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  • 特開-車両用窓構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042863
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】車両用窓構造
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/26 20060101AFI20230320BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20230320BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B32B3/26 Z
B60J1/00 J
B32B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150258
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小久保 拓実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA06
4F100EC182
4F100GB31
4F100JH02C
4F100JL10C
4F100JM10C
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の車載ガラスに対して防音性能と軽量化を両立できる車両用窓構造を提供する。
【解決手段】車両用窓構造1は、第1パネル部材2aと、第1パネル部材と対向するように配置される第2パネル部材2bと、第1パネル部材2aと第2パネル部材2bとの間に配置される中間層5とを備え、第1パネル部材2a及び第2パネル部材2bは、樹脂で形成されるとともに、中間層5には、液体が充填される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネル部材と、
前記第1パネル部材と対向するように配置される第2パネル部材と、
前記第1パネル部材と前記第2パネル部材との間に配置される中間層とを備え、
前記第1パネル部材及び前記第2パネル部材は、樹脂で形成されるとともに、
前記中間層には、液体が充填されることを特徴とする車両用窓構造。
【請求項2】
前記液体が着色されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車に搭載される車両用窓構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の電動化が急速に進んでおり、種々の電気自動車が開発されている。電気自動車では、従来のエンジンを搭載した自動車においてエンジン音に埋もれていた振動騒音が顕在化してしまう。また、自動運転(運転アシスト)の普及により運転者が車の操作を行う頻度が減っており、より振動騒音を感じやすい状況になってきている。
【0003】
そこで、車両などに使用される遮音性に優れた合わせガラスが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された合わせガラスは、1対のガラス板と、1対のガラス板に挟持される中間膜とを有している。中間膜は、樹脂で形成されており、1対のガラス板を接着している。
【0004】
また、車両の燃費や電費の向上が、CO2排出量の削減に繋がるため、様々な箇所で 軽量化と防音対策の両立が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017―214274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された合わせガラスに使用されるガラス板は重量が重いため、防音性能の向上と引き換えに車重が増加し、燃費や電費の低下に繋がっている。
また、合わせガラスを軽量化する場合、軽量化と防音性能はトレードオフの関係にあり、単純にガラス板の重量を軽くするだけでは、防音性能が悪くなるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、防音性能と軽量化を両立できる車両用窓構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る車両用窓構造は、第1パネル部材と、前記第1パネル部材と対向するように配置される第2パネル部材と、前記第1パネル部材と前記第2パネル部材との間に配置される中間層とを備え、前記第1パネル部材及び前記第2パネル部材は、樹脂で形成されるとともに、前記中間層には、液体が充填されることを特徴とする。
【0009】
これにより、2つのパネル部材間に充填される液体が、2つのパネル部材間の相互作用を遮断するバッファとして作用し、2つのパネル部材が独立している状態となる。そのため、音が入射される時にパネル部材による遮音が2回発生することになる。また、それに加えて、2つのパネル部材間に充填される液体による遮音効果も得られる。よって、防音性能が高く、既存の車載ガラスに対して防音性能と軽量化を両立できる車両用窓構造が得られる。
【0010】
本発明に係る車両用窓構造において、前記液体が着色されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、中間層に充填される液体を着色することにより、スモークガラスの代替や色彩変更による装飾としても使用できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、防音性能と軽量化を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の車両用窓構造1の正面図である。
図2図1の車両用窓構造1のa1-a1線断面図である。
図3】ガラス板とパネル部材の防音性能を示す図である。
図4】比較例の車両用窓構造501の断面図である。
図5】第1実施形態の車両用窓構造1と比較例の車両用窓構造501の防音性能を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用窓構造101の正面図である。
図7図1の車両用窓構造101のa2-a2線断面図である、
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態の車両用窓構造1は、図1及び図2に示すように、第1パネル部材2aと、第1パネル部材2aと対向するように配置される第2パネル部材2bと、第1パネル部材2aと第2パネル部材2bとの間に配置される中間層5とを有している。
【0016】
パネル部材2aが車内側に配置され、第1中間層5a、パネル部材2bの順に車外側に近づくように配置される。なお、以下の説明では、第1パネル部材2a及び第2パネル部材2bをそれぞれ、単にパネル部材2と称する場合がある。
【0017】
2つのパネル部材2は、無色透明な略矩形状の板状部材であり、それぞれ略同一の大きさを有している。パネル部材2は、例えばアクリル樹脂などの樹脂を材料として形成される。
【0018】
2つのパネル部材2間には、その外周部の全周にわたってシール部材3が配置される。シール部材3としては、例えばOリングが使用される。
【0019】
2つのパネル部材2間の中間層5(シール部材3に囲まれた領域)には、無色透明な液体が充填される。本実施形態では、液体として常温水が使用される。
【0020】
そのため、車両用窓構造1は、従来の合わせガラス(ガラス板が使用されるもの)と同程度の透明度を有している。
【0021】
本実施形態の車両用窓構造1は、例えば電気自動車などの車両の窓構造として使用される。
【0022】
アクリル樹脂製のパネル部材2と同一の厚さのガラス板とで防音性能を比較すると、図3に示すように、パネル部材2は、ガラス板よりも透過損失が低く、防音性能が低い。なお、図3の横軸は騒音の周波数を示し、縦軸は透過損失を示している(図5においても同様)。
【0023】
そのため、車両用窓構造において、従来の合わせガラスのガラス板をアクリル樹脂製のパネル部材2に置き換えることで軽量化の点で有効であるが、防音性能が低下してしまう課題がある。
【0024】
そこで、車両用窓構造1では、アクリル樹脂製のパネル部材2を2重構造とし、2つのパネル部材2間の中間層5に液体を充填する構造とした。
【0025】
本実施形態の車両用窓構造1と従来の合わせガラス501とで、防音性能の比較を行った。
【0026】
比較例としては、図4に示すように、2つのガラス板502と、2つのガラス板502に挟持される中間膜505とを有する合わせガラス501を使用した。中間膜505は、樹脂で形成されている。ガラス板502は、パネル部材2と同一の厚さを有している。
【0027】
比較例の合わせガラス501では、ガラス板502同士が樹脂を介して一体化されているため、実質、1枚のガラス板として防音性能を示すのに対して、本実施形態の車両用窓構造1では、中間層5に充填された液体がパネル部材2間の相互作用を遮断するバッファとして作用し、それぞれのパネル部材2が独立している状態となる。そのため、音が入射される時に、パネル部材2による遮音が2回発生することになる。また、中間層5に液体を充填することにより、中間層5に気体が充填された状態(それぞれのパネル部材2が気体を介して相互作用される状態)における共鳴透過現象による防音性能の低下を抑制する効果が得られる。
【0028】
そのため、比較例の合わせガラス501のガラス板502を単純にアクリル樹脂製のパネル部材2へ置換するだけでは、防音性能が悪化するが、2つのパネル部材2間に液体を充填した中間層5を形成することで、車両用窓構造1は、図5に示すように、既存の合わせガラス501と同等以上の防音性能が得られる。
【0029】
その場合において、ガラス板502をアクリル樹脂製のパネル部材2へ置換した場合の重量を、市販の小型車の運転席の車窓をモデルとしてそれぞれ算出すると、重量は、従来品の半分程度に抑えることができる。
【0030】
以上のように、本実施形態の車両用窓構造1は、第1パネル部材2aと、第1パネル部材2aと対向するように配置される第2パネル部材2bと、第1パネル部材2aと第2パネル部材2bとの間に配置される中間層5とを備え、第1パネル部材2a及び第2パネル部材2bは、樹脂で形成されるとともに、中間層5には、液体が充填される。
【0031】
これにより、2つのパネル部材2間に充填される液体が、2つのパネル部材2間の相互作用を遮断するバッファとして作用し、2つのパネル部材2が独立している状態となる。そのため、音が入射される時にパネル部材2による遮音が2回発生することになる。また、それに加えて、2つのパネル部材2間に充填される液体による遮音効果も得られる。よって、防音性能が高く、既存の車載ガラスに対して防音性能と軽量化を両立できる車両用窓構造1が得られる。
【0032】
(第2実施形態)
本実施形態の車両用窓構造101が、第1実施形態の車両用窓構造1と異なる点は、第1実施形態では、中間層5に充填される液体が無色透明であるのに対して、本実施形態では、中間層105に充填される液体が有色透明である点である。車両用窓構造101の構成で、車両用窓構造1の構成と同一である点については説明を省略する。
【0033】
本実施形態の車両用窓構造101は、図6及び図7に示すように、第1パネル部材2aと、第1パネル部材2aと対向するように配置される第2パネル部材2bと、第1パネル部材2aと第2パネル部材2bとの間に配置される中間層105とを有している。
【0034】
2つのパネル部材2間の中間層105(シール部材3に囲まれた領域)には、着色された有色透明な液体が充填される。本実施形態では、液体として着色された常温水が使用される。中間層105に充填される液体を着色する色は任意である。
【0035】
本実施形態の車両用窓構造101では、第1実施形態の車両用窓構造1と同様の効果が得られる。
【0036】
本実施形態の車両用窓構造101では、液体が着色されている。
【0037】
これにより、中間層105に充填される液体を着色することにより、スモークガラスの代替や色彩変更による車内空間を彩る装飾としても使用できる。
【0038】
なお、具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0039】
例えば上記第1及び第2実施形態では、パネル部材2が、アクリル樹脂で形成されるが、それに限られない。パネル部材2は、例えば、アクリルガラス、有機ガラス、ポリカーボネート、塩化ビニルなど、樹脂を材料として形成されるものであればよい。本発明の車両用窓構造が有するパネル部材2の形状、厚さ、数は、任意である。
【0040】
上記第1及び第2実施形態では、シール部材3がOリングであるが、それに限られない。シール部材3は、2つのパネル部材2間に充填された液体5をシールするものであればよい。
【0041】
上記第1及び第2実施形態では、中間層5、105に充填される液体として常温水が使用されるが、それに限られない。中間層5、105に充填される液体の種類は、任意である。例えば、液体として、温水、冷水、油、不凍液、水溶液などを使用してもよい。
【0042】
上記第1及び第2実施形態では、2つのパネル部材2間の中間層5、105に、液体として常に常温水が充填されているが、それに限られない。例えば、2つのパネル部材2間の中間層5、105内に充填される液体の水温を調整し、循環させるシステムを追加してもよい。その場合、車窓の熱貫流率を変化させ、車窓からの熱の移動を低減させる効果が得られる。
【0043】
上記第1及び第2実施形態では、電気自動車の車両用窓構造1、101について説明したが、それに限られない。本発明の車両用窓構造は、電気自動車以外の車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用窓構造
2a 第1パネル部材
2b 第2パネル部材
3 シール部材
5 中間層
101 車両用窓構造
105 中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7