IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

特開2023-43010ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法
<>
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図1
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図2
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図3
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図4
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図5
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図6
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図7
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図8
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図9
  • 特開-ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043010
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/167 20060101AFI20230320BHJP
   C03B 5/225 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C03B5/167
C03B5/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150472
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周作
(57)【要約】
【課題】移送管の管状部に設けられる継ぎ目部と電極部との位置関係を適切にして、継ぎ目部の損傷を低減する。
【解決手段】溶融ガラスGmを移送する移送管P1~P4を備えるガラス物品の製造装置1において、移送管P1~P4は、溶融ガラスGmが内部に流れる管状部14と、管状部14の外周側に取り付けられ且つ管状部14に電流を流す電極部15a、16aとを備える。さらに、管状部14は、管軸Z方向に沿って延びる継ぎ目部14aを有する。そして、電極部15a、16aの位置と、継ぎ目部14aの位置とを、管状部14の周方向で異ならせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを移送する移送管を備えるガラス物品の製造装置であって、
前記移送管は、溶融ガラスが内部に流れる管状部と、前記管状部の外周側に取り付けられ且つ前記管状部に電流を流す電極部とを備え、
前記管状部は、管軸方向に沿って延びる継ぎ目部を有し、
前記電極部の位置と前記継ぎ目部の位置とが、前記管状部の周方向で異なることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記電極部は、前記管状部に設けられたフランジ部に取り付けられる請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記管状部は、管軸方向が水平方向または傾斜方向に沿うように配置され、
前記継ぎ目部は、前記管状部の周方向における頂部を除く位置に設けられる請求項1又は2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記管状部は、管軸方向が水平方向または傾斜方向に沿うように配置され、
前記継ぎ目部は、前記管状部の周方向における底部を除く位置に設けられる請求項1~3の何れかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記移送管は、清澄槽を構成する請求項1~4の何れかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
前記移送管は、溶融炉と清澄槽とを連結する上流連結管を構成する請求項1~5の何れかに記載のガラス物品の製造装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の製造装置が備える移送管を用いて溶融ガラスを移送する工程を含むガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融ガラスを移送する移送管を備えたガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板やガラス管などのガラス物品を製造する際には、溶融炉から成形装置に溶融ガラスを移送することが行われる。この溶融ガラスを移送する経路の途中には、複数の移送管が配設される。
【0003】
主たる移送管としては、移送経路の上流側から順に、清澄槽、攪拌槽、冷却パイプなどをそれぞれ構成するものが挙げられる。また、溶融炉と清澄槽とを連結する上流連結パイプ、清澄槽と攪拌槽とを連結する中流連結パイプなどをそれぞれ構成する移送管も存在する。
【0004】
特許文献1には、移送管(同文献では攪拌槽を構成する移送管)のうちの溶融ガラスが内部を流れる管状部の周方向両端部を溶接により接合することが開示されている。したがって、同文献の管状部には、管軸方向に延びる継ぎ目部(接合部)が設けられている。なお、同文献では、管状部の継ぎ目部を外周側から覆う補強部材が設けられている。
【0005】
特許文献2には、移送管における管状部の外周側に、当該管状部に電流を流す電極部を取り付けた構成が開示されている。なお、同文献では、管状部の管軸方向端部に設けられたフランジ部の外周側に電極部が一体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-47102号公報
【特許文献2】特開2020-203810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特許文献1に開示されたような継ぎ目部を有する管状部に、特許文献2に開示されたような電極部を取り付けるために種々の工夫を講じてみた。その結果、本発明者は、そのような管状部に電極部を支障なく取り付けるためには、継ぎ目部と電極部との位置関係を適切にする必要性があることを見出した。すなわち、継ぎ目部と電極部との位置関係が不適切であると、継ぎ目部の損傷が激しくなることを見出した。
【0008】
したがって、本発明の課題は、移送管の管状部に設けられる継ぎ目部と電極部との位置関係を適切にして継ぎ目部の損傷を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明の第一の側面は、溶融ガラスを移送する移送管を備えるガラス物品の製造装置であって、前記移送管は、溶融ガラスが内部に流れる管状部と、前記管状部の外周側に取り付けられ且つ前記管状部に電流を流す電極部とを備え、前記管状部は、管軸方向に沿って延びる継ぎ目部を有し、前記継ぎ目部の位置と前記電極部の位置とが、前記管状部の周方向で異なることに特徴づけられる。
【0010】
このような構成によれば、移送管の管状部に設けられた継ぎ目部の位置と電極部の位置とが、管状部の周方向で異なるため、管状部ひいては移送管の損傷等が効果的に抑制される。詳述すると、管状部の継ぎ目部は溶接等による接合部であるため、一般的には強度が低く損傷し易い。また、管状部における電極部の取り付け位置では、電流密度が増加して高温になる傾向があるため、損傷し易い。そのため、この両者の位置を、管状部の周方向で重複させた場合には、管状部ひいては移送管の損傷が著しくなる。本発明では、この両者の位置が周方向で異なるため、そのような不具合が生じず、管状部ひいては移送管の耐久性を向上させることができる。
【0011】
この構成において、前記電極部は、前記管状部に設けられたフランジ部に取り付けられていてもよい。
【0012】
このようにすれば、電極部の取り付け座部として、管状部に設けられたフランジ部が有効利用される。
【0013】
以上の構成において、前記管状部は、管軸方向が水平方向または傾斜方向に沿うように配置され、前記継ぎ目部は、前記管状部の周方向における頂部を除く位置に設けられてもよい。
【0014】
ここで、例えば管状部の内部に溶融ガラスが充満していると、管状部の頂部(周方向における頂部)の周辺で溶融ガラスが最も高温になり得るため、管状部の頂部が損傷し易くなる。しかも、管状部の頂部の周辺では溶融ガラス内に空気溜まりが発生し易く、これに起因して管状部の頂部が酸化して薄肉になる等の不具合が生じ得る。加えて、空気溜まりの発生や溶融ガラスが充満されないことにより管状部の頂部の周辺に溶融ガラスが接触しない場合には、管状部の頂部そのものがさらに高温になって損傷し易くなる。これらに起因して、管状部の頂部に継ぎ目部を設けた場合には、継ぎ目部の損傷のおそれが顕著になる。ここでの構成によれば、管状部の頂部を除く位置に継ぎ目部が設けられるため、そのような不具合は生じない。
【0015】
また、前記管状部は、管軸方向が水平方向または傾斜方向に沿うように配置され、前記継ぎ目部は、前記管状部の周方向における底部を除く位置に設けられてもよい。
【0016】
ここで、管状部の底部(周方向における底部)は、溶融ガラスの自重による影響(負荷)が最も大きくなる部位であるため、損傷が生じ易い。そのため、管状部の底部に継ぎ目部を設けた場合には、継ぎ目部の損傷のおそれが顕著になる。ここでの構成によれば、管状部の底部を除く位置に継ぎ目部が設けられるため、そのような不具合は生じない。
【0017】
以上の構成において、前記移送管は、清澄槽を構成するものであってもよい。
【0018】
このようにすれば、高温の溶融ガラスが流れる清澄槽は損傷しやすいので、本発明による移送管の耐久性を向上させる効果が顕著となる。
【0019】
以上の構成において、溶融炉と清澄槽とを連結する上流連結管を構成するものであってもよい。
【0020】
このようにすれば、高圧の溶融ガラスが流れる上流連結管は損傷しやすいので、本発明による移送管の耐久性を向上させる効果が顕著となる。
【0021】
上記課題を解決するために創案された本発明の第二の側面は、ガラス物品の製造方法であって、既述の製造装置が備える移送管を用いて溶融ガラスを移送する工程を含むことに特徴づけられる。
【0022】
この方法によれば、既に説明した本発明に係るガラス物品の製造装置と実質的に同一の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、移送管の管状部に設けられる継ぎ目部と電極部との位置関係が適切になる。これにより、管状部の破損が効果的に抑制され、移送管としての耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置の全体構成を示す概略側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第一例を示す斜視図である。
図3図2のA-A線に従って切断した第一例に係る移送管の縦断側面図である。
図4図2のB-B線に従って切断した第一例に係る移送管の縦断正面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第二例を示す斜視図である。
図6図5のC-C線に従って切断した第二例に係る移送管の縦断正面図である。
図7】本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第三例を示す斜視図である。
図8図7のD-D線に従って切断した第三例に係る移送管の縦断正面図である。
図9】本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置の構成要素である移送管の第四例を示す斜視図である。
図10図9のE-E線に従って切断した第四例に係る移送管の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置及びその製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明に係るガラス物品の製造装置を例示している。同図に示すように、この製造装置1は、大別すると、上流端に配備されてガラス原料を加熱して溶融ガラスGmを生成する溶融炉2と、溶融炉2から流出した溶融ガラスGmを下流側に向かって移送する移送装置3と、移送装置3から供給される溶融ガラスGmを用いてガラスリボンGrを成形する成形装置4とを備える。
【0027】
移送装置3は、上流側から順に、清澄槽5と、攪拌槽6と、状態調整槽7と、を備える。清澄槽5の流入部5aは、上流連結パイプ8を介して溶融炉2の流出部2bに連通している。清澄槽5の流出部5bは、中流連結パイプ9を介して攪拌槽6の流入部6aに連通している。攪拌槽6の流出部6bは、冷却パイプ10を介して状態調整槽7の流入部7aに連通している。
【0028】
清澄槽5は、溶融炉2で生成された溶融ガラスGmに清澄処理を施すものである。攪拌槽6は、清澄処理を施された溶融ガラスGmを攪拌して均質化処理を施すものである。冷却パイプ10は、均質化処理が施された溶融ガラスGmを冷却してその粘度などの調整を行うものである。状態調整槽7は、冷却された溶融ガラスGmの粘度や流量などのさらなる調整を行うものである。なお、攪拌槽6は、移送装置3の移送経路に複数個を配置してもよい。
【0029】
成形装置4は、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmを流下させて帯状に成形する成形体11と、成形体11に溶融ガラスGmを導く大径の導入パイプ12とを有する。導入パイプ12には、移送装置3の状態調整槽7から小径のパイプ13を経て溶融ガラスGmが供給される。
【0030】
帯状に成形されたガラスリボンGrは、徐冷工程及び切断工程に供給され、ガラス物品として所望寸法の板ガラスが切り出される。ここで得られる板ガラスは、例えば、厚みが0.01~2mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイのガラス基板やカバーガラスに利用される。なお、成形装置4は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよく、ダウンドロー法以外の方法、例えばフロート法を実行するものであってもよい。
【0031】
板ガラスのガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0032】
移送装置3の清澄槽5、攪拌槽6、状態調整槽7、上流連結パイプ8、中流連結パイプ9及び冷却パイプ10は、何れも、移送管で構成されている。なお、清澄槽5、攪拌槽6、状態調整槽7、上流連結パイプ8、中流連結パイプ9及び冷却パイプ10は、それぞれ、複数の移送管を連結しで構成されてもよい。以下、これらの移送管について詳細に説明する。
【0033】
図2図4は、第一例に係る移送管P1(以下、第一移送管P1という)を例示している。本実施形態では、第一移送管P1は、清澄槽5や中流連結パイプ9を構成するものである。図2は、第一移送管P1を示す斜視図であり、図3は、図2のA-A線に従って切断した縦断正面図であり、図4は、図2のB-B線に従って切断した縦断側面図である。これら各図に示すように、第一移送管P1は、溶融ガラスが内部に流れる管状部14と、管状部14の管軸Z方向の一端及び他端にそれぞれ設けられたフランジ部15、16と、これらフランジ部15、16の外周部にそれぞれ取り付けられた電極部15a、16aとを備える。第一移送管P1の管軸Zは、水平方向に沿って延びている。
【0034】
管状部14、フランジ部15、16及び電極部15a、16aは、何れも、白金または白金合金(例えば白金ロジウム合金等)で形成してもよく、或いは、白金または白金合金にジルコニア等を分散させた強化白金または強化白金合金で形成してもよい。フランジ部15、16及び電極部15a、16aは、ニッケル又はニッケル合金で形成してもよい。以下の説明では、上流側(図2及び図3の左側)のフランジ部15及び電極部15aをそれぞれ、上流側フランジ部15及び上流側電極部15aと称し、下流側(図2及び図3の右側)のフランジ部16及び電極部16aをそれぞれ、下流側フランジ部16及び下流側電極部16aと称する。
【0035】
第一移送管P1の管状部14には、管軸Z方向に沿って一直線状に延びる継ぎ目部14aが設けられている。継ぎ目部14aは、円形(真円形)に湾曲した管素材の両端部を溶接等で接合した接合部である。継ぎ目部14aは、管状部14の頂部と底部との間の中間位置に設けられている。本実施形態では、継ぎ目部14aは、管状部14の頂部から底部に至るまでの周方向の中央位置に設けられている。
【0036】
上流側フランジ部15及び下流側フランジ部16は、管状部14の管軸Z方向の一端及び他端に溶接により固定されている。上流側電極部15aは、上流側フランジ部15の下部に下方に突出して一体に取り付けられている。図例では、上流側電極部15aは、上流側フランジ部15の底部に鉛直下方に突出して一体に取り付けられている。また、下流側電極部16aは、下流側フランジ部16の上部に上方に突出して一体に取り付けられている。図例では、下流側電極部16aは、下流側フランジ部16の頂部に鉛直上方に突出して一体に取り付けられている。したがって、上流側電極部15aの位置と継ぎ目部14aの位置とは、管状部14の周方向で異なっており、且つ、下流側電極部16aの位置と継ぎ目部14aの位置とも、管状部14の周方向で異なっている。換言すれば、上流側電極部15aと継ぎ目部14aとは、管状部14の周方向での角度位置が異なっており、且つ、下流側電極部16aと継ぎ目部14aとも、管状部14の周方向での角度位置が異なっている(詳細は後述する)。
【0037】
なお、第一移送管P1は、両電極部15a、16aの位置と継ぎ目部14aの位置とが周方向で異なっていれば、図例の構成に限定されない。例えば、上流側電極部15aは、上流側フランジ部15の底部以外の下部から斜め下方に突出していてもよく、下流側電極部16aは、下流側フランジ部16の頂部以外の上部から斜め上方に突出していてもよい。また、上流側電極部15aと下流側電極部16aは、図例のように互いに180°隔てて取り付けられていなくてもよい。さらに、継ぎ目部14aは、上流側電極部15a及び下流側電極部16aの何れとも位置が異なるのであれば、管状部14の周方向の他の位置に設けられていてもよい。この場合であっても、継ぎ目部14aは、管状部14の頂部及び底部を除く位置に設けることが好ましい。
【0038】
ここで、図4を参照して第一移送管P1をさらに詳細に説明する。同図では、管軸Zから両電極部15a、16aの周方向中央にそれぞれ至る直線をL1、L2とし、管軸Zから継ぎ目部14aに至る直線をLxとした上で、上流側電極部15aと継ぎ目部14aとのなす角度をα1とし、下流側電極部16aと継ぎ目部14aとのなす角度をα2とした場合、角度α1と角度α2とが何れも90°とされている。この場合、上流側電極部15aと下流側電極部16aとが180°隔てて取り付けられているか否かに関わらず、角度α1と角度α2とは何れも15°以上となることが好ましく、30°以上となることがより好ましく、45°以上となることがさらに好ましい。詳述すると、継ぎ目部14aは、両電極部15a、16aの何れの電極部とも周方向の一方側(図4に示す例では矢印a1方向側)及び他方側(図4に示す例では矢印b1方向側)の双方に対し15°以上異なる位置に設けることが好ましく、30°以上異なる位置に設けることがより好ましく、45°以上異なる位置に設けることがさらに好ましい。このような場合であっても、継ぎ目部14aは、管状部14の頂部と底部を除く位置に設けられることが好ましい。上流側電極部15aと下流側電極部16aとが所定の角度(図例では180°)を隔てて取り付けられている場合は、継ぎ目部14aの位置は、上流側電極部15aから下流側電極部16aに至るまでの周方向の中央位置を基準として、周方向の一方側及び他方側の双方に対し10°以内の範囲で異なることが好ましく、5°以内の範囲で異なることがより好ましい。
【0039】
以上のような構成であれば、第一移送管P1の損傷を抑止して耐久性を高めることができる。詳述すると、管状部14の継ぎ目部14aは、溶接等による接合に伴って強度が低下するので、損傷し易い。また、電極部15a、16aの取り付け位置に対応する管状部14の周方向位置では、電流密度が増加して高温になるため、熱により損傷し易い。そのため、両電極部15a、16aの何れか一方または双方の位置と、管状部14の継ぎ目部14aの位置とを周方向で重複させた場合には、管状部14ひいては第一移送管P1の損傷し易さが著しくなる。ここでの構成によれば、そのような不具合が回避され、管状部14ひいては第一移送管P1の損傷が効果的に抑止される。
【0040】
なお、継ぎ目部14aを、管状部14の頂部及び底部を除く位置に設けるようにすれば、次に示すような利点が得られる。すなわち、管状部14の内部に溶融ガラスGmが充満している場合には、管状部14の頂部周辺で溶融ガラスGmが最も高温になり得るため、管状部14の頂部が損傷し易くなる。しかも、管状部14の頂部周辺では溶融ガラスGm内に空気溜まりが発生し易いため、管状部14の頂部が酸化して薄肉になる等の不具合を引き起こす。加えて、空気溜まりの存在や管状部14に溶融ガラスGmが充満されないことにより管状部14の頂部周辺が溶融ガラスGmと接触しなくなった場合には、管状部14の頂部そのものがさらに高温になって損傷し易くなる。そのため、管状部14の頂部を除外して継ぎ目部14aを設けることが好ましい。また、管状部14の底部は、溶融ガラスの自重による影響が最も大きくなる部位であるため、損傷し易い。そのため、管状部14の底部を除外して継ぎ目部14aを設けることが好ましい。
【0041】
図5及び図6は、第二例に係る移送管P2(以下、第二移送管P2という)を例示している。本実施形態では、第二移送管P2は、清澄槽5や中流連結パイプ9を構成するものである。図5は、第二移送管P2を示す斜視図であり、図6は、図5のC-C線に従って切断した縦断正面図である。この第二移送管P2が、上述の第一移送管P1と相違する点は、上流側電極部15a及び下流側電極部16aの何れもが、上流側フランジ部15及び下流側フランジ部16の上部(図例では頂部)に上方(図例では鉛直上方)に突出して一体に取り付けられているところにある。そして、継ぎ目部14aは、管状部14の頂部と底部との間の周方向の中間位置(図例では頂部から底部に至るまでの周方向の中央位置)に設けられている。このような構成であれば、両電極部15a、16aの位置と継ぎ目部14aの位置とが周方向で異なることによる既述の効果が得られる。なお、この第二移送管P2は、両電極部15a、16aの位置と継ぎ目部14aの位置とが周方向で異なっていれば、図例の構成に限定されない。例えば、両電極部15a、16aは、両フランジ部15、16の頂部以外の上部から斜め上方に突出していてもよく、両フランジ部15、16の底部から鉛直下方に、または底部以外の下部から斜め下方に突出していてもよい。また、継ぎ目部14aの位置は、両電極部15a、16aのそれぞれの位置と周方向で異なっていれば、他の位置であってもよい。そして、両電極部15a、16aが上方に突出しているか否かに関わらず、継ぎ目部14aは、両電極部15a、16aから周方向の一方側(図6に示す例では矢印a2方向側)及び他方側(図6に示す例では矢印b2方向側)の双方に対し15°以上異なる位置に設けることが好ましく、30°以上異なる位置に設けることがより好ましく、45°以上異なる位置に設けることがさらに好ましい。但し、図例の場合、継ぎ目部14aの位置は、両電極部15a、16aから管状部14の底部に至るまでの周方向の中央位置を基準として、周方向の一方側及び他方側の双方に対し10°以内の範囲で異なることが好ましく、5°以内の範囲で異なることがより好ましい。その他の説明すべき事項は、上述の第一移送管P1について説明した事項と同一である。
【0042】
図7及び図8は、第三例に係る移送管P3(以下、第三移送管P3という)を例示している。本実施形態では、第三移送管P3は、清澄槽5や中流連結パイプ9を構成するものである。図7は、第三移送管P3を示す斜視図であり、図8は、図7のD-D線に従って切断した縦断正面図である。この第三移送管P3が、上述の第一移送管P1と相違する点は、上流側電極部15aが、上流側フランジ部15の横方向の一側部(図例では左側部)に横方向の一方側(図例では左側)に突出して一体に取り付けられ、下流側電極部16aが、下流側フランジ部16の横方向の他側部(図例では右側部)に横方向の他方側(図例では右側)に突出して一体に取り付けられているところにある。図例では、上流側電極部15a及び下流側電極部16aは、何れも、両フランジ部15、16の頂部から底部に至るまでの周方向の中央位置に水平方向に突出して一体に取り付けられている。そして、継ぎ目部14aは、管状部14の上部(頂部を除く位置)に設けられている。詳述すると、継ぎ目部14aは、下流側電極部16aから管状部14の頂部に至るまでの周方向の中央位置に設けられている。このような構成であれば、両電極部15a、16aの位置と継ぎ目部14aの位置とが周方向で異なることによる既述の効果が得られる。なお、この第三移送管P3は、両電極部15a、16aの位置と継ぎ目部14aの位置とが周方向で異なっていれば、図例の構成に限定されない。例えば、両電極部15a、16aの位置は、何れもが、対応するフランジ部15、16の横方向の一方の側部のみに取り付けられていてもよく、水平方向以外の横方向に突出していてもよい。また、継ぎ目部14aの位置は、両電極部15a、16aの位置と周方向で異なっていれば、他の位置であってもよい。そして、両電極部15a、16aが水平方向に突出しているか否かに関わらず、継ぎ目部14aは、両電極部15a、16aの何れの電極部とも周方向の一方側(図8に示す例では矢印a3方向側)及び他方側(図8に示す例では矢印b3方向側)の双方に対し15°以上異なる位置に設けることが好ましく、30°以上異なる位置に設けることがより好ましく、45°以上異なる位置に設けることがさらに好ましい。但し、図例の場合、継ぎ目部14aの位置は、両電極部15a、16aからそれぞれ管状部14の頂部または底部に至るまでの周方向の中央位置を基準として、周方向の一方側及び他方側の双方に対し10°以内の範囲で異なることが好ましく、5°以内の範囲で異なることがより好ましい。その他の説明すべき事項は、上述の第一移送管P1について説明した事項と同一である。
【0043】
図9及び図10は、第四例に係る移送管P4(以下、第四移送管P4という)を例示している。本実施形態では、第四移送管P4は、上流連結パイプ8や冷却パイプ10を構成するものであって、場合によっては清澄槽5をも構成するものである。図9は、第四移送管P4を示す斜視図であり、図10は、図9のE-E線に従って切断した縦断正面図である。この第四移送管P4が、上述の第一移送管P1と相違する点は、管状部14の下流側が水平面から角度βだけ上方に向かって傾斜しているところにある。この場合、上流側フランジ部15及び下流側フランジ部16は、何れも、それらの端面(平面)が鉛直面に沿うように管状部14の上流端及び下流端に設けられている。したがって、管状部14の流入口14bは、上下方向に長い長円形状とされている(流出口も同様)。なお、この第四例に係る移送管P4は、既述の第二移送管P2および第三移送管P3を上記と同様に角度βだけ傾斜させたものであってもよい。その他の説明すべき事項は、上述の第一移送管P1について説明した事項と同一である。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係るガラス物品の製造装置及びその製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々のバリエーションが可能である。
【0045】
以上の実施形態では、板ガラスを製造する際に用いる移送装置に本発明を適用したが、板ガラス以外のガラス物品(例えばガラス管やガラス繊維など)を製造する際に用いる移送装置に本発明を適用してもよい。
【0046】
継ぎ目部は、管状部の頂部または底部に設けてもよいが、以上の実施形態のように、継ぎ目部を管状部の頂部及び底部に設けないことが好ましい。
【0047】
以上の実施形態では、管状部の長手方向の両端部にフランジ部及び電極部を設けたが、端部に代えて中間部にフランジ部及び電極部を設けてもよく、両端部に加えて中間部にフランジ部及び電極部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラス物品の製造装置
2 溶融炉
3 移送装置
4 成形装置
5 清澄槽
6 攪拌槽
8 上流連結パイプ
9 中流連結パイプ
10 冷却パイプ
14 管状部
14a 継ぎ目部
15 フランジ部(上流側フランジ部)
15a 電極部(上流側電極部)
16 フランジ部(下流側フランジ部)
16a 電極部(下流側電極部)
Gm 溶融ガラス
Gr ガラスリボン
P1 移送管(第一移送管)
P2 移送管(第二移送管)
P3 移送管(第三移送管)
P4 移送管(第四移送管)
Z 管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10