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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004297
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/46 20060101AFI20230110BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20230110BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230110BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230110BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20230110BHJP
【FI】
C23C16/46
C23C16/505
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105896
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】東 大介
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB21
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD12
2G084DD55
2G084DD65
2G084FF01
2G084FF06
2G084FF31
2G084FF39
4K030CA04
4K030CA06
4K030CA07
4K030CA12
4K030CA17
4K030DA01
4K030FA03
4K030GA02
4K030GA12
4K030JA10
4K030KA23
4K030KA26
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA18
5F004AA01
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB26
5F004BC05
5F004BC06
5F004CA04
5F045AA08
5F045BB02
5F045DP03
5F045EB08
5F045EB13
5F045EH11
5F045EK11
5F045EN04
5F045GB05
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理中の被処理基板の温度を一定温度に保つことができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置(1)は、被処理基板の予備加熱処理を行う予備加熱室(4)と、被処理基板が載置されるステージを有するとともに、ステージ上の被処理基板に対して、所定のプラズマ処理を行う処理室(5)と、予備加熱室(4)から、予備加熱処理された被処理基板をステージ上に搬送する搬送機構(2A)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の予備加熱処理を行う予備加熱室と、
前記被処理基板が載置されるステージを有するとともに、前記ステージ上の前記被処理基板に対して、所定のプラズマ処理を行う処理室と、
前記予備加熱室から、前記予備加熱処理された前記被処理基板を前記ステージ上に搬送する搬送機構と、を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
プラズマ処理装置の各部を制御する制御部を更に備え、
前記ステージは、内部に所要の温度に調整された熱媒体が循環する流路を有し、
前記制御部は、前記プラズマ処理中に、前記ステージを予め定められた設定温度となるように制御する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ステージの内部には、互いに独立した複数の前記流路が設けられている、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記予備加熱処理が行われたときの前記被処理基板の温度が、前記プラズマ処理中の、前記ステージに載置された前記被処理基板の温度よりも高い温度となるように、前記予備加熱室を制御する、請求項2または3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記プラズマ処理中の前記被処理基板の温度が、前記ステージの温度よりも高い温度である状態で、前記ステージの温度を制御する、請求項2から4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内に配置したアンテナを用いて当該真空容器内に誘導結合型のプラズマを発生させるプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は、その種別に応じて、発生させたプラズマを用いた所定のプラズマ処理を被処理基板に施す。
【0003】
プラズマ処理を実行しているときの、プラズマによる被処理基板の加熱を低減するために、プラズマを励起するための高周波電力を27.12MHz以上の周波数とする技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-189964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のプラズマ処理装置では、プラズマ処理とともに開始されるプラズマによる被処理基板の加熱に起因して、プラズマ処理中の被処理基板の温度を一定温度に保つことが難しいという問題点を生じることがあった。
【0006】
本開示は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、プラズマ処理中の被処理基板の温度を一定温度に保つことができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、被処理基板の予備加熱処理を行う予備加熱室と、前記被処理基板が載置されるステージを有するとともに、前記ステージ上の前記被処理基板に対して、所定のプラズマ処理を行う処理室と、前記予備加熱室から、前記予備加熱処理された前記被処理基板を前記ステージ上に搬送する搬送機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、プラズマ処理中の被処理基板の温度を一定温度に保つことができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置の構成を説明する図である。
図2】予備加熱室の要部構成を説明する図である。
図3】処理室の要部構成を説明する図である。
図4】プラズマ処理装置の動作例を説明するグラフである。
図5】処理室でのプラズマ処理中の動作例を説明する図である。
図6】本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、図1から図3を用いて詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態1に係るプラズマ処理装置1の構成を説明する図である。図2は、予備加熱室4の要部構成を説明する図である。図3は、処理室5の要部構成を説明する図である。
【0011】
なお、以下の説明では、所定のプラズマ処理として、誘導結合型のプラズマを使用したプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって被処理基板上に成膜を行うプラズマ装置を例示して説明する。しかしながら、本開示のプラズマ処理装置は、所定のプラズマ処理として、例えば、被処理基板に所定物を形成するスパッタリング処理、または被処理基板から所定物を除去するエッチング処理あるいはアッシング処理を実施するプラズマ処理装置にも適用することができる。
【0012】
<プラズマ処理装置1>
図1に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置1は、搬送室2と、ロードロック室3と、予備加熱室4と、処理室5と、当該プラズマ処理装置1の各部を制御する制御部10とを備える。搬送室2、ロードロック室3、予備加熱室4、及び処理室5は、各々所定の真空度に保たれる真空容器を備えている。
【0013】
搬送室2は、搬送機構2Aを備えている。搬送機構2Aは、制御部10からの指示に従って、搬送室2、ロードロック室3、予備加熱室4、及び処理室5の各間で当該被処理基板Sを搬送する。被処理基板Sは、例えば、液晶パネルディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)パネルディスプレイなどに用いられるガラス基板、合成樹脂基板であり得る。また被処理基板Sは、各種用途に用いられる半導体基板であり得る。プラズマ処理装置1は、上記所定のプラズマ処理によってバリア(防湿)膜などの所定の被膜を被処理基板S上に成膜する。
【0014】
ロードロック室3には、被処理基板Sがプラズマ処理装置1と当該プラズマ処理装置1の外部との間で搬入出される。ロードロック室3に搬入された被処理基板Sは、ロードロック室3が真空引きされた後に、搬送機構2Aによって予備加熱室4及び処理室5の順番に順次搬送される。そして、所定の被膜が成膜された被処理基板Sは、搬送機構2Aによって処理室5からロードロック室3に搬送されて、プラズマ処理装置1から外部に搬出される。
【0015】
予備加熱室4は、被処理基板Sの予備加熱処理を行う。具体的には、図2に示すように、予備加熱室4は、真空容器4Aと、予備加熱用ステージ4Bとを備えている。予備加熱室4では、例えば、予備加熱用ステージ4Bの内部に設けられたヒータ(図示せず)によって当該予備加熱用ステージ4B上に載置された被処理基板Sに対し予備加熱処理を行う。
【0016】
予備加熱処理は、後続の処理室5でのプラズマ処理に応じて、被処理基板Sに対する予備加熱温度が予め定められており、この予備加熱温度を基に上記ヒータの制御動作も予め決定されている。そして、制御部10は、予め決定された制御動作を使用して、ヒータを制御することにより、被処理基板Sの温度を直接的に検出する温度センサを設けることなく、予備加熱用ステージ4B上の被処理基板Sの温度を予め定められた予備加熱温度とする。
【0017】
尚、この説明以外に、例えば、予備加熱室4の内部に、被処理基板Sの温度を直接的に検出する熱電対、測温抵抗体などの温度センサを設置して、制御部10が当該温度センサの検出結果を用いたフィードバック制御を行うことにより、予備加熱処理を実施する構成でもよい。
【0018】
また、上記の説明では、ヒータを備えたヒータステージを予備加熱用ステージ4Bに用いた場合について説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、RFコイル、ハロゲンランプ、赤外線ヒータ等の電磁エネルギー源からの電磁エネルギーの伝達による被処理基板Sの直接の加熱、ステージを介しての被処理基板Sの加熱、またはプラズマ放電を用いて予備加熱処理を行う構成でもよい。
【0019】
処理室5は、制御部10からの指示に従って、被処理基板Sに対して、所定のプラズマ処理を行う。具体的には、図3に示すように、処理室5は、真空容器5Aと、被処理基板Sが載置されるステージ5Bと、ステージ5Bを真空容器5Aの内部で支持する支持部5Cとを備える。真空容器5Aの内部には、誘導結合型のプラズマを当該真空容器5Aの内部に生成するアンテナ8がステージ5Bの上方に設けられている。
【0020】
アンテナ8の両端部は、真空容器5Aの外部に気密に引き出されている。また、アンテナ8の一方の端部及び他方の端部には、インピーダンス調整部7A及びインピーダンス調整部7Bがそれぞれ設けられている。インピーダンス調整部7Aは、不図示の整合回路を備えており、整合回路を介してアンテナ8の一方の端部が電源6に接続されている。また、インピーダンス調整部7Bは、不図示の可変コンデンサを備えており、アンテナ8の他方の端部は可変コンデンサを介して接地されている。
【0021】
電源6は、例えば、13.56MHzの高周波電力を、インピーダンス調整部7Aを介してアンテナ8の一方の端部に供給する。処理室5では、制御部10が上記可変コンデンサの容量を変更することにより、アンテナ8に高周波電力が効率的に供給されるように制御する。
【0022】
また、処理室5には、上記所定のプラズマ処理に対応した、上記被膜の成膜用ガスを含んだ処理ガスを真空容器5Aの内部に導入する処理ガス供給部を備えており(図示せず)、処理ガスの雰囲気化で当該プラズマ処理が行われるようになっている。
【0023】
また、ステージ5Bは、その内部に所要の温度に調整された熱媒体(例えば、水)が流れる流路12を有する。この流路12は、支持部5Cの内部に設けられて真空容器5Aの外部に引き出された配管13に接続されている。また、処理室5には、温度調整部11が真空容器5Aの外部で配管13に接続されており、温度調整部11は、制御部10からの指示に従って、図3に矢印A及び矢印Bで示すように、流路12及び配管13を循環して流れる熱媒体の温度を調整する。
【0024】
また、処理室5は、ステージ5Bの温度を検出する温度センサを備えており(図示せず)、当該温度センサの検出結果は、制御部10に出力される。制御部10は、入力した温度センサの検出結果を用いたフィードバック制御を行うことにより、上記プラズマ処理中に、ステージ5Bを予め定められた設定温度となるように制御する。
【0025】
制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う機能ブロックである。
【0026】
制御部10は、予備加熱室4に指示を出力して、当該予備加熱室4での上記予備加熱処理を制御するとともに、処理室5に指示を出力して、当該処理室5での上記プラズマ処理を制御する。予備加熱処理及びプラズマ処理の詳細については、後述する。
【0027】
<動作例>
図4及び図5を参照して、本実施形態のプラズマ処理装置1の動作について具体的に説明する。図4は、プラズマ処理装置1の動作例を説明するグラフである。図5は、処理室5でのプラズマ処理中の動作例を説明する図である。
【0028】
図4に示すように、本実施形態のプラズマ処理装置1では、制御部10が搬送機構2Aを制御して、ロードロック室3から予備加熱室4の予備加熱用ステージ4B上に被処理基板Sを搬送させる。その後、制御部10は、予備加熱室4において、上記ヒータを用いて、時点0から時点T1までの期間K1の間に、予備加熱用ステージ4B上の被処理基板Sに予備加熱処理を行わせる。
【0029】
また、制御部10は、予備加熱処理が行われたときの被処理基板Sの温度が、プラズマ処理中の、ステージ5Bに載置された被処理基板Sの温度よりも高い温度となるように、予備加熱室4を制御する。具体的には、制御部10は、被処理基板Sの温度が図5の曲線60にて示すように、例えば、70℃未満の温度からプラズマ処理中の処理温度、例えば、150℃を超える上記予備加熱温度まで上昇させる。
【0030】
続いて、制御部10は、時点T1で予備加熱処理の終了を検知すると、搬送機構2Aを制御して、時点T1から時点T2までの期間K2の間に、予備加熱室4から、予備加熱処理された被処理基板Sを処理室5のステージ5B上に搬送させる。
【0031】
その後、制御部10は、時点T2でステージ5B上に被処理基板Sが搬送されたことを検知すると、時点T2から時点T3までの期間K3の間に、ステージ5B上の被処理基板Sにプラズマ処理を行わせる。つまり、この期間K3では、制御部10は、電源6からアンテナ8に高周波電流を供給させて、アンテナ8から被処理基板Sへのプラズマ点灯PLを行わせる。
【0032】
また、制御部10は、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度が、ステージ5Bの温度よりも高い温度である状態で、ステージ5Bの温度を制御する。具体的には、制御部10は、図4の一点鎖線50にて示すように、温度調整部11を制御して、ステージ5Bの温度を上記処理温度よりも低い設定温度、例えば、70℃で維持させる。また、この設定温度は、後に詳述するように、プラズマ処理中の被処理基板Sでの冷却と加熱と適切なバランスを保てるように決定されている。
【0033】
また、このプラズマ点灯PLの期間K3では、図5に示すように、プラズマPがステージ5B上の被処理基板Sに照射される。この結果、図5に矢印H1にて示すように、被処理基板Sは、プラズマPによって加熱される。更に、このプラズマ点灯の期間K3では、図5に矢印H2にて示すように、被処理基板Sからステージ5B側に熱が放熱される。そして、制御部10が、温度調整部11を制御することにより、ステージ5Bの温度は上記設定温度で容易に一定とされる。
【0034】
以上のように、プラズマ処理中でのステージ5Bの設定温度が、被処理基板Sの処理温度よりも低くすることにより、当該被処理基板Sでの熱の流入及び流出を適切に行わせることができ、図4に曲線60にて示すように、被処理基板Sの温度をプロセス温度で安定させることができる。この結果、被処理基板Sでの被膜の成膜処理を精度良く行うことが可能となる。
【0035】
具体的にいえば、処理室5では、被処理基板Sがステージ5Bに載置されることで被処理基板Sの冷却が開始され、プラズマ処理の開始で当該被処理基板Sの加熱が開始される。そして、本実施形態のプラズマ処理装置1では、ステージ5Bの設定温度がプラズマ処理中の被処理基板Sでの冷却と加熱と適切なバランスを保てるように決定されているので、図5に矢印H1及び矢印H2にて示したように、プラズマ処理の開始に伴う被処理基板Sの温度上昇が相殺される。これにより、上記のように、被処理基板Sの温度をプロセス温度で安定させることができ、当該被処理基板Sでの被膜の成膜処理を精度良く行うことができる。
【0036】
また、処理室5では、被処理基板Sがステージ5Bに載置されることで被処理基板Sの冷却が開始されるので、ステージ5Bに被処理基板Sを載置した時点から、上記プラズマ点灯PLの期間K3の開始を直ちに行うことが被膜の高精度な成膜処理を容易に行える点で好ましい。
【0037】
以上のように構成された本実施形態のプラズマ処理装置1は、被処理基板Sの予備加熱処理を行う予備加熱室4と、被処理基板Sが載置されるステージ5Bを有するとともに、ステージ5B上の被処理基板Sに対して、所定のプラズマ処理を行う処理室5とを備える。また、プラズマ処理装置1は、予備加熱室4から、予備加熱処理された被処理基板Sをステージ5B上に搬送する搬送機構2Aを有する。これにより、本実施形態では、上記従来例と異なり、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度を一定温度に保つことができるプラズマ処理装置1を構成することができる。尚、ここでいう、一定温度とは、実質的に一定な温度であればよく、常に特定の一つの温度であることに限定されない。
【0038】
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、予備加熱室4を設けて予備加熱処理を実施しているので、予備加熱室4を設けていない上記従来例に比べて、処理室5でのプラズマ処理を円滑に行うことができ、生産性を容易に向上させることができる。また、上記従来例に比べて、プラズマ処理を実行する際に、被処理基板Sの温度を、例えば、常温からプロセス温度まで急激に上昇させる必要がないので、被処理基板Sでの熱ダメージを抑制することも可能となり、被処理基板Sに被膜を精度よく成膜することができる。
【0039】
特に、プロセス温度が、比較的低温(例えば、150℃以下)である場合には、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度制御は比較的高温である場合に比べて難しいが、予備加熱処理を行うことにより、比較的低温のプロセス温度であっても、図4の曲線60に示したように、被処理基板Sの温度を安定して成膜を行うことができる。この結果、本実施形態のプラズマ処理装置1では、例えば、有機EL発光層等の有機層が形成された被処理基板に対しても、当該有機層にダメージを与えるのを極力抑制しつつ、当該有機層を覆う封止膜を適切に成膜することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、制御部10は、予備加熱処理が行われたときの被処理基板Sの温度が、プラズマ処理中の、ステージ5Bに載置された被処理基板Sの温度よりも高い温度となるように、予備加熱室4を制御する。これにより、本実施形態のプラズマ処理装置1では、搬送機構2Aによって被処理基板Sが搬送されたときでの当該被処理基板Sでの温度の低下の影響を抑制することができ、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度をより確実に一定温度に保つことができる。
【0041】
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、制御部10は、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度が、ステージ5Bの温度よりも高い温度である状態で、ステージ5Bの温度を制御する。これにより、本実施形態のプラズマ処理装置1では、プラズマ処理中において被処理基板S側からステージ5B側への放熱を適切に行わせることが可能となり、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度をより確実に一定温度に保つことができる。
【0042】
予備加熱処理にプラズマ放電を用いた場合には、プラズマの密度分布や、プラズマによる加熱とステージ側面等からの放熱によって生じるステージ面内の非定常な温度分布などに起因して、予備加熱処理対象の被処理基板Sを均一に加熱できないという問題を生じることがある。これに対して、本実施形態では、ヒータを備えた予備加熱室4で予備加熱処理を行っているので、均一な予備加熱処理が可能となる。また、被処理基板Sのサイズ増大に伴い、予備加熱用ステージ4Bを大きくしたときでも、ヒータの加熱範囲を容易に大きくすることができ、被処理基板Sの温度の均一性をより簡単、かつ、確実に確保することができる。
【0043】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、図6を用いて具体的に説明する。図6は、本開示の実施形態2に係るプラズマ処理装置の要部構成を説明する図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、ステージ5Bの内部において、互いに独立した複数の流路を設けた点である。
【0045】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図6に示すように、ステージ5Bの内部に、複数、例えば、第1の流路12Pと、第1の流路12Pとは別個に設けられた第2の流路12Sとが設けられている。第1の流路12Pでは、熱媒体が図6の矢印A1及び矢印B1にて示すように、当該第1の流路12P内を循環する。また、第2の流路12Sでは、熱媒体が図6の矢印A2及び矢印B2にて示すように、当該第2の流路12S内を循環する。
【0046】
また、第1の流路12P及び第2の流路12Sは、各々、温度調整部11に互いに独立して接続されており、制御部10からの指示に応じて、循環する熱媒体の温度が所望の温度に制御される。
【0047】
以上の構成により、本実施形態のプラズマ処理装置1は、第1の実施形態のものと同様な効果を奏する。また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、ステージ5Bの内部に、第1の流路12Pと、第2の流路12Sとが設けられているので、被処理基板Sの大きさに合わせてステージ5Bを大型化したときでも、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度を一定温度に保つことができる。
【0048】
また、本実施形態のプラズマ処理装置1では、第1の流路12P及び第2の流路12Sをステージ5Bの内部に設けているので、プラズマ点灯時でのプラズマの密度分布の影響を緩和することができる。すなわち、プラズマの密度が、アンテナ8の直下のステージ5Bの中央部に比べて比較的小さいステージ5Bの周囲部においても、中央部を流れる第2の流路12Sの熱媒体の温度よりも当該周囲部を流れる第1の流路12Pの熱媒体の温度を高くすることにより、プラズマ処理中の被処理基板Sの温度を均一な温度とすることができる。
【0049】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために、本開示の一側面に係るプラズマ処理装置は、被処理基板の予備加熱処理を行う予備加熱室と、前記被処理基板が載置されるステージを有するとともに、前記ステージ上の前記被処理基板に対して、所定のプラズマ処理を行う処理室と、前記予備加熱室から、前記予備加熱処理された前記被処理基板を前記ステージ上に搬送する搬送機構と、を備える。
【0050】
上記構成によれば、プラズマ処理中の被処理基板の温度を一定温度に保つことができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【0051】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、プラズマ処理装置の各部を制御する制御部を更に備え、前記ステージは、内部に所要の温度に調整された熱媒体が循環する流路を有し、前記制御部は、前記プラズマ処理中に、前記ステージを予め定められた設定温度となるように制御してもよい。
【0052】
上記構成によれば、制御部は熱媒体を用いてプラズマ処理中に被処理基板を載置したステージの温度を制御するので、プラズマ処理中の被処理基板の温度を確実に一定温度に保つことができる。
【0053】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記ステージの内部には、互いに独立した複数の前記流路が設けられてもよい。
【0054】
上記構成によれば、被処理基板の大きさに合わせてステージを大型化したときでも、プラズマ処理中の当該被処理基板の温度を確実に一定温度に保つことができる。
【0055】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記制御部は、前記予備加熱処理が行われたときの前記被処理基板の温度が、前記プラズマ処理中の、前記ステージに載置された前記被処理基板の温度よりも高い温度となるように、前記予備加熱室を制御してもよい。
【0056】
上記構成によれば、搬送機構によって被処理基板が搬送されたときでの当該被処理基板での温度の低下の影響を抑制することができ、プラズマ処理中の被処理基板の温度をより確実に一定温度に保つことができる。
【0057】
上記一側面に係るプラズマ処理装置において、前記制御部は、前記プラズマ処理中の前記被処理基板の温度が、前記ステージの温度よりも高い温度である状態で、前記ステージの温度を制御してもよい。
【0058】
上記構成によれば、プラズマ処理中において被処理基板側からステージ側への放熱を適切に行わせることが可能となり、プラズマ処理中の被処理基板の温度をより確実に一定温度に保つことができる。
【0059】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 プラズマ処理装置
2A 搬送機構
4 予備加熱室
5 処理室
5B ステージ
10 制御部
12、12P、12S 流路
S 被処理基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6