(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004301
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電池セル
(51)【国際特許分類】
H01M 50/567 20210101AFI20230110BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20230110BHJP
H01M 50/517 20210101ALI20230110BHJP
【FI】
H01M50/567
H01M50/566
H01M50/15
H01M50/505
H01M50/55 101
H01M50/121
H01M50/557
H01M50/517
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105903
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】和田 怜
(72)【発明者】
【氏名】吉川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲治
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011DD15
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043DA05
5H043DA09
5H043FA04
5H043FA22
5H043HA02D
5H043HA06D
5H043HA06F
5H043HA08D
5H043HA09D
5H043HA11D
5H043JA02D
5H043JA06D
5H043JA13D
5H043JA26D
5H043JA26F
5H043KA06D
5H043KA09D
5H043LA21D
5H043LA21F
5H043LA22D
5H043LA22F
(57)【要約】
【課題】レーザ溶接機を要せずにモジュールの組み立てが可能であり、ひいては、リユース用モジュールとして再使用する。
【解決手段】実施形態の電池セルは、電極端子部が形成された筐体と、筐体に嵌め合わされた樹脂製のキャップ部材と、キャップ部材に一部が支持されるとともに、電極端子部に溶接により接合された第1電極用バスバーと、ベースがキャップ部材に形成された凹部に回転が規制された状態で嵌め込まれ、ねじ部が第1電極用バスバーに形成された開口部を介して突設されたねじ部材と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子部が形成された筐体と、
前記筐体に嵌め合わされた樹脂製のキャップ部材と、
前記キャップ部材に一部が支持されるとともに、前記電極端子部に溶接により接合された第1電極用バスバーと、
ベースが前記キャップ部材に形成された凹部に回転が規制された状態で嵌め込まれ、ねじ部が前記第1電極用バスバーに形成された開口部を介して突設されたねじ部材と、
を備えた電池セル。
【請求項2】
前記キャップ部材は、前記筐体に嵌め合わされた状態で、前記筐体の周面に当接する嵌合凹部を有する、
請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記キャップ部材は、複数の浮き上がり防止用突起を有し、
前記第1電極用バスバーは、前記浮き上がり防止用突起がそれぞれ挿通される複数の開口を有し、
前記浮き上がり防止用突起は、前記開口に挿通された状態で先端を塑性変形させ、かしめられている、
請求項1に記載の電池セル。
【請求項4】
前記キャップ部材は、複数の回転防止用突起を有し、
前記第1電極用バスバーは、前記回転防止用突起がそれぞれ挿通される複数の開口を有し、
前記回転防止用突起は、前記開口に挿通された状態とされている、
請求項2に記載の電池セル。
【請求項5】
前記ねじ部材は、セル間バスバーが締結されて、他の電池セルと電気的に接続される、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記ねじ部が挿通される開口を有し、前記キャップ部材に一部が支持されるとともに、締結部材により前記ねじ部に締結された第2電極用バスバーと、
ベースが前記キャップ部材に形成された凹部に回転が規制された状態で嵌め込まれ、ねじ部が前記第2電極用バスバーに形成された開口部を介して突設された第2のねじ部材と、
を備えた請求項1に記載の電池セル。
【請求項7】
前記第2電極用バスバーは、前記締結部材側から前記電極端子部側に延在している、
請求項6に記載の電池セル。
【請求項8】
前記第2のねじ部材は、セル間バスバーが締結されて、他の電池セルと電気的に接続される、
請求項6又は請求項7に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池として、負極にチタン酸リチウム(LTO)を採用した二次電池が知られている。
この二次電池においては、負極がチタン酸リチウム(LTO)であるため、セル端子の材料はアルミ材となっている。アルミ材は柔らかいため、ボルトなどのようなねじ構造とすると締結時のトルクに耐えられない。
【0003】
このため、セル間のバスバーもアルミ材を採用し、端子とアルミバスバーをレーザ溶接にて接合していた。
【0004】
一方、従来技術では、セル端子部をねじ構造としているものが多く、セル間バスバーをねじ部にはめ込んでナットにて締結する方法が一般的である。その場合、最初からねじ締結を前提としてセル上部のキャップ体の構造を製造しており、ねじ締結時にバスバーや端子かしめ部に過大な力が作用しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-283256号公報
【特許文献2】特開2009-283335号公報
【特許文献3】特開2009-301874号公報
【特許文献4】特開2014-026948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらに対し、負極にチタン酸リチウム(LTO)を採用した二次電池のセル端子はアルミの凸部が設けられているのみで、溶接にてバスバーを締結する構造を採用している。
したがって、セル間を接続するバスバーもアルミ端子と溶接できるアルミ材を採用する以外の選択肢がなかった。アルミは強度、電気抵抗の面で銅に劣っており、デメリットである。
【0007】
また、セル間バスバーはセルを並べたモジュールを製作後にレーザ溶接により接合することになるが、大がかりなレーザ溶接設備が必要になること、多数のセルでモジュールを構成する場合、溶接作業に時間がかかるなどのモジュール製作上のデメリットがある。
【0008】
更に、一定期間使用した後のセルを再利用する場合、同じ劣化度合いのセルを選定して再度モジュールを作ることが望ましいが、セル端子とセル間バスバーを直接溶接する現行の方式ではセル単位での分解は難しく、再利用が難しく、資源の有効利用の観点からも望ましくなかった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、レーザ溶接機を要せずにモジュールの組み立てが可能であり、ひいては、リユース用モジュールとして再使用することも可能な電池セルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の電池セルは、電極端子部が形成された筐体と、筐体に嵌め合わされた樹脂製のキャップ部材と、キャップ部材に一部が支持されるとともに、電極端子部に溶接により接合された第1電極用バスバーと、ベースがキャップ部材に形成された凹部に回転が規制された状態で嵌め込まれ、ねじ部が第1電極用バスバーに形成された開口部を介して突設されたねじ部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電池セルの外観三面図である。
【
図4】
図4は、浮き上がり防止用突起の使用状態の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電池モジュールの正面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電池セルの外観三面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のキャップ部材の説明図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の電池モジュールの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の電池セルの外観三面図である。
ここで、
図1(A)は平面図、
図1(B)は正面図、
図1(C)は側面図である。
第1実施形態の電池セル10は、
図1(B)に示すように、筐体11と、筐体11の上端部(
図1中、上方向)に嵌め込まれたキャップ部材12と、を備えている。
【0013】
筐体11は、縦長の箱形形状を有しており、筐体11の上面には、平板状の電極端子15A、15Bが設けられている。この電極端子15A、15Bの上面側には、電極用バスバー16A、16Bを介してねじ部材14A、14Bが突設されている。
【0014】
この場合において、電極端子15A、15Bは、電極端子部を構成し、電極用バスバー16A、16Bは、第1電極用バスバーとして機能している。
また、ねじ部材14A、14Bとしては、コスト的及び強度的な観点から鉄製あるいはステンレス製の六角ボルトを用いている。
この結果、標準的なねじの締結トルクに耐えることができ、分解、再組立てが可能となる。
【0015】
キャップ部材12の中央部には、筐体11の上面に設けられたラプチャー17に対応する位置に後述するラプチャー用開口25が設けられている。このラプチャー用開口25は、ラプチャー17の動作を阻害しないように設けられている。ここでラプチャー17の動作とは、筐体11内部で発生したガスによる筐体11の内圧が所定の値を超えた場合に、開放状態となって内部のガスを放出する動作である。
【0016】
また、ラプチャー用開口25の近傍のキャップ部材12の表面には、電池セル10の種類に対応する情報が記載された二次元コードが印字されたコードシール18が貼られている。
このコードシール18は、複数の電池セル10で組電池(電池セルユニット)を構成する場合に、正しい電池セルを識別したり、電池セルの再利用時に電池種類を正確に把握したりするために用いられる。
【0017】
図2は、キャップ部材の平面図である。
図2(A)は、キャップ部材12の平面図である。
図2(B)は、
図2(A)のB-B断面矢視図である。
キャップ部材12は、枠部材21と、ベース部22と、電極端子用開口23と、ねじ部材ベース用凹部24と、ラプチャー用開口25と、浮き上がり防止用突起26と、回転防止用突起27と、を備えている。
【0018】
枠部材21は、ベース部22の周囲を囲むように形成されており、キャップ部材12の下面側において、ベース部22と協働して、電池セル10の筐体11の上端部に嵌め込まれて、キャップ部材12の回動を規制するための嵌合凹部29を構成している。
【0019】
ベース部22は、ねじ部材ベース用凹部24が形成されている。さらにベース部22の上面から複数(
図2の例では、4本×2箇所=8本)の浮き上がり防止用突起26及び複数(
図2の例では、2本×2箇所=4本)の回転防止用突起27が突設されている。
さらにベース部22は、電極用バスバー16A、16Bを保持及び支持するための電極用バスバー用凹部28を備えている。
【0020】
電極端子用開口23は、平面視、長方形状を有しており、キャップ部材12の嵌合時に丁度電池セル10の上面の電極端子15A、15Bが露出する位置に形成されている。
【0021】
図3は、
図1のA-A断面矢視図である。
ねじ部材ベース用凹部24は、平面視、ねじ部材14A、14Bのベース14A1、14B1(
図3参照)の外形形状(例えば、平面視多角形形状。
図2では、六角形)と同じ形状になるようにされている。
【0022】
そして、ねじ部材14A、14Bに対応するナットの締め付け時に、ねじ部材14A、14Bのベース14A1、14B1の周面にねじ部材ベース用凹部24の内周面が当接することにより、回転トルクを吸収し、ねじ部材14A、14Bの回動を規制して所定位置に保持するようになっている。
【0023】
ラプチャー用開口25は、平面視、長方形状であり、ラプチャー17の動作を阻害しないように設けられている。ここでラプチャー17の動作とは、筐体11内部で発生したガスによる筐体11の内圧が所定の値を超えた場合に、開放状態となって内部のガスを放出する動作である。
【0024】
図4は、浮き上がり防止用突起の使用状態の説明図である。
浮き上がり防止用突起26は、ねじ部材ベース用凹部24の周囲に複数設けられており、電極用バスバー16A、16Bに設けられた同数の開口にそれぞれ挿入された状態で、先端部を加熱状態で押しつぶされてかしめられており、電極用バスバー16A、16Bの浮き上がりを防止することとなる。
【0025】
回転防止用突起27は、ねじ部材14A、14Bのねじ部14A2、14B2の軸に対して所定距離離間した位置に複数配置され、電極用バスバー16A、16Bに設けられた同数の開口にそれぞれ挿入された状態で、電極用バスバー16A、16Bの回転を規制する。
【0026】
上記構成において、電極用バスバー16A、16Bは、
図3にその断面を示すように、平板金属板を断面略S字状に折り曲げられた形状、すなわち、両端の平板部分を屈曲部でつないだ形状を有している。
【0027】
このため、電極用バスバー用凹部28は、電極用バスバー16Aあるいは電極用バスバー16Bの一端側の平板部分を下面側から支持する第1支持面部28Aと、第1支持面部と段違いで形成され、電極用バスバー16Aあるいは電極用バスバー16Bの他端側の平板部分を下面側から支持する第2支持面部28Bと、を備えている。
【0028】
さらに電極用バスバー16Aの電極端子15A側には、電極端子15Aの中央部に設けられた円柱状の突起15A1の外周形状に沿った円形状の開口を円形状の有するとともに、溶接用に電極用バスバー16Aの厚みを薄くした溶接用凹部16A1を有している。
また電極用バスバー16Aのラプチャー17側には、ねじ部材14Aのねじ部が挿入されるねじ部材用開口16A2が設けられている。
【0029】
同様に電極用バスバー16Bの電極端子15B側には、電極端子15Bの中央部に設けられた円柱状の突起15B1の外周形状に沿った円形状の開口を有するとともに、溶接用に電極用バスバー16Bの厚みを薄くした溶接用凹部16B1を有している。
また、電極用バスバー16Bのラプチャー17側には、ねじ部材14Bのねじ部14B2が挿入されるねじ部材用開口16B2が設けられている。
【0030】
上記構成において、溶接用凹部16A1、16B1は、溶接の条件あるいは溶接の仕様が許すのであれば、設ける必要は無く、均一な厚さを有する金属板で形成することも可能である。
【0031】
同様に、電極端子15A、15Bの円柱状の突起15A1、15B1が設けられていない場合には、突起15A1、15B1に対応して設けられている電極用バスバー16A、16Bの開口についても設ける必要はない。
【0032】
ここで、電池セル10の組立方法について説明する。
まず、筐体11の上端部にキャップ部材12を嵌め合わせる。
続いて、ねじ部材14A、14Bを用意し、キャップ部材12の一対のねじ部材ベース用凹部24にそれぞれ嵌め込む。
【0033】
そして、電極用バスバー16A、16Bを用意し、電極用バスバー16Aのねじ部材用開口16A2にねじ部材14Aのねじ部14A2を挿入し、電極用バスバー16Bのねじ部材用開口16B2にねじ部材14Bのねじ部14B2を挿入する。
ねじ部14A2、14B2の挿入と同時に、電極用バスバー16A、16Bのそれぞれの開口に浮き上がり防止用突起26及び回転防止用突起27を挿入する。
【0034】
そして、電極用バスバー16Aの溶接用凹部16A1の円形状の開口を電極端子15Aの中央部に設けられた円柱状の突起15A1に嵌め込み、電極用バスバー16Bの溶接用凹部16B1の円形状の開口を電極端子15Bの中央部に設けられた円柱状の突起15B1に嵌め込む。
【0035】
この状態において、溶接を行い、電極用バスバー16Aを電極端子15Aに機械的、かつ、電気的に接続する。同様に溶接を行って、電極用バスバー16Bを電極端子15Bに機械的、かつ、電気的に接続する。
【0036】
さらに浮き上がり防止用突起26の先端を加熱し、押しつぶして塑性変形させることによりかしめて、電極用バスバー16A、16Bがねじ部材14A、14Bの動きに伴う浮き上がりを防止し、組立を終了する。
この結果、レーザ溶接機を要せずに電池モジュールの組み立てが可能であり、ひいては、リユース用モジュールとして再使用することも可能な電池セル10を得ることができる。
【0037】
次に電池モジュールの組み立てについて説明する。
図5は、第1実施形態の電池モジュールの正面図である。
以下の説明において、ねじ部材14Aとねじ部材14Bとは、異なる極性であり、ねじ部材14A同士あるいはねじ部材14B同士は、同一の極性(いずれか一方が正極、他方が負極)であるものとする。
【0038】
電池モジュール100は、複数の電池セル10(10-1~10-4)を備えている。
電池セル10-1のねじ部材14Bと電池セル10-2のねじ部材14Aには、セル間バスバー101-1が挿入されている。
【0039】
さらに電池セル10-1のねじ部材14Bには、ナット102-1がねじ込まれてセル間バスバー101-1が固定されている。同様に電池セル10-2のねじ部材14Aには、ナット102-2がねじ込まれてセル間バスバー101-1が固定されている。
【0040】
同様に電池セル10-2の図示しないねじ部材14Bには、ナットがねじ込まれてセル間バスバー101-2が固定されている。同様に電池セル10-3のねじ部材14Aには、ナットがねじ込まれてセル間バスバー101-2が固定されている。
【0041】
さらに電池セル10-3のねじ部材14Bと電池セル10-4のねじ部材14Aには、セル間バスバー101-3が挿入され、電池セル10-3のねじ部材14Bには、ナット102-3がねじ込まれてセル間バスバー101-3が固定されている。同様に電池セル10-4のねじ部材14Aには、ナット102-4がねじ込まれてセル間バスバー101-3が固定されている。
【0042】
これらの結果、電池セル10-1~電池セル10-4は、直列接続状態となっている。
以下同様にして、さらに多くの電池セル10を容易に接続して電池モジュール100を構成できる。
以上の説明は、直列接続の場合であったが、適宜並列接続することで、所望の電圧及び所望の電流容量を有する電池モジュール100を構成することが可能である。
【0043】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、電池セルの電極端子に予め溶接した電極用バスバー(第1電極用バスバー)に対し、樹脂部材により回転を規制された状態で嵌め込まれたねじ部材を電気的、機械的に接続している。したがって、モジュールの組み立て時には、ナット等の締結部材により締結するだけで、モジュールを組み立てることができ、レーザ溶接機を要せずに電池モジュールの組み立てが可能となる。
さらに電池モジュールの分解時にも、締結部材の締結を解除するだけで電池セルとすることができるので、容易に分解でき、ひいては、リユース用モジュールとして再使用することも可能な二次電池の端子構造及び二次電池を提供できる。
【0044】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、電池モジュールを構成する場合に、電池セルを正面幅方向に配列する場合でも、セル間バスバーの長さを短くすることが可能な実施形態である。
【0045】
図6は、第2実施形態の電池セルの外観三面図である。
ここで、
図6(A)は平面図、
図6(B)は正面図、
図6(C)は側面図である。
図6において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0046】
第2実施形態の電池セル50は、
図6(B)に示すように、筐体11と、筐体11の上端部(
図1中、上方向)に嵌め込まれたキャップ部材51と、を備えている。
【0047】
筐体11は、縦長の箱形形状を有しており、筐体11の上面には、第2電極用バスバー52A、52B及び後述する第1電極用バスバーを介して、第1ねじ部材53A、53Bが突設されている。
【0048】
これらの第1ねじ部材53A、53Bは、ナット54A、54Bによりそれぞれ第1電極用バスバー及び第2電極用バスバー52A、52Bに締結されている。
さらに、第2電極用バスバー52A、52Bを介して第2ねじ部材55A、55Bが突設されている。
【0049】
この場合においても、第1実施形態と同様に、第1ねじ部材53A、53B及び第2ねじ部材55A、55Bとしては、コスト的及び強度的な観点から鉄製あるいはステンレス製の六角ボルトを用いている。
この結果、標準的なねじの締結トルクに耐えることができ、分解、再組立てが可能となる。
【0050】
キャップ部材51の中央部には、筐体11の上面に設けられたラプチャー17に対応する位置にラプチャー用開口25が設けられている。
【0051】
また、キャップ部材51の端部表面には、電池セル50の種類に対応する情報が記載された二次元コードが印字されたコードシール18が貼られている。
【0052】
図7は、第2実施形態のキャップ部材の説明図である。
図7(A)は、キャップ部材51の平面図である。
図7(B)は、
図7(A)のB-B断面矢視図である。
【0053】
キャップ部材51は、枠部材61と、電極端子溶接用開口62A、62Bと、第1ねじ部材ベース用凹部63A、63Bと、第2ねじ部材ベース用凹部64A、64Bと、ラプチャー用開口25と、第1浮き上がり防止用突起65と、第2浮き上がり防止用突起66と、バスバー用凹部67A、67Bと、バスバー用開口68A、68Bと、第1支持面69と、第2支持面70と、を備えている。
【0054】
枠部材61は、キャップ部材51の周縁部を形成しており、キャップ部材51の下面側には、電池セル10の筐体11の上端部に嵌め込まれて、キャップ部材51の回動を規制するための嵌合凹部29が設けられている。
【0055】
図8は、
図7のB-B断面矢視図である。
電極端子溶接用開口62A、62Bは、筐体11の電極端子15A、15Bに第1電極用バスバー16A、16Bを溶接する際に溶接機を挿入するための開口である。
【0056】
第1ねじ部材ベース用凹部63A、63Bは、平面視、第1ねじ部材53A、53Bのベース53A1、53B1(
図8参照)の外形形状(例えば、平面視多角形形状。
図7は、六角形)と同じ形状になるようにされている。
【0057】
そして、第1ねじ部材53A、53Bに対応するナット54A、54Bの締め付け時に、第1ねじ部材53A、53Bのベース53A1、53B1の周面に第1ねじ部材ベース用凹部63A、63Bの内周面がそれぞれ当接することにより、回転トルクを吸収し、第1ねじ部材53A、53Bの回動を規制して所定位置に保持するようになっている。
【0058】
第2ねじ部材ベース用凹部64A、64Bは、平面視、第2ねじ部材55A、55Bのベース55A1、55B1(
図8参照)の外形形状(例えば、平面視多角形形状。
図7は、六角形)と同じ形状になるようにされている。
【0059】
そして、第2ねじ部材55A、55Bに対応するナットの締め付け時に、第2ねじ部材55A、55Bのベース55A1、55B1の周面に第2ねじ部材ベース用凹部64A、64Bの内周面がそれぞれ当接することにより、回転トルクを吸収し、第2ねじ部材55A、55Bの回動を規制して所定位置に保持するようになっている。
【0060】
上記構成において、第1電極用バスバー16A、16B及び第2電極用バスバー52A、52Bは、
図8にその断面を示すように、平板金属板を断面略S字状に折り曲げられた形状、すなわち、両端の平板部分を屈曲部でつないだ形状を有している。
【0061】
さらに第1電極用バスバー16Aの電極端子15A側には、電極端子15Aの中央部に設けられた円柱状の突起15A1の外周形状に沿った円形状の開口を円形状の有するとともに、溶接用に電極用バスバー16Aの厚みを薄くした溶接用凹部16A1を有している。
また第1電極用バスバー16Aのラプチャー17側には、第1ねじ部材53Aのねじ部が挿入されるねじ部材用開口16A2が設けられている。
【0062】
また第1電極用バスバー16Bの電極端子15B側には、電極端子15Bの中央部に設けられた円柱状の突起15B1の外周形状に沿った円形状の開口を有するとともに、溶接用に電極用バスバー16Bの厚みを薄くした溶接用凹部16B1を有している。
また、第1電極用バスバー16Bのラプチャー17側には、ねじ部材14Bのねじ部14B2が挿入されるねじ部材用開口16B2が設けられている。
【0063】
同様に第2電極用バスバー52Aの第1ねじ部材53A側には、第1ねじ部材53Aのねじ部53A2が挿入されるねじ部材用開口52A1が設けられている。
また第2電極用バスバー52Aの第2ねじ部材55A側には、第2ねじ部材55Aのねじ部55A2が挿入されるねじ部材用開口52A2が設けられている。
【0064】
また第2電極用バスバー52Bの第1ねじ部材53B側には、第1ねじ部材53Bのねじ部53B2が挿入されるねじ部材用開口52B1が設けられている。
また第2電極用バスバー52Bの第2ねじ部材55B側には、第2ねじ部材55Bのねじ部55B2が挿入されるねじ部材用開口52B2が設けられている。
【0065】
そして、第1支持面69は、第1電極用バスバー16A、16Bを保持及び支持する。
さらに第1支持面69の上面から複数(
図7の例では、4本×2箇所=8本)の第1浮き上がり防止用突起65が突設されている。
【0066】
また、第2支持面70は、第2電極用バスバー52A、52Bを保持及び支持する。
さらに第2支持面70の上面から複数(
図7の例では、4本×2箇所=8本)の第2浮き上がり防止用突起66が突設されている。
【0067】
ここで、電池セル50の組立方法について説明する。
まず、第1ねじ部材53A、53Bを用意し、キャップ部材51の一対のねじ部材ベース用凹部63A、63Bにそれぞれ嵌め込む。
【0068】
そして、第1電極用バスバー16A、16Bを用意し、第1電極用バスバー16Aのねじ部材用開口16A2に第1ねじ部材53Aのねじ部53A2を挿入し、第1電極用バスバー16Bのねじ部材用開口16B2に第1ねじ部材53Bのねじ部53B1を挿入する。
ねじ部53A1、53B1の挿入と同時に、第1電極用バスバー16A、16Bのそれぞれの開口に第1浮き上がり防止用突起66を挿入する。
【0069】
そして、筐体11の上端部にキャップ部材51を嵌め合わせる。
その後、第1電極用バスバー16Aの溶接用凹部16A1の円形状の開口を電極端子15Aの中央部に設けられた円柱状の突起15A1に嵌め込み、第1電極用バスバー16Bの溶接用凹部16B1の円形状の開口を電極端子15Bの中央部に設けられた円柱状の突起15B1に嵌め込む。
【0070】
この状態において、溶接を行い、第1電極用バスバー16Aを電極端子15Aに機械的、かつ、電気的に接続する。同様に第1電極用バスバー16Bを電極端子15Bに機械的、かつ、電気的に接続する。
【0071】
さらに第1浮き上がり防止用突起66の先端を加熱し、押しつぶすことにより、第1電極用バスバー16A、16Bが第1ねじ部材53A、53Bの動きに伴って浮き上がるのを防止する。
【0072】
この状態において、第2ねじ部材55A、55Bを用意し、キャップ部材51の一対のねじ部材ベース用凹部64A、64Bにそれぞれ嵌め込む。
続いて、第2電極用バスバー52A、52Bを用意し、第2電極用バスバー52Aのねじ部材用開口52A2に第2ねじ部材55Aのねじ部55A2を挿入し、第2電極用バスバー52Bのねじ部材用開口52B2に第2ねじ部材55Bのねじ部55B2を挿入する。
【0073】
そして、第2ねじ部材55Aのねじ部55A2にナット54Aを螺合させ、ナット54Aにより第1電極用バスバー16A及び第2電極用バスバー52Aに締結する。
同様に第2ねじ部材55Bのねじ部55B1にナット54Bを螺合させ、ナット54Bにより第1電極用バスバー16B及び第2電極用バスバー52Bに締結し、組立を終了する。
【0074】
この結果、レーザ溶接機を要せずに電池モジュールの組み立てが可能であり、ひいては、リユース用モジュールとして再使用することも可能な電池セル50を得ることができる。
さらに
図8に示すように、第2ねじ部材55A、55Bは、キャップ部材51の左右端からの距離が、第1ねじ部材53A、53Bよりも近くなるため、電池セル50の左右側に他の電池セル50を同様の向きで連結する場合でも、電池セル50間のセル間バスバーを短くすることが可能となる。
【0075】
次に電池モジュールの組み立てについて説明する。
図9は、第2実施形態の電池モジュールの正面図である。
以下の説明において、第2ねじ部材55Aと第2ねじ部材55Bとは、異なる極性であり、第2ねじ部材55A同士あるいは第2ねじ部材55B同士は、同一の極性(いずれか一方が正極、他方が負極)であるものとする。
【0076】
電池モジュール110は、複数の電池セル50(50-1~50-3)を備えている。
電池セル50-1の第2ねじ部材55Bと電池セル50-2のねじ部材55Aには、セル間バスバー111-1が挿入されている。
【0077】
さらに電池セル50-1の第2ねじ部材55Bには、ナット112-1がねじ込まれてセル間バスバー111-1が固定されている。同様に電池セル50-2の第2ねじ部材55Aには、ナット112-2がねじ込まれてセル間バスバー111-1が固定されている。
【0078】
同様に電池セル50-2の第2ねじ部材55Bには、ナット112-3がねじ込まれてセル間バスバー111-2が固定されている。
同様に電池セル50-3の第2ねじ部材55Aには、ナット112-4がねじ込まれてセル間バスバー111-2が固定されている。
【0079】
これらの結果、電池セル50-1~電池セル50-4は、直列接続状態となっている。
以下同様にして、さらに多くの電池セル50を容易に接続して電池モジュール110を構成できる。
【0080】
以上の説明は、直列接続の場合であったが、適宜並列接続することで、所望の電圧及び所望の電流容量を有する電池モジュール110を構成することが可能である。
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、電池セルの電極端子に予め溶接した第1電極用バスバーに樹脂部材に回転を規制された状態で嵌め込まれた第1のねじ部材と電気的、機械的に接続し、さらに第2電極用バスバーの開口に第1のねじ部材を挿入した状態で、第2電極用バスバーをナット等の締結部材により締結し、さらに樹脂部材により回転を規制された状態で嵌め込まれた第2のねじ部材と電気的、機械的に接続しているので、モジュールの組み立て時には、ナット等の締結部材により第2のねじ部材に締結するだけで、モジュールを組み立てることができ、レーザ溶接機を要せずに電池モジュールの組み立てが可能となる。
【0081】
さらに電池モジュールの分解時にも、第2のねじ部材の締結部材の締結を解除するだけで電池セルとすることができるので、容易に分解でき、ひいては、リユース用モジュールとして再使用することも可能な二次電池の端子構造及び二次電池を提供できる。
【0082】
さらに本第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、
図9に示した様に、電池セル50を正面方向に向けて複数接続する場合でも、第2のねじ部材は、電池セル50の左右方向の端部に近い位置に設けられているので、セル間バスバーを短くでき、連結数を増加させて電池モジュールを構成した場合でも、エネルギー損失を低減し、発熱を抑制することができる。
したがって、非常用電源等の大電力システムを構築する場合でも、運用効率の向上が図れる。
【0083】
[3]実施形態の変形例
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0084】
例えば、以上の説明においては、ねじ部材(ねじ部材14A、14B、第1ねじ部材53A、53B、第2ねじ部材55A、55B)として、コストの観点から一般的な六角ボルトを用いていていたが、ベースが多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、星形等)、非対称形状等の回転トルクを受け止めることが可能である形状を有するものであれば、同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10、50 電池セル
11 筐体
12 キャップ部材
14A、14B ねじ部材
14A1、14B1 ベース
14A2、14B2 ねじ部
15A、15B 電極端子(電極端子部)
15A1、15B1 突起
16A、16B 電極用バスバー(第1電極用バスバー)
16A1、16B1 溶接用凹部
16A2、16B2 ねじ部材用開口
17 ラプチャー
18 コードシール
21 枠部材
22 ベース部
23 電極端子用開口
24 ねじ部材ベース用凹部
25 ラプチャー用開口
26 防止用突起
27 回転防止用突起
28 電極用バスバー用凹部
28A 第1支持面部
28B 第2支持面部
29 嵌合凹部
51 キャップ部材
52A、52B 第2電極用バスバー
52A1、52B1 ねじ部材用開口
52A2、52B2 ねじ部材用開口
53A、53B 第1ねじ部材
53A1、53B1 ベース
53A1、53B2 ねじ部
54A、54B ナット
55A、55B 第2ねじ部材
55A1、55B2 ベース
55A2、55B2 ねじ部
61 枠部材
62A 電極端子溶接用開口
63A、64A ねじ部材ベース用凹部
65 第1浮き上がり防止用突起
66 第2浮き上がり防止用突起
67A、67B バスバー用凹部
68A、68B バスバー用開口
69 第1支持面
70 第2支持面
100、110 電池モジュール
101-1~101-3 セル間バスバー
102-1~102-4 ナット
111-1~111-2 セル間バスバー
112-1~112-4 ナット