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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042832
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】塗装装置および塗装方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/08 20060101AFI20230320BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230320BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230320BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20230320BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230320BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
E04F21/08 A
E04G23/02 A
B05D7/00 L
B05D1/02 Z
B05D3/00 B
B05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150194
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】堀込 克哉
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 義幸
(72)【発明者】
【氏名】忠田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】瀧山 洋平
【テーマコード(参考)】
2E176
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB03
4D075AA01
4D075AA71
4D075AA76
4D075DC05
4F035AA03
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD02
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】仮設足場を設けずに高所の塗装を行うことができる塗装装置および塗装方法を提供する。
【解決手段】内壁面11(構造物の内部)を塗装する塗装装置1において、構造物の床部12に設置される基部2と、基部2の上に設けられ上下方向に伸縮可能とされた支柱部3と、支柱部3の上端部3aに設けられ、支柱部3が構造物の天井13に向かって伸ばされることにより、天井13に押し付けられる押付部4と、支柱部3に沿って昇降し内壁面11に塗装材を吐出する塗装部5と、塗装部5を昇降させる昇降部6と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の内部を塗装する塗装装置において、
前記構造物の床部に設置される基部と、
前記基部の上に設けられ上下方向に伸縮可能とされた支柱部と、
前記支柱部の上端部に設けられ、前記支柱部が前記構造物の天井に向かって伸ばされることにより、前記天井に押し付けられる押付部と、
前記支柱部に沿って昇降し所定の高さにおいて前記構造物の内部を塗装する塗装部と、
前記塗装部を昇降させる昇降部と、を有する塗装装置。
【請求項2】
前記昇降部は、
前記支柱部の上端部に設けられた滑車と、
前記基部に設けられたリールと、
前記リールに一端が接続され、前記滑車に巻き掛けられて前記リールによって巻き出し、巻取りがされるワイヤと、
前記ワイヤの他端に固定され、前記ワイヤの巻き出し、巻取りによって昇降する、塗装部を支持する塗装支持部と、を有する請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗装支持部は、前記支柱部に移動を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記支柱部が上下方向に相対移動可能に挿通される筒状部と、前記筒状部の内周面に取り付けられ空気を注入されると膨張する袋体と、を有し、
前記袋体は、膨張して前記支柱部の外周面と接触すると、前記支柱部との上下方向の相対移動が規制される請求項2に記載の塗装装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗装装置を用いて前記構造物の内部を塗装する塗装方法において、
前記支柱部を伸ばすことにより前記押付部を前記天井に押し付け、前記塗装装置を前記床部と前記天井との間で突っ張った状態に設置する塗装装置設置工程と、
前記塗装部を昇降させて所定の高さに配置する昇降工程と、
前記所定の高さに配置された前記塗装部で前記構造物の内部を塗装する塗装工程と、を有する塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置および塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、構造物の外壁や内壁などの高所の塗装工事では、仮設足場を設置して作業を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-66697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高所の塗装を行う場合、塗装箇所が狭隘部に設けられていたり、塗装箇所の近傍に干渉物があったりすると、仮設足場を設置するスペースを確保できず、塗装工事が困難となることがある。
【0005】
そこで、本発明は、仮設足場を設けずに高所の塗装を行うことができる塗装装置および塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る塗装装置は、構造物の内部を塗装する塗装装置において、前記構造物の床部に設置される基部と、前記基部の上に設けられ上下方向に伸縮可能とされた支柱部と、前記支柱部の上端部に設けられ、前記支柱部が前記構造物の天井に向かって伸ばされることにより、前記天井に押し付けられる押付部と、前記支柱部に沿って昇降し所定の高さにおいて前記構造物の内部を塗装する塗装部と、前記塗装部を昇降させる昇降部と、を有する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る塗装方法は、上記の塗装装置を用いて前記構造物の内部を塗装する塗装方法において、前記支柱部を伸ばすことにより前記押付部を前記天井に押し付け、前記塗装装置を前記床部と前記天井との間で突っ張った状態に設置する塗装装置設置工程と、前記塗装部を昇降させて所定の高さに配置する昇降工程と、前記所定の高さに配置された前記塗装部で前記構造物の内部を塗装する塗装工程と、を有する。
【0008】
本発明では、支柱部を伸ばすことにより押付部を上方の天井に押し付け、塗装装置を床部と天井との間で突っ張った状態に設置することにより、塗装装置を床部と天井との間に固定することができる。この状態で塗装を行う塗装部を昇降させることができるため、塗装部を床部の高さから天井の高さまで昇降させて構造物の内部を塗装することができる。これにより、仮設足場を設けずに高所の塗装を行うことができる。その結果、塗装箇所が狭隘部に設けられていたり、塗装箇所の近傍に干渉物があったりして仮設足場の設置が困難な場合でも、塗装箇所(構造物の内部)の塗装を行うことができる。また、仮設足場の設置にかかる費用や工期を削減することができる。
【0009】
また、本発明に係る塗装装置では、前記昇降部は、前記支柱部の上端部に設けられた滑車と、前記基部に設けられたリールと、前記リールに一端が接続され、前記滑車に巻き掛けられて前記リールによって巻き出し、巻取りがされるワイヤと、前記ワイヤの他端に固定され、前記ワイヤの巻き出し、巻取りによって昇降する、塗装部を支持する塗装支持部と、を有していてもよい。
【0010】
このような構成とすることにより、簡便な構造で塗装部の昇降を行うことができるとともに、支柱部の高さが異なる場合でも塗装部の昇降を同様に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る塗装装置では、前記塗装支持部は、前記支柱部に移動を規制する規制部を有し、前記規制部は、前記支柱部が上下方向に相対移動可能に挿通される筒状部と、前記筒状部の内周面に取り付けられ空気を注入されると膨張する袋体と、を有し、前記袋体は、膨張して前記支柱部の外周面と接触すると、前記支柱部との上下方向の相対移動が規制されてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、袋体を膨張させることで塗装部を所望の高さに固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仮設足場を設けずに高所の塗装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による塗装装置の側面図で支柱部が収縮した状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態による塗装装置の側面図で支柱部が伸長した状態を示す図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4】塗装部および塗装支持部の側面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による塗装装置について、図1図5に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態による塗装装置1は、構造物の内壁面11(構造物の内部)の塗装を行う装置である。本実施形態では、発電所の原子炉建屋の地下階の外壁の内面(内壁面11)の防水塗装を想定している。発電所の原子炉建屋の地下階の床部12から天井13までの高さは11000mm程度である。
塗装装置1は、床部12に設置され内壁面11と水平方向に対向している。以下の塗装装置1の説明では、設置された際に、塗装装置1に対して内壁面11がある側を前側、内壁面11に対して塗装装置1がある側を後側とし、塗装装置1と内壁面11とを結ぶ水平方向、すなわち内壁面11に直交する方向を前後方向(図の矢印Yの方向)とする。前後方向に直交する水平方向、すなわち内壁面11に沿った水平方向を幅方向(図の矢印Xの方向)とする。
【0016】
塗装装置1は、床部12に設置される基部2と、基部2の上に設けられ上下方向に伸縮可能な支柱部3と、支柱部3の上端部に設けられ支柱部3が天井13に向かって伸ばされることにより天井13に押し付けられる押付部4と、支柱部3に沿って昇降し塗装を行う塗装部5と、塗装部5を昇降させる昇降部6と、を有している。
【0017】
図1図3に示すように、基部2は、支柱部3を支持する本体部21と、本体部21の下部に取り付けられ床面121を走行可能なキャスタ22(図1図2参照)と、本体部21の幅方向の両側に固定されたアウトリガー23(図3参照)と、を有している。本実施形態の基部2は、例えば、前後方向の寸法が2000mm程度で、幅方向の寸法がアウトリガー23を畳んだ状態で1500mm程度、アウトリガー23を拡げた状態で3000mm程度を想定している。塗装装置1は、キャスタ22を走行させることで床面121上を移動可能である。キャスタ22の走行を規制するストッパなどは適宜設けられていてよい。
【0018】
支柱部3は、下端部3bが基部2に固定され、基部2から上方に延びている。支柱部3は、それぞれ異なる径の円筒状で入れ子式に配置された複数の柱部材31を有している。支柱部3は、内側に配置された柱部材31が外側に配置された柱部材31よりも上側に配置されることで伸ばされた伸長状態となり、すべての柱部材31が同じ高さに重なって配置されることで収縮状態となる。
【0019】
図1図2に示すように、支柱部3の上端部3aには、昇降部6の滑車支持部61が設けられ、その滑車支持部61の上に押付部4が設けられている。本実施形態では、支柱部3を伸縮させることで押付部4の床面121から高さを3700mmから11400mm程度に配置することができる。すなわち、塗装装置1は、支柱部3が天井13に向かって伸ばされることにより、押付部4(支柱部3の上端部3a)が天井13に達し、押付部4を天井13に押し付けることが可能である。
滑車支持部61は、昇降部6の滑車62が取り付けられる部材である。滑車支持部61の詳細については後述する。
押付部4は、上下方向に弾性変形可能なばね部41を有している。このため、押付部4は、支柱部3が伸ばされて天井13に押し付けられるとばね部41が弾性変形し、その復元力で天井13と滑車支持部61との間で上下方向に突っ張った状態となる。塗装装置1は、上記のように支柱部3が天井13と滑車支持部61との間で上下方向に突っ張った状態となると、床部12および天井13に固定される。
【0020】
図4図5に示すように、塗装部5は、塗装材53を収容する塗装材収容部51と、塗装材収容部51から供給された塗装材53を吐出するスプレーガン52と、を有している。塗装部5には、スプレーガン52の塗装方向を調整する塗装方向調整機構が設けられていてもよい。塗装部5には、スプレーガン52の上下方向、幅方向、前後方向の位置の微調整が可能な位置微調整機構が設けられていてもよい。
【0021】
図1図2に示すように、昇降部6は、支柱部3の上端部3aに設けられた滑車支持部61と、滑車支持部61に取り付けられた滑車62と、基部2に設けられた第1リール63および第2リール64と、一端65aが第1リール63に接続されるとともに滑車62に巻き掛けられる第1ワイヤ65と、一端67aが第2リール64に接続される第2ワイヤ67と、第1ワイヤ65の他端65bおよび第2ワイヤ67の他端67bそれぞれに固定され塗装部5を支持する塗装支持部66と、を有している。
滑車62は、支柱部3よりも前方において軸線が幅方向に延びる向きに配置される。
【0022】
第1ワイヤ65は、滑車62に上側から巻き掛けられ、滑車62に巻き掛けられている部分65cが一番高い位置となり、滑車62の前後で滑車62の下方に延びている。第1ワイヤ65は、滑車62の後方で基部の高さまで下方に延びて後方に曲がり、滑車62よりも後方となる側の端部(一端65a)が第1リール63に接続されている。第1ワイヤ65は、滑車62の前方で下方に延び、滑車62よりも前方となる側の端部(他端65b)が塗装支持部66に上方から固定されている。
【0023】
第2ワイヤ67は、第1ワイヤ65に固定された塗装支持部66に下方から固定される。第2ワイヤ67は、塗装支持部66に固定されている端部(他端67b)が一番高い位置となり、一端67a側が基部2の高さまで下方に延びて後方に曲がり、一端67aが第2リール64に接続されている。
【0024】
第1リール63が第1ワイヤ65を巻き出し、第2リール64が第2ワイヤ67を巻き取り、第1ワイヤ65の他端65bおよび第2ワイヤ67の他端67bが下降すると、塗装支持部66も下降する。第1リール63が第1ワイヤ65を巻き取り、第2リール64が第2ワイヤ67を巻き出し、第1ワイヤ65の他端65bおよび第2ワイヤ67の他端67bが上降すると、塗装支持部66も上昇する。
【0025】
図4図5に示すように、塗装支持部66は、上板部661と、下板部662と、塗装固定部663と、規制部7と、カウンターウエイト664と、を有している。
上板部661および下板部662は、それぞれ長尺の平板状の板材で、板面が水平面で前後方向となる向きで上板部661が下板部662の上方に間隔をあけて配置されている。
【0026】
上板部661には、前側の部分に第1ワイヤ65の他端65bが固定される第1ワイヤ65固定部661aが設けられている。下板部662には、前側の部分に第2ワイヤ67の他端67bが固定される第2ワイヤ67固定部662aが設けられている。第1ワイヤ65固定部661aと第2ワイヤ67固定部とは上下方向に重なる位置に配置される。なお、図1、2、4では、第1ワイヤ65と第2ワイヤ67とが連続しているが、連続していなくてもよい。第1リール63と塗装支持部66との間に設けられ部分が第1ワイヤ65となり、第2リール64と塗装支持部66との間に設けられ部分が第2ワイヤ67となる。
【0027】
上板部661には、第1ワイヤ65固定部661aよりも後方の位置に上下方向に貫通する長孔部661bが形成されている。下板部662には、第2ワイヤ67固定部662aよりも後方の位置に上下方向に貫通する長孔部662bが形成されている。長孔部661b,662bは、それぞれ前後方向に延びている。上板部661の長孔部661bと下板部662の長孔部662bとは上下方向に重なる位置に配置される。長孔部661b,662bに第1ワイヤ65の滑車62よりも後方となる部分が挿通される。
【0028】
規制部7は、筒状の筒状部71と、筒状部71の内周面71aに取り付けられる複数の袋体72と、を有している。
筒状部71は、上板部661と下板部662との間に上下方向に延びる向きに配置されている。筒状部71は、長孔部661b,662bよりも後方の位置に配置されている。筒状部71は、上端部が上板部661と接合され、下端部が下板部662と接合されている。上板部661および下板部662には、筒状部71と重なる位置に筒状部71と同じ径の丸孔部661c,662cが形成されている。上板部661および下板部662の丸孔部661c,662c、筒状部71の内径は、支柱部3の外径よりも大きく設定されている。筒状部71には、支柱部3が挿通される。なお、本実施形態では、筒状部71は、円形の筒状形状としたものの、これに限らず、四角形の筒状形状としてもよい。
【0029】
袋体72は、例えば、空気を注入可能なゴム製の袋状の部材である。袋体72は、弾性変形可能で、内部に空気が注入されると外形が膨張し、内部の空気が排出されると収縮する。袋体72は、空気の注入および排出により膨張と収縮とを繰り返すことが可能である。袋体72への空気の注入および排出は、例えば、コンプレッサにより行われる。
【0030】
塗装固定部663は、上板部661および下板部662それぞれの前端部に接合されている。塗装固定部663には、前側に塗装部5が固定される。すなわち、塗装部5は、塗装支持部66の前側に固定される。
カウンターウエイト664は、上板部661および下板部662それぞれの後端部に接合されている。すなわち、カウンターウエイト664は、塗装支持部66の後側に設けられている。カウンターウエイト664は、その重さを調整することができる。このため、塗装支持部66が前側に傾く場合には、カウンターウエイト664の重さを重くして塗装支持部66の傾きを直し、塗装支持部66が後側に傾く場合には、カウンターウエイト664の重さを軽くして塗装支持部66の傾きを直すように想定されている。
【0031】
上述しているように、塗装支持部66は、筒状部71に支柱部3が挿通され、長孔部661b,662bに第1ワイヤ65の滑車62よりも後方となる部分が挿通され、第1ワイヤ65固定部661aに第1ワイヤ65の他端65bが固定され、第2ワイヤ67固定部662aに第2ワイヤ67の他端67bが固定される。塗装支持部66は、基部2と滑車62との間に配置される。
第1ワイヤ65の断面形状は、長孔部661b,662bの形状よりも小さく設定されている。このため、第1ワイヤ65は、上板部661および下板部662それぞれの長孔部661b,662bを通り抜け可能である。長孔部661b,662bを通り抜ける第1ワイヤ65は、第1ワイヤ65と塗装支持部66との位置が振れたとしても長孔部661b,662bの長さ寸法の範囲で第1ワイヤ65が上板部661および下板部662のいずれかまたは両方と接触することを防止できる。
【0032】
支柱部3は、筒状部71の内周面71aに取り付けられた袋体72よりも内側(筒状体の中心側)に配置されている。筒状部71と支柱部3とは、袋体72が収縮し支柱部3を押圧していない状態では上下方向に相対変位可能であり、袋体72が膨張し支柱部3を押圧している状態では上下方向の相対変位が規制される。袋体72が支柱部3に対して上下方向に移動しないようにすることにより、塗装支持部66の位置が固定される。
【0033】
塗装支持部66は、支柱部3に固定されておらず支柱部3と上下方向に相対移動可能な状態であると、第1リール63が第1ワイヤ65を巻き出し、第2リール64が第2ワイヤ67を巻き取ると下降し、第1リール63が第1ワイヤ65を巻き取り、第2リール64が第2ワイヤ67を巻き出すと上昇する。
規制部7は、塗装支持部66が任意の高さに配置された状態で、袋体72を膨張させて支柱部3に固定することで塗装支持部66を任意の高さに固定することができる。これにより、塗装支持部66に支持された塗装部5を任意の高さに固定することができる。
【0034】
本実施形態による塗装方法について説明する。
まず、塗装装置1を設置する(塗装装置設置工程)。
塗装装置1を、塗装する内壁面11と前後方向に対向する位置に設置する。支柱部3を伸ばすことにより上端部の押付部4を上方の天井13に押し付ける。塗装装置1を床部12と天井13との間で突っ張った状態にする。
【0035】
続いて、第1リール63および第2リール64を駆動させて第1ワイヤ65および第2ワイヤ67の巻き出し、巻き取りを行い、塗装支持部66を昇降させて所定の高さに配置する(昇降工程)。規制部7の袋体72を膨張させて塗装支持部66の位置を固定する。これにより、塗装部5の位置が固定する。
【0036】
続いて、塗装部5を駆動させて内壁面11を塗装する(塗装工程)。このとき、塗装部5に上述している塗装方向調整機構や位置微調整機構が設けられている場合は、スプレーガン52の塗装方向の調整や、スプレーガン52の位置の微調整を行い、内壁面11を塗装する。
所定の高さにおける塗装が完了したら、規制部7の袋体72の空気を抜いて塗装支持部66と支柱部3との固定を解除し、塗装支持部66を昇降させて塗装部5の高さを変更し、その高さにおいて塗装を行う。また、塗装部5を幅方向に移動させて塗装を行う場合には、支柱部3を収縮させてから塗装装置1を幅方向に移動させ、再度支柱部3を伸ばして塗装装置1が床部12と天井13との間で突っ張った状態としてから、所定の高さにおいて塗装を行う。
【0037】
次に、本実施形態による塗装装置1および塗装方法の作用・効果について説明する。
本実施形態による塗装装置1および塗装方法では、支柱部3を伸ばすことにより押付部4を天井13に押し付け、塗装装置1を床部12と天井13との間で突っ張った状態に設置することにより、塗装装置1を床部12と天井13との間に固定することができる。この状態で塗装を行う塗装部5を昇降させることができるため、塗装部5を床部12の高さから天井13の高さまで昇降させて内壁面11を塗装することができる。これにより、仮設足場を設けずに内壁面11の高所の塗装を行うことができる。その結果、内壁面11が狭隘部の内壁面11であったり、内壁面11の近傍に干渉物があったりして仮設足場の設置が困難な場合でも、内壁面11の塗装を行うことができる。また、仮設足場の設置にかかる費用や工期を削減することができる。
【0038】
また、本実施形態による塗装装置1では、昇降部6は、支柱部3の上端部3aに設けられた滑車62と、基部2に設けられた第1リール63および第2リール64と、一端65aが第1リール63に接続されるとともに滑車62に巻き掛けられる第1ワイヤ65と、一端67aが第2リール64に接続される第2ワイヤ67と、第1ワイヤ65の他端65bおよび第2ワイヤ67の他端67bに固定される塗装部5を支持する塗装支持部66と、を有する構造である。そして、第1ワイヤ65および第2ワイヤ67の巻き出し、巻取りにより塗装支持部66が昇降する。
このようにすることにより、簡便な構造で塗装部5を支持する塗装支持部66の昇降を行うことができるとともに、支柱部3の高さが異なる場合でも塗装部5の昇降を同様に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態による塗装装置1では、塗装支持部66は、支柱部3に固定可能な規制部7を有し、規制部7は、支柱部3が上下方向に相対移動可能に挿通される筒状部71と、筒状部71の内周面71aに取り付けられ空気を注入されると膨張する袋体72と、を有し、袋体72は、膨張して支柱部3の外周面と接触すると、支柱部3との上下方向の相対移動が規制される。
このような構成とすることにより、塗装部5を所望の高さに固定することができる。
【0040】
以上、本発明による塗装装置および塗装方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、発電所の原子炉建屋の地下階の外壁の内側(内壁面11)の防水塗装を行っているが、防水塗装を行う箇所は、塗装装置1を設置可能な床部12と天井13との間に設けられていれば、上記以外であってもよい。また、塗装装置1を設置可能な床部と、支柱部3の上端部3aを押し付けることが可能な天井があれば、防水塗装を行う箇所は、屋外に設けられていてもよい。
【0041】
上記の実施形態では、塗装部5を昇降させる昇降部6は、第1リール63および第2リール64の巻き出し、巻取りにより昇降する第1ワイヤ65および第2ワイヤ67を利用する構成であるが、昇降部6の構成は上記以外であってもよい。また、塗装部5を支持する塗装支持部66を支柱部3に固定する構成は上記以外であってもよい。塗装支持部66は、支柱部3に固定されなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 塗装装置
2 基部
3 支柱部
3a 上端部
4 押付部
5 塗装部
6 昇降部
7 規制部
11 内壁面(構造物の内部)
12 床部
13 天井
62 滑車
63 第1リール(リール)
64 第2リール(リール)
65 第1ワイヤ(ワイヤ)
65a 一端
65b 他端
66 塗装支持部
67 第2ワイヤ(ワイヤ)
67a 一端
67b 他端
71 筒状部
71a 内周面
72 袋体
図1
図2
図3
図4
図5