(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042924
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】人造大理石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/10 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
B32B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150350
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平木 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩見 明
(72)【発明者】
【氏名】可知 直人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩治
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100CA30B
4F100DD23A
4F100DG01B
4F100EH31A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH61B
4F100EH61C
4F100GB07
4F100HB00C
4F100JA13A
4F100JJ01A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】人造大理石の軽量化を実現しつつ、その硬度の低下を防止する技術を提供する。
【解決手段】本明細書によって開示される人造大理石は、意匠層と、複数個のバルーンを含む基材層と、前記意匠層と前記基材層との間に位置する中間層であって、前記意匠層及び前記基材層とは異なる組成を有する前記中間層と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠層と、
複数個のバルーンを含む基材層と、
前記意匠層と前記基材層との間に位置する中間層であって、前記意匠層及び前記基材層とは異なる組成を有する前記中間層と、
を備える人造大理石。
【請求項2】
前記バルーンは、樹脂バルーンを含む、請求項1に記載の人造大理石。
【請求項3】
前記中間層は、垂れ防止材を含む、請求項1又は2に記載の人造大理石。
【請求項4】
前記中間層は、収縮抑制材を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項5】
前記中間層は、ガラス繊維を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項6】
前記中間層は、樹脂材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項7】
前記中間層の厚みは、0.1mm以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項8】
前記中間層の厚みは、0.3mm以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項9】
前記中間層の厚みは、0.5mm以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項10】
前記中間層の厚みは、1.1mm以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項11】
前記基材層の熱伝導率は、1W/m・K以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項12】
前記基材層の密度は、1.5g/cm3以下である、請求項1から11のいずれか一項に記載の人造大理石。
【請求項13】
意匠層と、複数個のバルーンを含む基材層と、前記意匠層と前記基材層との間に位置する中間層と、を備える人造大理石の製造方法であって、
前記意匠層を形成するための第1の材料を型の表面に塗布し、
前記中間層を形成するための第2の材料であって、前記第1の材料とは異なる組成を有する前記第2の材料を前記第1の材料上に塗布し、
前記基材層を形成するための第3の材料であって、前記複数個のバルーンを含む前記第3の材料を前記型に流し込む
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、人造大理石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人造大理石の軽量化のために、樹脂組成物にガラス微小中空球を配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した人造大理石は、微小中空球を含有するので、硬度が低下し得る。本明細書は、人造大理石の軽量化を実現しつつ、その硬度の低下を防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される人造大理石は、意匠層と、複数個のバルーンを含む基材層と、前記意匠層と前記基材層との間に位置する中間層であって、前記意匠層及び前記基材層とは異なる組成を有する前記中間層を備える。
【0006】
本明細書によって開示される人造大理石の製造方法は、意匠層と、複数個のバルーンを含む基材層と、前記意匠層と前記基材層との間に位置する中間層と、を備える人造大理石の製造方法であって、前記意匠層を形成するための第1の材料を型の表面に塗布し、前記中間層を形成するための第2の材料であって、前記第1の材料とは異なる組成を有する前記第2の材料を前記第1の材料上に塗布し、前記第1の工程及び前記第2の工程の後に、前記基材層を形成するための第3の材料であって、前記複数個のバルーンを含む前記第3の材料を前記型に流し込む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】人造大理石の製造方法を模式的に示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(人造大理石の構成:
図1及び
図2)
図1及び
図2を参照して、人造大理石10の構成を説明する。人造大理石10は、例えば洗面化粧台、キッチンカウンタ、浴槽等の住宅設備に用いられる。
図1に示すように、人造大理石10は、意匠層12と中間層14と基材層16とを備える。本実施形態では、人造大理石10が、意匠層12及び基材層16とは異なる組成を有する中間層14を備えることを特徴とする。
【0009】
本実施形態では、意匠層12の厚みは、例えば0.30~0.60mmである。意匠層12は、人造大理石10の最上面に位置する意匠面12aを有する。従って、人造大理石10が住宅設備に用いられると、ユーザは意匠面12aを視認する。意匠層12は、樹脂材料で構成されている。本実施形態では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂であり、具体的には、不飽和ポリエステル樹脂である。変形例では、当該樹脂材料は、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の他の材料であってもよい。別の変形例では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂とは異なる樹脂材料(例えばウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂など)であってもよい。
【0010】
本実施形態では、基材層16の厚みは、例えば10mm以上である。基材層16の厚みの上限値は、特に限定されない。基材層16の厚みの上限値は、強度および成形性を考慮すると、30mm以下が好ましい。成形性をより重視する場合は、25mm以下、更には20mm以下が好ましい。基材層16は、樹脂材料で構成されている。本実施形態では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂であり、具体的には、不飽和ポリエステル樹脂である。変形例では、当該樹脂材料は、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の他の材料であってもよい。別の変形例では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂とは異なる樹脂材料(例えばウレタン樹脂)あってもよい。
図2に示すように、基材層16は、複数個のバルーン18を含む。バルーン18は、球状の中空体である。バルーン18は、有機材料で構成される。本実施形態では、バルーン18は、樹脂バルーンである。変形例では、バルーン18は、例えばセラミックバルーン等の無機材料で構成されてもよい。
【0011】
基材層16がバルーン18を含むと、基材層16がバルーン18を含まない場合と比べて、基材層16の密度が小さくなり、軽量な人造大理石10を実現することができる。基材層16の密度は、バルーン18の配合比によって調整可能である。軽量化を実現するためには、基材層16の密度は、1.5g/cm3以下であることが好ましく、本実施形態では0.5g/cm3である。変形例では、基材層16の密度は、1.5g/cm3より大きくてもよく、例えば1.7g/cm3であってもよい。
【0012】
バルーン18は、その内部に気体の層を有する。このため、基材層16の熱伝導率が低下し、人造大理石10の断熱性が高まる。人造大理石10の断熱性が高いと、例えば、冬場に人造大理石10に接したユーザが、人造大理石10を冷たいと感じてしまうことを抑制することができる。基材層16の熱伝導率は、バルーン18の配合比によって調整可能である。ユーザに不快感を与えることを抑制し得る断熱性を実現するためには、基材層16の熱伝導率は、1W/m・K以下であることが好ましく、本実施形態では0.11W/m・Kである。変形例では、基材層16の熱伝導度は、1W/m・Kより大きくてもよく、例えば1.1W/m・Kであってもよい。
【0013】
中間層14は、意匠層12と基材層16との間に位置する。中間層14は、樹脂材料で構成されている。本実施形態では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂であり、具体的には、不飽和ポリエステル樹脂である。変形例では、当該樹脂材料は、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の他の材料であってもよい。別の変形例では、当該樹脂材料は、熱硬化性樹脂とは異なる樹脂材料(例えばウレタン樹脂)あってもよい。
図2に示すように、中間層14は、バルーン18を含まないと共に、ガラス繊維20を含む。このため、中間層14は、ガラス繊維20を含まない意匠層12とは異なる組成を有すると共に、バルーン18を含む基材層16とは異なる組成を有する。変形例では、中間層14は、ガラス繊維20に代えて、例えばポリエステル、ビニロン等の有機繊維を含んでいてもよい。本実施形態では、1つのガラス繊維20の長さは、約200μmである。
【0014】
中間層14は、例えばスプレー塗布によって形成される。ガラス繊維20は、このようにして中間層14が形成される際の垂れ防止材として機能する。換言すると、ガラス繊維20は、中間層14の形成時の粘弾性調整材として機能する。ガラス繊維20は、さらに、中間層14の形成時の収縮抑制材としても機能する。具体的には、スプレー塗布されたウェット膜が硬化して収縮する際に、ガラス繊維20が膜の収縮を抑制することができる。この結果、硬化後の膜にしわが生じること抑制することができる。変形例では、中間層14は、垂れ防止材を含んでいなくてもよいし、収縮抑制材を含んでいなくてもよい。中間層14は、垂れ防止材及び収縮抑制材とは異なる他の材料を含んでいてもよい。
【0015】
中間層14の厚みについて説明する。本実施形態では、中間層14の厚みは、0.8mmである。中間層14の厚みは、0.1mm以上であることが好ましい。このような厚みであれば、人造大理石10の硬度の低下が防止される。中間層14の厚みは、0.3mm以上であることがより好ましい。このような厚みであれば、人造大理石10の落下耐久性が十分に維持される。中間層14の厚みは、0.5mm以上であることがより好ましい。このような厚みであれば、厚みのばらつきが少ない中間層14を形成することができる。中間層14の厚みは、1.1mm以下であるとよい。このような厚みであれば、中間層14の形成時の垂れを抑制することができる。変形例では、中間層14の厚みは、0.1mm未満であってもよく、例えば0.05mmであってもよい。別の変形例では、中間層14の厚みは、1.1mmより大きくてもよく、例えば0.12mmであってもよい。
【0016】
上述したように、人造大理石10は、複数個のバルーン18を含む基材層16を備える。このため、人造大理石10の軽量化を実現することができる。ただし、基材層16がバルーン18を含むと、人造大理石10の硬度が低下する。これを防止するために、本実施形態の人造大理石10は、さらに、意匠層12と基材層16との間に、意匠層12及び基材層16とは異なる組成を有する中間層14を備える。このため、意匠層12及び基材層16のみによって構成される人造大理石と比べると、硬度の低下が防止された人造大理石10を実現することができる。
【0017】
(人造大理石10の製造方法:
図3)
図3を参照して、人造大理石10の製造方法を説明する。意匠層12、中間層14、基材層16を形成する材料は、それぞれ、樹脂混合物X、Y、Zである。X、Y、及び、Zの詳細は、下記の実施例で説明する。
【0018】
まず、
図3の上図に示すように、型22が用意され、第1のスプレー工程が実行される。第1のスプレー工程では、型22の表面22aが上下方向に延びている状態において、意匠層12を構成する材料である樹脂混合物Xが、スプレーガンG1によって表面22aに塗布される。型22に塗布された樹脂混合物Xのウェット膜が硬化すると、意匠層12が形成される。
【0019】
図3の中央図に示すように、第1のスプレー工程後、第2のスプレー工程が実行される。第2のスプレー工程では、型22の表面22aが上下方向に延びている状態において、中間層14を構成する材料である樹脂混合物Yが、スプレーガンG2によって意匠層12上に塗布される。意匠層12上に塗布された樹脂混合物Yのウェット膜が硬化すると、中間層14が形成される。
【0020】
図3の下図に示すように、第2のスプレー工程後、注型工程が実行される。注型工程では、意匠層12及び中間層14が形成された面を底面とした型22内に、基材層16を構成する材料である樹脂混合物Zが流し込まれる。流し込んだ樹脂混合物Zが硬化すると、基材層16が形成される。その後、意匠層12、中間層14、及び、基材層16が型22から取り外されると、人造大理石10が完成する。
【0021】
(実施例)
実施例を説明する。意匠層12を構成する材料である樹脂混合物Xは、不飽和ポリエステル100重量部に対して、メチルエチルケトンパーオキサイト0.5~2重量部が硬化剤として添加されたものである。中間層14を構成する材料である樹脂混合物Yは、主剤に対して、メチルエチルケトンパーオキサイト及びジメチルフタレートの混合物が硬化剤として微量添加されたものである。主剤は、不飽和ポリエステル80重量部と、約200μmの長さを有するガラス繊維17~19重量部と、微量のオクテン酸コバルトと、を含み、具体的には、大泰化工(株)製の「MF-A主剤 #6978」である。基材層16を構成する材料である樹脂混合物Zは、不飽和ポリエステル100重量部、及び、樹脂バルーン(日本フィライト(株)製、EMC-80(B))15重量部に対して、メチルエチルケトンパーオキサイト0.5~2重量部が硬化剤として添加されたものである。
【0022】
図3に示される製造方法によって、樹脂混合物X、Y、及び、Zから人造大理石10が形成された。これにより、基材層16の密度が0.5g/cm
3であると共に、基材層16の熱伝導率が0.11W/m・Kである人造大理石10が得られた。
【0023】
第1及び第2のスプレー工程では、スプレーガンのエア圧力が0.15MPaである。第1のスプレー工程で形成される意匠層12の厚みを同じとして(例えば約0.35mm)、中間層14の厚みが異なる試料1~4のそれぞれを形成し、下記の性能評価試験を実施した。試料1、2、3、4のそれぞれの中間層14の厚みは、0.1、0.3、0.5、0.8mmである。
【0024】
比較例1として、中間層14を含まない人造大理石を形成した。比較例1の意匠層及び基材層は、実施例と同様の条件で形成された。そして、比較例1の人造大理石に対して、実施例と同様に性能評価試験を実施した。
【0025】
(性能評価試験:
図4)
図4に示すように、性能評価試験は、人造大理石10の硬度、落下耐久性、及び、中間層14の塗膜安定性のそれぞれを評価する試験である。評価基準が満たされるものを「〇(即ち良)」で示し、評価基準が満たされないものを「×(即ち不良)」で示す。
【0026】
試料の表面(即ち意匠面12a)のバーコル硬度をバーコル硬度計によって測定することによって、人造大理石10の硬度を評価した。評価基準としてバーコル硬度40以上を設定した。比較例1では、バーコル硬度が0であった(即ち硬度の評価は「×」であった)。試料1~4では、バーコル硬度が40以上であった(即ち硬度の評価は「〇」であった)。このことから、複数個のバルーン18を含む基材層16を備える場合であっても、0.1mm以上の厚みの中間層14を備えていれば、人造大理石10の硬度(即ち表面硬度)を向上できることが確認された。
【0027】
鋼球を人造大理石の意匠層に自然落下させて生じた打痕径及び表面状態を観察することによって、落下耐久性を評価した。意匠層の縦及び横の長さは、100mm×100mmである。鋼球の径、質量は、それぞれ、19mm、28.1gである。鋼球の落下高さは、700mmである。評価基準として、打痕径が3mm以下、かつ、意匠面にひび及び剥離がないことを設定した。比較例1及び試料1では、ひび及び剥離はなかった。但し、比較例1及び試料1では、打痕径が3mmより大きかった(即ち落下耐久性の評価は「×」であった)。試料2~4では、ひび及び剥離もなく、打痕径も3mm以下であった(即ち落下耐久性の評価は「〇」であった)。このことから、中間層14の厚みが0.3mm以上であれば、製品基準を満たす落下耐久性が確保されることが確認された。
【0028】
電子顕微鏡を用いて人造大理石10の断面構造の画像を観察することによって、中間層14の塗膜安定性を評価した。評価基準は、観察画像の目視において、中間層14と基材層16との間の境界面の凹凸が目立たないことに設定した。試料1及び試料2では、中間層14の厚みが一定ではなく、凹凸が目立った(即ち塗膜安定性の評価は「×」であった)。試料3及び試料4では、中間層14の厚みが一定であり、凹凸が目立たなかった(即ち塗膜安定性の評価は「〇」であった)。このことから、中間層14が0.5mm以上であれば、中間層14の塗膜安定性を向上できることが確認された。膜厚が大きくなると塗膜安定性が向上する理由は、中間層14に用いる樹脂材料の液特性にある。機能付与のためにガラス繊維を含む影響でスプレー塗布の液滴径が粗くなるため、塗工面平滑に必要な膜厚として0.5mm以上が必要である。
【0029】
(厚膜塗工性試験:
図5)
続いて、
図5に示すように、実施例の中間層14の厚膜塗工性を評価した。厚膜塗工性試験では、中間層14を構成する材料(即ち実施例の樹脂混合物Y)を型の表面にスプレーガンによって塗布することにより、所定の厚みの中間層14を単体で形成した。このとき、上記の表面が上下方向に延びている状態となるように型を設置し、上記の表面に対して垂直方向からスプレーガンによって樹脂混合物Yが塗布された。スプレー塗布条件については、エア圧力が0.15MPaであり、型の表面とスプレーガンとの間の距離が300mmである。
【0030】
本試験では、厚みが異なる複数の中間層14が形成され、各膜厚は、0.3、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3mmである。膜厚は、成膜直後の未硬化の膜厚である。各膜厚において、樹脂混合物Yの垂れが発生したのか否かを確認した。
図5には、各膜厚において、垂れが発生しなかったものを「〇」、垂れが発生したものを「×」で示す。
【0031】
図5の比較例2は、樹脂混合物Yに代えて、実施例の樹脂混合物Xが利用された場合の試験結果である。即ち、比較例2の材料は、樹脂混合物Yからガラス繊維を除いたものにほぼ等しい。
【0032】
実施例では、中間層14の厚みが0.3~1.1mmのときには垂れが生じず(即ち評価「〇」)、中間層14の厚みが1.3mmのときには垂れが生じた(即ち評価「×」)。このことから、中間層14の厚みが1.1mm以下であれば、スプレー塗布において垂れを生じることがなく、一定の厚みを有する中間層14を形成することができることが確認された。
【0033】
比較例2では、中間層の厚みが0.3~0.7mmのときには垂れが生じず(即ち評価「〇」)、中間層の厚みが0.9mmのときには垂れが生じた(即ち評価「×」)。以上から、実施例では、比較例2よりも中間層14の厚みが大きい場合であっても垂れが生じにくく、厚膜塗工性に優れていることが確認された。換言すると、中間層14がガラス繊維20を含むことによって、中間層14が形成される際の垂れが抑制された。
【0034】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明した。これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を列挙する。
【0035】
(変形例1)人造大理石10の構成は、上記実施形態の三層構造に限定されない。例えば、人造大理石10は、意匠層12と中間層14との間に別の層を備えていてもよいし、中間層14と基材層16との間に別の層を備えていてもよい。
【0036】
(変形例2)人造大理石10の製造方法は、上記実施形態に限定されない。第1のスプレー工程と第2のスプレー工程との間に別の層を形成する工程を備えていてもよいし、第2のスプレー工程と注型工程との間に別の層を形成する工程を備えていてもよい。
【0037】
(変形例3)上記の実施形態では、意匠層12、中間層14、及び、基材層16のそれぞれを構成する樹脂材料は、同じ不飽和ポリエステル樹脂である。これに代えて、意匠層12、中間層14、及び、基材層16のそれぞれを構成する樹脂材料は、異なる樹脂材料であってもよい。
【0038】
本明細書、及び図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書及び図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10:人造大理石、12:意匠層、14:中間層、16:基材層、18:バルーン、20:ガラス繊維、22:型、22a:表面