(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004278
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】降車支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105876
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 博
(72)【発明者】
【氏名】石田 正穂
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏次
(72)【発明者】
【氏名】征矢 竜一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA14
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL07
5H181MA20
(57)【要約】
【課題】 降車支援制御の不要作動を抑制する。
【解決手段】 降車支援装置は、自車両の後方に存在する物標に関する物標情報を取得する物標情報取得装置12と、停車中に物標情報に基づいて物標が自車両に接触又は最接近するまでに要すると予測される予測時間を演算し、当該予測時間が所定の時間閾値以下の場合に自車両の乗員の安全な降車を支援する降車支援制御を実行可能な制御ユニット10と、を備える。制御ユニット10は、検出された物標の速度が所定の第1速度以下の場合は時間閾値を所定の第1時間閾値に設定し、検出された物標の速度が第1速度より大きい場合は時間閾値を第1時間閾値よりも小さい値に設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後方に存在する物標を検出し、前記検出された物標に関する情報を物標情報として取得する物標情報取得装置と、
停車中に前記物標情報に基づいて前記物標が前記自車両に接触又は最接近するまでに要すると予測される予測時間を演算し、
前記予測時間が所定の時間閾値以下の場合に前記自車両の乗員の安全な降車を支援する降車支援制御を実行可能な制御ユニットと、
を備えた降車支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記検出された物標の速度が所定の第1速度以下の場合は前記時間閾値を所定の第1時間閾値に設定し、前記検出された物標の速度が前記第1速度より大きい場合は前記時間閾値を前記第1時間閾値よりも小さい値に設定する、
ように構成された、
降車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の降車支援装置において、
前記第1速度は、道路を走行する自転車の速度分布に基づいて設定されており、
前記第1時間閾値は、所定の第1速度範囲における自転車の回避可能限界時間に基づいて設定されている、
降車支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の降車支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記検出された物標の速度が前記第1速度よりも大きい所定の第2速度を超えている場合、前記時間閾値を前記第1時間閾値よりも小さい所定の第2時間閾値に設定する、
ように構成された、
降車支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の降車支援装置において、
前記第2速度は、道路を走行する自転車以外の車両の速度分布に基づいて設定されており、
前記第2時間閾値は、所定の第2速度範囲における自転車以外の車両の回避可能限界時間に基づいて設定されている、
降車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降車支援制御の不要作動を抑制することが可能な降車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両(典型的には、自動車)の乗員の安全な降車を支援する降車支援制御を実行可能な降車支援装置が知られている。降車支援装置は、例えば、停車中に乗員の安全な降車を阻害する(別言すれば、車両の側方を通過する)可能性がある阻害物標が検出された場合において乗員の降車意図(典型的には、乗員によるドアの開放操作)が検出されたときに降車支援制御を実行するように構成されている(特許文献1参照。)。以下では、降車支援装置が搭載された車両を「自車両」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
降車支援装置は、阻害物標を以下のようにして検出する。即ち、降車支援装置は、自車両の後方に存在する物標を検出して当該物標に関する情報を物標情報として取得可能な物標情報取得装置(例えば、レーダセンサ)を備えており、この物標情報取得装置から得られた物標情報に基づいて物標が自車両に接触又は最接近するまでに要すると予測される予測時間(衝突予測時間(Time To Collision)。以下、「TTC」とも称する。)を演算する。そして、TTCが予め設定された時間閾値TTCth以下の場合、当該物標は乗員の安全な降車を阻害する可能性があると判定して阻害物標として検出する。
【0005】
TTCthは、物標の停止時間に基づいて決定される。停止時間とは、物標の運転者が危険を察知した時点(例えば、車両の乗員の降車行為を認識した時点)から、制動を開始して(ブレーキをかけ始めて)物標が停止する時点まで、の時間であり、別言すれば、空走時間と制動時間との和である。或る物標のTTCが当該物標の停止時間より大きい場合、当該物標が乗員の安全な降車を阻害する可能性は低い。このため、停止時間は、車両との接触又は最接近を回避することが可能な時間の限界値ということもできる。従って、以下では、停止時間を「回避可能限界時間」とも称する。TTCthを回避可能限界時間(停止時間)に基づいて決定することにより、自車両との接触又は最接近を制動により回避可能な物標については不要な降車支援制御が実行されないようにしている。
【0006】
回避可能限界時間は、物標の種類によって相違する。阻害物標の対象となり得る典型的な車両である自動車、自動二輪車、原動機付自転車、及び、自転車の中では、自転車が最も長い回避可能限界時間を有し、その他の車両の間ではそれほど大差がない。このため、通常、TTCthは、最も大きい値を有する自転車の回避可能限界時間に基づいて決定される。
【0007】
この構成によれば、物標が自転車の場合には適切なタイミングで降車支援制御を実行することができる。しかしながら、物標がその他の車両(即ち、自動車、自動二輪車、及び、原動機付自転車)の場合には、これらの車両の回避可能限界時間よりもかなり大きい値がTTCthとして設定されることになる。このため、これらの車両のTTCが回避可能限界時間よりも十分に大きい(別言すれば、この時点で運転者が危険を察知して制動を開始すれば自車両との接触又は最接近を十分に回避し得る)場合であっても、当該TTCがTTCth以下のときは、これらの車両は阻害物標として検出されて降車支援制御が実行されてしまう。このように、TTCthを自転車の回避可能限界時間に基づいて決定する構成では、自転車以外の車両については、実際に降車支援制御の実行が必要なタイミングよりもかなり早いタイミングで当該制御が実行されてしまうという点で、不要な降車支援制御が実行されるという問題が生じ得る。
【0008】
また、TTCthが自転車以外の車両の回避可能限界時間よりも大きい値に設定されている場合、別の理由によっても降車支援制御の不要作動の問題が生じ得る。即ち、上述したように、降車支援装置は、物標のTTCを演算するが、この演算処理は、物標情報取得装置によって検出された物標のうち、物標が将来的に自車両の側方付近を通過する可能性がある物標についてのみ行われるようになっている。具体的には、降車支援装置は、検出された各物標の移動方向を物標情報に基づいて演算し、当該移動方向の延長線が自車両の側方付近を通過する場合に当該物標のTTCを演算する。
【0009】
ここで、現状の物標情報取得装置の性能では遠方の物標の検出精度に限界があるため、遠方に位置する物標については物標情報に誤差が含まれ易くなり、その結果、移動方向の演算結果に誤差が生じ易くなる。一般に、自転車以外の車両は自転車よりも高速で走行するため、自転車以外の車両が自車両に対して後方遠方に位置している場合、これらの車両の移動方向の演算結果には誤差が生じ易くなり、その結果、移動方向の延長線が自車両の側方付近を通過してしまい、実際にはTTCの演算対象ではない(即ち、将来的に自車両の側方付近を通過する可能性はない)にも関わらず、TTCが演算されてしまう場合がある。このような場合においてTTCthが比較的に大きい値に設定されていると、TTC≦TTCthが容易に成立してしまい、自転車以外の車両が阻害物標として誤検出される可能性が高くなり、不要な降車支援制御が実行されるという問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、降車支援制御の不要作動を抑制することが可能な降車支援装置を提供することにある。
【0011】
本発明による降車支援装置(以下、「本発明装置」と称する。)は、
自車両の後方に存在する物標を検出し、前記検出された物標に関する情報を物標情報として取得する物標情報取得装置(12)と、
停車中に前記物標情報に基づいて前記物標が前記自車両に接触又は最接近するまでに要すると予測される予測時間(TTC)を演算し、
前記予測時間(TTC)が所定の時間閾値(TTCth)以下の場合に前記自車両の乗員の安全な降車を支援する降車支援制御を実行可能な制御ユニット(10)と、
を備える。
前記制御ユニット(10)は、
前記検出された物標の速度(v)が所定の第1速度(v1)以下の場合は前記時間閾値(TTCth)を所定の第1時間閾値(TTCth1)に設定し、前記検出された物標の速度(v)が前記第1速度(v1)より大きい場合は前記時間閾値(TTCth)を前記第1時間閾値(TTCth1)よりも小さい値に設定する、
ように構成されている。
【0012】
本発明装置では、物標情報取得装置によって検出された物標の速度が第1速度以下の場合は時間閾値(降車支援制御の実行要否を判定するために用いられる予測時間の時間閾値)を第1時間閾値に設定し、当該物標の速度が第1速度より大きい場合は時間閾値を第1時間閾値よりも小さい値に設定する。
一般に、自転車以外の車両(典型的には、自動車、自動二輪車、及び、原動機付自転車)の回避可能限界時間(停止時間)は、自転車の回避可能限界時間よりも短い。また、或る物標の速度が所定の速度閾値を超えると、当該物標が自転車である可能性が極めて低くなる。このため、第1速度を適切な値(例えば、上記速度閾値)に設定することにより、物標が自転車以外の車両である場合における時間閾値を、そうでない場合における時間閾値よりも小さい値にすることが可能となる。この構成によれば、時間閾値を自転車の回避可能限界時間に基づいて一律に決定する構成と比較して、物標が自転車以外の車両である場合における降車支援制御の開始タイミングを適切なタイミングまで遅らせることが可能となり、結果として、当該制御の開始タイミングが早過ぎることに起因した不要作動、及び、物標情報取得装置の性能に起因した不要作動を何れも抑制することができる。
【0013】
この場合、
前記第1速度(v1)は、道路を走行する自転車の速度分布に基づいて設定されており、
前記第1時間閾値(TTCth1)は、所定の第1速度範囲における自転車の回避可能限界時間に基づいて設定されている。
【0014】
この構成によれば、第1速度及び第1時間閾値を適切な値に設定することができる。なお、第1速度範囲は、例えば、自転車が道路を走行する際の平均的な速度範囲である。
【0015】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(10)は、
前記検出された物標の速度(v)が前記第1速度(v1)よりも大きい所定の第2速度(v2)を超えている場合、前記時間閾値(TTCth)を前記第1時間閾値(TTCth1)よりも小さい所定の第2時間閾値(TTCth2)に設定する、
ように構成されている。
【0016】
この構成によれば、第2速度及び第2時間閾値を適切な値に設定することにより、物標が自転車以外の車両である場合における降車支援制御の不要作動を更に確実に抑制することができる。
【0017】
この場合、
前記第2速度(v2)は、道路を走行する自転車以外の車両の速度分布に基づいて設定されており、
前記第2時間閾値(TTCth2)は、所定の第2速度範囲における自転車以外の車両の回避可能限界時間に基づいて設定されている。
【0018】
この構成によれば、第2速度及び第2時間閾値を適切な値に設定することができる。なお、第2速度範囲は、例えば、自転車以外の車両が道路を走行する際の平均的な速度範囲である。
【0019】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る降車支援装置(本実施装置)の概略構成図である。
【
図2】本実施装置が備えるレーダセンサの立体物検出範囲を示す図であり、レーダセンサによって検出された物標のTTCの演算方法を説明するための図である。
【
図3】4種類の車両について速度と停止距離との関係を規定したグラフであり、回避可能限界時間について説明するためのグラフである。
【
図4】物標の速度vと時間閾値TTCthとの関係を規定したマップである。
【
図5】本実施装置の降車支援ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(構成)
以下、本発明の実施形態に係る降車支援装置(以下、「本実施装置」とも称する。)について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施装置は、降車支援ECU10、及び、これに接続された車速センサ11、レーダセンサ12、ドア開閉センサ13、サイドミラーインジケータ20、メーターパネル21、ブザー22、及び、スピーカ23を備える。降車支援ECU10は、マイクロコンピュータを主要部として備える。ECUは、Electronic Control Unitの略である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びインターフェース(I/F)等を含み、CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。以下では、本実施装置が搭載された車両を「自車両」と称する。
【0022】
降車支援ECU10は、上記センサ11乃至13が発生又は出力する信号を所定の時間が経過する毎に取得し、取得した信号に基づいて要素(装置)20乃至23を制御するように構成されている。以下では、降車支援ECU10を、単に「ECU10」とも称する。
【0023】
車速センサ11は、自車両の走行速度(以下、「車速」と称する。)に応じた信号を発生する。ECU10は、車速センサ11が発生した信号を取得し、当該信号に基づいて車速を演算する。車速がゼロの場合、ECU10は、自車両が停止状態にある(以下、「停車中」とも称する。)と判定する。
【0024】
レーダセンサ12(物標情報取得装置)は、自車両の後方(真後ろ及び後側方)に存在する立体物(物標)に関する情報を取得する機能を有している。立体物は、車両及び歩行者等の移動物である。車両は、自動車、自動二輪車、原動機付自転車、及び、自転車を含む。
【0025】
図2に示すように、レーダセンサ12は、自車両Vのリアバンパー(図示省略)の左角部に設けられた左レーダセンサ12Lと、自車両Vのリアバンパーの右角部に設けられた右レーダセンサ12Rと、を含む。レーダセンサ12は、ミリ波帯の電波を自車両の周囲に照射する。具体的には、左レーダセンサ12Lは、自車両の左後方の左側領域RLを含む範囲に電波を照射し、右レーダセンサ12Rは、自車両の右後方の右側領域RRを含む範囲に電波を照射する。左側領域RL及び右側領域RRは、何れも自車両Vから後方に離間するにつれて車幅外側方向及び車幅内側方向に長くなる形状となっている。なお、
図2では、便宜上、領域RL及びRRの自車両Vに対する比率等は変更して図示されている。
【0026】
レーダセンサ12は、立体物が電波の照射範囲内に存在する場合、その立体物からの反射波を受信する。レーダセンサ12は、電波の照射タイミングと受信タイミングと等に基づいて、立体物の有無、及び、自車両と立体物との相対関係(自車両から立体物までの距離、自車両に対する立体物の方位、及び、自車両に対する立体物の相対速度等)を演算する。別言すれば、レーダセンサ12は、自車両の後方に存在する立体物を検出する。以下では、レーダセンサ12によって検出された立体物(即ち、領域RL又はRRに存在する立体物)を「物標」とも称する。レーダセンサ12は、物標に関するこれらの情報を物標情報としてECU10に出力する。
【0027】
なお、レーダセンサ12の個数は、レーダセンサ12が領域RL及びRRに相当する領域を含む範囲に電波を照射可能であれば、2つに限られず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。レーダセンサ12が1つの場合、当該センサ12は、例えば、自車両Vのリアバンパーの略中央に設置され得る。
また、物標情報を取得するセンサはレーダセンサ12に限られない。例えば、レーダセンサ12に代えて、又は、加えて、レーザーレーダセンサ、超音波センサ、及び/又は、カメラセンサ等が用いられてもよい。或いは、レーダセンサ12として、ブラインドスポットモニタ制御に使用されるセンサが使用されてもよい。ブラインドスポットモニタ制御は、後方から自車両に接近する車両(特に、サイドミラーでは確認し難い領域に存在する車両)を検出した場合に自車両の運転者に注意喚起する制御である。
【0028】
図1に戻って説明を続ける。ドア開閉センサ13は、自車両が有する複数のドア(より詳細には、サイドドア)のそれぞれに設けられている。ドア開閉センサ13は、ドアの開閉状態を検出する。ドア開閉センサ13は、ドアが開状態にあることを検出した場合、開状態が検出されている期間中、当該ドアが開状態にあることを示す開信号を発生する。ドア開閉センサ13は、ドアが閉状態にあることを検出した場合、閉状態が検出されている期間中、当該ドアが閉状態にあることを示す閉信号を発生する。ECU10は、これらのドア開閉センサ13のそれぞれが開信号及び閉信号の何れを発生しているかを検出し、その検出結果に基づいて、そのドア開閉センサ13に対応するドアが開状態であるのか閉状態であるのかを検出する。
【0029】
サイドミラーインジケータ20は、自車両の左右のサイドミラーのそれぞれの所定の位置に設けられており、互いに独立して点灯したり消灯したりすることができる。メーターパネル21は、自車両の運転席の正面(運転者が視認可能な位置)に設けられている。ブザー22は、メーターパネル21に内蔵されている。スピーカ23は、ナビゲーションシステム(図示省略)の構成要素であり、図示しないタッチパネルディスプレイの近傍に設けられている。
【0030】
(作動の詳細)
次に、ECU10の作動の詳細について説明する。本実施形態では、ECU10は、降車支援制御として警報制御(後述)を実行する。警報制御は、警報条件が成立している場合に実行される。警報条件は、以下の条件1乃至条件3の全てが成立している場合に成立する。
【0031】
(条件1)自車両が停止状態にある。
(条件2)阻害物標が検出されている。
(条件3)自車両のドアが開状態である。
【0032】
まず、条件1について説明する。ECU10は、車速センサ11から取得される車速がゼロの場合、条件1が成立していると判定する。
【0033】
次に、条件2について説明する。阻害物標は、自車両の乗員の安全な降車を阻害する(別言すれば、自車両の側方を通過する)可能性がある物標であり、典型的には、自車両に後方から接近する移動物である。ECU10は、以下のようにして阻害物標を検出する。即ち、ECU10は、レーダセンサ12から取得される物標情報に基づいて左側領域RL又は右側領域RRに物標が存在すると判定した場合、当該物標が自車両に接触又は最接近するまでに要すると予測される予測時間(TTC)を演算する。TTCが所定の時間閾値TTCth以下である場合、ECU10は、当該物標を阻害物標として検出し、条件2が成立していると判定する。
【0034】
図2を参照してより詳細に説明する。
図2は、他車両Vt(本例では、自動車)が自車両Vに後方から接近している様子を示す。
図2に示すように、ECU10は、自車両Vが停止状態にある場合(即ち、条件1が成立している場合)、自車両Vのリアバンパーの左右の角部の中央を原点としたxy座標系を設定する。x軸は自車両Vの前後方向に延びており、y軸は自車両Vの車幅方向(左右方向)に延びている。即ち、y軸は、リアバンパーの左右の角部を通過する軸ということもできる。
【0035】
加えて、ECU10は、自車両Vが停止状態にある場合、自車両Vに交差判定線Lを設定する。交差判定線Lは、TTCを演算するために設定される仮想線であり、左側交差判定線LLと、右側交差判定線LRと、を含む。左側交差判定線LLは、リアバンパーの左角部からy軸上を-y軸方向(車幅外側方向)に延びており、右側交差判定線LRは、リアバンパーの右角部からy軸上を+y軸方向(車幅外側方向)に延びている。左右の交差判定線LL及びLRの長さは互いに同一(例えば、約1.3[m])であり、本実施形態では、リアバンパーの左右の角部における領域RL、RRのy軸方向の長さに略等しい。なお、左右の交差判定線LL、LRの長さは、「自車両Vの乗員が降車している最中に物標がこれらの判定線LL、LR上の任意の位置を通過すると自車両Vのドア又は乗員と接触する可能性がある」程度の長さとなるように、実験又はシミュレーションにより予め設定されている。
【0036】
ECU10は、自車両Vが停止状態にある場合、物標情報に基づいて物標(
図2の例では、他車両Vt)の速度ベクトルAを演算し、その始点を、物標の近接部npに設定する。近接部npは、物標の前端部のうちy軸方向において自車両Vに最も近接している部分である。なお、速度ベクトルAは、例えば、物標の位置(距離及び方位)の時間微分により演算され得る。即ち、速度ベクトルAは、現時点における物標の移動方向を表す。
【0037】
ECU10は、物標の速度ベクトルAの延長線が左右の交差判定線LL、LRの何れか一方と交差する(別言すれば、当該延長線とy軸との交点Pが交差判定線L上に位置している)場合、「物標が交差判定線Lと交差するまでに要すると予測される時間(別言すれば、物標の速度ベクトルAの延長線と交差判定線Lとの交点Pに物標が到達するまでに要すると予測される時間)」をTTCとして演算する。TTCは、物標情報を用いて、例えば、「近接部npから上記交点Pまでの距離」を「物標の現時点の速度」で除算することにより演算され得る。
【0038】
物標が将来的に左側交差判定線LLと交差する場合のTTCがTTCth以下の場合、ECU10は、当該物標は乗員が左側のドアから安全に降車することを阻害する可能性があると判定し、当該物標を左側のドアに対する阻害物標として検出する。
一方、物標が将来的に右側交差判定線LRと交差する場合のTTCがTTCth以下の場合、ECU10は、当該物標は乗員が右側のドアから安全に降車することを阻害する可能性があると判定し、当該物標を右側のドアに対する阻害物標として検出する。
これらの場合、ECU10は、条件2が成立していると判定する。
【0039】
他方、物標が将来的に左右の交差判定線LL、LRの何れか一方と交差するものの、TTCがTTCthを超えている場合、ECU10は、当該物標は(現時点では)乗員の安全な降車を阻害する可能性はないと判定し、当該物標を阻害物標として検出しない。
これに対し、物標の速度ベクトルAの延長線が左右の交差判定線LL、LRの何れとも交差しない(別言すれば、当該延長線とy軸との交点Pが交差判定線L上に位置していない)場合、TTCは演算され得ず、従って、ECU10は、当該物標を阻害物標として検出しない。
これらの場合、ECU10は、条件2が成立していないと判定する。
【0040】
図2の例では、交点Pは、右側交差判定線LR上に位置している(即ち、他車両Vtは、将来的に右側交差判定線LRと交差する。)。このため、ECU10は、他車両VtについてTTCを演算し、TTCがTTCth以下の場合は他車両Vtを右側のドアに対する阻害物標として検出し、TTCがTTCthを超えている場合は他車両Vtを阻害物標として検出しない。
【0041】
続いて、条件3について説明する。ECU10は、ドア開閉センサ13から取得した信号に基づいて、阻害物標が検出された側のドアが開状態であると判定した場合、条件3が成立している(別言すれば、乗員に降車意図がある)と判定する。
【0042】
次いで、警報制御について説明する。ECU10は、警報条件が成立している場合、警報制御として以下の処理1乃至処理4を行う。
(処理1)阻害物標が検出された側のサイドミラーインジケータ20を点灯させる。
(処理2)メーターパネル21に所定のマーク(例えば、阻害物標が左後方又は右後方の何れの方向から接近しているのかを明示するマーク)を表示させる。
(処理3)ブザー22を鳴動させる。
(処理4)スピーカ23に所定のメッセージ(例えば、「接近車両にご注意下さい」とのメッセージ)を発話させる。
なお、警報制御として実行される処理は上記の処理に限られず、例えば、処理1乃至処理4の少なくとも1つが実行されるように構成されてもよい。
【0043】
ところで、TTCthには、通常、1種類の定数が用いられる。この定数は、物標の回避可能限界時間(停止時間)に基づいて決定され得るが、この決定方法によれば、特定の種類の物標について不要な警報制御が実行されてしまう可能性がある。
図3を参照して具体的に説明する。
図3は、阻害物標の対象となり得る典型的な4種類の物標(自動車、自動二輪車、原動機付自転車、及び、自転車)の速度と停止距離との関係を規定したグラフであり、公益財団法人交通事故総合分析センターのデータを出典としている。実線30乃至33は、自転車、原動機付自転車、自動二輪車、及び、自動車の挙動をそれぞれ表す。停止距離とは、物標の運転者が危険を察知した時点(例えば、車両の乗員の降車行為を認識した時点)から、制動を開始して物標が停止する時点まで、の時間に物標が移動する距離であり、別言すれば、空走距離と制動距離との和である。
【0044】
任意の或る速度における実線の接線の傾き(即ち、停止距離の速度微分値)は、当該実線に対応する物標の回避可能限界時間を表す。
図3のグラフによれば、自転車が平均的な速度(例えば、10~20[km/h])で走行しているときの回避可能限界時間は、自転車以外の車両の何れの速度における回避可能限界時間よりも長い。別言すれば、自転車が平均的な速度で走行しているときの停止距離は、自転車以外の車両の何れの速度における停止距離よりも長い。このため、TTCthは、通常、自転車の回避可能限界時間(即ち、最も大きい値を有する回避可能限界時間)に基づいて決定される。
【0045】
しかしながら、この決定方法によれば、自転車以外の車両については降車支援制御がかなり早いタイミングで開始されることになるため、不要な降車支援制御が実行されるという問題が生じ得る。加えて、現状のレーダセンサ12の性能(遠方の物標の検出精度に限界があること)に起因して自車両から後方遠方に位置する物標(即ち、自転車以外の車両)の移動方向の演算結果に誤差が生じ易くなる結果、実際には阻害物標には該当しない物標が阻害物標として誤検出されて不要な降車支援制御が実行されるという問題が生じ得る。
【0046】
そこで、上記のような降車支援制御の不要作動を抑制するために、自転車以外の車両については、「自転車の回避可能限界時間に基づいて決定されるTTCth」よりも小さい値を有するTTCthを設定することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、レーダセンサ12は物標の種類を判別可能には構成されていない。ここで、道路を走行する自転車の速度分布は、5[km/h]以下が1%、15[km/h]以下が54%、25[km/h]以下が42%、25[km/h]超が3%であることが知られている。即ち、25[km/h]以下の速度で走行する自転車が97%と大半を占めており、25[km/h]超の速度で走行する自転車は非常に少ない。これは、或る物標の速度が25[km/h]超である場合、当該物標が自転車である可能性が極めて低い(別言すれば、当該物標が自転車以外の車両である可能性が極めて高い)ことを意味している。
【0047】
以上より、本実施形態では、ECU10は、物標の速度に応じてTTCthを変更可能に構成されている。
図4を参照して具体的に説明する。
図4は、物標の速度vとTTCthとの関係を規定したマップであり、ECU10のROMに予め格納されている。
図4に示すように、TTCthは、物標の速度vが第1速度v1以下の場合(v≦v1)は第1時間閾値TTCth1に維持され、物標の速度vが第2速度v2(>v1)より大きい場合(v2<v)は第2時間閾値TTCth2(<TTCth1)に維持され、物標の速度vが第1速度v1より大きく第2速度v2以下の場合(v1<v≦v2)は、TTCth1からTTCth2に線形減少している。ECU10は、物標の速度を演算すると、
図4に示すマップを参照して物標の速度に対応する値を読み出し、当該値をTTCthに設定する。なお、ECU10は、車速センサ11から取得される車速と、物標情報に含まれる物標の相対速度と、に基づいて物標の速度を演算する。
【0048】
ここで、第1速度v1は、「物標がv1<vを満たす速度で走行している場合、当該物標が自転車である可能性が極めて低くなるような値」に設定される。別言すれば、第1速度v1は、「v1より大きい速度で道路を走行する自転車の割合が極めて小さくなるような値」に設定される。本実施形態では、第1速度v1は、v1より大きい速度で道路を走行する自転車の割合が3%となるような値、即ち、25[km/h]に設定される。また、TTCth1は、自転車が平均的な速度(例えば、10~20[km/h])で走行しているときの回避可能限界時間(即ち、
図3において自転車の平均的な速度における曲線30の接線の傾き)に基づいて設定される。上記の自転車の平均的な速度は、「第1速度範囲」の一例に相当する。なお、TTCth1は、自転車の他の速度範囲における回避可能限界時間に基づいて設定されてもよい。
【0049】
一方、TTCth2は、自転車以外の車両が平均的な速度(例えば、30~60[km/h])で走行しているときの回避可能限界時間(即ち、
図3において自転車以外の車両の平均的な速度における曲線31乃至33の接線の傾き)に基づいて設定される。なお、上記の自転車以外の車両の平均的な速度は、「第2速度範囲」の一例に相当する。
また、第2速度v2は、TTCthの急変に起因して動作が不安定になることを抑制するために導入されている。即ち、v≦v1のときはTTCthがTTCth1に設定され、v1<vのときはTTCthがTTCth2に設定される構成では、vがv1前後で変化するとTTCthが急変し、降車支援制御が停止と実行を繰り返して動作が不安定になるため、第2速度v2を導入してv1<v≦v2のときはTTCthが徐変(漸減)するようにしている。このため、第2速度v2は、第1速度v1より大きい任意の値に設定されることができ、例えば、自転車以外の車両の平均的な速度(例えば、30~60[km/h])から選択される任意の値に設定され得る。
【0050】
図4のマップによれば、ECU10は、物標の速度vが第1速度v1より大きいときのTTCthを、物標の速度vが第1速度v1以下のときのTTCth(=TTCth1)よりも小さい値に設定する。特に、物標の速度vが第2速度v2より大きいときは、TTCthをTTCth2に設定する。v1<vの場合、物標は自転車以外の車両である可能性が極めて高い。このため、本実施形態では、ECU10は、物標の速度に応じてTTCthを変更するように構成されているが、実質的には、物標の種類(「自転車」と「自転車以外の車両」)に応じてTTCthを変更しているということもできる。この構成によれば、物標が自転車以外の車両である可能性が極めて高い場合には、そうでない場合と比較して、TTCthが小さい値に変更される。このため、物標の種類に関わらずTTCthを自転車の回避可能限界時間に基づいて一律に決定する構成と比較して、物標が自転車以外の車両のときには降車支援制御の開始タイミングを適切なタイミングまで遅らせることが可能となり、結果として、当該制御の開始タイミングが早過ぎることに起因した不要作動、及び、レーダセンサ12の性能に起因した不要作動を何れも抑制することができる。
【0051】
(具体的作動)
続いて、ECU10の具体的作動について説明する。ECU10のCPUは、ECU10に電源が供給されている期間中(後述)、所定時間が経過する毎に
図5にフローチャートにより示したルーチンを繰り返し実行するように構成されている。
【0052】
所定のタイミングになると、CPUは、
図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、車速センサ11から取得した車速に基づいて自車両が停止状態にあるか否かを判定する(条件1)。自車両が走行状態にある場合、CPUは、ステップ510にて「No」と判定し(即ち、条件1が成立しない(警報条件が成立しない)と判定し)、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、自車両が停止状態にある場合、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定し(即ち、条件1が成立すると判定し)、ステップ520に進む。
【0053】
ステップ520では、CPUは、レーダセンサ12から取得した物標情報に基づいて物標が検出されたか否かを判定する。物標が検出されていない場合、CPUは、ステップ520にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、物標が検出された場合、CPUは、ステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ530に進む。
【0054】
ステップ530では、CPUは、検出された物標の速度ベクトルAを物標情報に基づいて演算し、速度ベクトルAの延長線が左右の交差判定線LL、LRの何れかと交差しているか否かを判定する。交差していない場合、CPUは、ステップ530にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、交差している場合、CPUは、ステップ530にて「Yes」と判定し、ステップ540に進む。
【0055】
ステップ540では、CPUは、検出された物標についてTTCを演算し、ステップ550に進む。
ステップ550では、CPUは、検出された物標の速度vを演算し、
図4に示すマップを参照して速度vに対応する値を読み出し、当該値をTTCthに設定する。即ち、物標の速度vに応じてTTCthを設定する。その後、CPUは、ステップ560に進む。
【0056】
ステップ560では、CPUは、検出された物標についてTTC≦TTCthが成立しているか否かを判定する(条件2)。TTC>TTCthである場合、CPUは、ステップ560にて「No」と判定し(即ち、条件2が成立しない(警報条件が成立しない)と判定し)、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、TTC≦TTCthである場合、CPUは、ステップ560にて「Yes」と判定し(即ち、条件2が成立する(物標は阻害物標である)と判定し)、ステップ570に進む。
【0057】
ステップ570では、CPUは、ドア開閉センサ13から取得した信号に基づいてドア(阻害物標が検出された側のドア)が開状態であるか否かを判定する。ドアが閉状態の場合、CPUは、ステップ570にて「No」と判定し(即ち、条件3が成立しない(警報条件が成立しない)と判定し)、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ドアが開状態の場合、CPUは、ステップ570にて「Yes」と判定し(即ち、条件3が成立する(警報条件が成立する)と判定し)、ステップ580に進んで警報制御(処理1乃至処理4)を実行する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
ECU10への電源供給は、イグニッションスイッチがオフされた後も所定の条件が成立するまで継続される。この条件は、例えば、ドアがロックされた時点で成立するように構成されてもよいし、自車両が停止してから所定の停車時間が経過した時点で成立するように構成されてもよい。この構成によれば、警報制御が必要な場面で当該制御が実行されないという可能性を低減でき、警報制御をより適切に実行できる。
【0059】
以上、本実施形態に係る降車支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、物標の速度vとTTCthとの関係を規定したマップは、
図4の構成に限られない。物標の速度vが第1速度v1より大きい場合は第1速度v1以下の場合と比較してTTCthが小さい値に設定される構成であれば、第2速度v2のような閾値は設定されなくてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では降車支援制御として警報制御が実行されたが、降車支援制御の種類はこれに限られない。例えば、ドアの開放の度合いを制限するドア開放制限制御、又は、ドアをロックするドアロック制御が降車支援制御として実行されてもよい。或いは、警報制御に加えてドア開放制限制御又はドアロック制御が降車支援制御として実行されてもよい。
【0062】
更に、上記実施形態では、条件2は、物標についてTTC≦TTCthが成立した時点で成立するが、条件2の成立要件はこれに限られない。例えば、物標についてTTC≦TTCthが所定の継続時間だけ継続した場合に条件2が成立するように構成されてもよい。また、条件3は、阻害物標が検出された側のドアが閉状態から開状態に変化した時点で成立するように構成されてもよい。或いは、条件3は、車内に設置されたカメラ(車内の乗員を撮像可能なカメラ)により撮像された画像データに基づいて乗員がドア操作部(典型的にはドアのインナーレバー)を操作している動作が検出された場合に成立するように構成されてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、警報条件は条件1乃至条件3の全てが成立した場合に成立するが、警報条件の成立要件はこれに限られない。例えば、警報条件は、条件3を含んでいなくてもよく、条件1及び条件2が成立した場合に成立するように構成されてもよい。別言すれば、警報制御は、乗員に降車意図があるか否かに関わらず実行されるように構成されてもよい。
【0064】
或いは、警報制御は、2段階で実行されてもよい。具体的には、警報制御は、2種類の制御、即ち、通常警報制御と軽度警報制御(通常警報制御よりも支援の程度が軽度な制御)を含む。軽度警報制御は、例えば、上述した処理1を実行する制御であり、通常警報制御は、例えば、処理1に加え、上述した処理2乃至処理4の少なくとも1つを実行する制御である。軽度警報制御は、条件1及び条件2が成立した場合(即ち、停車中に阻害物標が検出されたものの、ドアが閉状態である場合)に実行される。通常警報制御は、条件1及び条件2に加え、条件3が更に成立した場合(即ち、停車中に阻害物標が検出され且つドアが開状態の場合)に実行される。
ドアが閉状態の場合、乗員が当該ドアから降車しようとしているか否かを判別できない。別言すれば、乗員に降車意図はあるものの現時点では当該ドアを開けていないだけという可能性、及び、乗員に降車意図はなく当該ドアは引き続き閉状態に維持されるという可能性、の両方が考えられる。このため、当該ドアが閉状態の場合は軽度警報制御を実行することにより、「降車意図がある乗員には前もって阻害物標の存在を報知しておくこと」と、「降車意図がない乗員には通常警報制御が実行されることに起因した煩わしさを与えないこと」と、を両立させることができる。
なお、条件1乃至条件3が全て成立している場合、通常警報制御に代えて、上述したドア開放制限制御又はドアロック制御が降車支援制御として実行されてもよい。或いは、通常警報制御に加えて、ドア開放制限制御又はドアロック制御が降車支援制御として実行されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10:降車支援ECU、11:車速センサ、12:レーダセンサ、13:ドア開閉センサ、20:サイドミラーインジケータ、21:メーターパネル、22:ブザー、23:スピーカ