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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042882
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】流路デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/32 20060101AFI20230320BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C12M1/32
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150281
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】515279762
【氏名又は名称】株式会社AFIテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲
(72)【発明者】
【氏名】真田 雅和
(72)【発明者】
【氏名】大代 京一
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC01
4B029FA01
4B029HA05
(57)【要約】
【課題】排出する液体の流量が異なる複数の出口を有する流路において、流路内の流速を安定させることができる技術を提供する。
【解決手段】流路デバイス1は、注入口110を有する主流路11と、第1出口131を有する第1流路13と、第2出口151を有する第2流路15とを備える。第1出口131よりも第2出口151の方が、排出する液体の流量が大きい。流路デバイス1は、第1出口131から排出される液体を貯留する第1タンク30と、第2出口151から排出される液体を貯留する第2タンク40を備える。第2タンク40の内部空間は、水平面内において複数の貯留室43に仕切られている
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路デバイスであって、
液体を注入するための注入口と、液体を排出するための第1出口および第2出口と、を有する流路と、
前記第1出口に接続され、前記第1出口から排出される液体を貯留する内部空間を有する第1タンクと、
前記第2出口に接続され、前記第2出口から排出される液体を貯留する内部空間を有する第2タンクと、
を備え、
前記第1タンクの内部空間の少なくとも一部は、前記第1出口よりも上側に位置し、
前記第2タンクの内部空間は、上下方向に垂直な平面内において複数の貯留室に仕切られており、
前記第2タンクの前記複数の貯留室は、前記第2出口よりも上側に位置し、
前記第2出口から排出される液体の流量は、前記第1出口から排出される流量よりも大きい、流路デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の流路デバイスであって、
前記流路は、
主流路と、
前記主流路と前記第1出口とを接続する第1流路と、
前記主流路と前記第2出口とを接続しており、前記主流路から流れ込む液体の流量が、前記第1流路よりも大きい第2流路と、
を備える、流路デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流路デバイスであって、
前記第1出口が、前記第1タンクの内部空間の下端に位置し、
前記第2出口が、前記第2タンクの内部空間の下端に位置する、流路デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
前記複数の貯留室の開口面積が互いに等しい、流路デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
前記貯留室の開口面積が、前記第1タンクの開口面積よりも小さい、流路デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
各前記貯留室の開口面積が、前記第1タンクの開口面積と等しい、流路デバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載の流路デバイスであって、
前記第1タンクの開口面積に対する、前記第2タンクにおける前記複数の貯留室の開口面積の和の比は、前記第1出口から排出される液体の流量に対する、前記第2出口から排出される液体の流量の比と等しい、流路デバイス。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
前記貯留室が、高さ方向に延びる円筒状である、流路デバイス。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
前記第2タンクは、前記複数の貯留室の下側に位置し、前記第2出口と、前記複数の貯留室との間を接続する連通室を有し、
前記連通室の開口面積は、各前記貯留室の開口面積よりも大きい、流路デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の流路デバイスであって、
前記連通室の開口面積が、前記複数の貯留室の開口面積の和と等しい、流路デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流路デバイスであって、
前記第2出口は、各前記貯留室内に少なくとも1つずつ配置される複数のサブ出口を有する、流路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ライフサイエンス分野においては、近年、マイクロ流路型デバイスが注目されている。当該デバイスは、例えば、マイクロリアクタなどの微小空間で化学合成を行う用途、微小電極が複合されて遺伝子解析をする用途、電気的に細胞または菌などを捕捉または分離する用途など、様々な用途で利用されている。
【0003】
本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/182034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流路を流れる液体を回収する場合、流路の出口が重力方向上向きに配置され、さらにその出口の上方に回収用タンクが配置される場合がある。複数の出口がある場合には、各出口に対して回収用タンクがそれぞれ配置される。
【0006】
回収用タンクに貯留される液体の水圧は、流路内の流速に影響する。このため、2つ以上の回収用タンクがある場合、流路内の流速を安定させるため、各回収タンク内の液面の高さを均一にすることが求められる。特に、2つ以上の出口に対して、主流路から流れ込む液体の流量の比率が互いに異なる場合、その比率に合わせて、各タンクの大きさが適宜設定される。
【0007】
しかしながら、回収用タンクの容積が大きい場合(例えば、数十ml)、または、回収用タンクがぬれ性の低い材質で形成されている場合、回収用タンク内で歪な形状の液面が形成され得る。このように、回収用タンク内で歪な形状の液面が形成されると、各出口に係る静的水圧のバランスが崩れ、それらの上流に位置する流路内の流速にも影響する。すると、流路内で目的とする反応を起こすことが困難となったり、逆流が起きたりするおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、排出する液体の流量が異なる複数の出口を有する流路において、流路内の流速を安定させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1態様は、流路デバイスであって、液体を注入するための注入口と、液体を排出するための第1出口および第2出口と、を有する流路と、前記第1出口に接続され、前記第1出口から排出される液体を貯留する内部空間を有する第1タンクと、前記第2出口に接続され、前記第2出口から排出される液体を貯留する内部空間を有する第2タンクと、を備え、前記第1タンクの内部空間の少なくとも一部は、前記第1出口よりも上側に位置し、前記第2タンクの内部空間は、上下方向に垂直な平面内において複数の貯留室に仕切られており、前記第2タンクの前記複数の貯留室は、前記第2出口よりも上側に位置し、前記第2出口から排出される液体の流量は、前記第1出口から排出される流量よりも大きい。
【0010】
第2態様は、第1態様の流路デバイスであって、前記流路は、主流路と、前記主流路と前記第1出口とを接続する第1流路と、前記主流路と前記第2出口とを接続しており、前記主流路から流れ込む液体の流量が、前記第1流路よりも大きい第2流路とを備える。
【0011】
第3態様は、第1態様または第2態様の流路デバイスであって、前記第1出口が、前記第1タンクの内部空間の下端に位置し、前記第2出口が、前記第2タンクの内部空間の下端に位置する。
【0012】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つの流路デバイスであって、前記複数の貯留室の開口面積が互いに等しい。
【0013】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの流路デバイスであって、前記貯留室の開口面積が、前記第1タンクの開口面積よりも小さい。
【0014】
第6態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの流路デバイスであって、各前記貯留室の開口面積が、前記第1タンクの開口面積と等しい。
【0015】
第7態様は、第1態様から第6態様の流路デバイスであって、前記第1タンクの開口面積に対する、前記第2タンクにおける前記複数の貯留室の開口面積の和の比は、前記第1出口から排出される液体の流量に対する、前記第2出口から排出される液体の流量の比と等しい。
【0016】
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれか1つの流路デバイスであって、前記貯留室が、高さ方向に延びる円筒状である。
【0017】
第9態様は、第1態様から第8態様のいずれか1つの流路デバイスであって、前記第2タンクは、前記複数の貯留室の下側に位置し、前記第2出口と前記複数の貯留室との間を接続する連通室を有し、前記連通室の開口面積は、各前記貯留室の開口面積よりも大きい。
【0018】
第10態様は、第9態様の流路デバイスであって、前記連通室の開口面積が、前記複数の貯留室の開口面積の和と等しい。
【0019】
第11態様は、第1態様から第10態様のいずれか1つの流路デバイスであって、前記第2出口は、各前記貯留室に対して少なくとも1つずつ配置される複数の第2サブ出口を有する。
【発明の効果】
【0020】
第1態様から第11態様の流路デバイスによれば、第2タンクが、水平面内において複数の貯留室に仕切られているため、第2タンク内の液面が歪になることを抑制できる。これにより、第1タンクと第2タンクの液体の水圧バランスを保つことができるため、流路内の流速を安定化できる。
【0021】
第3態様の流路デバイスによれば、第1タンクおよび第2タンクにおいて、それぞれの下端から液体を貯留できる。
【0022】
第4態様の流路デバイスによれば、複数の貯留室間で、液面の表面張力の差異を小さくすることができる。このため、貯留室間で液面の高さを揃えることができる。
【0023】
第5態様の流路デバイスによれば、貯留室の開口面積を小さくすることにより、貯留室内において、液面の高さが不均一になることを低減できる。
【0024】
第6態様の流路デバイスによれば、各貯留室内の液面と、第1タンク内の液面との間における、表面張力の差異を小さくすることができる。
【0025】
第7態様の流路デバイスによれば、第1タンクおよび第2タンク間で、液面の高さを揃えることができる。
【0026】
第8態様の流路デバイスによれば、各貯留室内の液面の表面張力を円周方向において均一にできるため、液面の形状を安定させることができる。
【0027】
第9態様の流路デバイスによれば、連通室によって液面を水平方向に広げつつ、各貯留室に液体を移動させることができる。
【0028】
第10態様の流路デバイスによれば、第2タンク内の液面が、連通室から各貯留室へ移動する際に、第1タンクおよび第2タンク間の水圧バランスが崩れることを抑制できる。このため、流路内の流速を安定させることができる。
【0029】
第11態様の流路デバイスによれば、流路に対して、第2タンクの各貯留室を個別に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る流路デバイスの上面図である。
図2図1に示す流路デバイスの側面図である。
図3図1に示すA-A線位置における第1タンクの断面図である。
図4図1に示すB-B線位置における第2タンクの断面図である。
図5】第2実施形態に係る第2タンクの部分断面図である。
図6】第3実施形態に係る第2タンクの断面図である。
図7図6に示す仕切壁部の一部を示す上面図である。
図8】第3実施形態に係る第1タンクの断面図である。
図9】第4実施形態に係る第2タンクの断面図である。
図10】第4実施形態に係る第1タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0032】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る流路デバイス1の上面図である。図2は、図1に示す流路デバイス1の側面図である。図1に示すように、流路デバイス1は、本体部10と、注入部20と、第1タンク30と、第2タンク40とを備えている。
【0033】
以下の説明では、本体部10が水平に配置された状態を基準とし、本体部10に対して注入部20、第1タンク30および第2タンク40が配置されている方向を上側とし、その反対方向を下側と称する。また、上下方向に垂直な方向を水平方向と称する。
【0034】
本体部10は、例えば、複数の板状の部材を上下方向に積層することによって構成される。本体部10は、内部に流路を有している。流路は、主流路11と、第1流路13と、第2流路15とを含む。
【0035】
主流路11は、管状である。主流路11は、液体を注入するための開口であって、上向きに配置された注入口110を有している。注入口110の上方に注入部20が配置されている。注入部20は、上下方向を軸方向とする円筒状である。注入部20から液体が注入されることにより、主流路11に対して液体が流入する。以下の説明では、主流路11、第1流路13及び第2流路15において、注入部20に近い方を「上流」とし、注入部20から遠い方を「下流」と称する。
【0036】
流路デバイス1が目的の細胞または菌類(以下、「細胞等」と称する。)を捕捉および分離する装置として構成されている場合、主流路11には、目的の細胞等を電気的に分離する電界を発生させるための電極(不図示)が配置される。なお、流路デバイス1は、細胞等を分離する以外の用途向けに構成されていてもよい。
【0037】
第1流路13および第2流路15は、管状である。第1流路13および第2流路15の各上流側端部は、主流路11に接続されている。本例では、第1流路13の上流側端部は、主流路11の下流側端部に接続されており、第2流路15の上流側端部は、主流路11の中間部に接続されている。
【0038】
注入部20から主流路11に供給された液体は、第1流路13の第1出口131および第2流路15の第2出口151から排出される。第1出口131および第2出口151は、上向きに配置されている。すなわち、第1出口131および第2出口151は、本体部10の上面に開口している。本体部10が水平に配置された場合、第1出口131と第2出口151とは、同じ高さに配置される。
【0039】
流路デバイス1においては、主流路11に液体を流した際、主流路11から第1流路13へ流れ込む液体の流量よりも、主流路11から第2流路15へ流れ込む液体の流量の方が大きい。このため、第1出口131から排出される液体の流量(第1流量)よりも、第2出口151から排出される液体の流量(第2流量)の方が大きい。なお、第1流量と第2流量の比は、具体的には、反応路である主流路11の流路構造によって決定される。
【0040】
図3は、図1に示すA-A線位置における第1タンク30の断面図である。図3に示すように、第1タンク30は、第1流路13の第1出口131に接続されている。第1タンク30は、第1出口131から排出される液体を内部に貯留する内部空間を有する。第1タンク30は、本体部10に対して垂直な上下方向を軸方向とする円筒状である。図3に示すように、第1タンク30の下端は、本体部10の上面に取り付けられている。第1タンク30の下側の開口は、本体部10の上面によって塞がれている。
【0041】
図3に示すように、第1タンク30の内部空間は、第1出口131よりも上側に配置されている。第1出口131は、第1タンク30の内部空間の下端に配置されている。第1出口131は、水平方向において、第1タンク30内の中心に配置されている。第1タンク30の内径は、第1出口131の内径よりも大きい。
【0042】
図4は、図1に示すB-B線位置における第2タンク40の断面図である。図4に示すように、第2タンク40は、第2流路15の第2出口151に接続されている。第2タンク40は、第2出口151から排出される液体を貯留する内部空間を有している。第2タンク40は、本体部10に対して垂直な上下方向を軸方向とする略円筒状である。第2タンク40の下端は、本体部10の上面に取り付けられている。第2タンク40の下側の開口は、本体部10の上面によって塞がれている。
【0043】
第1タンク30および第2タンク40は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコンにより形成される。なお、第1タンク30および第2タンク40は、その他の素材で形成されていてもよい。
【0044】
図4に示すように、第2タンク40は、内部に仕切壁部41を有している。図1に示すように、仕切壁部41は、第2タンク40の内部空間を、上下方向に垂直な平面(以下、「水平面」と称する。)において複数(本例では、7個)の貯留室43に仕切っている。複数の貯留室43は、水平面内において等間隔で並列に配置されている。
【0045】
各貯留室43は、上下方向を軸方向とする円筒状である。図4に示すように、複数の貯留室43は、互いに同じ大きさかつ同じ形状(円筒形状)を有している。このため、複数の貯留室43の開口面積(水平面で切断したときの開口の面積)は、互いに等しい。このように複数の貯留室43の開口面積を互いに等しくすることによって、第2タンク40に液体が貯留された場合に、複数の貯留室43間で、液面の表面張力を等しくすることができる。これにより、複数の貯留室43間で液面の高さを揃えることができる。また、各貯留室43を円筒状とすることによって、各貯留室43内に貯留された液体の表面張力を、円周方向において均一にできる。このため、液面の形状を安定させることができる。
【0046】
上述したように、第2出口151から排出される液体の流量(第2流量)は、第1出口131から排出される液体の流量(第1流量)よりも大きい。このため、第2タンク40の容積は、第1タンク30の容積よりも大きく設定されている。また、第2タンク40の開口面積(複数の貯留室43の開口面積の総和)は、第1タンク30の開口面積よりも大きい。好ましくは、第1タンク30の開口面積に対する第2タンク40の開口面積の比は、第1出口131から排出される液体の第1流量に対する第2出口151から排出される液体の第2流量の比と等しい。このようにすることで、主流路11に液体を流した際に、第1タンク30内に貯留される液体の液面の高さと、第2タンク40内に貯留される液体の液面の高さとを、互いに揃えることができる。
【0047】
各貯留室43の開口面積は、第1タンク30の開口面積よりも小さい。本例では、第1タンク30の内径φ1(図3)よりも、貯留室43の内径φ2(図4)の方が小さい。このように貯留室43の開口面積を小さくすることによって、貯留室43内において、液面の高さが不均一になることを低減できる。
【0048】
なお、貯留室43の開口面積を、第1タンク30の開口面積と等しくしてもよい。こうすることにより、第1タンク30内の液面と、各貯留室43内の液面との間の、表面張力の差異を小さくすることができる。
【0049】
図4に示すように、第2タンク40は、1つの連通室45を有している。連通室45は、上下方向を軸方向とする円筒状である。連通室45は、各貯留室43よりも下側に配置されている。連通室45は、第2出口151と、各貯留室43とを接続している。すなわち、各貯留室43は、連通室45を介して、第2出口151と連通している。連通室45の開口面積は、各貯留室43の開口面積よりも大きい。
【0050】
連通室45は、第2出口151よりも上側に配置されている。すなわち、第2タンク40の内部空間は、第2出口151よりも上側に配置されている。第2出口151は、連通室45の下端、すなわち、第2タンク40の内部空間の下端に配置されている。第2出口151は、水平方向において、連通室45の中心に配置されている。連通室45の内径は、第2出口151の内径よりも大きい。
【0051】
好ましくは、連通室45の開口面積は、全ての貯留室43の開口面積の和と等しい。これにより、第2タンク40内に貯留された液体の水面が、連通室45から各貯留室43側へ移動する際に、第1タンク30内と、第2タンク40との水圧バランスが崩れることを抑制できる。このため、主流路11の流速を安定させることができる。
【0052】
流路デバイス1によれば、流量が第1出口131よりも大きい第2出口151に接続された第2タンク40の内部空間が、複数の貯留室43に仕切られている。これにより、第2タンク内の開口が、複数の小さい貯留室43の開口に分割される。各貯留室43の開口面積が小さいため、各貯留室43内で液面が歪に形成されることが抑制される。したがって、第2タンク内の液面の高さが不均一になることを抑制できる。したがって、第1タンク内と第2タンク内の液体の水圧バランスを保つことができるため、主流路11内の流速を安定させることができる。
【0053】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0054】
図5は、第2実施形態に係る第2タンク40aの部分断面図である。第2タンク40aは、第2タンク40と同様に、第2流路15から排出される液体を貯留する容器である。また、第2タンク40aの内部は、第2タンク40と同様に、仕切壁部41によって複数の円筒状の貯留室43に仕切られている。ただし、第2タンク40aの仕切壁部41は、第2タンク40aの上端から下端まで延びている。そして、仕切壁部41の下端部が本体部10の上面に接している。このため、第2タンク40aは、第2タンク40とは異なり、連通室45を備えておらず、各貯留室43が第2タンク40の下端まで延びている。
【0055】
第2流路15の第2出口は、複数のサブ出口153によって構成されている。図5に示すように、各貯留室43a内には、1つのサブ出口153が配置されている。すなわち、本体部10は、貯留室43aと同じ個数(本例では、7個)のサブ出口153を有している。各貯留室43a内には、異なるサブ出口153を介して、第2流路15を通過した液体が流入する。各サブ出口153は、上向きに配置されており、本体部10の上面において開口している。
【0056】
流路デバイス1に第2タンク40aを適用した場合、第2タンク40aの内部に連通室45を設けなくてよい。このため、第2タンク40に比べて第2タンク40aを容易に製造できる。
【0057】
<3. 第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る第2タンク40bの断面図である。図7は、図6に示す仕切壁部41aの一部を示す上面図である。図6に示すように、第2タンク40bは、円筒状であり、内側に仕切壁部41aを有している。仕切壁部41aは、例えば親水性の高いガラスなどで構成される。
【0058】
仕切壁部41aは、水平面内に並列された多数の細孔431を有している。各細孔431は、仕切壁部41aを上下方向に貫通する孔である。細孔431の内径は、マクロスケール(1mm未満)である。
【0059】
第2タンク40bは、内側に連通室45aを有している。連通室45aは、各細孔431よりも下側に配置されている。連通室45aは、第1実施形態の連通室45と同様に、上下方向を軸方向とする円筒状である。連通室45aは、各細孔431と、第2出口151とを接続している。すなわち、全ての細孔431は、連通室45aを介して、第2出口151と連通している。第2出口151は、水平方向において、連通室45aの中心に配置されている。
【0060】
図8は、第3実施形態に係る第1タンク30aの断面図である。第1タンク30aは、第1タンク30に対して、第2タンク40bと同様の毛細管構造を適用したものである。図8に示すように、第1タンク30aは、内部に仕切壁部41bを有してる。仕切壁部41bは、第2タンク40bの仕切壁部41aと同様に、水平面内に並列された多数の細孔433を有している。各細孔433は、仕切壁部41bを上下方向に貫通している。細孔433の内径は、細孔431の内径と同じであることが好ましいが、これは必須ではない。
【0061】
第1タンク30aは、内部に連通室45bを有している。連通室45bは、複数の細孔433の下側に配置されている。連通室45bは、上下方向を軸方向とする円筒状である。連通室45bは、各細孔433と第1出口131とを接続している。すなわち、全ての細孔433は、連通室45bを介して、第1出口131と連通している。連通室45bの上下方向の寸法H1は、好ましくは、第2タンク40bにおける連通室45aの上下方向の寸法H2と同じである。
【0062】
流路デバイス1において、第2タンク40bを適用した場合、第2タンク40bの連通室45aに貯留された液体は、表面張力によって、仕切壁部41aの多数の細孔431に吸い上げられる(毛細管現象)。各細孔431に吸い上げられた液体分の水圧は実質的にゼロとなる。このため、各細孔431よりも下側の連通室45aのみが、水圧を生じさせる有効領域となる。このため、連通室45aの容積を越える量の液体が、第2タンク40bに送られたとしても、連通室45aと各細孔431との境界が、擬似的に高さ不変の液面となる。このため、第2タンク40b内の液体による水圧がほぼ一定に保たれる。
【0063】
また、流路デバイス1において、第1タンク30aを適用した場合、第1タンク30aに貯留された液体が、表面張力により多数の細孔433に吸い上げられる(毛細管現象)。第1タンク30a内において、各細孔433に吸い上げられた液体分の水圧は実質的にゼロとなる。したがって、各細孔433よりも下側の連通室45bのみが、水圧を生じさせる有効領域となる。そうすると、連通室45bの容積を越える量の液体が、第1タンク30aに送られたとしても、連通室45bと各細孔433との境界が、擬似的に高さ不変の液面となる。このため、第1タンク30a内の水圧がほぼ一定に保たれる
【0064】
以上のように、第1タンク30aおよび第2タンク40b内の水圧が一定に保たれることによって、第1タンク30aおよび第2タンク40b間の水圧バランスが保たれる。これにより、主流路11内の流速を安定させることができる。
【0065】
また、第2タンク40bの下部に連通室45aが設けられているため、第2流路15から排出される液体を連通室45aから回収できる。同様に、第1タンク30aの下部に連通室45bが設けれているため、第1流路13から排出される液体を回収できる。
【0066】
<4. 第4実施形態>
図6に示す第2タンク40b、および、図8に示す第1タンク30aは、多数の細孔431,433による毛細管現象によって液体を吸い上げているが、毛細管現象を利用する構造は、これらに限定されない。
【0067】
図9は、第4実施形態に係る第2タンク40cの断面図である。第2タンク40cは、第2タンク40bと同様に、上下方向を軸方向とする円筒状である。ただし、第2タンク40cは、仕切壁部41aの代わりに、マイクロポーラス構造を有するスポンジ部材47を備えている。スポンジ部材47は、第2タンク40c内の上部に配置されており、スポンジ部材47よりも下側に、連通室45aが配置されている。
【0068】
流路デバイス1に対して、第2タンク40cを適用した場合、第2タンク40cに対して連通室45aの容積を越える量の液体が送られると、液体が表面張力によりスポンジ部材47に吸い上げられる。このため、第2タンク40bと同様に、第2タンク40b内の水圧は、略一定に保たれる。
【0069】
図10は、第4実施形態に係る第1タンク30bの断面図である。第1タンク30bは、図8に示す第1タンク30aと同様に、上下方向を軸方向とする円筒状である。ただし、第1タンク30bは、仕切壁部41bの代わりに、マイクロポーラス構造を有するスポンジ部材47aを備えている。スポンジ部材47aは、第1タンク30b内の上部に配置されており、スポンジ部材47aよりも下側に連通室45bが配置されている。
【0070】
流路デバイス1に対して、第1タンク30bを適用した場合、第1タンク30bに対して連通室45bの容積を越える量の液体が送られると、液体が表面張力によりスポンジ部材47aに吸い上げられる。したがって、第1タンク30aと同様に、第1タンク30b内の水圧が略一定に保たれる。
【0071】
以上のように、第1タンク30aおよび第2タンク40b内の水圧がほぼ一定に保たれることにより、第1タンク30aおよび第2タンク40b間の水圧バランスが保たれる。これにより、主流路11における流速を安定させることができる。
【0072】
<5. 変形例>
上記実施形態では、第1出口131が第1タンク30内の底面に接続されているが、これは必須ではない。例えば、第1出口131は、第1タンク30内の底面に近い側面に接続されていてもよい。この場合、第1タンク30の内部空間の一部が、第1出口131よりも上側に配置される。第1出口131と同様に、第2出口151が第2タンク40の底面に接続されているが、これは必須ではない。例えば、第2出口151は、第2タンク40内の底面に近い側面に接続されていてもよい。この場合、第2タンク40の内部空間の一部は、第2出口151よりも上側に配置される。
【0073】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 流路デバイス
10 本体部
11 主流路
13 第1流路
15 第2流路
30 第1タンク
40,40a 第2タンク
40a 第2タンク
43,43a 貯留室
45 第2連通室
45 連通室
110 注入口
131 第1出口
151 第2出口
153 サブ出口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10