔輸送層の形成方法は特に限定されず,公知の方法に従って行うことができる。例えば,ディップ法,スプレー法,スピンコート法,ブレードコート法などの湿式製膜や,スパッタ法等の真空製膜が挙げられる。
【0021】
ペロブスカイト層(光吸収層・光電変換層)47
ペロブスカイト層(光吸収層・光電変換層)47は,光を吸収し,励起された電子と正孔を移動させることにより,光電変換を行う層である。本発明におけるペロブスカイト化合物は有機化合物と無機化合物の複合物質であることが好ましい。ペロブスカイト化合物は,ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が交互に積層した層状ペロブスカイト型構造を示すことが好ましく,以下の一般式(1)にて表わされる。
XαYβMγ ・・・一般式(1)
上記一般式(1)において,Xはハロゲン原子,Yはアルキルアミン化合物,Mは鉛,スズ,インジウム,アンチモン,ビスマスから選ばれた少なくとも1種以上の金属イオンを表し,α:β:γの比率が3:1:1であり,β及びγは1より大きい整数を表わす。Xは塩素,臭素,ヨウ素などのハロゲン原子を挙げることができ,これらは単独または混合物として用いることができる。Yはメチルアミン,エチルアミン,n-ブチルアミン,ホルムアミジン等のアルキルアミン化合物を挙げることができる。
【0022】
また,ペロブスカイト層の平坦性は,走査型電子顕微鏡により測定した表面の水平方向500nm×500nmの範囲において,高低差が50nm以下(-25nm~+25nm)であるものが好ましく,高低差が40nm以下(-20nm~+20nm)であるのがより好ましい。これにより,光吸収効率と励起子拡散長とのバランスをより取りやすくし,電極で反射した光の吸収効率をより向上させることができる。
【0023】
ペロブスカイト層の形成方法の例は,ハロゲン化金属類とハロゲン化アルキルアミン類を溶媒に溶解あるいは分散した溶液を,電子輸送層あるいは正孔輸送層上に塗布,乾燥することで形成する一段階析出法,あるいはハロゲン化金属類を溶解あるいは分散した溶媒を電子輸送層あるいは正孔輸送層上に塗布,乾燥した後,ハロゲン化アルキルアミン類を溶媒に溶解した溶液中に浸して形成する二段階析出法等が挙げられる。また,一段階析出法において,完全に塗布する前にペロブスカイト化合物を溶解しない溶媒を加えて,一気に結晶化を促進させることも可能である。
【0024】
ペロブスカイト化合物層を形成した後,更にペロブスカイト層上にハロゲン化アミン化合物を溶解した溶液を塗布しても構わない。この時に用いるハロゲン化アミン化合物としては,臭化フェニルエチルアミン,ヨウ化フェニルエチルアミン,臭化n-ヘキシルトリメチルアミン,ヨウ化-n-オクタデシルアミン,ヨウ化-5-アンモニウム吉草酸等を挙げることができ,単独でも2種類以上の混合で用いても構わない。
【0025】
裏面電極49
裏面電極49としては,例えば,白金,金,銀,銅,アルミニウム,ロジウム,ニッケル,コバルト,鉄,パラジウム,インジウム等の金属,グラファイト,グラフェン,カーボンナノチューブ等の炭素系化合物,ITO,インジウムドープ酸化亜鉛(IZO),アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等の導電性金属酸化物又はポリチオフェン若しくはポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられ,これらは単独あるいは2種以上の混合であっても構わない。裏面電極は,透明電極であってもよい。裏面電極の膜厚は特に限定されるものではなく,上述の材料の単独膜または2種以上を混合あるいは積層膜であっても良い。裏面電極は,用いられる材料の種類や正孔輸送層の種類により,適宜正孔輸送層上に塗布,ラミネート,真空蒸着,CVD,貼り合わせなどの方法を用いることにより形成可能である。
【0026】
接着剤層13
接着剤層は,太陽電池素子を覆う層である。接着剤層は,太陽電池素子の全体を覆ってもよいし,太陽電池素子の一部を覆ってもよい。接着剤層は,支持体と封止剤層(本体部)の間に配置される層である。接着剤層は,支持体と封止剤層を接着するほか,支持体状の太陽電池素子と封止剤層とを接着するために用いられる。もっとも,接着剤層が,太陽電池素子の全体を覆う場合,太陽電池素子を封止する機能も有する。接着剤の材質としては特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することが可能である。例えば,アクリル樹脂やエポキシ樹脂の硬化物などが挙げられる。
アクリル樹脂の硬化物は,分子内にアクリル基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば,公知のいずれの材料でも使用することが可能であり,エポキシ樹脂の硬化物は,分子内にエポキシ基を有するモノマーあるいはオリゴマーが硬化したものであれば,公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
【0027】
エポキシ樹脂は,水分散系,無溶剤系,固体系,加熱硬化型,硬化剤混合型,紫外線硬化型などが挙げられ,これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく,紫外線硬化型がより好ましい。なお,紫外線硬化型であっても,加熱を行うことは可能であり,紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては,ビスフェノールA型,ビスフェノールF型,ノボラック型,環状脂肪族型,長鎖脂肪族型,グリシジルアミン型,グリシジルエーテル型,グリシジルエステル型などが挙げられ,これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。また,エポキシ樹脂には,必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。既に市販されているエポキシ樹脂組成物を,本発明において使用することができる。中でも,太陽電池や有機EL素子用途向けに開発,市販されているエポキシ樹脂組成物もあり,本発明において特に有効に使用できる。市販されているエポキシ樹脂組成物としては,例えば,TB3118,TB3114,TB3124,TB3125F(株式会社スリーボンド製),World Rock5910,World Rock5920,World Rock8723(協立化学産業株式会社製),WB90US(P)(株式会社MORESCO製)等が挙げられる。
【0028】
硬化剤としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができるが,例えば,アミン系,酸無水物系,ポリアミド系,その他の硬化剤などが挙げられる。アミン系硬化剤としては,ジエチレントリアミン,トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン,メタフェニレンジアミン,ジアミノジフェニルメタン,ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられ,酸無水物系硬化剤としては,無水フタル酸,テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸,メチルテトラヒドロ無水フタル酸,無水メチルナジック酸,無水ピロメリット酸,無水ヘット酸,ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。その他の硬化剤としては,イミダゾール類,ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0029】
添加剤としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,充填材(フィラー),ギャップ剤,重合開始剤,乾燥剤(吸湿剤),硬化促進剤,カップリング剤,可とう化剤,着色剤,難燃助剤,酸化防止剤,有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも,充填材,ギャップ剤,硬化促進剤,重合開始剤,乾燥剤(吸湿剤)が好ましく,充填材及び重合開始剤がより好ましい。添加剤として充填材を含有することにより,水分や酸素の浸入を抑制し,更には硬化時の体積収縮の低減,硬化時あるいは加熱時のアウトガス量の低減,機械的強度の向上,熱伝導性や流動性の制御などの効果を得ることができる。そのため,添加剤として充填材を含むことは,様々な環境で安定した出力を維持する上で非常に有効である。添加剤は,封止剤層や端部領域に添加されてもよい。
【0030】
また,太陽電池素子の出力特性やその耐久性に関しては,侵入する水分や酸素の影響だけでなく,封止部材の硬化時あるいは加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に,加熱時に発生するアウトガスの影響は,高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。接着剤層や封止剤層に充填材やギャップ剤,乾燥剤を含有させることにより,これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか,接着剤や封止剤の使用量を低減できることにより,アウトガスを低減させる効果を得ることができる。接着剤層や封止剤層に充填材やギャップ剤,乾燥剤を含有させることは,硬化時だけでなく,太陽電池素子を高温環境で保存する際にも有効である。
【0031】
充填材としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,結晶性あるいは不定形のシリカ,タルクなどのケイ酸塩鉱物,アルミナ,窒化アルミ,窒化珪素,珪酸カルシウム,炭酸カルシウム等の無機系充填材などが挙げられる。これらの中でも,特にハイドロタルサイトが好ましい。また,これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0032】
充填材の平均一次粒径は,0.1μm以上10μm以下が好ましく,1μm以上5μm以下がより好ましい。充填材の平均一次粒径が上記の好ましい範囲内であると,水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ,粘度が適正となり,基板との密着性や脱泡性が向上し,封止剤層の幅の制御や作業性に対しても有効である。
【0033】
充填材の含有量としては,接着剤層など全体(100質量部)に対し,10質量部以上90質量部以下が好ましく,20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記の好ましい範囲内であることにより,水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ,粘度も適正となり,密着性や作業性も良好となる。
【0034】
ギャップ剤は,ギャップ制御剤あるいはスペーサー剤とも称される。添加剤としてギャップ材を含むことにより,封止剤層のギャップを制御することが可能になる。例えば,第1の基板又は第1の電極の上に,接着剤層を付与し,その上に第2の基板を載せて封止を行う場合,接着剤層又は封止材層がギャップ剤を混合していることにより,封止剤層のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため,容易に封止剤層のギャップを制御することができる。
ギャップ剤としては,粒状でかつ粒径が均一であり,耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができる。ギャップ剤としては,エポキシ樹脂と親和性が高く,粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には,ガラスビーズ,シリカ微粒子,有機樹脂微粒子などが好ましい。これらは,1種単独で使用してもよいし,2種以上を併用してもよい。
ギャップ剤の粒径としては,設定する封止剤層端部領域のギャップに合わせて選択可能であるが,1μm以上100μm以下が好ましく,5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0035】
重合開始剤としては,熱や光を用いて重合を開始させるものであれば特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,熱重合開始剤,光重合開始剤などが挙げられる。
熱重合開始剤は,加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物であり,2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や,過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては,ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。
一方,光重合開始剤は,エポキシ樹脂の場合,光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し,光照射を行うと,光カチオン重合開始剤が分解して,酸が発生し,酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし,硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は,硬化時の体積収縮が少なく,酸素阻害を受けず,貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0036】
光カチオン重合開始剤としては,芳香族ジアゾニウム塩,芳香族ヨードニウム塩,芳香族スルホニウム塩,メタセロン化合物,シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。また,重合開始剤として,光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は,カチオン重合を開始する酸として作用し,カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩などが挙げられる。これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0037】
重合開始剤の添加量としては,使用する材料によって異なる場合があるが,封止部材全体(100質量部)に対し,0.5質量部以上10質量部以下が好ましく,1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記の好ましい範囲内であることにより,硬化が適正に進み,未硬化物の残存を低減することができ,またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0038】
乾燥剤(吸湿剤とも称される)は,水分を物理的あるいは化学的に吸着,吸湿する機能を有する材料であり,封止部材に含有させることにより,耐湿性を更に高め,アウトガスの影響を低減できる。
乾燥剤としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができるが,粒子状であるものが好ましく,例えば,酸化カルシウム,酸化バリウム,酸化マグネシウム,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウム,塩化カルシウム,シリカゲル,モレキュラーシーブ,ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも,吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0039】
硬化促進剤(硬化触媒とも称される)は,硬化速度を速める材料であり,主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
硬化促進剤としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンあるいは三級アミン塩,1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミ
ダゾール等のイミダゾール系,トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンあるいはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0040】
カップリング剤は,分子結合力を高める効果を有する材料であれば特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には,3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン,N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン,3-アミノプロピルトリエトキシシラン,3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン,ビニルトリメトキシシラン,N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩,3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などが挙げられる。これらは,単独で使用しても,2種以上の併用であってもよい。
【0041】
本発明においては,シート状接着剤を用いることができる。
シート状接着剤とは,シート上に予め樹脂層を形成したもので,シートにはガラスやガスバリア性の高いフィルム等を用いることができる。また,樹脂のみでシートを形成していてもよい。シート状接着剤を,封止フィルム上に貼り付けることも可能である。封止フィルム上に,中空部を設けた構造にしてからデバイスと貼り合せることも可能である。
【0042】
太陽電池素子の端部と,接着剤層の端部との距離(d1)が,0.5mm以上2cm以下であることが好ましい。太陽電池素子の端部は,太陽電池素子の外側の部分を意味する。例えば,太陽電池素子が四角形の場合は,四角形の縁上の部分が,太陽電池素子の端部を構成する。接着剤層の端部は,接着剤層の最も外側の縁部を意味する。d1は,太陽電池素子の縁部と,接着剤層の端部(太陽電池素子と逆側の縁部)のうち最も距離が近いものを意味する。d1は,1mm以上が好ましく,2mm以上が好ましい。もっとも,d1は,太陽電池素子の大きさによって適宜調整すればよい。太陽電池素子が,四角形の場合であって,その長辺の長さをlとした場合,d1は,0.01l以上0.5l以下であってもよいし,0.05l以上0.2l以下であってもよい。
【0043】
封止剤層(本体部)14
封止剤層(本体部)は,接着剤層を覆うように形成され,太陽電池素子に水などが侵入することを防止するための層を意味する。端部領域と区別する意味で,この明細書では封止剤層や本体部と表記している。封止剤層は,太陽電池素子及び接着剤層を覆うものが好ましい。封止剤層は,例えば,光電変換層と電極を含む太陽電池素子を挟むように支持体と対向して配置される。封止剤層は封止剤フィルムにより構成されていてもよい。 封止剤層は,その形状,構造,大きさ,種類(材質)については,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができる。封止剤層は薄膜状,又はフィルム状であってもよい。
【0044】
封止剤層を構成する材質は,接着剤層の材質と同様のものでよい。封止剤層の材質のほかの例は,樹脂基材の表面に,水分や酸素の通過を防ぐバリア層を形成したものも挙げられ,バリア層は基材の一方の面または両面に形成されていてもよい。後者の場合の樹脂基材の材料は特段の制限はないが,例えば,エチレン,プロピレン,ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン12,共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH),ポリイミド系樹脂,ポリエーテルイミド系樹脂,ポリサルホン系樹脂,ポリエーテルサルホン系樹脂,ポリエーテルエーテルケトン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリビニルブチラール系樹脂,ポリアリレート系樹脂,フッ素樹脂,アクリル樹脂,生分解性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも,耐熱性や透明性等のフィルム物性の観点から,ポリエステル系樹脂が好ましく,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。なお,樹脂基材は,1種の樹脂材料により形成されていてもよいし,2種以上の樹脂材料により形成されていてもよい。
【0045】
樹脂基材は太陽電池モジュールの耐久性を向上させるために,無機フィラー等,他の材料を含んでいてもよい。無機フィラーは,特段の制限はないが,例えば,シリカ,マイカ,タルク,クレー,ベントナイト,モンモリロナイト,カオリナイト,ワラストナイト,炭酸カルシウム,酸化チタン,アルミナ,硫酸バリウム,チタン酸カリウム,ガラス繊維などが挙げられる。なお,樹脂基材中に混合される無機フィラーは,1種類であってもよいし,2種類以上であってもよい。
【0046】
バリア層は金属酸化物,金属,高分子と金属アルコキシドより形成された混合物などを主成分とするもので構成されており,酸化アルミニウム,酸化ケイ素,アルミニウム,などを挙げることができ,高分子としてはポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,メチルセルロースなどを挙げることができ,金属アルコキシドとしては,テトラエトキシシラン,トリイソプロポキシアルミニウム,3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン,3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0047】
バリア層は,透明であっても不透明であっても構わない。また,バリア層は上記材料からの組合せによる単層であっても,複数の積層構造であっても構わない。バリア層の形成方法は,既知の方法を用いることができ,スパッタ法などの真空製膜,ディッピング法,ロールコーティング法,スクリーン印刷法,スプレー法,グラビア印刷法などの塗布方法を使用することができる。封止剤層本体部の厚みは,本技術で一般に使用される範囲で構わない。例えば,0.05~1mmの範囲内で適宜設定することができる。
【0048】
封止剤層は,接着剤層の全体を覆うことが好ましい。さらに封止剤層は,水や酸素の侵入を防ぐため,接着剤層よりも大きくするのが好ましい。
接着剤層の端部と,封止剤層の端部領域までの距離(d2)が,0.2mm以上1cm以下であることが好ましい。接着剤層の端部は先に説明した通りである。封止剤層の端部領域は,封止剤層のうち最も外側の縁部に存在する密度の高い領域を意味する。接着剤層の端部と,封止剤層の端部領域との距離とは,接着剤層の端部と封止剤層の端部領域との距離が最も小さくなる距離を意味する。d2は,0.5mm以上が好ましく,1mm以上がより好ましい。また,太陽電池の大きさや用途によって,上限は異なるが,あまり大きすぎても太陽電池(デバイス)自体が大きくなりすぎたり,太陽電池素子以外の部分が大きくなりすぎて無駄になるので,1cm以下が好ましく,5mm以下が好ましく,4mm以下がより好ましい。
【0049】
端部領域15
端部領域15は,封止剤層の端部領域に設けられ,封止剤層のうち最も外側の縁部に存在する本体部よりも密度が高くなった領域を意味する。。端部領域は,封止剤層の外周部を水や酸素からより強固に遮断するために設けられる。端部領域は,封止剤層と一体として形成されることが好ましい。端部領域の形状は,特に限定されない。端部領域の形状は,本体部を圧縮してできた形状であることが好ましい。
【0050】
端部領域の幅(d3)は,0.5mm以上1.5cm以下であることが好ましい。d3は,水分や酸素の侵入を抑え,かつ封止剤本体上に密着して剥離しないように,1mm以上が好ましく,1.5mm以上がより好ましい。また,太陽電池(デバイス)が大きくなりすぎたり,太陽電池素子以外の部分が大きくなりすぎても無駄になる原因となるので,1.5cm以下が好ましく,1cm以下が好ましく,5mm以下がより好ましい。
【0051】
さらに,端部領域は,不透明にすることにより,封止剤層(本体部)とは区別しやすくなるため好ましい。このように不透明にする方法としては,特に限定されないが,前記接着剤層や封止剤層(本体部)で使用可能な充填剤を含有する方法や公知の顔料又は染料を含ませることが挙げられる。端部領域の断面形状は,支持体と平行なフラット形状でも構わない。端部領域の厚みは封止剤層の厚み以下でも構わない。
【0052】
端部領域は,例えば封止剤層のうち端部(本体部以外の部分であり外周に位置する部位)に圧力を印加し,封止剤層を押しつぶすことで形成できる。封止剤層のうち端部領域に印加される圧力は,0.1MPa以上10MPa以下であることが好ましく,1MPa以上5MPa以下でもよい。端部加圧工程において,封止剤層のうち端部領域の厚さが端部加圧工程の前の厚さの55%以上90%以下となるように圧縮されることが好ましく,60%以上80%以下となるように圧縮されてもよい。
【実施例0053】
ITO付ガラス基板(25mm×24.5mm,ジオマテック)を,2-プロパノール,アセトン,セミコクリーン56(ディスプレイ用洗浄液,製品名,フルウチ化学株式会社製品),水,2-プロパノールの順に,それぞれ15分間超音波洗浄,次いでプラズマ処理を行った。次に,電子輸送層として水溶性SnO2コロイド溶液(15%SnOコロイド溶液を純水で1:1に薄め,PTFEフィルターを通過した溶液)を基板上に300μL滴下し,スピンコート(3000回転,20秒)を用いて製膜し,150℃で30分間加熱乾燥を行った。この基板をグローブボックスに移動し,ペロブスカイト前駆体溶液として,CsI,MABr(臭化メチルアンモニウム,CHN・HBr),PbBr,PbI,FAI(ホルムアミジンヨウ化水素酸塩,CH・HI)を,DMFとDMSOの混合溶媒(体積比10:3)に溶解させ,濃度が1.05Mの溶液を調整した。この溶液を,PTFEフィルターを用いて濾過したのち,190μLを,電子輸送層を形成した上記基板上に塗布,スピンコート(スロープ1秒で1000rpm,10秒,さらにスロープ5秒で3000rpm,20秒),その途中でクロロベンゼン300μLを滴下した。得たデバイスはその後150℃で10分間加熱した。続いて,正孔輸送材料Spiro-OMeTAD 72.3mg,[トリス(2-(1H-ピラゾル-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)](FK209,富士フィルム和光純薬株式会社)13.5mg,4-t-ブチルピリジン 28.8μL,及びLiTFSI 9.1mgを1mLのクロロベンゼンに溶解させた溶液を30分間撹拌後,PTFEフィルターで濾過し,90μLをペロブスカイト層上にスピンコート(スロープ4秒で4000rpm,30秒,次いでスロープ4秒で停止)したのち,70℃で30分間加熱乾燥した。最後に,真空蒸着によって金を80nm形成して,ペロブスカイト太陽電池素子を得た。
【0054】
接着剤として,ハイドロタルサイト 1.0g,エポック製エポキシ樹脂(E-01-001主剤:4.0g,硬化剤:2.0g)を混合し,該ペロブスカイト太陽電池素子上にスピンコート(1000回転,120秒)を用いて塗布,不要部分をアセトンにて除去した。次いで,上述の接着剤の塗布面積よりも大きめに切り出した酸化アルミニウム蒸着PETフィルム(製品名:バリアロックス,東レ株式会社製品)を貼り付け,80℃で1時間加熱した。
【0055】
このフィルム外周部を富士インパルス社製FCB-200で加圧し,端部領域を形成し,図1に示されるような太陽電池デバイスを作製した。d1が2.0mm,d2が0.3mm,d3が1.2mmであった。この太陽電池デバイスを,ソーラーシミュレーター(分光計器社製SM-250PV,光量:100mW/cm)を用いて,太陽電池特性を測定した。その結果,開放電圧1.08V,短絡電流密度22.2mA/cm,形状因子0.73,変換効率17.5%を得ることができた。次に,この太陽電池デバイスを,60℃,90%RHの恒温恒湿試験器に入れて,耐久性試験を行った。500時間後の初期特性に対する維持率は92%であった。
[実験例1]
【0056】
実施例1におけるフィルム外周部を加圧しない以外は,実施例1と同様にして太陽電池デバイスを作製し,図7に示す構造の太陽電池特性を評価した。その結果,開放電圧1.10V,短絡電流密度22.0mA/cm,形状因子0.72,変換効率17.4%と実施例1と同等の性能を確認した。次に,実施例1と同様にして恒温高湿器での耐久性試験を行い,500時間後の維持率を測定したところ,42%という結果であり,本発明のデバイス構造が耐久性に優れていることが明らかであった。
【実施例0057】
実施例1におけるペロブスカイト太陽電池素子上に該素子を形成した部分と同じ大きさの接着剤層(第一層)を形成したのち,その上部を封止剤層(第一層)で覆い,その上全体を再度同じ接着剤で覆うように接着剤層を形成し(第二層),さらにその上部を第一層と同じ封止剤層で覆った(第二層)。
この第二層の外周部を,実施例1と同様にして熱圧着を行い、図3に示されるような太陽電池デバイスを作製した。その結果、フィルム膜厚は33%減少(触針式段差計アルファステップIQにて測定)し、密度(重量測定と体積から算出)は1.3倍に増加した。また、外周部を計測したところ、d1が1.9mm,d2が0.2mm,d3が1.4mmであった。
このデバイスの太陽電池特性を測定したところ,開放電圧1.08V,短絡電流密度22.4mA/cm,形状因子0.74,変換効率17.9%を得ることができた。次に,実施例1と同様にして恒温高湿器での耐久性試験を行い,500時間後の維持率を測定したところ,93%という結果であり,本発明のデバイス構造が耐久性に優れていることが明らかであった。
【実施例0058】
実施例1におけるペロブスカイト太陽電池素子上に,該素子を形成した部分と同じ大きさの接着剤層(第一層)とその上部に封止剤層(第一層)を形成し,その上全体を再度同じ接着剤で覆うように接着剤層を形成し(第二層),さらにその上部を第一層と同じ封止剤層で覆った(第二層)。
この第二層のフィルム外周部を,実施例1と同様にして熱圧着を行い、加圧し図4に示されるような太陽電池デバイスを作製した。その結果、フィルム膜厚は34%減少(触針式段差計アルファステップIQにて測定)し、密度(重量測定と体積から算出)は1.24倍に増加した。また、外周部を計測したところ、d1が2.2mm,d2が0.7mm,d3が1.1mmであった。
このデバイスの太陽電池特性を測定したところ,開放電圧1.11V,短絡電流密度22.1mA/cm,形状因子0.71,変換効率17.4%を得ることができた。次に,実施例1と同様にして恒温高湿器での耐久性試験を行い,500時間後の維持率を測定したところ,94%という結果であり,本発明のデバイス構造が耐久性に優れていることが明らかであった。
[実験例2]
【0059】
実施例2におけるフィルム外周部を加圧しない以外は,実施例2と同様にして太陽電池デバイスを作製し,図9に示すような太陽電池特性を評価した。その結果,開放電圧1.09V,短絡電流密度22.0mA/cm,形状因子0.72,変換効率17.3%と実施例2と同等の性能を確認した。次に,実施例1と同様にして恒温高湿器での耐久性試験を行い,500時間後の維持率を測定したところ,51%という結果であり,本発明のデバイス構造が耐久性に優れていることが明らかであった。
[実験例3]
【0060】
実施例3におけるフィルム外周部を加圧しない以外は,実施例3と同様にして太陽電池デバイスを作製し,図10に示すような太陽電池特性を評価した。その結果,開放電圧1.10V,短絡電流密度22.0mA/cm,形状因子0.71,変換効率17.2%と実施例3と同等の性能を確認した。次に,実施例1と同様にして恒温高湿器での耐久性試験を行い,500時間後の維持率を測定したところ,48%という結果であり,本発明のデバイス構造が耐久性に優れていることが明らかであった。
【0061】
以上より,本発明の封止構造とすることにより,耐久性の高いデバイスを作製することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は,太陽電池などの分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0063】
1 太陽電池
4 ペロブスカイト太陽電池素子
11 支持体
12 ペロブスカイト太陽電池素子
13 接着剤層
14 封止剤層
15 端部領域
40 透明電極
46 電子輸送層
47 光電変換層(ペロブスカイト層)
48 正孔輸送層
49 裏面電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10