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特開2023-42939エンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042939
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】エンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタ
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20230320BHJP
   F02D 41/12 20060101ALI20230320BHJP
   F02D 41/32 20060101ALI20230320BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20230320BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230320BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
F02D41/04
F02D41/12
F02D41/32
F02D43/00 301K
F02D43/00 301H
F02D43/00 301B
B64C27/08
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150372
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】梶間 弘和
【テーマコード(参考)】
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G301HA01
3G301JA28
3G301KA16
3G301LA01
3G301LC04
3G301MA11
3G301NE01
3G301NE11
3G301PA07Z
3G301PE01Z
3G384AA22
3G384BA03
3G384BA05
3G384BA13
3G384BA24
3G384FA08Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】エンジンの空燃比がリッチになることを抑制できるエンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、エンジン制御装置5において、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を行っているときに、吸気圧を先読みしてインジェクタ57の燃料噴射量を制御する吸気圧先読み制御を行う。そして、この吸気圧先読み制御は、補正値算出ステップ(ステップS5)と、先読み吸気圧算出ステップ(ステップS6)と、燃料噴射量算出ステップ(ステップS7)と、燃料噴射ステップ(ステップS8)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単気筒で構成されるエンジンと、前記エンジンへの吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁と、吸気圧を検出する吸気圧検出部と、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射部と、を備えるエンジンシステムと、
前記エンジンシステムを制御する制御部と、
を有するエンジン制御装置において、
現在のエンジンサイクルにおける特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出された前記吸気圧を現サイクル吸気圧と定義し、
現在のエンジンサイクルよりも1つ前のエンジンサイクルにおける特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出された前記吸気圧を前サイクル吸気圧と定義するときに、
前記制御部は、
前記スロットル弁が閉弁動作を行っているときに、前記吸気圧を先読みして前記燃料噴射部の前記燃料の噴射を制御する吸気圧先読み制御を行い、
前記吸気圧先読み制御は、
前記前サイクル吸気圧の値から前記現サイクル吸気圧の値を減算して、補正値を算出する補正値算出ステップと、
前記現サイクル吸気圧の値から前記補正値を減算して、先読み吸気圧の値を算出する先読み吸気圧算出ステップと、
前記先読み吸気圧の値に基づいて前記燃料噴射部における前記燃料の噴射量の目標値を算出する燃料噴射量算出ステップと、
算出した前記燃料の噴射量の目標値で前記燃料噴射部から前記燃料を噴射する燃料噴射ステップと、
を備えること、
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
請求項1のエンジン制御装置において、
前記制御部は、
前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記吸気圧先読み制御を継続して行うこと、
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のエンジン制御装置において、
エンジン回転数を検出する回転数検出部を有し、
前記制御部は、
前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記回転数検出部により検出した前記エンジン回転数が目標回転数未満である場合には、前記エンジンの点火時期を進角させる点火時期進角制御を行うこと、
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項4】
請求項2のエンジン制御装置において、
エンジン回転数を検出する回転数検出部を有し、
前記制御部は、
前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記回転数検出部により検出した前記エンジン回転数が目標回転数未満である場合には、前記燃料噴射部における前記燃料の噴射量を増加させる噴射量増量制御を行うこと、
を特徴とするエンジン制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つのエンジン制御装置を有するマルチコプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電機に電力を供給するエンジンの吸気系統に用いられる吸気弁システムにおいて、ステップモータが内蔵された弁装置を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-203485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステップモータは脱調するおそれがあるところ、弁装置が閉弁動作を行っているときにステップモータが閉弁側に脱調すると、弁装置が目標開度よりも閉弁側の開度に過剰に閉弁して、エンジンへ供給される吸気量が不足して、エンジンの空燃比がリッチになるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、エンジンの空燃比がリッチになることを抑制できるエンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、単気筒で構成されるエンジンと、前記エンジンへの吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁と、吸気圧を検出する吸気圧検出部と、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射部と、を備えるエンジンシステムと、前記エンジンシステムを制御する制御部と、を有するエンジン制御装置において、現在のエンジンサイクルにおける特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出された前記吸気圧を現サイクル吸気圧と定義し、現在のエンジンサイクルよりも1つ前のエンジンサイクルにおける特定のタイミングにて前記吸気圧検出部により検出された前記吸気圧を前サイクル吸気圧と定義するときに、前記制御部は、前記スロットル弁が閉弁動作を行っているときに、前記吸気圧を先読みして前記燃料噴射部の前記燃料の噴射を制御する吸気圧先読み制御を行い、前記吸気圧先読み制御は、前記前サイクル吸気圧の値から前記現サイクル吸気圧の値を減算して、補正値を算出する補正値算出ステップと、前記現サイクル吸気圧の値から前記補正値を減算して、先読み吸気圧の値を算出する先読み吸気圧算出ステップと、前記先読み吸気圧の値に基づいて前記燃料噴射部における前記燃料の噴射量の目標値を算出する燃料噴射量算出ステップと、算出した前記燃料の噴射量の目標値で前記燃料噴射部から前記燃料を噴射する燃料噴射ステップと、を備えること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、スロットル弁が閉弁動作を行っているときに、現在の実際の吸気圧に近い先読み吸気圧に基づいて算出した燃料の噴射量の目標値で燃料噴射部から燃料を噴射するので、エンジンの空燃比がリッチになることを抑制できる。さらに、ステップモータが閉弁方向に脱調してエンジンへの吸気量が減ってエンジンの空燃比がリッチになり易い状況になった場合でも、エンジンの空燃比のリッチ度合いを小さくできる。
【0008】
上記の態様においては、前記制御部は、前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記吸気圧先読み制御を継続して行うこと、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、スロットル弁が閉弁動作を停止したときにステップモータが閉弁方向に脱調してエンジンへの吸気量が減ってエンジンの空燃比がリッチになり易い状況になった場合でも、エンジンの空燃比のリッチ度合いを小さくできる。
【0010】
上記の態様においては、エンジン回転数を検出する回転数検出部を有し、前記制御部は、前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記回転数検出部により検出した前記エンジン回転数が目標回転数未満である場合には、前記エンジンの点火時期を進角させる点火時期進角制御を行うこと、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、スロットル弁が閉弁動作を停止した後にエンジン回転数が目標回転数未満である場合であっても、エンジンの点火時期を進角させて、エンジンの出力が低下することを抑制できる。
【0012】
上記の態様においては、エンジン回転数を検出する回転数検出部を有し、前記制御部は、前記スロットル弁が閉弁動作を停止した後に、前記回転数検出部により検出した前記エンジン回転数が目標回転数未満である場合には、前記燃料噴射部における前記燃料の噴射量を増加させる噴射量増量制御を行うこと、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、スロットル弁が閉弁動作を停止した後にエンジン回転数が目標回転数未満である場合であっても、エンジンへの燃料の噴射量を増加させて、エンジンの出力が低下することを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、マルチコプタにおいて、上記のいずれか1つのエンジン制御装置を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示のエンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタによれば、エンジンの空燃比がリッチになることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のマルチコプタの外観斜視図である。
図2】本実施形態のマルチコプタの構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の発電用エンジンシステムとその関連機器の一部を示す概略構成図である。
図4】第1実施例の制御の内容を示すフローチャート図である。
図5】目標の燃料噴射量のマップの一例を示す図である。
図6】第1実施例のタイムチャートの一例を示す図である。
図7】第2実施例の制御の内容を示すフローチャート図である。
図8】第2実施例のタイムチャートの一例を示す図である。
図9】第3実施例の制御の内容を示すフローチャート図である。
図10】第3実施例のタイムチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示のエンジン制御装置、および、これを有するマルチコプタの実施形態について説明する。
【0018】
<マルチコプタについて>
まず、本実施形態のマルチコプタ1の概要について説明する。
【0019】
(マルチコプタの構成)
図1に示すように、本実施形態のマルチコプタ1は、機体11とエンジン発電ユニット12を有する。
【0020】
機体11には、プロペラ21とモータ22と機体本体部23が設けられている。
【0021】
プロペラ21は、複数設けられている。そして、この複数のプロペラ21を回転させることにより、マルチコプタ1は飛行する。
【0022】
モータ22は、各々のプロペラ21に設けられ、プロペラ21を回転させるために駆動する。モータ22は、図2に示すように、後述するESC34(インバータ)とパワーコントロールユニット33とを介して、後述するバッテリ31やジェネレータ42に電気的に接続されている。これにより、ジェネレータ42にて発電された電力やバッテリ31から放電される電力が、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22に供給される。
【0023】
機体本体部23には、図2に示すように、バッテリ31と、制御部32と、パワーコントロールユニット33と、ESC(Electric Speed Controller)34などが設けられている。
【0024】
バッテリ31は、電力を充放電可能な充放電部(二次電池、蓄電池)である。図2に示すように、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33を介して、ジェネレータ42と電気的に接続されており、ジェネレータ42で発電された電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を充電する。また、バッテリ31は、パワーコントロールユニット33とESC34とを介して、モータ22と電気的に接続されており、モータ22に供給する電力(すなわち、モータ22を駆動させる電力)を放電する。
【0025】
制御部32は、小型のコンピュータとして構成されており、マルチコプタ1の全体を制御する。例えば、制御部32は、発電用エンジンシステム40を制御して、ジェネレータ42での発電を制御する。また、本実施形態では、制御部32は、マルチコプタ1が有するエンジン制御装置5の一部を構成しており、発電用エンジンシステム40を制御する。なお、発電用エンジンシステム40は、本開示の「エンジンシステム」の一例である。
【0026】
パワーコントロールユニット33は、モータ22へ供給される電力を制御する装置である。このパワーコントロールユニット33は、ジェネレータ42で発電された電力を受給したり、バッテリ31との間で電力の供給および受給を行ったり、ESC34へ電力を供給したりする。
【0027】
ESC34は、モータ22の回転数を制御する装置である。このESC34は、パワーコントロールユニット33から供給される電力を、駆動電力として、モータ22に供給する。
【0028】
エンジン発電ユニット12は、図1図2に示すように、エンジン41を備える発電用エンジンシステム40と、ジェネレータ(すなわち、発電機)42と、を備えている。エンジン41は、ジェネレータ42の動力源である。すなわち、エンジン41は、モータ22とバッテリ31に供給する電力をジェネレータ42で発電するために駆動する。
【0029】
また、本実施形態のマルチコプタ1においては、モータ22とバッテリ31とエンジン41によりシリーズハイブリッドシステムが構成されている。すなわち、マルチコプタ1においては、エンジン41が発電のみに使用され、モータ22がプロペラ21の駆動に使用され、さらに電力を回収するためのバッテリ31を有するシステムが構成されている。このようにして、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電し、発電した電力でモータ22を駆動してプロペラ21を駆動することにより、飛行する。また、マルチコプタ1は、エンジン41の駆動によりジェネレータ42にて発電した際の余剰電力を、バッテリ31に一旦蓄え、必要に応じてモータ22の駆動に用いる。
【0030】
(マルチコプタの作用)
このような構成のマルチコプタ1は、モータ22に電力を供給し、複数のプロペラ21を回転させることにより飛行する。そして、プロペラ21の回転数を制御し、プロペラ21の回転によって得られる揚力をマルチコプタ1自体の重力とバランスさせることで、マルチコプタ1のホバリング飛行や前進・後進・左右移動飛行を実現させることができる。また、プロペラ21により発生させる揚力を大きくしてマルチコプタ1の上昇飛行を実現
させることができ、プロペラ21により発生させる揚力を小さくしてマルチコプタ1の下降飛行を実現させることができる。
【0031】
<発電用エンジンシステムとその関連機器について>
次に、発電用エンジンシステム40について説明する。
【0032】
図3に示すように、発電用エンジンシステム40は、単気筒で構成されるエンジン41を備える。エンジン41は、4サイクルのレシプロエンジンであり、シリンダブロック41a、燃焼室を含む1つの気筒51及びクランクシャフト52の他、周知の構成要素を含む。エンジン41には、気筒51に吸気を導入するためにエンジン41へ吸気が流れる吸気通路53と、気筒51から排気を導出するための排気通路54とが設けられる。吸気通路53の途中には、サージタンク53aが設けられ、そのサージタンク53aの上流側にはスロットル弁55が設けられる。サージタンク53aは吸気通路53の一部を構成する。スロットル弁55は、所定の閉弁側の開度(すなわち、アイドル目標開度(開度0の全閉開度よりも開弁側にある開度))と所定の開弁側の開度(すなわち、開弁停止開度)との間で開閉することにより、吸気通路53を流れる吸気量を調節するために開閉動作する。スロットル弁55は、ポペット式弁より構成され、弁座に対し往復駆動する弁体(図示略)と、その弁体を開度可変に駆動するためのステップモータ56とを含む。すなわち、スロットル弁55は、エンジン41への吸気量を調節するステップモータ式のスロットル弁である。この実施形態の発電用エンジンシステム40には、軽量化と部品削減のために弁体の開度(スロットル開度)を検出するためのスロットルセンサが設けられていない。スロットル弁55は、弁体で流路を開閉することにより、吸気通路53を流れる吸気量を調節するようになっている。
【0033】
吸気通路53には、この吸気通路53に燃料を噴射するための1つのインジェクタ57が設けられる。インジェクタ57は、エンジン41に燃料タンク(不図示)から供給される燃料(ガソリン)を噴射するように構成される。本実施形態のエンジン41は、一連の吸気行程、圧縮行程、爆発行程及び排気行程を含むエンジンサイクルをもって動作する。吸気通路53では、エンジンサイクルの吸気行程で導入された吸気と、インジェクタ57から吸気通路53に噴射された燃料とにより可燃性の混合気が形成される。なお、インジェクタ57は、本開示の「燃料噴射部」の一例である。
【0034】
エンジン41には、気筒51に対応して1つの点火プラグ58とイグニションコイル59が設けられる。点火プラグ58は、イグニションコイル59から出力される点火信号を受けてスパーク動作する。気筒51において、混合気は、エンジンサイクルの圧縮行程で点火プラグ58のスパーク動作により爆発・燃焼し、その爆発行程が経過する。燃焼後の排気は、排気行程で気筒51から排気通路54へ排出される。これら一連のエンジンサイクルを720℃Aのクランク角をもって周期的に繰り返すことで、エンジン41のクランクシャフト52が回転し、エンジン41に出力が得られる。
【0035】
エンジン41に設けられた回転数センサ61は、クランクシャフト52の回転数をエンジン回転数neとして検出する回転数検出部であり、その検出値に応じた電気信号を出力する。スロットル弁55より下流のサージタンク53aに設けられた吸気圧センサ62は、サージタンク53a(吸気通路53)における吸気圧(すなわち、エンジン41への吸気(吸気通路53を通ってエンジン41へ吸入される空気)の圧力)を検出し、その検出値に応じた電気信号を出力する吸気圧検出部である。なお、回転数センサ61と吸気圧センサ62は、本実施形態のエンジン制御装置5の一部である。
【0036】
制御部32には、回転数センサ61と吸気圧センサ62がそれぞれ電気的に接続される。また、制御部32には、スロットル弁55のステップモータ56、インジェクタ57及びイグニションコイル59がそれぞれ電気的に接続される。制御部32は、中央処理装置(CPU)、各種メモリ、外部入力回路及び外部出力回路等を含む。
【0037】
制御部32は、エンジン41を運転するために、回転数センサ61や吸気圧センサ62からの電気信号に基づいてスロットル弁55(詳しくは、ステップモータ56)、インジェクタ57及びイグニションコイル59をそれぞれ制御する。本実施形態では、制御部32は、エンジン制御装置5の一部であって、発電用エンジンシステム40を制御する。
【0038】
<エンジン制御装置で行われる制御について>
次に、本実施形態のエンジン制御装置5で行われる制御について説明する。エンジン制御装置5は、発電用エンジンシステム40と制御部32などを有する。
【0039】
インジェクタ57からの燃料の噴射においては、エンジンサイクルの吸気行程における吸気圧の検出値より吸気量を予想し、予想される吸気量に応じてインジェクタ57の燃料噴射量が決められる。ここで、エンジン41を適切に稼働させるためには、吸気行程の前半までにインジェクタ57からの燃料の噴射を完了しておくことが必要であるが、上記のようにしてインジェクタ57の燃料噴射量が決められるためには演算時間が必要になるので、吸気行程の前半までにインジェクタ57からの燃料の噴射を完了しておくことが難しい。そのため、現在のエンジンサイクルよりも1つ前のエンジンサイクルで検出した吸気圧に基づいて、インジェクタ57の燃料噴射量が決められている。
【0040】
しかしながら、スロットル弁55が閉弁動作を行っているときは、時間の経過により吸気圧が減少しているため、現在のエンジンサイクルにおける実際の吸気圧は1つ前のエンジンサイクルで検出した吸気圧よりも低くなって、実際のエンジン41への吸気量が少なくなり、エンジン41の空燃比がリッチになり易い。さらに、ステップモータ56が閉弁側に脱調した場合には、実際のエンジン41への吸気量がさらに少なくなって、エンジン41の空燃比がさらにリッチになり易い状況になる。
【0041】
そこで、本実施形態のエンジン制御装置5は、エンジン41の空燃比がリッチになることを抑制するため、以下に説明する制御を行う。
【0042】
(第1実施例)
まず、本実施形態のエンジン制御装置5で行われる制御として、第1実施例の制御について説明する。
【0043】
本実施例では、制御部32は、図4に示す制御を行う。図4に示すように、制御部32は、エンジン回転数neと、(吸気行程毎の)最小吸気圧minpmと、クランク角カウンタccaと、スロットル制御ステップ数thrstepと、アイドル目標ステップ数tidlestepと、スロットル弁55の開閉・停止要求を取り込む(ステップS1)。
【0044】
ここで、最小吸気圧minpmとは、1つのエンジンサイクル(詳しくは、吸気行程)における最小の吸気圧である。クランク角カウンタccaとは、クランク角センサ(不図示)から出力されるクランク角信号をカウントするカウンタ(不図示)のカウント値である。スロットル制御ステップ数thrstepとは、ステップモータ56のステップ数である。アイドル目標ステップ数tidlestepとは、スロットル弁55がアイドル停止状態(すなわち、開度0よりも大きいアイドル目標開度にて停止している状態)であるときのステップモータ56の目標のステップ数である。
【0045】
そして、制御部32は、閉弁動作(減速)モードからアイドル停止モードへの移行時であるか否か、を判断する(ステップS2)。
【0046】
ここで、「閉弁動作(減速)モード」とは、スロットル弁55が閉弁動作を行うモードである。また、「アイドル停止モード」とは、スロットル弁55がアイドル停止状態であるモードである。そして、「閉弁動作(減速)モードからアイドル停止モードへの移行時」とは、スロットル弁55が(アイドル停止状態になるために)閉弁動作を行っているときである。
【0047】
そして、制御部32は、閉弁動作モードからアイドル停止モードへの移行時であると判断した場合(ステップS2:YES)には、最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)と、1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)を取り込んで更新する(ステップS3)。
【0048】
なお、「最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)」は、最新(すなわち、現在)のエンジンサイクルにおける吸気行程(すなわち、特定のタイミングの一例)にて吸気圧センサ62により検出された最小の吸気圧として定義されるものであって、本開示の「現サイクル吸気圧」の一例である。また、「1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)」は、最新のエンジンサイクルよりも1つ前のエンジンサイクルにおける吸気行程にて吸気圧センサ62により検出された最小の吸気圧として定義されるものであって、本開示の「前サイクル吸気圧」の一例である。
【0049】
次に、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepがアイドル目標ステップ数tidlestepよりも大きいか否か、を判断する(ステップS4)。
【0050】
そして、制御部32は、スロットル制御ステップ数thrstepがアイドル目標ステップ数tidlestepよりも大きいと判断した場合(ステップS4:YES)には、ステップモータ56のステップ数が未だアイドル目標ステップ数tidlestepまで低下しておらず、スロットル弁55は閉弁動作を行っている最中であると判断して、補正値Δpmを算出する(ステップS5)。ここで、補正値Δpmは、1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)の値から最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)の値を減算した値である。
【0051】
このようにして、制御部32は、吸気圧先読み制御のステップの1つとして、1サイクル前の最小吸気圧1minpm(i)の値から最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)の値を減算して、補正値Δpmを算出する補正値算出ステップ(ステップS5)を行う。
【0052】
次に、制御部32は、減速吸気圧先読み補正を行う(ステップS6)。具体的には、制御部32は、減速吸気圧先読み補正として、最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)から補正値Δpmを減算して、最新の最小吸気圧MINpmを算出する。
【0053】
このようにして、制御部32は、吸気圧先読み制御のステップの1つとして、最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)の値から補正値Δpmを減算して、最新の最小吸気圧MINpmの値を算出する先読み吸気圧算出ステップ(ステップS6)を行う。なお、「最新の最小吸気圧MINpm」は、本開示の「先読み吸気圧」の一例である。
【0054】
次に、制御部32は、エンジン回転数neと最新の最小吸気圧MINpmとで規定される目標の燃料噴射量tfuelのマップ(例えば、図5に示すマップ)を用いて、エンジン回転数neと最新の最小吸気圧MINpmとから目標の燃料噴射量tfuel(例えば、図5に示す目標の燃料噴射量tfuel_11,12,13,21,22,23,31,32,33・・・)を算出する(ステップS7)。
【0055】
このようにして、制御部32は、吸気圧先読み制御のステップの1つとして、最新の最小吸気圧MINpmの値に基づいてインジェクタ57における目標の燃料噴射量tfuelを算出する燃料噴射量算出ステップ(ステップS7)を行う。なお、「目標の燃料噴射量tfuel」は、本開示の「燃料の噴射量の目標値」の一例である。
【0056】
次に、制御部32は、吸気行程に合わせた燃料噴射を実行する(ステップS8)。すなわち、制御部32は、インジェクタ57により目標の燃料噴射量tfuelの燃料を噴射させる。
【0057】
このようにして、制御部32は、吸気圧先読み制御のステップの1つとして、算出した目標の燃料噴射量tfuelでインジェクタ57から燃料を噴射する燃料噴射ステップ(ステップS8)を行う。
【0058】
なお、制御部32は、ステップS4において、スロットル制御ステップ数thrstepがアイドル目標ステップ数tidlestep以下であると判断した場合(ステップS4:NO)には、ステップモータ56のステップ数が既にアイドル目標ステップ数tidlestepまで低下しており、スロットル弁55は閉弁動作を停止してアイドル停止状態になったと判断して、減速吸気圧先読み補正を行わずに(ステップS9)、ステップS7の処理に移行する。具体的には、制御部32は、ステップS9において、最新サイクルの最小吸気圧0minpm(i)を、最新の最小吸気圧MINpmとする。
【0059】
また、制御部32は、ステップS2において、閉弁動作モードからアイドル停止モードへの移行時でないと判断した場合(ステップS2:NO)には、他のモードの制御を行う(ステップS10)。
【0060】
以上のような図4に示すフローチャートに基づく制御が実行されることにより、一例として、図6に示すようなタイムチャートで表される制御が実行される。
【0061】
本実施例では、図6において、吸気圧先読み制御として、例えば、時間T1の最小吸気圧minpmの値から時間T2の最小吸気圧minpmの値を減算して、補正値Δpmが算出される。そして、時間T2の最小吸気圧minpmの値から補正値Δpmを減算して、最新の最小吸気圧MINpmの値が算出される。そして、最新の最小吸気圧MINpmの値に基づいて算出されるインジェクタ57の燃料噴射量で、インジェクタ57から燃料が噴射される。これにより、図6に示すように、時間T3にて、インジェクタ57の燃料噴射量が吸気圧先読み制御を行わない場合(図中、破線で示す場合)よりも少なくなる。そして、その後、時間T4にてスロットル弁55の閉弁動作が停止した後、時間T5や時間T6においても、エンジン41の空燃比がリッチになることが抑制されて、エンジン41の空燃比の値が「1」またはその近傍の値になる。
【0062】
以上のように本実施例によれば、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を行っているときに、吸気圧を先読みしてインジェクタ57の燃料噴射量を制御する吸気圧先読み制御を行う。そして、この吸気圧先読み制御は、補正値算出ステップ(ステップS5)と、先読み吸気圧算出ステップ(ステップS6)と、燃料噴射量算出ステップ(ステップS7)と、燃料噴射ステップ(ステップS8)と、を備える。
【0063】
このようにして、スロットル弁55が閉弁動作を行っているときに、現在の実際の吸気圧に近い先読み補正後の最新の最小吸気圧MINpmに基づいて算出した目標の燃料噴射量tfuelでインジェクタ57から燃料を噴射するので、エンジン41の空燃比がリッチになることを抑制できる。さらに、スロットル弁55が閉弁動作を行っているときに、ステップモータ56が閉弁方向に脱調してエンジン41への吸気量が減ってエンジン41の空燃比がリッチになり易い状況になった場合でも、エンジン41の空燃比のリッチ度合いを小さくできる。
【0064】
(第2実施例)
次に、第2実施例の制御について、第1実施例の制御と異なる点のみ説明する。
【0065】
本実施例では、制御部32は、図7に示す制御を行う。図7に示すように、制御部32は、ステップS104において、スロットル制御ステップ数thrstepがアイドル目標ステップ数tidlestep以下であると判断した場合(ステップS104:NO)には、ステップモータ56のステップ数が既にアイドル目標ステップ数tidlestep以下に低下したと判断して、停止時サイクルに該当するか否かを判断する(ステップS109)。ここで、「停止時サイクル」とは、スロットル弁55が閉弁動作を行っている状態からアイドル停止状態になって停止した時のエンジンサイクルである。
【0066】
そして、制御部32は、停止時サイクルに該当すると判断した場合(ステップS109:YES)には、補正値Δpmを算出して(ステップS105)、減速吸気圧先読み補正を行う(ステップS106)。このようにして、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、吸気圧先読み制御を継続して行う。一方、制御部32は、停止時サイクルでないと判断した場合(ステップS109:NO)には、減速吸気圧先読み補正を行わない(ステップS110)。
【0067】
以上のような図7に示すフローチャートに基づく制御が実行されることにより、一例として、図8に示すようなタイムチャートで表される制御が実行される。
【0068】
図8に示すように、時間T11にて、スロットル開度(すなわち、スロットル弁55の開度)がアイドル目標開度まで低下したときに、言い換えると、ステップモータ56のステップ数がアイドル目標ステップ数tidlestepまで低下したときに、ステップモータ56が閉弁側に脱調すると想定して、時間T12にてスロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、時間T13~時間T14にて吸気圧先読み制御が継続して行われる。これにより、時間T13~時間T14にて吸気圧先読み制御を行わない場合(破線で示す場合)よりもインジェクタ57の燃料噴射量が少なくなり、その後、時間T15~時間T16にて空燃比がリッチになる量(度合い)について、吸気圧先読み制御を行わない場合(破線で示す場合)よりも少なくすることができる。
【0069】
以上のように本実施例によれば、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、吸気圧先読み制御を継続して行う。
【0070】
これにより、スロットル弁55が閉弁動作を停止したときにステップモータ56が閉弁方向に脱調してエンジン41への吸気量が減ってエンジン41の空燃比がリッチになり易い状況になった場合でも、エンジン41の空燃比のリッチ度合いを小さくできる。
【0071】
(第3実施例)
次に、第3実施例の制御について、第2実施例の制御と異なる点のみ説明する。
【0072】
本実施例では、制御部32は、図9に示す制御を行う。図9に示すように、制御部32は、ステップS207において、目標の燃料噴射量tfuelを算出した後、スロットル弁55がアイドル停止状態であるか否かを判断する(ステップS208)。
【0073】
次に、制御部32は、スロットル弁55がアイドル停止状態であると判断した場合(ステップS208:YES)には、エンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満であるか否かを判断する(ステップS209)。なお、「目標アイドルエンジン回転数tidlene」は、本開示の「目標回転数」の一例である。
【0074】
そして、制御部32は、エンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満であると判断した場合(ステップS209:YES)には、エンジン41の出力が低下していると判断して、リッチ空燃比フラグXrichAFが0であるか否かを判断する(ステップS210)。
【0075】
そして、制御部32は、リッチ空燃比フラグXrichAFが0であると判断した場合(ステップS210:YES)には、エンジン41の点火時期を進角させる点火時期進角制御を行う(ステップS211)。次に、制御部32は、最新の目標の燃料噴射量Tfuelに基づいて、燃料噴射を実行する(ステップS212)。
【0076】
このようにして、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、回転数センサ61により検出したエンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満である場合には、エンジン41の点火時期を進角させる点火時期進角制御を行う。
【0077】
また、制御部32は、ステップS210において、リッチ空燃比フラグXrichAFが1であると判断した場合(ステップS210:NO)には、点火時期進角制御を行わない(ステップS214)。
【0078】
また、制御部32は、ステップS209において、エンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene以上であると判断した場合(ステップS209:YES)には、リッチ空燃比フラグXrichAFを1にして(ステップS213)、点火時期進角制御を行わない(ステップS214)。
【0079】
また、制御部32は、ステップS208において、スロットル弁55がアイドル停止状態でないと判断した場合(ステップS208:NO)には、リッチ空燃比フラグXrichAFを0にする(ステップS215)。
【0080】
以上のように本実施例によれば、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、回転数センサ61により検出したエンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満である場合には、エンジン41の点火時期を進角する点火時期進角制御を行う。
【0081】
これにより、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後にエンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満である場合であっても、例えば、スロットル弁55が閉弁動作を停止したときにステップモータ56が閉弁側に脱調することにより、エンジン41への吸気量が不足してエンジン41の出力が低下した場合であっても、エンジン41の点火時期を進角させて、エンジン41の出力が低下することを抑制できる。
【0082】
また、本実施例の変形例として、図9に示すように、制御部32は、ステップS211において、カッコ書きで示すように、目標の燃料噴射量tfuelを所定値α倍(例えば、1.15倍)して、最新の目標の燃料噴射量Tfuelを算出してもよい。このようにして、制御部32は、最新の目標の燃料噴射量Tfuelを目標の燃料噴射量tfuelよりも増加させて、燃料噴射量を増加させる噴射量増量制御を行ってもよい。そして、制御部32は、ステップS214において噴射量増量制御を行わないとしてもよい。
【0083】
以上のように本実施例の変形例によれば、制御部32は、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後に、回転数センサ61により検出したエンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満である場合には、インジェクタ57の燃料噴射量を増加させる噴射量増量制御を行う。
【0084】
これにより、スロットル弁55が閉弁動作を停止した後にエンジン回転数neが目標アイドルエンジン回転数tidlene未満である場合であっても、例えば、スロットル弁55が閉弁動作を停止したときにステップモータ56が閉弁側に脱調することにより、エンジン41への吸気量が不足してエンジン41の出力が低下した場合であっても、エンジン41への燃料噴射量を増加させて、エンジン41の出力が低下することを抑制できる。
【0085】
以上のような図9に示すフローチャートに基づく制御が実行されることにより、一例として、図10に示すようなタイムチャートで表される制御が実行される。
【0086】
図10に示すように、時間T21~時間T22にてエンジン41の出力が低下して空燃比がリッチになっても、時間T22にてエンジン41の出力が上昇して空燃比のリッチ度合いが小さくなる。
【0087】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0088】
1 マルチコプタ
5 エンジン制御装置
11 機体
12 エンジン発電ユニット
32 制御部
40 発電用エンジンシステム
41 エンジン
51 気筒
52 クランクシャフト
53 吸気通路
55 スロットル弁
56 ステップモータ
57 インジェクタ
62 吸気圧センサ
ne エンジン回転数
minpm (吸気行程毎の)最小吸気圧
cca クランク角カウンタ
thrstep スロットル制御ステップ数
tidlestep アイドル目標ステップ数
0minpm(i) 最新サイクルの最小吸気圧
1minpm(i) 1サイクル前の最小吸気圧
Δpm 補正値
MINpm 最新の最小吸気圧
tfuel 目標の燃料噴射量
tidlene 目標アイドルエンジン回転数
XrichAF リッチ空燃比フラグ
Tfuel 最新の目標の燃料噴射量
α 所定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10