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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004296
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】除膜装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105895
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084BB02
2G084BB37
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD12
2G084DD55
(57)【要約】
【課題】被処理物が高温になることを防ぎつつ、装置コストを抑え、処理効率が高い除膜装置を実現する。
【解決手段】除膜装置(100)は、真空容器(10)と、真空容器(10)の外部に設けられたアンテナ(4)と、磁場導入窓(WR)と、真空容器(10)内の第1円板(20)と、第1円板(20)上に設けられた第2円板(30)と、第2円板(30)上に設けられたワーク(W)を保持する保持部材(40)と、を備え、平面視において、第1円板(20)の第1接線(H1)から、第1接線(H1)と平行な第2円板(30)の第2中心点(P2)の軌道円(32)の第2接線(H2)までの垂線配置領域(VR)に、磁場導入窓(WR)の第3中心点(P3)を通り磁場導入窓(WR)に垂直な垂線(VH)が位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の外部に設けられ、高周波磁場を発生させるアンテナと、
前記真空容器の内部でプラズマを発生させるために、前記高周波磁場を前記真空容器の内部に導入させる、前記真空容器の壁面に設けられた磁場導入窓と、
前記真空容器内に設置された、複数の前記被処理物を載置するステージと、を備え、
前記ステージは、
中心である第1中心点周りに回転する第1円板と、
前記第1円板上に、前記第1円板の外周に沿って複数設けられ、それぞれの中心である第2中心点周りに回転する第2円板と、
前記第2円板上に複数設けられ、前記被処理物をそれぞれ保持する保持部材と、を有し、
平面視において、前記第1円板の外周に接する第1接線から、前記第1接線と平行な前記第2中心点の軌道円の接線であって、前記第1中心点よりも前記第1接線側に位置する第2接線までの垂線配置領域に、前記磁場導入窓の中心を通り前記磁場導入窓に垂直な垂線が位置する、除膜装置。
【請求項2】
前記磁場導入窓は、複数のスリットを有する金属板と、前記金属板の大気側に設置された前記スリットを覆う誘電体板とから構成される、請求項1に記載の除膜装置。
【請求項3】
前記磁場導入窓は前記アンテナに対して略平行になるように配置され、
前記アンテナの長手方向と前記スリットの長手方向とが直角となるように、前記スリットが前記金属板に形成されている、請求項2に記載の除膜装置。
【請求項4】
前記第1円板および前記第2円板の回転速度は、前記被処理物の温度に応じて決定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の除膜装置。
【請求項5】
前記保持部材が自転する、請求項1から4のいずれか1項に記載の除膜装置。
【請求項6】
前記アンテナの前記被処理物の高さ方向の長さは、前記被処理物の高さよりも長い、請求項1から5のいずれか1項に記載の除膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被膜が形成された被処理物を除膜する除膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被膜が形成されたワーク(被処理物)から、被膜を除膜する技術が知られている。例えば、特許文献1には、被膜が付いた被覆材にイオン流を照射して、被覆材から被膜を脱膜する脱膜装置が開示されている。特許文献1に記載されている脱膜装置は、被覆された被覆材を2以上のイオン流が重なるイオン流集中部に設置し、被覆材にイオン流を照射することで被覆材の脱膜を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2016/163278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、イオン流集中部に被覆材を設置して処理を行うため、被覆材が高温になるという問題がある。また、連続して被覆材にイオン流を照射するため、被覆材の温度が著しく上昇する。さらに、脱膜する被覆材の処理量を増やすためには、イオン流集中部の領域を広げる必要がある。イオン流集中部の領域を広げるには、イオン源を大きくする必要がある。特許文献1に記載されている脱膜装置ではイオン源が複数必要であるため、脱膜する被覆材の処理量を増やすためには、複数のイオン源を大きくしなければならず、装置コストが大幅に増加するという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、被処理物が高温になることを防ぎつつ、装置コストを抑え、処理効率が高い除膜装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る除膜装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の外部に設けられ、高周波磁場を発生させるアンテナと、前記真空容器の内部でプラズマを発生させるために、前記高周波磁場を前記真空容器の内部に導入させる、前記真空容器の壁面に設けられた磁場導入窓と、前記真空容器内に設置された、複数の前記被処理物を載置するステージと、を備え、前記ステージは、中心である第1中心点周りに回転する第1円板と、前記第1円板上に、前記第1円板の外周に沿って複数設けられ、それぞれの中心である第2中心点周りに回転する第2円板と、前記第2円板上に複数設けられ、前記被処理物をそれぞれ保持する保持部材と、を有し、平面視において、前記第1円板の外周に接する第1接線から、前記第1接線と平行な前記第2中心点の軌道円の接線であって、前記第1中心点よりも前記第1接線側に位置する第2接線までの垂線配置領域に、前記磁場導入窓の中心を通り前記磁場導入窓に垂直な垂線が位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、被処理物が高温になることを防ぎつつ、装置コストを抑え、処理効率が高い除膜装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る除膜装置の平面図である。
図2図1のA-A断面とB-B断面とを組み合わせて示す前記除膜装置の断面図である。
図3】前記除膜装置の磁場導入窓の平面図である。
図4図3の前記磁場導入窓のC-C断面図である。
図5】前記除膜装置の磁場導入窓の変形例を示す平面図である。
図6】アンテナからの距離とプラズマ密度との関係を示すグラフである。
図7】前記除膜装置のプラズマ領域を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態2に係る除膜装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る除膜装置100の平面図である。図2は、図1のA-A断面とB-B断面とを組み合わせて示す除膜装置100の断面図であり、図2の範囲Mが図1のA-A断面図であり、図2の範囲Nが図1のB-B断面図である。除膜装置100は、プラズマを用いて、被膜が形成された被処理物(ワークW)の被膜を除膜する除膜装置である。ワークWは、例えば、金属製部品を母材とし、その表面に無機物からなる被膜が形成されたものである。以下に本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
〔除膜装置の構成〕
図1および図2に基づき、除膜装置100の概略構成について説明する。図1において、プラズマ源1から真空容器10に向かう方向をx軸方向、アンテナ4が延伸する方向をz軸方向、x軸方向とz軸方向とに直交する方向をy軸方向とする。また、図1では、1つの第2円板30のみに保持部材40を図示し、他の第2円板30に設けられている保持部材40の図示は省略している。また、図1では、1つの保持部材40のみにワークWを図示し、他の保持部材40が保持するワークWの図示は省略している。図7及び図8についても同様である。
【0011】
図1および図2に示すように、除膜装置100は、プラズマ源1と、真空容器10とを備えている。
【0012】
(プラズマ源)
プラズマ源1は、誘導結合により高密度のプラズマを真空容器10内に生成させる、ICP(誘導結合型プラズマ装置)である。プラズマ源1は、例えば、1e11~1e12/cmの高密度のプラズマを生成することができる。
【0013】
プラズマ源1は、真空容器10の外部に設けられている。プラズマ源1は、整合器2と、シールドボックス3と、アンテナ4と、磁場導入窓WRと、を備えている。整合器2は、電源D1からの電力を負荷に応じて整合させる電気回路である。整合器2により効率的に電源D1からアンテナ4に電力が送られる。シールドボックス3は、内部にアンテナ4と磁場導入窓WRとを収容し、アンテナ4から発生する高周波磁場が外部に漏れるのを防ぐ。シールドボックス3は、整合器2と真空容器10の間に設けられている。シールドボックス3の壁面3aには、開口部3bが形成されている。開口部3bは、真空容器10の壁面10aに形成された開口部10bに対応する位置に、開口部10bよりも大きく開口するように形成されている。
【0014】
なお、本実施形態1では、除膜装置100は、真空容器10を挟んでx軸方向に2つのプラズマ源1を備えているが、前記に限らない。プラズマ源1は1つでも除膜処理を行うことができるので、除膜装置100は、プラズマ源1が少なくとも1つ備えられていればよい。
【0015】
(アンテナ)
アンテナ4は、高周波磁場を発生させる。アンテナ4は、Z方向に延伸する金属パイプアンテナであり、磁場導入窓WRに沿ってシールドボックス3内に配置されている。図2に示すように、ワークWの高さ方向(Z方向)のアンテナ4の長さL1は、ワークWの高さL2よりも長い。これによりワークWの高さ方向においても、ワークWをプラズマが発生する領域内に位置させることができるので、ワークW全体を除膜処理することができる。アンテナ4の長さを変更することで除膜処理面積を大きくすることができ、ワークWの大きさにあわせたプラズマを生成することができる。
【0016】
アンテナ4は必要に応じて湾曲させることができる。これにより、アンテナ4の各点から磁場導入窓WRまでの距離を変更することができ、真空容器10内に発生させるz軸方向のプラズマ密度を調整することができる。
【0017】
(磁場導入窓)
磁場導入窓WRは、真空容器10の内部11でプラズマを発生させるために、アンテナ4が発生させた高周波磁場を真空容器10の内部11に導入させる。磁場導入窓WRは、磁場導入窓構成部5により構成され、磁場導入窓構成部5の一部である。磁場導入窓WRはアンテナ4に対して略平行になるように配置されている。シールドボックス3の壁面3aに形成された開口部3bには磁場導入窓構成部5が配置され、磁場導入窓構成部5は、真空容器10の開口部10bを覆うように、真空容器10の壁面10aに設けられている。
【0018】
図3は、真空容器10側からプラズマ源1を見た場合の除膜装置100の磁場導入窓WRの平面図である。図4は、図3のC-C断面図である。より詳しくは、図4の断面図1001は、除膜装置100に係るC-C断面図を示し、断面図変形例1002は、断面図1001の変形例を示し、断面図変形例1003は、断面図1001の他の変形例を示す。なお、図3には、磁場導入窓WRとアンテナ4との位置関係が分かるように、アンテナ4を図示している。また、図4の各図には、それぞれ、磁場導入窓WRとアンテナ4とシールドボックス3と真空容器10との位置関係が分かるように、アンテナ4とシールドボックス3の一部と真空容器10の一部とを図示している。
【0019】
図3および図4の断面図1001に示すように、磁場導入窓構成部5は、金属板6と、誘電体板7と、を備えている。シールドボックス3の壁面3aには、真空容器10側からアンテナ4側に向かって、磁場導入窓構成部5として金属板6と誘電体板7とがこの順に設けられている。
【0020】
金属板6は、図4の断面図1001に示すように、真空容器10の開口部10bを覆うように、真空容器10の壁面10aに設けられている。また、金属板6はシールドボックス3の壁面3aに形成された開口部3bに配置されることで、真空容器10の壁面10aに設けられている。
【0021】
金属板6は、図3及び図4の断面図1001に示すように、金属板6をx軸方向に貫通する複数のスリット61を有する。複数のスリット61は、それぞれがy軸方向に延伸した細長い長方形の開口である。また、複数のスリット61は、z軸方向に一列に並ぶように配置されている。アンテナ4の長手方向とスリット61の長手方向とが直角となるように、スリット61が金属板6に形成されている。
【0022】
誘電体板7は、複数のスリット61を覆うように金属板6の大気側(アンテナ4側)から金属板6に接して設置される。誘電体板7は、誘電体物質で構成されている。誘電体板7を構成する材料は、例えば、セラミックスまたはガラスを採用することができる。図3および図4に示すように、磁場導入窓構成部5において、スリット61が形成される領域における金属板6および誘電体板7が磁場導入窓WRとなる。言い換えると、磁場導入窓WRは、複数のスリット61を有する金属板6と、金属板6の大気側に設置されたスリット61を覆う誘電体板7と、から構成される。
【0023】
アンテナ4から生じた高周波磁場は、磁場導入窓WRにおける誘電体板7および金属板6の複数のスリット61を透過して真空容器10の内部11に供給される。なお、複数のスリット61は誘電体板7によって塞がれるので、真空容器10の内部11の真空は保持される。
【0024】
誘電体板7だけでなく、スリット61が形成された金属板6と共に磁場導入窓WRを形成することで、高周波磁場を真空容器10内へ導入する機能を確保しつつ、磁場導入窓WRの機械的強度を上げることができる。これにより、誘電体板7が破損するリスクを減らすことができる。
【0025】
また、真空容器10の外部に配置されたアンテナ4から発生する高周波磁場を、磁場導入窓WRを介して真空容器10の内部11に導入することにより、真空容器10の内部11にプラズマを発生させることができる。プラズマは、アンテナ4からのx軸方向の距離に逆比例する磁場分布相当の密度分布をもち、またy軸方向に拡がる指向性の良い分布をもつ。これにより、真空容器10の内部11に高密度のプラズマを広く生成することができ、ワークWを効率よく処理することができる。
【0026】
(磁場導入窓とシールドボックスと真空容器との位置関係の変形例)
図4の断面図変形例1002及び断面図変形例1003に基づき、磁場導入窓WRとシールドボックス3と真空容器10と位置関係の変形例について説明する。
【0027】
図4の断面図変形例1002に示すように、除膜装置100において、シールドボックス3の壁面3aの開口部3bは、真空容器10の壁面10aに形成された開口部10bに対応する位置に、開口部10bと略一致する大きさで形成されていてもよい。この場合、磁場導入窓構成部5は、シールドボックス3の壁面3aに形成された開口部3bを覆うようにシールドボックス3の壁面3aに設けられる。より詳しくは、磁場導入窓WRを構成する磁場導入窓構成部5の金属板6は、開口部3bを塞ぐようにシールドボックス3の壁面3aに設けられる。前述したように、真空容器10の壁面10aの開口部10bに対応する位置に、開口部3bがシールドボックス3の壁面3aに形成されているため、磁場導入窓構成部5の一部である磁場導入窓WRは、真空容器10の壁面10aに設けられていると同視できる。
【0028】
また、除膜装置100において、図4の断面図変形例1003に示すように、シールドボックス3として、真空容器10側の壁面3aが開放されたものを用いてもよい。その場合、真空容器10の壁面10aに形成された開口部10bを覆うように、磁場導入窓構成部5の金属板6が真空容器10の壁面10aに設置される。さらに、金属板6の真空容器10とは反対側の面において、磁場導入窓WR以外の箇所に壁面3aを設置することで、金属板6を介して、シールドボックス3を真空容器10の壁面3aに設置する。
【0029】
除膜装置100に係るC-C断面図の構成を、図4の断面図変形例1002及び断面図変形例1003が示す構成としても、断面図1001が示す構成を有する除膜装置100と同等の効果を奏することができる。
【0030】
(磁場導入窓の変形例)
図5に基づき、磁場導入窓WRの変形例について説明する。図5は、除膜装置100の磁場導入窓WRの変形例である磁場導入窓WRAを示す平面図である。図5には、磁場導入窓WRAとアンテナ4との位置関係が分かるように、アンテナ4を図示している。図5に示すように、磁場導入窓WRAは、磁場導入窓WRと比較して、スリット61に替えて開口部63を含む点が異なり、その他の点は磁場導入窓WRと同様である。
【0031】
図5に示すように、磁場導入窓構成部5Aは、金属板6Aと誘電体板7とを備えている。金属板6Aには、真空容器10の開口部10bに対応した、1つの開口部63が形成されている。磁場導入窓構成部5Aにおいて、開口部63が形成される領域における金属板6Aおよび誘電体板7が磁場導入窓WRAとなる。このとき、実質的には、磁場導入窓WRAは誘電体板7のみで形成されることになる。つまり、真空容器10に高周波磁場を導入する磁場導入窓WRAは、少なくとも誘電体板7から構成される。磁場導入窓WRAのように、金属板6にスリット61が形成されていなくとも、プラズマ源1により真空容器10の内部11にプラズマを発生させることができる。このように、磁場導入窓WRAに真空容器10の開口部10bに対応した大きさの開口部63を設けることで、真空容器10内に多くの高周波磁場を導入することができる。
【0032】
(真空容器)
図1および図2に示すように、真空容器10は、内部11にワークWを収容する。真空容器10の内部11は、真空ポンプ8により真空排気され、かつ、ガスが導入される。真空容器10の内部11に導入されるガスは特に規定されず、ワークWの除膜を行えるプラズマを発生できるものであればよい。真空容器10は例えば金属製の箱型の容器である。前述したように、真空容器10の壁面10aには、厚さ方向に貫通する開口部10bが形成されている。真空容器10は電気的に接地されている。真空容器10内には、ステージSが備えられている。
【0033】
(ステージ)
ステージSには、複数のワークWが載置されている。ステージSは、第1円板20と、第2円板30と、を有している。第1円板20は、中心である第1中心点P1周りに回転する。第1円板20は、第1中心点P1を中心として、例えば、矢印Q1に示す方向に回転する。
【0034】
第2円板30は、第1円板20上に、第1円板20の外周に沿って複数設けられている。第2円板30はそれぞれの中心である第2中心点P2周りに回転する。第2円板30は、第2中心点P2を中心として、例えば、矢印Q2に示す方向に回転する。第1円板20が第1中心点P1を中心として回転することにより、第2中心点P2は軌道円32上を移動する。
【0035】
第2円板30上には、第2円板30の外周に沿って保持部材40が複数設けられている。複数の保持部材40はワークWをそれぞれ保持する。さらに、保持部材40は自転する。保持部材40は、例えば、矢印Q3に示す方向に自転する。
【0036】
図2に示すように、ワークWは、第1円板20と第2円板30と保持部材40とを介してパルス電源D2と接続されており、ワークWにはバイアス電圧の印加が可能である。バイアス電圧によって、例えば、真空容器10内のプラズマ中のイオンがワークWに入射する時のエネルギーを制御することで、ワークWの除膜の制御を行うことができる。
【0037】
第2円板30の直径は第1円板20の半径よりも小さい。これにより、より多くのワークWを処理することができる。また、図1では、第1円板20に第2円板30が内接しているが、前記に限らない。例えば、第2円板30が第1円板20内に含まれるように第2円板30が第1円板20上に位置していてもよく、第1円板20上に第2円板30の第2中心点P2が位置し、第2円板30の外周の一部が第1円板20の外周よりも外側に位置していてもよい。
【0038】
〔磁場導入窓とステージとの位置関係〕
z軸方向(ワークWの高さ方向)の平面視において、磁場導入窓WRとステージSとは、磁場導入窓WRの第3中心点P3を通り磁場導入窓WRに垂直な垂線VHが、接点T1において第1円板20の外周に接するように、配置されている。言い換えると、垂線VHは、接点T1で第1円板20に接する第1接線H1と一致する。磁場導入窓WRの第3中心点P3は、アンテナ4の中心点とおおよそ一致する。
【0039】
このように磁場導入窓WRとステージSとを配置することで、多くのワークWを後述するプラズマ領域PR1に含めることができる。これにより、1つのプラズマ源1であっても多くワークWにプラズマ処理を行うことができる。
【0040】
(プラズマ領域)
図6および図7に基づき、プラズマ領域PR1について説明する。プラズマ領域PR1とはプラズマが発生している領域を示す。図6は、アンテナ4からの距離とプラズマ密度との関係を示すグラフである。横軸はアンテナ4からの距離を示し、縦軸はプラズマ密度を示す。図7は、除膜装置100のプラズマ領域PR1を示す平面図である。
【0041】
アンテナ4からの距離が離れるほど、プラズマ領域PR1は広がる。しかしながら、図6に示すように、アンテナ4からの距離が離れるほど、プラズマ密度は小さくなる。プラズマ密度が小さくなりすぎると処理効率が低下する。そこで、除膜装置100では、プラズマ密度の相対値が約0.1~0.5となるプラズマ密度を利用する。これにより、広くプラズマ密度の高いプラズマ領域PR1で除膜処理を行うことが可能となる。
【0042】
また、除膜装置100で利用するプラズマ密度は、図6に示すように、アンテナ4からの距離の変化に対してプラズマ密度の勾配が少なく安定しているため、均一な除膜処理を行うことができる。さらに、ある程度小さいプラズマ密度のプラズマを利用するので、真空容器10内において、プラズマ領域PR1と後述するプラズマ非発生領域PR2とでプラズマ密度が極端に変化することなく除膜処理を行うことができる。
【0043】
プラズマ領域PR1と、真空容器10におけるプラズマ領域PR1の以外の領域であるプラズマ非発生領域PR2とは、例えば、図7に示すような分布となる。図7に示すように、プラズマ領域PR1の幅L3がスリット61の幅L4の約2倍の幅になる位置に接点T1が位置するように、磁場導入窓WRおよびステージSを配置すると、安定したプラズマ密度を有するプラズマ領域PR1を形成することができる。
【0044】
〔動作〕
まず、第2円板30上の各保持部材40にワークWを保持させる。次に、プラズマ源1により真空容器10内にプラズマを生成させ、第1中心点P1を中心に第1円板20を回転させ、第2中心点P2を中心に第2円板30を回転させ、保持部材40を自転させる。
【0045】
第1円板20が、第1中心点P1を中心に回転することにより、図7に示すように、ワークWは、プラズマ領域PR1とプラズマ非発生領域PR2とに交互に位置する。そのため、ワークWは、真空容器10の内部11において連続的ではなく、断続的にプラズマにさらされる。これにより、プラズマ領域PR1では除膜処理が進み、プラズマ非発生領域PR2に位置する、プラズマ領域PR1から離れるタイミングでは、ワークWの温度上昇を抑えることができる。このように、除膜装置100では、ワークWがプラズマ領域PR1から離れるタイミングができるので、ワークWが高温になりにくい。
【0046】
また、第2中心点P2を中心に第2円板30が回転し、保持部材40が自転することにより、ワークWは、回転しながら、プラズマ密度の高い領域と小さい領域とに交互にさらされ除膜処理される。これにより、均一な除膜が可能になる。
【0047】
第1円板20および第2円板30の回転速度は、ワークWの温度に応じて決定される。具体的には、例えば、ワークWの上限温度を設定し、ワークWの温度上昇値を考慮してワークWの温度がその上限温度に達しないように、前記回転速度を設定する。
【0048】
(効果)
除膜装置100では、ICPを採用しているため高密度のプラズマ生成が可能であり、1つのプラズマ源1で除膜処理を行うことができるので、装置の低コスト化を実現できる。
【0049】
除膜装置100では、垂線VHが第1円板20の第1接線H1と略一致するように、磁場導入窓WRとステージSとが配置されていることで、第1円板20の接線付近でプラズマ密度の高いプラズマ領域PR1が広がるようにプラズマを発生させることができる。これにより、1つのプラズマ源1での処理範囲が広がり、多くのワークWを処理することができる。また、プラズマ領域PR1内にワークWを長時間位置させることができるので、除膜処理の時間を短縮することができ、除膜処理の効率が向上する。
【0050】
除膜装置100では、第1円板20の外周に沿って複数の第2円板30が設けられ、各第2円板30の外周に沿って複数の保持部材40が設けられている。これにより、真空容器10のワークWの積載数を増やすことができ、一度に処理できるワークWを増やすことができる。
【0051】
除膜装置100では、真空容器10内において、第1円板20が回転することにより、ワークWはプラズマ領域PR1とプラズマ非発生領域PR2とに交互に位置する。これにより、ワークWが断続的にプラズマにさらされるため、ワークWが高温になることを避けることができる。
【0052】
また、プラズマ源1とワークWとの距離が近いとワークWが高温になりやすい。それに対して、除膜装置100では、垂線VHが第1円板20の接線と略一致するように、磁場導入窓WRとステージSとが配置されている。これにより、垂線VHが第1円板20の第1中心点P1を通るように磁場導入窓WRとステージSとが配置される場合と比較して、プラズマ源1とワークWとの距離が遠くなるので、ワークWの温度を極端に上下させることなく除膜処理ができる。
【0053】
以上により、除膜装置100によれば、少ないプラズマ発生源で、ワークWが高温になることを防ぎつつ効率よく除膜処理ができる。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図8に基づき以下に説明する。図8は、本発明の実施形態2に係る除膜装置100Aの平面図である。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図8に示すように、除膜装置100Aは、除膜装置100と比較して、磁場導入窓WRとステージSの相対的な位置関係が異なり、その他の構成は同じである。
【0055】
除膜装置100Aでは、z軸方向の平面視において、磁場導入窓WRの第3中心点P3を通り磁場導入窓WRに垂直な垂線VHが、垂線配置領域VRに位置するように、磁場導入窓WRとステージSとが配置される。ここで、垂線配置領域VRは、第1接線H1から、第1接線H1と平行な第2中心点P2の軌道円32の接線であって、第1中心点P1よりも第1接線H1側に位置する第2接線H2までの領域である。これにより、除膜装置100Aは、除膜装置100と同様の効果を奏する。
【0056】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る除膜装置(100・100A)は、被処理物(ワークW)を内部(11)に収容する真空容器(10)と、前記真空容器の外部に設けられ、高周波磁場を発生させるアンテナ(4)と、前記真空容器の内部でプラズマを発生させるために、前記高周波磁場を前記真空容器の内部に導入させる、前記真空容器の壁面(10a)に設けられた磁場導入窓(WR)と、前記真空容器内に設置された、複数の前記被処理物を載置するステージ(S)と、を備え、前記ステージは、中心である第1中心点(P1)周りに回転する第1円板(20)と、前記第1円板上に、前記第1円板の外周に沿って複数設けられ、それぞれの中心である第2中心点(P2)周りに回転する第2円板(30)と、前記第2円板上に複数設けられ、前記被処理物をそれぞれ保持する保持部材(40)と、を有し、平面視において、前記第1円板の外周に接する第1接線(H1)から、前記第1接線と平行な前記第2中心点の軌道円(32)の接線であって、前記第1中心点よりも前記第1接線側に位置する第2接線(H2)までの垂線配置領域(VR)に、前記磁場導入窓(WR)の中心(第3中心点P3)を通り前記磁場導入窓に垂直な垂線(VH)が位置する。
【0057】
前記構成によれば、磁場導入窓を介して真空容器に高周波磁場を導入させるので、真空容器内にプラズマを発生させることができる。また、平面視において、磁場導入窓の中心を通り磁場導入窓に垂直な垂線が、垂線配置領域に位置することで、多くの被処理物をプラズマ領域に含めることができる。これにより、1つのアンテナであっても多く被処理物にプラズマ処理を行うことができる。また、第1円板が回転することにより、プラズマがあたらない領域に被処理物が位置するタイミングができ、被処理物が連続してプラズマにさらされることを避けることができるので、被処理物の温度上昇を抑えることができる。さらに、第2円板が回転することで、各被処理物がさらされるプラズマ密度が均等になる。その結果、被処理物が高温になることを防ぎつつ、装置コストを抑え処理効率が高い除膜装置を実現することができる。
【0058】
本発明の態様2に係る除膜装置(100・100A)は、前記態様1において、前記磁場導入窓(WR)は、複数のスリット(61)を有する金属板(6)と、前記金属板の大気側に設置された前記スリットを覆う誘電体板(7)とから構成されていてもよい。
【0059】
前記構成によれば、磁場導入窓が金属板と誘電体板とから構成されることで、アンテナから発生される高周波磁場により真空容器内にプラズマを発生させることができる。また、金属板のスリットにより、磁場導入窓の強度を上げることができるので、誘電体板の破損を防ぐことができる。
【0060】
本発明の態様3に係る除膜装置(100・100A)は、前記態様2において、前記磁場導入窓(WR)は前記アンテナ(4)に対して略平行になるように配置され、前記アンテナの長手方向と前記スリット(61)の長手方向とが直角となるように、前記スリットが前記金属板(6)に形成されていてもよい。
【0061】
前記構成によれば、スリットの長手方向が、アンテナの長手方向と直角となるため、真空容器において、アンテナの長手方向と直角となる向きにも、プラズマ密度の高いプラズマ領域を発生させることができる。
【0062】
本発明の態様4に係る除膜装置(100・100A)は、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記第1円板(20)および前記第2円板(30)の回転速度は、前記被処理物(ワークW)の温度に応じて決定されてもよい。前記構成によれば、適切な温度帯で被処理物の除膜を行うことができる。
【0063】
本発明の態様5に係る除膜装置(100・100A)は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記保持部材(40)が自転してもよい。前記構成によれば、より均一な除膜処理が可能になる。
【0064】
本発明の態様6に係る除膜装置(100・100A)は、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記アンテナ(4)の前記被処理物(ワークW)の高さ方向の長さ(L1)は、前記被処理物の高さ(L2)よりも長くてもよい。前記構成によれば、被処理物の高さ方向においても、被処理物をプラズマで覆うことができるので、被処理物全体を除膜処理することができる。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
4 アンテナ
5 磁場導入窓構成部
6、6A 金属板
7 誘電体板
10 真空容器
20 第1円板
30 第2円板
32 軌道円
40 保持部材
61 スリット
100、100A 除膜装置
H1 第1接線
H2 第2接線
VR 垂線配置領域
P1 第1中心点
P2 第2中心点
P3 第3中心点(中心)
L1 ワーク(被処理物)の高さ方向のアンテナの長さ
L2 ワーク(被処理物)の高さ
WR 磁場導入窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8