(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042932
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】無線タグ読取装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20230320BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G06K7/10 176
G06K7/10 108
G06K7/10 252
H04B1/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150364
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】坪田 啓太
(57)【要約】
【課題】推定される未読タグ数に応じて無線通信部の変調方式を切り替えることで効率的に読み取りを実施し得る構成を提供する。
【解決手段】無線タグ処理部30の変調方式が、第1の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に無線タグ処理部30によって読み取られた無線タグTの数が所定の減少状態となる場合に、第2の変調方式に切り替えられる制御が行われ、第2の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、第1の変調方式に切り替えられる制御が行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線タグに記憶されるデータを読み取る無線タグ読取装置であって、
所定の変調方式にて前記複数の無線タグと無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部の変調方式を制御する制御部と、
所定の単位時間中に現在位置から前記無線通信部によって読み取り可能な未読の無線タグの数を未読タグ数として推定する推定部と、
を備え、
読取精度よりも通信速度を重視する変調方式を第1の変調方式、前記第1の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第2の変調方式とするとき、
前記制御部は、
前記無線通信部の変調方式を、前記第1の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記無線通信部によって読み取られた無線タグの数が所定の減少状態となる場合に、前記第2の変調方式に切り替える制御を行い、前記第2の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記推定部の推定結果から前記未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、前記第1の変調方式に切り替える制御を行うことを特徴とする無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記推定部は、
複数のタイムスロットが設定される前記所定の単位時間中において2以上の無線タグからの応答波の衝突数を計数する衝突数計数部を備えて、
前記衝突数計数部により計数される前記応答波の衝突数に基づいて、前記未読タグ数が前記所定の増加状態であるか否かについて推定することを特徴とする請求項1に記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記推定部は、
複数のタイムスロットが設定される前記所定の単位時間中において2以上の無線タグからの応答波の衝突数を計数する衝突数計数部と、
前記単位時間中において前記無線通信部によって無線タグからの応答波が受信されないタイムスロットの数を無応答数として計数する無応答数計数部と、を備え、
前記衝突数計数部により計数される前記応答波の衝突数と前記無応答数計数部により計数される前記無応答数との比較結果に基づいて、前記未読タグ数が前記所定の増加状態であるか否かについて推定することを特徴とする請求項1に記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記タイムスロットの数を調整するスロット調整部と、
前記タイムスロットの数と前記応答波の衝突数とに基づいて前記タイムスロットの数の増加の要否について判定する判定部と、を備え、
前記推定部によって前記未読タグ数が前記所定の増加状態であると推定される場合に、前記判定部により前記タイムスロットの数の増加を要すると判定されると、前記スロット調整部により前記タイムスロットの数を増加させて、変調方式の切り替えを行わないことを特徴とする請求項2又は3に記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
前記第2の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第3の変調方式とするとき、
前記制御部は、
前記無線通信部の変調方式を、前記第2の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記無線通信部によって読み取られた無線タグの数が第2の減少状態となる場合に、前記第3の変調方式に切り替える制御を行い、前記第3の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記推定部の推定結果から前記未読タグ数が第2の増加状態であると推定される場合に、前記第2の変調方式に切り替える制御を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の無線タグ読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線タグに記憶されるデータを読み取る無線タグ読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棚卸業務等に関して業務の効率化を図るため、管理すべき各管理対象にそれぞれ付されたRFタグなどの無線タグを付して、これらの無線タグを一括で読み取った読取結果を利用する管理業務等が多く採用されている。このような用途では、多くの無線タグを短時間で読み取る必要があり、そのための技術として、例えば、下記特許文献1に開示されるタグ読み取り装置が知られている。このタグ読み取り装置は、読み取り可能なエリアに多数のタグが存在しタグ同士のIDがぶつかってコリジョンが多数発生する場合、まず、出力パワーを絞って読み取り可能なエリアを狭めることでコリジョンの発生を抑え、その狭めたエリアに存在する未読タグの数が少なくなってきたら、出力パワーを上げることで読み取り可能なエリアを広げて、残りのタグを読み取るように構成されている。このように、タグからの応答信号の受信状態に応じて出力パワーを制御することで、コリジョンの発生を抑制しつつ、不要な出力パワーの増加を抑制することで装置の低消費電力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、読み取るべき無線タグの数が多い場合には、無線タグの配置状態や無線タグ同士の干渉等により一部の無線タグの受信感度が悪くなるために無線通信できなくなる場合がある。上述のタグ読み取り装置のように出力パワーを増減する方法では、受信感度の悪い無線タグの読み取りを効率的に読み取ることは困難である。
【0005】
このため、出力パワーの増減に代えて、無線タグとの無線通信時の変調方式を変更することで、受信感度の悪い無線タグを含めた多くの無線タグを効率よく読み取ることができる。具体的には、例えば、高速通信にて読み取る変調方式(読取精度よりも通信速度を重視する変調方式)で受信感度が比較的良い状態の無線タグを多数読み取った後に、残りの受信感度が比較的悪い状態の無線タグを低速通信にて読み取る変調方式(通信速度よりも読取精度を重視する変調方式)に切り替えることで、より多くの無線タグを効率よく読み取ることができる。
【0006】
しかしながら、上述のように受信感度が比較的悪い状態の無線タグを読み取るために読取精度を重視する変調方式に切り替える構成では、その変更後に読み取り可能な範囲にある未だ読み取っていない無線タグ(以下、未読タグともいう)が増えた場合、通信速度を重視する変調方式に戻すための操作等を行わないと、読み取りに要する処理時間が長くなるために、効率的な読み取りが妨げられる可能性がある。例えば、ある作業エリアで読取作業を行うことで読取精度を重視する変調方式に切り替わった読取装置を携帯して次の作業エリアに移動する場合、その読取精度を重視する変調方式で多数の受信感度が比較的良い状態の無線タグを読み取るために、効率的な読み取りが妨げられてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、推定される未読タグ数に応じて無線通信部の変調方式を切り替えることで効率的に読み取りを実施し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
複数の無線タグ(T)に記憶されるデータを読み取る無線タグ読取装置(10)であって、
所定の変調方式にて前記複数の無線タグと無線通信する無線通信部(30)と、
前記無線通信部の変調方式を制御する制御部(21)と、
所定の単位時間中に現在位置から前記無線通信部によって読み取り可能な未読の無線タグの数を未読タグ数として推定する推定部(21)と、
を備え、
読取精度よりも通信速度を重視する変調方式を第1の変調方式、前記第1の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第2の変調方式とするとき、
前記制御部は、
前記無線通信部の変調方式を、前記第1の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記無線通信部によって読み取られた無線タグの数が所定の減少状態となる場合に、前記第2の変調方式に切り替える制御を行い、前記第2の変調方式に設定されている状態で前記所定の単位時間中に前記推定部の推定結果から前記未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、前記第1の変調方式に切り替える制御を行うことを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、読取精度よりも通信速度を重視する変調方式を第1の変調方式、この第1の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第2の変調方式とするとき、無線通信部の変調方式が、第1の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に無線通信部によって読み取られた無線タグの数が所定の減少状態となる場合に、第2の変調方式に切り替えられる制御が行われ、第2の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に推定部の推定結果から未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、第1の変調方式に切り替えられる制御が行われる。
【0010】
これにより、ある作業エリアで読取作業を行うことで第2の変調方式(通信速度よりも読取精度を重視する低速の変調方式)に切り替わった無線タグ読取装置を携帯して次の作業エリアに移動する場合には、推定部により未読タグ数が所定の増加状態であると推定されることで、第1の変調方式(読取精度よりも通信速度を重視する高速の変調方式)に切り替えられる。このように、推定される未読タグ数に応じて無線通信部の変調方式を切り替えることで、読み取り可能な範囲内の無線タグの数が変わる場合でも、効率的に読み取りを実施することができる。
【0011】
請求項2の発明では、推定部により、衝突数計数部により計数される応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定される。
【0012】
未読タグが多数ある場合でも、各未読タグからの応答波の衝突数が多くなっていると、読み取られた無線タグの数が少なくなる。すなわち、読み取られた無線タグの数が少ない場合でも、応答波の衝突数が多い場合には、未読タグが多数あると推定することができるので、応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定することができる。
【0013】
請求項3の発明では、推定部により、衝突数計数部により計数される応答波の衝突数と無応答数計数部により計数される無応答数との比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定される。
【0014】
未読タグが多数ある場合でも、各未読タグからの応答波の衝突数が多くなっていると、読み取られた無線タグの数が少なくなる。その一方で、未読タグが少ない場合でも、設定されるタイムスロットの数が少ないほど衝突数が多くなる。すなわち、無応答数に対して応答波の衝突数が多くなるほど未読タグの数が多いと推定することができる。このため、応答波の衝突数と無応答数との比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定することができる。特に、応答波の衝突数と無応答数との双方を考慮して未読タグ数が推定されるので、応答波の衝突数のみを考慮する場合と比較して、未読タグ数の推定精度を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明では、推定部によって未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、判定部によりタイムスロットの数の増加を要すると判定されると、スロット調整部によりタイムスロットの数を増加させて、変調方式の切り替えを行わない。
【0016】
設定されたタイムスロットの数が少ない場合には、応答波の衝突数が増加しやすいために未読タグ数が所定の増加状態であると推定されやすい。その一方、このような場合でも、タイムスロットの数を増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができれば、変調方式を切り替えなくても未読の無線タグを円滑に読み取ることができる。そして、タイムスロットの数を増減させる処理は、変調方式を切り替える処理に対して処理時間が短くなる。このため、少なく設定されていたタイムスロットの数を増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができる場合には、判定部によりタイムスロットの数の増加を要すると判定されることで、変調方式の切り替えを行うことなくタイムスロットの数を増加させる。このようなタイムスロットの数の増加によって残りの未読の無線タグを読み取ることができれば、変調方式の切り替えを行う必要もないので、効率的な読み取りの実施に寄与することができる。
【0017】
請求項5の発明では、第2の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第3の変調方式とするとき、無線通信部の変調方式が、第2の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に無線通信部によって読み取られた無線タグの数が第2の減少状態となる場合に、第3の変調方式に切り替えられる制御が行われ、第3の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に推定部の推定結果から未読タグ数が第2の増加状態であると推定される場合に、第2の変調方式に切り替えられる制御が行われる。
【0018】
これにより、変調方式の切り替え段階が細かくなることから、より環境変化に追従するように変調方式を切り替えることができるので、より効率的に読み取りを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る無線タグ読取装置の構成概要を示す説明図であり、
図1(A)は平面図を示し、
図1(B)は側面図を示す。
【
図2】
図2(A)は、
図1の無線タグ読取装置の電気的構成を例示するブロック図であり、
図2(B)は、
図2(A)の無線タグ処理部を概略的に例示するブロック図であり、
図2(C)は、
図2(A)の情報コード読取部を概略的に例示するブロック図である。
【
図3】第1実施形態において制御部にてなされる変調方式切り替え処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図4】第2実施形態において制御部にてなされる変調方式切り替え処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグ読取装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る無線タグ読取装置10は、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯型の情報読取端末として構成されており、アンテナを介して送受信される電波を媒介としRFタグなどの無線タグTに記憶されている情報を読み書きする機能に加えて、バーコードや二次元コードなどの情報コードを読み取る情報コードリーダとしての機能を兼ね備え、読み取りを二方式で行いうる構成となっている。
【0021】
図1(A),(B)に示すように、無線タグ読取装置10は、ABS樹脂等の合成樹脂材料により形成される上側ケース11aおよび下側ケース11bが組み付けられて構成される長手状の筐体11によって外郭が形成されている。また、上側ケース11aには、所定の情報を入力する際に操作されるファンクションキーおよびテンキー等のキー操作部25や、所定の情報を表示するための表示部24等が配置されている。また、下側ケース11bには、下方に向けて開口する読取口12が形成されている。
【0022】
図2(A)に示すように、無線タグ読取装置10の筐体11内には、無線タグ読取装置10全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ22とともに情報処理装置を構成している。メモリ22には、後述する変調方式切り替え処理や無線タグ読取処理等を実行するための所定のプログラム等が制御部21により実行可能に予め格納されている。
【0023】
また、制御部21には、LED23、表示部24、キー操作部25、バイブレータ26、ブザー27、外部インタフェース28などが接続されている。キー操作部25は、制御部21に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。また、LED23、表示部24、バイブレータ26およびブザー27は、制御部21によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部21からの指令を受けて動作する。外部インタフェース28は、サーバ等の外部機器との間で所定のネットワークを介してデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体11内には、電源部29が設けられており、この電源部29やバッテリ29aによって制御部21や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0024】
また、制御部21には、無線タグ処理部30および情報コード読取部40が接続されている。
まず、無線タグ処理部30について、
図2(B)を用いて説明する。
無線タグ処理部30は、制御部21により制御された所定の変調方式にて複数の無線タグTと無線通信する無線通信部として機能するもので、アンテナ34および制御部21と協働して無線タグTとの間で電磁波による通信を行ない、無線タグTに記憶されるデータの読取り、或いは無線タグTに対するデータの書込みを行なう。この無線タグ処理部30は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、
図2(B)にて概略的に示すように、送信回路31、受信回路32、整合回路33などを有している。
【0025】
送信回路31は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定の周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御部21に接続されており、当該制御部21より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によって変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を、整合回路33を介してアンテナ34に出力している。このようにしてアンテナ34に送信信号が出力されると、その送信信号が送信電波として当該アンテナ34より外部に放射される。
【0026】
一方、アンテナ34によって受信された応答信号は、整合回路33を介して受信回路32に入力される。この受信回路32は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ34を介して受信された応答信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御部21に出力している。
【0027】
特に、本実施形態では、現在位置から読み取り可能な範囲にある未だ読み取っていない無線タグ(未読タグ)の数(未読タグ数)の推定結果に応じて、制御部21により無線タグ処理部30が制御されることで、無線タグTとの無線通信時の変調方式が切り替えられる。この具体的な変調方式切り替え処理等については後述する。
【0028】
次に、情報コード読取部40について、
図2(C)を用いて説明する。
情報コード読取部40は、情報コードを光学的に読み取るように機能するもので、
図2(C)に示すように、CCDエリアセンサからなる受光センサ43、結像レンズ42、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部41などを備えた構成をなしており、制御部21と協働して読取対象Rに付された情報コードC(バーコードや二次元コード)を読み取るように機能する。
【0029】
この情報コード読取部40によって読み取りを行う場合、まず、制御部21によって指令を受けた照明部41から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口12を通って読取対象Rに照射される。そして、照明光Lfが情報コードCにて反射した反射光Lrは読取口12を通って装置内に取り込まれ、結像レンズ42を通って受光センサ43に受光される。読取口12と受光センサ43との間に配される結像レンズ42は、情報コードCの像を受光センサ43上に結像させる構成をなしており、受光センサ43はこの情報コードCの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ43から出力された受光信号は、画像データとしてメモリ22(
図2(A))に記憶され、情報コードCに含まれる情報を取得するためのデコード処理に用いられるようになっている。なお、情報コード読取部40には、受光センサ43からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。
【0030】
次に、未読タグの数の推定結果に応じて、無線タグ処理部30による無線タグTとの無線通信時の変調方式が切り替えられる本実施形態の特徴的構成について詳述する。
本実施形態では、無線タグ処理部30を利用した無線通信時に切り替えられる変調方式として、読取精度よりも通信速度を重視する第1の変調方式と、この第1の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する第2の変調方式とが採用されている。具体的には、例えば、GS1 Gen2の規格において、第1の変調方式として、Tari=12.5μs,BLF=400kHz,FM0ベースバンドで動作する変調方式が採用され、第2の変調方式として、Tari=25.0μs,BLF=250kHz,ミラーサブキャリア(M=4)で動作する変調方式が採用される。なお、第1の変調方式及び第2の変調方式として、上述のような変調方式が採用されることに限らず、読取精度よりも通信速度を重視する変調方式と通信速度よりも読取精度を重視する変調方式とであれば、他の変調方式が採用されてもよい。
【0031】
第1の変調方式では、受信感度が比較的良い状態の無線タグTを短時間で多数読み取ることができ、第2の変調方式では、受信感度が比較的悪い状態の無線タグTであっても丁寧に読み取ることができる。このため、最初に第1の変調方式にて読み取りやすい大部分の無線タグTを短時間で読み取った後に、第2の変調方式にて残りの読み取り難い少数の無線タグTを確実に読み取ることができ、多数の無線タグTを効率よく読み取ることができる。
【0032】
しかしながら、例えば、ある作業エリアで読取作業を行うことで第2の変調方式に切り替わった読取装置を携帯して次の作業エリアに移動する場合、その第2の変調方式で多数の受信感度が比較的良い状態の無線タグTを読み取るために、効率的な読み取りが妨げられる場合がある。具体的には、例えば、第1の棚の読み取り難い無線タグTを読み取るために第2の変調方式に切り替わることで第1の棚の全ての無線タグTの読み取りを終えた後、次の第2の棚に移動して読取作業を継続する場合が想定される。このように第2の棚に移動した場合、その第2の棚に読み取りやすい未読の無線タグT(受信感度が比較的良い状態の未読の無線タグT)が多数あっても、第2の変調方式にて読み取りが行われるため、読取時間が長くなる結果、効率的な読み取りが妨げられてしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、単位時間(インベントリごと:読み取り1サイクル)中に読み取られた無線タグTの数が減ってくることで通信速度重視の第1の変調方式から読取精度重視の第2の変調方式に切り替えた後、単位時間中での未読タグ数を推定してこの推定結果から未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に、第2の変調方式から第1の変調方式に切り替える処理を行う。上述のように未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合としては、例えば、未読タグ数が予め設定される閾値を超える場合が想定される。
【0034】
具体的には、本実施形態では、無線タグTの読み取りは、タイムスロット方式でアンチコリジョンを行っており、上記未読タグ数の推定結果に関して求められる単位時間中での応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定される。未読タグが多数ある場合でも、各未読タグからの応答波の衝突数が多くなっていると、読み取られた無線タグTの数が少なくなる。すなわち、読み取られた無線タグTの数が少ない場合でも、応答波の衝突数が多い場合には、未読タグが多数あると推定することができるので、応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定することができる。なお、上記未読タグ数の推定結果に関して応答波の衝突数を計数する衝突数計数処理を行う制御部21は、「衝突数計数部」の一例に相当し、上述のように未読タグ数を推定する推定処理を行う制御部21は、「推定部」の一例に相当し得る。
【0035】
以下、未読タグ数の推定結果に応じて、無線タグ処理部30による無線タグTとの無線通信時の変調方式を切り替える変調方式切り替え処理について、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、変調方式切り替え処理の開始時には、無線通信時の変調方式は、上記第1の変調方式に設定されているものとする。
【0036】
棚卸作業等において多くの無線タグTを読み取るために制御部21にて無線タグ読取処理が開始される際、並行して制御部21にて変調方式切り替え処理が開始される。この変調方式切り替え処理では、まず、
図3のステップS101に示す判定処理にて、上記単位時間中に無線タグ読取処理にて読み取られた無線タグTの数(以下、タグ応答数ともいう)が所定の減少状態であるか否かについて判定される。ここで、作業開始直後であることから受信感度が比較的良い状態の多くの無線タグTが次々読み取られているために、タグ応答数が多くなることで、タグ応答数が所定の減少状態でないと判定されると、ステップS101にてNoと判定される。
【0037】
一方、読取作業が進むことでタグ応答数が徐々に少なくなったために、タグ応答数が所定の減少状態であると判定されると(S101でYes)、無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に設定されていない場合(上記第1の変調方式に設定されている場合)に(S103でNo)、無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に切り替えられる(S105)。これにより、通信速度重視の第1の変調方式から読取精度重視の第2の変調方式に切り替えられて、受信感度が比較的悪い状態の無線タグTであっても読み取ることができる。
【0038】
上述のように無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に切り替えられるか(S105)、タグ応答数が所定の減少状態でないと判定されない場合には(S101でNo)、ステップS107の判定処理にて、未読タグ数が所定の増加状態であるか否かについて判定される。上述のように、応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態でないと判定されると(S107でNo)、上記無線タグ読取処理が終了していない場合には(S113でNo)、上記ステップS101の判定処理からの処理が繰り返される。
【0039】
一方、応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であると判定されると(S107でYes)、無線通信時の変調方式が上記第1の変調方式に設定されていない場合(上記第2の変調方式に設定されている場合)に(S109でNo)、無線通信時の変調方式が上記第1の変調方式に切り替えられる(S111)。これにより、読み取りやすい未読の無線タグTが多数ある作業エリアに移動したような場合には、読取精度重視の第2の変調方式から通信速度重視の第1の変調方式に切り替えられることで、読み取りやすい未読の無線タグTを短時間で多数読み取ることができる。
【0040】
その後、移動先での読取作業が進むことでタグ応答数が徐々に少なくなったために、タグ応答数が所定の減少状態であると判定されると(S101でYes)、無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に切り替えられるため(S105)、残りの受信感度が比較的悪い状態の無線タグTを効率よく読み取ることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る無線タグ読取装置10では、無線タグ処理部30の変調方式が、第1の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に無線タグ処理部30によって読み取られた無線タグTの数が所定の減少状態となる場合に(S103でNo,S101でYes)、第2の変調方式に切り替えられる制御が行われ(S105)、第2の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に(S109でNo,S107でYes)、第1の変調方式に切り替えられる制御が行われる(S111)。
【0042】
これにより、ある作業エリアで読取作業を行うことで第2の変調方式に切り替わった無線タグ読取装置10を携帯して次の作業エリアに移動する場合には、未読タグ数が所定の増加状態であると推定されることで、第1の変調方式に切り替えられる。このように、推定される未読タグ数に応じて無線タグ処理部30の変調方式を切り替えることで、読み取り可能な範囲内の無線タグTの数が変わる場合でも、効率的に読み取りを実施することができる。
【0043】
特に、上記衝突数計数処理により計数される応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定される。上述のように、読み取られた無線タグTの数が少ない場合でも、応答波の衝突数が多い場合には、未読タグが多数あると推定することができるので、応答波の衝突数に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定することができる。
【0044】
なお、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについての判定は、上述のように応答波の衝突数に基づいてなされることに限らず、他の未読タグ数に影響する要因、例えば、無応答数(応答波も衝突も検出されないタイムスロットの数)に基づいてなされてもよい。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る無線タグ読取装置について、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、応答波の衝突数と無応答数との比較結果に基づいて未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定し、タイムスロットの数によってはそのタイムスロットの数を増減させる一方で変調方式の切り替えを行わない点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
未読タグが多数ある場合でも、各未読タグからの応答波の衝突数が多くなっていると、読み取られた無線タグTの数が少なくなる。その一方で、未読タグが少ない場合でも、設定されるタイムスロットの数が少ないほど衝突数が多くなる。すなわち、無応答数(応答波も衝突も検出されないタイムスロットの数)に対して応答波の衝突数が多くなるほど未読タグの数が多いと推定することができる。
【0047】
そこで、本実施形態における変調方式切り替え処理では、応答波の衝突数と無応答数とをそれぞれ計数して、これら応答波の衝突数と無応答数とを比較した比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定する。具体的には、応答波の衝突数が無応答数よりも多い場合に、未読タグ数が上記所定の増加状態であると推定する。そして、未読タグ数が上記所定の増加状態であると推定される場合に、第2の変調方式から第1の変調方式に切り替える処理を行う。なお、上述のように応答波の衝突数が無応答数よりも多い場合に、未読タグ数が上記所定の増加状態であると推定することに限らず、設定されるタイムスロットの数や周囲環境等に応じて、例えば、無応答数に対する応答波の衝突数の比率が所定値以上となる場合に、未読タグ数が上記所定の増加状態であると推定してもよい。なお、上述のように無応答数を計数する無応答数計数処理を行う制御部21は、「無応答数計数部」の一例に相当し得る。
【0048】
また、設定されたタイムスロットの数が少ない場合には、応答波の衝突数が増加しやすいために未読タグ数が上記所定の増加状態であると推定されやすい。その一方、このような場合でも、タイムスロットの数を1段階増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができれば、変調方式を切り替えなくても未読の無線タグTを円滑に読み取ることができる。そして、タイムスロットの数を段階的に増減させる処理は、変調方式を切り替える処理に対して処理時間が短くなる。
【0049】
このため、本実施形態における変調方式切り替え処理では、少なく設定されていたタイムスロットの数を1段階増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができる場合には、変調方式を切り替えることなく、タイムスロットの数の増加を要するとして、タイムスロットの数を1段階増加させることで、無線タグ読取処理に関して処理時間の短縮を図ることができる。なお、タイムスロットの数を段階的に増減させるように調整する処理を行う制御部21は、「スロット調整部」の一例に相当し得る。
【0050】
以下、本実施形態において、制御部21にてなされる変調方式切り替え処理について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
制御部21にて変調方式切り替え処理が開始され、
図4のステップS101に示す判定処理にて、タグ応答数が所定の減少状態であると判定されると(S101でYes)、無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に設定されていない場合(上記第1の変調方式に設定されている場合)には(S103でNo)、ステップS201の判定処理にて、スロット数の減少を要するか否かについて判定される。ここで、タイムスロットの数に対して応答波の衝突数が比較的少なく無応答数が比較的多い場合には、スロット数の減少を要すると判定されて(S201でYes)、ステップS203にてスロット数を1段階減少するための処理がなされる。このように不要なスロット数を減少することで、読み取り時間を短縮することができる。
【0051】
一方、スロット数の減少を要すると判定されない場合には(S201でNo)、無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に切り替えられる(S105)。
【0052】
上述のように無線通信時の変調方式が上記第2の変調方式に切り替えられるか(S105)、タグ応答数が所定の減少状態でないと判定されないか(S101でNo)、スロット数が減少されると(S203)、ステップS205の判定処理にて、未読タグ数が所定の増加状態であるか否かについて判定される。
【0053】
本実施形態では、上述したように、応答波の衝突数と無応答数とを比較した比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて判定される。ここで、応答波の衝突数が無応答数よりも多くなることから未読タグ数が上記所定の増加状態であると判定されると(S205でYes)、無線通信時の変調方式が上記第1の変調方式に設定されていない場合(上記第2の変調方式に設定されている場合)に(S109でNo)、ステップS207の判定処理にて、スロット数の増加を要するか否かについて判定される。
【0054】
ここで、少なく設定されていたタイムスロットの数を1段階増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができる場合には、スロット数の増加を要すると判定されて(S207でYes)、ステップS209にてスロット数を1段階増加するための処理がなされる。一方、既にタイムスロットの数を上限近くまで増加させているためにタイムスロットの数を増加できない等の場合には、スロット数の増加を要しないと判定されて(S207でNo)、無線通信時の変調方式が上記第1の変調方式に切り替えられる(S111)。なお、タイムスロットの数と応答波の衝突数とに基づいてタイムスロットの数の増加の要否について判定する処理(S207の判定処理)を行う制御部21は、「判定部」の一例に相当し得る。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る無線タグ読取装置10では、衝突数計数処理により計数される応答波の衝突数と無応答数計数処理により計数される無応答数との比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定される。
【0056】
このように、応答波の衝突数と無応答数との比較結果に基づいて、未読タグ数が上記所定の増加状態であるか否かについて推定することができる。特に、応答波の衝突数と無応答数との双方を考慮して未読タグ数が推定されるので、応答波の衝突数のみを考慮する場合と比較して、未読タグ数の推定精度を向上させることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、未読タグ数が所定の増加状態であると推定される場合に(S205でYes)、タイムスロットの数の増加を要すると判定されると(S207でYes)、タイムスロットの数を増加させて(S209)、変調方式の切り替えを行わない。
【0058】
このように、少なく設定されていたタイムスロットの数を増加させることで応答波の衝突数を効果的に減らすことができる場合には、タイムスロットの数の増加を要すると判定されることで、変調方式の切り替えを行うことなくタイムスロットの数を増加させる。このようなタイムスロットの数の増加によって残りの未読の無線タグTを読み取ることができれば、変調方式の切り替えを行う必要もないので、効率的な読み取りの実施に寄与することができる。
【0059】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)変調方式切り替え処理によって切り替えられる無線タグ処理部30の変調方式は、上述した第1の変調方式及び第2の変調方式の2つが採用されることに限らず、3つ以上の変調方式が採用されてもよい。例えば、第2の変調方式に対して通信速度よりも読取精度を重視する変調方式を第3の変調方式とするとき、無線タグ処理部30の変調方式は、第2の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に無線タグ処理部30によって読み取られた無線タグTの数が第2の減少状態となる場合に、第3の変調方式に切り替えられる制御が行われ、第3の変調方式に設定されている状態で所定の単位時間中に未読タグ数が第2の増加状態であると推定される場合に、第2の変調方式に切り替えられる制御が行われてもよい。これにより、変調方式の切り替え段階が細かくなることから、より環境変化に追従するように変調方式を切り替えることができるので、より効率的に読み取りを実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10…無線タグ読取装置
21…制御部(推定部,衝突数計数部,無応答数計数部,判定部,スロット調整部)
30…無線タグ処理部(無線通信部)
T…無線タグ