(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042712
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230320BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20230320BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N35/04 H
G01N35/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149982
(22)【出願日】2021-09-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年1月14日18時15分 長崎文化放送株式会社(長崎県長崎市茂里町3-2)「NCCスーパーJチャンネル長崎」にて放送 (刊行物等) 令和3年1月18日 長崎文化放送株式会社(長崎県長崎市茂里町3-2)https://www.youtube.com/watch?v=z1MdH5KO4Isにて公開 (刊行物等) 令和3年3月26日 長崎大学病院 5階CM検査室(長崎県長崎市文教町1-14)に設置 (刊行物等) 令和3年4月15日 国立大学法人長崎大学(長崎県長崎市文教町1-14)「長崎大学定例記者会見」にて発表 (刊行物等) 令和3年4月15日 株式会社長崎新聞社(長崎県長崎市茂里町3-1)https://nordot.app/755438499296673792?c=39546741839462401 にて公開 (刊行物等) 令和3年4月16日 株式会社西日本新聞社(福岡県福岡市中央区天神1丁目4-1)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/724239/ にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】593145663
【氏名又は名称】協和機電工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 智己
(72)【発明者】
【氏名】酒井 寿美雄
(72)【発明者】
【氏名】垣本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】中島 貞治
(72)【発明者】
【氏名】末吉 麟
(72)【発明者】
【氏名】河野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼原 克紀
(72)【発明者】
【氏名】太田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA02
2G058CB15
2G058CB16
2G058ED35
2G058GB03
(57)【要約】
【課題】被験者から採取した検体に基づいて感染症の陽性、及び陰性を判定するための遺伝子検査の前処理を簡易かつ迅速に行うことができる検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】検体前処理装置1は、検体容器B1から検体を吸引した直後のディスペンサDの先端孔からの検体の液垂れを防止する液垂れ防止部を備えている。液垂れ防止部は、検体容器B1から検体を吸引した直後のディスペンサDの先端孔を押し付けて先端孔からの液垂れを拭き取る繊維体424を有する拭取装置41と、アーム部20の移動時の振動等に起因するディスペンサDの先端孔からの液垂れを防止する遮蔽装置43を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面上の第1の方向に沿って設置され、一方側に検体が収容された検体容器を保持するラックを前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って搬送する検体容器搬送部、他方側に試薬が収容された試薬容器を保持するラックを前記第2の方向に沿って搬送する試薬容器搬送部を有する容器搬送部と、
該容器搬送部の鉛直上方に位置し、前記第1の方向、及び前記第2の方向に沿って移動可能であり、かつ鉛直方向に沿って昇降可能に支持され、ディスペンサを把持して前記検体容器から吸引した検体を前記試薬容器に吐出するディスペンサ把持部、前記検体容器及び前記試薬容器を把持して栓体の開栓又は閉栓をする容器把持部を有するアーム部と、
前記検体容器に収容された前記検体の収容状態、及び前記検体容器から前記検体を吸引した前記ディスペンサの吸引状態を撮像する撮像部と、
吸引した前記検体の前記ディスペンサの先端孔からの液垂れを防止する液垂れ防止部と、を備える
検体前処理装置。
【請求項2】
前記液垂れ防止部は、
前記ディスペンサの前記先端孔を拭き取る繊維体を有する拭取装置と、
前記ディスペンサの鉛直下方であって、前記先端孔を遮蔽する遮蔽位置と前記先端孔を露出する退避位置との間でスライド自在に移動する遮蔽装置と、を有する
請求項1に記載の検体前処理装置。
【請求項3】
前記拭取装置は、
円盤状の回転テーブルを有し、該回転テーブルの外周には前記ディスペンサの先端を接触させて、前記繊維体を保持するための保持溝が一定間隔で形成されている
請求項2に記載の検体前処理装置。
【請求項4】
前記検体容器搬送部は、
前記検体吸引前の前記検体容器を保持するラックを前記第2の方向に搬送する第1の検体容器搬送部と、検体吸引後の前記検体容器を保持するラックを前記第2の方向とは反対方向である第3の方向に搬送する第2の検体容器搬送部を有する検体容器搬送部とを有し、
前記試薬容器搬送部は、
前記検体吐出前の前記試薬容器を保持するラックを前記第2の方向に搬送する第1の試薬容器搬送部と、前記検体吐出後の前記試薬容器を保持するラックを前記第3の方向に搬送する第2の試薬容器搬送部を有する試薬容器搬送部と、を有する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の検体前処理装置。
【請求項5】
前記検体吸引後の前記検体容器が保持されるラックを把持して前記第1の検体容器搬送部から前記第2の検体容器搬送部に移動させる第1のラック把持部と、
前記検体吐出後の前記試薬容器が保持されるラックを把持して前記第1の試薬容器搬送部から前記第2の試薬容器搬送部に移動させる第2のラック把持部と、を有する
請求項4に記載の検体前処理装置。
【請求項6】
分析対象となる検体が収容された検体容器、及び前記検体と反応させる試薬が収容された試薬容器が搬送経路に沿って順次搬送され、前記検体容器から吸引した前記検体を前記試薬容器に吐出する検体前処理を行う検体前処理方法において、
分析対象となる前記検体容器内の前記検体の収容状態を撮像する工程と、
栓体が開栓された前記検体容器にディスペンサの先端孔を挿入して所定量の前記検体を吸引する工程と、
吸引後の前記ディスペンサの前記先端孔からの前記検体の液垂れを除去する工程と、
前記ディスペンサの前記先端孔を遮蔽板で遮蔽する工程と、
前記ディスペンサの前記検体の吸引状態を撮像する工程と、
前記遮蔽板を退避させて前記先端孔を露出する工程と、
栓体が開栓された前記試薬容器に前記ディスペンサに吸引されている前記検体を吐出する工程と、を備える
検体前処理方法。
【請求項7】
前記検体の収容状態を撮像する工程、又は前記検体の吸引状態を撮像する工程において、
撮像した前記検体の前記検体容器における収容状態、及び前記ディスペンサにおける吸引状態が所定の基準を満たさないと判定した場合には、前記検体前処理を中止する
請求項6に記載の検体前処理方法。
【請求項8】
前記検体の液垂れを除去する工程は、前記ディスペンサの先端孔を繊維体に密着させる工程を有する
請求項6また請求項7に記載の検体前処理方法。
【請求項9】
分析対象となる検体が収容された検体容器、及び前記検体と反応させる試薬が収容された試薬容器が搬送経路に沿って順次搬送され、前記検体容器から吸引した前記検体を前記試薬容器に吐出する検体前処理を行う検体前処理装置のコンピュータに、
分析対象となる前記検体容器内の前記検体の収容状態を撮像するステップと、
栓体が開栓された前記検体容器にディスペンサの先端孔を挿入して所定量の前記検体を吸引するステップと、
吸引後の前記ディスペンサの前記先端孔からの前記検体の液垂れを除去するステップと、
前記ディスペンサの前記先端孔を遮蔽板で遮蔽するステップと、
前記ディスペンサの前記検体の吸引状態を撮像するステップと、
前記遮蔽板を退避させて前記先端孔を露出するステップと、
栓体が開栓された前記試薬容器に前記ディスペンサに吸引されている前記検体を吐出するステップと、を実行させるための
制御プログラム。
【請求項10】
前記検体の収容状態を撮像するステップ、又は前記検体の吸引状態を撮像するステップにおいて
撮像した前記検体の前記検体容器における収容状態、及び前記ディスペンサにおける吸引状態が所定の基準を満たさないと判定した場合には、前記検体による検体前処理を中止するステップを実行させるための
請求項9に記載の制御プログラム。
【請求項11】
前記検体の液垂れを除去する工程は、前記ディスペンサの先端孔を繊維体に密着させるステップを実行させるための
請求項9または請求項10に記載の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムに関する。詳しくは、被験者から採取した検体に基づいて感染症の陽性、及び陰性を判定するための遺伝子検査の前処理を簡易かつ迅速に行うことができる検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年の生命科学分野の発展は著しく、DNA、及びRNAなどの核酸の解析技術は生物学分野(生物種の同定や起源の研究など)、医療分野(病気の診断など)、及び日常生活に近い分野(食糧の安全性の確認など)の多岐にわたる分野に普及している。
【0003】
特に医療分野においては、早期の感染症診断において、核酸の解析技術のうちPCR法をはじめとして等温核酸増幅法などを使用して標的核酸(例えば、自己に存在しない外来遺伝子の特徴的な遺伝子配列やその他の特定配列など)を増幅し解析する技術(以下「遺伝子検査」という。)が広く利用されている。
【0004】
遺伝子検査は、従来の感染症診断技術である培養検査や免疫検査(抗原又は抗体などを使用した検査)に比べて格段に精度が高く、医師は遺伝子検査の結果を参酌することで感染症を特定し、患者の容体に応じた適切な治療を施すことができるものとなっている。
【0005】
前記したPCR法は、DNAを含む生体サンプルと、プライマーや酵素などからなるPCR試薬とを混合した試料に、所定のサーマルサイクルを与え、変性、アニーリング、及び伸長といった反応を繰り返し起こさせて、DNAの特定の部分を選択的に増幅させるものである。そして、以上のような遺伝子検査の普及に伴い、PCR法等の遺伝子検査方法を適用した遺伝子検査装置に関する技術も数多く公開されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した遺伝子検査装置により、感染者のスクリーニング検査として一度に多くのPCR検査を実現している。ところで、遺伝子検査装置による遺伝子検査を実行する場合には、被験者から採取した検体と粘液溶解剤等の試薬とを検査用容器にそれぞれ投入し核酸(DNA・RNA)の抽出と精製といった検体前処理が行われている。
【0008】
一般的にこの検体前処理は、安全キャビネットで作業者による手作業にて行われている。具体的には、検査機関に検体が運び込まれると、作業者は安全キャビネットにおいて検体容器から検体を抽出し、抽出した検体を検査用容器へ分注する一連の作業をそれぞれの検体に対して手作業で実施しており、非常に多くの工数を要するものとなっている。
【0009】
また、検体の分注作業を精度良く行うためには、感染リスクを考慮しながら慎重な作業が必要となるとともに、全ての検体の分注作業の精度を均一化するには、熟練した作業者であっても高度な技能が必要となる。
【0010】
以上のことから、従来の遺伝子検査においては、遺伝子検査装置による遺伝子検査の前の工程である検体前処理に多くの工数を要しており、例え高精度の遺伝子検査装置を準備したとしても、検体前処理が依然として手作業で行われている現状においては、遺伝子検査の処理能力には限界があり、遺伝子検査のスピードアップを阻害するボトルネックとなっていた。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、被験者から採取した検体から感染症の陽性、及び陰性を判定するための遺伝子検査の前処理を簡易かつ迅速に行うことができる検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明の検体前処理装置は、水平面上の第1の方向に沿って設置され、一方側に検体が収容された検体容器を保持するラックを前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って搬送する検体容器搬送部、他方側に試薬が収容された試薬容器を保持するラックを前記第2の方向に沿って搬送する試薬容器搬送部を有する容器搬送部と、該容器搬送部の鉛直上方に位置し、前記第1の方向、及び前記第2の方向に沿って移動可能であり、かつ鉛直方向に沿って昇降可能に支持され、ディスペンサを把持して前記検体容器から吸引した検体を前記試薬容器に吐出するディスペンサ把持部、前記検体容器及び前記試薬容器を把持して栓体の開栓又は閉栓をする容器把持部を有するアーム部と、前記検体容器に収容された前記検体の収容状態、及び前記検体容器から前記検体を吸引した前記ディスペンサの吸引状態を撮像する撮像部と、吸引した前記検体の前記ディスペンサの先端孔からの液垂れを防止する液垂れ防止部とを備える。
【0013】
ここで、検体容器搬送部と試薬容器搬送部が水平面上の第1の方向に沿って設置された容器搬送部を備えることにより、一度に多くの検体容器、及び試薬容器を自動で搬送されるため、検体前処理の効率化を実現することができる。
【0014】
また、容器搬送部の鉛直上方に位置し、第1の方向、及び第2の方向に沿って移動可能であり、かつ鉛直方向に沿って昇降可能に支持され、ディスペンサを把持して検体容器から吸引した検体を試薬容器に吐出するディスペンサ把持部、検体容器及び試薬容器を把持して栓体の開栓又は閉栓をする容器把持部を有するアーム部を備えることにより、容器搬送部により搬送された検体前処理の対象となる検体容器から検体を吸引し、吸引した検体を試薬容器に吐出するまでの一連の分注作業を自動的に行うことができる。
【0015】
また、検体容器に収容された検体の収容状態、及び検体容器から検体を吸引したディスペンサの吸引状態を撮像する撮像部を備えることにより、撮像部で検体の状態を確認することで検体前処理の可否判定を行うことができる。
【0016】
また、吸引した検体のディスペンサの先端孔からの液垂れを防止する液垂れ防止部を備えることにより、ディスペンサに吸引された検体の液垂れを防止し、検体が外部に付着したり拡散したりすることを防止することができる。
【0017】
また、液垂れ防止部は、ディスペンサの先端孔を拭き取る繊維体を有する拭取装置を有する場合には、ディスペンサに検体を吸引した際に先端孔を繊維体で拭き取ることで、以後の工程において先端孔からの検体の液垂れを未然に防止することができる。
【0018】
また、ディスペンサの鉛直下方であって、先端孔を遮蔽する遮蔽位置と先端孔を露出する退避位置との間でスライド自在に移動する遮蔽装置を有する場合には、ディスペンサ把持部でディスペンサを把持しながら試薬容器まで移動させる間に、先端孔から検体が液垂れしたとしても、液垂れした検体は遮蔽装置で受け止められるため外部への落下を防止することができる。
【0019】
また、検体容器搬送部は、検体吸引前の検体容器を保持するラックを第2の方向に搬送する第1の検体容器搬送部と、検体吸引後の検体容器を保持するラックを第2の方向とは反対方向である第3の方向に搬送する第2の検体容器搬送部を有する検体容器搬送部とを有する場合には、検体吸引前の検体容器が保持されたラックと検体吸引後の検体容器が保持されたラックを、互いに異なる搬送ラインで搬送できる。従って、検体前処理の実施前後の検体容器が混在することなく、正確に検体前処理を実行することができる。
【0020】
また、試薬容器搬送部は、検体吐出前の試薬容器を保持するラックを第2の方向に搬送する第1の試薬容器搬送部と、検体吐出後の試薬容器を保持するラックを第3の方向に搬送する第2の試薬容器搬送部を有する試薬容器搬送部とを有する場合には、検体吐出前の試薬容器が保持されたラックと検体吐出後の検体容器が保持されたラックを、互いに異なる搬送ラインで搬送できる。従って、検体前処理の実施前後の試薬容器が混在することなく、正確に検体前処理を実行することができる。
【0021】
また、検体吸引後の検体容器が保持されるラックを把持して第1の検体容器搬送部から第2の検体容器搬送部に移動させる第1のラック把持部を有する場合には、検体吸引後の検体容器が保持されたラックを、第1の検体容器搬送部から第2の検体容器搬送部に自動的に移動させることができる。
【0022】
また、検体吐出後の試薬容器が保持されるラックを把持して第1の試薬容器搬送部から第2の試薬容器搬送部に移動させる第2のラック把持部を有する場合には、検体吐出後の試薬容器が保持されたラックを、第1の試薬容器搬送部から第2の試薬容器搬送部に自動的に移動させることができる。
【0023】
前記の目的を達成するために、本発明の検体前処理方法は、分析対象となる検体が収容された検体容器、及び前記検体と反応させる試薬が収容された試薬容器が搬送経路に沿って順次搬送され、前記検体容器から吸引した前記検体を前記試薬容器に吐出する検体前処理を行う検体前処理方法において、分析対象となる前記検体容器内の前記検体の収容状態を撮像する工程と、栓体が開栓された前記検体容器にディスペンサの先端孔を挿入して所定量の前記検体を吸引する工程と、吸引後の前記ディスペンサの前記先端孔からの前記検体の液垂れを除去する工程と、前記ディスペンサの前記先端孔を遮蔽板で遮蔽する工程と、前記ディスペンサの前記検体の吸引状態を撮像する工程と、前記遮蔽板を退避させて前記先端孔を露出する工程と、栓体が開栓された前記試薬容器に前記ディスペンサに吸引されている前記検体を吐出する工程とを備える。
【0024】
また、前記の目的を達成するために、本発明の制御プログラムは、分析対象となる検体が収容された検体容器、及び前記検体と反応させる試薬が収容された試薬容器が搬送経路に沿って順次搬送され、前記検体容器から吸引した前記検体を前記試薬容器に吐出する検体前処理を行う検体前処理装置のコンピュータに、分析対象となる前記検体容器内の前記検体の収容状態を撮像するステップと、栓体が開栓された前記検体容器にディスペンサの先端孔を挿入して所定量の前記検体を吸引するステップと、吸引後の前記ディスペンサの前記先端孔からの前記検体の液垂れを除去するステップと、前記ディスペンサの前記先端孔を遮蔽板で遮蔽するステップと、前記ディスペンサの前記検体の吸引状態を撮像するステップと、前記遮蔽板を退避させて前記先端孔を露出するステップと、栓体が開栓された前記試薬容器に前記ディスペンサに吸引されている前記検体を吐出するステップとを実行させる。
【0025】
ここで、検体前処理方法、及び制御プログラムが、分析対象となる検体容器内の検体の収容状態を撮像する工程及びステップを備えることにより、検体容器内の検体の状態を撮像することで、画像診断に基づいて検体前処理の可否判定を行うことができる。即ち、画像診断により、例えば検体容器に収容されている検体が所定の液面レベルに達しているか否かを判定することで、分析対象となる検体容器内に遺伝子検査に供するための十分な量の検体が収容されているか否を判定することができる。
【0026】
また、栓体が開栓された検体容器にディスペンサの先端孔を挿入して所定量の検体を吸引する工程及びステップを備えることにより、検体容器に収容されている検体をディスペンサで吸引することができる。
【0027】
また、吸引後のディスペンサの先端孔からの検体の液垂れを除去する工程及びプログラムを備えることにより、検体吸引直後のディスペンサの先端孔から液垂れする検体を除去することで、検体の外部への拡散、或いは作業スペースや作業者への付着を防止することができる。
【0028】
また、ディスペンサの先端孔を遮蔽板で遮蔽する工程及びステップを備えることにより、検体を吸引した状態で試薬が収容された試薬容器までディスペンサを移動する間に、ディスペンサの先端孔から検体が液垂れしたとしても、遮蔽板により受け止められて外部に拡散、或いは作業スペースや作業者への付着を防止することができる。
【0029】
また、ディスペンサの検体の吸引状態を撮像する工程及びステップを備えることにより、画像診断に基づいてディスペンサの吸引状態を判定し、検体前処理の可否判定を行うことができる。即ち、画像診断により、ディスペンサに吸引されている検体が所定の液面レベルに達しているか、或いは吸引された検体に所定量の気泡が含まれていないかを診断することで、遺伝子検査に供する十分な量の検体の確保の可否を判定することができる。
【0030】
また、遮蔽板を退避させて先端孔を露出する工程及びステップを備えることにより、ディスペンサに吸引されている検体を試薬容器に吐出するための準備が完了する。
【0031】
また、栓体が開栓された試薬容器にディスペンサに吸引されている検体を吐出する工程及びステップを備えることにより、試薬容器に一定量の検体を吐出し検体と試薬とを混合することで核酸の抽出と精製を行い、遺伝子検査の検体前処理が完了する。
【0032】
また、検体の収容状態を撮像する工程及びステップ、又は検体の吸引状態を撮像する工程及びステップにおいて、撮像した検体の検体容器における収容状態、及びディスペンサにおける吸引状態が所定の基準に満たないと判定した場合には、検体前処理を中止する工程及びステップを有する場合には、検体を試薬に投入する前に検体前処理を一旦中止することで、検体前処理に供される試薬の無駄を省き、検体前処理の効率化を図ることができる。
【0033】
また、検体の液垂れを除去する工程及びステップは、ディスペンサの先端孔を繊維体に密着させる工程及びステップを有する場合には、ディスペンサの先端孔を破損させることなく、先端孔から液垂れする検体を確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムは、被験者から採取した検体に基づいて感染症の陽性、及び陰性を判定するための遺伝子検査の前処理を簡易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る検体前処理装置の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る検体前処理装置の正面斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る検体前処理装置のアーム部の拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る検体前処理装置の拭取装置の拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る検体前処理装置のブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る検体前処理装置による制御プログラムのフロー図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る検体前処理装置による検体前処理方法の工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムついて図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において説明の便宜上、検体前処理装置を水平面に設置した状態において、上方に向かう方向を上方、上方の反対方向を下方、上方および下方により表される軸方向を鉛直方向(z軸)、鉛直方向と垂直な方向を水平方向(x、y軸)とそれぞれ定義する。また、水平方向において、容器搬送部の搬送方向を前後方向(y軸)、y軸と直交する方向を左右方向(x軸)と定義する。
【0037】
本発明の実施形態に係る検体前処理装置1は、例えば安全キャビネット内に設置がされて遺伝子検査の前処理に供されるものであり、制御部50からの制御信号に基づいて駆動することが可能となっている。以下、検体前処理装置1の詳細な構造について
図1乃至
図5に基づいて説明する。
【0038】
[容器搬送部]
容器搬送部は、検体前処理装置1の平面視において一方側に検体が収容された検体容器B1を保持するラックLをコンベア(符号を付さない)により前後方向に搬送する検体容器搬送部11、他方側に分注された検体と反応させる試薬が収容された試薬容器B2を保持するラックLをコンベアにより前後方向に搬送する試薬容器搬送部12から構成されている。なお、各ラックLは一度に8本の容器が保持できるものとなっているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、1つのラックLに保持できる容器の本数は適宜変更することが可能である。
【0039】
検体容器搬送部11は、検体前処理に供される前(検体の吸引前)の検体容器B1が保持されたラックLを
図1の実線矢印の方向に搬送する第1の検体容器搬送部111と、第1の検体容器搬送部111とは逆方向(
図1の点線矢印)に並走し検体前処理後(検体の吸引後)の検体容器B1が保持されたラックを搬送する第2の検体容器搬送部112から構成されている。
【0040】
試薬容器搬送部12は、検体前処理に供される前(検体の分注前)の試薬容器B2が保持されたラックLを
図1の実線矢印の方向に搬送する第1の試薬容器搬送部121と、第1の試薬容器搬送部121とは逆方向(
図1の点線矢印)に並走し検体前処理後(検体の分注後)の試薬容器が保持されたラックを搬送する第2の試薬容器搬送部122から構成されている。
【0041】
容器搬送部の搬送方向の始端と終端には、図示しないセンサがそれぞれ設けられており、容器搬送部の駆動と停止は該センサからの信号に基づいて、制御部50における容器搬送制御部51において制御される。即ち、始端側のセンサが反応すると各容器搬送部が駆動してラックLが搬送方向に搬送され、終端側のセンサが反応すると駆動が停止されるように制御される。
【0042】
[クランプ部]
クランプ部は、第1のクランプ部61と第2のクランプ部62から構成されている。第1のクランプ部61には、第1の検体容器搬送部111で搬送されてきたラックLに保持されている検体容器B1のうち、検体前処理に供される選択された一の検体容器B1が設置される。また、第2のクランプ部62には、第1の試薬容器搬送部121で搬送されてきたラックLに保持されている試薬容器B2のうち、検体前処理に供される選択された一の試薬容器B2が設置される。
【0043】
ここで、必ずしも、検体前処理の対象となる検体容器B1、及び試薬容器B2を設置するためのクランプ部を備えている必要はなく、ラックLに保持された状態で検体容器B1から検体を吸引し、同じくラックLに保持された状態の試薬容器B2に吸引した検体を吐出するようにしてもよい。
【0044】
[アーム部]
アーム部20は、ディスペンサ把持部21、及び容器把持部23から構成されている。ディスペンサ把持部21は、
図3に示すように、ディスペンサDの後端孔に嵌合可能な突起部22を有し、該突起部22にディスペンサDの後端孔を圧入させることで、ディスペンサDを保持することが可能となる。そして、ディスペンサDを保持した状態で、第1のクランプ部61に設置されている検体容器B1から検体を吸引する吸引機構、吸引した検体を第2のクランプ部62に設置されている試薬容器B2に吐出させる吐出機構をそれぞれ有している。
【0045】
容器把持部23は、
図3に示すように、基部24に複数の爪部25を有しており、該爪部25で検体容器B1、及び試薬容器B2の栓体部分を把持して、検体前処理に供される検体容器B1、及び試薬容器B2をラックLから取り出して第1のクランプ部61、及び第2のクランプ部62に設置することが可能となっている。また爪部25で栓体を把持した状態で基部24を正方向、又は逆方向に回転させることで、栓体を開栓、又は閉栓する機能を有している。
【0046】
アーム部20は、移動機構26によりx軸、y軸、z軸のそれぞれの方向にスライド自在に支持されている。移動機構26は左右方向に延在するx軸ガイドレール261、前後方向に延在するy軸ガイドレール262、鉛直方向に延在するz軸ガイドレール263をそれぞれ有している。そして、図示しない電動モータを含む駆動部により、スライダー(符号を付さない)が各ガイドレール上をスライド移動することで、アーム部20の3軸方向への自由な移動を可能としている。
【0047】
ここで、必ずしも、アーム部20は移動機構26により3軸方向にスライド自在に支持されている必要はなく、3軸又はそれ以上の多軸方向への移動が実現できれば、その構成については特に限定されるものではない。
【0048】
移動機構26の駆動制御は、制御部50における移動機構制御部52により制御される。移動機構制御部52はアーム部20のx軸方向の移動量を制御するx軸制御部521、y軸方向の移動量を制御するy軸制御部522、及びz軸方向の移動量を制御するz軸制御部523からの出力信号に基づいて移動量が制御される。
【0049】
また、容器把持部23に対しては、検体前処理に供される容器の把持、及び容器の栓体の開閉を指示する容器制御部53からの出力信号に基づいて、容器の把持と栓体の開閉操作等が行われる。さらに、ディスペンサ把持部21に対しては、ディスペンサ制御部54からの出力信号に基づいて、検体容器B1からの検体の吸引操作、或いは試薬容器への検体の吐出操作が行われる。
【0050】
[ディスペンサケース]
ディスペンサケース70には、検体前処理に使用するディスペンサDがストックされている。ディスペンサDは1回の検体前処理で使い捨てとなるため、1度に複数回の検体前処理を行う場合には大量のディスペンサDが必要となる。従って、ディスペンサケース70に予め必要な本数のディスペンサDをストックしておくことで、効率的に検体前処理を実施できる。また、ディスペンサケース70内のディスペンサDのストックが少なくなると、作業員により新しいディスペンサDが供給されるようになっている。
【0051】
[撮像部]
撮像部30は、検体前処理に供される検体容器B1に投入されている検体の状態を撮像する第1の撮像部31、検体容器B1からディスペンサDで吸引した検体の状態を撮像する第2の撮像部32から構成されている。第1の撮像部31、及び第2の撮像部32で撮像された画像データは、後記する制御部50の画像処理部55に記憶されたうえで画像診断処理される。
【0052】
ここで、必ずしも、撮像部30は第1の撮像部31と第2の撮像部32から構成されている必要はない。例えば、一台の撮像部30により検体容器B1に投入されている検体の状態、及びディスペンサDに吸引されている検体の状態をそれぞれ撮像するようにしてもよい。
【0053】
まず、第1の撮像部31で撮像された画像データについては、予め設定をした液面座標の上下限値の範囲内であるか否かが判定され、検体が液面座標の範囲内である場合には以後の処理が実行される。一方、検体が液面座標の範囲内にないと判定された場合には、検体前処理が中断され検体容器B1は検体前処理に供されることなく、検体前処理が行われなかった検体容器を選別するための容器選別部100に投入される。
【0054】
なお、液面座標の下限値については、ディスペンサDにより空気を吸い込むことなく規定の検体量を吸引できる程度に十分な量の液面高さが確保されていればよく、吸引する検体量や、遺伝子検査の種類、或いは目的、さらには使用するディスペンサDのサイズ等に応じて適宜変更することが可能である。また、液面座標の上限値については、検体容器B1に貼付されている固体識別のための医療用ラベルの位置を考慮して、外部から液面把握できる最大の液面位置に基づいて適宜変更することが可能である。
【0055】
また、第2の撮像部32で撮像された画像データについては、吸引した検体の液面評価、及び気泡有無の評価が行われる。液面評価においては、吸引した検体が予め設定をした液面座標の範囲内であるか否かが判定される。一方、気泡有無の評価においては所定の画像解析評価に基づいて判定される。そして、液面評価、及び気泡評価の何れか一方を満たさない場合には検体前処理が中断され、検体を吸引した状態のディスペンサDは検体前処理に供されることなく廃棄部90に投入される。また、この時、ディスペンサDで吸引した検体が投入されていた検体容器B1は容器選別部100に投入される。
【0056】
なお、液面評価における上下限値は適宜変更することができるものとし、また気泡有無の判定における画像解析方法は特に限定されるものではなく、種々の画像診断に基づく評価が可能である。
【0057】
また、必ずしも、第2の撮像部32による評価結果として、液面評価、及び気泡評価の何れか一方を満たさない場合に検体前処理が中断される必要はなく、例えば液面評価、及び気泡評価の何れもが所定の要件を満たさない場合に検体前処理を中断するようにしてもよい。
【0058】
[液垂れ防止部]
液垂れ防止部は、検体容器B1から検体をディスペンサDで吸引した際に、ディスペンサDからの検体の一部が液垂れすることを防止する機能を有し、拭取装置41、及び遮蔽装置43から構成されている。
【0059】
拭取装置41は、検体容器搬送部11と試薬容器搬送部12との間であって、平面視において検体前処理装置1の左右方向の略中心線上に設置がされており、拭取装置制御部56からの出力信号に基づいて駆動制御される。
【0060】
拭取装置41は、円盤状の一対の回転テーブル42(第1の回転テーブル421と第2の回転テーブル422)から構成されている。回転テーブル42の外周には、ディスペンサDの先端を接触させて、ディスペンサDの先端孔から液垂れする検体を拭き取る繊維体424を保持するための保持溝423が一定間隔で形成されている。なお、本発明の実施形態において使用される繊維体424としては、コットンを使用するが、レーヨン、ナイロン、ポリエステル等の液体の吸着機能を有する素材から適宜選択できる。
【0061】
第1のクランプ部61に正対する第1の回転テーブル421は、周方向に所定の角度で回転可能であり、第1の回転テーブル421が回転すると互いにギア425で噛み合いしている第2の回転テーブル422も同時に回転する。そして、第1のクランプ部61に設置された検体容器B1から検体を吸引した直後のディスペンサDが昇降動作して、その先端が繊維体424に押し付けられることで、ディスペンサDの先端孔から液垂れする検体が拭き取られる(
図4参照)。
【0062】
検体前処理が完了すると、拭取装置制御部56からの信号に基づいて第1の回転テーブル421が所定角度だけ回転し、新しい繊維体424が第1のクランプ部61に正対するように切り替わる。このとき、使用済みの繊維体424は、検体の試薬容器B2への分注後のディスペンサDとともに廃棄部90に投入される。
【0063】
第1の回転テーブル421に設置されている繊維体424の全てが使用・廃棄されると、第1の回転テーブル421と第2の回転テーブル422が反転し、今度は第2の回転テーブル422に保持されている繊維体424が使用される。反転した第1の回転テーブル421には新たな繊維体424が保持溝423に供給されることで、第2の回転テーブル422に保持されている繊維体424の全てが使用・廃棄されると、再度反転させて第1の回転テーブル421に供給された繊維体424を使用することができる。
【0064】
ここで、必ずしも、拭取装置41の回転テーブル42は第1の回転テーブル421と第2の回転テーブル422から構成されている必要はなく、一つの回転テーブルのみから構成されていてもよい。但し、回転テーブルが一つのみの場合には、保持溝423への繊維体424の供給作業時には検体前処理装置1の駆動を中断する必要があるため、検体前処理をできるだけ中断することなく効率的に行うという観点では、回転テーブルは複数設置されていることが好ましい。
【0065】
遮蔽装置43は、
図3に示すように、ディスペンサ把持部21によりディスペンサDが把持されている状態において、遮蔽板44が遮蔽装置制御部57からの出力信号に基づいてディスペンサDの先端孔を遮蔽する遮蔽位置(仮想線図)と、先端孔を露出する退避位置(実線図)との間をスライド自在に駆動される。
【0066】
遮蔽板44は、検体容器B1からディスペンサDで検体を吸引する際は退避位置で保持され、検体を吸引した後にアーム部20を移動させる際には遮蔽位置に保持される。これにより、アーム部20がスライド、或いは昇降移動する際の振動等により、ディスペンサDの先端孔から検体の一部が液垂れをしたとしても、遮蔽装置43で検体を受け止め、検体前処理装置1の周囲に検体が付着することを防止することができる。
【0067】
[ラック把持部]
ラック把持部80は、第1のラック把持部81と第2のラック把持部82から構成されている。第1のラック把持部81は、ラック制御部58からの出力信号に基づいて、第1の検体容器搬送部111に設置されているラックLを把持して隣接する第2の検体容器搬送部112に移動させる。即ち、ラックLに保持されている8本の検体容器B1の全ての検体前処理が完了すると、第1のラック把持部81はラックLを把持して第2の検体容器搬送部112へ移動させ、次に検体前処理に供される検体容器B1が保持されたラックLが第1の検体容器搬送部111により順送りされる。
【0068】
第2のラック把持部82についても同じく、ラックLに保持されている試薬容器B2の全てに検体が分注されると、ラック制御部58からの出力信号に基づいて、第2のラック把持部82によりラックが把持されて第2の試薬容器搬送部122へと移動させる。そして、次に検体前処理に供される試薬容器B2が保持されたラックLが第1の試薬容器搬送部121により順送りされる。
【0069】
以上が本発明の実施形態に係る検体前処理装置1の構成である。次に、検体前処理装置1による検体前処理の手順について、
図6、及び
図7に基づいて説明する。
【0070】
[試薬容器のセット:S1]
まず、アーム部20が第1の試薬容器搬送部121までスライド移動し、搬送されてきたラックLに保持されている試薬容器B2のうちから、検体前処理に供される試薬容器B2を選択して容器把持部23により把持されてラックLから取り出され、第2のクランプ部62にセットされる(
図7(a))。
【0071】
[ディスペンサのセット:S2]
アーム部20がディスペンサケース70の位置までスライド移動し、検体前処理に使用する未使用のディスペンサDをディスペンサ把持部21により把持して取り出す。
【0072】
[検体容器の選択:S3]
アーム部20が第1の検体容器搬送部111までスライド移動し、第1の検体容器搬送部111で搬送されてきたラックLに保持されている検体容器B1のうちから、検体前処理に供される検体容器B1を選択して容器把持部23により把持されてラックLから取り出される。
【0073】
[検体容器の撮像:S4]
容器把持部23で検体容器B1を把持してラックLから取り出した状態で、第1の撮像部31により検体の液面状態が撮像される(
図7(b))。このとき、画像処理部55による判定の結果(S5)、液面が適正な範囲内であれば検体容器B1は第1のクランプ部61に設置される。一方、検体容器B1内の検体の液面が適正な範囲内ではないと判定されると、検体前処理を終了し、容器把持部23で把持されている検体容器B1は、容器選別部100に投入される。
【0074】
[検体容器の栓体の開栓:S6]
検体容器B1が第1のクランプ部61にセットされると、検体容器B1の栓体を把持したまま容器把持部23を正回転させ、検体容器B1の栓体が開栓される。
【0075】
[ディスペンサによる検体の吸引:S7]
ディスペンサ把持部21で把持しているディスペンサDを、開栓後の検体容器B1に挿入して、所定量の検体を吸引する(
図7(c))。
【0076】
[ディスペンサ先端孔の拭き取り:S8]
S7においてディスペンサDで検体を吸引し、検体容器B1からディスペンサDを取り出すと、拭取装置41をディスペンサDの近傍位置まで移動させる。その後、ディスペンサ把持部21を昇降動作させることで、ディスペンサDの先端孔を拭取装置41に設置されている繊維体424に押し付けて、先端孔に付着する検体を拭き取る(
図7(d))。
【0077】
[検体容器の栓体の閉栓:S9]
拭取装置41によりディスペンサDの先端孔を拭き取ったら、検体容器B1の栓体を把持した容器把持部23を検体容器B1の直上まで移動させ、検体容器に栓体を取り付けた状態で容器把持部23を逆回転させて閉栓する。これにより、検体に含まれるウイルスの検体容器からの拡散を防止することができる。
【0078】
[遮蔽装置による遮蔽:S10]
S8において、ディスペンサDの先端孔を拭取装置41で拭き取ったら、直後に遮蔽装置43を駆動させ、遮蔽板44を遮蔽位置に移動させる(
図7(e))。以後、検体が試薬容器B2に分注されるまでの間は、遮蔽装置43は遮蔽位置のまま維持され、アーム部20のスライド、或いは昇降動作時の振動等により、ディスペンサDの先端孔から検体の一部が液垂れをしたとしても、遮蔽板44で液垂れする検体を受け止め、周囲への検体の拡散を防止することができる。
【0079】
[試薬容器B2の栓体の開栓:S11]
S8において検体容器B1の栓体を閉栓したら、アーム部20を第2のクランプ部62にセットされている試薬容器B2の位置までスライド移動させる。そして、容器把持部23で試薬容器B2の栓体を把持して正回転させることで、試薬容器B2の栓体を開栓する。
【0080】
[ディスペンサの液面撮像:S12]
ディスペンサ把持部21でディスペンサDを把持した状態で、第2のクランプ部62に設置されている試薬容器B2に検体を分注する前に、第2の撮像部32によりディスペンサDに吸引されている検体の状態が撮像される(
図7(e))。このとき、画像処理部55による判定の結果、液面が適正な範囲内あるか否か(S13)、或いは気泡の有無(S14)が画像診断される。画像診断の結果、何れかの判定条件を満たさない場合には、検体前処理を終了する。なお、このとき、ディスペンサDは拭き取りに供した繊維体424とともに廃棄部90に廃棄されるとともに、検体容器B1は容器選別部100に投入される。
【0081】
[検体の分注:S15]
一方、画像処理部55による画像診断の結果、ディスペンサDで吸引されている検体の液面が適正な範囲内であり、かつ気泡が無いと判定された場合には、アーム部20の昇降動作により、ディスペンサ把持部21で把持されているディスペンサDが開栓された試薬容器B2内に挿入されて検体が吐出される(
図7(f))。
【0082】
[ディスペンサと繊維体の廃棄:S16]
検体が試薬容器B2に吐出されるとアーム部20を廃棄部90の近傍までスライド移動させ、検体前処理に供したディスペンサDが廃棄部90に投入される。このとき、ディスペンサDの先端を拭き取った繊維体424にディスペンサDを押し付ける動作を加えることで、ディスペンサDとともに繊維体424も保持溝423から廃棄部90に落下させることができる(
図7(g))。
【0083】
[試薬容器の栓体の閉栓:S17]
S13の後にアーム部20を第2のクランプ部62までスライド移動させ、容器把持部23で把持している栓体を試薬容器B2に取り付けて逆回転して閉栓する(
図7(h))。
【0084】
[容器のラックへの返却:S18]
S17において閉栓された試薬容器B2は、容器把持部23で把持されたままアーム部20をスライド移動させてラックLの元の位置に返却される。その後、アーム部20を第1のクランプ部61までスライド移動させて、検体容器B1を把持して第1のクランプ部61から取り出し、取り出した検体容器B1はラックLの元の位置に返却される。
【0085】
以上のS1~S18の一連の工程が完了したら、次の検体前処理に供される試薬容器B2、及び検体容器B1が選択されて、再度S1~S18が行われる。そして、一つのラックLに保持されている検体の全ての検体前処理が完了すると、検体容器が保持されているラックLは、第1のラック把持部81により第1の検体容器搬送部111から第2の検体容器搬送部112に移動される。そして、第1の検体容器搬送部111には次に検体前処理に供される検体が投入されている検体容器B1が保持されたラックLが搬送される。
【0086】
また、試薬容器B2についても同じく、一つのラックLに保持されている検体の全ての検体前処理が完了すると、試薬容器B2が保持されているラックLは、第2のラック把持部82により第1の試薬容器搬送部121から第2の試薬容器搬送部122に移動される。そして、第1の試薬容器搬送部121には次に検体前処理に供される検体が分注される試薬が入った試薬容器B2が保持されたラックLが搬送される。
【0087】
以上、本発明に係る検体前処理装置、検体前処理方法、及び制御プログラムは、被験者から採取した検体に基づいて感染症の陽性、及び陰性を判定するための遺伝子検査の前処理を簡易かつ迅速に行うことができるものとなっている。
【符号の説明】
【0088】
1 検体前処理装置
11 検体容器搬送部
111 第1の検体容器搬送部
112 第2の検体容器搬送部
12 試薬容器搬送部
121 第1の試薬容器搬送部
122 第2の試薬容器搬送部
20 アーム部
21 ディスペンサ把持部
22 突起部
23 容器把持部
24 基部
25 爪部
26 移動機構
261 x軸ガイドレール
262 y軸ガイドレール
263 z軸ガイドレール
30 撮像部
31 第1の撮像部
32 第2の撮像部
41 拭取装置
42 回転テーブル
421 第1の回転テーブル
422 第2の回転テーブル
423 保持溝
424 繊維体
425 ギア
43 遮蔽装置
44 遮蔽板
50 制御部
51 容器搬送制御部
52 移動機構制御部
521 x軸制御部
522 y軸制御部
523 z軸制御部
53 容器制御部
54 ディスペンサ制御部
55 画像処理部
56 拭取装置制御部
57 遮蔽装置制御部
58 ラック制御部
59 記憶部
61 第1のクランプ部
62 第2のクランプ部
70 ディスペンサケース
81 第1のラック把持部
82 第2のラック把持部
90 廃棄部
100 容器選別部
B1 検体容器
B2 試薬容器
D ディスペンサ
L ラック