(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023042960
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】溶接対象部端面形成部材、及び、溶接対象部端面形成部材を用いた柱の接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 37/06 20060101AFI20230320BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B23K37/06 R
B23K9/028 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150402
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081BA02
4E081BA27
4E081BB17
4E081DA28
4E081FA14
(57)【要約】
【課題】下側の柱の上端面の所定の位置に固定状態に設置することが容易な溶接対象部端面形成部材等を提供する。
【解決手段】本発明は、上側の柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、下側の柱の上端面とで囲まれた溶接対象部に溶接を行う場合に、上側の柱の角部と下側の柱の上端面との間の所定の位置に設置されて溶接対象部の端面を形成するための溶接対象部端面形成部材(タブ1)において、下側の柱の上端面に接触する被設置面11と、裏当金の外表面に接触させる裏当金接触面13と、開先面に接触させる開先面接触面14と、溶接金属が接触して溶接対象部の端面を形成する溶接対象部端面形成面12と、被設置面11と対向して当該被設置面11を下側の柱の上端面に押し付ける力を受けるための力受け面15とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側の柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、下側の柱の上端面とで囲まれた溶接対象部を形成し、当該溶接対象部に溶接を行って、下側の柱と上側の柱とを接合する場合に、上側の柱の角部と下側の柱の上端面との間の所定の位置に設置されて溶接対象部の端面を形成するための溶接対象部端面形成部材において、
下側の柱の上端面に接触する被設置面と、裏当金の外表面に接触させる裏当金接触面と、開先面に接触させる開先面接触面と、溶接金属が接触する溶接対象部の端面を形成する溶接対象部端面形成面と、被設置面と対向して当該被設置面を下側の柱の上端面に押し付ける力を受けるための力受け面とを備えたことを特徴とする溶接対象部端面形成部材。
【請求項2】
被設置面が下側の柱の上端面の所定の位置に設置された場合、力受け面が、上側の柱の外周面よりも外方に突出する水平面を形成することを特徴とする請求項1に記載の溶接対象部端面形成部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の溶接対象部端面形成部材を用いて、下側の柱と上側の柱とを溶接にて接合する柱の接合方法であって、
上側の柱の側面の下端に形成された開先面と当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と下側の柱の上端面とで囲まれた溶接対象部を形成する柱位置決めステップと、
上側の柱の側面の左の角部近傍と下側の柱の側面の左の角部近傍の上の上端面との間の所定の位置に、溶接対象部の左端面を形成するための左の溶接対象部端面形成部材を設置するとともに、上側の柱の側面の右の角部近傍と下側の柱の側面の右の角部近傍の上の上端面との間の所定の位置に、溶接対象部の右端面を形成するための右の溶接対象部端面形成部材を設置する溶接対象部端面形成部材設置ステップと、
溶接対象部端面形成部材の力受け面に力を加えて当該溶接対象部端面形成部材を下側の柱の上端面に押し付けることで当該溶接対象部端面形成部材を所定の位置に固定する溶接対象部端面形成部材固定ステップと、
上側の柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、下側の柱の側面の上の上端面と、左右の溶接対象部端面形成部材の溶接対象部端面形成面とで囲まれて区画された溶接対象部に、溶接を行う溶接ステップと、
を備えたことを特徴とする柱の接合方法。
【請求項4】
溶接対象部端面形成部材固定ステップにおいては、溶接対象部端面形成部材を下側の柱の上端面に押し付けるための重しを、当該溶接対象部端面形成部材の力受け面に設置したことを特徴とする請求項3に記載の柱の接合方法。
【請求項5】
溶接対象部端面形成部材固定ステップにおいては、溶接対象部端面形成部材の力受け面に力を加えて当該溶接対象部端面形成部材を下側の柱の上端面に押し付ける固定具を用いたことを特徴とする請求項3に記載の柱の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下側の柱と上側の柱とを接合する場合に用いられる溶接対象部端面形成部材、及び、当該溶接対象部端面形成部材を用いた柱の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断面四角中空状の上側のボックス柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、断面四角中空状の下側のボックス柱の上端面とで囲まれた溶接対象部を形成し、当該溶接対象部に溶接を行って、下側のボックス柱と上側のボックス柱とを接合する場合において、上側のボックス柱の角部と下側のボックス柱の上端面との間の所定の位置に溶接対象部の端面を形成するための溶接対象部端面形成部材(エンドタブ)を設置して、当該溶接対象部に溶接を行うことが知られている(特許文献1参照)。
当該特許文献1に開示された溶接対象部端面形成部材は、下側のボックス柱の上端面に設置される被設置面と、溶接対象部端面形成面と、裏当金接触面と、開先面接触面とを備えた構成となっている。
下側のボックス柱の上端面に設置される被設置面は、細幅の平面に形成され、溶接対象部端面形成面は、被設置面の長辺縁より延長して被設置面に対して垂直な直角三角形状の平面に形成され、開先面接触面は、溶接対象部端面形成面の直角三角形状の斜辺縁より上方に傾斜して延長する細幅の傾斜面に形成されている。
例えば、下側のボックス柱の上に上側のボックス柱を載せ、エレクションピースを用いて下側のボックス柱と上側のボックス柱とを仮固定する。次に、エレクションピースのついていない上下のボックス柱の上下の前側の側面間に形成された溶接対象部の左右側にそれぞれ溶接対象部端面形成部材を設置して、溶接対象部の左右の端面を形成する。そして、例えば、当該溶接対象部の左の端面を溶接の始端として終端となる右の端面側に向けてカスケード溶接を行う。この場合、当該溶接対象部に溶接された溶接金属の左の端面及び右の端面は、例えば、ボックス柱の中心とボックス柱の角とを通過する直線を含む垂直面と同一面上に位置される留め面に形成される。次に、当該前側の側面と平行に対向する後側の側面においても同様にして、上下のボックス柱の上下の後側の側面間に形成された溶接対象部の左右側に溶接対象部端面形成部材を設置して、溶接対象部の左右の端面を形成した後に、当該溶接対象部に溶接を行う。その後、エレクションピースを除去して、残った上下のボックス柱の上下の左側の側面間の溶接対象部、及び、右側の側面間の溶接対象部に溶接を行う。この場合、上下のボックス柱の上下の側面間の角部における溶接金属と溶接金属との接合形態は留めのような接合形態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された溶接対象部端面形成部材は、細幅の部材であるため、下側のボックス柱の上端面の所定の位置に、固定状態に設置することが困難であった。当該特許文献1に開示された溶接対象部端面形成部材を用いる場合、例えば、溶接対象部端面形成面と対向する裏側の面に作用する押さえ部材等を用いて所定の位置に位置決めするようにしているが、溶接の際に、当該溶接対象部端面形成部材が所定の位置からずれ易くなり、溶接対象部の左右端側での溶接ビードの形状が安定しないという課題があった。
本発明は、下側の柱の上端面の所定の位置に固定状態に設置することが容易な溶接対象部端面形成部材等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る溶接対象部端面形成部材(以下、「タブ」という)は、上側の柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、下側の柱の上端面とで囲まれた溶接対象部を形成し、当該溶接対象部に溶接を行って、下側の柱と上側の柱とを接合する場合に、上側の柱の角部と下側の柱の上端面との間の所定の位置に設置されて溶接対象部の端面を形成するためのタブにおいて、下側の柱の上端面に接触する被設置面と、裏当金の外表面に接触させる裏当金接触面と、開先面に接触させる開先面接触面と、溶接金属が接触する溶接対象部の端面を形成する溶接対象部端面形成面と、被設置面と対向して当該被設置面を下側の柱の上端面に押し付ける力を受けるための力受け面とを備えたことを特徴とする。
また、被設置面が下側の柱の上端面の所定の位置に設置された場合、力受け面が、上側の柱の外周面よりも外方に突出する水平面を形成することを特徴とする。
本発明に係るタブによれば、被設置面と対向して当該被設置面を下側の柱の上端面に押し付ける力を受けるための力受け面を備えたので、溶接時において、下側の柱の上端面の所定の位置からずれ難いタブを提供でき、当該タブを用いた柱の接合方法により、溶接対象部の左右端側での溶接ビードの形状が安定した溶接を実現できるようになる。
また、上述したタブを用いて、下側の柱と上側の柱とを溶接にて接合する本発明に係る柱の接合方法は、上側の柱の側面の下端に形成された開先面と当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と下側の柱の上端面とで囲まれた溶接対象部を形成する柱位置決めステップと、上側の柱の側面の左の角部近傍と下側の柱の側面の左の角部近傍の上の上端面との間の所定の位置に、溶接対象部の左端面を形成するための左のタブを設置するとともに、上側の柱の側面の右の角部近傍と下側の柱の側面の右の角部近傍の上の上端面との間の所定の位置に、溶接対象部の右端面を形成するための右のタブを設置するタブ設置ステップと、タブの力受け面に力を加えて当該タブを下側の柱の上端面に押し付けることで当該タブを所定の位置に固定するタブ固定ステップと、上側の柱の側面の下端に形成された開先面と、当該開先面と連続するように設けられた裏当金の外表面と、下側の柱の側面の上の上端面と、左右のタブの溶接対象部端面形成面とで囲まれて区画された溶接対象部に、溶接を行う溶接ステップと、を備えたことを特徴とする。
また、タブ固定ステップにおいては、タブを下側の柱の上端面に押し付けるための重しを、当該タブの力受け面に設置したことを特徴とする。
また、タブ固定ステップにおいては、タブの力受け面に力を加えて当該タブを下側の柱の上端面に押し付ける固定具を用いたことを特徴とする。
本発明に係るタブを用いた柱の接合方法によれば、下側の柱と上側の柱とを溶接にて接合する際において、溶接対象部の左右端側での溶接ビードの形状が安定した溶接を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】実施形態1のタブを使用した溶接順序を示す断面図。
【
図5】実施形態1のタブの使用した溶接方法を示す前面図。
【
図6】実施形態1のタブの固定方法の他例を示す図(実施形態2)。
【
図7】実施形態1のタブの設置方法及び固定方法の他例を示す図(実施形態3)
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至
図4に示すように、実施形態に係るタブ(溶接対象部端面形成部材)1は、下側の柱としての例えば鋼製のボックス柱2と上側の柱としての例えば鋼製のボックス柱3とを接合する場合、即ち、上側のボックス柱3の側面30Sの下端に形成された開先面31と、当該開先面31と連続するように設けられた裏当金5の外表面と、下側のボックス柱2の上端面41とで囲まれた溶接対象部Saに溶接を行って、下側のボックス柱2と上側のボックス柱3と接合する場合において、上側のボックス柱3の角部と下側のボックス柱2の上端面41との間の所定の位置に設置されて溶接対象部Saの左端面又は右端面を形成するための部材である。
【0008】
タブ1は、例えばセラミックにより形成される。
図1,
図2に示すように、当該タブ1は、下面により構成された被設置面11と、溶接対象部端面形成面12と、裏当金接触面13と、開先面接触面14と、上面により構成された力受け面15と、外側面16,17,18とを備える。
被設置面11は、下側のボックス柱2の上端面41により形成される水平面に接触する平面に形成される。
裏当金接触面13は、裏当金5の外表面に接触させる平面に形成される。
開先面接触面14は、開先面31に接触させる平面に形成される。
溶接対象部端面形成面12は、溶接金属が接触する溶接対象部Saの端面を形成する平面に形成される。
力受け面15は、被設置面11と対向して当該被設置面11を下側のボックス柱2の上端面41に押し付ける力である垂直力を受けるための平面に形成される。
即ち、タブ1は、平面により形成された被設置面11、溶接対象部端面形成面12、裏当金接触面13、開先面接触面14、力受け面15、外側面16,17,18とを備えた多面体により構成される。
【0009】
被設置面11と力受け面15とが互いに平行に対向する平面により形成され、裏当金接触面13と外側面17とが互いに平行に対向する平面により形成され、外側面16と外側面18とが互いに平行に対向する平面により形成される。
溶接対象部端面形成面12、裏当金接触面13、外側面16,17,18は、被設置面11に対して直交する平面により形成される。
溶接対象部端面形成面12は、裏当金接触面13と外側面16とを繋ぐ傾斜面により形成され、開先面接触面14は、裏当金接触面13と力受け面15とを繋ぐ傾斜面により形成される。
裏当金接触面13と溶接対象部端面形成面12とのなす角度は、任意に設定すればよいが、例えば、135度程度に設定される。
裏当金接触面13と開先面接触面14とのなす角度は、例えば開先面31の開先角度に対応した角度に設定して、裏当金接触面13が裏当金5の外表面に全面接触するとともに、開先面接触面14が開先面31に全面接触するように構成されればよい。例えば、開先面31の開先角度は一般的には35度程度に設定されるので、この場合、裏当金接触面13と開先面接触面14とのなす角度は、180-35度程度=145度程度に設定すればよい。
【0010】
図5に示すように、下側のボックス柱2は、柱部20と、柱部20の上端に設けられたトッププレート4とを備える。
上側のボックス柱3は、柱部30と、柱部30の下端面より下方に突出するように設けられた裏当金5とを備える。
柱部20は、側面20S,20S…を形成する4枚のスキンプレートを溶接にて接合して断面四角中空柱状に形成され、同様に、柱部30は、側面30S,30S…を形成する4枚のスキンプレートを溶接にて接合して断面四角中空柱状に形成される。
トッププレート4は、例えば柱部20の柱径よりも一回り大きい四角形状の平板により形成され、当該トッププレート4の外周側が柱部20の外周面より外方に突出するように設けられている。
裏当金5は、柱部30の各側面30S,30S…を構成する各スキンプレートの下端面より下方に突出する各平板により形成される。尚、当該各平板で、柱部30の内周面に接触する外周面を形成する断面四角中空の裏当金筒状体が構成され、この柱部30の下端より下方に突出する当該裏当金筒状体の外周面が各裏当金5,5…の外表面となる。尚、柱部30の各側面30S,30S…を形成する各スキンプレートの下端面が開先面31に形成されている。
柱部30の下端より下方に突出する各裏当金5,5…の下端面は、柱部30の中心線と直交する同一平面状に位置されるように構成される。
尚、各裏当金5,5…は、柱部30を構成する各スキンプレートの下端側の内面に溶接にて接合されている。
【0011】
図5に示すように、タブ1は、被設置面11を下側のボックス柱2の上端面41を形成する水平面に載置して、裏当金接触面13を裏当金5の外表面に接触させるとともに、開先面接触面14を上側のボックス柱3の柱部30の下端面である開先面31に接触させ、さらに、
図3に示すように、隣り合う裏当金5と裏当金5との境界縁5Cと裏当金接触面13と溶接対象部端面形成面12との境界縁132とを一致させるとともに、隣り合う開先面31と開先面31との境界縁31Cと開先面接触面14と溶接対象部端面形成面12との境界縁142とを一致させた状態となるように、上端面41上の所定の位置に位置決めされて設置される。
このように、タブ1が上端面41上の所定の位置に位置決めされて設置された場合、溶接対象部端面形成面12、裏当金接触面13、外側面16,17,18が、垂直面となり、開先面接触面14が上下方向に傾斜する傾斜面となり、溶接対象部端面形成面12が左右方向に傾斜する傾斜面となるとともに、タブ1の上面となる力受け面15が、上側のボックス柱3の柱部30の外周面よりも外方に突出する水平面を形成する。
【0012】
上述したタブ1を用いて、下側のボックス柱2と上側のボックス柱3とを溶接にて接合するボックス柱の接合方法の一例を説明する。
当該ボックス柱の接合方法は、ボックス柱位置決めステップと、タブ設置ステップと、タブ固定ステップと、溶接ステップと、を備える。
【0013】
ボックス柱位置決めステップでは、下側のボックス柱2の上端面41を形成するトッププレート4の上面が水平面となるように下側のボックス柱2が図外の設置部に設置され、当該下側のボックス柱2の上端面41に、上側のボックス柱3の下端面となる各裏当金5,5…の下端面を載置する。
そして、例えば図外のエレクションピースを用いて、下側のボックス柱2の柱部20の側面20Sと上側のボックス柱3の柱部30の側面30Sとが同一垂直面上に位置されるように位置決めする。
これにより、上側のボックス柱3の柱部30の下端に形成された開先面31と、当該開先面31と連続するように設けられた裏当金5の外表面と、下側のボックス柱2の上端面41とで囲まれた溶接対象部Saが形成される。
【0014】
タブ設置ステップでは、
図3,
図4(a)に示すように、上側のボックス柱3の下端側の左の角部と下側のボックス柱2の上端面41との間に溶接対象部Saの左端面を形成する左のタブ1を設置するとともに、上側のボックス柱3の下端側の右の角部と下側のボックス柱2の上端面41との間に溶接対象部Saの右端面を形成する右のタブ1を設置する。
換言すれば、上側のボックス柱3の側面30Sの左の角部近傍と下側のボックス柱2の側面20Sの左の角部近傍の上の上端面41との間の所定の位置に、溶接対象部Saの左端面を形成するための左のタブ1を設置するとともに、上側のボックス柱3の側面30Sの右の角部近傍と下側のボックス柱2の側面20Sの右の角部近傍の上の上端面41との間の所定の位置に、溶接対象部Saの右端面を形成するための右のタブ1を設置する。
尚、左のタブ1と右のタブ1は、裏当金接触面13,13同士を突き合わせた場合に、左右対称に形成されたものを用いる。
【0015】
即ち、
図3,
図4(a)に示すように、上側のボックス柱3の柱部30の各側面30S,30S…において例えばエレクションピースが設けられていない側面を前側の側面30Sとした場合、当該前側の側面30Sの下端より突出する前側の裏当金5と当該前側の裏当金5と隣り合う左側の裏当金5との境界縁5Cと前側の左のタブ1の前述した境界縁132とを一致させるとともに、当該前側の側面30Sの下端面である前側の開先面31と当該前側の開先面31と隣り合う左側の開先面31との境界縁31Cと前側の左のタブ1の前述した境界縁142とを一致させて、当該前側の左のタブ1の裏当金接触面13と左側の裏当金5の外表面とを接触させるとともに、前側の左のタブ1の開先面接触面14と左側の開先面31とを接触させた状態の所定の位置に、前側の左のタブ1を位置決めする。
同様に、上述した前側の側面30Sの下端より突出する前側の裏当金5と当該前側の裏当金5と隣り合う右側の裏当金5との境界縁5Cと前側の右のタブ1の境界縁132とを一致させるとともに、当該前側の側面30Sの下端面である前側の開先面31と当該前側の開先面31と隣り合う右側の開先面31との境界縁31Cと前側の右のタブ1の境界縁142とを一致させて、当該前側の右のタブ1の裏当金接触面13と右側の裏当金5の外表面とを接触させるとともに、前側の右のタブ1の開先面接触面14と右側の開先面31とを接触させた状態の所定の位置に、前側の右のタブ1を位置決めする。
そして、上側のボックス柱3の柱部30の前側の側面30Sと対向する例えばエレクションピースが設けられていない後側の側面30Sの下端側の左右にも、上記と同様に、後側の左のタブ1と後側の右のタブ1とを所定の位置に位置決めする(
図4(a)参照)。
しかしながら、このままでは、タブ1が所定の位置からずれてしまって適切な溶接を行えない可能性がある。
【0016】
そこで、実施形態1では、タブ1の力受け面15に力を加えて当該タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けることで当該タブ1を所定の位置に固定するタブ固定ステップを備える。
当該タブ固定ステップでは、例えば
図5に示すように、所定の位置に設置されたタブ1の水平な力受け面15に重し7を載せて、タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けることによって、タブ1を所定の位置に固定状態とする。
この際、例えば、
図4(a)の前側の左のタブ1の力受け面15と後側の右のタブ1の力受け面15とに重し7としての例えば山形鋼(Lアングル)を掛け渡すように設置する(
図5の左側の重し7参照)とともに、
図4(a)の前側の右のタブ1の力受け面15と後側の左のタブ1の力受け面15とに重し7としての例えば山形鋼を掛け渡すように設置する(
図5の右側の重し7参照)。
【0017】
その後、溶接ステップにおいて、上側のボックス柱3の側面30Sの下端に形成された開先面31と、当該開先面31と連続するように設けられた裏当金5の外表面と、下側のボックス柱2の側面20Sの上の上端面41と、左のタブ1の溶接対象部端面形成面12と、右のタブ1の溶接対象部端面形成面12とで囲まれて区画された溶接対象部Saに、溶接を行う。即ち、
図4(a)に示すように、左のタブ1の溶接対象部端面形成面12と右のタブ1の溶接対象部端面形成面12との間の溶接対象部Saに溶接Sを行う。
【0018】
そして、例えば、
図4(a)の前側の左のタブ1の溶接対象部端面形成面12と前側の右のタブ1の溶接対象部端面形成面12との間の溶接対象部Saに溶接Sを行った後、
図4(a)の後側の左のタブ1の溶接対象部端面形成面12と後側の右のタブ1の溶接対象部端面形成面12との間の溶接対象部Saに溶接Sを行う。
【0019】
実施形態に係るボックス柱の接合方法によれば、力受け面15に載置された重し7の重量による垂直力によって、タブ1が下側のボックス柱2の上端面41に押し付けられて所定の位置に固定状態に設置されるので、溶接対象部Saへの溶接の際に、タブ1が所定の位置からずれ難くなり、溶接対象部Saの左右端側での溶接ビードの形状が安定した溶接を実現できるようになる。
【0020】
また、
図5に示すように、柱部30の側面30Sと重し7との間に、所定の位置に固定されたタブ1の溶接対象部端面形成面12と同一平面上に位置させる傾斜面6fを備えたスペーサ6を設けることが好ましい。即ち、当該スペーサ6を設けた場合、開先面31と開先面31との境界縁31Cの上端よりも若干上方の位置まで溶接を行った後に、スペーサ6を除去することにより、開先面31と開先面31との境界縁31Cの上端まで確実に溶接を施すことができるようになるとともに、開先面31と開先面31との境界縁31Cの上端部分の溶接部分の後処理の手間を少なくできるようになる。
【0021】
その後、重し7、及び、タブ1を除去するとともに、ボックス柱2,3の左右の側面20S,30Sに設けられている図外のエレクションピースを切断して除去した後、
図4(b)に示すように、上側のボックス柱3の柱部30の左側の側面30Sの下端の開先面31と左側の裏当金5の外表面と下側のボックス柱2の上端面41と前後の既設の溶接部S,Sとで囲まれた左側の溶接対象部SaL、及び、上側のボックス柱3の柱部30の右側の側面30Sの下端の開先面31と右側の裏当金5の外表面と下側のボックス柱2の上端面41と前後の既設の溶接部S,Sとで囲まれた右側の溶接対象部SaRに溶接を行うことによって、下側のボックス柱2と上側のボックス柱3とが溶接により接合される。
【0022】
以上説明したように、実施形態に係るタブ1によれば、被設置面11と対向して当該被設置面11を下側のボックス柱2の上端面41に押し付ける力を受けるための力受け面15を備えたので、溶接時において、下側のボックス柱2の上端面41の所定の位置からずれ難いタブ1を提供できる。従って、当該タブ1を用いたボックス柱の接合方法により、溶接対象部Saの左右端側での溶接ビードの形状が安定した溶接を実現できるようになる。
また、当該タブ1を用いたボックス柱の接合方法によれば、下側のボックス柱2と上側のボックス柱3とを溶接にて接合する際において、溶接対象部Saの左右端側での溶接ビードの形状が安定した溶接を実現できるようになる。
【0023】
下側のボックス柱2は、例えば
図5に示すように、柱部20と、柱部20の上端面より下方に突出するように設けられた裏当金5と、裏当金5の上端面上に設けられたトッププレート4とを備えて構成される。この場合、柱部20の側面20Sを形成するスキンプレートの上端面が開先面21に形成され、当該開先面21と、当該開先面21と連続するように設けられた裏当金5の外表面と、トッププレート4の下面42とで囲まれた溶接対象部に、上述したように溶接Sを行うことによって、下側のボックス柱2が形成される。
【0024】
実施形態2
実施形態1に係るボックス柱の接合方法では、タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けるための山形鋼等の重し7を、タブ1の力受け面15に設置することで、当該タブ1を所定の位置に固定する例を示したが、
図6に示すように、所定の位置に設置されたタブ1の受け面15と下側のボックス柱2のトッププレート4の下面42とを万力等の固定具70を用いて挟み込むようにすることで、タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けて当該タブ1を所定の位置に固定するようにしてもよい。
即ち、タブ固定ステップにおいては、所定の位置に設置されたタブ1の力受け面15に力を加えて当該タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付ける固定具70を用いるようにしてもよい。
【0025】
実施形態3
上述した各実施形態では、下側のボックス柱2として、柱部20の上端に接合された柱部20の柱径よりも一回り大きくて外周側が柱部20の外周面より外方に突出するトッププレート4を備え、上端面41が当該トッププレート4の上面により形成された下側のボックス柱2を例示したが、当該下側のボックス柱2は、
図7に示すように、柱部20の上端面(即ち、柱部20の各側面20S,20S…を形成する各スキンプレート20P,20P…の上端面)の内側にトッププレート4uが設けられた構成であってもかまわない。当該下側のボックス柱2を用いる場合には、上側のボックス柱3の下端に設けられた裏当金5の下端面がトッププレート4uの上面41uに突き付けられて、かつ、タブ1の被設置面11が設置される下側のボックス柱2の上端面41が、柱部20の上端面により形成される水平面で構成されることになる。
即ち、下側のボックス柱2として、柱部20の上端面により形成されてタブ1の被設置面11が設置される水平面となる上端面41を有するとともに、柱部20の上端側の内側面に溶接にて接合されて裏当金5の下端面が載置される水平面となる上面41uを有した内側のトッププレート4uを備えて構成されたボックス柱を用いても構わない。
この場合、例えば
図7に示すように、被設置面11が下側のボックス柱2の上端面41に設置されたタブ1の力受け面15に、前述したスペーサ6、及び、前述した山形鋼等の重し7を設置することにより、タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けてタブ1を所定の位置に固定すればよい。
【0026】
また、実施形態では、重し7として、山形鋼(Lアングル)を用いた例を示したが、重し7は、タブ1の力受け面15に載置されて当該タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けて所定の位置に固定できるものであれば、どのようなものを用いても構わない。
【0027】
また、所定の位置に設置されたタブ1の力受け面15に設置された重し7と下側のボックス柱2のトッププレート4の下面42とを万力等の固定具70を用いて挟み込むようにすることで、タブ1を下側のボックス柱2の上端面41に押し付けてタブ1を所定の位置に固定するようにしてもよい。
【0028】
また、実施形態1に係るタブ1は、裏当金5の外表面に接触させる裏当金接触面13と平行に対向して面積の大きい平面により形成された外側面17を備える。
従って、所定の位置に設置されたタブ1の外側面17を押圧手段を用いて押圧して、裏当金接触面13を裏当金5の外表面に押し付けることによって、タブ1を所定の位置に固定するようにしてもよい。
【0029】
尚、本発明において溶接対象となる柱は、例えば、上述したボックス柱以外の角形鋼管柱であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 タブ(溶接対象部端面形成部材)、2 下側のボックス柱、
3 上側のボックス柱、4 トッププレート、5 裏当金、7 重し、
11 被設置面、12 溶接対象部端面形成面、13 裏当金接触面、
14 開先面接触面、15 力受け面、31 開先面、
41 下側のボックス柱の上端面、70 固定具。