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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042948
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20230320BHJP
   G02B 3/10 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150384
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】祁 華
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA03
2H006BD01
(57)【要約】
【課題】クリア領域とファンクショナル領域とを備えた眼鏡レンズを装用する際に近方視しても良好な視認性が得られる技術を提供する。
【解決手段】アイポイントEPを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域2と、中心側クリア領域2を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域3と、を備え、平面視において、中心側クリア領域2は、アイポイントEPから見て水平方向の耳側よりも鼻側に張り出した、眼鏡レンズ1及びその関連技術を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記中心側クリア領域内の部分であって、アイポイントを通過する水平線から上方d[mm]と下方d[mm]との間の範囲の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、dを1.00以上2.00以下の範囲の少なくともいずれか一つの値としたとき、アイポイントから耳側よりもアイポイントから鼻側の方が大きい、眼鏡レンズ。
【請求項2】
dは1.50である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記矩形状の部分において、アイポイントから水平方向鼻側の最大幅は3.60mm以上である、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記ファンクショナル領域内での装用者の瞳孔内に入射させた光束を網膜上に収束させない形状の部分に対して前記中心側クリア領域側で他の該部分を含まずに外接可能な半径2.00mmの全ての円の集合体を前記中心側クリア領域の形状としたとき、前記中心側クリア領域において、アイポイントを通過する垂直線に対して耳側の形状と鼻側の形状とが非対称であり、且つ、アイポイントから水平方向鼻側の最大距離は3.60mm以上である、眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記中心側クリア領域の形状の重心、及び、前記中心側クリア領域の形状においてアイポイントを通過する水平線分の中点の少なくともいずれかが、アイポイントよりも鼻側に配置された、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記中心側クリア領域は、アイポイントから見て水平方向の耳側よりも鼻側に張り出した、眼鏡レンズ。
【請求項7】
眼鏡レンズの外縁側にて前記ファンクショナル領域と接する領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる外側クリア領域を備える、請求項1~6のいずれか一つ記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記ファンクショナル領域では、前記装用者の瞳孔内に入射させた光束の30%以上は網膜上に収束させない、請求項1~7のいずれか一つに記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
平面視において、前記中心側クリア領域は、アイポイントを中心とした直径10.00mmの円内に収まる大きさである、請求項1~8のいずれか一つに記載の眼鏡レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視等の屈折異常の進行を抑制する眼鏡レンズとして、レンズ上に複数の処方屈折力よりプラスの屈折力を持つ島状領域が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成の眼鏡レンズによれば、物体側の面から入射し眼球側の面から出射する光束のうち、デフォーカス領域以外を通過した光束では装用者の網膜上に焦点を結ぶが、デフォーカス領域の部分を通過した光束は網膜上よりも手前の位置で焦点を結ぶようになっており、これにより近視の進行が抑制されることになる。
【0004】
特許文献1の図1では、レンズの幾何中心及びその近傍において上記島状領域が設けられない場合が例示されている。
【0005】
特許文献2、3には近視の屈折異常の進行を抑制すべく、眼鏡レンズの幾何中心及びその近傍よりも外縁側に所定の構造を設けた眼鏡レンズが開示されている。特許文献2、3に記載の眼鏡レンズでは、平面視において、幾何中心及びその近傍では、近視進行抑制効果を奏する構造は設けられていない(特許文献2の図1、特許文献3の図5A)。
【0006】
特許文献4には、物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させて、眼球の網膜上における位置Aに収束させるベース部分と、透過する光束にプラス又はマイナス方向のデフォーカスを与え、ベース部分を透過する光とは異なる位置に収束させる作用を有するデフォーカス領域とを備える眼鏡レンズが記載されている。
【0007】
特許文献4の段落0102には、眼鏡レンズの基材凸部を凹部に変更することにより遠視進行抑制機能を奏することが記載されている。特許文献4に記載の眼鏡レンズの一例(特許文献4の図5)では、平面視において、幾何中心及びその近傍では、近視又は遠視進行抑制効果を奏する構造は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国出願公開第2017/0131567号
【特許文献2】国際公開公報WO2019/166657号
【特許文献3】米国特許第10884264号
【特許文献4】国際公開公報WO2020/045567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レンズ中心において上記近視進行抑制構造(一例として特許文献1に記載の島状領域)が設けられない場合、当然ながら、該島状領域が設けられない領域を通過して装用者の瞳孔内に入射する光束では、上記近視進行抑制効果が得られないと考えられる。その代わりに、クリア領域では処方度数が実現されるため、良好な視認性が得られる。本明細書では、近視又は遠視進行抑制構造が設けられない領域のことをクリア領域ともいう。クリア領域については後掲する。
【0010】
本発明者の調べにより、近視進行抑制用の眼鏡レンズの装用者が近方視して眼を輻輳させたとき、装用者の瞳孔内に入射する光束が、クリア領域ではなく上記島状領域を通過することにより、光束が網膜に収束しない、即ち良好な視認性が得られないおそれがあることが明らかになった。
【0011】
この問題に関しては、上記島状領域のみならず、近視又は遠視進行抑制効果を奏する構成(眼鏡レンズの表面に何らかの凹状領域及び/又は凸状領域を形成又は眼鏡レンズの内部に屈折率の異なる部材を埋め込む構成等、例えば特許文献2~4に記載の眼鏡レンズ)であっても同様の問題が生じることが、本発明者の調べにより明らかになった。平面視にて、該近視又は遠視進行抑制効果を奏する構成を有する領域のことをファンクショナル領域ともいう。ファンクショナル領域については後掲する。
【0012】
上記近視進行抑制効果を得やすくするには、クリア領域を小さく設計し、その分、ファンクショナル領域を大きく設計することが考えられる。但し、クリア領域を小さく設計すると、装用者が近方視して眼を輻輳させたとき、上記の通り、良好な視認性が得られないおそれがある。つまり、近視又は遠視進行抑制効果を奏すべくクリア領域とファンクショナル領域とを備えた眼鏡レンズにおいては、本段落に記載の手法とは別のアプローチを検討する必要があるということを、本発明者は知見した。
【0013】
本発明の一態様は、クリア領域とファンクショナル領域とを備えた眼鏡レンズを装用する際に近方視しても良好な視認性が得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様は、
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記中心側クリア領域内の部分であって、アイポイントを通過する水平線から上方d[mm]と下方d[mm]との間の範囲の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、dを1.00以上2.00以下の範囲の少なくともいずれか一つの値としたとき、アイポイントから耳側よりもアイポイントから鼻側の方が大きい、眼鏡レンズである。
【0015】
本発明の第2の態様は、
dは1.50である、第1の態様に記載の眼鏡レンズである。
【0016】
本発明の第3の態様は、
前記矩形状の部分において、アイポイントから水平方向鼻側の最大幅は3.60mm以上である、第1又は第2の態様に記載の眼鏡レンズである。
【0017】
本発明の第4の態様は、
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記ファンクショナル領域内での装用者の瞳孔内に入射させた光束を網膜上に収束させない形状の部分に対して前記中心側クリア領域側で他の該部分を含まずに外接可能な半径2.00mmの全ての円の集合体を前記中心側クリア領域の形状としたとき、前記中心側クリア領域において、アイポイントを通過する垂直線に対して耳側の形状と鼻側の形状とが非対称であり、且つ、アイポイントから水平方向鼻側の最大距離は3.60mm以上である、眼鏡レンズである。
【0018】
本発明の第5の態様は、
前記中心側クリア領域の形状の重心、及び、前記中心側クリア領域の形状においてアイポイントを通過する水平線分の中点の少なくともいずれかが、アイポイントよりも鼻側に配置された、第4の態様に記載の眼鏡レンズである。
【0019】
本発明の第6の態様は、
アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる中心側クリア領域と、
前記中心側クリア領域を包囲する環状の領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させないファンクショナル領域と、
を備え、
平面視において、前記中心側クリア領域は、アイポイントから見て水平方向の耳側よりも鼻側に張り出した、眼鏡レンズである。
【0020】
本発明の第7の態様は、
眼鏡レンズの外縁側にて前記ファンクショナル領域と接する領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる外側クリア領域を備える、第1~第6のいずれか一つの態様に記載の眼鏡レンズである。
【0021】
本発明の第8の態様は、
前記ファンクショナル領域では、前記装用者の瞳孔内に入射させた光束の30%以上は網膜上に収束させない、第1~第7のいずれか一つの態様に記載の眼鏡レンズである。
【0022】
本発明の第9の態様は、
平面視において、前記中心側クリア領域は、アイポイントを中心とした直径10.00mmの円内に収まる大きさである、第1~第8のいずれか一つの態様に記載の眼鏡レンズである。
【0023】
上記の態様に対して組み合わせ可能な本発明の他の態様は以下の通りである。
【0024】
本発明の一態様の中心側クリア領域(及びファンクショナル領域内のベース領域、更には外側クリア領域)は、いわゆる単焦点レンズとしての機能を奏する。
【0025】
アイポイントから鼻側における上記矩形状の部分の最大幅は好適には4.00mm以上としてもよい。
【0026】
前記集合体の包絡線を中心側クリア領域の形状としたとき、該形状内でのアイポイントから水平方向鼻側における最大距離は好適には4.00mm以上としてもよい。
【0027】
前記集合体を、集合体の包絡線と読み替えてもよい。
【0028】
中心側クリア領域の大きさの下限の一つの目安としては、アイポイントを中心とした直径3.00mm(或いは直径4.00mm、又は直径5.00mm)の円を包含可能な大きさであればよい。中心側クリア領域の大きさの上限の一つの目安としては、アイポイントを中心とした直径10.00mmの円内に収まる大きさであればよい。アイポイントからの中心側クリア領域の縁までの水平距離の最小値(クリア領域が平面視円状の場合は最小半径)が3.60mm以下であってもよい。中心側クリア領域の面積は80mm以下であってもよい。中心側クリア領域2の形状は、平面視で円形状、矩形状、楕円状等であってもよい。
【0029】
ファンクショナル領域の大きさの下限の一つの目安としては、アイポイントを中心とした直径12.50mmの円周を包含可能な大きさであればよい。ファンクショナル領域の大きさの上限の一つの目安としては、アイポイントを中心とした直径50.00mmの円周を包含可能な大きさであればよい。
【0030】
ファンクショナル領域の形状は平面視で環状であり、その環は内側(即ち中心側クリア領域とファンクショナル領域との境界)及び/又は外側(即ち外側クリア領域とファンクショナル領域との境界)において円形状、矩形状、楕円状等又はその組み合わせでも構わない。
【0031】
ファンクショナル領域では、装用者の瞳孔内に入射させた光束の30%以上(或いは40%以上、50%以上、60%以上)は網膜上に収束させないと定義してもよい。該%の値が大きければ近視又は遠視進行抑制効果も大きくなると期待される一方、視認性は低下する。該%の値は、近視又は遠視進行抑制効果と視認性との兼ね合いで適宜決定すればよい。上限は例えば70%としてもよい。
【0032】
ファンクショナル領域において、近視又は遠視進行抑制効果を奏する構成(凸状領域、埋め込み構造)の平面視での面積が、ファンクショナル領域全体の30%以上(或いは40%以上、50%以上、60%以上)と規定してもよい。
【0033】
右眼用レンズと左眼用レンズの各々に本発明の一態様を適用した眼鏡レンズ対にも本発明の技術的思想が反映されている。
【0034】
所定のフレーム形状に基づいて眼鏡レンズの周縁近傍をカットし、フレームに嵌め入れた眼鏡にも本発明の技術的思想が反映されている。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様によれば、クリア領域とファンクショナル領域とを備えた眼鏡レンズを装用する際に近方視しても良好な視認性が得られる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの中心側クリア領域に関する(規定1)を説明するための概略拡大平面図である。
図2図2は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの中心側クリア領域に関する(規定2)を説明するための概略拡大平面図である。
図3図3は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例1>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図4図4は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例1>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
図5図5は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例2>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図6図6は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例2>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
図7図7は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例3>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図8図8は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例3>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
図9図9は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例4>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図10図10は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの<具体例4>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について述べる。以下における図面に基づく説明は例示であって、本発明は例示された態様に限定されるものではない。
【0038】
本明細書で挙げる眼鏡レンズは、物体側の面と眼球側の面とを有する。「物体側の面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側の面」とは、その反対、すなわち眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。この関係は、眼鏡レンズの基礎となるレンズ基材においても当てはまる。つまり、レンズ基材も物体側の面と眼球側の面とを有する。
【0039】
本明細書では、眼鏡レンズを装用した状態での水平方向をX方向、天地(上下)方向をY方向、眼鏡レンズの厚さ方向であってX方向及びY方向に垂直な方向をZ方向とする。Z方向は眼鏡レンズの光軸方向でもある。
装用者に向かって右方を+X方向、左方を-X方向、上方を+Y方向、下方を-Y方向、物体側方向を+Z方向、その逆方向(奥側方向)を-Z方向とする。本明細書において、「平面視」とは+Z方向から-Z方向へと見たときの状態を指す。
本願各図では右眼用レンズを平面視した場合を例示しており、該右眼用レンズを装用した時の鼻側方向を+X方向、耳側方向を-X方向としている。
なお、眼球側の最表面のみにファンクショナル領域が設けられる場合は、-Z方向から+Z方向へと見たときの状態を平面視としても差し支えない。以降、眼鏡レンズにおけるアイポイント及び幾何中心等のような「位置」を論ずる際は、特記無い限り平面視での位置のことを指す。
【0040】
本明細書において「~」は所定の値以上且つ所定の値以下を指す。
【0041】
<眼鏡レンズ>
本発明の一態様に係る眼鏡レンズは中心側クリア領域とファンクショナル領域とを備える。
【0042】
中心側クリア領域は、幾何光学的な観点において装用者の処方屈折力を実現可能な平滑表面形状を有する部分である。中心側クリア領域は、特許文献1の第1の屈折領域に対応する部分であり、特許文献4の図5に記載の眼鏡レンズのレンズ中心及びその近傍に設けられたベース領域としてもよい。また、中心側クリア領域は、アイポイントを含む領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる領域である。
【0043】
本発明の一態様の中心側クリア領域により処方度数(球面度数、乱視度数、乱視軸等)が実現できる。この球面度数は、正面視した時(物体との距離は無限遠~1m程度)に矯正されるべき度数(例えば遠用度数であり、以降、遠用度数を例示)であってもよいし、中間視(1m~40cm)又は近方視(40cm~10cm)したときに矯正されるべき度数であってもよい。
【0044】
また、中心側クリア領域には、近視又は遠視進行抑制効果をもたらすことを意図した構成(例:デフォーカス領域、凸状領域及び/又は凹状領域、埋め込み構造等)は設けられていない。
【0045】
本発明の一態様の中心側クリア領域(及びファンクショナル領域内のベース領域、更には外側クリア領域)は、いわゆる単焦点レンズとしての機能を奏する。
【0046】
ちなみに、装用者情報の処方データは、眼鏡レンズのレンズ袋に記載されている。つまり、レンズ袋があれば、装用者情報の処方データに基づいた眼鏡レンズの物としての特定が可能である。そして、眼鏡レンズはレンズ袋とセットになっていることが通常である。そのため、レンズ袋が付属した眼鏡レンズも本発明の技術的思想が反映されているし、レンズ袋と眼鏡レンズとのセットについても同様である。
【0047】
「アイポイント(EP)」は、眼鏡レンズを装用した際に、真正面に向いたときに視線が通る位置である。本発明の一態様においては、フレームへの枠入れ加工前の眼鏡レンズの幾何中心はアイポイントと一致し、且つ、プリズム参照点とも一致する場合を例示する。以降、本発明の一態様の眼鏡レンズとして、フレームへの枠入れ加工前の眼鏡レンズを例示するが、本発明はこの態様に限定されない。
【0048】
アイポイントは、レンズ製造業者が発行するリマークチャート(Remark chart)又はセントレーションチャート(Centration chart)を参照することにより、位置の特定は可能となる。
【0049】
ファンクショナル領域は、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させる一方、装用者の瞳孔内に入射させた光束の少なくとも一部は網膜上に収束させない領域である。ファンクショナル領域は、平面視において、中心側クリア領域を包囲する環状の領域である。
【0050】
環状のファンクショナル領域全体において中心側クリア領域と異なる眼鏡レンズの表面形状(例えばすりガラスのような不透明化の加工が成されたもの)や内部埋め込み構造を有するとは限らない。例えば、特許文献1の第1の屈折領域のように凸状領域が島状に設けられる一方で、処方度数を実現する第2の屈折領域(中心側クリア領域と同機能を奏するベース領域)が凸状領域の周囲に設けられる場合、ベース領域と凸状領域とを含む環状の領域をファンクショナル領域とみなしてもよい。
【0051】
また、ファンクショナル領域に関しては、特許文献2の図1に示すように、円環状に数珠つなぎに凸状領域を形成して径方向にその数珠つなぎの円環を複数配置すると共に凸状領域が形成されない領域はベース領域とした眼鏡レンズにおいて、最小径の数珠つなぎの円環と最大径の数珠繋ぎとの円環との間の領域をファンクショナル領域と設定してもよい。
【0052】
また、ファンクショナル領域に関しては、特許文献3の図3Bに示すように、眼鏡レンズの内部に屈折率の異なる部材を埋め込んだときに最もアイポイントに近い部分と最もアイポイントEPから遠い部分との間の環状の領域をファンクショナル領域と設定してもよい。
【0053】
(規定1)
図1は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の中心側クリア領域2に関する(規定1)を説明するための概略拡大平面図である。なお、図1では、後掲の<具体例2>で採用したファンクショナル領域3の構造を採用している。
【0054】
本発明の一態様の特徴の一つは、平面視において、中心側クリア領域2内の部分であって、アイポイントEPを通過する水平線から上方d[mm]と下方d[mm]との間の範囲の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、dを1.00以上2.00以下の範囲の少なくともいずれか一つの値としたとき、アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が大きいことにある。
【0055】
上段落に記載の規定は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1を装用した状態で近方視したとき、視線がアイポイントEPの水平方向鼻側を通過することを考慮している。dは該視線に関係する規定であり、瞳孔サイズPSの半径を考慮している。例えば、d[mm]が2.00[mm]である場合、瞳孔半径は2.00[mm]即ち瞳孔径は4.00[mm]が想定されることを意味する。そして、上段落に記載の規定は、中心側クリア領域2内の範囲で視線を移動させる場合、視線の移動可能距離は、アイポイントEPから水平方向耳側よりも水平方向鼻側の方が大きいことを意味する。
【0056】
dの値は、1.00以上2.00以下の範囲の少なくともいずれか一つの値であればよく、上段落で例示したように2.00であってもよいし、1.50であってもよい。
【0057】
アイポイントEPから鼻側における上記矩形状の部分の水平方向の最大幅は、3.60mm以上(好適には4.00mm以上)としてもよく、上限には限定は無い。上限を規定する場合、後掲の中心側クリア領域2の大きさの上限を適用すれば足りる。
【0058】
アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が大きければよいが、両距離の差は例えば0.40~3.00mmの範囲の値であってもよい。
【0059】
該両距離の差を相対値で規定してもよい。例えば、アイポイントEPから耳側における上記矩形状の部分の水平方向の最大幅を分母、アイポイントEPから鼻側における該最大幅を分子としたときの値は、1.00より大きく且つ2.00以下としてもよい。この値の下限は1.20、1.40でもよく、この値の上限は1.80、1.60であってもよい。
【0060】
(規定1)において矩形に代えて円を採用してもよい(規定1の別態様)。具体的には、平面視において、中心側クリア領域2内の部分であって、アイポイントEPを通過する水平線上に中心が存在する半径r[mm]の円において、rを1.50以上2.50以下の範囲の少なくともいずれか一つの値としたとき、水平方向におけるアイポイントEPからの該円の中心までの最大距離が耳側よりも鼻側の方が大きいという規定を採用してもよい。詳しく言うと、アイポイントEPを通過する水平線上に中心が存在する円であって、中心側クリア領域2内において水平方向の最も耳側に配置可能な円αと、中心側クリア領域2内において水平方向の最も鼻側に配置可能な円βとを想定し、円βの中心とアイポイントEPとの間の距離β´が、円αの中心とアイポイントEPとの間の距離α´よりも大きいという規定を採用してもよい。rの値は、2.00であってもよいし、1.50であってもよい。2rの値は瞳孔径を想定していることから、本明細書では、これらの円の各々のことをクリア瞳孔円ともいう。
【0061】
(規定1)において矩形に代えて円を採用したときの、水平方向におけるアイポイントEPからの該円の中心までの鼻側の最大距離は1.60mm以上(好適には2.00mm以上)としてもよい。また、水平方向におけるアイポイントEPからの該円の鼻側端までの最大距離は3.60mm以上(好適には4.00mm以上)としてもよい。いずれも、上限には限定は無い。上限を規定する場合、後掲の中心側クリア領域2の大きさの上限を適用すれば足りる。
【0062】
(規定1)において矩形に代えて円を採用したときの、水平方向におけるアイポイントEPからの該円の中心までの耳側の最大距離と鼻側の最大距離との間の差は例えば1.00~3.00mmの範囲の値であってもよい。
【0063】
該両距離の差を相対値で規定してもよい。例えば、水平方向におけるアイポイントEPからの該円の中心までの耳側の最大距離を分母、鼻側の最大距離を分子としたときの値は、1.00より大きく且つ2.00以下としてもよい。この値の下限は1.20、1.40でもよく、この値の上限は1.80、1.60であってもよい。
【0064】
(規定1)を(規定1の別態様)と組み合わせて採用しても構わない。
【0065】
(規定2)
図2は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の中心側クリア領域2に関する(規定2)を説明するための概略拡大平面図である。なお、図2では、後掲の<具体例2>で採用したファンクショナル領域3の構造を採用している。
【0066】
本発明の一態様においては、平面視において、ファンクショナル領域3内での装用者の瞳孔内に入射させた光束を網膜上に収束させない形状の部分に対して中心側クリア領域2側で他の該部分を含まずに外接可能な半径2.00mmの全ての円(いずれも同じ半径)(そのうち一つの円が、図2の符号PSが付された円)の集合体の包絡線(図2の符号EL1)を中心側クリア領域2の形状(即ち中心側クリア領域2とファンクショナル領域3との境界線)としてもよい。以降、包絡線を例示するが、クリア瞳孔円の集合体の包絡線ではなく「クリア瞳孔円の集合体」を中心側クリア領域2の形状としてもよい。つまり、中心側クリア領域2は、アイポイントEPを含み且つクリア瞳孔円の集合体により構成されてもよい。
【0067】
(規定2)において上記集合体の包絡線を中心側クリア領域2の形状としたとき、該形状内でのアイポイントEPから水平方向鼻側における最大距離は、3.60mm以上(好適には4.00mm以上)としてもよく、上限には限定は無い。上限を規定する場合、後掲の中心側クリア領域2の大きさの上限を適用すれば足りる。
【0068】
(規定2)において上記集合体の包絡線を中心側クリア領域2の形状としたとき、中心側クリア領域2の形状の重心GVCは、アイポイントEPよりも鼻側に配置されてもよい。
【0069】
上記(規定2)は、中心側クリア領域2の形状を特定する一態様でもある。そのうえで、中心側クリア領域2の形状の重心GVCが、アイポイントEPよりも鼻側に配置されることにより、眼を輻輳させたときに視線が中心側クリア領域2を通過しやすくなる。中心側クリア領域2の形状の重心GVCは、アイポイントEPから見て水平方向鼻側に配置されれば、より確実に、眼を輻輳させたときに視線が中心側クリア領域2を通過できる。
【0070】
なお、中心側クリア領域2の形状において、アイポイントEPを通過する水平線分の中点がアイポイントEPよりも鼻側に配置される状態であれば、更に確実に、眼を輻輳させたときに視線が中心側クリア領域2を通過できる。
【0071】
上記重心GVCを採用する場合も、上記水平線分の中点を採用する場合も、アイポイントEPから見て上記重心GVC又は中点までの水平方向の距離は、例えば0.10(或いは1.00)~3.00mmの範囲の値であってもよい。
【0072】
(規定2)で規定した中心側クリア領域2は、アイポイントEPを通過する垂直線に対し、耳側の形状と鼻側の形状とが非対称となる。一例としては、該中心側クリア領域2の形状が、耳側では、多角形の角を丸めた(或いは正円、楕円の)形状Aを半分にした形状である一方、鼻側では、形状Aの重心GVCから水平方向鼻側へと該残りの半分の形状が張り出した(別の言い方だと拡張した)形状を有する。
【0073】
上記の諸々の内容を包含し、且つ、機能的な表現で本発明の一態様を表現したのが以下の規定である。
【0074】
(規定3)
本発明の一態様の特徴の一つは、平面視において、中心側クリア領域2は、アイポイントEPから見て水平方向の耳側よりも鼻側に張り出すことである。
【0075】
本発明の一態様の眼鏡レンズ1において(規定1)(規定2)(規定3)の少なくともいずれかを採用することにより、近視又は遠視進行抑制用の眼鏡レンズ1の装用者が近方視して眼を輻輳させたとき、装用者の瞳孔内に入射する光束が中心側クリア領域2を通過することにより、光束が網膜に収束し、良好な視認性が得られる。
【0076】
本願各図では右眼用レンズを平面視した場合を例示したが、左眼用の眼鏡レンズ1に対しても本発明の一態様を適用可能であり、右眼用レンズと左眼用レンズの各々に本発明の一態様を適用した眼鏡レンズ対により、近視進行抑制機能を得ながら、良好な視認性も得られる。
【0077】
<眼鏡レンズ1の好適例及び変形例>
本発明の一態様における眼鏡レンズ1の好適例及び変形例について、以下に述べる。
【0078】
上記(規定1)において、環状のファンクショナル領域全体において中心側クリア領域と異なる眼鏡レンズの表面形状(例えばすりガラスのような一部光を散乱させるように加工が成されたもの)や内部埋め込み構造を有するとは限らない。例えば、特許文献1の第1の屈折領域のように凸状領域が島状に設けられる一方で、処方度数を実現する第2の屈折領域(中心側クリア領域と同機能を奏するベース領域)が凸状領域の周囲に設けられる場合、ベース領域と凸状領域とを含む環状の領域をファンクショナル領域とみなしてもよい。
【0079】
環状のファンクショナル領域において、アイポイントEPから見て+Y方向を回転角ゼロ度としたとき所定の回転角範囲にわたって凸状領域等が設けられない構成もあり得る。その場合、例えば右眼用レンズの場合だと時計回り90度(水平方向鼻側)を中心とした数度~10数度の回転角の範囲にわたって凸状領域等を設けない構成もあり得る。その場合であっても、上記(規定1)において、中心側クリア領域内の部分であって、アイポイントを通過する水平線から上方d[mm]と下方d[mm]との間の範囲の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、アイポイントから耳側よりもアイポイントから鼻側の方が大きいことに変わりはない。また、中心側クリア領域は、アイポイントから見て水平方向の耳側よりも鼻側に張り出していることに変わりはない。
【0080】
中心側クリア領域2の大きさ及び形状には限定は無い。中心側クリア領域2の大きさの下限の一つの目安としては、アイポイントEPを中心とした直径5.00mmの円を包含可能な大きさであればよい。中心側クリア領域2の大きさの上限の一つの目安としては、アイポイントEPを中心とした直径10.00mmの円内に収まる大きさであればよい。アイポイントEPからの中心側クリア領域2の縁までの水平距離の最小値(クリア領域が平面視円状の場合は最小半径)が3.60mm以下であってもよい。中心側クリア領域2の面積は80mm以下であってもよい。中心側クリア領域2の形状は、平面視で円形状、矩形状、楕円状等であってもよい。
【0081】
ファンクショナル領域3の大きさ及び形状には限定は無い。ファンクショナル領域3の大きさの下限の一つの目安としては、アイポイントEPを中心とした直径15mmの円周を包含可能な大きさであればよい。ファンクショナル領域3の大きさの上限の一つの目安としては、アイポイントEPを中心とした直径50.00mmの円周を包含可能な大きさであればよい。ファンクショナル領域3の形状は平面視で環状であり、その環は内側(即ち中心側クリア領域2とファンクショナル領域3との境界)及び/又は外側(即ち外側クリア領域4とファンクショナル領域3との境界)において円形状、矩形状、楕円状等又はその組み合わせでも構わない。
【0082】
一つの目安として、ファンクショナル領域3では、装用者の瞳孔内に入射させた光束の30%以上(或いは40%以上、50%以上、60%以上)は網膜上に収束させないと定義してもよい。該%の値が大きければ近視又は遠視進行抑制効果も大きくなると期待される一方、視認性は低下する。該%の値は、近視又は遠視進行抑制効果と視認性との兼ね合いで適宜決定すればよい。
【0083】
なお、ファンクショナル領域3において、近視又は遠視進行抑制効果を奏する構成(凸状領域3a、埋め込み構造)の平面視での面積が、ファンクショナル領域3全体の30%以上(或いは40%以上、50%以上、60%以上)と規定してもよい。上限は例えば70%としてもよい。
【0084】
眼鏡レンズ1の外縁側にてファンクショナル領域3と接する領域であって、物体側の面から入射した光束を、眼球側の面から出射させ、装用者の瞳孔内に入射させ、網膜上に収束させる外側クリア領域4を備えてもよい。その場合、ファンクショナル領域3は、外側クリア領域4と中心側クリア領域2との間に存在する環状の領域となる。
【0085】
外側クリア領域4の形状を特定する一態様として、上記中心側クリア領域2の形状を特定する態様(規定2)を援用してもよい。つまり、平面視において、外側クリア領域4は、アイポイントEPを含まず且つクリア瞳孔円の集合体により構成される、と定義してもよい。そして、眼鏡レンズ1において、中心側クリア領域2と外側クリア領域4以外の領域をファンクショナル領域3と定義してもよい。
【0086】
外側クリア領域4の形状を特定する具体的な一態様は以下の通りである。平面視において、ファンクショナル領域3内での装用者の瞳孔内に入射させた光束を網膜上に収束させない形状の部分であって最も眼鏡レンズ1の外縁側に配置された該部分に着目する。ここで言う「最も眼鏡レンズ1の外縁側に配置された該部分」とは、アイポイントEPから見て周方向0~360度の各々の範囲において径方向に最も離れた各該部分を指す。各該部分に対し、眼鏡レンズ1の外縁側で他の該部分を含まずに外接可能な半径2.00mmの全ての円(いずれも同じ半径)の集合体の包絡線EL2と眼鏡レンズ1の外縁との間に挟まれる領域の形状を外側クリア領域4の形状としてもよい。クリア瞳孔円の集合体の包絡線ではなく「クリア瞳孔円の集合体」を外側クリア領域4の形状としてもよい。
【0087】
外側クリア領域4は環状であってもよいし、環の一部のみを構成する形状であってもよい。つまり、ファンクショナル領域3の一部が眼鏡レンズ1の外縁と接し、ファンクショナル領域3の他の部分は外側クリア領域4と接してもよい。また、本発明の一態様の眼鏡レンズ1はフレームへの枠入れ後の眼鏡レンズ1であってもよく、該眼鏡レンズ1におけるファンクショナル領域3の一部が眼鏡レンズ1の外縁と接し、ファンクショナル領域3の他の部分は外側クリア領域4と接してもよい。また、外側クリア領域4の更に外縁側に別のファンクショナル領域3を設けることは妨げないが、ファンクショナル領域3の外縁側全体が外側クリア領域4である、即ち、ファンクショナル領域3の外縁側においては、近視又は遠視進行抑制効果をもたらすことを意図した構成(例:デフォーカス領域、凸状領域3a及び/又は凹状領域、埋め込み構造等)が設けられていないのが好ましい。
【0088】
<眼鏡レンズ1の一具体例>
複数のデフォーカス領域の配置の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、デフォーカス領域の外部からの視認性、デフォーカス領域によるデザイン性付与、デフォーカス領域による屈折力調整等の観点から決定できる。
【0089】
眼鏡レンズ1の中心側クリア領域2の周囲に配置されたファンクショナル領域3において、周方向及び径方向に等間隔に、略円形状のデフォーカス領域が島状に(すなわち、互いに隣接することなく離間した状態で)配置されてもよい。デフォーカス領域の平面視での配置の一例としては、各凸状領域3aの中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各デフォーカス領域の中心が配置:六方配置)する例が挙げられる。その場合、デフォーカス領域同士の間隔は1.0~2.0mmであってもよい。また、デフォーカス領域の個数は100~100000であってもよい。
【0090】
ファンクショナル領域3において、近視又は遠視進行抑制効果を奏する構成の一例がデフォーカス領域である。
【0091】
デフォーカス領域とは、幾何光学的な観点においてその領域の中の少なくとも一部がベース領域3bによる集光位置には集光させない領域である。デフォーカス領域とは、特許文献1の微小凸部に該当する部分である。本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1は、特許文献1に記載の眼鏡レンズと同様、近視進行抑制レンズである。特許文献1の微小凸部と同様、本発明の一態様に係る複数のデフォーカス領域は、眼鏡レンズ1の物体側の面及び眼球側の面の少なくともいずれかに形成されればよい。本明細書においては、眼鏡レンズ1の物体側の面のみに複数のデフォーカス領域を設けた場合を主に例示する。以降、特記無い限り、デフォーカス領域は、レンズ外部に向かって突出する曲面形状である場合を例示する。
【0092】
複数のデフォーカス領域(ファンクショナル領域内の全デフォーカス領域)のうち半分以上の個数は平面視にて同じ周期で配置されるのが好ましい。同じ周期であるパターンの一例としては平面視にて正三角形配置(デフォーカス領域の中心が正三角形の頂点に配置、六方配置も可能)が挙げられる。周期の方向は周方向及び/又は径方向であればよい。好適には80%以上、より好適には90%以上、更に好適には95%以上である。以降、「ファンクショナル領域内の全デフォーカス領域の半分以上の数(又は80%以上の数)」の好適例は、上記と同様に好適な順に80%以上、90%以上、95%以上とし、繰り返しの記載を省略する。
【0093】
デフォーカス領域は球面形状、非球面形状、トーリック面形状又はそれらが混在した形状(例えば各デフォーカス領域の中心箇所が球面形状、中心箇所の外側の周辺箇所が非球面形状)であってもよい。デフォーカス領域(或いは凸状領域3a)の平面視の半径の1/3~2/3の部分に中心箇所と周辺箇所との境界を設けても構わない。但し、デフォーカス領域(或いは凸状領域3a)の少なくとも中心箇所は、レンズ外部に向かって突出する凸の曲面形状であるのが好ましい。また、複数のデフォーカス領域(ファンクショナル領域内の全デフォーカス領域)のうち半分以上の個数は平面視にて同じ周期で配置されるのが好ましいことに伴い、デフォーカス領域は球面であるのが好ましい。
【0094】
各々のデフォーカス領域は、例えば、以下のように構成される。デフォーカス領域の平面視での直径は、0.6~2.0mm程度が好適である。それぞれ表面の面積では0.50~3.14mm程度であってもよい。凸状領域3aの曲率半径は、50~250mm、好ましくは86mm程度の球面状である。
【0095】
ファンクショナル領域3において、デフォーカス領域及びベース領域3bの面積の合計に対して、デフォーカス領域の面積の合計が占める割合が20~60%であってもよい。
【0096】
各デフォーカス領域におけるデフォーカスパワーの具体的な数値に限定は無いが、例えば、眼鏡レンズ1上のデフォーカス領域がもたらすデフォーカスパワーの最小値は0.50~4.50Dの範囲内、最大値は3.00~10.00Dの範囲内であるのが好ましい。最大値と最小値の差は1.00~5.00Dの範囲内であるのが好ましい。
【0097】
「デフォーカスパワー」は、各デフォーカス領域の屈折力と、各デフォーカス領域以外の部分の屈折力との差を指す。別の言い方をすると、「デフォーカスパワー」とは、デフォーカス領域の所定箇所の最小屈折力と最大屈折力の平均値からベース部分の屈折力を差し引いた差分である。本明細書においては、デフォーカス領域が凸状領域3aである場合を例示している。
【0098】
本明細書における「屈折力」は、屈折力が最小となる方向の屈折力と、屈折力が最大となる方向(該方向に対して垂直方向)の屈折力との平均値である平均屈折力を指す。
【0099】
レンズ基材は、例えば、チオウレタン、アリル、アクリル、エピチオ等の熱硬化性樹脂材料によって形成されている。なお、レンズ基材を構成する樹脂材料としては、所望の屈折度が得られる他の樹脂材料を選択してもよい。また、樹脂材料ではなく、無機ガラス製のレンズ基材としてもよい。
【0100】
ハードコート膜は、例えば、熱可塑性樹脂又はUV硬化性樹脂を用いて形成されている。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。このようなハードコート膜の被覆によって、眼鏡レンズ1の耐久性向上が図れるようになる。
【0101】
反射防止膜は、例えば、ZrO、MgF、Al等の反射防止剤を真空蒸着により成膜することにより、形成されている。このような反射防止膜の被覆によって、眼鏡レンズ1を透した像の視認性向上が図れるようになる。
【0102】
上述したように、レンズ基材の物体側の面には、複数のデフォーカス領域が形成されている。従って、その面をハードコート膜及び反射防止膜によって被覆すると、レンズ基材におけるデフォーカス領域に倣って、ハードコート膜及び反射防止膜によっても複数のデフォーカス領域が形成されることになる。
【0103】
眼鏡レンズ1の製造にあたっては、まず、レンズ基材を、注型重合等の公知の成形法により成形する。例えば、複数の凹部が備わった成形面を有する成形型を用い、注型重合による成形を行うことにより、少なくとも一方の表面にデフォーカス領域を有するレンズ基材が得られる。
そして、レンズ基材を得たら、次いで、そのレンズ基材の表面に、ハードコート膜を成膜する。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。
ハードコート膜を成膜したら、更に、そのハードコート膜の表面に、反射防止膜を成膜する。反射防止膜は、該膜のための原料を真空蒸着により成膜することにより、形成することができる。
このような手順の製造方法により、物体側に向けて突出する複数のデフォーカス領域を物体側の面に有する眼鏡レンズ1が得られる。
【0104】
以上の工程を経て形成される被膜の膜厚は、例えば0.1~100μm(好ましくは0.5~5.0μm、更に好ましくは1.0~3.0μm)の範囲としてもよい。ただし、被膜の膜厚は、被膜に求められる機能に応じて決定されるものであり、例示した範囲に限定されるものではない。
【0105】
被膜の上には、更に一層以上の被膜を形成することもできる。そのような被膜の一例としては、反射防止膜、撥水性又は親水性の防汚膜、防曇膜等の各種被膜が挙げられる。これら被膜の形成方法については、公知技術を適用できる。
【0106】
<眼鏡>
所定のフレーム形状に基づいて上記眼鏡レンズ1の周縁近傍をカットし、フレームに嵌め入れた眼鏡にも本発明の技術的思想が反映されている。フレームの種類、形状等には限定は無く、フルリム、ハーフリム、アンダーリム、リムレスであってもよい。
【0107】
以下、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の具体例を示す。本発明は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0108】
<具体例1>
図3は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例1>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図4は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例1>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
【0109】
以下の眼鏡レンズ1を作製した。なお、眼鏡レンズ1はレンズ基材のみからなり、レンズ基材に対する他物質による積層は行っていない。処方屈折力としてS(球面屈折力)は0.00Dとし、C(乱視屈折力)は0.00Dとした。
・レンズ基材の平面視での直径:60.00mm
・レンズ基材の種類:PC(ポリカーボネート)
・レンズ基材の屈折率:1.589
上記の内容は、各具体例に共通の内容であるため、以降は記載を省略する。
【0110】
本具体例では、本発明の一態様を適用する前だと、中心側クリア領域2の範囲を、アイポイントEPから半径3.50mmの円の領域とし、ファンクショナル領域3の範囲を、レンズ中心から半径20.00mmの円内(但し中心側クリア領域2は除く)と設定した。なお、ファンクショナル領域3よりも眼鏡レンズ1の外縁側に外側クリア領域4を設けた。
【0111】
本具体例のファンクショナル領域3は、すりガラスのような不透明化の加工がファンクショナル領域3全体に亘って成されたものを想定している。その一方、該ファンクショナル領域3は、近視又は遠視進行抑制効果をもたらすことを意図した構成(例:デフォーカス領域、凸状領域3a及び/又は凹状領域、埋め込み構造等)とベース領域3bとを含む環状の領域であってもよい。
【0112】
そして、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2を水平方向鼻側へと拡張し、中心側クリア領域2の形状を楕円に引き延ばした。本発明の一態様を適用する前に比べ、中心側クリア領域2を1.00mm鼻側に引き延ばした。その結果、中心側クリア領域2は、耳側よりも鼻側に1.00mm張り出した。その結果、本発明の一態様を適用する前だと中心側クリア領域2は半径3.50mm(直径7.00mm)の正円だったが、本発明の一態様を適用した後だと中心側クリア領域2は縦軸(短軸)7.00mm、横軸(長軸)8.00mmの楕円になった。
【0113】
本具体例は、上記(規定1)を満たした。具体的には、dを1.00以上2.00以下の範囲のいずれの値に設定しても、(規定1)の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が1.00mm大きかった。本具体例は、上記(規定1の別態様)も満たした。
【0114】
上記(規定2)を採用した場合の中心側クリア領域2の形状において、上記重心GVCはアイポイントEPを通過する水平線上にあり、アイポイントEPから見て、上記重心GVCまでの水平方向の距離は0.50mmであり、上記アイポイントEPを通過する水平線分の中点までの水平方向の距離は0.50mmであった。瞳孔径4.00mmの場合、中心側クリア領域2での最大内寄せ量(鼻側へ移動可能な距離)は1.50mmから2.00mmに拡大した。
【0115】
本具体例において、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2は、遠用瞳孔位置PS1のみならず、近用瞳孔位置PS2も包含可能となった。
【0116】
<具体例2>
図5は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例2>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図6は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例2>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
【0117】
本具体例では以下の構成を採用した。
・ファンクショナル領域3の構成:デフォーカス領域として凸状領域3aを離散配置。ファンクショナル領域3内において、凸状領域3a以外はベース領域3b。
・凸状領域3aの形状:球面
・凸状領域3aの屈折力:3.50D
・凸状領域3aの形成面:物体側の面
・凸状領域3aの平面視での配置:各凸状領域3aの中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各凸状領域3aの中心が配置)
・凸状領域3aの平面視での形状:正円(直径1.00mm)
・各凸状領域3a間のピッチ(凸状領域3aの中心間の距離):1.50mm
・装用者の瞳孔径:4.00mmと想定
【0118】
本具体例では、本発明の一態様を適用する前だと、中心側クリア領域2の範囲を、おおよそアイポイントEPから半径3.45mmの円の領域とし、ファンクショナル領域3の範囲を、レンズ中心から半径20.00mmの円内(但し中心側クリア領域2は除く)と設定した。なお、ファンクショナル領域3よりも眼鏡レンズ1の外縁側に外側クリア領域4を設けた。
【0119】
なお、上記中心側クリア領域2の形状を特定する態様(規定2)を適用しても、中心側クリア領域2としては、ファンクショナル領域3の凸状領域3aに対する外接円の集合体の包絡線(例えば図2の包絡線EL1)を輪郭とする形状が得られる(以降の具体例でも同様)。
【0120】
また、上記中心側クリア領域2の形状を特定する態様(規定2)を援用した外側クリア領域4の形状を特定する一態様を適用しても、ファンクショナル領域3としては上段落に記載の円環状領域に極めて近い形状が得られる(以降の具体例でも同様)。厳密には、具体例2、3に係る各図に記載のファンクショナル領域3の外側の境界線(破線である包絡線EL2)は円形ではなく、凸状領域3aが存在しない部分においてわずかに円の中心側に向けて凸の形状(ファンクショナル領域3がへこむ形状)となるが、該各図では概略図として該包絡線EL2を円形で示している。
【0121】
そして、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2を水平方向鼻側へと拡張した。具体的には、本発明の一態様を適用する前においてアイポイントEPを通過する水平線から最も近く且つ最もアイポイントEP(眼鏡レンズ1の幾何中心GC)に近い上下各1個の凸状領域3aを設けなかった。これにより、中心側クリア領域2の形状を水平方向鼻側へと引き延ばした。
【0122】
本具体例は、上記(規定1)を満たした。具体的には、dを1.50に設定すると、(規定1)の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が1.30mm大きかった。本具体例は、上記(規定1の別態様)も満たした。
【0123】
上記(規定2)を採用した場合の中心側クリア領域2の形状において、上記重心GVCはアイポイントEPを通過する水平線上にあり、アイポイントEPから見て、上記重心GVCまでの水平方向の距離は約0.4mmであり、上記アイポイントEPを通過する水平線分の中点までの水平方向の距離は0.59mmであった。瞳孔径4mmの場合、中心側クリア領域での最大内寄せ量(鼻側へ移動可能な距離)は1.51mmから2.70mmに拡大した。
【0124】
本具体例において、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2は、遠用瞳孔位置PS1のみならず、近用瞳孔位置PS2も包含可能となった。
【0125】
<具体例3>
図7は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例3>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図8は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例3>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
【0126】
本具体例では、具体例2に対して以下のように変更した。
【0127】
凸状領域3aの平面視での配置を変更した。具体的には、凸状領域3aを水平方向及び垂直方向に整列させた。各凸状領域3a間のピッチ(凸状領域3aの中心間の距離)は1.25mmとした。
【0128】
本具体例では、本発明の一態様を適用する前だと、中心側クリア領域2の範囲を、アイポイントEPから半径3.25mmの円の領域とし、ファンクショナル領域3の範囲を、レンズ中心から半径20.00mmの円内(但し中心側クリア領域2は除く)と設定した。なお、ファンクショナル領域3よりも眼鏡レンズ1の外縁側に外側クリア領域4を設けた。
【0129】
そして、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2を水平方向鼻側へと拡張した。具体的には、本発明の一態様を適用する前においてアイポイントEPを通過する水平線から最も近く且つ最もアイポイントEP(眼鏡レンズ1の幾何中心GC)に近い上下各1個及び水平線が通過する1個、それらに加え、その隣の列(Y方向に配列)の凸状領域3aにおいて最も該水平線に近い上下各1個の計5個の凸状領域3aを設けなかった。これにより、中心側クリア領域2の形状を水平方向鼻側へと引き延ばした。
【0130】
本具体例は、上記(規定1)を満たした。具体的には、dを1.50mmに設定すると、(規定1)の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が1.25mm大きかった。本具体例は、上記(規定1の別態様)も満たした。
【0131】
上記(規定2)を採用した場合の中心側クリア領域2の形状において、上記重心GVCはアイポイントEPを通過する水平線上にあり、アイポイントEPから見て、上記重心GVCまでの水平方向の距離は約0.4mmであり、上記アイポイントEPを通過する水平線分の中点までの水平方向の距離は0.63mmであった。瞳孔径4mmの場合、中心側クリア領域での最大内寄せ量(鼻側へ移動可能な距離)は1.25mmから2.50mmに拡大した。
【0132】
本具体例において、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2は、遠用瞳孔位置PS1のみならず、近用瞳孔位置PS2も包含可能となった。
【0133】
<具体例4>
図9は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例4>において本発明の一態様を適用する前の概略平面図である。
図10は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の<具体例4>において本発明の一態様を適用した後の概略平面図である。
【0134】
本具体例では、具体例2に対して以下のように変更した。
【0135】
凸状領域3aの平面視での配置を変更した。具体的には、凸状領域3aを周方向に整列させた。この整列を、径ごとに(アイポイントEPからの距離ごとに)行った。整列状況を以下の表に示す。以下の表において、リング番号とは、アイポイントEPから近い順に凸状領域3aの周方向の整列集団に付した番号であり、半径とは該リングの半径であり、凸状領域3aの数とは該リング上に配置された凸状領域3aの数である。
【表1】
【0136】
本具体例では、本発明の一態様を適用する前だと、中心側クリア領域2の範囲を、アイポイントEPから半径3.35mmの円の領域とし、ファンクショナル領域3の範囲を、レンズ中心から半径20.00mmの円内(但し中心側クリア領域2は除く)と設定した。なお、ファンクショナル領域3よりも眼鏡レンズ1の外縁側に外側クリア領域4を設けた。
【0137】
そして、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2を水平方向鼻側へと拡張した。具体的には、本発明の一態様を適用する前のリング番号1上の凸状領域3aにおいてアイポイントEPを通過する水平線から最も近く且つ最もアイポイントEP(眼鏡レンズ1の幾何中心GC)に近い上下各1個及び水平線が通過する1個の計3個の凸状領域3aを設けなかった。これにより、中心側クリア領域2の形状を水平方向鼻側へと引き延ばした。
【0138】
本具体例は、上記(規定1)を満たした。具体的には、dを1.50に設定すると、(規定1)の矩形状の部分の水平方向の最大幅は、アイポイントEPから耳側よりもアイポイントEPから鼻側の方が1.54mm大きかった。本具体例は、上記(規定1の別態様)も満たした。
【0139】
上記(規定2)を採用した場合の中心側クリア領域2の形状において、上記重心GVCはアイポイントEPを通過する水平線上にあり、アイポイントEPから見て、上記重心GVCまでの水平方向の距離は約0.5mmであり、上記アイポイントEPを通過する水平線分の中点までの水平方向の距離は0.72mmであった。瞳孔径4mmの場合、中心側クリア領域での最大内寄せ量(鼻側へ移動可能な距離)は1.34mmから2.47mmに拡大した。
【0140】
本具体例において、本発明の一態様を適用することにより、中心側クリア領域2は、遠用瞳孔位置PS1のみならず、近用瞳孔位置PS2も包含可能となった。
【0141】
本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【符号の説明】
【0142】
1・・・眼鏡レンズ
2・・・中心側クリア領域
3・・・ファンクショナル領域
3a・・・凸状領域
3b・・・ベース領域
4・・・外側クリア領域
EP・・・アイポイント
GC・・・幾何中心
GVC・・・重心
PS・・・瞳孔サイズ
PS1・・・遠用瞳孔位置
PS2・・・近用瞳孔位置
EL1・・・(中心側クリア領域の形状となる)包絡線
EL2・・・(外側クリア領域とファンクショナル領域との境界の形状となる)包絡線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10