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  • 特開-試験システム及び試験方法 図1
  • 特開-試験システム及び試験方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042934
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】試験システム及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20230320BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150366
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐次
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD18
2G024BA06
2G024CA01
2G024CA02
2G024CA03
2G024FA06
(57)【要約】
【課題】ワークを輸送することなく、ワークの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することが可能な試験システムを実現する。
【解決手段】試験システム(S)は、コンピュータ(3)と3Dプリンタ(4)と試験装置(5)とを備えている。コンピュータ(3)は、ワーク(W)の立体形状を示す形状データ(D1)及びワーク(W)の材料を示す材料データ(D2)を取得する。3Dプリンタ(4)は、形状データ(D)1の示す立体形状を有する構造物(Wa)を造形する。試験装置(5)は、材料データ(D2)の示す材料により構成された試験片(P)を構造物(Wa)に付加することによって作成された擬似ワーク(Wb)の試験を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの立体形状を示す形状データ及びワークの材料を示す材料データを取得するコンピュータと、
前記形状データの示す立体形状を有する構造物を造形する3Dプリンタと、
前記材料データの示す材料により構成された試験片を前記構造物に付加することによって作成された擬似ワークの試験を行う試験装置と、を備えている、
ことを特徴とする試験システム。
【請求項2】
前記試験装置は、前記擬似ワークに表面加工を施す加工機と、前記表面加工が施された前記擬似ワークの表面状態を測定する測定器と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の試験システム。
【請求項3】
前記形状データを生成する3Dスキャナと、
前記形状データ及び前記材料データを前記コンピュータに提供すると共に、前記試験の結果を示す結果データを前記コンピュータから取得する他のコンピュータと、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の試験システム。
【請求項4】
ワークの立体形状を示す形状データ及びワークの材料を示す材料データを取得する工程と、
前記形状データの示す立体形状を有する構造物を造形する工程と、
前記材料データの示す材料により構成された試験片を前記構造物に付加することによって作成された擬似ワークの試験を行う工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする試験方法。
【請求項5】
前記試験を行う工程は、前記擬似ワークの表面加工を行う工程と、表面加工された前記擬似ワークの表面状態を測定する工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項4に記載の試験方法。
【請求項6】
前記形状データを生成する工程と、
前記形状データ及び前記材料データを提供する工程と、
前記試験の結果を示す結果データを取得する工程と、を更に含んでいる、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの試験を行う試験システム及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ショットブラストやマイクロブラストなどのブラスト加工、ショットピーニングやレーザピーニングなどのピーニング加工、バレル研摩やブラシ研摩などの研摩加工、ローラバニシングなどのバニシング加工など、様々な表面加工が実用化されている。高品質な表面加工を実現するためには、加工後のワークの表面状態を試験する技術が重要になる。試験で確認するべき表面状態としては、例えば、粗度、硬度、残留応力、結晶粒径などが挙げられる。例えば、特許文献1には、表面加工を施したワークの残留応力等を、電気的に試験する表面特性試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-224073号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工後の表面状態を試験するためには、表面加工の目的に応じた測定装置が必要になる。このため、例えば、加工装置を所持しているが、測定装置を所持していないユーザは、このような試験を加工装置の製造メーカ等に依頼することになる。しかしながら、このような遠隔試験には、試験を依頼する依頼者のもとから試験を実施する試験者のもとまでワークを輸送する手間、時間、及びコストを要するという問題がある。ワークの一部を依頼者のもとから試験者のもとへと輸送する、或いは、ワークの材質と同じ材質の試験片を試験者側で用意して試験を行うなどの対策が考えられるが、この場合、ワークの形状まで考慮に入れた試験を実施することができないという問題を招来する。表面加工以外の各種加工についても、同様の問題が生じ得る。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークを輸送することなく、ワークの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することが可能な試験システム及び試験方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る試験システムは、ワークの立体形状を示す形状データ及びワークの材料を示す材料データを取得するコンピュータと、前記形状データの示す立体形状を有する構造物を造形する3Dプリンタと、前記材料データの示す材料により構成された試験片を前記構造物に付加するによって作成された擬似ワークの試験を行う試験装置と、を備えている。
【0007】
本発明の一態様に係る試験方法は、ワークの立体形状を示す形状データ及びワークの材料を示す材料データを取得する工程と、前記形状データの示す立体形状を有する構造物を造形する工程と、前記材料データの示す材料により構成された試験片を前記構造物に付加することによって作成された擬似ワークの試験を行う工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ワークを輸送することなく、ワークの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る試験システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る試験方法の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(試験システムの構成)
本発明の一実施形態に係る試験システムSの構成について、図1を参照して説明する。図1は、試験システムSの構成を示すブロック図である。
【0011】
試験システムSは、図1に示すように、3Dスキャナ1、コンピュータ2、コンピュータ3、3Dプリンタ4、及び試験装置5を含んでいる。3Dスキャナ1、及びコンピュータ2は、試験を依頼する依頼者側の装置であり、コンピュータ3、3Dプリンタ4、及び試験装置5は、試験を実施する試験者側の装置である。
【0012】
3Dスキャナ1は、ワークWの立体形状を示す形状データを作成する。そして、3Dスキャナ1は、形状データD1をコンピュータ2に提供する。依頼者は、キーボード等を介して、ワークWの材料を表す材料データをコンピュータ2に入力する。コンピュータ2は、3Dスキャナ1から取得した形状データD1及び依頼者から取得した材料データD2を、コンピュータ3に提供する。
【0013】
コンピュータ3は、コンピュータ2から取得した形状データD1を3Dプリンタ4に入力する。3Dプリンタ34は、コンピュータ3から取得した形状データD1の表す立体形状を有する構造物Wa、すなわち、ワークWと同一又は略同一の形状を有する構造物Waを造形する。構造物Waの材料は特に限定されず、金属であってもよいし、樹脂であってもよい。また、試験者側のコンピュータ3は、依頼者側のコンピュータ2から取得した材料データD2を、ディスプレイ等を介して、試験者に提供する。試験者は、コンピュータ3から取得した材料データD2の示す材料に対応する試験片Pを、予め用意された試験片セットの中から選択する。ここで、材料データD2の示す材料に対応する試験片Pとは、材料データD2の示す材料と同一の材料により構成された試験片、又は、試験片セットに含まれる試験片のなかで、性質が材料データD2の示す材料に最も近い材料により構成された試験片のことを指す。そして、試験者は、選択された試験片Pを3Dプリンタ4により造形された構造物Waに付加する(埋め込んでもよいし、貼り付けてもよい)ことによって、擬似ワークWbを作成する。試験装置5は、擬似ワークWbの試験を行い、その試験の結果を表す結果データD3をコンピュータ3に提供する。
【0014】
コンピュータ2は、試験装置5から取得した結果データD3を、コンピュータ2に提供する。コンピュータ2は、ディスプレイ等を介して、結果データの示す結果を、依頼者に提供する。
【0015】
なお、本実施形態において、試験装置5は、加工機5aと測定器5bとにより構成されている。加工機5aは、擬似ワークWbに表面加工を施す。加工機5aの例としては、例えば、ショットブラストやマイクロブラストなどのブラスト加工を行うブラスト装置、ショットピーニングやレーザピーニングなどのピーニング加工を行うピーニング装置、バレル研摩やブラシ研摩などの研摩加工を行う研摩装置、又は、ローラバニシングなどのバニシング加工を行うバニシング装置が挙げられる。測定器5bは、表面加工が施された擬似ワークWbの表面状態を測定する。測定器5bの例としては、例えば、粗度、硬度、圧縮残留応力、及び結晶粒径の一部又は全部を測定する測定器などが挙げられる。
【0016】
以上のように、試験システムSは、ワークWの立体形状を示す形状データD1及びワークの材料を示す材料データD2を取得するコンピュータ3と、形状データD1の示す立体形状を有する構造物Waを造形する3Dプリンタ4と、材料データD2の示す材料により構成された試験片Pを構造物Waに付加することによって作成された擬似ワークWbの試験を行う試験装置5と、を備えている。
【0017】
このため、試験者は、形状がワークWと同一又は略同一であり、且つ、一部において材料がワークWと同一又は略同一である擬似ワークWbを用いた試験を行うことができる。したがって、ワークWを輸送することなく、ワークWの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することができる。
【0018】
また、試験システムSの試験装置5は、擬似ワークWbに表面加工を施す加工機5aと、表面加工が施された擬似ワークのWbの表面状態を測定する測定器5bと、を含んでいる。
【0019】
このため、表面加工に関して、ワークWを輸送することなく、ワークWの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することができる。
【0020】
また、試験システムSは、形状データD1を生成する3Dスキャナ1と、形状データD1及び材料データD2をコンピュータ2に提供すると共に、試験の結果を示す結果データD3をコンピュータ3から取得するコンピュータ3と、を更に備えている。
【0021】
このため、依頼者は、遠隔試験を容易に依頼することができ、また、遠隔試験の結果を容易に知ることができる。
【0022】
(試験方法の流れ)
本発明の一実施形態に係る試験方法Mの流れについて、図2を参照して説明する。図2は、試験方法Mの流れを示すフロー図である。
【0023】
試験方法Mは、図2に示すように、形状データ生成工程M1、材料データ入力工程M2、形状・材料データ提供/取得工程M3、構造物造形工程M4、試験片選択工程M5、擬似ワーク作成工程M6は、試験工程M7、結果データ提供/取得工程M8、及び結果データ出力工程M9を含んでいる。形状データ生成工程M1、材料データ入力工程M2、及び結果データ出力工程M9は、依頼者側で実施される工程であり、構造物造形工程M4、試験片選択工程M5、擬似ワーク作成工程M6は、及び試験工程M7は、試験者側で実施される工程である。
【0024】
形状データ生成工程M1は、ワークWの立体形状を示す形状データD1を生成する工程である。本実施形態においては、依頼者が3Dスキャナ1を用いて形状データ生成工程M1を実施する。
【0025】
材料データ入力工程M2は、ワークWの材料を示す材料データD2をコンピュータ2に入力する工程である。本実施形態においては、依頼者がキーボード等を用いて材料データ入力工程を実施する。
【0026】
形状・材料データ提供/取得工程M3は、形状データ生成工程M1にて生成された形状データD1及び材料データ入力工程M2にて入力された材料データD2を、コンピュータ2がコンピュータ3に提供する、又は、コンピュータ3がコンピュータ2から取得する工程である。本実施形態においては、コンピュータ2及びコンピュータ3が形状・材料データ提供/取得工程M3を実施する。
【0027】
構造物造形工程M4は、形状・材料データ提供/取得工程M3にて取得した形状データの示す形状を有する構造物Waを造形する工程である。本実施形態においては、試験者が3Dプリンタ4を用いて構造物造形工程M4を実施する。
【0028】
試験片選択工程M5は、形状・材料データ提供/取得工程M3にて取得した材料データの示す材料により構成された試験片Pを予め与えられた試験片セットのなかから選択する工程である。本実施形態においては、試験者が試験片選択工程M5を実施する。
【0029】
擬似ワーク作成工程M6は、構造物造形工程M4にて造形された構造物Waに試験片選択工程M5にて選択された試験片Pを付加する工程である。本実施形態においては、試験者が擬似ワーク作成工程M6を実施する。
【0030】
試験工程M7は、擬似ワーク作成工程M6にて作成された擬似ワークWbの試験をする工程である。本実施形態においては、試験者が試験装置5を用いて試験工程M7を実施する。
【0031】
結果データ提供/取得工程M8は、試験の結果を示す結果データD3を、コンピュータ3がコンピュータ2に提供する、又は、コンピュータ2がコンピュータ3から取得する工程である。本実施形態においては、コンピュータ2及びコンピュータ3が結果データ提供/取得工程M8を実施する。
【0032】
結果データ出力工程M9は、結果データ提供/取得工程M8にて取得した結果データD3を出力する工程である。本実施形態においては、コンピュータ3がディスプレイ等を用いて結果データ出力工程M9を実施する。
【0033】
なお、本実施形態において、試験工程7は、加工工程M7aと測定工程M7bとを含んでいる。加工工程M7aは、擬似ワークWbに表面加工を施す工程である。表面加工の例としては、例えば、ショットブラストやマイクロブラストなどのブラスト加工、ショットピーニングやレーザピーニングなどのピーニング加工、バレル研摩やブラシ研摩などの研摩加工、又はローラバニシングなどのバニシング加工が挙げられる。測定工程M7bは、表面加工が施された擬似ワークWbの表面状態を測定する工程である。測定する表面状態の例としては、例えば、粗度、硬度、圧縮残留応力、及び結晶粒径の一部又は全部が挙げられる。
【0034】
以上のように、試験方法Mは、ワークWの立体形状を示す形状データD1及びワークWの材料を示す材料データD2を取得する形状・材料データ提供/取得工程M3と、形状データD1の示す立体形状を有する構造物Waを造形する構造物造形工程M4と、材料データD2の示す材料により構成された試験片Pを構造物Waに付加することによって作成された擬似ワークWbの試験を行う試験工程M7と、を含んでいる。
【0035】
このため、試験者は、形状がワークWと同一又は略同一であり、且つ、一部において材料がワークWと同一又は略同一である擬似ワークWbを用いた試験を行うことができる。したがって、ワークWを輸送することなく、ワークWの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することができる。
【0036】
また、試験方法Mの試験工程M7は、擬似ワークWbの表面加工を行う加工工程M7aと、表面加工された擬似ワークWbの表面状態を測定する測定工程M7bと、を含んでいる。
【0037】
このため、表面加工に関して、ワークWを輸送することなく、ワークWの形状まで考慮にいれた試験を遠隔実施することができる。
【0038】
また、試験方法Mは、形状データD1を生成する形状データ生成工程M1と、形状データD1及び材料データD2を提供する形状・材料データ提供/取得工程M3と、試験の結果を示す結果データD3を取得する結果データ提供/取得工程M8と、を更に含んでいる。
【0039】
このため、依頼者は、遠隔試験を容易に依頼することができ、また、遠隔試験の結果を容易に知ることができる。
【0040】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態に開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
S 試験システム
1 3Dスキャナ
2 コンピュータ
3 コンピュータ
4 3Dプリンタ
5 試験装置
W ワーク
Wa 構造物
Wb 擬似ワーク
図1
図2