(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042735
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】抗ウイルス性織物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/256 20060101AFI20230320BHJP
D06M 101/28 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
D06M13/256
D06M101:28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150021
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】518381846
【氏名又は名称】東洋紡せんい株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 修広
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小見山 拓三
(72)【発明者】
【氏名】安川 真一
(72)【発明者】
【氏名】溝部 穣
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA05
4L033AB05
4L033AC10
4L033BA28
(57)【要約】
【課題】簡便に製造することができ、かつ初期だけでなく洗濯後でも良好な抗ウイルス性能を有する抗ウイルス性織物を提供する。
【解決手段】カルボキシル基含有量が0.2~9.5mmol/gであるカルボキシル基含有重合体からなる繊維を10~50重量%含む紡績糸を10重量%以上含む抗ウイルス性織物であって、カルボキシル基含有重合体が塩基性基を有すること、及び織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする。ベンゼンスルホン酸化合物は、アルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキル基の炭素数が10~15であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有量が0.2~9.5mmol/gであるカルボキシル基含有重合体からなる繊維を10~50重量%含む紡績糸を10重量%以上含む織物であって、カルボキシル基含有重合体が塩基性基を有すること、及び織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする抗ウイルス性織物。
【請求項2】
カルボキシル基含有重合体が、1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理および加水分解処理を施した後に酸処理を施して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス性織物。
【請求項3】
ベンゼンスルホン酸化合物がアルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸化合物のアルキル基の炭素数が10~15であることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗ウイルス性織物。
【請求項4】
ベンゼンスルホン酸化合物が、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス性織物:
式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、M
n+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
【請求項5】
ベンゼンスルホン酸化合物が、下記式(II)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の抗ウイルス性織物:
式中、R
1,R
2は、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各M
+は、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
【請求項6】
SEKマーク繊維製品の洗濯方法(2020年10月30日改訂版・文書番号JEC326)に従い、標準洗濯法(JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施した後の織物の抗ウイルス性が3.0以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の抗ウイルス性織物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の抗ウイルス性織物を使用した繊維製品であって、寝具、衣料品、雑貨、内装材、医療用品、又はインテリア用品から選択される繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に製造でき、洗濯後でも優れた抗ウイルス性を発現できる織物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染は、ウイルス感染者から放出されたウイルスを含む飛沫(くしゃみ等)に直接接触する場合のみならず、ウイルス感染者が触れた衣服やタオルなどに接触(間接接触)することによっても生じる。例えばウイルス感染を防止する手段として、一般的にマスクが使用されているが、使用時間が長くなると、マスクのフィルター部にウイルスが濃縮された状態となるため、マスクの脱着時にマスク本体に触れるとウイルスが手に付着し、その手でタオルや衣服に触れることによって、ウイルスがタオルや衣服に付着する。そして、第三者が該ウイルス付着箇所に触れると、手にウイルスが付着し、二次感染を引き起こす。
【0003】
こうした問題に鑑み、ウイルスを撲滅するあるいはウイルスの増殖を抑制する技術が各種提案されている。例えば、銀を利用するもの(特許文献1、2参照)、4級アンモニウムを利用するもの(特許文献3、4参照)、金属ピリチオンを利用するもの(特許文献5、6参照)、カルボキシル基を有する重合体を使用するもの(特許文献7参照)、カルボキシル基を有する重合体とスルホン酸基を有する重合体の複合物を使用するもの(特許文献8参照)などを挙げることができる。
【0004】
しかしながら、銀を使用するものは使用している際に変色する、4級アンモニウムを使用するものは高温での安定性に劣る、金属ピリチオンを使用するものは抗菌性が高いものの抗ウイルス性が不十分である、カルボキシル基を有する重合体を使用するものは製品への加工工程で使用される薬剤により性能が低下することがあるといった問題がある。一方、カルボキシル基を有する重合体とスルホン酸基を有する重合体の複合物を使用するものは前述のような問題は起こりにくいが、重合体の化学変性又は重合体へのグラフト重合によってカルボキシル基及びスルホン酸基を重合体に導入することが必要であり、製造工程が複雑で安定生産やコスト面などに問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/083171号公報
【特許文献2】特開平11-19238号公報
【特許文献3】特開2008-115506号公報
【特許文献4】特開2001-303372号公報
【特許文献5】特開2006-9232号公報
【特許文献6】特開2005-281951号公報
【特許文献7】特開2013-147774号公報
【特許文献8】特開2017-36431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、簡便に製造することができ、かつ初期だけでなく洗濯後でも良好な抗ウイルス性能を有する抗ウイルス性織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、カルボキシル基に加えて塩基性基をさらに含有する重合体からなる繊維を含む紡績糸を含む織物にベンゼンスルホン酸化合物を付着することにより、ベンゼンスルホン酸化合物がカルボキシル基含有重合体中の塩基性基に強力にイオン結合し、洗濯前の初期だけでなく洗濯後でも良好な抗ウイルス性能を有する織物が簡単に得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)~(7)の構成により達成されるものである。
(1)カルボキシル基含有量が0.2~9.5mmol/gであるカルボキシル基含有重合体からなる繊維を10~50重量%含む紡績糸を10重量%以上含む織物であって、カルボキシル基含有重合体が塩基性基を有すること、及び織物にベンゼンスルホン酸化合物が付着していることを特徴とする抗ウイルス性織物。
(2)カルボキシル基含有重合体が、1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理および加水分解処理を施した後に酸処理を施して得られるものであることを特徴とする(1)に記載の抗ウイルス性織物。
(3)ベンゼンスルホン酸化合物がアルキルベンゼンスルホン酸化合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸化合物のアルキル基の炭素数が10~15であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の抗ウイルス性織物。
(4)ベンゼンスルホン酸化合物が、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の抗ウイルス性織物:
式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、M
n+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
(5)ベンゼンスルホン酸化合物が、下記式(II)で示される構造を持つ化合物であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の抗ウイルス性織物:
式中、R
1,R
2は、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各M
+は、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
(6)SEKマーク繊維製品の洗濯方法(2020年10月30日改訂版・文書番号JEC326)に従い、標準洗濯法(JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施した後の織物の抗ウイルス性が3.0以上であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の抗ウイルス性織物。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の抗ウイルス性織物を使用した繊維製品であって、寝具、衣料品、雑貨、内装材、医療用品、又はインテリア用品から選択される繊維製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗ウイルス性織物は、カルボキシル基含有重合体からなる繊維を含む抗ウイルス性紡績糸を含む織物に抗ウイルス性のベンゼンスルホン酸化合物を付着しているだけのため、重合体の化学変性又は重合体へのグラフト重合によってカルボキシル基及びスルホン酸基を導入する従来の方法と異なり、カルボキシル基とスルホン酸基の両方を有する抗ウイルス性織物を簡便な方法で製造することができる。特に、本発明の抗ウイルス性織物は、織物を構成するカルボキシル基含有重合体中の塩基性基とベンゼンスルホン酸化合物が強固にイオン結合しているため、洗濯等の外部からの作用を受けても、ベンゼンスルホン酸化合物が織物から脱落しにくく、高いレベルの抗ウイルス性を維持することができる。従って、本発明の抗ウイルス性織物は、衣料品、寝具、インテリア用品、内装材、医療用品をはじめ、様々な用途、分野の製品に使用して、高いレベルの抗ウイルス性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例で使用したブロードクロスと2/1ツイルの組織図である。なお、図中、灰色の升は経糸を表わし、白色の升は緯糸を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の抗ウイルス性織物は、カルボキシル基含有重合体からなる繊維を含む紡績糸からなる織物にベンゼンスルホン酸化合物を付着させてなるものである。
【0012】
カルボキシル基含有重合体としては、特に限定しないが、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを構成成分として含有する重合体、これらのモノマーをグラフト重合により組み入れた重合体、又はこれらの架橋体等を使用することができる。また、エステル基やシアノ基を含む重合体を加水分解したものも使用することができる。
【0013】
カルボキシル基含有重合体中のカルボキシル基含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定すると0.2~9.5mmol/gであり、好ましくは0.5~9.0mmol/g、より好ましくは0.7~8.0mmol/gである。カルボキシル基含有量が上記範囲未満では、十分な抗ウイルス性が得られず、上記範囲を超えると、製造が困難になりうる。
【0014】
また、カルボキシル基含有重合体は、後述する方法によって測定されるカルボキシル基の中和度が好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは25%以下である。ここで、中和度が高いということは、対イオンが水素イオン以外のカチオンである塩型カルボキシル基が多く、抗ウイルス性能を発現する要素である酸型(H型)カルボキシル基が少ないことを意味する。従って、中和度が上記範囲を超えると抗ウイルス性能が低下しやすい。なお、抗ウイルス性能の点からは、中和度は低い方が良いが、吸湿性の点からは、中和度は高い方が良いので、抗ウイルス性と吸湿性を兼ね備えたい場合は、中和度を上述の範囲内で高めにすることもできる。中和度は、酸処理又はアルカリ処理により調節することができる。酸処理を施せば、酸型カルボキシル基の量が増加し、中和度は低下する。一方、アルカリ処理を施せば、塩型カルボキシル基の量が増加し、中和度は増大する。
【0015】
本発明では、カルボキシル基含有重合体は、塩基性基をさらに有することを特徴とする。塩基性基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3基アミノ基などを例示することができる。かかる塩基性基は、後述するベンゼンスルホン酸化合物とイオン結合できるため、カルボキシル基含有重合体を含む紡績糸からなる本発明の織物からベンゼンスルホン酸化合物が脱落することを抑制し、洗濯等の外部からの作用を受けた際にも高い抗ウイルス性を維持しやすくなる効果を有する。塩基性基は、実質的には後述のように窒素含有化合物による架橋処理により導入される。従って、カルボキシル基含有重合体中の塩基性基の含有量は、一般的に架橋処理前後での窒素含有量の増加で表現される。窒素含有量の増加としては一般的に1~10重量%である。なお、窒素含有量の増加は、原料アクリル繊維と架橋処理後の繊維のそれぞれについて元素分析で窒素含有量(重量%)を求め、その差から算出することができる。
【0016】
かかる塩基性基をさらに有するカルボキシル基含有重合体としては、カルボキシル基含有重合体に1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物(以下、略して「窒素含有化合物」ともいう)による架橋処理および加水分解処理を施した後に酸処理を施して得られるものを例示することができる。かかる例においては、架橋処理に使用する窒素含有化合物が塩基性基を生成する。所望により、架橋処理後、加水分解処理の前に、架橋処理に使用した窒素含有化合物の未反応分の除去や繊維の色安定性向上(赤みを抑える)のために酸処理を行なってもよい。なお、カルボキシル基含有重合体中のカルボキシル基の含有量、その中和度、及び塩基性基の含有量は、これらの処理の条件を適宜調整することにより、制御することができる。これらの制御方法は、従来公知であり、例えば、特開平8-246342号公報、特開平8-325938、特開平11-081130号公報、特開2000-265365号公報、特開2017-36431号公報などを参照することができる。具体的には、カルボキシル基の含有量について、加水分解処理の条件は特に限定されないが、1~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%の水溶液中、温度50~120℃で1~10時間以内で処理する手段が工業的、繊維物性的に好ましい。中和度(酸処理)について、酸処理の手段としては、加水分解を施された繊維を1~15重量%の酸性水溶液中に常温で0.5時間以上浸漬して水洗することが好ましい。酸性水溶液としては、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等が好適に用いられる。塩基性基の含有量(窒素含有量の増加)について、窒素含有化合物の濃度5~60重量%の水溶液中、温度50~120℃で5時間以内で処理する手段が工業的に好ましい。
【0017】
窒素含有化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン系化合物やエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等のアミノ基を複数有する化合物等を例示することができる。
【0018】
架橋処理の方法としては、窒素含有化合物の水溶液に浸漬し加熱する方法が挙げられる。加水分解処理としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは、硝酸、硫酸、塩酸等の水溶液に浸漬し加熱する方法が挙げられる。酸処理の方法としては、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の酸性水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基含有重合体は、構成成分としてアクリロニトリルを好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有する共重合体であることができ、アクリロニトリル単独重合体であってもよい。また、カルボキシル基含有重合体がアクリル繊維である場合には、多量のカルボキシル基を導入しても繊維物性や形態安定性が優れた繊維状のカルボキシル基含有重合体にできるため、一般的な繊維の加工を適用することができる。
【0020】
カルボキシル基含有重合体の形状としては、繊維状が好ましい。カルボキシル基含有重合体からなる繊維の具体例としては、いわゆるアクリレート繊維(東洋紡社製「エクス(登録商標)」・「モイスケア(登録商標)」、帝人フロンティア社製「サンバーナー(登録商標)」や、特開平05-132858号公報、特開2000-314082号公報に開示されている吸湿性繊維など)を挙げることができる。
【0021】
本発明の織物では、このカルボキシル基含有重合体からなる繊維(以下、単に「カルボキシル基含有重合体繊維」と称する)を他の繊維と混用して紡績糸として用いることが好ましい。混用される他の繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル繊維、アクリレート繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリフェニンレンサルファイド等の合成繊維、羊毛、絹のような天然繊維などの一般的な繊維のいずれも用いることができるが、衣料品や寝装品等の人間の肌に近い製品に使用する場合、吸水性や吸湿性に優れる綿などのセルロース繊維を混用すると着用快適性が向上して好適である。なお、セルロース繊維の混率が高いと抗ウイルス性の洗濯耐久性が向上する傾向がある。セルロース繊維の種類としては、綿、麻、竹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルのような再生繊維、アセテートのような半剛性繊維であってもよいが、風合や耐久性の点から綿繊維がより好ましい。また、混用する好適な繊維として、ポリエステル繊維も挙げられる。ポリエステル系繊維は、その強度や耐久性の点から必要な特性を補完できる点から好ましく用いられる。ポリエステル系繊維としては、例えばエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。これ以外にもポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレートなども使用することができる。これらを複数組み合わせても良い。また、これらのポリエステルに5-ナトリウムスルホイソフタル酸のようなカチオン染料の染着性付与成分を共重合してもよく、前記ポリエステルを混合して練り込んでもよい。
【0022】
本発明の抗ウイルス性織物に使用する紡績糸中のカルボキシル基含有重合体繊維の含有量は10~50重量%、好ましくは15~40重量%である。カルボキシル基含有重合体繊維の含有量が上記範囲未満であると、抗ウイルス性が不十分となりやすく、上記範囲を超えると、紡績性が低下したり、紡績糸の均一性が低下しやすくなり、用途によっては、消費に堪えない糸物性になりやすくなる。
【0023】
カルボキシル基含有重合体繊維の繊度は、好ましくは0.3~5.0dtex、より好ましくは0.5~3.0dtex、さらに好ましくは0.8~2.5dtexである。繊度が上記範囲未満では、均一な繊維を得ることが難しく、上記範囲を超えると、糸を構成する繊維本数が少なくなり、糸強力が低下するため、製織中にエアで吹き切れるなどして製織できないおそれがある。また、カルボキシル基含有重合体繊維の繊維長は、好ましくは25~55mm、より好ましくは30~51mmである。繊維長が上記範囲未満では、紡績品位が悪くなり、上記範囲を超えると、通常の紡績設備では紡績することができず、ローラー間のゲージ変更やパーツ変更などの紡績設備の改造が必要となる場合がある。
【0024】
本発明の抗ウイルス性織物に使用する紡績糸は、例えば、次のようにして製造されることができる。具体的には、上記のカルボキシル基含有重合体繊維を含む紡績糸を製造する場合、まずカルボキシル基含有重合体繊維及びその他の繊維からなる原綿の繊維塊を開き、原綿から大きい雑物を落とす混打綿工程、繊維を一本、一本に分離し、その中に含まれている雑物や短い繊維を取り除き、残った長い繊維をできるだけ平行に揃えて集束し、紐状(カードスライバー)にする梳綿工程、さらに短い繊維を徹底的に取り除き、残った長い繊維を集束し、紐状(コーマスライバー)にする精梳綿工程、コーマスライバーを引き伸ばしながら繊維を真っ直ぐに伸ばし、長さ方向の太さむらを無くし、紐状(練条スライバー)にする練条工程を施し、得られた練条スライバーに撚りをかけながら繊維相互の滑脱を防ぎ、ボビンに捲き取る粗紡工程を通過させて粗糸を形成する。セルロース繊維以外に他の繊維を併用する場合には、混打綿工程や練条工程などにおいて加えることが望ましい。得られた粗糸を精紡機にて精紡することで最終的に紡績糸(コーマ糸)が生産される。ここで、カルボキシル基含有重合体繊維とその他の繊維を混ぜ合わせる工程は、混打綿~精紡のどの工程でもよいが、均一に混合するためには混打綿工程で混ぜ合わせるのが好ましい。
【0025】
本発明の抗ウイルス性織物では、ベンゼンスルホン酸化合物が織物に付着されていることを特徴とする。ベンゼンスルホン酸化合物は、スルホン酸系であることによって強いアニオン性を有するため、塩基性基を有するカルボキシル基含有重合体中の塩基性基とイオン結合し、従って消費段階の洗濯等の処理によっても脱落しにくく、繊維上に多く残留することができるため、抗ウイルス性の洗濯耐久性が維持されやすい。
【0026】
ベンゼンスルホン酸化合物は、ベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる。ベンゼンスルホン酸化合物は、アルキルベンゼンスルホン酸及びそれらの塩からなる群から選ばれるアルキルベンゼンスルホン酸化合物であることが好ましい。また、アルキルベンゼンスルホン酸化合物は、アルキル基の炭素数が10~15であることが好ましく、12~14であることがより好ましい。アルキル基は親油性が高いため、ウイルスのエンベローブ脂質膜との親和性が高く、ウイルスと接触した際にエンベロープ脂質膜の構造を不安定化させ、抗ウイルス性に寄与することができる。
【0027】
ベンゼンスルホン酸化合物の好ましい例としては、下記一般式(I)で示される構造を持つ化合物が挙げられる:
式中、Rは炭素数10~15のアルキル基を表し、M
n+はn価カチオンを表し、nは1又は2である。
【0028】
一般式(I)中、Rのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってよいが、生分解性を良好とするためには直鎖が好ましい。より好ましいアルキル基の炭素数は12~14である。また、Mは、n価カチオンであり、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択される。
【0029】
一般式(I)の構造を持つ化合物としては、直鎖型のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)や、分岐型のアルキルベンゼンスルホン酸とその塩(ABS)が挙げられる。代表的な市販品としては、例えば、テイカ製 テイカパワーシリーズ、ライオンスペシャルティケミカルズのライポンシリーズがある。具体的には、テイカワパワーB120、B121、ライポンLW-250、LH-900等がある。
【0030】
ベンゼンスルホン酸化合物のさらに好ましい例としては、下記一般式(II)に示される構造を持つ化合物、特にアルキルジフェニルオキシドスルホナートが挙げられる:
式中、R
1,R
2は、各々独立して炭素数10~15の直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基から選択され、各mは、独立して0又は1であり、各M
+は、独立して水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又は置換アンモニウムから選択され、式(II)の化合物が少なくとも1個のスルホナート基を含むことを条件として各wは、独立して0又は1である。
【0031】
一般式(II)の構造を持つ化合物の製造方法は、従来から良く知られており、例えば米国特許第3,264,242号、第3,634,272号、第3,945,437号、第2,990,375号、第5,015,367号に開示されている。代表的な市販品としては、概してモノアルキル、モノスルホナート、ジアルキル又はジスルホナートである。ただし、単体に単離されたものは少なく、これらの混合物が販売されている。本発明では、モノアルキル化の百分率割合が75~95%であるものを便宜上モノアルキルジフェニルオキシドスルホナートとして扱う。市販品としては、例えば、ナトリウム(直鎖デシル)ジフェニルオキシドスルホナート(ダウケミカル製DOWFAX(商標)Ag);ナトリウム(直鎖デシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)Ag-D);ナトリウム(直鎖ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(実験用界面活性剤XUS8174.00);ナトリウム(ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)2A1);ナトリウム(分枝ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)2A1-D)、ナトリウム(線状ヘキサデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(DOWFAX(商標)Detergent)、ナトリウム(線状ヘキサデシル)ジフェニルオキシドスルホナート(ダウケミカル製 DOWFAX(商標)Detergent-D)などが例示されるが、これらの中でも洗濯後の残留性が高いものがよく、(直鎖ドデシル)ジフェニルオキシドスルホナート、別名ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS/CAS.28519-02-0)が特に好ましく用いられる。
【0032】
さらに、本発明の抗ウイルス性織物では、硫黄元素の含有量が好ましくは0.02~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%である。硫黄元素は、抗ウイルス性織物に付着したベンゼンスルホン酸化合物に由来するので、硫黄元素の含有量は、本発明の抗ウイルス性織物中のベンゼンスルホン酸化合物の含有量の指標となるものである。硫黄元素の含有量が上記範囲未満の場合には、ベンゼンスルホン酸化合物の含有量が少ないために十分な抗ウイルス性能が得られ難くなり、上記範囲を超える場合には、べたつきや粉末が発生しやすい。
【0033】
本発明の抗ウイルス性織物は、カルボキシル基による抗ウイルス性とベンゼンスルホン酸化合物による抗ウイルス性という相互に異なるタイプの抗ウイルス性が相互作用することにより、個々の要素による抗ウイルス性を大きく上回ってウイルスを効率的に不活性化することができる。つまり、カルボキシル基は、ウイルスのエンベローブから突出しているスパイク蛋白を失活させる。一方、ベンゼンスルホン酸化合物は、ウイルスのエンベローブ脂質膜の構造を不安定化させることで、ウイルスの構造に対して強力に不可逆的変化を引き起こすことができる。
【0034】
本発明の抗ウイルス性織物は、上述のカルボキシル基含有重合体繊維を5重量%以上含有するように設計することが好ましい。そのため、紡績糸中のカルボキシル基含有重合体繊維の混率にもよるが、カルボキシル基含有重合体繊維を含む紡績糸を織物中に10重量%以上含む。好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含む。上記下限未満の含有量では、抗ウイルス性を十分に発揮できないおそれがある。
【0035】
本発明の抗ウイルス性織物に使用する紡績糸の繊維長(化学繊維はカット長、天然繊維は有効繊維長)は、紡績糸の毛羽数や毛羽絡み度合、風合、糸質面から28~51mmとするのが好ましい。より好ましくは33~42mmである。繊維長が上記下限に満たない場合には、紡績品位が悪くなり、上記上限を超える場合には、通常の紡績設備では紡績することができず、ローラー間のゲージ変更やパーツ変更などの紡績設備の改造が必要となるおそれがある。カルボキシル基含有重合体繊維以外の繊維として木綿を用いる場合、比較的繊維長の長い綿を含めるのが好ましい。このような原綿としては、例えば、有効繊維長が32~41mmのスーピマ綿やGIZA45、スビン綿、新彊綿、海島綿等の超長綿を含むことが好ましい。紡績糸の総繊度は、英式綿番手30~100番手(50~147dtex)であることが好ましく、より好ましくは40~80番手である。総繊度が上記範囲未満では、布地が厚くなりすぎることと、織物表面の凹凸が大きくなることで抗ピリング性や手アイロン性が低下しやすくなる。上記範囲を超えると、織物にしたときに透け感が強くなりやすい。また、この総繊度の範囲であれば、単糸であっても、双糸や三糸であってもよい。
【0036】
紡績糸の紡績方法としては、例えば、リング紡績、オープンエンド紡績、結束紡績(例えば、ムラタボルテックススピナー)等の各種方法が挙げられる。中でも、リング紡績は、紡績糸の表面毛羽を後述する適正な数に調整しやすく、風合いも良いことから好ましい。より好ましくはコーマ糸である。また、紡績糸を前述した各種方法で精紡する前に、一般的な方法により、混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡等の各種処理を施すことができる。
【0037】
紡績糸の撚係数は、3.5~5.5であることが好ましく、より好ましくは3.8~5.0である。撚係数が上記範囲にあると、糸の収束性が高まり、毛羽が抑えられるとともに高ウイルス性の洗濯耐久性が安定しやすくなる。撚係数が上記範囲未満であると、毛羽が多くなって抗ピリング性が低下しやすくなる。
撚係数Kは、JIS-L1095-9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、この撚り数から下記式に基づいて算出される。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式綿番手である。
【0038】
紡績糸のJIS-L1015-8.7に基づいて測定される引張強度は、2.0cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは2.5cN/dtex以上であり、更に好ましくは2.7cN/dtex以上である。引張強度がこの範囲未満であると、得られた織物の摩耗強度が低下して実用的な耐久性が得られにくくなる。好ましい上限は4.0cN/dtex以下であり、より好ましくは3.8cN/dtex以下である。引張強度がこの範囲を越えると、ピリングが起こりやすくなる。
【0039】
紡績糸の表面に存在する長さ3mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、0~300個であることが好ましい。より好ましくは150個以下である。更に好ましくは60個以下である。毛羽が少なく、品質がよい糸ほど抗ウイルス性の洗濯耐久性が安定しやすい。毛羽数が上記上限を超えると、洗濯や消費段階の擦れなどで、カルボキシル基含有カルボキシル基含有重合体繊維が脱落しやすく、洗濯耐久性が低下する場合がある。なお、紡績糸の毛羽数は、シキボウ株式会社製のF-インデックステスターを用いて測定することができる。
【0040】
本発明の抗ウイルス性織物の組織は、平、綾、朱子、およびその変化組織などの従来公知のものを採用することができる。織物一完全組織の経糸及び/又は緯糸の浮き数の最大値は1本以上5本以下、より好ましくは3本以下とすることが、ピリング、スナッグ等の消費性能を考慮すると好ましい。浮き数の最大値が上記範囲を超過するとスナッグピルが生じやすくなり好ましくない。具体的には、2/2綾、2/1綾、3/1綾、平織やその変形組織等が例示される。
【0041】
織機としては、エアージェットルーム、ウォータージェットルーム、レピアルーム等を挙げることができるが、緯密度を高めやすいことや生産性の点からエアージェットルームが好ましい。本発明の抗ウイルス性織物の製造方法は、一般的な紡績糸織物の製造工程を採用すればよく、例えば経糸は、整経、糊付けを行った後、織機ビームに巻き取る。これに経通しを行って織機にセットし、緯糸を打ち込んで製織する。
【0042】
次に、本発明の抗ウイルス性織物の染色加工方法について説明する。一般的な織物の加工は、少なくとも片側表面の毛焼き、糊抜き、精練、染色、仕上げを行う染色加工の工程を有する。ここで先染め糸を使った柄物の一態様として、製織する前の糸に精練、染色の先染めを行う場合もある。本発明では、製造過程の各工程においては、従来のポリエステルを混用した織物シャツの一般的な条件で加工すればよいが、本発明の課題に関わる工程について以下説明する。
【0043】
本発明の抗ウイルス性織物の製造方法としては、上述した染色加工の任意の工程で、カルボキシル基含有重合体繊維を含む紡績糸を含む織物をベンゼンスルホン酸化合物の水溶液に含浸して、ベンゼンスルホン酸化合物を織物に固着させる方法が挙げられる。なお、水溶液中のベンゼンスルホン酸化合物の含有量は、所望量を付与できるように適宜設定すればよいが、通常、カルボキシル基含有重合体の重量に対して0.05~20重量%のベンゼンスルホン酸化合物を含有するようにする。好ましくは、0.2~10重量%とするのが良い。織物上のベンゼンスルホン酸化合物の実際の付着量は、織物からエタノールを溶媒としてベンゼンスルホン酸化合物を抽出して、LC-MS等で抽出液を定量することによって測定することができる。本発明の抗ウイルス性織物の繊維重量に対するベンゼンスルホン酸化合物の付着量は、通常、0.1~10.0%owfであり、好ましくは0.2~6.0%owfである。また、含浸方法としては、浸漬、吸尽、噴霧、塗布、印捺などを挙げることができる。なお、吸尽の場合は、液温は常温から130℃の温度域で加工できるが、好ましくは50~70℃程度に加熱するのがよい。
【0044】
また、本発明では、染色加工上りの織物の抽出液のpHは、4~6の範囲の弱酸性に調整されることが好ましい。これは、塩基性基を有するカルボキシル基含有重合体は、酸型カルボキシル基の量(中和度)を調整することで抗ウイルス性が高まるためである。織物を弱酸性にする方法として、例えば、蟻酸、シュウ酸、りんご酸、リン酸、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の無機又は有機酸を適宜濃度を調整した水溶液として、織物を浸漬すればよい。また、この処理は前述のベンゼンスルホン酸化合物の付着処理と同時に行ってもかまわない。
【0045】
本発明の抗ウイルス性織物の密度は、染色加工後の仕上がった状態で2.54cmあたりの経密度と緯密度を加算した合計密度を150~350本、さらには180~300本にすることが好ましい。このような高い合計密度にすることで、抗ウイルス性の洗濯耐久性が高い織物を安定的に得ることができる。合計密度が上記範囲未満であると、洗濯中での糸と糸の間の洗濯液の液通りが多くなったり、毛羽立ちやすくなるためか、洗濯耐久性が若干低下する傾向にある。合計密度が上記範囲を越えると、風合いが硬くなったり、通気性が低下しやすくなり、着用快適性が低下しやすくなったり、織物の生産性が低下しやすくなる。
【0046】
本発明の抗ウイルス性織物は、カルボキシル基含有重合体繊維中のカルボキシル基及びベンゼンスルホン酸化合物によってそれぞれ異なるタイプの抗ウイルス性が発揮されるため、それらの相乗効果により抗ウイルス性が極めて高く、しかもカルボキシル基含有重合体中の塩基性基とベンゼンスルホン酸化合物が強固にイオン結合しているため、洗濯等の外部からの作用を受けても、ベンゼンスルホン酸化合物が織物から脱落しにくく、高いレベルの抗ウイルス性を維持することができる。
【0047】
かかる本発明の抗ウイルス性織物の除去対象となるウイルスは、特に限定されないが、エンベロープを有するウイルスに効果的であり、特にインフルエンザウイルスに対して優れた不活性化効果を示す。
【0048】
本発明の抗ウイルス性織物は、洗濯を必要とする用途で抗ウイルス性の効果を強く発揮する。例えば、寝具、衣料品、雑貨、内装材、医療用品、インテリア用品の用途が挙げられる。より具体的には、例えば、シーツ、枕カバー、布団地、布団綿、布団カバー或いは毛布等の寝具、カーテン、カーペット、間仕切り、テーブルクロス等の各種インテリア用品、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、スーツ、トレーナー、ブラウス、ナイトウエアー、肌着、セーター、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、手袋、帽子、スカーフ、ネクタイ、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服、消防服或いは白衣等の衣料品、鞠、財布、バッグ、ハンカチ、ティッシュカバー、タオル、鍋つかみ、雑巾或いは手拭等の雑貨などが挙げられる。
【実施例0049】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をより具体的に示すが、本発明は、これらによって制限されるものではない。なお、実施例中、部及び百分率は、特に断りのない限り重量基準で示す。また、実施例・比較例で用いた特性の評価方法は、以下の通りである。
【0050】
<抗ウイルス性試験>
JIS-L1922:2016.繊維製品の抗ウイルス性試験方法に従って評価した。試験対象ウイルスはインフルエンザウイルス(H3N2、H1N1)とし、宿主細胞はMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)とした。
試料(0.4g)をバイアル瓶に入れ、ウイルス液0.2mlを接種し、25℃で2時間放置する(作用)。2.SCDLP培地20mlを加え、試料からウイルスを洗い出し、洗い出した液のウイルス感染価(感染性ウイルス量)を、プラーク法又はTCID50法により測定する。
下記式の抗ウイルス活性値が3.0以上であれば十分な抗ウイルス性の効果ありと判断する。
抗ウイルス活性値=log(対照試料・2時間作用後感染価)-log(加工試料・2時間作用後感染価)または
抗ウイルス活性値=log(標準布・接種直後感染価)-log(加工試料・2時間作用後感染価)
【0051】
<洗濯方法>
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施した。
・標準洗濯法(1995年度版JIS-L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯10回行った評価試料を作成した。
【0052】
<カルボキシル基含有量>
試料を約1g秤量し、1mol/l塩酸50mlに30分浸漬後、水洗し、浴比1:500で純水に15分間浸漬した。浴pHが4以上となるまで水洗した後、熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥させた。乾燥した試料を約0.2g精秤し(W1[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌した。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗した。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い、消費された塩酸量(V1[ml])を求め、下記式により全カルボキシル基含有量を算出した。
全カルボキシル基含有量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V1)/W1
<中和度>
熱風乾燥機にて105℃で5時間乾燥した試料を約0.2g精秤し(W2[g])、これに100mlの水と0.1mol/l水酸化ナトリウム15ml、塩化ナトリウム0.4gを加えて攪拌した。次いで金網を用いて試料を漉しとり、水洗した。得られたろ液(水洗液も含む)にフェノールフタレイン液を2~3滴を加え、0.1mol/l塩酸で常法に従って滴定を行い、消費された塩酸量(V2[ml])を求めた。下記式によって、試料に含まれる酸型カルボキシル基含有量を算出し、その結果と上述の全カルボキシル基含有量から中和度を求めた。
酸型カルボキシル基含有量[mmol/g]=(0.1×15-0.1×V2)/W2
中和度[%]=[(全カルボキシル基含有量-酸型カルボキシル基含有量)/全カルボキシル基含有量]×100
【0053】
<塩基性基の含有量(窒素含有量の増加)>
原料であるアクリロニトリル繊維と架橋処理後の繊維のそれぞれについて元素分析で窒素含有量(重量%)を求め、その差を窒素含有量の増加とした。
【0054】
<硫黄元素の含有量>
エネルギー分散型X線分析装置(JSM-IT3000)にて測定した。
【0055】
<単繊維繊度>
化学繊維については、JIS-L1015-8.5.1正量繊度A法に基づいて単糸繊度(単繊維繊度)を求めた。天然繊維については、JIS-L1019-7.4.2ソータ法による方法に基づいて単繊維繊度を求めた。
【0056】
<繊維長>
化学繊維の繊維長は、JIS-L1015-8.4.1ステープルダイヤグラム法(A法)に基づいて平均繊維長を求めた。天然繊維の繊維長は、JIS-L1019-7.2.1ダブルソータ法(A法)に基づいて有効繊維長を求めた。
【0057】
<繊維の糸混率>
JIS-L1030-2 5.9.2(正量混用率)に準じて測定した。
【0058】
<英式綿番手>
JIS-L1095:2010 9.4.2の方法に従って見掛けの綿番手(Ne)を測定した。
【0059】
<撚係数>
JIS-L-1095:2010 9.15.1の撚数A法に準拠して撚回数を測定して、下記式に当てはめて撚係数(K)を求めた。
撚係数(K)=インチ当たりの撚回数(T)/(英式綿番手)1/2
【0060】
<紡績糸の毛羽数>
紡績糸の毛羽数は、シキボウ株式会社製のF-インデックステスターを用いて測定した。糸長は10mとし、長さ3mm以上の毛羽の数を測定した。
【0061】
<織物の密度>
JIS-L-1096:2010 8.6の密度に準拠して測定した。
【0062】
<織物の目付>
JIS-L-1096:2010 8.3の単位面積当たりの重量から備考の目付に準拠して測定した。
【0063】
<カルボキシル基含有重合体繊維aの作製>
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるカルボキシル基含有重合体10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥してアクリル繊維を得た。次に、窒素含有化合物として15%ヒドラジン水溶液に該繊維を浸漬し、110℃で3時間架橋処理を行い水洗した。続いて、8%硝酸水溶液に浸漬し、110℃で1時間酸処理を行い水洗した。さらに、5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、90℃で2時間加水分解処理を行い水洗した。その後、10%硝酸水溶液に浸漬し、常温で2時間酸処理を行い水洗し、カルボキシル基含有量が5.8mmol/gであり、中和度が10.0%である、塩基性基を有するカルボキシル基含有重合体繊維aを得た。
【0064】
<カルボキシル基含有重合体繊維bの作製>
カルボキシル基含有重合体繊維aの作製途中の加水分解処理における処理時間を20分に変更したこと以外は同様にして、カルボキシル基含有量が0.8mmol/gであり、中和度が11.0%である、塩基性基を有するカルボキシル基含有重合体繊維bを得た。
【0065】
<カルボキシル基含有重合体繊維cの作製>
カルボキシル基含有重合体繊維aの作製途中の加水分解処理における処理条件を、水酸化ナトリウム10質量%を含有する水溶液中での120℃2時間の浸漬処理に変更したこと以外は同様にして、カルボキシル基含有量が9.0mmol/gであり、中和度が10.5%である、塩基性基を有するカルボキシル基含有重合体繊維cを得た。
【0066】
<カルボキシル基含有重合体繊維dの作製>
アクリロニトリル88%及びメタクリル酸12%からなるカルボキシル基含有重合体10部を44%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸、乾燥して、カルボキシル基含有量が1.4mmol/gであり、中和度が5.0%である、塩基性基を有さないカルボキシル基含有重合体繊維dを得た。
【0067】
(1)紡績糸Aの製造
カルボキシル基含有重合体繊維a(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)と、アメリカ産スーピマ綿(有効繊維長35mm)をそれぞれ32:68の重量割合でOHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけて繊維長の長いものだけを残し、原織機製練条機に2回通して300ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して110ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に、トラベラ回転数9000rpmで約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手45番手の紡績糸A(単糸)(撚係数3.8)を作製した。この紡績糸のカルボキシル基含有重合体繊維aの混率は29重量%であった。この紡績糸の毛羽数は75個/10mであった。
【0068】
(2)紡績糸Bの製造
カルボキシル基含有重合体繊維a(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)と、アメリカ産スーピマ綿(有効繊維長35mm)をそれぞれ22:78の重量割合でOHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して210ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して80ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手で60番手の紡績糸B(撚係数4.2)を作製した。この紡績糸Bのカルボキシル基含有重合体繊維aの混率は20重量%であった。この紡績糸の毛羽数は40個/10mであった。
【0069】
(3)紡績糸Cの製造
カルボキシル基含有重合体繊維a(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)と、単糸繊度1.0dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量1.0重量%、クリンプ数15個/25mm)をそれぞれ22:78の重量割合でOHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、コーマ機にかけて繊維長の長いものだけを残し、原織機製練条機に2回通して300ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して110ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトをかけ、英式綿番手45番手の紡績糸Cを(撚係数3.8)を作製した。この紡績糸Cのカルボキシル基含有重合体繊維aの混率は30重量%であった。この紡績糸の毛羽数は65個/10mであった。
【0070】
(4)紡績糸Dの製造
単糸繊度1.5dtexのポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(カット長38mm,横断面:丸断面、酸化チタン含有量0.5重量%、クリンプ数22個/25mm)と、米国綿(スピーマ、有効繊維長35mm)をそれぞれ重量比で50%ずつ用い、一般的な混打綿、カード、コーマ、練条、粗紡、リング紡績法により精紡して、英式綿番手60番手の紡績糸(撚係数4.0)を得た。この紡績糸における綿及びポリエステル繊維の混率は各50%であった。この紡績糸の毛羽数は65個/10mであった。
【0071】
(5)紡績糸Eの製造
カルボキシル基含有重合体繊維aの代わりにカルボキシル基含有重合体繊維b(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)を使用して、紡績糸Bと同様の製造方法で、英式綿番手60番手の紡績糸E(撚係数4.0)を得た。この紡績糸の毛羽数は50個/10mであった。
【0072】
(6)紡績糸Fの製造
カルボキシル基含有重合体繊維aの代わりにカルボキシル基含有重合体繊維c(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)を使用して、紡績糸Bと同様の製造方法で、英式綿番手60番手の紡績糸F(撚係数4.0)を得た。この紡績糸の毛羽数は50個/10mであった。
【0073】
(7)紡績糸Gの製造
カルボキシル基含有重合体繊維aの代わりにカルボキシル基含有重合体繊維d(単糸繊度2.0dtex、繊維長37mm)を使用して、紡績糸Bと同様の製造方法で、英式綿番手60番手の紡績糸G(撚係数4.0)を得た。この紡績糸の毛羽数は50個/10mであった。
【0074】
(8)紡績糸Hの製造
米国綿(ラップランド綿、有効繊維長27mm)を100%用いて、OHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して、300ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して、粗糸ゲレンが110ゲレン/15ydの粗糸を製造した。次に、精紡機でこの粗糸に約40倍のドラフトを掛けて、英式綿番手45番の紡績糸(撚係数3.2)を得た。この紡績糸の毛羽数は165個/10mであった。
【0075】
[実施例1]
紡績糸Aを一本糊付機(柿木製作所製)にて糊付けして、NAS整経機(スズキワーパー社製)を用いて整経した。同じく紡績糸Aを緯糸にも用いてエアージェットルーム(豊田自動織機社製)にて経糸密度125本/inch、 緯糸密度76本/inchの、
図1の上側の組織図に示されるようなブロードクロス(平織)の織物を製織した。この生機を通常の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行い、引続き精練・漂白処理を行った。その後、液流染色機(日阪製作所製 CUT-NS)にて、反応染料にてサックス(水色)に染色後、洗浄処理を行った。その後、更に下記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
(処方1)
ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)
(CAS.28519-02-0) 3.0%owf
酢酸 0.1%owf
浴比1:15 処理時間60℃,20分
出来上がった生地の密度は経糸密度128本/inch 緯糸密度75本/inchであり、生地抽出pHは5.5であった。この織物を身生地全体に用いて、男性用ドレスシャツを作製した。
【0076】
[実施例2]
紡績糸Bを実施例1と同様に整経・糊付し、また緯糸にも紡績糸Bを用いてエアジェット織機で生機を製造した。なお、この織物の織組織は、
図1の下側の組織図に示されるような2/1ツイル(右上)とし、経糸密度を145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmとした。この生機を通常の綿織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行い、引続き精練・漂白処理を行った。その後、反応染料にて染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは5.3であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0077】
[実施例3]
紡績糸Bを実施例2と同様に整経・糊付し、緯糸には紡績糸Dを用いてエアジェット織機で生機を製造した。なお、この織物の織組織は2/1ツイル(右上がり)とし、経糸密度を145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmとした。この生機を通常の綿織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行い、引続き精練・漂白処理を行った。その後、反応染料にて染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは5.3であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0078】
[実施例4]
経糸、緯糸の紡績糸Aを紡績糸Cに変更する以外は実施例1と全く同様に製造して、ブロードクロスを製織した。この生機を通常のポリエステル織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜・精練処理を行った。連続乾燥後、190℃にて1分間のプレセット処理を行い、液流染色機(日阪製作所製 CUT-NS)にて分散染料にてサックス色に染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度130本/inch 緯糸密度78本/inchであり、生地抽出pHは5.3であった。出来上がった織物を身生地に用いて、男性用ドレスシャツを作製した。
【0079】
[実施例5]
経糸、緯糸の紡績糸Bを紡績糸Eに変更する以外は実施例2と全く同様に製造して、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmの2/1ツイル(右上がり)を製織した。この生機を通常のポリエステル織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜・精練処理を行った。連続乾燥後、190℃にて1分間のプレセット処理を行い、液流染色機(日阪製作所製 CUT-NS)にて分散染料にてサックス色に染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは5.1であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0080】
[実施例6]
経糸、緯糸の紡績糸Bを紡績糸Fに変更する以外は実施例2と全く同様に製造して、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmの2/1ツイル(右上がり)を製織した。この生機を通常のポリエステル織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜・精練処理を行った。連続乾燥後、190℃にて1分間のプレセット処理を行い、液流染色機(日阪製作所製 CUT-NS)にて分散染料にてサックス色に染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは5.1であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0081】
[実施例7]
実施例2の染色後に処方1の代わりに下記処方2にて加工する以外は、実施例2と全く同様に製織、加工を行った。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
(処方2)
ドデシル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸二ナトリウム(DPOS)
(CAS.28519-02-0) 0.3%owf
酢酸 0.1%owf
浴比1:15 処理時間60℃,20分
【0082】
[実施例8]
実施例2の染色後に処方1の代わりに下記処方3にて加工する以外は、実施例2と全く同様に製織、加工を行った。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
(処方3)
直鎖型ドデシルアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)
(C12―14混合物 CAS.69669-44-9) 3.0%owf
酢酸 0.1%owf
浴比1:15 処理時間60℃,20分
【0083】
[実施例9]
実施例2の染色後に処方1の代わりに下記処方4にて加工する以外は、実施例2と全く同様に製織、加工を行った。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
(処方4)
分岐鎖型ドデシルアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)
(C12―14混合物 CAS.69227―09-4) 3.0%owf
酢酸 0.1%owf
浴比1:15 処理時間60℃,20分
【0084】
[比較例1]
経糸、緯糸の紡績糸Bを紡績糸Gに変更する以外は実施例2と全く同様に製造して、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmの2/1ツイル(右上がり)を製織した。この生機を通常のポリエステル織物の連続工程・条件にて毛焼・糊抜・精練処理を行った。連続乾燥後、190℃にて1分間のプレセット処理を行い、液流染色機(日阪製作所製 CUT-NS)にて分散染料にてサックス色に染色後、洗浄処理を行った。その後、更に前記処方1にて、浴中処理を行ったのち、染色機から取り出して脱水し、拡布セットして仕上げた。
出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは5.1であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0085】
[比較例2]
実施例2の染色後に処方1での処理を省略した以外は、実施例2と全く同様に製織、加工を行った。出来上がった生地の密度は経糸密度150本/inch 緯糸密度108本/inchであり、生地抽出pHは7.3であった。出来上がった織物を用いて、寝装品の側地を作製した。
【0086】
[比較例3]
経糸、緯糸の紡績糸Bを紡績糸Fに変更する以外は実施例2と全く同様に製造して、経糸密度145本/2.54cm、緯糸密度を110本/2.54cmの2/1ツイル(右上がり)を得た。また、染色加工においても、染色後に処方1での処理を省略した以外は、実施例2と全く同様に加工を行った。出来上がった生地の密度は経糸密度128本/inch 緯糸密度75本/inchであり、生地抽出pHは7.8であった。出来上がった織物を身生地に用いて、男性用ドレスシャツを作製した。
【0087】
上述の実施例1~9および比較例1~3の各織物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0088】
【0089】
表1からわかるように、実施例1~9の各織物は、初期だけでなく洗濯10回後においても抗ウイルス活性値が3.0以上の良好な抗ウイルス性能を維持しているのに対して、比較例1,2の織物は、洗濯前の初期の抗ウイルス活性値が高いものの、洗濯を繰り返すと抗ウイルス活性値が低下し、比較例3の織物は、洗濯前後ともに低い抗ウイルス活性値しか示さなかった。
本発明の抗ウイルス性織物は、カルボキシル基含有重合体繊維中のカルボキシル基及びベンゼンスルホン酸化合物によってそれぞれ異なるタイプの抗ウイルス性が発揮されるため、それらの相乗効果により抗ウイルス性が極めて高く、しかもカルボキシル基含有重合体中の塩基性基とベンゼンスルホン酸化合物が強固にイオン結合しているため、洗濯等の外部からの作用を受けても、ベンゼンスルホン酸化合物が織物から脱落しにくく、高いレベルの抗ウイルス性を維持することができる。従って、本発明は、洗濯を必要とする抗ウイルス性繊維製品の分野で極めて有用である。