(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042812
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】粘着フィルム付きガスケット、その製造方法およびガスケット付き部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
F16J15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150161
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(74)【代理人】
【識別番号】100217892
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】島田 純一
(72)【発明者】
【氏名】白川 創平
(72)【発明者】
【氏名】上赤 功哉
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA12
3J040BA07
3J040EA16
3J040EA26
3J040EA27
3J040FA06
3J040HA01
3J040HA02
3J040HA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2つの平面状のシール面を備えるガスケットを金型を用いて成形する場合、加工後のガスケットが固定されていなくても、寸法測定等を行い易いガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット3は2つの平面状のシール面31、33を備え、これらのシール面が各々部材に密着し、部材間をシールする。ガスケットの一方のシール面に基材51の主面上に粘着層53が形成されている粘着フィルム5を形成し、ガスケットを粘着フィルムにより固定した粘着フィルム付きガスケット1とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの平面状のシール面を備えるガスケットと、粘着フィルムと、を有し、前記粘着フィルムの主面上に前記ガスケットの一方のシール面が密着している、粘着フィルム付きガスケット。
【請求項2】
粘着フィルムの主面にゴムシートの主面を密着させた後、カッティングプロッタを用いて前記ゴムシートをカットし、請求項1に記載の粘着フィルム付きガスケットを得る、粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
【請求項3】
前記ゴムシートを前記カッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときの前記カット刃の先端の軌道のうち、始点直後の軌道と終点直前の軌道とが交差している、請求項2に記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記粘着フィルムに位置決め用の孔が設けられている、請求項2または3に記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の粘着フィルム付きガスケット、または、請求項2~4のいずれかに記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法によって得られた粘着フィルム付きガスケットが有する前記ガスケットの他方のシール面に、部材Xに密着している接着層を押し付けた後、前記粘着フィルムを前記ガスケットの一方のシール面から剥離することで、前記ガスケットを前記部材Xに付ける、ガスケット付き部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着フィルム付きガスケット、その製造方法およびガスケット付き部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの平面状のシール面を備えるガスケット(以下、フラットガスケットともいう)を成形する場合、金型を用いた成形が一般的であった。しかし、金型の製作のコストが高いという問題があった。また、試作段階の場合、設計変更に基づく金型の追加工に時間がかかり、コストも高くなるという問題があった。
そこで、安価で簡単にフラットガスケットを作製する方法の一つとして、ゴムシートをカットしてガスケットを得る方法が考えられる。ここで、カットする方法としては、トムソン刃による打ち抜きやウォータージェット加工等が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、トムソン刃による打ち抜きやウォータージェット加工等によってゴムシートをカットしてガスケットを得る場合、ガスケットを製品形状に沿ってくり貫くため、加工後のガスケットが固定されておらず、寸法測定等を行い難いという課題があった。
【0004】
本発明は上記のような課題を解決する。すなわち、本発明は、2つの平面状のシール面を備えるガスケットが粘着フィルムに固定されているために寸法測定等を行い易い粘着フィルム付きガスケットおよびその製造方法、ならびにその粘着フィルム付きガスケットを用いてなるガスケット付き部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の(1)~(5)である。
(1)2つの平面状のシール面を備えるガスケットと、粘着フィルムと、を有し、前記粘着フィルムの主面上に前記ガスケットの一方のシール面が密着している、粘着フィルム付きガスケット。
(2)粘着フィルムの主面にゴムシートの主面を密着させた後、カッティングプロッタを用いて前記ゴムシートをカットし、上記(1)に記載の粘着フィルム付きガスケットを得る、粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
(3)前記ゴムシートを前記カッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときの前記カット刃の先端の軌道のうち、始点直後の軌道と終点直前の軌道とが交差している、上記(2)に記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
(4)前記粘着フィルムに位置決め用の孔が設けられている、上記(2)または(3)に記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法。
(5)上記(1)に記載の粘着フィルム付きガスケット、または、上記(2)~(4)のいずれかに記載の粘着フィルム付きガスケットの製造方法によって得られた粘着フィルム付きガスケットが有する前記ガスケットの他方のシール面に、部材Xに密着している接着層を押し付けた後、前記粘着フィルムを前記ガスケットの一方のシール面から剥離することで、前記ガスケットを前記部材Xに付ける、ガスケット付き部材の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2つの平面状のシール面を備えるガスケットが粘着フィルムに固定されているために寸法測定等を行い易い粘着フィルム付きガスケットおよびその製造方法、ならびにその粘着フィルム付きガスケットを用いてなるガスケット付き部材の製造方法が提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の粘着フィルム付きガスケットの主面を表す概略正面図である。
【
図2】
図1におけるA-A線断面図(概略断面図)である。
【
図3】粘着フィルムの主面にゴムシートの主面を密着させたものの主面を表す概略正面図である。
【
図4】
図3におけるB-B線断面図(概略断面図)である。
【
図5】
図4に示した断面図を拡大した図(概略拡大図)であって、カッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときのカット刃の先端の軌道のうち、始点S直後の軌道と終点E直前の軌道とを示したものである。
【
図6】
図5と同様の軌道を示しているが、
図5とは別の軌道を示している。
【
図7】本発明の粘着フィルム付きガスケットと、接着層が主面に付いた部材Xと対向させた状態を示す概略断面図である。
【
図8】本発明の粘着フィルム付きガスケットが有するガスケットの他方のシール面に、部材Xに密着している接着層を押し付けた状態を示す概略断面図である。
【
図9】粘着フィルムをガスケットの一方のシール面から剥離することで、ガスケットを部材Xに付けた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について説明する。
本発明は、2つの平面状のシール面を備えるガスケットと、粘着フィルムと、を有し、前記粘着フィルムの主面上に前記ガスケットの一方のシール面が密着している、粘着フィルム付きガスケットである。
このような粘着フィルム付きガスケットを、以下では「本発明の粘着フィルム付きガスケット」ともいう。
【0009】
また、本発明は、粘着フィルムの主面にゴムシートの主面を密着させた後、カッティングプロッタを用いて前記ゴムシートをカットし、本発明の粘着フィルム付きガスケットを得る、粘着フィルム付きガスケットの製造方法である。
このような粘着フィルム付きガスケットの製造方法を、以下では「本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法」ともいう。
【0010】
また、本発明は、本発明の粘着フィルム付きガスケット、または、本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法によって得られた粘着フィルム付きガスケットが有する前記ガスケットの他方のシール面に、部材Xに密着している接着層を押し付けた後、前記粘着フィルムを前記ガスケットの一方のシール面から剥離することで、前記ガスケットを前記部材Xに付ける、ガスケット付き部材の製造方法である。
このようなガスケット付き部材の製造方法を、以下では「本発明の部材の製造方法」ともいう。
【0011】
<本発明の粘着フィルム付きガスケット>
本発明の粘着フィルム付きガスケットについて図を用いて説明する。
以下に図に示す本発明の粘着フィルム付きガスケットは好適態様であって、本発明の粘着フィルム付きガスケットは図に示す態様に限定されない。
図1は本発明の粘着フィルム付きガスケット1の主面を表す概略正面図であり、
図2は
図1におけるA-A線断面図(概略断面図)である。
【0012】
図1、
図2において本発明の粘着フィルム付きガスケット1は、ガスケット3と粘着フィルム5とを有している。
【0013】
ガスケット3は、2つの平面状のシール面(31、33)を備えている。これらのシール面が各々部材に密着し、部材間をシールする。
図2に示す断面において2つのシール面(31、33)は互いに対向し、略平行となっている。
また、
図2に示すように、断面においてガスケット3は矩形であることが好ましい。
【0014】
また、
図1に示す正面図においてガスケット3の外周は概ね矩形を形成しているが、これに限定されず、例えば円形を形成していてもよい。
【0015】
ガスケット3の厚さは特に限定されない。例えば数十μm~10mmであってよく、1mm以下であることが好ましい。
なお、ガスケット3の厚さは、
図2に示すような断面をデジタル顕微鏡や万能投影機を用いて10~100倍に拡大して観察し、任意の箇所において測定して得た厚さを単純平均して求めた値とする。
以下において、ガスケット3以外の厚さについても、同様の方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0016】
ガスケット3の材質は特に限定されない。例えばゴム(シリコン、フッ素、EPDM、ブチル等)や樹脂(ポリオレフィン系、エステル系等)を用いることができる。
【0017】
ガスケット3のゴム硬度はHs20~60であることが好ましい。なお、ここでゴム硬度は、JIS K 6249に記載の方法で測定して得られる値を意味するものとする。
【0018】
ガスケット3は、例えば燃料電池用セルシールとして用いることができる。
【0019】
粘着フィルム5の主面の大きさは、
図1に示すように、その内側にガスケット3を含む大きさである。また、その形状は
図1に示すように矩形であってもよいが、その他の形状であってもよい。
【0020】
粘着フィルム5は、
図2に示すように、基材51の主面上に粘着層53が形成されている態様であることが好ましい。基材51や粘着層53の各々は、複数の層からなっていてもよい。
【0021】
基材51は、例えばポリエステルフィルムであってよい。
【0022】
基材51の厚さは特に限定されない。例えば20~200μmであってよい。
【0023】
粘着層53は、例えばアクリル系樹脂であってよい。
【0024】
粘着層53の厚さは特に限定されない。例えば2~40μmであってよい。
【0025】
本発明の粘着フィルム付きガスケット1では、粘着フィルム5における粘着層53の主面上にガスケット3の一方のシール面31が密着してなっている。
【0026】
<本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法>
次に、本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法について、図を用いて説明する。
前述の本発明の粘着フィルム付きガスケットは、以下に説明する本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法によって製造することが好ましい。
【0027】
図3は粘着フィルムの主面にゴムシートの主面を密着させたものの主面を表す概略正面図であり、
図4は
図3におけるB-B線断面図(概略断面図)である。
なお、
図3、
図4は好適態様を示しており、本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法は、図に示す態様に限定されない。
【0028】
図3、
図4において粘着フィルム5は、
図1、
図2を用いて説明した本発明の粘着フィルム付きガスケット1が有する粘着フィルム5と同様のものであってよい。
図3、
図4に示す粘着フィルム5は、
図1、
図2を用いて説明した本発明の粘着フィルム付きガスケット1が有する粘着フィルム5に、さらに位置決め用の孔55が設けられている態様である。粘着フィルム5が位置決め用の孔55を有すると、後述するカッティングプロッタによる処理を短時間で行いやすくなるという利点がある。
【0029】
本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法では、このような粘着フィルム5における粘着層53の主面にゴムシート7の主面を密着させる。
ゴムシート7は、前述のガスケット3と同様の材質、同様の厚さのものであってよい。
【0030】
本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法では、粘着フィルム5の主面にゴムシート7の主面を密着させた後、カッティングプロッタを用いてゴムシート7をカットする。例えば
図3に示した点線に沿ってゴムシート7をカットすれば、
図1、
図2に示した態様のガスケット3を得ることができる。
【0031】
カッティングプロッタは、例えば従来公知のものを用いることができる。
粘着フィルム5の主面にゴムシート7の主面を密着させたものをカッティングプロッタにセットするときに、粘着フィルム5が位置決め用の孔55を有すると、短時間で所定に位置にセットすることができる。
予めカッティングプロッタにカット軌道のデータを入力しておけば、所望の形状(例えば
図3に点線で示す形状)にゴムシート7をカットすることができる。
【0032】
ここでゴムシート7をカッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときのカット刃の先端の軌道のうち、始点直後の軌道と終点直前の軌道とが交差していることが好ましい。
これについて
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、
図4に示した断面図を拡大した図(概略拡大図)の中に、カッティングプロッタのカット刃の先端の軌道を記入したものである。なお、
図5ではカッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときのカット刃の先端の軌道のうち、始点S直後の軌道と終点E直前の軌道とを示している。
図6は
図5と同様の軌道を示しているが、
図5とは別の軌道を示している。
【0033】
図5、
図6に示すように、カッティングプロッタのカット刃を用いてカットするときのカット刃の先端の軌道のうち、始点S直後の軌道と終点E直前の軌道とは交差していることが好ましい。この場合、始点Sと終点Eとが一致していなくてもバリが形成され難いからである。
【0034】
このようにして、粘着フィルム5の主面にゴムシート7の主面を密着させた後、カッティングプロッタを用いてゴムシート7をカットし、本発明の粘着フィルム付きガスケット1を得ることができる。
【0035】
<本発明の部材の製造方法>
次に、本発明の部材の製造方法について図を用いて説明する。
以下に示す図は好適態様を示しており、本発明の部材の製造方法は図に示す態様に限定されない。
図7は本発明の粘着フィルム付きガスケット1と、接着層9が主面に付いた部材Xと対向させた状態を示す概略断面図である。ここで本発明の粘着フィルム付きガスケット1は
図2と同一の図となっている。また、
図8は本発明の粘着フィルム付きガスケット1が有するガスケット3の他方のシール面33に、部材Xに密着している接着層9を押し付けた状態を示す概略断面図である。さらに、
図9は、粘着フィルム5をガスケット3の一方のシール面31から剥離することで、ガスケット3を部材Xに付けた状態を示す概略断面図である。
【0036】
部材Xは特に限定されず、例えば燃料電池のセパレータであってよい。
【0037】
接着層9は、粘着フィルム5が有する粘着層53よりも、ガスケット3に対する粘着力が高いものであることが好ましい。
接着層9を熱硬化、常温硬化、UV硬化させることで、ガスケット3を接着層9の表面に固定することもできる。
【0038】
本発明の部材の製造方法では、
図7に示すように、本発明の粘着フィルム付きガスケット1(本発明の粘着フィルム付きガスケットの製造方法によって得られた粘着フィルム付きガスケットであってもよい)と、接着層9が主面に付いた部材Xとを用意する。
そして、これらを対向させ、
図8に示すように、本発明の粘着フィルム付きガスケット1が有するガスケット3の他方のシール面33に、部材Xに密着している接着層9を押し付ける。これによって、接着層9を介して、ガスケット3を部材Xの主面に接着する。
次に、
図9に示すように、粘着フィルム5をガスケット3の一方のシール面31から剥離する。これによって、ガスケット3を部材Xに正確かつ容易に付けることができる。ガスケット3が粘着フィルム5についていない場合、それを部材Xの主面の所望の位置に正確に付けることは困難である。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明の粘着フィルム付きガスケット
3 ガスケット
31 一方のシール面
33 他方のシール面
5 粘着フィルム
51 基材
53 粘着層
55 孔
7 ゴムシート
9 接着層