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  • 特開-堆肥化装置及び堆肥化方法 図1
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  • 特開-堆肥化装置及び堆肥化方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042879
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】堆肥化装置及び堆肥化方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/06 20060101AFI20230320BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230320BHJP
   C07G 99/00 20090101ALI20230320BHJP
   B01F 33/00 20220101ALI20230320BHJP
【FI】
C05F3/06
C12M1/00 H
C07G99/00 C
B01F13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150277
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【テーマコード(参考)】
4B029
4G036
4H061
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029DF01
4B029EA20
4G036AC54
4G036AC55
4H061AA03
4H061CC37
4H061CC55
4H061EE66
4H061GG49
4H061GG68
(57)【要約】
【課題】被処理物を短期間で効率よく堆肥化できるとともにエネルギーロスが少ない堆肥化装置及び堆肥化方法を提供する。
【解決手段】堆肥化装置1は、攪拌手段12と、空気供給手段10と、情報取得手段16と、制御手段15と、を備える。攪拌手段12は、被処理物を攪拌する。空気供給手段10は、被処理物に空気を供給する。情報取得手段16は、被処理物の表面の情報を取得する。制御手段15は、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、から生成される学習データに基づき、情報取得手段16により取得された被処理物の表面の情報から被処理物の内部温度を予測し、この予測した内部温度に応じて攪拌手段12及び空気供給手段10を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を堆肥化するための堆肥化装置であって、
被処理物を攪拌する攪拌手段と、
被処理物に空気を供給する空気供給手段と、
被処理物の表面の情報を取得する情報取得手段と、
被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、から生成される学習データに基づき、前記情報取得手段により取得された被処理物の表面の情報から被処理物の内部温度を予測し、この予測した内部温度に応じて前記攪拌手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする堆肥化装置。
【請求項2】
制御手段は、所定のタイミングで、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、に基づき学習データを修正する
ことを特徴とする請求項1記載の堆肥化装置。
【請求項3】
被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、から生成される学習データに基づき、取得した被処理物の表面の情報から被処理物の内部温度を予測し、
この予測した内部温度に応じて被処理物を攪拌するとともに被処理物に空気を供給することで被処理物を堆肥化する
ことを特徴とする堆肥化方法。
【請求項4】
所定のタイミングで、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、に基づき学習データを修正する
ことを特徴とする請求項3記載の堆肥化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を堆肥化するための堆肥化装置及びこれを備えた堆肥化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物を発酵させて堆肥化する際には、山積みにした被処理物をホイールローダ(タイヤショベル)あるいはバックホー等の重機で攪拌し発酵させることが一般的であった。
【0003】
近年、例えば下記の特許文献1に記載されているような攪拌装置を用いて畜糞等の被処理物を攪拌する装置が普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-191954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、攪拌装置を用いる場合には大きな電気エネルギーが必要となるとともに、被処理物の中に空気を送り込むためにはブロワにより空気を被処理物内に押し込まなければならない。これらの装置を24時間フル稼働させたり、目分量で稼働させたりする場合、完熟までに時間を要するとともに、エネルギーロスが大きい。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被処理物を短期間で効率よく堆肥化できるとともにエネルギーロスが少ない堆肥化装置及びこれを備えた堆肥化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の堆肥化装置は、被処理物を堆肥化するための堆肥化装置であって、被処理物を攪拌する攪拌手段と、被処理物に空気を供給する空気供給手段と、被処理物の表面の情報を取得する情報取得手段と、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、から生成される学習データに基づき、前記情報取得手段により取得された被処理物の表面の情報から被処理物の内部温度を予測し、この予測した内部温度に応じて前記攪拌手段及び前記空気供給手段を制御する制御手段と、を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の堆肥化装置は、請求項1記載の堆肥化装置において、制御手段は、所定のタイミングで、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、に基づき学習データを修正するものである。
【0009】
請求項3記載の堆肥化方法は、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、から生成される学習データに基づき、取得した被処理物の表面の情報から被処理物の内部温度を予測し、この予測した内部温度に応じて被処理物を攪拌するとともに被処理物に空気を供給することで被処理物を堆肥化するものである。
【0010】
請求項4記載の堆肥化方法は、請求項3記載の堆肥化方法において、所定のタイミングで、被処理物の所定のパラメータと、環境パラメータと、実測された被処理物の表面の情報と、に基づき学習データを修正するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理物を短期間で効率よく堆肥化できるとともにエネルギーロスが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態に係る堆肥化装置のブロック図である。
図2】同上堆肥化装置の攪拌手段を示す側面図である。
図3】同上堆肥化装置を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1ないし図3中の1は堆肥化装置で、この堆肥化装置1は、被処理物Wを好気性微生物による好気性発酵により堆肥化処理するための装置(設備)、すなわち堆肥舎である。つまり、この堆肥化装置1は、有機物を含む有機廃棄物である被処理物Wを堆肥化して堆肥(処理済み物)を得るための有機廃棄物発酵処理装置である。なお、被処理物Wは、例えば畜舎である牛舎等から排出されるものであり、一例として、畜糞である牛糞に敷料が混合されたものである。
【0015】
堆肥化装置1は、細長い矩形板状の床体2と、この床体2の長手方向両端部及び一の長辺部にそれぞれ立設された壁体3とを備えている。これら床体2及び壁体3によって、その中で被処理物Wの堆肥化処理が行われる発酵槽6が構成されている。例えば、発酵槽6は、他の長辺部側が開口状のコンクリート製である。発酵槽6の上方部は、屋根体7によって覆われている。床体2には、被処理物Wから出た水を排水桝に導く図示しない溝部が形成されている。
【0016】
また、床体2の他の長辺部には、長手方向に間隔を置いて、屋根体7を支持する複数の柱体8が立設されている。互いに隣り合う両柱体8間は開口部9となっている。そして、この開口部9を介して、被処理物Wの発酵槽6への投入及び処理済み後の堆肥の発酵槽6からの取り出しが行われる。なお、発酵槽6の床体2は、長手方向に並ぶ複数、すなわち例えば同じ大きさのゾーンに分かれている。
【0017】
また、堆肥化装置1は、発酵槽6に投入されて床体2上に堆積された被処理物Wに空気を供給する複数の空気供給手段10を備えている。つまり、この堆肥化装置1では、ゾーン毎に、1つの空気供給手段10がそれぞれ設けられている。各空気供給手段10は、例えば床体2の溝部内に配置された多孔管体と、これら複数の多孔管体に空気を供給するための送風機と、これら多孔管体と送風機とを接続する接続管体とを有している。
【0018】
さらに、堆肥化装置1は、発酵槽6に投入されて床体2上に堆積された被処理物Wを攪拌(切返し)する前後方向及び左右方向に移動可能な攪拌手段12を備えている。この攪拌手段12は、所定方向に回転しながら被処理物Wを攪拌する攪拌回転体13を有するスクリュー式のものである。本実施の形態において、攪拌手段12は、攪拌回転体13が支持体14により堆肥化装置1の短手方向に移動可能に支持されているとともに、この支持体14とともに攪拌回転体13が堆肥化装置1の長手方向に移動可能である。なお、攪拌手段12は、スクリュー式には限定されず、例えばコンベヤ式等でもよく、その構成は任意である。
【0019】
これら空気供給手段10及び攪拌手段12は、制御手段15により動作が制御される。制御手段15は、例えば汎用のPC等のコンピュータである。制御手段15は、情報取得手段16により取得された被処理物Wの表面の情報に基づき、被処理物Wの内部の温度を予測して、その予測した内部の温度に応じて空気供給手段10及び攪拌手段12の動作を制御する。
【0020】
情報取得手段16は、被処理物Wの内部温度と関連を有する情報を取得するものである。情報取得手段16は、例えば被処理物Wの表面温度、色、湿度等の情報のうち、少なくともいずれかを計測可能である。情報取得手段16は、ゾーン毎に1つまたは複数ずつ配置されていてもよいし、攪拌手段12に配置され、攪拌手段12の移動に伴い、各ゾーンで被処理物Wの温度を計測してもよい。情報取得手段16により計測する被処理物Wの温度は、同一箇所で計測した複数の温度の平均値あるいは代表値(例えば最大値、最小値、中間値等)でもよい。例えば、情報取得手段16は、被処理物Wに対して非接触に配置されている。
【0021】
そして、制御手段15と、空気供給手段10、攪拌手段12、及び、情報取得手段16は、有線で接続されていてもよいし、インターネット等のネットワークを介して無線で接続されてもよい。
【0022】
次に、制御手段15による被処理物Wの内部の温度の予測について説明する。
【0023】
制御手段15には人工知能(AI)が搭載されている。制御手段15は、予め計測された被処理物Wの所定のパラメータと、予め計測された環境パラメータと、計測(実測)された被処理物Wの表面の情報と、から生成されたモデルデータである学習データ(教師データ)に基づき、情報取得手段16により取得された被処理物Wの表面の情報、例えば表面温度から被処理物Wの内部の温度を予測する。
【0024】
被処理物Wの所定のパラメータとは、例えば被処理物Wに含まれる敷料の種類、被処理物Wの水分量、被処理物Wの温度、被処理物Wの色、被処理物Wに含まれる空気量、被処理物Wの比重、の少なくともいずれかである。
【0025】
敷料の種類としては、例えばバーク、麦稈、おが粉、紙、チップ等が挙げられる。
【0026】
被処理物Wの水分量は、例えば被処理物Wの表面から所定の深さの位置で計測する。水分量は、被処理物Wの複数の深さで計測されてもよい。例えば、水分量は、表面から300mm、1500mm、2500mm等の深さ位置で計測する。
【0027】
被処理物Wの温度は、例えば被処理物Wの表面から所定の深さの位置で計測する。本実施の形態において、被処理物Wの内部温度は、例えば温度計測手段17によって計測される。温度計測手段17は、例えば攪拌装手段12に配置された単数または複数の棒状の温度計等が用いられる。温度計測手段17は、例えば上下動可能に配置される。温度は、被処理物Wの複数の深さで計測されてもよい。例えば、温度は、表面から300mm、1500mm、2500mm等の深さ位置で計測する。
【0028】
被処理物Wの色は、被処理物Wの表面色を含む。被処理物Wの色は、被処理物Wの水分状態(水分量)に応じて色が異なる。そのため、被処理物Wの色は、被処理物Wの水分状態を間接的に示す指標となる。
【0029】
また、環境パラメータとは、例えば外気温、被処理物Wが配置された堆肥化装置1すなわち堆肥舎の屋内の気温、堆肥舎の放射熱(輻射熱)、屋外風速、屋内風速、外気湿度、屋内湿度、照度、の少なくともいずれかである。
【0030】
被処理物Wの所定のパラメータ、及び、環境パラメータを実測して取得するパラメータ取得手段は、それぞれ専用のセンサ等を設置してもよいし、情報取得手段16等、既設のものを兼用してもよい。制御手段15では、同一箇所で取得された複数のデータの平均値あるいは代表値等をパラメータとしてもよい。制御手段15は、パラメータを、有線により取得してもよいし、インターネット等のネットワークを介して無線により取得してもよい。
【0031】
そして、制御手段15は、まず予め実測された被処理物Wの所定のパラメータと環境パラメータとを取得し、これらのパラメータに基づいて被処理物Wの性状を把握する。次いで、制御手段15は、その性状下で、被処理物Wの表面の情報と内部温度との関係に関する学習を繰り返し、都度修正を行うことで、被処理物Wの表面の情報から内部温度を予測する精度を向上する。つまり、制御手段15は、温度計測手段17により計測された被処理物Wの内部温度に対して、情報取得手段16により取得した被処理物Wの表面の情報を関連付け、そのデータを複数回取得することで、被処理物Wの表面の情報と被処理物Wの内部温度との関連性を学習していく。
【0032】
所定回数の学習(初期学習)が終了すると、以後、制御手段15は、情報取得手段16により取得された被処理物Wの表面の情報のみから被処理物Wの内部温度を自動的に予測し、その予測した内部温度に応じて、攪拌手段12及び空気供給手段10を制御する制御信号を生成する。すなわち、制御手段15は、予測した内部温度に応じて攪拌手段12、あるいは空気供給手段10を動作させるか否か、及び、その動作時間やパワーを判断し、堆肥化に最適な条件となるように空気供給手段10及び攪拌手段12を動作させ、被処理物Wの堆肥化を進める。堆肥化に最適な条件とは、被処理物Wの堆肥化が最も促進される温度、水分等の条件を言う。
【0033】
このように、情報取得手段16により取得された被処理物Wの表面の情報から被処理物Wの内部温度を予測し、この予測した内部温度に応じて攪拌手段12及び空気供給手段10を制御することで、被処理物Wの表面の情報を取得する、例えば温度を計測するなどの簡素な構成によって予測した被処理物Wの発酵状態に応じて攪拌手段12及び空気供給手段10を効率よく動作させることができる。そのため、被処理物Wを短期間で効率よく堆肥化できるとともに、攪拌手段12と空気供給手段10との動作を必要最小限とすることができ、エネルギーロスが少ない。
【0034】
また、好ましくは、学習データを所定のタイミングで修正する。この修正は、少なくとも被処理物Wの所定のパラメータと、環境パラメータと、被処理物Wの表面の情報と、に基づく。すなわち、制御手段15は、所定のタイミングにおいて、被処理物Wの所定のパラメータ及び環境パラメータを取得するとともに、取得された被処理物Wの表面の情報に応じて、その時点での被処理物Wの表面の情報と内部温度との関係を、被処理物Wの所定のパラメータ及び環境パラメータに基づいて学習する。
【0035】
このとき、取得する被処理物Wの所定のパラメータ及び環境パラメータは、初期学習時と同一でもよいし、初期学習時のパラメータの一部でもよい。
【0036】
また、所定のタイミングとは、例えば所定時間毎、所定日数毎(例えば一週間毎)等、定期的なタイミングでもよいし、敷料の種類が変化したとき、あるいは季節の変わり目等、外部環境が変化したとき等でもよい。さらに、所定のタイミングは、予めプログラムされていてもよいし、使用者が外部入力によって設定してもよい。
【0037】
このように、学習データを適宜修正することで、制御手段15によって、被処理物Wの内部温度を、より高精度に予測可能となり、攪拌手段12及び空気供給手段10をより効率よく動作させることができる。
【0038】
なお、上記一実施の形態において、堆肥化処理される被処理物Wは、牛糞には限定されず、例えば豚糞、鶏糞等でもよく、あるいは、家庭から出る生ごみ等でもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 堆肥化装置
10 空気供給手段
12 攪拌手段
15 制御手段
16 情報取得手段
W 被処理物
図1
図2
図3