(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043031
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】水銀低減廃プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150506
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 萌
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AB10
4F401AC05
4F401AC06
4F401AC08
4F401BA04
4F401CA23
4F401CA25
4F401CA28
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】加熱を要せずとも水銀含有量を低減可能な水銀低減廃プラスチックの製造方法を提供すること。
【解決手段】廃プラスチックを風力選別及び篩選別から選択される1以上に供する工程を含む、水銀低減廃プラスチックの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを風力選別及び篩選別から選択される1以上に供する工程を含む、水銀低減廃プラスチックの製造方法。
【請求項2】
廃プラスチックを風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、重量物を回収する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記軽量物を篩選別に供して篩上を回収する、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記軽量物の篩選別に使用する篩の篩目が、0.5mm以上である、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記篩下を磁力選別に供して非磁着物を回収する、請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
前記非磁着物を篩選別に供して篩上を回収する、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記非磁着物の篩選別に使用する篩の篩目が、前記軽量物の篩選別に使用する篩の篩目よりも小さい、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収する、請求項2記載の製造方法。
【請求項9】
廃プラスチックを篩選別に供して篩上と篩下に分離し、篩上を回収する、請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
前記廃プラスチックの篩選別に使用する篩の篩目が、20mm以上である、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記篩下を篩選別に供して篩上を回収する、請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
前記篩下の篩選別に使用する篩の篩目が、0.5mm以上である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記篩上を風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、軽量物を回収する、請求項11又は12記載の製造方法。
【請求項14】
前記重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収する、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法により得られた水銀低減廃プラスチックを加熱する、水銀低減廃プラスチック炭化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀低減廃プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント工場では、二酸化炭素排出量削減及び資源の有効活用の観点から、産業廃棄物等として廃棄される廃プラスチックをそのまま又は、加熱炉で加熱して有機成分を炭化し、エネルギー代替燃料としてリサイクルしている。しかし、自動車シュレッダーダスト等の廃プラスチックには、水銀を使用した電子部品が含まれているため、このような廃プラスチックを加熱すると、水銀が揮発性を有することから、その大半が排ガス側に移行する。そして、排ガスで回収したばいじん等に水銀が濃縮するため、水銀含有ばいじん等の取扱いに注意が必要となる。
【0003】
そこで、廃プラスチックを加熱し発生する水銀を除去する技術が検討されてきた。例えば、脱塩炉において塩素と水銀を含有する有機性廃棄物を低酸素雰囲気で加熱して発生した塩素成分と水銀とを、脱塩炉で同時に発生した有機ガスと燃焼炉で燃焼することで、水銀を水溶性の塩化水銀に転化し、塩化水銀を吸収液に吸収させた後、不溶化して沈殿物として回収する方法が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-33593号公報
【特許文献2】特開2021-17629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、廃プラスチックの水銀含有量が多くなると、加熱により排出される排ガス中の水銀濃度も高くなるため、大気中に放出される水銀量が多くなることが懸念され、また水銀含有ばいじん等の処分基準を超過する虞もある。
従来、廃プラスチックに含まれる水銀について、加熱によりガス状水銀として廃プラスチックから除去し、そのガス状水銀を浄化する方法が検討されているだけで、物理的に選別して廃プラスチックから水銀を除去することは検討されていない。
本発明の課題は、加熱を要せずとも水銀含有量を低減可能な水銀低減廃プラスチックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、廃プラスチックに含まれる水銀の分布について調べたところ、水銀は粒度の小さな細粒群に多く含まれていることを見出した。そして、廃プラスチックを、物理選別の中でも風力選別及び篩選別から選択される1以上を含む工程に供し、廃プラスチックから水銀が濃縮している細粒群を分離することで、加熱することなく水銀含有量が低減された廃プラスチックを製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔15〕を提供するものである。
〔1〕廃プラスチックを風力選別及び篩選別から選択される1以上に供する工程を含む、水銀低減廃プラスチックの製造方法。
〔2〕廃プラスチックを風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、重量物を回収する、前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕前記軽量物を篩選別に供して篩上を回収する、前記〔2〕記載の製造方法。
〔4〕前記軽量物の篩選別に使用する篩の篩目が、0.5mm以上である、前記〔3〕記載の製造方法。
〔5〕前記篩下を磁力選別に供して非磁着物を回収する、前記〔3〕又は〔4〕記載の製造方法。
〔6〕前記非磁着物を篩選別に供して篩上を回収する、前記〔5〕記載の製造方法。
〔7〕前記非磁着物の篩選別に使用する篩の篩目が、前記軽量物の篩選別に使用する篩の篩目よりも小さい、前記〔6〕記載の製造方法。
〔8〕前記重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収する、前記〔2〕記載の製造方法。
〔9〕廃プラスチックを篩選別に供して篩上と篩下に分離し、篩上を回収する、前記〔1〕記載の製造方法。
〔10〕前記廃プラスチックの篩選別に使用する篩の篩目が、20mm以上である、前記〔9〕記載の製造方法。
〔11〕前記篩下を篩選別に供して篩上を回収する、前記〔9〕又は〔10〕記載の製造方法。
〔12〕前記篩下の篩選別に使用する篩の篩目が、0.5mm以上である、前記〔11〕記載の製造方法。
〔13〕前記篩上を風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、軽量物を回収する、前記〔11〕又は〔12〕記載の製造方法。
〔14〕前記重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収する、前記〔13〕記載の製造方法。
〔15〕前記〔1〕~〔14〕のいずれか一に記載の製造方法により得られた水銀低減廃プラスチックを加熱する、水銀低減廃プラスチック炭化物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱を要せずとも水銀含有量が低減された廃プラスチックを簡便な操作で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の水銀低減廃プラスチックの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の水銀低減廃プラスチックの製造方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<水銀低減廃プラスチックの製造方法>
本発明の水銀低減廃プラスチックの製造方法は、廃プラスチックを風力選別及び篩選別から選択される1以上を含む工程に供することを特徴とする。風力選別及び篩選別の両方を行う場合、任意の順序で行うことが可能である。また、風力選別及び篩選別は、それぞれ2回以上行っても構わない。
以下、本発明の水銀低減廃プラスチックの製造方法の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る水銀低減廃プラスチックの製造方法は、廃プラスチックを風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、重量物を回収するものである。本実施形態に係る水銀低減廃プラスチックの製造方法のフローチャートを
図1に示す。
本実施形態に係る製造方法は、廃プラスチック中で粒度の小さな細粒群に水銀が多く含まれていることから、廃プラスチックを風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、水銀が低減された粗粒群である重量物を回収するものである。水銀が低減されている重量物を水銀低減廃プラスチック炭化物の製造原料として使用することで、加熱炉内で加熱したときに、排気ガス中の水銀含有量が大幅に低減され、水銀含有ばいじん等の処分も容易になる。なお、軽量物には水銀が濃縮されているが、原料として使用した廃プラスチックよりも水銀量が低減されているため、水銀低減廃プラスチック炭化物の製造原料として使用することが可能である。
【0012】
(廃プラスチック)
廃プラスチックとしては、プラスチックを含む廃棄物であれば特に限定されないが、例えば、使用済みのプラスチック製品や、工場等でのプラスチックの製造・加工時に生じる屑や不良品等を使用することができる。廃プラスチックの具体例としては、例えば、シュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチックを挙げることができる。ここで、本明細書において「シュレッダーダスト」とは、工業用シュレーダーで廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器等を破砕し、金属を回収した後に廃棄される破片の混合物をいう。本明細書では、自動車シュレッダーダストを「ASR」と称し、自動車以外のシュレッダーダストを「SR」と称する。このようなシュレーダーダストには、水銀を使用した電子部品、例えば、HIDランプ、傾斜感知用スイッチ、ディスプレイの蛍光管バックライト等が含まれている。なお、シュレッダーダストには、ゴム、繊維、紙、木くず、ガラス等のプラスチック以外の異物が含まれていても構わない。また、廃プラスチックは、2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、廃プラスチックとしては、シュレッダーダストが好ましく、ASR及びSRから選択される1以上が更に好ましい。シュレッダーダストには、水銀を使用した電子部品が多く含まれているため、本発明の効果を享受しやすい。
【0013】
廃プラスチックの大きさは特に限定されないが、水銀低減の観点から、長径が50mm以下であることが好ましい。ここで、本明細書において「廃プラスチックの長径」とは、廃プラスチックのうち、最も大きな廃プラスチックを採取し、廃プラスチックの径が最大となる箇所を測定した値である。
【0014】
(風力選別)
風力選別は、公知の風力選別機を用いることができる。風力選別機としては、例えば、ジグザグ式、内部循環式のいずれでもよく、特に限定されない。
風力選別する際には、水銀を含む細粒群が軽量物の主体になるように、風力選別の風速を設定することが好ましい。具体的には、風速は、5m/s以上が好ましく、7m/s以上がより好ましく、8m/s以上が更に好ましい。なお、風速の上限値は、廃プラスチックの種類により適宜設定可能であるが、風速が速過ぎると軽量物側がほぼ全量となり、選別の意義が薄れるため、30m/s以下が好ましく、25m/s以下がより好ましく、20m/s以下が更に好ましい。
【0015】
(第1の篩選別)
本実施形態においては、風力選別により分離した軽量物を第1の篩選別に供して篩上と篩下とに分離し、篩上を回収してもよい。第1の篩い選別により、水銀がより濃縮された細粒群が篩下として分離されるため、水銀が低減された廃プラスチックを篩上として回収することができる。
【0016】
篩選別は、公知の篩選別機を用いることができる。篩選別機としては、例えば、振動式、面内運動式、回転式、固定式のいずれでもよい。
【0017】
篩目の種類としては、例えば、金属製又は非金属製の織網、打ち抜き網、溶接網、ウェッジワイヤースクリーン、櫛歯が挙げられ、廃プラスチックの種類により適宜選択することができる。
【0018】
篩目は、処理効率の観点から、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましい。また、篩目が粗過ぎると水銀低減効果が低下するため、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましく、12.5mm以下が更に好ましい。
【0019】
(磁力選別)
本実施形態においては、第1の篩選別により分離した篩下を磁力選別に供して磁着物と非磁着物に分離し、非磁着物を回収してもよい。第1の篩選別の篩下を磁力選別することにより、水銀がより一層低減された廃プラスチックを非磁着物として回収することができる。
【0020】
磁力選別は、公知の磁力選別機を用いることができる。磁力選別機としては、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別では、例えば、内側に永久磁石が配置されたドラム上に篩下を供給し、篩下に含まれる磁着物がドラム表面に吸着され、ドラムの回転により運ばれ、磁着物排出口から排出される。他方、篩下に含まれる非磁着物は、ドラムの回転によりドラム表面より離反・落下し、非磁着物排出口から排出される。
磁力選別機の表面磁束密度は、金属分離の観点から、1000ガウス以上が好ましく、そして10000ガウス以下が好ましい。
【0021】
(第2の篩選別)
本実施形態においては、磁力選別により分離した非磁着物を第2の篩選別に供して篩上と篩下に分離し、篩上を回収してもよい。これにより、水銀がより濃縮された細粒群が篩下として分離されるため、水銀がより一層低減された廃プラスチックを篩上として回収することができる。
篩選別は、公知の篩選別機を用いることができる。なお、篩選別機及び篩目の種類の具体例は、上記において説明したとおりである。
【0022】
篩目は、水銀低減の観点から、第1の篩選別の篩目よりも小さいことが好ましい。例えば、篩目は、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。なお、粗過ぎると水銀低減効果が低下するため、篩目は、10mm以下が好ましく、5mm以下が更に好ましい。
【0023】
(磁力選別・渦電流選別)
本実施形態においては、風力選別により分離した重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収してもよい。すなわち、本工程においては、風力選別により分離した重量物を、先ず磁力選別に供して磁着物と非磁着物に分離し、分離された非磁着物を渦電流選別に供して金属と非金属とに分離し、非金属を回収する。これにより、風力選別により分離した重量物から金属、ガラス等の異物を除去しつつ、水銀が低減された可燃物を非金属として回収することができる。
【0024】
磁力選別は、公知の磁力選別機を用いることができる。磁力選別機の具体例は、上記において説明したとおりである。
磁力選別機の表面磁束密度は、金属分離の観点から、1000ガウス以上が好ましく、そして10000ガウス以下が好ましい。
【0025】
渦電流選別は、公知の渦電流選別機を用いることできる。渦電流選別機としては、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式、回転円筒式を挙げることができる。
渦電流選別においては、例えば、コンベヤベルトの先端側に設けられた回転磁石体の移動磁界の電磁誘導作用を受けて内部に生じる誘導電流と移動磁界との相互作用によって、コンベヤベルトの先端側に搬送された非磁着物に回転磁石体の回転方向に推力を与え、コンベヤベルトの表面からこの推力と導電性物質に作用する重力との合成力の方向に導電性物質を飛び出させて除去し、非金属を回収する。
回転磁石体の回転数は、金属等の導電性物質分離の観点から、1500rpm以上が好ましく、3000rpm以上がより好ましく、4500rpm以上が更に好ましく、そして6000rpm以下が好ましく、5500rpm以下が更に好ましい。
【0026】
更に、本実施形態においては、
図1に示されるように、第1の篩選別の篩上を、上記において説明した磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収してもよい。すなわち、第1の篩選別の篩上を、先ず磁力選別に供して磁着物と非磁着物に分離し、分離された非磁着物を渦電流選別に供して金属と非金属とに分離し、非金属を回収することができる。これにより、第1の篩選別により分離した篩上から金属、ガラス等の異物を除去しつつ、水銀が低減された可燃物を非金属として回収することができる。なお、磁力選別及び渦電流選別の具体的態様は、上記において説明したとおりである。
【0027】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係る水銀低減廃プラスチックの製造方法は、廃プラスチックを第1の篩選別に供して篩上と篩下に分離し、篩上を回収する。本実施形態に係る水銀低減廃プラスチックの製造方法の一例を示すフローチャートを
図2に示す。
本実施形態に係る製造方法は、廃プラスチック中で粒度の小さな細粒群に水銀が多く含まれていることから、廃プラスチックを第1の篩選別に供して篩上と篩下とに分離し、水銀が濃縮された細粒群を篩下として分離するものである。水銀が低減されている篩上を水銀低減廃プラスチック炭化物の製造原料として使用することで、加熱炉内で加熱したときに、排気ガス中の水銀量が大幅に低減され、水銀含有ばいじん等の処分も容易になる。
【0028】
(廃プラスチック)
廃プラスチックとしては、プラスチックを含む廃棄物であれば特に限定されない。なお、廃プラスチックの具体的構成は、第1実施形態において説明したとおりである。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、シュレッダーダストが好ましく、ASR及びSRから選択される1以上が更に好ましい。
【0029】
(第1の篩選別)
篩選別は、公知の篩選別機を用いることができる。なお、篩選別機及び篩目の種類の具体例は、第1実施形態において説明したとおりである。
【0030】
篩目は、水銀低減の観点から、20mm以上が好ましく、25mm以上が更に好ましい。なお、篩目が粗過ぎると水銀低減効果が低下するため、50mm以下が好ましく、40mm以下が更に好ましい。
【0031】
(第2の篩選別)
本実施形態においては、第1の篩選別により分離した篩下を第2の篩選別に供して篩上と篩下とに分離し、篩上を回収してもよい。第2の篩選別により、水銀がより濃縮された細粒群が篩下として分離されるため、水銀が低減された廃プラスチックを篩上として回収することができる。
篩選別は、公知の篩選別機を用いることができる。なお、篩選別機及び篩目の種類の具体例は、第1実施形態において説明したとおりである。
【0032】
篩目は、水銀低減の観点から、第1の篩選別の篩目よりも小さいことが好ましい。例えば、篩目は、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましい。なお、篩目が粗過ぎると水銀低減効果が低下するため、15mm以下が好ましく、10mm以下が更に好ましい。
【0033】
(風力選別)
本実施形態においては、第2の篩選別により分離した篩上を風力選別に供して重量物と軽量物とに分離し、軽量物を回収してもよい。第2の篩選別の篩上を風力選別することにより、水銀がより一層低減された廃プラスチックを軽量物として回収することができる。
【0034】
風力選別は、公知の風力選別機を用いることができる。風力選別機の具体例は、第1実施形態において説明したとおりである。
風速は、水銀低減の観点から、5m/s以上が好ましく、7m/s以上がより好ましく、8m/s以上が更に好ましい。なお、風速の上限値は、廃プラスチックの種類により適宜設定可能であるが、風速が速過ぎると選別の意義が薄れるため、30m/s以下が好ましく、25m/s以下がより好ましく、20m/s以下が更に好ましい。
【0035】
(磁力選別・渦電流選別)
本実施形態においては、風力選別により分離した重量物を磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収してもよい。すなわち、本工程においては、風力選別により分離した重量物を、先ず磁力選別に供して磁着物と非磁着物に分離し、分離された非磁着物を渦電流選別に供して金属と非金属とに分離し、非金属を回収する。これにより、風力選別により分離した重量物から金属、ガラス等の異物を除去しつつ、水銀が低減された可燃物を非金属として回収することができる。
【0036】
磁力選別は、公知の磁力選別機を用いることができる。磁力選別機の具体例は、第1実施形態において説明したとおりである。
磁力選別機の表面磁束密度は、金属分離の観点から、1000ガウス以上が好ましく、そして10000ガウス以下が好ましい。
【0037】
渦電流選別は、公知の渦電流選別機を用いることできる。渦電流選別機の具体例は、第1実施形態において説明したとおりである。
回転磁石体の回転数は、金属等の導電性物質分離の観点から、1500rpm以上が好ましく、3000rpm以上がより好ましく、4500rpm以上が更に好ましく、そして6000rpm以下が好ましく、5500rpm以下が更に好ましい。
【0038】
以上、好適な第2実施形態について詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、第1の篩選別の篩上を、磁力選別及び渦電流選別に供して金属を除去し、非金属を回収してもよい。これにより、第1の篩選別により分離した篩上から金属、ガラス等の異物を除去しつつ、水銀が低減された可燃物を非金属として回収することができる。
【0039】
<水銀低減廃プラスチック炭化物の製造方法>
本発明の水銀低減廃プラスチック炭化物の製造方法は、本発明の方法により製造された水銀低減廃プラスチックを加熱するものである。ここで、本明細書において「廃プラスチック炭化物」とは、廃プラスチックを無酸素又は低酸素雰囲気下で加熱して有機成分を炭化物としたものをいう。
本発明で使用する廃プラスチックは、加熱する前に予め水銀が低減されているため、加熱炉内で加熱したときに排気ガス中の水銀量が大幅に低減され、水銀含有ばいじん等の処分も容易である。
【0040】
廃プラスチックの加熱は、加熱装置を使用することができる。
加熱装置としては、廃プラスチックを収容し、かつ所望の温度に設定できれば特に限定されないが、例えば、固定炉、ストーカー炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、堅型炉、多段炉等を挙げることができる。また、加熱炉の形状は特に限定されず、例えば、筒状、横断面矩形状等の適宜の形状を取り得る。なお、加熱炉内には、廃プラスチックの供給口から排出口に向かって廃プラスチックを搬送するためのコンベヤを装着してもよい。
加熱温度は、廃プラスチックを熱分解して炭化できれば特に限定されないが、炭化物の熱量残存を考慮すると、300℃以上が好ましく、350℃以上が更に好ましく、そして650℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、550℃以下が更に好ましく、500℃以下がより更に好ましい。
加熱時間は、廃プラスチックを熱分解して炭化できれば特に限定されないが、30分以上が好ましく、45分以上がより好ましく、60分以上が更に好ましく、そして150分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、90分以下が更に好ましい。
【0041】
このようにして得られた廃プラスチック炭化物を、例えば、破砕、物理選別等により粒度調整し、固体燃料として使用することができる。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
1.本実施例で使用した廃プラスチック
廃プラスチックとして電化製品等を解体・破砕して回収されたシュレッダーダストを使用した。
【0044】
2.水銀の分析
水銀の分析は、加熱気化吸光光度法を用いた。装置には、日本インスツルメンツ株式会社製MA-2を用いた。
【0045】
実施例1
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離し、軽量物を回収した。そして、軽量物の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。なお、本実施例において「回収率」は廃プラスチックの使用量を基準とし、「水銀含有量」は回収物(実施例1は軽量物)中の水銀含有量である。また、「水銀残存率」は、下記式(1)により算出するものとする。
【0046】
水銀残存率(重量%)=A×B/(C×1.0)×100 (1)
【0047】
〔式中、Aは、回収物中の水銀含有量(mg/kg)を示し、Bは、回収物の回収率(重量%)を100で除した値を示し、Cは、原料として使用した廃プラスチック中の水銀含有量(重量%)を示す。〕
【0048】
実施例2
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離し、重量物を回収した。そして、重量物の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例3
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離した。次いで、軽量物を篩目5mmの篩で篩選別して篩上と篩下に分離し、篩上を回収した。そして、篩上の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例4
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離した。次いで、軽量物を篩目5mmの篩で第1の篩選別を行い、篩上と篩下とに分離して篩上を回収した。
また、第1の篩選別により分離した篩下を、ドラム型磁力選別機(3000ガウス)に供給して磁力選別を行い、磁着物と非磁着物とに分離した。次いで、非磁着物を篩目1mmの篩で第2の篩選別を行い、篩上と篩下とに分離して篩上を回収した。
そして、第1の篩選別により分離した篩上と、第2の篩選別により分離した篩上を混合し、混合物の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例5
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離した。次いで、軽量物を篩目5mmの篩で篩選別して篩上と篩下に分離し、篩上を回収した。
また、風力選別により分離した重量物を、ドラム型磁力選別機(3000ガウス)に供給して磁力選別を行い、磁着物と非磁着物とに分離した。次いで、非磁着物を渦電流選別して金属と非金属(可燃分)とに分離し、非金属(可燃分)を回収した。
そして、篩選別により分離した篩上と、渦電流選別により分離した非金属(可燃分)を混合し、混合物の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。
【0052】
実施例6
廃プラスチックを風力選別機により10m/sにて風力選別して重量物と軽量物とに分離した。次いで、軽量物を篩目5mmの篩で第1の篩選別を行い、篩上と篩下に分離した。次いで、第1の篩選別により分離した篩上を、ドラム型磁力選別機(3000ガウス)に供給して磁力選別を行い、磁着物と非磁着物とに分離した。次いで、非磁着物を渦電流選別して金属と非金属(可燃分)とに分離し、非金属(可燃分)を回収した。
また、第1の篩選別により分離した篩下を、ドラム型磁力選別機(3000ガウス)に供給して磁力選別を行い、磁着物と非磁着物とに分離した。次いで、非磁着物を篩目1mmの篩で第2の篩選別を行い、篩上と篩下とに分離して篩上を回収した。
更に、風力選別機により分離した重量物を、ドラム型磁力選別機(3000ガウス)に供給して磁力選別を行い、磁着物と非磁着物とに分離した。次いで、非磁着物を渦電流選別して金属と非金属(可燃分)とに分離し、非金属(可燃分)を回収した。
そして、第1の篩選別により分離した篩上と、風力選別機により分離した重量物について磁力選別・渦電流選別により分離した非金属(可燃分)と、第2の篩選別により分離して篩上とを混合し、混合物の回収率、水銀含有量及び水銀残存率を算出した。その結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
原料として使用した廃プラスチックについて水銀含有量を分析した。なお、回収率、水銀含有量は、いずれも100とした。
【0054】
【0055】
表1から、廃プラスチックを風力選別及び篩選別から選択される1以上を含む工程に供し、水銀が濃縮している細粒群を廃プラスチックから分離することで、加熱することなく水銀含有量が低減された廃プラスチックを製造できることがわかる。