(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042767
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】車両の車椅子固定装置
(51)【国際特許分類】
A61G 3/08 20060101AFI20230320BHJP
A61G 3/06 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
A61G3/08
A61G3/06 712
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150079
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小出 彩友美
(72)【発明者】
【氏名】相倉 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光孝
(57)【要約】
【課題】構成が複雑になることを抑制しつつ、固定バーを備えている車椅子を車両のフロア上に容易に固定することができるとともに、固定バーを備えていない車椅子についても車両のフロア上に固定することができる車両の車椅子固定装置を提供する。
【解決手段】車椅子固定装置20は、第1固定装置と、係止部材60及びロック機構77を有する第2固定装置50と、ロックバー75とを有している。ロック機構77は、係止部材60の後部が前部よりも上方に位置する傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75によって係止部材60を押圧して下方に回動させるように構成されている。また、ロック機構77は、ロックバー75が所定位置に到達すると、係止部材60の回動を阻止するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア上に車椅子を固定する車両の車椅子固定装置であって、
前記車両の前後方向を前後方向とし、前記車両が水平面上に位置するときの上下方向を上下方向とするとき、
ワイヤ、前記ワイヤの先端に設けられたフック、及び前記ワイヤを巻き取る巻取装置を備える第1固定装置と、
前記フロア上に設けられ、車幅方向に延在する軸線を中心に回動可能に支持される前部及び前記前部よりも後方に位置し、下方に向かって開口するとともに前記車椅子の固定バーと係合可能な係合凹部が設けられた後部を有する係止部材、前記車幅方向に延在するとともに前記前後方向に移動可能に設けられたロックバー、並びに前記ロックバーにより駆動されて前記係合凹部に前記固定バーを係合させるとともにその係合状態を保持するロック機構を備える第2固定装置と、を備え、
前記ロックバーは、前記フックと係合可能に構成された係合部を有しており、
前記第1固定装置は、前記係合部に前記フックが係合されている状態において前記巻取装置により前記ワイヤを巻き取ることにより前記ロックバーを後方に移動させるように構成されており、
前記ロック機構は、前記係止部材の前記後部が前記前部よりも上方に位置する傾斜状態において、前記ロックバーが所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動する前記ロックバーによって前記係止部材を押圧して下方に回動させるとともに、前記ロックバーが前記所定位置に到達すると、前記係止部材の回動を阻止するように構成されている、
車両の車椅子固定装置。
【請求項2】
前記第2固定装置は、
前記フロア上に設けられ、前記軸線を中心に前記係止部材を回動可能に支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記車幅方向に貫通するとともに前記前後方向に延在する第1貫通孔を有しており、
前記係止部材の前記前部は、前記車幅方向に貫通するとともに前記前後方向に延在する第2貫通孔を有しており、
前記ロックバーは、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通されるとともに前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔により前記前後方向に移動可能に支持されており、
前記ロック機構は、前記傾斜状態において、前記ロックバーが前記所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動する前記ロックバーにより前記第2貫通孔の下縁を押圧して前記係止部材を下方に回動させるとともに、前記ロックバーが前記所定位置に到達すると、前記ロックバーを前記第2貫通孔の下縁と前記第1貫通孔の上縁との双方に接触させることにより前記係止部材の回動を阻止するように構成されている、
請求項1に記載の車両の車椅子固定装置。
【請求項3】
前記前後方向に移動可能な操作部材を備え、
前記操作部材は、前記操作部材の前方への移動に伴い前記係止部材を前方に向けて押圧することによって、前記係止部材が前記フロアに沿う倒伏状態から前記傾斜状態へ前記係止部材を上方に回動させるとともに前記ロックバーを前方に移動させるように構成されている、
請求項2に記載の車両の車椅子固定装置。
【請求項4】
前記係止部材は、当接部を有しており、
前記操作部材は、後側ほど上側に位置するように傾斜した傾斜面部を有しており、
前記操作部材の前方への移動に伴って前記当接部が前記傾斜面部に沿って上方に移動するとともに前記係止部材が上方に回動されるように構成されている、
請求項3に記載の車両の車椅子固定装置。
【請求項5】
前記支持部を前側支持部とするとき、
前記操作部材は、前記前後方向に移動可能な操作部材本体と、前記操作部材本体を後方に向けて常時付勢する付勢部材と、を有しており、
前記第2固定装置は、前記フロア上に設けられた後側支持部を備えており、
前記係止部材は、係止部材本体と、前記係止部材本体の前記後部において前記車幅方向に延びる軸線を中心に揺動可能に支持されたカムと、を備えており、
前記係止部材が前記傾斜状態であるときに、前記カムが前記後側支持部によって下方から支持されることで前記係止部材の下方への回動が規制されるように構成されている、
請求項3または請求項4に記載の車両の車椅子固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車椅子固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤ、ワイヤの先端に設けられたフック、及びワイヤを巻き取る巻取装置とを備える車椅子固定装置が記載されている。この固定装置は、車椅子のフレームにフックを掛けた状態でワイヤを巻き取ることにより車両のフロア上に車椅子を固定する。
【0003】
特許文献2には、車幅方向に延びる軸線を中心に回動可能に設けられる係止部材と、前後方向に移動可能に設けられるロックバーとを備える車椅子固定装置が記載されている。係止部材は、車椅子の下部に設けられた固定バーに係合可能な係合凹部を有している。ロックバーは、操作部材の操作に基づいて後方に移動されることで係止部材を下方に向けて回動するとともに係止部材に係合されることで係止部材の回動を阻止するように構成されている。この固定装置においては、使用者が係止部材の係合凹部の下方に車椅子の固定バーを移動させた後、ロックバーを後方に移動させることで係止部材が下方に回動されるとともにロックバーが係止部材に係合される。これにより、係止部材の回動が阻止されるとともに、係止部材の係合凹部にロックバーが係合された状態が保持される。すなわち、車両のフロア上に車椅子が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-150071号公報
【特許文献2】特開2018-102580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の車椅子固定装置においては、操作部材の操作によってロックバーを後方に移動させることで車両のフロア上に車椅子を容易に固定することができる。ただし、特許文献2の車椅子固定装置では、固定バーを備えていない車椅子を車両のフロア上に固定することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両の車椅子固定装置は、車両のフロア上に車椅子を固定する車両の車椅子固定装置であって、前記車両の前後方向を前後方向とし、前記車両が水平面上に位置するときの上下方向を上下方向とするとき、ワイヤ、前記ワイヤの先端に設けられたフック、及び前記ワイヤを巻き取る巻取装置を備える第1固定装置と、前記フロア上に設けられ、車幅方向に延在する軸線を中心に回動可能に支持される前部及び前記前部よりも後方に位置し、下方に向かって開口するとともに前記車椅子の固定バーと係合可能な係合凹部が設けられた後部を有する係止部材、前記車幅方向に延在するとともに前記前後方向に移動可能に設けられたロックバー、並びに前記ロックバーにより駆動されて前記係合凹部に前記固定バーを係合させるとともにその係合状態を保持するロック機構を備える第2固定装置と、を備え、前記ロックバーは、前記フックと係合可能に構成された係合部を有しており、前記第1固定装置は、前記係合部に前記フックが係合されている状態において前記巻取装置により前記ワイヤを巻き取ることにより前記ロックバーを後方に移動させるように構成されており、前記ロック機構は、前記係止部材の前記後部が前記前部よりも上方に位置する傾斜状態において、前記ロックバーが所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動する前記ロックバーによって前記係止部材を押圧して下方に回動させるとともに、前記ロックバーが前記所定位置に到達すると、前記係止部材の回動を阻止するように構成されている。
【0007】
同構成によれば、車椅子のフレームにフックを掛けた状態でワイヤを巻き取ることにより車両のフロア上に車椅子を固定することができる。このため、固定バーを備えていない車椅子であっても第1固定装置によって車両のフロア上に固定することができる。
【0008】
一方、固定バーを備える車椅子の場合には、使用者は、係止部材の後部が前部よりも上方に位置する傾斜状態において、係止部材の係合凹部の下方に車椅子の固定バーを移動させる。そして、ロックバーの係合部にフックが係合されている状態において、巻取装置によりワイヤを巻き取らせることによりロックバーを後方に移動させる。ロックバーが所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバーによって係止部材が押圧されて下方に回動される。また、ロックバーが所定位置に到達すると、係止部材の回動が阻止される。これにより、係止部材の係合凹部にロックバーが係合された係合状態が保持される。すなわち、車両のフロア上に車椅子が固定される。このように、固定バーを備える車椅子に対しては、第1固定装置と第2固定装置とによって車椅子を車両のフロア上に固定することができる。このため、ロックバーを後方へ移動させる専用の駆動装置が不要となる。
【0009】
したがって、構成が複雑になることを抑制しつつ、固定バーを備えている車椅子を車両のフロア上に容易に固定することができるとともに、固定バーを備えていない車椅子についても車両のフロア上に固定することができる。
【0010】
上記車両の車椅子固定装置において、前記第2固定装置は、前記フロア上に設けられ、前記軸線を中心に前記係止部材を回動可能に支持する支持部を備え、前記支持部は、前記車幅方向に貫通するとともに前記前後方向に延在する第1貫通孔を有しており、前記係止部材の前記前部は、前記車幅方向に貫通するとともに前記前後方向に延在する第2貫通孔を有しており、前記ロックバーは、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通されるとともに前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔により前記前後方向に移動可能に支持されており、前記ロック機構は、前記傾斜状態において、前記ロックバーが前記所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動する前記ロックバーにより前記第2貫通孔の下縁を押圧して前記係止部材を下方に回動させるとともに、前記ロックバーが前記所定位置に到達すると、前記ロックバーを前記第2貫通孔の下縁と前記第1貫通孔の上縁との双方に接触させることにより前記係止部材の回動を阻止するように構成されていることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、傾斜状態において、ロックバーが所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバーにより第2貫通孔の下縁が押圧されることで係止部材が下方に回動される。また、ロックバーが所定位置に到達すると、ロックバーが第2貫通孔の下縁と第1貫通孔の上縁との双方に接触することで係止部材の回動が阻止される。このように支持部の第1貫通孔及び係止部材の第2貫通孔によってロック機構を容易に具現化することができる。
【0012】
上記車両の車椅子固定装置において、前記前後方向に移動可能な操作部材を備え、前記操作部材は、前記操作部材の前方への移動に伴い前記係止部材を前方に向けて押圧することによって、前記係止部材が前記フロアに沿う倒伏状態から前記傾斜状態へ前記係止部材を上方に回動させるとともに前記ロックバーを前方に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0013】
同構成によれば、操作部材が前方に移動されて係止部材を前方に向けて押圧することによって、係止部材が倒伏状態から傾斜状態に回動されるとともにロックバーが前方に移動されるようになる。これにより、係止部材の係合凹部にロックバーが係合された状態を解除することができる。
【0014】
上記車両の車椅子固定装置において、前記係止部材は、当接部を有しており、前記操作部材は、後側ほど上側に位置するように傾斜した傾斜面部を有しており、前記操作部材の前方への移動に伴って前記当接部が前記傾斜面部に沿って上方に移動するとともに前記係止部材が上方に回動されるように構成されていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、操作部材が前方に移動されることに伴い係止部材の当接部が傾斜面部に当接するとともに、当接部が傾斜面部に沿って上方に移動することで、係止部材が上方に回動するようになる。このようにして、係止部材を倒伏状態から傾斜状態へ容易に回動させることができる。
【0016】
上記車両の車椅子固定装置において、前記支持部を前側支持部とするとき、前記操作部材は、前記前後方向に移動可能な操作部材本体と、前記操作部材本体を後方に向けて常時付勢する付勢部材と、を有しており、前記第2固定装置は、前記フロア上に設けられた後側支持部を備えており、前記係止部材は、係止部材本体と、前記係止部材本体の前記後部において前記車幅方向に延びる軸線を中心に揺動可能に支持されたカムと、を備えており、前記係止部材が前記傾斜状態であるときに、前記カムが前記後側支持部によって下方から支持されることで前記係止部材の下方への回動が規制されるように構成されていることが好ましい。
【0017】
同構成によれば、操作部材本体が付勢部材によって後方に向けて常時付勢されている。このため、操作部材本体が操作されていないときには、操作部材本体が自動的に後方の初期位置へ復帰されるようになる。
【0018】
また、上記構成によれば、操作部材本体が前方に移動されており、係止部材が傾斜状態であるときに、使用者が操作部材本体から手足を離してもカムが後側支持部によって下方から支持されることで係止部材の下方への回動が規制されるようになる。すなわち、係止部材の傾斜状態が保持されるようになる。これにより、使用者が操作部材本体を前方に移動させた状態で操作部材本体から手足を離すことができるようになる。したがって、操作部材の操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構成が複雑になることを抑制しつつ、固定バーを備えている車椅子を車両のフロア上に容易に固定することができるとともに、固定バーを備えていない車椅子についても車両のフロア上に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、車椅子固定装置の一実施形態について、車両後部の斜視図である。
【
図3】
図3は、同実施形態の車椅子固定装置の平面図である。
【
図4】
図4は、同実施形態の第1固定装置の内部構造を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に対応する図であって、倒伏状態の係止部材及び初期位置の操作部材を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に対応する図であって、倒伏状態の係止部材及び当接部に当接した直後の傾斜面部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図6に対応する図であって、待機状態の係止部材を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図6に対応する図であって、待機状態の係止部材の係合凹部の直下に移動した固定バーを示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図10に対応する図であって、ロックバーの後方への移動に伴って係止部材が下方へ回動した状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、巻取装置によって巻き取られるワイヤによって後方へ移動するロックバーを示す平面図である。
【
図13】
図13は、
図6に対応する図であって、ロック機構によって係合凹部と固定バーとの係合状態が保持されている状態を示す断面図である。
【
図14】
図14は、
図6に対応する図であって、係合凹部と固定バーとの係合状態が解除される様子を示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図6に対応する図の拡大図であって、係止部材の下方への回動に伴うカムの動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図15を参照して、車両の車椅子固定装置の一実施形態について説明する。
なお、以降において、車両10の前後方向を前後方向Lとし、車幅方向を車幅方向Wとし、車両10が水平面上に位置しているときの車両10の上下方向を上下方向Zとして説明する。
【0022】
また、前後方向Lにおける前側及び後側を、単に「前側」及び「後側」とし、車幅方向Wの外側及び内側、すなわち車幅方向Wにおいて車両の中央から離れる方向及び同中央に近づく方向を、単に「外側」及び「内側」として説明する。また、上下方向Zにおける上側及び下側を、単に「上側」及び「下側」として説明する。
【0023】
図1に示すように、車両10の背面11には、車両10の内外を連通する開口11aを開閉可能なバックドア12が設けられている。
<リフト装置13>
図1に示すように、車両10の後部には、リフト装置13が設けられている。
【0024】
リフト装置13は、車椅子(
図2参照)が載置されるフロア部14、フロア部14と車体フロア10Aとを連結する多関節の一対のアーム部15、及び操作タワー16を備えている。操作タワー16には、アーム部15を駆動する操作スイッチ(図示略)が設けられている。
【0025】
フロア部14は、アーム部15の駆動により、地面上の位置(
図1参照)と、車体フロア10A上の位置との間で移動するように構成されている。
フロア部14には、フロア部14上に車椅子90を固定する車椅子固定装置20が設けられている。本実施形態のフロア部14が、本発明に係るフロアに相当する。
【0026】
<車椅子90>
図2に示すように、車椅子90は、一対のサイドフレーム91、一対の前柱92、一対の後柱93、座部94、一対の前輪95、一対の後輪96、及び固定バー99等を備えている。
【0027】
一対のサイドフレーム91は、車椅子90の前後方向に延在するとともに、車椅子90の幅方向に互いに間隔をあけて設けられている。
前柱92は、サイドフレーム91の前部から上方に延在している。
【0028】
後柱93は、サイドフレーム91の後部から上方に延在している。
座部94は、一対の前柱92及び一対の後柱93によって囲まれた部分においてこれら前柱92及び一対の後柱93に連結されている。
【0029】
前輪95は、サイドフレーム91の前部から下方に延びるフォーク97の先端部によって回動可能に支持されている。
後輪96は、後柱93に設けられた支持部材によって回動可能に支持されている。
【0030】
固定バー99は、前輪95と後輪96との間において幅方向に延在している。固定バー99の両端は、一対のサイドフレーム91から下方に延びる一対の連結部材98に連結されている。
【0031】
<車椅子固定装置20>
図3及び
図4に示すように、車椅子固定装置20は、第1固定装置30と第2固定装置50とを備えている。
【0032】
フロア部14には、上部開口21aを有する収容凹部21が設けられている。
収容凹部21は、前後方向Lに延在する一対の長辺及び車幅方向Wに延在する一対の短辺を有する平面視長方形状である。
【0033】
図3に示すように、フロア部14には、上部開口21aを覆うベースカバー22が設けられている。ベースカバー22は、ボルト22aによってフロア部14に対して固定されている。
【0034】
<第1固定装置30>
図4に示すように、収容凹部21の内部には、第1固定装置30が収容されている。
第1固定装置30は、ワイヤ31,ワイヤ31の先端に設けられたフック32、及びワイヤ31を巻き取る巻取装置33を備えている。
【0035】
本実施形態では、ワイヤ31及びフック32が、4つずつ設けられている。
次に、巻取装置33の構成について詳細に説明する。
図4に示すように、巻取装置33は、回転軸34、回転軸34に回転可能に支持されるとともにワイヤ31が巻き付けられているリール35、及びワイヤ31を巻き取る方向(
図4の反時計回り方向)にリール35を常時付勢する付勢部材(図示略)を備えている。
【0036】
回転軸34は、収容凹部21の底面21bに設けられている。回転軸34は、上下方向Zに延びている。
本実施形態では、4組の回転軸34及びリール35が前後方向Lに一列にて設けられている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、底面21bには、ワイヤ31をベースカバー22の上方に引き出す2つの滑車36a,36bがワイヤ31毎に設けられている。
図4に示すように、4つのリール35のうち後側の2つのリール35にそれぞれ巻き付けられている2つのワイヤ31は、底面21bの後部(
図4の上部)に設けられた2つの滑車36a,36bにそれぞれ掛け渡されている。上記2つのワイヤ31は、ベースカバー22の後部において車幅方向Wの両端部に設けられた2つの透孔22bを通じてベースカバー22の上方にそれぞれ引き出されている。
【0038】
4つのリール35のうち前側の2つのリール35にそれぞれ巻き付けられている2つのワイヤ31は、底面21bの前部に設けられた2つの滑車36a,36bにそれぞれ掛け渡されている。上記2つのワイヤ31は、ベースカバー22の前部の外周縁と収容凹部21の内周縁との間に設けられた隙間S1を通じてベースカバー22の上方にそれぞれ引き出されている。
【0039】
巻取装置33は、ワイヤ31を巻き取るとともに、ワイヤ31を巻き取った状態でリール35を保持する保持機構37を備えている。
巻取装置33は、操作タワー16に設けられた固定スイッチ17の操作に基づき駆動される。
【0040】
保持機構37は、リール35に連結された歯車38、歯車38に噛合可能なラック歯39aを有するラック39、及びラック39を駆動する駆動部40を備えている。
本実施形態では、4つのリール35に対応して4つの歯車38及びラック歯39aが設けられている。
【0041】
歯車38は、リール35と同一軸線上に設けられている。
ラック39は、収容凹部21の内部において前後方向Lに延在するとともに、車幅方向Wにおいて4つの歯車38と隣り合っている。4つのラック歯39aは、前後方向Lにおいて互いに間隔をあけて設けられている。
【0042】
ラック39には、前後方向Lに延在する2つのガイド孔39bが前後方向Lにおいて互いに間隔をあけて設けられている。ガイド孔39bには、底面21bから突出するガイド軸22cが挿通されている。ガイド孔39b及びガイド軸22cによって、ラック39が前後方向Lに移動可能に支持されるとともに、ラック39の前後方向Lの移動範囲が規制されている。
【0043】
駆動部40は、モータ41、モータ41の回転を減速する減速ギア42、及び減速ギア42の回転をラック39の前後方向Lの移動に変換するリンク43を備えている。
モータ41、減速ギア42、及びリンク43は、底面21bにおいてラック39の前方に設けられている。モータ41には、図示しないバッテリからの電力が供給される。
【0044】
モータ41によって減速ギア42が同図の反時計回り方向に回転駆動されると、リンク43を介してラック39が前方に移動される。このとき、ラック39が、歯車38を同図の反時計回り方向に回転させるとともに、リール35を反時計回り方向に回転させる。これにより、ワイヤ31が巻き取られる。また、ラック39が前方に移動されており、且つラック歯39aと歯車38とが噛合されている状態でモータ41が停止されると、ワイヤ31が巻き取られた状態でリール35が保持されるようになる。
【0045】
一方、モータ41によって減速ギア42が同図の時計回り方向に回転駆動されると、リンク43を介してラック39が後方に移動される。また、ラック39が後方に移動されており、且つラック歯39aと歯車38とが噛合されていない状態でモータ41が停止されると、リール35は保持機構37に対して自由な状態となる。
【0046】
<第2固定装置50>
図3及び
図5に示すように、ベースカバー22上には、第2固定装置50が設けられている。
【0047】
なお、第2固定装置50は、基本的に車幅方向Wにおいて対称な構造を有している。このため、以降においては、車幅方向Wの一側(
図3の右側)の構造について説明し、他側(
図3の左側)の構造についての説明を省略することがある。
【0048】
(前側支持部51)
図3及び
図5に示すように、ベースカバー22上には、一対の前側支持部51が車幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて固定されている。
【0049】
前側支持部51は、前後方向Lに延在する内側支持部51Aと、内側支持部51Aの外側に位置するとともに前後方向Lに延在する外側支持部51Bとを備えている。
図5に示すように、内側支持部51A及び外側支持部51Bには、いずれも車幅方向Wに貫通する支持孔52及び第1貫通孔53が設けられている。
【0050】
支持孔52は、円孔である(
図6参照)。
第1貫通孔53は、支持孔52よりも後方に位置するとともに、前後方向Lに延在している。
【0051】
(係止部材60)
図3及び
図5に示すように、内側支持部51Aと外側支持部51Bとの間には、係止部材60が設けられている。
【0052】
図5及び
図6に示すように、係止部材60は、前後方向Lに延在する係止部材本体61を備えている。
係止部材本体61は、前側から順に、前部62、中間部64、及び後部63を有している。
【0053】
前部62には、いずれも車幅方向Wに貫通する支持孔62a及び第2貫通孔65が設けられている。
支持孔62aは、円孔である(
図6参照)。
【0054】
内側支持部51A及び外側支持部51Bの支持孔52と、係止部材本体61の支持孔62aとには、支持軸69が挿通されている。係止部材本体61は、支持軸69によって同支持軸69の軸線A1を中心に回動可能に支持されている。
【0055】
第2貫通孔65は、支持孔62aよりも後方に位置するとともに前後方向Lに延在している。
後部63には、下方に向かって開口するとともに車椅子90の固定バー99と係合可能な係合凹部66が設けられている。
【0056】
中間部64には、当接部67が設けられている。当接部67は、第2貫通孔65よりも後方に設けられている。当接部67は、中間部64から内側に向けて突出する軸部67aと、軸部67aの先端において軸部67aに対して回動可能に支持されたローラー67bとを有している。
【0057】
図5及び
図6に示すように、後部63の内面には、カム70が取り付けられている。カム70は、車幅方向Wに延びる軸線A2を中心に係止部材本体61に対して揺動可能に支持されている。
【0058】
図6に示すように、カム70は、略三角形板状のカム本体71、カム本体71の頂部から外側に突出するとともに後部63の内面に対して回動可能に連結された軸部72、及びカム本体71の底部の前端から内側に向けて突出する突起部73を有している。
【0059】
カム本体71には、軸部72の軸線A2を中心として円弧状に延びるガイド孔71aが設けられている。ガイド孔71aには、係止部材本体61の内面から突出するガイド軸68が挿通されている。ガイド孔71a及びガイド軸68によって、カム70の揺動範囲が規制されている。カム70は、ばね74によって、後方、すなわち
図6の反時計回り方向に常時付勢されている。
【0060】
図9に示すように、カム本体71は、自然状態、すなわちばね74によって付勢されることで最も後方に位置する状態において、車幅方向Wにおいて係合凹部66の内部空間S2と重なり合う部位71bを有している。
【0061】
図6に示すように、ベースカバー22には、係止部材本体61の前部62及び後部63の下縁部をそれぞれ逃がすスリット22e,22fが前後方向Lに間隔をあけて設けられている。
【0062】
図7に示すように、係止部材本体61の中間部64の下縁部には、係止部材本体61がベースカバー22に沿う倒伏状態となるときに、ベースカバー22を逃がす切欠64aが設けられている。
【0063】
(ロックバー75)
図3、
図5及び
図6に示すように、第1貫通孔53及び第2貫通孔65には、車幅方向Wに延びるロックバー75が挿通されている。
【0064】
ロックバー75は、第1貫通孔53及び第2貫通孔65によって、すなわち前側支持部51及び係止部材60により前後方向Lに移動可能に支持されている。
ロックバー75の両端には、フック32と係合可能な係合部76が設けられている。係合部76は、例えばロックバー75の両端がU字状に曲げられることによって構成されている。本実施形態のロックバー75は、丸棒状である。
【0065】
(操作部材80)
図3、
図5及び
図6に示すように、ベースカバー22上においてロックバー75の後方には、前後方向Lに移動可能な操作部材80が設けられている。
【0066】
図3及び
図5に示すように、操作部材80は、前後方向Lに延在する操作部材本体81と、操作部材本体81を後方に向けて常時付勢する付勢部材82とを備えている。
図3、
図5及び
図6に示すように、操作部材本体81の側面には、一対のローラー83が取り付けられている。操作部材本体81は、ベースカバー22上をローラー83が回転することにより、前後方向Lに移動する。
【0067】
操作部材本体81には、上下方向Zに貫通するとともに前後方向Lに延在するガイド孔81aが設けられている。ガイド孔81aには、ベースカバー22の上面から突出するガイド軸22dが挿通されている。ガイド孔81a及びガイド軸22dによって、操作部材本体81が前後方向Lに移動可能に支持されるとともに、前後方向Lにおける操作部材本体81の移動範囲が規制されている。
【0068】
図3に示すように、操作部材本体81の後端部には、使用者の足先によって操作される操作部84が設けられている。
図3、
図5及び
図6に示すように、操作部材本体81の前端には、傾斜面部85及び押圧部87が設けられている。
【0069】
図6に示すように、傾斜面部85は、前側ほど下側に位置するように傾斜している。傾斜面部85は、一対の当接部67のローラー67bに当接するように車幅方向Wに延在している(
図3参照)。
【0070】
傾斜面部85の上端には、後方に向けて延在する上面部86が設けられている。
押圧部87は、傾斜面部85よりも前方に位置するとともに、ロックバー75を前方に押圧可能に構成されている。
【0071】
図3、
図5及び
図6に示すように、車幅方向Wにおける傾斜面部85の中央部分、すなわち一対のローラー67bと干渉しない部分には、前後方向Lに延在する連結部88が連結されている。
【0072】
押圧部87は、連結部88の前端に連結されている。押圧部87は、上下方向Zに延在する第1部分87aと、第1部分87aの下端に連なるとともに下側ほど前側に位置するように傾斜する第2部分87bとを有している。
【0073】
(後側支持部55)
図3、
図5及び
図6に示すように、ベースカバー22上には、前後方向Lに延びる一対の板状の連結部材54が設けられている。
【0074】
連結部材54は、係止部材本体61の後部63の内側であり、且つ当接部67の後方に設けられている。前後方向Lにおける連結部材54の中央部の外面には、後側支持部55が突設されている。
【0075】
図6に示すように、後側支持部55の上面56には、前後方向Lに延在する平部56aと、平部56aの前端に連なるとともに前側ほど下側に位置するように傾斜する傾斜部56bとが設けられている。後側支持部55は、傾斜部56bの前端から下方に延在する前面57を有している。前面57は、軸線A1を中心とする円弧状に延在している。
【0076】
係止部材本体61の後部63が前部62よりも上方に位置する傾斜状態であるときに、カム70が傾斜部56bによって下方から支持されることで係止部材60の下方への回動が規制されるように構成されている。
【0077】
(ロック機構77)
図6に示すように、第2固定装置50は、ロックバー75により駆動されて係合凹部66に固定バー99を係合させるとともにその係合状態を保持するロック機構77を備えている。
【0078】
ロック機構77は、係止部材60の傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75によって係止部材60を押圧して下方に回動させるように構成されている。
【0079】
ロック機構77は、後方へ移動するロックバー75により第2貫通孔65の下縁65aを押圧して係止部材60を下方に回動させるように構成されている。
ロック機構77は、ロックバー75が上記所定位置に到達すると、係止部材60の回動を阻止するように構成されている。ロック機構77は、ロックバー75が上記所定位置に到達すると、ロックバー75を第2貫通孔65の下縁65aと第1貫通孔53の上縁53aとの双方に接触させることにより、係止部材60の回動を阻止するように構成されている。
【0080】
次に、第1固定装置30の操作手順について説明する。
(車椅子90の固定操作)
使用者は、フロア部14上に車椅子90を移動させた後、手動により4つのワイヤ31を引き出すとともに、4つのフック32を車椅子90のサイドフレーム91に引っ掛ける。これにより、ワイヤ31は、巻き取り方向に付勢されているリール35によって巻き取られるようになる。
【0081】
そして、使用者が、操作タワー16の固定スイッチ17を操作すると、巻取装置33が駆動される。これにより、モータ41によって、減速ギア42及びリンク43を介してラック39が前方に移動されることで、ワイヤ31が巻き取られるとともに、ワイヤ31が巻き取られた状態でリール35が保持されるようになる。このようにして、車椅子90がフロア部14上に固定される。
【0082】
(車椅子90の固定解除操作)
使用者が、操作タワー16に設けられた解除スイッチ18を操作すると、モータ41によって、減速ギア42及びリンク43を介してラック39が後方に移動される。これにより、リール35が保持機構37に対して自由な状態となる。これにより、使用者は、手動により4つのワイヤ31を引き出すとともに、車椅子90のサイドフレーム91から4つのフック32を外すことができる。このようにして、車椅子90の固定が解除される。
【0083】
次に、
図6~
図15を参照して、第2固定装置50の操作手順について説明する。
(倒伏状態)
図7に示すように、係止部材60は、ベースカバー22に沿う倒伏状態では、係止部材本体61の前部62及び後部63の下縁部がスリット22e,22fによって逃がされるとともに、中間部64の切欠64aがベースカバー22と当接する。
【0084】
図8に示すように、係止部材60の倒伏状態において、使用者は、操作部材80を自身の足先によって前方へ移動させる。これにより、押圧部87によってロックバー75が前方に押圧されるとともに、傾斜面部85によって当接部67のローラー67bが前方に押圧される。
【0085】
(傾斜状態)
図6に示すように、操作部材80が更に前方へ移動されると、当接部67が傾斜面部85に沿って上方に移動するとともに係止部材60が上方に回動されるようになる。これにより、係止部材60は、後部63が前部62よりも上方に位置する状態である傾斜状態になる。傾斜状態においては、カム70の突起部73が傾斜部56bに当接する。カム70は、傾斜部56bによって下方から支持されることで係止部材60の下方への回動が規制されている。
【0086】
(待機状態)
図9に示すように、操作部材80が更に前方へ移動されると、当接部67が上面部86に乗り上げるとともに係止部材60が更に上方に回動されるようになる(以下、待機状態)。待機状態では、カム70の突起部73が後側支持部55から上方に離れている。また、待機状態においては、ロックバー75が第1貫通孔53及び第2貫通孔65の前縁に当接することによって、操作部材80の前方への更なる移動が阻止される。
【0087】
(車椅子90の固定操作)
図10に示すように、待機状態において、使用者は、フロア部14上に車椅子90を移動させるとともに、係合凹部66の直下に固定バー99を移動させる。これにより、カム70が押圧されて前方に回動する。
【0088】
次に、使用者は、後側の2つのワイヤ31及びフック32を引き出すとともに、ロックバー75の両端の係合部76に2つのフック32をそれぞれ係合させる。
ここで、使用者が操作部材80から足を離すと、操作部材本体81は、付勢部材82によって後方に付勢されることで、初期位置に復帰するようになる。
【0089】
これに伴って、
図11に示すように、ばねによってリール35を介してワイヤ31が巻き取られることによって、ロックバー75が後方へ移動する。そして、後方へ移動するロックバー75により第2貫通孔65の下縁65aが押圧されることで係止部材60が下方に回動されるようになる。またこのとき、固定バー99が係合凹部66内に更に進入するようになる。
【0090】
その後、使用者が、操作タワー16に設けられた固定スイッチ17を操作すると、巻取装置33が駆動される。これにより、モータ41によって、減速ギア42及びリンク43を介してラック39が前方に移動される。これにより、
図12に示すように、ワイヤ31が巻き取られてロックバー75が後方に移動するとともに、ワイヤ31が巻き取られた状態でリール35が保持されるようになる。
【0091】
図13に示すように、後方へ移動するロックバー75が前後方向Lにおける所定位置に到達すると、ロックバー75が第2貫通孔65の下縁65aと第1貫通孔53の上縁53aとの双方に接触することで係止部材60の回動が阻止されるようになる。これにより、係合凹部66に固定バー99が係合されるとともに、その係合状態が保持されるようになる。
【0092】
(車椅子90の固定解除操作)
使用者が、操作タワー16に設けられた解除スイッチ18を操作すると、モータ41によって、減速ギア42及びリンク43を介してラック39が後方に移動される。これにより、リール35が保持機構37に対して自由な状態となる。これにより、ロックバー75が前後方向Lに移動可能になる。
【0093】
図14に示すように、この状態において、使用者が、ロックバー75が第1貫通孔53及び第2貫通孔65の前縁に当接するまで操作部材80を前方に移動させると、係止部材60が待機状態となるまで上方に回動されるようになる。これにより、係合凹部66が固定バー99から上方に離れるようになるため、使用者は、車椅子90を後方に移動させることができるようになる。
【0094】
なお、係合凹部66の直下に固定バー99が存在しておらず、且つ操作部材80が初期位置に復帰している状態において、使用者は、自身の足などによって係止部材60を下方に向けて押圧することで、係止部材60を倒伏状態にすることができる。
【0095】
ここで、
図15に示すように、カム70の突起部73が後側支持部55の傾斜部56bによって下方から支持されている状態において、使用者が、係止部材60を下方へ押圧すると、突起部73が傾斜部56bに沿って斜め前下方へ移動する。そして、突起部73は、後側支持部55の前面57に沿って下方へと移動する。
【0096】
次に、本実施形態の作用について説明する。
車椅子90のサイドフレーム91にフック32を掛けた状態でワイヤ31を巻き取ることにより車両10のフロア部14上に車椅子90を固定することができる。このため、固定バーを備えていない車椅子であっても第1固定装置30によって車両10のフロア部14上に固定することができる。
【0097】
一方、固定バーを備える車椅子の場合には、使用者は、係止部材60の後部63が前部62よりも上方に位置する傾斜状態において、係止部材60の係合凹部66の下方に車椅子90の固定バー99を移動させる。そして、ロックバー75の係合部76にフック32が係合されている状態において巻取装置33によりワイヤ31を巻き取らせることによりロックバー75を後方に移動させる。ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75によって係止部材60が押圧されて下方に回動される。また、ロックバー75が所定位置に到達すると、係止部材60の回動が阻止される。これにより、係止部材60の係合凹部66にロックバー75が係合された係合状態が保持される。すなわち、車両10のフロア部14上に車椅子90が固定される。このように、固定バー99を備える車椅子90に対しては、第1固定装置30と第2固定装置50とによって車椅子90を車両10のフロア部14上に固定することができる。このため、ロックバー75を後方へ移動させる専用の駆動装置が不要となる。
【0098】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)第1固定装置30は、係合部76にフック32が係合されている状態において巻取装置33によりワイヤ31を巻き取ることによりロックバー75を後方に移動させるように構成されている。ロック機構77は、係止部材60の後部63が前部62よりも上方に位置する傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75によって係止部材60を押圧して下方に回動させるように構成されている。また、ロック機構77は、ロックバー75が所定位置に到達すると、係止部材60の回動を阻止するように構成されている。
【0099】
こうした構成によれば、上記効果を奏することから、構成が複雑になることを抑制しつつ、固定バーを備えている車椅子を車両10のフロア部14上に容易に固定することができる。また、固定バーを備えていない車椅子についても車両10のフロア部14上に固定することができる。
【0100】
(2)前側支持部51は、車幅方向Wに貫通するとともに、前後方向Lに延在する第1貫通孔53を有している。係止部材60の前部62は、車幅方向Wに貫通するとともに、前後方向Lに延在する第2貫通孔65を有している。ロックバー75は、第1貫通孔53及び第2貫通孔65に挿通されるとともに、第1貫通孔53及び第2貫通孔65により前後方向Lに移動可能に支持されている。ロック機構77は、傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75により第2貫通孔65の下縁65aを押圧して係止部材60を下方に回動させるように構成されている。また、ロック機構77は、ロックバー75が所定位置に到達すると、ロックバー75を第2貫通孔65の下縁65aと第1貫通孔53の上縁53aとの双方に接触させることにより係止部材60の回動を阻止するように構成されている。
【0101】
こうした構成によれば、傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75により第2貫通孔65の下縁65aが押圧されることで係止部材60が下方に回動される。また、ロックバー75が所定位置に到達すると、ロックバー75が第2貫通孔65の下縁65aと第1貫通孔53の上縁53aとの双方に接触することで係止部材60の回動が阻止される。このように前側支持部51の第1貫通孔53及び係止部材60の第2貫通孔65によってロック機構77を容易に具現化することができる。
【0102】
(3)操作部材80は、操作部材80の前方への移動に伴い係止部材60を前方に向けて押圧することによって、係止部材60がフロア部14に沿う倒伏状態から傾斜状態へ係止部材60を上方に回動させるように構成されている。また、操作部材80は、ロックバー75を前方に移動させるように構成されている。
【0103】
こうした構成によれば、操作部材80が前方に移動されて係止部材60を前方に向けて押圧することによって、係止部材60が倒伏状態から傾斜状態に回動されるとともにロックバー75が前方に移動されるようになる。これにより、係止部材60の係合凹部66にロックバー75が係合された状態を解除することができる。
【0104】
(4)係止部材60は、当接部67を有している。操作部材80は、後側ほど上側に位置するように傾斜した傾斜面部85を有している。操作部材80の前方への移動に伴って当接部67が傾斜面部85に沿って上方に移動するとともに係止部材60が上方に回動されるように構成されている。
【0105】
こうした構成によれば、操作部材80が前方に移動されることに伴い係止部材60の当接部67が傾斜面部85に当接するとともに、当接部67が傾斜面部85に沿って上方に移動することで、係止部材60が上方に回動するようになる。このようにして、係止部材60を倒伏状態から傾斜状態へ容易に回動させることができる。
【0106】
(5)操作部材80は、前後方向Lに移動可能な操作部材本体81と、操作部材本体81を後方に向けて常時付勢する付勢部材82とを有している。
こうした構成によれば、操作部材本体81が付勢部材82によって後方に向けて常時付勢されている。このため、操作部材本体81が操作されていないときには、操作部材本体81が自動的に後方の初期位置へ復帰されるようになる。
【0107】
(6)第2固定装置50は、フロア部14上に設けられた後側支持部55を有している。係止部材60は、係止部材本体61と、係止部材本体61の後部63において車幅方向Wに延びる軸線A2を中心に揺動可能に支持されたカム70とを有している。係止部材60が傾斜状態であるときに、カム70が後側支持部55によって下方から支持されることで係止部材60の下方への回動が規制されるように構成されている。
【0108】
こうした構成によれば、操作部材本体81が前方に移動されており、係止部材60が傾斜状態であるときに、使用者が操作部材本体81から足を離してもカム70が後側支持部55によって下方から支持される。このため、後側支持部55によって、係止部材60の下方への回動が規制されるようになる。すなわち、係止部材60の傾斜状態が保持されるようになる。これにより、使用者が操作部材本体81を前方に移動させた状態で操作部材本体81から足を離すことができるようになる。したがって、操作部材80の操作を容易に行うことができる。
【0109】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0110】
・例えば使用者が操作部材80を前方に移動させた状態のまま操作部材80を保持するのであれば、カム70及び後側支持部55を省略することもできる。この場合、操作部材本体81を後方に付勢する付勢部材82を省略することもできる。
【0111】
・当接部67のローラー67bを省略することもできる。この場合、軸部67a自体を操作部材80の傾斜面部85に当接させるようにしてもよい。
・操作部材は、傾斜面部85を備えるものに限定されない。例えば、使用者の操作によって、ワイヤによって係止部材60を倒伏状態から傾斜状態へ上方に持ち上げることで回動させるものであってもよい。
【0112】
・上記実施形態では、ロック機構77が、傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75により第2貫通孔65の下縁65aを押圧して係止部材60を下方に回動させるものについて例示した。しかしながら、ロック機構の構成は、これに限定されない。ロック機構の構成は、傾斜状態において、ロックバー75が所定位置よりも前方に位置するときには、後方へ移動するロックバー75によって係止部材60を押圧して下方に回動させるものであれば、その構成を適宜変更してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、ロックバー75が所定位置に到達すると、ロックバー75を第2貫通孔65の下縁65aと第1貫通孔53の上縁53aとの双方に接触させることにより係止部材60の回動を阻止するものについて例示した。しかしながら、ロック機構の構成は、これに限定されず、ロックバー75が所定位置に到達すると、係止部材60の回動を阻止するものであれば、その構成を適宜変更してもよい。
【0114】
・係合部76の位置は、車幅方向Wにおけるロックバー75の両端に限定されない。車幅方向Wにおけるロックバー75の両端部よりも内側に係合部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…車両
10A…車体フロア
11…背面
11a…開口
12…バックドア
13…リフト装置
14…フロア部
15…アーム部
16…操作タワー
17…固定スイッチ
18…解除スイッチ
20…車椅子固定装置
21…収容凹部
21a…上部開口
21b…底面
22…ベースカバー
22a…ボルト
22b…透孔
22c…ガイド軸
22d…ガイド軸
22e,22f…スリット
30…第1固定装置
31…ワイヤ
32…フック
33…巻取装置
34…回転軸
35…リール
36a,36b…滑車
37…保持機構
38…歯車
39…ラック
39a…ラック歯
39b…ガイド孔
40…駆動部
41…モータ
42…減速ギア
43…リンク
50…第2固定装置
51…前側支持部
51A…内側支持部
51B…外側支持部
52…支持孔
53…第1貫通孔
53a…上縁
54…連結部材
55…後側支持部
56…上面
56a…平部
56b…傾斜部
57…前面
60…係止部材
61…係止部材本体
62…前部
62a…支持孔
63…後部
64…中間部
64a…切欠
65…第2貫通孔
65a…下縁
66…係合凹部
67…当接部
67a…軸部
67b…ローラー
68…ガイド軸
69…支持軸
70…カム
71…カム本体
71a…ガイド孔
71b…重なり合う部位
72…軸部
73…突起部
74…ばね
75…ロックバー
76…係合部
77…ロック機構
80…操作部材
81…操作部材本体
81a…ガイド孔
82…付勢部材
83…ローラー
84…操作部
85…傾斜面部
86…上面部
87…押圧部
87a…第1部分
87b…第2部分
88…連結部
90…車椅子
91…サイドフレーム
92…前柱
93…後柱
94…座部
95…前輪
96…後輪
97…フォーク
98…連結部材
99…固定バー