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特開2023-42649頭蓋形状矯正ヘルメット及び頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042649
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】頭蓋形状矯正ヘルメット及び頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20230320BHJP
   A42B 3/12 20060101ALI20230320BHJP
   A42B 3/04 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61F5/01 Z
A42B3/12
A42B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149884
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】521407050
【氏名又は名称】株式会社Berry
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
【テーマコード(参考)】
3B107
4C098
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107BA07
3B107CA03
3B107DA01
3B107DA03
4C098AA02
4C098BB20
4C098BC15
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でシェルのスリットの両側の端部のずれが抑制され、安定した装着状態を得やすい頭蓋形状矯正ヘルメット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】頭蓋の変形を矯正するために頭部2に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメット10であって、上側開口部12及び下側開口部13を有する略環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部2に接触するクッション30と、を備え、シェル11は、上側開口部12の上側開口縁12aから下側開口部13の下側開口縁13aにわたり、シェル11の厚み方向Tに対して交差する方向に貫通形成されたスリット20を有し、スリット20は、頭部2の前後方向における一方側から他方側に突出する湾曲部20Aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、
上側開口部及び下側開口部を有する略環状のシェルと、
前記シェルの内側に配置されて頭部に接触するクッションと、を備え、
前記シェルは、前記上側開口部の上側開口縁から前記下側開口部の下側開口縁にわたり、当該シェルの厚み方向に対して交差する方向に貫通形成されたスリットを有し、
前記スリットは、頭部の前後方向における一方側から他方側に突出する湾曲部を有する、頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項2】
前記シェルは、前記スリットを間に挟んで互いに離接可能に対向する第1端部及び第2端部を有し、
前記第1端部は、前記シェルの厚み方向に対して交差する方向に延びる第1端部片を含み、
前記第2端部は、前記シェルの厚み方向に対して交差する方向に延び、前記第1端部片と前記シェルの厚み方向で重畳可能な第2端部片を含む、請求項1に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項3】
頭部が略仰向けの状態で、
前記スリットは、頭部の側部において下方へ荷重がかかる部分に対応する位置に形成され、
前記第1端部片は、下方に延びており、
前記第2端部片は、前記第1端部片の外側に配置される、請求項2に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項4】
前記第1端部は、第1フック部を有し、
前記第2端部は、第2フック部を有し、
前記第1フック部及び前記第2フック部のそれぞれは、両者により前記スリットを挟む位置に配置され、
前記第1端部と前記第2端部とが、前記第1フック部と前記第2フック部とに着脱可能に掛けられる連結部材を介して互いに連結される、請求項2または3に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項5】
前記シェルは、頭蓋の膨出変形を必要とする治療部位に対向し、当該治療部位との間にスペースを形成して頭蓋の膨出変形を許容する変形許容部を有し、
前記変形許容部には、当該変形許容部と前記治療部位との間の距離を触診により計測可能とする触診孔が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項6】
前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、
当該クッションは、前記押圧受け部の略中央に配置される第1クッション部と、前記第1クッション部の周囲に配置された第2クッション部と、を含み、前記第1クッション部は前記第2クッション部よりも反発性が低い、請求項1~5のいずれか1項に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項7】
前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、
当該クッションは、前記押圧受け部に直接接触する第3クッション部と、前記第3クッション部の厚み方向の外側に配置された第4クッション部と、を含み、前記第3クッション部は前記第4クッション部よりも反発性が低い、請求項1~5のいずれか1項に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項8】
前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、
前記押圧受け部から受ける反力に応じた圧力を検知する圧力センサが前記クッションに配置されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の頭蓋形状矯正ヘルメット。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の頭蓋形状矯正ヘルメットを製造する方法であって、
矯正すべき頭蓋の外形に基づいて前記シェルを3Dプリンタによって成形する工程と、
前記シェルの内側に前記クッションを配置する工程と、を備える、頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋の変形を矯正するために頭部に装着される頭蓋形状矯正ヘルメット及びこれを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児や幼児に、斜頭等の治療を要する頭蓋変形が生じる場合がある。斜頭は、頭蓋が左右対称形状ではなく片側に傾斜している変形形状である。このような頭蓋変形を治療する装具として、頭部に被ることにより、頭蓋の成長に伴って頭蓋の形状が矯正されるように変形を促す頭蓋形状矯正ヘルメットがある。
【0003】
特許文献1には、シェルの内側にライナーが設けられ、シェルには上縁から下縁まで上下方向に真っ直ぐに延びるスリットが形成された頭蓋形状矯正ヘルメットが開示されている。スリットの幅を調整するようにしてシェルを変形させれば、シェルの内側空間の大きさが変化し、頭部を所要圧力で緩やかに締め付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-169510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シェルに上下方向に真っ直ぐに延びるスリットを形成した場合、スリットを間に挟んで互いに対向する一対の端部が、前後方向あるいは上下方向にずれやすく、安定した装着状態が得られにくい。上記特許文献1には、連結手段によって一対の端部どうしが互いに重なり合った状態を保持することが開示されているが、構成が複雑化し、部品点数も増加する。
【0006】
本発明は、簡素な構成でシェルのスリットの両側の端部のずれが抑制され、安定した装着状態を得やすい頭蓋形状矯正ヘルメット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の頭蓋形状矯正ヘルメットは、頭蓋の変形を矯正するために頭部に被せられる頭蓋形状矯正ヘルメットであって、上側開口部及び下側開口部を有する略環状のシェルと、前記シェルの内側に配置されて頭部に接触するクッションと、を備え、前記シェルは、前記上側開口部の上側開口縁から前記下側開口部の下側開口縁にわたり、当該シェルの厚み方向に対して交差する方向に貫通形成されたスリットを有し、前記スリットは、頭部の前後方向における一方側から他方側に突出する湾曲部を有する。
【0008】
(2)(1)において、前記シェルは、前記スリットを間に挟んで互いに離接可能に対向する第1端部及び第2端部を有し、前記第1端部は、前記シェルの厚み方向に対して交差する方向に延びる第1端部片を含み、前記第2端部は、前記シェルの厚み方向に対して交差する方向に延び、前記第1端部片と前記シェルの厚み方向で重畳可能な第2端部片を含む構成であってよい。
【0009】
(3)(2)において、頭部が略仰向けの状態で、前記スリットは、頭部の側部において下方へ荷重がかかる部分に対応する位置に形成され、前記第1端部片は、下方に延びており、前記第2端部片は、前記第1端部片の外側に配置されることが好ましい。
【0010】
(4)(2)または(3)において、前記第1端部は、第1フック部を有し、前記第2端部は、第2フック部を有し、前記第1フック部及び前記第2フック部のそれぞれは、両者により前記スリットを挟む位置に配置され、前記第1端部と前記第2端部とが、前記第1フック部と前記第2フック部とに着脱可能に掛けられる連結部材を介して互いに連結される構成であってよい。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記シェルは、頭蓋の膨出変形を必要とする治療部位に対向し、当該治療部位との間にスペースを形成して頭蓋の膨出変形を許容する変形許容部を有し、前記変形許容部には、当該変形許容部と前記治療部位との間の距離を触診により計測可能とする触診孔が設けられていることが好ましい。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、当該クッションは、前記押圧受け部の略中央に配置される第1クッション部と、前記第1クッション部の周囲に配置された第2クッション部と、を含み、前記第1クッション部は前記第2クッション部よりも反発性が低いことが好ましい。
【0013】
(7)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、当該クッションは、前記押圧受け部に直接接触する第3クッション部と、前記第3クッション部の厚み方向の外側に配置された第4クッション部と、を含み、前記第3クッション部は前記第4クッション部よりも反発性が低い構成であってもよい。
【0014】
(8)(1)~(7)のいずれかにおいて、前記クッションは、前記シェルから押圧力がかかる頭部の押圧受け部に接触するように配置され、前記押圧受け部から受ける反力に応じた圧力を検知する圧力センサが前記クッションに配置されていることが好ましい。
【0015】
(9)本発明の頭蓋形状矯正ヘルメットの製造方法は、上記いずれかの本発明の頭蓋形状矯正ヘルメットを製造する方法であって、矯正すべき頭蓋の外形に基づいて前記シェルを3Dプリンタによって成形する工程と、前記シェルの内側に前記クッションを配置する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素な構成でシェルのスリットの両側の端部のずれが抑制され、安定した装着状態を得やすい頭蓋形状矯正ヘルメット及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメットを頭蓋変形の治療対象者が被っている状態を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に対応する断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】治療対象者が仰向けの状態での頭部及び頭蓋形状矯正ヘルメットの横断面図である。
図5A図2の要部拡大図であって、第1端部から下方に荷重がかかる際の作用を説明する図である。
図5B】実施形態と逆のパターンで第1棚部及び第2端部が構成された場合を示す図である。
図6】第1変形例に係るクッションを示す頭部及び頭蓋形状矯正ヘルメットの横断面図である。
図7】第2変形例に係るクッションを示す頭部及び頭蓋形状矯正ヘルメットの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、頭蓋に変形症状がみられる乳児等の治療対象者1が、実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10を治療対象者1の頭部2に被る状態を示している。図2は、その状態の横断面を模式的に示しており、図3図2の要部を拡大した図である。頭蓋形状矯正ヘルメット10は、治療対象者1の頭部2の頭蓋の変形を矯正するために頭部2に被せられる。
【0019】
図1図3において、矢印Xは治療対象者1が被った状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の前後方向を示し、さらにX1は前側、X2は後側を示している。図2及び図3において、矢印Yは治療対象者1が被った状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の左右方向を示し、さらにY1は左側、Y2は右側を示している。図1において、矢印Zは治療対象者1が被った状態での頭蓋形状矯正ヘルメット10の上下方向を示し、さらにZ1は上側、Z2は下側を示している。なお、図4以降の図面においても同様である。図2図7は、紙面の表裏方向において表側が頭蓋形状矯正ヘルメット10の上方であり、裏側が頭蓋形状矯正ヘルメット10の下方である。
以下の説明での前後方向、左右方向及び上下方向は、上記のとおりの方向とする。
【0020】
頭蓋形状矯正ヘルメット10は、環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部2に接触するクッション30と、を備える。
【0021】
図1に示すように、シェル11は、上側開口部12及び下側開口部13を有する。上側開口部12の上方に頭部2の頭頂部が露出し、下側開口部13の下方に顔や耳、頚部等が露出する。シェル11は、頭蓋を周方向で囲む環状の主部14と、主部14の後部から下方に延出する背面延出部15と、主部14の左右側面部から下方にそれぞれ突出する左右一対の側面突出部16と、を有する。背面延出部15は治療対象者1の頚部背面に対向し、各側面突出部16は治療対象者1の耳の前方に位置する。背面延出部15と各側面突出部16の間に、治療対象者1の耳が位置する。
【0022】
シェル11の左右の側部のうちの一方、実施形態では右側の側部に、スリット20が形成されている。スリット20は、上側開口部12の上側開口縁12aから下側開口部13の下側開口縁13aにわたって形成されている。図2に示すように、スリット20は、全体としてはシェル11の厚み方向Tに対して交差する概略斜め方向Dにシェル11を切断することにより、シェル11の内側から外側に貫通形成されている。このように斜め方向に形成されることにより、スリット20の外観は図1に示すように全体として湾曲している。これは、頭蓋形状矯正ヘルメット10が上下方向の中央部に向かうにつれて膨らむ球体状の形状を有するからである。
なお、シェル11を切断することなく、スリット20を有する成形体を3Dプリンタ等の手段で成形してシェル11とすることで、シェル11の成形と同時にスリット20を形成してもよい。
【0023】
スリット20は、シェル11の内側から外側に向かうにつれて前方に向かうようにシェル11の厚み方向Tに交差している。これによりスリット20は、図1に示すように後側から前側に突出するように湾曲している。すなわち、スリット20は頭部2の前後方向における後側から前側に突出する湾曲部20Aを有する。実施形態では、スリット20の全体が湾曲部20Aとなっている。
【0024】
シェル11は、スリット20を間に挟んで互いに離接可能に対向する前側の第1端部21及び後側の第2端部22を有する。第1端部21及び第2端部22のそれぞれは、スリット20の湾曲形状に沿って湾曲している。
【0025】
図3に示すように、スリット20は、詳しくはZ字状の断面形状を有する。第1端部21は、シェル11の厚み方向Tに対して交差する周方向に沿って延びる第1端部片21aを含む。第2端部22は、シェル11の厚み方向Tに対して交差する周方向に沿って延び、第1端部片21aとシェル11の厚み方向Tで重畳する第2端部片22aを含む。第1端部片21aは、後方に延びている。第2端部片22aは、前方に延びており、第1端部片21aの外側に配置される。第1端部片21a及び第2端部片22aは、シェル11の厚み方向Tで互いに重畳する。
【0026】
第1端部21は、第1端部片21aの根元の部分に、外側段部21cを有する。外側段部21cは、シェル11の厚み方向Tにおいて第1端部片21aの外側に形成されている。外側段部21cは、第2端部片22aの先端面22bに対向する。第2端部22は、第2端部片22aの根元の部分に、内側段部22cを有する。内側段部22cは、第1端部片21aの先端面21bに対向する。
【0027】
ここで、図2により、実施形態における治療対象者1の頭蓋の変形形状を説明する。治療対象者1の頭蓋は、上から見た場合に、前方に向かうにつれて右側に傾斜している左右非対称の斜頭である。
【0028】
シェル11は、この斜頭の頭蓋の外形に基いて理想の3次元モデルを作成し、当該3次元モデルに応じて形状が設計される。例えば、治療対象者1の頭部を3Dスキャンし、治療対象者1の頭部の3次元形状を取得する。次に、頭部の3次元形状に基づいて治療目標とする理想の3次元形状を作成し、当該理想の3次元形状に基づいてシェル11の形状を決定する。
【0029】
本実施形態のシェル11は、例えば、後述するように3Dプリンタにより製造可能であるが、製造方法はこれに限定されない。シェル11は、合成樹脂の成形体であり、所要の表面硬さ及び剛性を有する。したがって、例えば3Dプリンタの他に、塊状の合成樹脂を切削加工して成形することもできる。合成樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
頭蓋は、頭蓋形状矯正ヘルメット10を装着した状態でシェル11との間にスペースSができる複数の治療部位3がある。一方、頭蓋は、頭蓋形状矯正ヘルメット10に接触して頭蓋形状矯正ヘルメット10で押圧される複数の押圧受け部4がある。複数の治療部位3は、左前側の部分及び右後側の部分である。複数の押圧受け部4は、右前側の部分及び左後側の部分である。シェル11は、治療部位3に対向する部分のそれぞれに変形許容部17を有する。各変形許容部17は、治療部位3との間に所要のスペースSが空くように形成される。各変形許容部17は、スペースSに頭蓋が膨出変形することを許容する。また、シェル11は、押圧受け部4に対向する部分のそれぞれに押圧部18を有する。各押圧部18は、押圧受け部4を内側に押圧する。
【0031】
頭蓋形状矯正ヘルメット10を装着すると、各押圧受け部4が押圧部18から適宜圧力で内側に押圧される。これにより治療部位3が優先的に成長して外側に膨出し、左右対称になるように頭蓋が矯正される。押圧部18の内面には、押圧受け部4に接触するクッション30が配置されている。クッション30は、硬いシェル11が頭部2に直接当たって頭部2にダメージを与えることを抑える。変形許容部17の内側にはクッション30が配置されていないが、配置されていてもよい。配置される場合は、そのクッションと頭部2との間にスペースが空く状態が好ましい。
【0032】
シェル11においては、少なくとも変形許容部17に複数の孔19が設けられている。複数の孔19は、シェル11の内外を連通する。複数の孔19の形状は任意であるが、例えば、円形状、台形状、三角形状等である。複数の孔19は大きさが不揃いであり、さまざまな大きさがあってよい。孔19は通気性の確保とともに軽量化に寄与する。
【0033】
複数の孔19のうち、特に円形状の場合でいうと指が挿入可能な直径10mm以上25mm以下の孔があり、その孔は、触診孔19aとされる。触診孔19aは、治療を行う医師等がシェル11の外側から指を挿入して、変形許容部17の内面と治療部位3との間の距離を触診により計測可能とする孔である。触診孔19aは変形許容部17に複数あってよい。また、触診孔19aは円形状に限定はされないが、その大きさは、直径が10mm以上25mm以下に相当する大きさとされる。
【0034】
斜頭の症状を有する治療対象者1が就寝するなどの際において仰向けになると、図4に示すように、頭部2の後頭部の側の治療部位3が下向きになるような癖がついている場合が多い。この状態でのシェル11においては、頭部2の右側やや上方部分に対応する位置Pにおいて下方へ荷重がかかる。実施形態では、このような斜頭の治療対象者1に特有の仰向け姿勢になった状態で、第1端部21から下方に荷重がかかる位置Pにスリット20が形成されている。
【0035】
位置Pにおいては、第1端部21及び第2端部22のうち、第1端部21の第1端部片21aは下方に延びている。一方、第2端部22の第2端部片22aは、第1端部片21aの外側に配置されて上方に延びている。図5Aは、位置Pにおいて、第1端部21から下方に荷重Mがかかる状態を示している。下方に向けて荷重Mがかる上側の第1端部片21aは、その荷重により外側に広がろうとする。しかし、下側の第2端部片22aが第1端部片21aの外側に配置されているため、第1端部21が外側にずれて第2端部片22aとの嵌合状態が外れるといった事態が起こりにくい。このため、シェル11の形状が保持されやすく、治療が正常に進行する。
【0036】
これに対し、図5Bに示すように、第2端部片22aが第1端部片21aの内側に配置された実施形態とは逆の配置パターンの場合、上側の第1端部21が矢印Nで示す外側方向に広がって第2端部片22aに対する嵌合状態が外れるおそれがある。しかしながら実施形態では、下側の第2端部片22aが第1端部片21aの外側に配置されているため、そのような事態を回避できる。
【0037】
図1及び図2に示すように、第1端部21の外面には、第1フック部25が設けられており、第2端部22の外面には、第2フック部26が設けられている。第1フック部25及び第2フック部26のそれぞれは、両者によりスリット20を挟む位置に配置されている。第1フック部25及び第2フック部26はともに同じ構成である。すなわち第1フック部25及び第2フック部26は、いずれも、コ字状の形状を有し、シェル11の外面から外側に向かって延びる一対の脚部27aと、一対の脚部27aの先端間に架け渡された梁部27bと、を有する。一対の脚部27aは、上下方向に離間しており、梁部27bは上下方向に延びている。第1フック部25及び第2フック部26は、スリット20から所定の距離をおいて配置されている。
【0038】
第1フック部25と第2フック部26には、双方の梁部27bに連結部材としてのベルト40がループ状に巻回して掛けられる。ベルト40は、互いの接着面が接着・剥離自在な一般周知の面ファスナーである。ベルト40は、適宜なテンションをかけた状態で互いの接着面が接合される。これにより、第1端部21と第2端部22とが互いに連結される。そして、第1フック部25及び第2フック部26を介して第1端部21及び第2端部22が互いに引き寄せられ、シェル11は僅かに縮径して頭部2に所要の圧力がかかるようになっている。
【0039】
クッション30は、シェル11の各押圧部18の内面に配置されている。クッション30は、反発性を有する発泡合成樹脂の成形体である。クッション30は、シェル11の内面に、例えば両面接着テープを介して着脱自在に貼着される。
【0040】
各クッション30には、押圧部18で押圧される押圧受け部4から受ける反力に応じた圧力を検知する圧力センサ50が配置されている。圧力センサ50は、頭蓋から最も大きな圧力を受けると予測される位置に配置されることが好ましい。圧力センサ50は、例えば厚さ1mm未満で1mm四方程度の矩形状のフィルムを基材とするシート型の感圧センサが好適に用いられる。そのような圧力センサ50は、例えば、クッション30の内面に設けた窪みに配置されて使用される。例えば、圧力センサ50には計測データ取り込み用のケーブルが接続され、パソコン等の表示装置に、押圧受け部4からクッション30にかかる圧力の計測値が表示される。
【0041】
以上説明した実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10は、上側開口部12及び下側開口部13を有する略環状のシェル11と、シェル11の内側に配置されて頭部2に接触するクッション30と、を備え、シェル11は、上側開口部12の上側開口縁12aから下側開口部13の下側開口縁13aにわたり、シェル11の厚み方向Tに対して交差する方向に貫通形成されたスリット20を有し、スリット20は、頭部2の前後方向における一方側から他方側に突出する湾曲部20Aを有する。
【0042】
実施形態のスリット20は、シェル11の厚み方向Tに対して概略斜め方向Dに交差してシェル11を切断するようにして貫通形成されている。このようなスリット20により、スリット20は全体的に頭部2の後側から前側に突出する湾曲状に形成される。したがってスリット20を間に挟む第1端部21の先端面と第2端部22の先端面とは湾曲しており、これら第1端部21の先端面と第2端部22の先端面とが互いに突き当たると、上下方向及び前後方向に互いにずれる動きを拘束し合う。このため、スリット20を形成しただけの簡素な構成で、第1端部21及び第2端部22のずれが抑制される。その結果、安定した装着状態を得やすい。
【0043】
実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、スリット20を間に挟んで互いに離接可能に対向する第1端部21及び第2端部22を有し、第1端部21は、シェル11の厚み方向に対して交差する方向に延びる第1端部片21aを含み、第2端部22は、シェル11の厚み方向に対して交差する方向に延び、第1端部片21aとシェル11の厚み方向で重畳可能な第2端部片22aを含む。
【0044】
第1端部片21aと第2端部片22aとがシェル11の厚み方向Tで重畳することにより、第1端部21と第2端部22の突き合せ状態が互いに拘束され、その結果、第1端部21及び第2端部22のずれが抑制され、頭蓋形状矯正ヘルメット10の安定した装着状態を得やすい。
【0045】
実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10において、頭部2が略仰向けの状態で、スリット20は、頭部2の側部において下方へ荷重がかかる部分に対応する位置Pに形成され、第1端部片21aは、下方に延びており、第2端部片22aは、第1端部片21aの外側に配置され、第2端部22で第1端部片21aの荷重を受けることが好ましい。
【0046】
これにより、図4に示したように斜頭に特有の仰向け状態になった場合において、スリット20は下方へ荷重がかかる位置Pに配置される。位置Pにおいて下側の第2端部片22aが第1端部片21aの外側に配置されているため、上側の第1端部21が外側にずれて嵌合状態が外れるといった事態が起こりにくい。このため、シェル11の形状が保持され、治療が正常に進行する。
【0047】
実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10において、第1端部21は、第1フック部25を有し、第2端部22は、第2フック部26を有し、第1フック部25及び第2フック部26のそれぞれは、両者によりスリット20を挟む位置に配置され、第1端部21と第2端部22とが、第1フック部25と第2フック部26とに着脱可能に掛けられるベルト40を介して互いに連結される。
【0048】
これにより、ベルト40のテンションを調整してシェル11による締め付け強度を調整することができるとともに、ベルト40を容易に交換することができる。
【0049】
実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10において、シェル11は、頭蓋の膨出変形を必要とする治療部位3に対向し、治療部位3との間にスペースSを形成して頭蓋の膨出変形を許容する変形許容部17を有し、変形許容部17には、変形許容部17と治療部位3との間の距離を触診により計測可能とする触診孔19aが設けられていることが好ましい。
【0050】
これにより、頭蓋形状矯正ヘルメット10を頭部2から取り外すことなく、触診孔19aを利用して治療の経過を触診により容易に確認することができる。
【0051】
実施形態に係る頭蓋形状矯正ヘルメット10において、クッション30は、シェル11から押圧力がかかる頭部の押圧受け部4に接触するように配置され、頭部2の押圧受け部4から受ける反力に応じた圧力を検知する圧力センサ50がクッション30に配置されていることが好ましい。
【0052】
これにより、頭蓋形状矯正ヘルメット10の締め付け状態を圧力センサ50で検知し、締め付けの状態を定量評価することができる。
【0053】
実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット10は、次の方法で製造可能である。すなわち、矯正すべき頭部2の頭蓋の外形に基づいてシェル11を3Dプリンタによって成形する工程を行い、次いで、シェル11の内側にクッション30を配置する工程を行う。シェル11の形状は、上述したように、治療対象者1の頭部2の3次元形状に基づいて作成された治療目標とする理想の3次元形状に基づいて決定される。
これにより、実施形態の頭蓋形状矯正ヘルメット10を好適に製造することができる。
【0054】
3Dプリンタによってシェル11を成形する具体的な方法は種々あるが、例えば、液槽光重合法、材料噴射法、結合剤噴射法、粉末床溶融結合法、材料押出法、指向性エネルギー体積法、シート積層法等の周知の方法が挙げられる。
【0055】
次に、図6及び図7を参照して、上記実施形態のクッション30の変形例を説明する。変形例の説明においては、クッション30以外の他の構成は上記実施形態と共通であるため、同一の構成要素には同一の符号を付してそれら構成の説明は省略する。
【0056】
図6は、クッション30の第1変形例を示している。このクッション30は、押圧受け部4の略中央に配置される第1クッション部31と、第1クッション部31の周囲に配置された第2クッション部32と、を含む。これらクッション部31、32は、いずれも反発性を有する発泡合成樹脂の成形体であり、シェル11の内面に、例えば両面接着テープを介して着脱自在に貼着される。第1クッション部31と第2クッション部32とは反発性が異なっており、第1クッション部31の方が第2クッション部32よりも柔らかく、反発性が低い。
【0057】
第1クッション部31及び第2クッション部32の双方とも頭部2に圧力がかかった状態で接触するが、第1クッション部31が中央に配置されていることから、第1クッション部31の方が第2クッション部32よりも高い圧力で頭部2に接触する。このように圧力のかかり具合に対応して、比較的高い圧力で頭部2に接触する第1クッション部31の方が第2クッション部32よりも反発性が低くなっている。
【0058】
第1変形例のクッション30によれば、比較的高い圧力で頭部2に接触する第1クッション部31を第2クッション部32よりも低反発性なものとすることにより、頭部2へのダメージをなるべく低く抑えることができるともに、良好な装着感を得やすい。
【0059】
図7は、クッション30の第2変形例を示している。このクッション30は、押圧受け部4に直接接触する第3クッション部33と、第3クッション部33の厚み方向の外側に配置される第4クッション部34と、を含む二層構造を有する。第4クッション部34は、第3クッション部33に例えば両面接着テープを介して着脱自在に貼着される。第3クッション部33と第4クッション部34とは反発性が異なっており、第3クッション部33の方が第4クッション部34よりも柔らかく、反発性が低い。
【0060】
第2変形例のクッション30によれば、押圧受け部4に直接接触する第3クッション部33の方が第4クッション部34よりも低反発性であるため、頭部2へのダメージをなるべく低く抑えることができるともに、良好な装着感を得やすい。
【0061】
さらに、圧力センサ50に関する変形例として、圧力センサ50はクッション30に常時セットされておらず、クッション30には、圧力センサ50が着脱可能に格納される窪みのみが形成されている構成であってよい。窪みは、圧力センサ50に対応する形状で圧力センサ50が嵌合する形状が好ましい。この場合、頭部2の押圧受け部4にかかる圧力を検査する時に、圧力センサ50をクッション30の当該窪みに格納してセットする。
【0062】
本発明は上記各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、スリット20は、シェル11の厚み方向に対して斜め方向に形成されていれば、実施形態のように断面形状がZ字状ではなく、真っ直ぐでもよい。
スリット20の湾曲部20Aはスリット20の全体にわたるほかに、互いにずれを抑制することができれば、部分的に設けられてよい。
第1フック部25及び第2フック部26、ならびに連結部材としてのベルト40の形態は、実施形態に限定はされるわけではなく、適宜変更することができる。
シェル11の触診孔19aは必要に応じて設けるようにしてよく、有していない構成であってもよい。また、圧力センサ50省略してもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 頭部
3 治療部位
4 押圧受け部
10 頭蓋形状矯正ヘルメット
11 シェル
12 上側開口部
12a 上側開口縁
13 下側開口部
13a 下側開口縁
17 変形許容部
19a 触診孔
20 スリット
20A 湾曲部
21 第1端部
21a 第1端部片
22 第2端部
22a 第2端部片
25 第1フック部
26 第2フック部
30 クッション
31 第1クッション部
32 第2クッション部
33 第3クッション部
34 第4クッション部
40 ベルト(連結部材)
50 圧力センサ
S スペース
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7