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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043013
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】IPビデオジャック装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/268 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
H04N5/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150477
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】718006198
【氏名又は名称】中村 豊美
(72)【発明者】
【氏名】中村 豊美
【テーマコード(参考)】
5C023
【Fターム(参考)】
5C023AA21
5C023BA15
5C023CA03
5C023CA08
5C023DA08
(57)【要約】
【課題】映像システムに用いるIPビデオジャック装置で従来の作業フローに追加の手順を加えず、人手による映像信号の物理的な切り替え、または一時的にケーブルを接続しての映像信号の監視を可能とする
【解決手段】ジャックとして動作する複数のイーサネットコネクタ(以下、パッチコネクタという)と通常の運用経路として用いられる複数のイーサネットコネクタ(以下、運用コネクタという)を持ち、パッチコネクタのリンク状態またはパッチコネクタからのパケット受信の状態を基に運用コネクタ間、および運用コネクタとパッチコネクタ間、パッチコネクタ間の接続を所定の接続パターンに変更し、IPビデオジャック装置より出力するIPパケットのアドレス情報を所定のアドレス情報に書き替え出力する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された第1の入力コネクタおよび接続された第1の出力コネクタを通じて、前記第1の入力コネクタに接続された第1の送信元から前記第1の出力コネクタに接続された第1の送信先に第1のIPストリームを転送するIPビデオジャック装置であって、第2の入力コネクタを通じてリンクアップ情報を受信したことに応答して、前記第2の入力コネクタを通じて受信した第2のIPストリームの各々のIPパケットの送信元アドレス情報および送信先アドレス情報を変換し、前記第2のIPストリームを前記第1の出力コネクタに出力することによって、前記第2の入力コネクタに接続された第2の送信元から前記第1の送信先に前記第2のIPストリームを転送する、ことを特徴とするIPビデオジャック装置。
【請求項2】
第2の出力コネクタを通じてリンクアップ情報を受信したことに応答して、前記第1の入力コネクタを通じて受信した前記IPストリームの各々のIPパケットの送信元アドレス情報および送信先アドレス情報を変換し、前記第1のIPストリームを前記第2の出力コネクタに出力することによって、前記第1の送信元から前記第2の出力コネクタに接続された第2の送信先に前記第1のIPストリームを転送する、ことを特徴とする請求項1に記載のIPビデオジャック装置。
【請求項3】
前記第1のIPストリームに含まれるコンテンツのタイプがビデオ、オーディオ、またはアンシラリーのいずれかであるかを判定し、前記判定したコンテンツの各々のタイプについて、ソースコンテンツが単一のソースコンテンツであることを確認する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のIPビデオジャック装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオジャック装置に関し、特に、IPパケット化された入力映像信号に対応したビデオジャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号を入力とし、編集および/または配信する映像処理システムにおいては、入力する映像信号を人手で物理的に切り替えたり、映像処理システムが扱う映像信号をケーブルを接続して監視する必要がある。
【0003】
映像信号は、例えば、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)424Mで規定された3G-SDIおよびSMPTE 292Mで規定されたHD-SDIなどを含む。このため、映像処理システム内にはビデオジャックを多数搭載したビデオパッチパネルが用いられている。
【0004】
近年のIP(Internet Protocol)化の進展に伴い、映像処理システムはIPパケットを用いたものへと移行しつつある。これらの映像処理システムでは、映像信号をIPパケットに変換してRTP(Real-time Transport Protocol)に従ってIPパケットを伝送先に伝送する。
【0005】
映像信号およびオーディオ信号を含むIPパケットを伝送する規格は、SMPTE ST2022-1、ST2022-2、ST2022-5、およびST2022-6(非特許文献1)、またはST2110-10、ST2110-20、ST2110-30、およびST2110-40等を含む。IPパケットは、映像信号およびオーディオ信号などのコンテンツを分割し、パケット化することによって生成される。本明細書では、1つのコンテンツを一連のIPパケットにしたものをIPストリームと称する。
【0006】
つまり、1本の映像信号をIPパケット化すると、1つのIPストリームが生成される。IPストリーム毎にIPパケット内のVLAN ID(Virtual LAN Identifier)、MACアドレス(Media Access Control address)、およびIPアドレス(Internet Protocol address)等の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報が指定されているので、一本のイーサネット上で複数のIPストリームを流すことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-320291
【0008】
【非特許文献1】SMPTE ST2022-6:2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
IPパケットを扱う映像処理システムで用いるビデオジャック装置は、特許文献1に記載のビデオジャック装置とは異なり、映像信号用の同軸ケーブル用のコネクタに替わり、イーサネットのツイストペア線インタフェース用のRJ45コネクタ、または光インタフェース用のLC、SCコネクタを備える事になる。
【0010】
ビデオジャック装置は、上述したコネクタを通常運用時の入力用および出力用、映像信号切替時の入力用および出力用として備える。映像信号の切り替えは、具体的には、映像信号切替時の入力用のコネクタに切替後のIPストリームを伝送するイーサネットケーブルを接続することによって行われる。
【0011】
しかし、受信するIPストリーム毎にVLAN ID、MACアドレス、およびIPアドレス等の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報が異なるため、ビデオジャック装置で実現していた人手による映像信号の物理的な切り替え、またはケーブルを接続しての映像信号の監視を行うのはコネクタへのケーブル接続を変更するだけでなく、これらのアドレス情報に基づいた処理を行う必要がある。
【0012】
具体的には映像信号用のビデオジャック装置のハーフノーマル、フルノーマルの機能をIPビデオジャック装置で実現するためには、映像信号の切り替えの場合には、切り替えたIPストリームをビデオジャックの出力に出すだけでなく、ビデオジャックの出力に接続される受信機器が、切り替えられたIPストリームを受信できるようにするために、受信機器に設定されている受信対象のIPパケットのアドレス情報を更新する必要がある。
【0013】
同様にケーブルを接続しての映像信号の監視を行う場合にも映像信号の監視に用いる監視機器が監視対象のIPストリームを受信できるように監視機器に設定されている受信対象のIPパケットのアドレス情報を更新する必要がある。
【0014】
このようなアドレス情報の更新はIPパケットを扱う装置では通常行われる事であり、例えばAMWA(Advanced Media Workflow Association)が規定したNMOS(Networked Media Open Specifications)のIS05、IS06においても、IPパケットを扱う受信装置、スイッチのAPIとしてアドレス情報の更新を定義している。従って、IPパケットを扱う映像処理システムの機器では受信対象のIPパケットのアドレス情報の更新はシステムの運用の上で良く用いられる。
【0015】
ただ、ビデオジャック装置を用いての映像信号の物理的な切り替え、または一時的にケーブルを接続しての映像信号の監視は通常のシステムの運用ではなく、人手主体の作業であることが多く、実際にケーブル設定の作業をしている機器以外の機器の受信対象IPアドレス情報の更新をする事は、従来の作業フローに追加の手順を加え、作業量の増加、作業の複雑化を招く上に、作業者がIPに関する知識を持っている必要がある。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、従来の作業フローに追加の手順を加えず、作業者がIPに関する知識を持っていなくても、人手による映像信号の物理的な切り替え、または一時的にケーブルを接続しての映像信号の監視を可能とするIPビデオジャック装置およびIPビデオパッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明に係るIPビデオジャック装置は、ジャックとして動作する複数のイーサネットコネクタ(以下、パッチコネクタという)と通常の運用経路として用いられる複数のイーサネットコネクタ(以下、運用コネクタという)を持ち、パッチコネクタのリンク状態またはパッチコネクタからのパケット受信の状態を基に運用コネクタ間、および運用コネクタとパッチコネクタ間、パッチコネクタ間の接続を所定の接続パターンに変更する手段と、IPビデオジャック装置より出力するIPパケットのアドレス情報を所定のアドレス情報に書き替える手段を備え、パッチコネクタでのイーサネットのリンク状態により人手での設定作業なしに自動的にIPビデオジャック装置内の接続パターンを変更し、パッチコネクタまたは運用コネクタから出力するIPストリームのアドレス情報を所定のアドレス情報に変更し出力するように構成されている事を特徴とする。
【0018】
更に本発明に係るIPビデオジャック装置は、パッチコネクタまたは運用コネクタから入力されるIPストリームのソースコンテンツがビデオ、オーディオ、アンシラリー等の各タイプについてただ1つであることを監視する手段を備える事を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るIPビデオジャック装置によれば、従来の作業フローに追加の手順を加えず、作業者がIPに関する知識を持っていなくても、人手による映像信号の物理的な切り替え、またはケーブルを接続しての映像信号の監視を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態であるIPビデオジャック装置の構成の例を示す図である。
図2図1に示した実施形態で両方のパッチコネクタがリンク断の状態でのハーフノーマルでの動作を示す図である。
図3図1に示した実施形態で入力用のパッチコネクタがリンク断の状態でのハーフノーマルでの動作を示す図である。
図4図1に示した実施形態で両方のパッチコネクタがリンクアップの状態でのハーフノーマルでの動作を示す図である
図5図1に示した実施形態で入力用のパッチコネクタがリンク断の状態でのフルノーマルでの動作を示す図である。
図6】本発明のIPビデオジャック装置の物理的な構成の実施形態を示す図である。
図7】本発明のIPビデオジャック装置の物理的な構成の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明のIPビデオジャック装置の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態であるIPビデオジャック装置の構成の例を示している。
【0022】
IPビデオジャック装置10は、コントローラ105、運用(第1の)コネクタ1011および1021、パッチ(第2の)コネクタ1012および1022、EthernetPHY部1031、1032、1033、および1034、ならびにシリアルインタフェース1051を備える。
【0023】
コントローラ105は、マイクロプロセッサであり、IPビデオジャック装置10の全体を制御する。コントローラ105は、ASIC(Application Specific Integrated circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを用いて実装されてもよい。
【0024】
運用コネクタ1011は、IPストリームの入力用のコネクタであり、運用コネクタ1021はIPストリームの出力用のコネクタである。運用コネクタ1011および1021は、通常運用時に、IPストリームを送信元から送信先に伝送するために使用される。なお、図1には、単一の運用コネクタのペア(入力および出力)が示されているが、実際には、複数の運用コネクタのペアが存在する。
【0025】
パッチコネクタ1012は、切り替えのためのIPストリームの入力用のコネクタであり、パッチコネクタ1022は、IPストリームの出力用のコネクタである。パッチコネクタ1012および1022は、通常運用時には使用されない。代わりに、上述した映像信号の切り替えおよび映像信号の監視などの場合に使用される(この場合には人手により、パッチコネクタ1012および1022にイーサネットのケーブルが接続される)。なお、図1には、単一のパッチコネクタのペア(入力および出力)が示されているが、実際には、複数のパッチコネクタのペアが存在する構成もある。
【0026】
シリアルインタフェース1051は、外部よりコントローラ105に制御を行うために用いるUSB、RS232C等の標準的なインタフェースである。
【0027】
EthernetPHY部1031、1032、1033、1034はそれぞれ、運用コネクタ1011、パッチコネクタ1012、パッチコネクタ1022、および運用コネクタ1021に対するイーサネットの物理層の入出力回路部(入出力ポート)であり、それぞれ接続されているルート切り替え部101、ストリーム監視部104、アドレス情報変換部102との間でPHYインタフェース10311、10321、10331、および10341を介してイーサネットのパケットを受信または送信し、更にリンク状態の情報を伝える。
【0028】
コントローラ105は、記憶装置(図示せず)に記憶された所定のプログラムを実行することによって、ルート切り替え部101、アドレス情報変換部102、およびストリーム監視部104を制御する。ルート切り替え部101、アドレス情報変換部102、およびストリーム監視部104は、本実施形態に係る処理を実行する論理モジュールである。
【0029】
ストリーム監視部104は、EthernetPHY部1032よりPHYインタフェース10321を通して受け取ったリンク情報および/または受信パケットの情報を基に、ルート切り替え部101にルート指示インタフェース1041を介して所定の次の2つのルートでの送信を指示する。
(1) EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを送信インタフェース1014を経てアドレス情報変換部に送信
(2) EthernetPHY部1032から受信したIPパケットを送信インタフェース1014を経てアドレス情報変換部に送信
【0030】
ここで、ストリーム監視部104がEthernetPHY部1032より受け取るリンク情報には、パッチコネクタ1012に接続されたEthernetPHY部1032に接続されるイーサネットのリンクアップ情報およびリンク断情報が含まれる。例えば、映像信号を切り替える場合に、正常に通信可能なイーサネットケーブルがパッチコネクタ1012に接続されると、EthernetPHY部1032からリンクアップ情報が送信される。
【0031】
更にストリーム監視部104は、パッチコネクタ1022に対し、EthernetPHY部1033よりPHYインタフェース10331を通して受け取ったリンク情報を基にルート切り替え部101にルート指示インタフェース1041を介して所定の次の2つのルートでの送信を指示する。
【0032】
(3) EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを送信インタフェース1013を経てアドレス情報変換部に送信
(4) EthernetPHY部1032から受信したIPパケットを送信インタフェース1013を経てアドレス情報変換部に送信
【0033】
ここで、ストリーム監視部104がEthernetPHY部1033より受け取るリンク情報には、パッチコネクタ1022に接続されたEthernetPHY部1033に接続されるイーサネットのリンクアップおよびリンク断情報が含まれる。例えば、映像信号を切り替える場合に、正常に通信可能なイーサネットケーブルがパッチコネクタ1022に接続されると、EthernetPHY部1033からリンクアップ情報が送信される。
【0034】
更にストリーム監視部104は、EthernetPHY部1031からの受信パケットの情報から、運用コネクタ1011上で受信するIPストリームのソースコンテンツがビデオ、オーディオ、またはアンシラリー等の各タイプについてただ1つ(単一のソースコンテンツ)であることを監視する。同様に、ストリーム監視部104は、EthernetPHY部1032からの受信パケットの情報から、パッチコネクタ1012上で受信するIPストリームのソースコンテンツがビデオ、オーディオ、またはアンシラリー等の各タイプについて単一のソースコンテンツであることを監視する。
【0035】
具体的な監視は、例えば、運用コネクタ1011上で受信するIPストリームがビデオ、オーディオ、またはアンシラリーのいずれかであるかを判定し、例えば、ビデオである場合、それらのIPストリームの全てのIPパケットの宛先IPアドレスが単一の宛先であるかを監視する。また、ソースコンテンツがオーディオあるいはアンシラリーであり、複数のIPストリームを受信する場合、IPストリームの全てのIPパケットの宛先IPアドレスが、指定された宛先数以内の宛先であるかことを監視する(例えば、指定された宛先数が2である場合、IPストリームの全てのIPパケットの宛先IPアドレスが2つ以下の宛先アドレスであることを監視する)。指定した宛先数は、外部よりシリアルインタフェース1051、コントローラ105を経由して設定される。
【0036】
加えて、受信IPパケット内のIPヘッダ内のソースIPアドレス、またはRTPヘッダ内のSSRCの情報がEthernetPHY部1031、1032について各々一つである事の監視も可能である。また、RTPヘッダ内でパケット内の情報がビデオ、オーディオ、アンシラリーの識別を可能とするペイロードタイプまたはUDPヘッダ内のソースポート番号、ディスティネーションポート番号を組み合わせてタイプ毎の監視も可能である。
【0037】
ここで、ソースコンテンツが一つである事の監視を宛先IPアドレスに加えて上記の情報に基づき行うのを可能とするのは、ソースコンテンツが一つだとビデオのIPストリームは一つであるが、オーディオ、アンシラリーについては複数のIPストリームとなる事があるので、ストリーム毎に別の値が使われる宛先IPアドレスだけを用いては判定できない場合があるためである。
【0038】
これは、ビデオジャックの切り替え機能はインタフェース当たり1つのコンテンツを対象とするもので、複数のコンテンツを対象としないからである。1つのタイプで複数のソースコンテンツを検出した場合は、ストリーム監視部104はコントローラ105を介して外部にアラームを送るか、LED等を発行させる事により外部に対して異常検出を示す。
【0039】
ルート切り替え部101は、ストリーム監視部104からの指示に基づき、EthernetPHY部1031受信したIPパケットを、送信インタフェース1013または1014を経てアドレス情報変換部102に送信する。同様に、ルート切り替え部101は、ストリーム監視部104からの指示に基づき、EthernetPHY部1032受信したIPパケットを、送信インタフェース1013または1014を経てアドレス情報変換部102に送信する。
【0040】
ここで、送信インタフェース1013は、EthernetPHY1033を介して送信するためのインタフェースであり、送信インタフェース1014は、EthernetPHY1034を介して送信するためのインタフェースである。
【0041】
アドレス情報変換部102は、送信インタフェース1013または1014経由で受信したIPパケットの送信元アドレス情報および送信先アドレス情報を変換する。アドレス情報は、不揮発メモリ106に予め記憶された変換するアドレスの対応関係を定義したルックアップテーブルに基づいて変換される。不揮発メモリ106は、シリアルインタフェース1051を経由して入力された情報に基づいて、コントローラ105より書き換え可能である。
【0042】
不揮発メモリ106内のアドレス情報は、変換するルートの数(本実施例では2)、変換する対象のアドレス情報の種類(VLAN ID、MACアドレス、IPアドレス等)、および受信するIPストリームの数により、複数の情報を含み得る。アドレス情報を用いて変換する対象の複数のIPストリームと不揮発メモリ106内の複数のアドレス情報の対応付けは、IPパケット内のペイロードの種類と、受信する順番により決まる。受信したIPパケット内のペイロードの種類は、例えばRTPヘッダ、ペイロードヘッダーにより判断する事ができる。ペイロードのデータがビデオのIPストリームの場合、ひとつのIPストリームしか受信しないので、変換アドレスは固定に決められる。従って、不揮発メモリ内に設定されるビデオのIPストリーム用のアドレス情報は下記の一組となる。
・変換後のVLAN ID
・変換後の送信先IPアドレス
・変換後の送信先MACアドレス
・変換後の送信元IPアドレス
・変換後の送信元MACアドレス
ペイロードのデータがオーディオ、アンシラリーで複数のIPストリームを受信する場合、本実施例では複数のアドレス情報のなかから、受信するIPストリームに順次、変換するアドレスを割り当てる。不揮発メモリ内には上記のアドレス情報を複数個持つ。ここで、本実施例では受信する順番に変換アドレスを割り付けているが、例えば受信するIPパケットのIPアドレスあるいはRTPヘッダ内のSSRCの値を観測し、その値の大きさの順番に割り当てする等の方法もある。
【0043】
不揮発メモリ106の設定は、IPビデオジャック装置10の初期インストール、または設定変更時に、外部よりシリアルインタフェース1051を通してコントローラ105に変換後のアドレス情報を与え、コントローラ105が制御インタフェース1051を介してそのアドレス情報を不揮発メモリ106に書き込むことに事により行う。
【0044】
不揮発メモリ106に設定されたアドレス情報を、以後「所定の情報」と呼ぶ。
【0045】
アドレス情報変換部102は、送信インタフェース1013経由で受信したIPパケットのアドレス情報を所定の情報に変換し、EthernetPHY部1033がリンクアップ状態である場合に、変換したアドレス情報を持つIPパケットをPHYインタフェース10331を経由してEthernetPHY部1033に送信する。さらにアドレス情報変換部102は上記のアドレス情報の変換を行わずに送信するバイパス機能を有する。
【0046】
同様にアドレス情報変換部102は、送信インタフェース1014経由で受信したIPパケットのアドレス情報を所定の情報に変換し、EthernetPHY部1034がリンクアップ状態である場合に、変換したアドレス情報を持つIPパケットをPHYインタフェース10341を経由してEthernetPHY部1034に送信する。さらにアドレス情報変換部102は上記のアドレス情報の変換を行わずに送信するバイパス機能を有する。
【0047】
EthernetPHY部1033は、受信したIPパケットをパッチコネクタ1022上で送信する。EthernetPHY部1034は、受信したIPパケットを運用コネクタ1021上で送信する。
【0048】
アドレス情報変換部102は、送信インタフェース1013または1014から受信したIPパケットのアドレス情報がどのような情報であっても、所定のアドレス情報に変換を行う。
【0049】
これによりパッチコネクタ1022、運用コネクタ1021に接続される機器は受信対象のIPパケットのアドレス情報を更新する必要が無い。
【0050】
ここでアドレス情報変換部102が用いる所定のアドレス情報は、前述したようにIPビデオジャック装置10の初期インストールまたは設定変更の時点でコントローラ105を介して外部より与えられる。
【0051】
アドレス情報変換部102で変換対象となるアドレス情報は、VLAN ID、IPアドレス、MACアドレス等のアドレス情報であるが、必要に応じてSSRC(Synchronization source)等のRTPヘッダの情報も変換対象にすることができる。
【0052】
次に、図1で説明したIPビデオジャック装置10がハーフノーマルのビデオジャックに相当する機能を実行する動作の例を説明する。ハーフノーマルでは、IPビデオジャック装置10は、入力用のコネクタが受信したIPストリームを、接続された複数の出力用のコネクタに出力する。
【0053】
ハーフノーマルのビデオジャックは、次の機能を行う。
(1)入力用のパッチコネクタに信号が接続されていない場合、入力用の運用コネクタの信号を出力用の運用コネクタに流す。(ケース1)
(2)出力用のパッチコネクタに出力ケーブルが接続された場合には、入力用の運用コネクタの信号を出力用のパッチコネクタにも流す。(ケース2)
(3)入力用のパッチコネクタに信号が接続された場合、入力用のパッチコネクタの信号を、出力用の運用コネクタに流す。(ケース3)
【0054】
IPストリームに対して、これらの機能はIPビデオジャック装置10内のIPパケットの転送ルートを制御する(IPパケットのアドレス情報を変換する)事で実現する。
【0055】
図2はストリーム監視部104がEthernetPHY1032、1033からのリンク情報がリンク断を示している事を認識している場合を示しており、ストリーム監視部104はルート切り替え部101に対して、EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを、送信インタフェース1014を経てアドレス情報変換部102に送信する事を指示する。
【0056】
アドレス情報変換部102は、ルート切り替え部101から送られたIPパケットのVLAN ID、MACヘッダ、IPヘッダ、必要とあればRTPヘッダ内の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報(図2内のA)を所定のアドレス情報(図2内のB)に書き替え、チェックサム、FCS(Frame Check Sequence)を再計算し、IPパケットを再構築し、EthernetPHY1034を経由して運用コネクタ1021上に送信する。アドレス情報変換部102の不揮発メモリ106内の送信元アドレス情報と送信先アドレス情報を運用コネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なアドレス情報に設定しておくことで、出力用の運用コネクタに接続される機器は受信対象のIPパケットのアドレス情報の設定を変更する必要は無い。運用コネクタ1011から受信するIPパケットをアドレス変換しないでそのまま運用コネクタ1021上に送信する場合にはアドレス情報変換部102のバイパス機能を用いて、アドレス情報の変更を行わないで送信する。この場合には図2内のAと図2内のBは同じとなる。
【0057】
これにより、入力用の運用コネクタで受信するIPストリームのペイロードが出力用の運用コネクタから出力される事になる(図2内の201のルートでの転送)。
【0058】
IPパケットのアドレス情報は常に運用コネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なものとなる。
【0059】
すなわち、ハーフノーマルのビデオジャックのケース1と同等の機能を果たすことになる。
【0060】
図3はストリーム監視部104がEthernetPHY1032からのリンク情報がリンク断を示しており、EthernetPHY1033からのリンク情報がリンクアップを示している事を認識している場合を示しており、ストリーム監視部104はルート切り替え部101に対して、EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを、送信インタフェース1014を経てアドレス情報変換部102に送信する事と、EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを、送信インタフェース1013を経てアドレス情報変換部102に送信する事を指示する。
【0061】
アドレス情報変換部102は、ルート切り替え部101から送信インタフェース1014を経て送られたIPパケットのVLAN ID、MACヘッダ、IPヘッダ、必要とあればRTPヘッダ内の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報(図3内のA)を所定のアドレス情報(図3内のB)に書き替え、チェックサム、FCS(Frame Check Sequence)を再計算し、IPパケットを再構築し、EthernetPHY1034を経由して運用コネクタ1021上に送信する(図3内の201のルートでの転送)。運用コネクタ1011から受信するIPパケットをアドレス変換しないでそのまま運用コネクタ1021上に送信する場合にはアドレス情報変換部102のバイパス機能を用いて、アドレス情報の変更を行わないで送信する。この場合には図2内のAと図2内のBは同じとなる。
【0062】
また、アドレス情報変換部102は、ルート切り替え部101から送信インタフェース1013を経て送られたIPパケットのVLAN ID、MACヘッダ、IPヘッダ、必要とあればRTPヘッダ内の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報(図3内のA)を所定のアドレス情報(図3内のC)に書き替え、チェックサム、FCS(Frame Check Sequence)を再計算し、IPパケットを再構築し、EthernetPHY1033を経由してパッチコネクタ1022上に送信する(図3内の301のルートでの転送)。アドレス情報変換部102の不揮発メモリ106内の送信元アドレス情報と送信先アドレス情報をパッチコネクタ1022に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なアドレス情報に設定しておくことで、出力用のパッチコネクタに接続される機器は受信対象のIPパケットのアドレス情報の設定を変更する必要は無い。
【0063】
これにより、入力用の運用コネクタで受信するIPストリームのペイロードが出力用の運用コネクタから出力されるとともに、出力用のパッチコネクタから入力用の運用コネクタで受信するIPストリームのペイロードが出力される事になる。
【0064】
IPパケットのアドレス情報は常にパッチコネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なものとなる。
【0065】
すなわち、図3の301については、ハーフノーマルのビデオジャックのケース2と同等の機能を果たすことになる。
【0066】
図4はストリーム監視部104がEthernetPHY1032および1033からのリンク情報がリンクアップを示している事を認識している場合を示しており、ストリーム監視部104はルート切り替え部101に対して、EthernetPHY部1032から受信したIPパケットを、送信インタフェース1014を経てアドレス情報変換部102に送信する事と、EthernetPHY部1031から受信したIPパケットを送信インタフェース1013を経てアドレス情報変換部に送信する事を指示する。
【0067】
アドレス情報変換部102は、ルート切り替え部101から送信インタフェース1014を経て送られたIPパケットのVLAN ID、MACヘッダ、IPヘッダ、必要とあればRTPヘッダ内の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報(図4内のD)を所定のアドレス情報(図4内のB)に書き替え、チェックサム、FCS(Frame Check Sequence)を再計算し、IPパケットを再構築し、EthernetPHY1034を経由して運用コネクタ1021上に送信する(図4内の401のルートでの転送)。アドレス情報変換部102の不揮発メモリ106内の送信元アドレス情報と送信先アドレス情報を運用コネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なアドレス情報に設定しておくことで、出力用の運用コネクタに接続される機器は受信対象のIPパケットのアドレス情報の設定を変更する必要は無い。運用コネクタ1011から受信するIPパケットをアドレス変換しないでそのまま運用コネクタ1021上に送信する場合にはアドレス情報変換部102のバイパス機能を用いて、アドレス情報の変更を行わないで送信する。この場合には図2内のAと図2内のBは同じとなる。
【0068】
また、アドレス情報変換部102は、ルート切り替え部101から送信インタフェース1013を経て送られたIPパケットのVLAN ID、MACヘッダ、IPヘッダ、必要とあればRTPヘッダ内の送信元アドレス情報および送信先アドレス情報(図4内のA)を所定のアドレス情報(図4内のC)に書き替え、チェックサム、FCS(Frame Check Sequence)を再計算し、IPパケットを再構築し、EthernetPHY1033を経由して運用コネクタ1022上に送信する(図4内の301のルートでの転送)。アドレス情報変換部102の不揮発メモリ106内の送信元アドレス情報と送信先アドレス情報をパッチコネクタ1022に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なアドレス情報に設定しておくことで、出力用のパッチコネクタに接続される機器は受信対象のIPパケットのアドレス情報の設定を変更する必要は無い。
【0069】
これにより、入力用のパッチコネクタで受信するIPストリームのペイロードが出力用の運用コネクタから出力されるとともに出力用のパッチコネクタから入力用の運用コネクタで受信するIPストリームのペイロードが出力される事になる。
【0070】
運用コネクタ1021から送られるIPパケットのアドレス情報は常に運用コネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なものとなり、パッチコネクタ1021から送られるIPパケットのアドレス情報は常にパッチコネクタ1021に接続された受信機器(つまり、IPパケットの送信先、図示せず)が受信可能なものとなる。
【0071】
すなわち、図4の401については、ハーフノーマルのビデオジャックのケース3と同等の機能を果たすことになる。
【0072】
以上、図1で説明したIPビデオジャック装置10がハーフノーマルのビデオジャックに相当する機能を実行する動作の例を説明した。
【0073】
ビデオジャックのフルノーマルは、次の機能を行う。
(1)入力用のパッチコネクタと出力用のパッチコネクタの両方にケーブルが接続されていない場合、入力用の運用コネクタの信号を出力用の運用コネクタに流す。(ケース1)
(2)出力用のパッチコネクタに出力ケーブルが接続された場合には、入力用の運用コネクタの信号を出力用のパッチコネクタにも流し、出力用の運用コネクタへの出力を遮断する。(ケース4)
(3)入力用のパッチコネクタに信号が接続された場合、入力用のパッチコネクタの信号を、出力用の運用コネクタに流す。(ケース3)
【0074】
従って、IPビデオジャック装置10がフルノーマルのビデオジャックに相当する機能を実行する動作については、ケース4においてハーフノーマルの図3に示すケース2と異なり、出力用の運用コネクタへの出力をしないこと以外はハーフノーマルの場合と同じである。
【0075】
図5にフルノーマルのビデオジャックのケース4に相当する機能の例を示す。
【0076】
上記の説明では、ストリーム監視部104がルート切り替えを行う契機として各EthernetPHY部でのリンクアップ情報、リンク断情報を用いてきたが、それらの情報の替りとして、またはそれらの情報に加えて対応するEthernetPHY部から正常なパケットフォーマットを持ちFCSエラー等のないIPパケットを受信しているかの情報を用いることもできる。
【0077】
更にその正常なIPパケットを受信しているかの情報を正常なヘッダ、ペイロードを持つRTPパケットを受信しているかの情報まで絞り込んで用いる事もできる。
【0078】
図6は本発明のIPビデオジャック装置の物理的な構成の実施形態を示している。
【0079】
IPビデオジャック装置10は前面にパッチコネクタ1012(RJ45)と1022(RJ45)、およびシリアルインタフェース1051用のコネクタを備え、背面に運用コネクタ1011(RJ45)と1021を(RJ45)を備え、DC電源供給コネクタ61も備えている。
【0080】
IPビデオジャック装置10はパッチポート二つと運用ポート二つからなり、複数個を用いて、IPビデオパッチパッチパネルを構成する事も可能である。この場合、IPビデオパッチパネルにAC電源を搭載して、各IPビデオジャック装置のDC電源供給コネクタに電力供給する事もできる。
【0081】
図7は本発明のIPビデオジャック装置の物理的な構成の別の実施形態を示している。
【0082】
多ポートのパッチポートと多ポートの運用ポートから成り、IPビデオジャック装置が1つのIPビデオパッチパネルとして動作する。
【0083】
本実施形態ではEthernetPHY部を独立した構成としているが、イーサネットポートを有するLSIを用いてルート切り替え部またはストリーム監視部、またはアドレス情報変換部と一体化した構成を取ることも可能である。
【0084】
以上、説明したように本実施形態では、IPパケットを用いる映像処理システムにおいてビデオパッチパネルを用いる作業者が従来の作業フローに追加の手順を加えず、作業者がIPに関する知識を持っていなくても、人手による映像信号の物理的な切り替え、またはケーブルを接続しての映像信号の監視を可能とするIPビデオジャック装置およびIPビデオパッチパネルを提供している。
【0085】
本明細書および図面において開示される実施形態は一例にすぎず、本発明の技術的範囲を定める際に、本開示の内容に限定して解釈されるべきではない。説明のため各処理を分けて記載したが、各処理を統合、連携させ、それぞれが有する処理の一部または全部を他方が行うように実装され得る。
【符号の説明】
【0086】
10 IPビデオジャック装置
101 ルート切り替え部
1011 入力用運用コネクタ
1021 出力用運用コネクタ
1012 入力用パッチコネクタ
1022 出力用パッチコネクタ
1013 送信インタフェース
1014 送信インタフェース
1041 ルート指示信号
102 アドレス情報変換部
1031 EthernetPHY部
1032 EthernetPHY部
1033 EthernetPHY部
1034 EthernetPHY部
10311 PHYインタフェース
10321 PHYインタフェース
10331 PHYインタフェース
10341 PHYインタフェース
104 ストリーム監視部
105 コントローラ
1051 シリアルインタフェース
1052 制御インタフェース
106 不揮発メモリ
201 転送ルート
301 転送ルート
401 転送ルート
61 DC電源供給コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7