IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-缶 図1
  • 特開-缶 図2
  • 特開-缶 図3
  • 特開-缶 図4
  • 特開-缶 図5
  • 特開-缶 図6
  • 特開-缶 図7
  • 特開-缶 図8
  • 特開-缶 図9
  • 特開-缶 図10
  • 特開-缶 図11
  • 特開-缶 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004275
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/04 20060101AFI20230110BHJP
   B65D 17/34 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B65D8/04 G
B65D17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105872
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞仁田 清澄
【テーマコード(参考)】
3E061
3E093
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB06
3E061AB07
3E061AB08
3E061BA01
3E061BB02
3E061BB14
3E061DA13
3E093AA04
3E093BB02
3E093CC01
3E093DD04
3E093EE20
(57)【要約】
【課題】開缶後における利便性を向上したフルオープンタイプの缶を提供する。
【解決手段】缶1は、プルタブ式により切り離し可能な切り離し蓋20と、底部30の円環状の部分が缶軸下側に突起した円環部31とを備え、円環部31は、内径側に突出する内突出部31を備え、円環部31の内径側かつ内突出部32よりも缶軸上側の空間であり、切り離し蓋20の形状と同等以上の大きさであり、切り離し蓋20を収容可能な収容部35を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶の缶蓋に設けられプルタブ式により切り離し可能な切り離し蓋と、底部の円環状の部分が缶軸下側に突起した円環部とを備える缶であって、
前記円環部は、内径側に突出する内突出部を備え、
前記円環部の内径側かつ前記内突出部よりも缶軸上側の空間であり、前記切り離し蓋の形状と同等以上の大きさであり、前記切り離し蓋を収容可能な収容部を備える
ことを特徴とする缶。
【請求項2】
前記切り離し蓋の外形、又は前記切り離し蓋に外接する外接円の直径Lc、
前記内突出部のうち前記切り離し蓋の外形よりも小さい部分の内径の直径Ld、又は前記内突出部のうち前記切り離し蓋の外形よりも小さい部分に内接する内接円の直径Ld、
前記内突出部の突出量Lo、
前記切り離し蓋の被保持部の厚さtc、
前記収容部の缶軸方向の長さLhとした場合に、
Lc≦Ld+2Lo、かつ、tc≦Lhを満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の缶。
【請求項3】
35.0mm≦Lc≦50.0mm、-1.0mm≦Ld-Lc≦0.1mm、かつ、0.05mm≦Loを満たす
ことを特徴とする請求項2に記載の缶。
【請求項4】
前記収容部の缶軸方向の長さLhは、
1.0mm≦Lh≦5.0mmを満たす
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の缶。
【請求項5】
前記切り離し蓋の被保持部の厚さtcは、前記切り離し蓋のパネルの板厚tpであり、
0.19mm≦tp≦0.25mmを満たす
ことを特徴とする請求項4に記載の缶。
【請求項6】
前記切り離し蓋は、缶蓋のスコア内部の部分であるパネルと、前記パネルに取付けられたタブとを備え、
前記タブの厚さttは、1.5mm≦tt≦2.5mmであり、
前記切り離し蓋の被保持部の厚さtcは、前記パネルの板厚tp及び前記タブの厚さttを含む
ことを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載の缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオープンタイプの缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、缶蓋からパネルを切り離すことにより、缶の上部を開口するフルオープンタイプの缶があった(例えば特許文献1)。
しかし、切り離したパネルは、缶の内容物の消費時等(例えば、飲料の飲用時等)に邪魔になる場合等があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-132252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、利便性を向上したフルオープンタイプの缶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の一形態は、缶の缶蓋に設けられプルタブ式により切り離し可能な切り離し蓋と、底部の円環状の部分が缶軸下側に突起した円環部とを備える缶であって、前記円環部は、内径側に突出する内突出部を備え、前記円環部の内径側かつ前記内突出部よりも缶軸上側の空間であり、前記切り離し蓋の形状と同等以上の大きさであり、前記切り離し蓋を収容可能な収容部を備えることを特徴とする缶の構成とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、利便性を向上したフルオープンタイプの缶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の缶を示す図である。
図2】第1実施形態の切り離し蓋を収容部に収容する態様を説明する図である。
図3】第1実施形態の内突出部近傍の縦断面図の拡大図である。
図4】第1実施形態の突起部を形成する工程を説明する図であり、底部近傍の縦断面図である。
図5】第2実施形態の切り離し蓋を示す図、切り離し蓋を収容部に収容した状態を説明する図である。
図6】第2実施形態の切り離し蓋を示す図、切り離し蓋を収容部に収容した状態を説明する図である。
図7】第3実施形態の缶の底部近傍の構成を説明する図である。
図8】第3実施形態の底部近傍の縦断面図であり、内突出部の加工方法を説明する図である。
図9】第4実施形態の缶の缶蓋近傍の構成を説明する縦断面図である。
図10】第4実施形態の切り離し蓋を収納した状態の内突出部近傍の縦断面の拡大図である。
図11】第5実施形態の切り離し蓋を示す図(図2(B)に対応する図)、切り離し蓋を収容部に収容した状態を説明する図(図2(D)に対応する図)である。
図12】第5実施形態の切り離し蓋を収容した状態の内突出部近傍の断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の缶1を示す図である。
図1(A)は、缶1を上側から見た図である。
図1(B)は、缶1を正面(缶軸Cに直交する方向)から見た図である。
図1(C)、図1(D)は、缶1の缶軸Cを通る縦断面図(図1(A)のC-C断面図)である。
図1(C)は、缶蓋10近傍の縦断面図である。
図1(D)は、底部30近傍の縦断面図である。
実施形態では、適宜、缶1の中心軸を缶軸Cともいい、缶軸Cに平行な方向を缶軸方向ともいい、缶軸方向の缶蓋10側を上側(缶軸上側)、缶軸方向の底部30側を下側(缶軸下側)ともいう。缶軸Cを通る切断面の断面を、縦断面ともいう。
また、缶軸Cに直交する平面において、つまり、缶軸方向(上側又は下側)から見た状態において、缶軸Cを中心とする円(又は円筒)から缶軸Cに向かう方向を内径側、缶軸Cから離れる方向を外径側ともいう。
【0009】
[缶1の構成]
缶1は、公知の金属材料(例えば、スチール、ぶりき、アルミニウム、アルミニウム合金等)により形成される。
図示は省略するが、缶1の外面には、例えは、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等による印刷層が設けられ、また、缶1の裏面には、塗装等によって塗膜が設けられている。このような皮膜は、ポリエステルフィルム等のフィルムを表面に熱圧着することにより形成してもよい。また、印刷層は、このようなフィルムを缶1に熱圧着後に、このフィルム上に設けてもよい。
【0010】
缶1は、胴部2(円筒部)、肩部3(上縮径部)、口部4(小径部)、チャイム部5(下縮径部)、缶蓋10、底部30を備える。
胴部2は、円筒状の部分である。胴部2の外径は、例えば、φ53mm,φ66mm等である。
肩部3は、胴部2の上側に連接され、上側(口部4側)に向かうにつれ漸次縮径された部分である。つまり、肩部3は、胴部2側から口部4側に至るに従って、径が小さくなる。
口部4は、肩部3の上端側に連設されている。詳細な説明は省略するが、缶蓋10が缶1に取り付けられる前の状態において、口部4は、缶1の上部開口を形成する。口部4の内径は、胴部2の径よりも小さく、例えば、25~60mm等である。
チャイム部5は、胴部2及び底部30間を接続する部分である。チャイム部5は、下側に至るに従って内径側に至るように傾斜している。
【0011】
缶蓋10は、缶1の天部を形成する。缶蓋10は、口部4の開口に蓋をする部材である。缶蓋10は、口部4の開口縁部を巻き締められることにより、缶1の口部4に固定される。
缶蓋10は、切り離し蓋20を備える。
【0012】
切り離し蓋20は、プルタブ式によって缶蓋10から切り離し可能な部分であり、いわゆるフルオープンエンド、フルオープンタイプ等と称されるタイプの蓋である。切り離し蓋20の外形(缶軸方向から見た形状)は、円形である。切り離し蓋20の大きさは、缶蓋10の大部分を占める。
開缶後において、缶1の開口は、十分に大きい。このため、消費者等は、内容物の視認、香りを確認しやすく、また、飲料缶である場合には飲みやすい。
【0013】
切り離し蓋20は、パネル21、タブ25を備える。
パネル21は、缶蓋10の板材のうちスコア11よりも内径側の部分である。パネル21の一部は、タブ25を取りつけるために、絞り加工により凸部22が形成されている。
タブ25は、消費者等が切り離し蓋20を缶蓋10から切り離す際に、取手として利用する部分である。タブ25は、凸部22がカシメ加工されることにより、パネル21に取り付けられる。タブ25は、凸部22の中心軸回りに回転可能である。
【0014】
底部30は、円環部31、収容部35、湾曲部39を備える。
円環部31は、チャイム部5に連続した部分であり、缶軸方向から見た形状が円環状である。円環部31は、下側に向けて盛り上がるように突出している。円環部31は、缶1をテーブル等の平坦面に置く際には、缶1を支える脚として機能する。
図1(D)に示すように、円環部31の外径側部分は、下側に至るに従って内径側に至るように傾斜している。一方、円環部31の内径側部分は、アンダーカット状であり、つまり、下側に至るに従って内径側に至るように傾斜している。
【0015】
円環部31は、内突出部32を備える。
内突出部32は、円環部31の内径側部分の上記形状によって、円環部31のうち内側面かつ下側の先端近傍部分が、全周に渡って内径側に突出した部分である。このため、内突出部32は、全周において、互いに向かい合った部分が突出している。缶軸方向から見た状態で、内突出部32は、缶軸Cを中心とする円の円周32a(図2(D)参照)(切り離し蓋の外形よりも小さい部分)まで突出している。
【0016】
収容部35は、切り離した切り離し蓋20を収容可能な空間である。前述したように、円環部31の内径側部分がアンダーカット状であるため、円環部31の内径側かつ内突出部32よりも上側には、下側に至るに従って内径側に至るように小さくなるような空間が形成される(図3参照)。収容部35は、この空間を含む。収容部35は、切り離し蓋20に対応した形状であり、つまり、切り離し蓋20と同等以上の大きさを有し、切り離し蓋20を収容可能である。
【0017】
湾曲部39は、円環部31よりも内径側の部分であり、底部30の大部分を占める。湾曲部39は、上側に凸であるドーム状に湾曲しており、球殻の一部のような形状である。
【0018】
[切り離し蓋20の収容方法]
図2は、第1実施形態の切り離し蓋20を収容部35に収容する態様を説明する図である。
図2(A)は、切り離した切り離し蓋20の縦断面図である。
図2(B)は、切り離した切り離し蓋20を上側から見た図である。
図2(C)は、切り離し蓋20を収容した状態の底部30近傍の断面図(図1(C)に対応する図)である。
図2(D)は、切り離し蓋20を収容した状態の底部30を下側から見た図である。
【0019】
消費者等は、開缶後において、以下のように切り離し蓋20を収容部35に収容できる。
(1)図2(A)に示すように、開缶によって、切り離し蓋20のタブ25は、パネル21に対して起立しており、パネル21のうちタブ25の付け根部分(凸部22近傍)は、折れ曲がっている。また、パネル21全体(又は一部)が反ってしまう場合がある。
消費者等は、手で、パネル21の折れ曲がりを修正したり(図2(A)の矢印θ25a参照)、反りを修正する。なお、これらの修正をする際に、タブ25全体をパネル21に密着させることは困難であるので、タブ25は、パネル21に対して少し浮いた状態でもよい。また、これら反りの修正をしやすくするために、パネル21、タブ25に溝等を設けてもよい(特開2013-252896号公報等参照)。
(2)図2(B)に示すように、消費者等は、必要に応じて、手で、タブ25をパネル21に対して、凸部22の中心軸回りに回転させる(図2(A)の矢印θ25b参照)。この場合、消費者等は、タブ25の外形及びパネル21の外形が一致するまで、タブ25を回転させる。
(3)図2(C)、図2(D)に示すように、消費者等は、切り離し蓋20を、底部30の収容部35に収容する。この場合、消費者等は、切り離し蓋20を傾けたり、撓ませたりしながら、収容部35に嵌め込むように作業すればよい。
以上により、切り離し蓋20を収容部35に収容することができる。
【0020】
切り離し蓋20は、収容部35に収容されることにより、缶本体と一体にされ、また、内突出部32は、全周において互いに向かい合った部分によって、切り離し蓋20を保持する。このため、例えば、消費者等が切り離し後の切り離し蓋20の置き場に困ることがなく、また、切り離し蓋20が不法に廃棄されること等を抑制できる。
さらに、タブ25がパネル21の外形に一致するまで回転されることにより、タブ25の一部は、円環部31の内側面に当接し、かつ、内突出部32の上側に配置される。このため、タブ25は、パネル21からの浮きが抑制され、又はこの浮きがあっても十分に小さくなるように規制される。そのため、缶軸方向において、タブ25は、円環部31よりも下側に突出しない。これにより、缶1は、タブ25が机上等の表面に当接せず、かつ、円環部31のみが机上等の表面に当接するので、机上等に安定して置くことができる。
【0021】
[各部の寸法]
図3は、第1実施形態の内突出部32近傍の縦断面図(図2(C)の矢印3部近傍)の拡大図である。
図3に示すように、内突出部32は、切り離し蓋20の外形よりも小さい領域(図2(D)に示す円周32a参照)まで内径側に突出しており、つまり、缶軸方向から見た状態で、内突出部32の直径は、切り離し蓋20の直径(つまり外形が円形である切り離し蓋20の直径)よりも小さい。このため、切り離し蓋20を収容部35に収容する際の挿入口の大きさは、切り離し蓋20の外形よりも小さい。かつ、収容部35の空間(図4にドットのハッチングで示す)は、切り離し蓋20の外形の同等以上の大きさである。これにより、切り離し蓋20が収容部35に収容され、かつ、切り離し蓋20が収容部35から脱落しないようになっている。
【0022】
以下、各部の寸法の設定を、詳細に説明する。
なお、収容部35は、明確に仕切られた空間ではない。また、収容部35の外形は、タブ25の形状によって定義が異なる。以下の説明では、便宜上、収容部35の下端35dは、内突出部32の最も内径側の部分であり、缶軸方向から見た状態で円周32aに相当する部分とする。また、収容部35の上端35uは、円環部31の上部であって、下端35dと同径の部分とする。収容部35は、径方向において、円環部31の内側面のうち、下端35d及び上端35uの間の部分によって区画される。
また、実施形態では、切り離し蓋20が収容されている概念は、切り離し蓋20の全体が収容部35に配置された状態に限定されず、切り離し蓋20の主要部分が収容部35に配置された状態を含む。例えば、タブ25の厚みの一部、タブ25のうちパネル21から浮いた部分、パネル21の凸部22等が収容部35からはみ出ている状態等であっても、切り離し蓋20は、収容部35に収容されている概念とする。
【0023】
切り離し蓋20の直径、つまりパネル21の直径(被保持部の長さ):Lc
円周32aの直径(缶軸方向から見た状態で、内突出部32の最も内径側の部分によって形成される円の直径であって、収容部35の下側開口の直径):Ld
内突出部32の突出量(円環部31の内側面のうち外径側に最も窪んだ部分と、内突出部32の内径側の先端部との長さ):Lo
切り離し蓋20のパネル21の板厚(被保持部の厚さtc):tp
収容部35の缶軸方向の長さ:Lh
とした場合に、
Ld≦Lc≦Ld+2Lo…式1
かつ、
tp≦Lh…式2
を満たす。
【0024】
また、缶1が一般的な飲料缶等である場合、パネル21の直径Lcは、
35.0mm≦Lc≦50.0mm
程度である。
この場合、パネル21の直径Lcと、内突出部32の直径Ldとの差は、
-1.0mm≦Ld-Lc≦0.1mm…式3
(つまり、-0.1mm≦Lc-Ld≦1.0mm)
内突出部32の突出量Loは、
(Lc-Ld)/2=Loなので
0.05mm≦Lo…式4
を満たす。
内突出部32の突出量Loは、内突出部32の加工時の誤差、缶1の損傷の抑制等を考慮すると、
0.5mm≦Lo≦0.8mm…式4a
であることが好適である。
すなわち、突出量Loが0.1mmよりも小さい場合には、切り離し蓋20が収容部35から脱落してしまう可能性がある。また、突出量Loが0.8mmよりも大きい場合には、内突出部32を加工する際に、缶1を損傷(例えば、印刷層の損傷等)する可能性がある。
【0025】
缶軸方向の大きさにおいては、収容部35の缶軸方向の長さLh、パネル21の板厚tpは、
1.0mm≦Lh≦5.0mm…式5
0.19mm≦tp≦0.25mm…式6
を満たす。
なお、パネル21は、板厚tpが0.19mmよりも薄い場合には強度不足となるために、開缶時においてスコア11以外の部分で分離してしまう可能性がある。
【0026】
上記式5,6の設定では、切り離し蓋20の被保持部の厚さtcは、パネル21の板厚tpであり、タブ25の厚さttを含まない。この形態でも、切り離し蓋20を収容部35に収容する際に、タブ25は、円環部31の内側面に当接しながら凸部22の中心軸回りに回転することにより、収容部35内に配置される。
【0027】
なお、切り離し蓋20の被保持部の厚さtcは、パネル21の板厚tp及びタブ25の厚さttを含んだ厚さt20でもよい。
一般的なタブ25の厚さttは、
1.5mm≦tt≦2.5mm…式7
である。
式6は、被保持部の厚さtcを、パネル21及びタブ25を含んだ切り離し蓋20の厚さt20とみなすことにより、
1.69mm≦t20≦2.75mm…式6a
となる。この場合、式5は、
1.69mm≦Lh≦5.0mm…式5a
としてもよい。
【0028】
内突出部32の形状は、切り離し蓋20を内突出部32から収容部35にガイドできるように設定されている。つまり、消費者等が、切り離し蓋20を収容部35に収容する際には、切り離し蓋20の縁部を内突出部32の下部近傍に当接させながら、押し込むように作業する。このため、内突出部32の下部形状は、面取形状、湾曲形状等であるとよい。実施形態の内突出部32の下部形状は、湾曲形状であり、その曲率R32の最小値が、以下のように設定されている。
0.2mm≦R32≦1.0mm
好ましくは、
0.4mm≦R32≦0.8mm
である。
曲率R32が上記値よりも小さいと、内突出部32が鋭角状になってしまうため、切り離し蓋20を収容する際に、切り離し蓋20が内突出部32に引っ掛かりやすくなる。このため、この形状では、切り離し蓋20を収容する際の作業性が悪くなる可能性がある。
また、曲率R32が上記値より大きいと、内突出部32が切り離し蓋20を保持する部分(切り離し蓋20との嵌合部分)は、曲率が大きな曲面状になるので、切り離し蓋20が外れやすくなる可能性がある。
【0029】
[缶1の製造方法]
図4は、第1実施形態の内突出部32を形成する工程を説明する図であり、底部30近傍の縦断面図である。
内突出部32を形成する前工程として、公知の製造方法によって、缶1を、缶蓋10の装着前の状態に加工する(図示を省略する)。なお、実施形態では、製造過程において、缶蓋10を固定していない状態の製品も、便宜上、缶1という。
図4(A)に示すように、この状態の缶1は、円環部31の内側面側においては、内突出部32が未形成であり、一方、円環部31の外側面側においては、外側面及びチャイム部5が完成形の形状に形成されている。
【0030】
(1)図4(A)に示すように、この状態の缶1を、底部30の円環部31を内側面から内ロール51で押圧し、一方、底部30の円環部31の外側面及びチャイム部5を外ロール52で外側面から押圧する。これにより、内ロール51及び外ロール52は、円環部31の近傍を、内径側及び外径側から挟み込む。
内ロール51の外周面は、完成形の缶1の円環部31の内側面に対応した形状であり、また、収容部35を形成可能な湾曲形状である。一方、外ロール52の外周面は、完成形の缶1の円環部31の外側面及びチャイム部5の外周面に対応した形状である。
【0031】
(2)図4(A)に示すように、内ロール51及び外ロール52を、それぞれ缶軸Cに平行な軸回りに回転させる。缶1は、円環部31が内ロール51及び外ロール52によって押圧されながら、回転する。これに応じて、円環部31の内側面が、内ロール51に押圧されて変形する。
図4(B)に示すように、これにより、円環部31の内径側に、内突出部32、収容部35が形成される。
【0032】
その後、内容物を缶1に充填した状態で、口部4に缶蓋10を巻締加工することにより、缶1は、完成体となる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の缶1は、切り離し蓋20を収容部35に収容できる。このため、消費者等が缶1の内容物を消費中の場合等(例えば、缶1が飲料缶等であり、消費者等が飲用中の場合等)であっても、切り離し蓋20が邪魔にならず、また、切り離し蓋20の置き場に困らない。また、缶1は、缶本体及び切り離した切り離し蓋20を一体にできるので、切り離し蓋20が不法投棄されること等を抑制できる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の名称、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図5図6は、第2実施形態の切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを示す図(図2(B)に対応する図)、切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを収容部35に収容した状態を説明する図(図2(D)に対応する図)である。
図5図6に示すように、本実施形態の缶201A,201B,201C,201Dは、缶蓋の形状を第1実施形態から変更したものであり、缶蓋以外の形状は、第1実施形態と同様である。
本実施形態では4形態の切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを説明するが、これに限定されず、適宜変更してもよい。また、図示は省略するが、缶蓋から220A,220B,220C,220Dを切り離すことにより、缶蓋にはそれぞれ220A,220B,220C,220Dと同様な形状(切り離し蓋に対応した形状)の開口が形成される。また、タブ25は、凸部22回りに回転させない形態を図示したが、第1実施形態と同様に回転させてもよい。
【0035】
図5(A)に示すように、切り離し蓋220Aのパネル221Aは、タブ25近傍の一部分が、Dカット状に切断されたような形状である。
Dカット部分は、十分に小さいので、切り離し蓋220Aを缶軸方向から見た形状は、ほぼ円形である。Dカットを含まない円弧部分は、第1実施形態と同様に、直径Lcに設定されている。
これにより、切り離し蓋220Aは、底部30の収容部35に収容できる。
【0036】
図5(B)に示すように、切り離し蓋220Bのパネル221Bは、4つの突起223を備える。
突起223は、パネル221Bの縁部から径方向外側に突出している。4つの突起223は、パネル221Bの縁部に等間隔に配置されている。
突起223の先端を繋ぐ円弧の直径、つまり、4つの突起223に外接する円の直径は、第1実施形態と同様に、直径Lcに設定されている。
これにより、切り離し蓋220Bは、底部30の収容部35に収容できる。
なお、突起223の数は、2以上であればよい。また、これらの突起223の配置は、切り離し蓋220Bを安定して保持できるように、等間隔であることが好適である。例えば、突起223が2つであれば、円周部に向かい合うような位置に配置すればよく、また、突起223が3つであれば、120度間隔で配置すればよい。
【0037】
図6(A)に示すように、切り離し蓋220Cのパネル221Cは、R面取りされたような頂点を有する正三角形状の板状である。
三角形の頂点を繋ぐ円弧の直径、つまり、三角形に外接する円の直径は、第1実施形態と同様に、直径Lcに設定されている。
これにより、切り離し蓋220Cは、底部30の収容部35に収容できる。
なお、パネル221Cの形状は、三角形以外の多角形状でもよい。
【0038】
図6(B)に示すように、切り離し蓋220Dのパネル221Dは、湾曲した辺を有する長方形状の板状である。長方形の短辺部分は、円弧状であり、その円弧の直径は、第1実施形態と同様に、直径Lcに設定されている。なお、長辺部分は、円弧状又は楕円の一部形状のように、湾曲している。
これにより、切り離し蓋220Dは、底部30の収容部35に収容できる。
【0039】
このように、切り離し蓋のパネルの形状は、最大外形が直径Lcの円に内接等する形状であれば、適宜設定できる。
また、切り離し蓋220A,220B,220C,220Dのパネル221A,221B,221C,221Dは、縁部の一部のみが内突出部32に保持される。このため、切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを収容部35に収容する際の作業性がよい。すなわち、切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを収容部35に収容する際には、消費者は、パネル全体を撓ませる必要がなく、パネルのうち内突出部32に対応する部分を撓ませることにより、切り離し蓋220A,220B,220C,220Dを収容部35に収容できる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態の缶301の底部330近傍の構成を説明する図である。
図7(A)、図7(B)は、切り離し蓋20を収容していない状態の底部330近傍の構成を示す。
図7(A)は、底部330近傍の縦断面図(図1(D)に対応する図)である。
図7(B)は、底部330を下側から見た図である。
図7(C)、図7(D)は、切り離し蓋20を収容した状態の底部330近傍の構成を示す。
図7(C)は、底部330近傍の縦断面図(図2(C)に対応する図)である。
図7(D)は、底部330を下側から見た図(図2(D)に対応する図)である。
【0041】
前述した第2実施形態が蓋部の形状を第1実施形態から変形したものであるのに対して、本実施形態は、底部330の形状を第1実施形態から変更したものである。
図7(A)、図7(B)に示すように、缶301の底部330は、円環部31、3つの内突出部332を備える。
図7(B)に示すように、3つの内突出部332は、円環部31の円周上に等間隔(120度間隔)で配置されている。3つの内突出部332は、円環部31から内径側に突出するように設けられている。
このように、第1実施形態の内突出部が円環部31の全周に設けられているのに対して、本実施形態の内突出部332は、円環部31の円周の一部のみに設けられている。
内突出部332の縦断面の形状は、第1実施形態と同様である。
【0042】
このため、缶軸方向から見た状態で、3つの内突出部332を繋ぐ円の直径、つまり3つの内突出部332に内接する円の直径は、第1実施形態と同様に、直径Ldである。また、内突出部332の突出量は、第1実施形態と同様に、突出量Loである。
【0043】
図7(C)、図7(D)に示すように、これにより、切り離し蓋20は、この3つの内突出部332に保持されることにより、底部330の収容部335に収容できる。また、消費者等は、切り離し蓋20を収容部335に収容する際に、パネル21全体を撓ませる必要がなく、パネル21のうち内突出部332に保持される部分を撓ませることにより、切り離し蓋20を収容部335に収容できる。このため、切り離し蓋20を収容部335に収容する際の作業性がよい。
【0044】
図8は、第3実施形態の底部330近傍の縦断面図であり、内突出部332の加工方法を説明する図である。
缶301の製造方法は、内突出部332を加工する前工程において、第1実施形態と同様に、缶301を缶蓋10の装着前の状態に加工する。
そして、上型351及び下型352で円環部31の一部を上側及び下側から挟み込んだ状態で、この一部を内径側に変形させるように、缶軸方向に押圧すればよい。
これにより、底部330の円環部31の一部は、内径側に変形することにより、内突出部332に加工される。なお、図8に示す内突出部332の加工方法は、一例であり、適宜、他の加工方法を用いてもよい。
【0045】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態の缶401の缶蓋10近傍の構成を説明する縦断面図である。
図9(A)は、切り離し蓋420を切り離さない状態の缶蓋近傍を示す図である。
図9(B)は、切り離し蓋420を切り離した状態の缶蓋近傍を示す図である。
【0046】
本実施形態の缶は、いわゆるダブルセーフティ缶とも称されるものである。
図9(A)に示すように、缶蓋10は、スコア11よりも内径側の部分が、全周に渡ってZ字型に曲げ加工されている。
図9(B)に示すように、このため、切り離した切り離し蓋420のパネル421の縁部421aは、全周に渡ってZ字型の断面形状となる。同様に、缶蓋10の開口縁部も、全周に渡ってZ字型の断面形状となる。
また、パネル421の最大外形部分には、Z字の屈曲部421bが配置されている。これにより、缶401以外の物体は、パネル421の切断面に対して接触しにくい。
さらに、パネル421の縁部421aの厚さt421a(被保持部の厚さtc)は、3枚のパネル421の板材の板厚と、これら板材の間に形成された2つの隙間との和となるので、十分な厚さを有する。このため、缶401以外の物体は、パネル421の外形部分に接触した場合であっても、損傷しにくい。
【0047】
図10は、第4実施形態の切り離し蓋420を収納した状態の内突出部32近傍の縦断面の拡大図である。
前述したように、切り離し蓋420のパネル421の縁部421aの厚さt421aは、3枚のパネル421の板材の板厚tpと、これら板材の間に形成された2つの隙間S1,S2との和である。
隙間S1の大きさは、最大でもパネル421の1枚の厚さ程度であり、つまり、パネル421の板厚以下である。隙間S2についても、同様である。
このため、パネル421の縁部421aの厚さt421a(被保持部の厚さtc)の最大値は、5×tpである。
パネル421の一般的な厚さは、第1実施形態の式6(0.19mm≦tp≦0.25mm)で説明した通りであるので、
0.95mm≦t421a≦1.25mm…式406
である。
【0048】
このため、底部30は、第1実施形態と同様な条件を満たす形状にすることにより、切り離し蓋420を収容部35に収容できる。
すなわち、収容部35の大きさは、第1実施形態で説明した式5(1.0mm≦Lh≦5.0mm)等の条件を満たすことにより、上記式406(0.95≦t421a≦1.25)を満たす切り離し蓋420を収容できる。
【0049】
なお、第1実施形態で説明したように、切り離し蓋420の被保持部の厚さ(tc)は、パネル421の縁部421aの厚さt421a、及びタブ25の厚さttを含んだ厚さt420でもよい。
一般的なタブ25の厚さttは、第1実施形態の式7(1.5mm≦tt≦2.5mm)で説明した通りであるので、厚さt420(=t421a+tt=tc)は、
2.75≦t420≦3.75……式406a
である。
この場合でも、式5(1.0mm≦Lh≦5.0mm)を満たすことにより、切り離し蓋420を収容できる。なお、第1実施形態で説明したように、切り離し蓋420は、タブ25が円環部31の内側面に当接し凸部22回りに回転した状態で、収容部35に収納されることもできる。
【0050】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図11は、第5実施形態の切り離し蓋520を示す図(図2(B)に対応する図)、切り離し蓋520を収容部35に収容した状態を説明する図(図2(D)に対応する図)である。
図12は、第5実施形態の切り離し蓋520を収容した状態の内突出部32近傍の断面の拡大図(図11(B)の12-12断面図)である。
図11(A)に示すように、切り離し蓋520のタブ525は、凸部22の中心軸回りに大きく回転させることにより(矢印θ25a参照)、直径Lcのパネル521の外形よりも外側に、はみ出た部分(はみ出し部525aともいう)を有する。
図11(B)、図12に示すように、このため、パネル521の直径Lcが内突出部32の直径Ld以下であっても(つまり、Lc≦Ld)、切り離し蓋520は、切り離し蓋520を収容部35にはめ込んだ状態で収容できる。すなわち、はみ出し部525aを含む切り離し蓋520の外形が、内突出部32の直径Ldよりも若干大きければよい。
【0051】
切り離し蓋520が収容部35に収容された状態では、パネル521は、缶軸Cに対して径方向に偏心した状態で配置される。また、タブ525のはみ出し部525aと、パネル521の縁部であって、はみ出し部525aに向かい合う部分521aとが、内突出部32よりも上側に配置される。これにより、切り離し蓋520は、収容部35から脱落しない。
【0052】
切り離し蓋520を収容部35に収容する際には、タブ525を予め大きく回転させた状態で、円環部31の内側面に当接させることにより、タブ525を適度な位置(図11(B)に示す位置)に回転させてもよい。また、タブ525がパネル521の外形からはみ出ていない状態の切り離し蓋520を収容部35に挿入後に、タブ525をパネル521の外形から、はみ出るように回転してもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の切り離し蓋520は、パネル521の直径が内突出部32の直径以下であっても、収容部35に収容できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態の構成は、それらの一部のみ用いること、又は適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0055】
(変形形態)
(1)実施形態において、缶は、2ピース缶である例を示したが、これに限定されない。缶は、3ピース缶でもよい。この場合にも、缶の底部に、収納部を設けることにより、切り離し蓋を収納できる。
【0056】
(2)実施形態において、切り離し蓋は、タブが下側になるように、収納部に収納される例を示したが、これに限定されない。切り離し蓋は、タブが上側になるように、収納部にされてもよい。この場合には、タブがパネルから大きく浮いた状態でも、タブが底部よりも下側に突出しないので、缶を机上等に安定して置くことができる。
【符号の説明】
【0057】
1,201A,201B,201C,201D,301,401:缶
10:缶蓋
11:スコア
20,220A,220B,220C,220D,420,520:切り離し蓋
21,221A,221B,221C,221D,421,521:パネル
25,525:タブ
30,330:底部
31:円環部
32,332:内突出部
35,335:収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12