(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043043
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】トーショナルダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/126 20060101AFI20230320BHJP
F16F 15/12 20060101ALI20230320BHJP
F16H 55/36 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
F16F15/126 B
F16F15/12 S
F16H55/36 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150524
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 信彦
【テーマコード(参考)】
3J031
【Fターム(参考)】
3J031AA04
3J031BA10
3J031CA03
(57)【要約】
【課題】防音板の偏心を抑制する。
【解決手段】トーショナルダンパー10は、シャフト2に取り付けられるハブ20と、ハブの外周に装着されるリング状の弾性体30と、リング状の弾性体の外周に設けられるリング状のダンパーマス40と、ダンパーマスに保持され、シャフトの軸線方向においてハブに対してシャフトとは反対側に配置される円盤状の防音板50と、を備える。ハブは、シャフトに取り付けられるボス21と、ボスからシャフトの径方向に延びる連結部22と、連結部を介してボスに連結されハブの外周を成すリム23と、を有する。ダンパーマスは、シャフトの軸線方向においてリムよりもシャフトとは反対側に張り出し防音板の外周面を保持する保持部42を有する。防音板の外径は、リムの外径よりも大きく、防音板は、防音板の径方向において同一の板厚を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに取り付けられるハブと、
前記ハブの外周に装着されるリング状の弾性体と、
前記リング状の弾性体の外周に設けられるリング状のダンパーマスと、
前記ダンパーマスに保持され、前記シャフトの軸線方向において前記ハブに対して前記シャフトとは反対側に配置される円盤状の防音板と、を備え、
前記ハブは、
前記シャフトに取り付けられるボスと、
前記ボスから前記シャフトの径方向に延びる連結部と、
前記連結部を介して前記ボスに連結され前記ハブの外周を成すリムと、を有し、
前記ダンパーマスは、
前記シャフトの軸線方向において前記リムよりも前記シャフトとは反対側に張り出し前記防音板の外周面を保持する保持部を有し、
前記防音板の外径は、前記リムの外径よりも大きく、
前記防音板は、前記防音板の径方向において同一の板厚を有する、トーショナルダンパー。
【請求項2】
前記防音板の外周面には、前記防音板の径方向に張り出す係合突起が形成され、
前記ダンパーマスの前記保持部は、前記防音板の径方向において、前記防音板の前記外周面と対向する内周面を有し、
前記保持部の前記内周面には、前記防音板の係合突起を受ける係合溝が形成されている、請求項1に記載のトーショナルダンパー。
【請求項3】
前記防音板の外周面には、前記防音板の周方向において前記保持部に対する相対移動を防止する空転防止突起が形成され、
前記保持部には、前記空転防止突起を受ける切欠きが形成されている、
前記切欠きは、前記シャフトの軸線方向において前記保持部の前記シャフトとは反対側の端面から凹むと共に、前記防音板の径方向において前記保持部を貫通するように形成されている、請求項1又は2に記載のトーショナルダンパー。
【請求項4】
前記防音板は、前記防音板の板厚方向に離間する正面及び背面を有し、
前記防音板の背面は、前記シャフトの軸線方向において前記シャフトに近い方に位置し、
前記防音板の前記背面には、前記シャフトの軸線方向に張り出す複数の回り止めが前記防音板の周方向に等間隔で形成され、
前記ダンパーマスには、前記シャフトの軸線方向において前記保持部よりも前記シャフトに近い方に位置し前記防音板の前記背面の外周部分と対向する段差面を有し、
前記段差面には、前記複数の回り止めをそれぞれ受ける複数の凹部が形成されている、請求項2に記載のトーショナルダンパー。
【請求項5】
前記段差面には、前記ダンパーマスの回転におけるバランス調整のためのバランス穴が形成され、
前記バランス穴は、前記防音板の周方向において前記複数の回り止め間の中間に位置する、請求項4に記載のトーショナルダンパー。
【請求項6】
前記リング状の弾性体は、第1ゴムから形成され、
前記防音板は、前記第1ゴムよりも硬い第2ゴムから形成されている、請求項1~5の何れか一項に記載のトーショナルダンパー。
【請求項7】
前記防音板は、前記防音板の板厚方向に離間する正面及び背面を有し、
前記防音板の前記背面には、緩衝材が設けられている、請求項1~6の何れか一項に記載のトーショナルダンパー。
【請求項8】
シャフトに取り付けられるハブと、
前記ハブの外周に装着されるリング状の弾性体と、
前記リング状の弾性体の外周に設けられるリング状のダンパーマスと、
前記シャフトの軸線方向において前記ハブに対して前記シャフトとは反対側に配置される円盤状の防音板と、を備え、
前記防音板は、前記防音板の板厚方向に離間する正面及び背面を有し、
前記防音板の前記背面には、緩衝材が設けられている、トーショナルダンパー。
【請求項9】
前記シャフトと同軸に配置され、前記シャフトの軸線方向において前記ハブを前記シャフトに押し当てて、前記ハブを前記シャフトに固定するセンターボルトを有し、
前記緩衝材は、前記シャフトの軸線方向に見て、前記センターボルトに重なる位置に配置される、請求項8に記載のトーショナルダンパー。
【請求項10】
前記ハブは、
前記シャフトに取り付けられるボスと、
前記ボスから前記シャフトの径方向に延びる連結部と、
前記連結部を介して前記ボスに連結され前記ハブの外周を成すリムと、を有し、
前記リムは、前記シャフトの軸線方向において前記シャフトとは反対側に張り出し前記防音板を保持する保持部を有し、
前記防音板の外径は、前記リムの外径よりも小さく、
前記防音板の外周面には、前記防音板の径方向に張り出す係合突起が形成され、
前記リムの前記保持部は、前記防音板の径方向において、前記防音板の前記外周面と対向する内周面を有し、
前記保持部の前記内周面には、前記防音板の係合突起を受ける係合溝が形成されている、請求項8又は9に記載のトーショナルダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トーショナルダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
トーショナルダンパーは、例えば、シャフトに取り付けられるハブと、ハブに対してゴム状の弾性体を介して連結される振動リングと、振動リングに装着される円盤状の防音カバーとを備える。特許文献1に記載のトーショナルダンパーは、外周部に蛇腹構造を有する防音カバーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係るトーショナルダンパーでは、防音カバーの径方向の中央部に厚肉化された慣性マス部が形成され、この慣性マス部の外周に蛇腹構造が形成されている。蛇腹構造の板厚は、慣性マス部の板厚よりも薄い。蛇腹構造は防音カバーの軸方向の剛性を弱める目的で形成されているが、蛇腹構造は結果的に径方向にも伸縮可能となっている。そのため、トーショナルダンパーが高速回転した際に遠心力によって、防音カバーの中央部の慣性マス部が大きく偏心するおそれがある。本開示は、防音カバーの偏心を抑制することが可能なトーショナルダンパーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のトーショナルダンパーは、シャフトに取り付けられるハブと、ハブの外周に装着されるリング状の弾性体と、リング状の弾性体の外周に設けられるリング状のダンパーマスと、ダンパーマスに保持され、シャフトの軸線方向においてハブに対してシャフトとは反対側に配置される円盤状の防音板と、を備える。ハブは、シャフトに取り付けられるボスと、ボスからシャフトの径方向に延びる連結部と、連結部を介してボスに連結されハブの外周を成すリムと、を有する。ダンパーマスは、シャフトの軸線方向においてリムよりもシャフトとは反対側に張り出し防音板の外周面を保持する保持部を有する。防音板の外径は、リムの外径よりも大きく、防音板は、防音板の径方向において同一の板厚を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るトーショナルダンパーを示す断面図である。
【
図3】トーショナルダンパーの一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】防音板を保持する保持部に形成された切欠きを示す斜視図である。
【
図6】防音板の軸線方向の振動における振動数比と振動伝達率との関係を示すグラフである。
【
図8】ハブ及びダンパーマスをシャフトの軸線方向から示す正面図である。
【
図10】防音板の背面に形成された回り止め及びダンパーマスの段差面に形成された凹部を示す断面図である。
【
図11】第2実施形態に係るトーショナルダンパーを示す断面図である。
【
図12】緩衝材が設けられた防音板を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異なる。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るトーショナルダンパー10について説明する。
図1は、第1実施形態に係るトーショナルダンパー10を示す断面図である。
図2は、トーショナルダンパーを示す斜視図である。トーショナルダンパー10は、シャフト2の端部2aに取り付けられて使用される。シャフト2は、例えば自動車用のエンジンのクランクシャフトである。トーショナルダンパー10は、シャフト2のねじり振動を抑制する。なお、トーショナルダンパー10の用途は限定されない。トーショナルダンパー10は、エンジンのクランクシャフトに取り付けられるものに限定されず、その他の回転軸に取り付けられてもよい。シャフト2の端部2aは、例えばエンジンフロントカバー5から外部に突出している。エンジンフロントカバー5は、シャフト2を保持する機器のハウジングの一例である。なお、
図1において、シャフト2及びエンジンフロントカバー5は、仮想線で示されている。
【0009】
トーショナルダンパー10は、中心軸Oを中心として回転可能なシャフト2に取り付けられるハブ20と、ハブ20の外周に装着されるゴムリング30と、ゴムリング30の外周に設けられるリング状のダンパーマス40と、ダンパーマス40に保持された円盤状の防音板50と、を備える。なお、
図1には、シャフトの中心軸Oが1点鎖線で図示されている。
図1には、軸線方向X及び径方向Rが矢印で図示されている。軸線方向Xは、シャフトの中心軸Oが延在する方向である。径方向Rは、中心軸Oと直交する方向である。ハブ20、ゴムリング30、ダンパーマス40、及び防音板50は、中心軸Oと同軸に配置され、シャフトの回転に伴って中心軸Oを中心として回転する。
【0010】
ハブ20は、シャフトに取り付けられるボス21と、ボス21からシャフトの径方向Rに延びる連結部22と、連結部22を介してボス21に連結されハブ20の外周を成すリム23と、を有する。ハブ20は、例えば、鋳鉄等の金属材料から形成される。ハブ20の材料としては、例えば片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、自動車構造用熱間圧延鋼板等が挙げられる。
【0011】
ボス21は筒状を成し、シャフト2の端部2aに嵌められる。ボス21の内周面21aには、例えばキー溝21bが形成されている。連結部22は、径方向Rに延びボス21とリム23とを連結する。連結部22は例えば板状を成し、連結部22の板厚方向は、軸線方向Xに沿う。連結部22は、径方向Rに延びる複数のアームを有するものでもよい。
【0012】
リム23は筒状を成す。リム23は、軸線方向Xにおいて所定の幅を有する。リム23は、軸線方向Xにおいて、ボス21よりもシャフト2とは反対側に張り出している。シャフト2とは反対側とは、軸線方向Xにおいてボス21に対して防音板50に近い方である。
図3に示されるように、リム23の外周面23aには、凹凸面が形成されている。
【0013】
ゴムリング30は、径方向Rにおいて、リム23の外周面23aとダンパーマス40の内周面41aとの間に位置する。内周面41aは、後述するダンパーマス40の本体41の内周面である。ゴムリング30は、リム23の全周にわたって形成されている。ゴムリング30は、リム23の外周面23aと、ダンパーマス40の内周面41aとの間の隙間に圧入されている。ゴムリング30は、軸線方向Xにおいて、リム23の幅と同じ程度の幅を有する。ゴムリング30は、径方向Rにおいて所定の厚さを有し、径方向Rに伸縮できる。ゴムリング30は、弾性体の一例である。ゴムリング30は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)を主成分とし、その他に好ましくはカーボンブラックやプロセスオイルを含むゴム組成物を、例えば従来公知の方法によって円筒形等に加硫成形することによって製造される。ゴムリング30の材質は、EPDMに限定されず、その他のゴムでもよい。
【0014】
ダンパーマス40は筒状を成す。ダンパーマス40は、例えば鋳鉄等の金属材料から形成される。ダンパーマス40の材料としては、例えば片状黒鉛鋳鉄等が挙げられる。ダンパーマス40は、径方向Rにおいてリム23の外側に位置する本体41と、軸線方向Xにおいて本体41からシャフト2とは反対側に張り出し防音板50の外周面50aを保持する保持部42とを有する。本体41は、軸線方向Xにおいて、所定の長さを有する。本体41は、軸線方向Xにおいて、リム23及びゴムリング30よりも長い。本体41は、径方向Rにおいて、ゴムリング30の外側に位置する。
【0015】
ダンパーマス40の本体41の外周面には、ベルト3が係合されるベルト溝43が形成されている。
図1及び
図3においてベルト3は、2点鎖線で示されている。ベルト3を介して、例えば自動車の補機類に動力が伝達される。補機類としては、オルタネーター、エアコン、ウォーターポンプ等が挙げられる。
【0016】
保持部42は、径方向Rにおいて、防音板50の外周面50aに対向する内周面42aを有する。保持部42の内周面42aには、防音板50の係合突起54を受ける係合溝44が形成されている。
【0017】
図4は、
図2中の防音板50を示す斜視図である。
図1~
図4に示されるように、防音板50は円盤状を成す。防音板50は例えばゴム製である。防音板50に適用される材料としては、例えばシリコンゴム、FKM(フッ素ゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)等が例示される。なお、防音板50の材料は、これらに限定されず、その他の材料から防音板50を成形することができる。防音板50は、ゴムリング30のゴム材料(第1ゴム)より硬いゴム材料(第2ゴム)から形成されている。
【0018】
防音板50は、円形平板状を成す本体51と、本体51の外周面50aから突出する係合突起54と、本体51の外周面50aから突出する空転防止突起56と、を有する。本体51の外周面は、防音板50の外周面50aを成す。本体51の板厚方向は、軸線方向Xに沿う。本体51は、軸線方向Xに離間する正面51a及び背面51bを有する。正面51aは、軸線方向Xにおいてシャフト2とは反対側の面であり、背面51bは、シャフト2に近い方の面である。本体51の外径は、リム23の外径よりも大きい。本体51の外径は、係合突起54及び空転防止突起56を含まない。本体51の板厚は、径方向Rの全長において同一である。本体51には、蛇腹構造などの薄肉部分が形成されていない。本体51の中央部の板厚と、外周部の板厚とは同じである。
【0019】
なお、本体51から突出する突出部が形成されている場合であっても、本体51の板厚は同一である場合には、防音板50は同一の板厚を有するものとする。突出部としては、係合突起54、後述する回り止め58等が挙げられる。
【0020】
図4に示されるように、係合突起54は、周方向Sにおいて、空転防止突起56が形成されている部分を除き、ぼぼ全周に設けられている。係合突起54は、軸線方向Xにおいて、本体51の板厚よりも小さい幅を有する。係合突起54は、軸線方向Xにおいて、中央部に形成されている。係合突起54は、
図3に示される保持部42の係合溝44に嵌る。
【0021】
図2及び
図4に示されるように、空転防止突起56は、例えば3箇所に設けられている。空転防止突起56の数量は、3つに限定されない。空転防止突起56は、周方向Sに等間隔で配置されている。空転防止突起56は、径方向Rにおいて、係合突起54よりも外側に張り出している。空転防止突起56の軸線方向Xに沿う板厚は、本体51の板厚と同じでもよい。
図4に示されるように、空転防止突起56は、周方向Sに離間する複数の壁面56aを有する。壁面56aは、軸線方向Xに沿うように形成されている。壁面56aは、軸線方向Xから見て傾斜している。
【0022】
図5は、防音板50を保持する保持部42に形成された切欠き46を示す斜視図である。
図2及び
図5に示されるように、ダンパーマス40の保持部42には、空転防止突起56を受ける切欠き46が形成されている。切欠き46は、軸線方向Xにおいて保持部42の正面側の壁面42aから凹むように形成されている。切欠き46は、径方向Rにおいて保持部42を貫通するように形成されている。保持部42の壁面42aは、軸線方向Xにおいてシャフトとは反対側の端面である。
【0023】
保持部42は、切欠き46を画定する壁面46aを有する。壁面46aは、軸線方向Xに沿うように形成されている。壁面46aは、周方向Sにおいて、空転防止突起56の壁面56aと対向する。空転防止突起56が切欠き46に嵌っている状態において、壁面46aは空転防止突起56の壁面56aに当接する。
図2に示されるように、空転防止突起56が、切欠き46に嵌っている状態において、空転防止突起56は、軸線方向X及び径方向Rにおいて、外部に露出している。
【0024】
次に、トーショナルダンパー10の動作について説明する。トーショナルダンパー10は、シャフト2の回転に伴って中心軸Oを中心として回転する。ダンパーマス40及び防音板50は、所定の質量を有する慣性マスとして機能する。ダンパーマス40が、ゴムリング30を介してハブ20に連結されているので、シャフトのねじり振動を抑制する。
【0025】
防音板50は、径方向Rにおいて同一の厚さを有し、蛇腹構造を有していないので、防音板50の径方向Rにおける剛性は同一である。そのため、ダンパーマス40に対して、防音板50の相対的な位置ずれが抑制される。その結果、従来の蛇腹構造を有する防音板と比較して、トーショナルダンパー10の防音板50の偏心が抑制される。トーショナルダンパー10が高速で回転した場合において、防音板50の偏心が抑制されるので、防音板50がダンパーマス40から脱落するおそれが低い。
【0026】
トーショナルダンパー10は、ダンパーマス40に保持された防音板50を備え、軸線方向Xにおいてシャフトとは反対側からハブ20を覆うことができる。これにより、シャフトから軸線方向Xに放出される音を遮音できる。
【0027】
トーショナルダンパー10では、防音板50の本体51の外周面50aに係合突起54が形成され、ダンパーマス40の保持部42の係合溝44に係合突起54が嵌る。防音板50を軸線方向Xに移動させることで、防音板50を保持部42に対して、容易に取り付けることができる。同様に、防音板50を軸線方向Xに移動させて、保持部42から防音板50を取り外すことができる。防音板50は、ダンパーマス40に対してねじ止めされていないので、取り外しが容易である。
【0028】
トーショナルダンパー10では、防音板50の外周面50aに空転防止突起56が形成され、ダンパーマス40の保持部42の切欠き46に空転防止突起56が嵌る。これにより、周方向Sにおいて対向する壁面46a,56a同士が当接し、ダンパーマス40に対する防音板50の周方向Sにおける相対的な移動が抑制される。
【0029】
トーショナルダンパー10では、空転防止突起56が径方向Rにおいて外部に露出しているので、軸線方向Xにおいて空転防止突起56と保持部42との間の隙間に、例えばマイナスドライバー等の棒状の工具を径方向Rから差し込むことができる。差し込んだマイナスドライバーを用いて、空転防止突起56を軸線方向Xに移動させて、防音板50を容易に取り外すことができる。トーショナルダンパー10によれば、防音板50を取り外す際の作業性の向上を図ることができる。例えば、エンジンルーム内において、軸線方向Xにスペースが少ない場合であっても、径方向Rから工具を差し込んで、防音板50を容易に取り外すことができる。
【0030】
次に
図6を参照して防音板50の軸線方向の振動における振動数比と振動伝達率との関係について説明する。
図6は、振動数比と振動伝達率との関係を示すグラフである。
図6では横軸に振動数比を示し、縦軸に振動伝達率を示す。振動数比は、加振周波数を共振周波数で除した値である。振動数比は、次式(1)で表される。
振動数比=加振周波数/共振周波数…(1)
【0031】
振動数比が1である場合、振動伝達率は、5となる。振動数比が増加して1に近づくにつれて振動伝達率は急激に増加する。振動数比が1である場合に、振動伝達率は最高値となり、5になる。振動数比が1を超えて増加すると、振動伝達率は5から急激に低下する。振動数比が2である場合、振動伝達率は、例えば0.5程度になる。振動数比が2を超えてさらに低下すると、振動伝達率はさらに低下して次第に0に近づく。
【0032】
トーショナルダンパー10は、ダンパーマス40が回転方向に共振することでシャフトのねじり共振を抑制(吸振)する。ここでいう回転方向は、シャフトの回転方向であり、シャフトの周方向Sに沿う。ダンパーマス40の回転方向共振周波数は例えば300Hz~600Hzである。
【0033】
一方、ダンパーマス40は、軸線方向Xにも共振する。ダンパーマス40の軸線方向Xの周波数はねじり振動と同程度であり、例えば300Hz~600Hzである。したがって、ダンパーマス40の軸線方向共振周波数の約2倍以上の高周波数域は防振領域となる。振動数比が2倍以上である場合は、振動伝達率が1以下であり防振領域となる。
【0034】
ハブ20は、トーショナルダンパー10全体を保持する目的から頑丈に作られている。例えば、ハブ20単体の金属共振周波数は、数千Hzとなる。同様にエンジンフロントカバーの金属共振周波数も数千Hzであり、ダンパーマス40の防振領域は、ハブ20及びエンジンフロントカバーの金属共振周波数と一致することになる。したがって、防音板50をダンパーマス40によって保持することで、従来技術と同様な防振効果を得ることができる。
【0035】
トーショナルダンパー10によれば、防音板50の外周面50aを保持する保持部42がダンパーマス40に設けられ、この保持部42によって防音板50が保持されている。このような構成のトーショナルダンパー10では、従来技術と同様な防振領域内で防音板50を利用することができ高い遮音性を奏する。そのため、蛇腹構造のような低バネ要素を設ける必要がない。トーショナルダンパー10の防音板50は、蛇腹構造を有していないので、シャフトが高速で回転しても防音板50の偏心が抑制される。
【0036】
図7は、ラウドネス曲線を示す図である。
図7では、横軸に周波数を示し、縦軸に音圧レベルが示されている。トーショナルダンパー10の共振周波数は、例えば数百Hzであある。トーショナルダンパー10では当該周波数において放射音の悪化が懸念されるが、
図7に示されるように、この周波数の領域において人間の聴感は感度が鈍いことから問題とならない。
【0037】
<変形例>
次に、
図8~
図10を参照して、変形例に係るトーショナルダンパー10Bについて説明する。
図8は、ハブ20及びダンパーマス40Bをシャフトの軸線方向Xから示す正面図である。
図9は、防音板50Bの背面図である。
図10は、防音板50Bの背面51bに形成された回り止め58及びダンパーマス40Bの段差面47に形成された凹部48を示す断面図である。
【0038】
変形例に係るトーショナルダンパー10Bが第1実施形態に係るトーショナルダンパー10と違う点は、防音板50に代えて、回り止め58が設けられた防音板50Bを備える点、ダンパーマス40に代えて、回り止め58を受ける凹部48が形成されたダンパーマス40Bを備える点である。なお、トーショナルダンパー10Bの説明において、トーショナルダンパー10と同様の説明は省略する。
【0039】
図8及び
図10に示されるように、トーショナルダンパー10Bは、ハブ20と、ゴムリング30と、ダンパーマス40Bと、を備える。なお、
図8は、防音板50Bが取り外されている状態のトーショナルダンパー10Bを示す。トーショナルダンパー10Bは、
図9及び
図10に示される防音板50Bを備える。防音板50Bの本体51は、軸線方向Xに離間する正面51a及び背面51bを有する。背面51bには、軸線方向Xに張り出す複数の回り止め58が形成されている。回り止め58は、円柱状を成す。複数の回り止め58は、周方向Sに等間隔で配置されている。防音板50Bには、2つの回り止め58が形成されている。2つの回り止め58は、周方向Sにおいて互いに180度ずれた位置に配置されている。
【0040】
図10に示されているように、ダンパーマス40Bには段差面47が形成されている。段差面47は、軸線方向Xにおいて保持部42よりもシャフト2に近い方に位置する。段差面47は、軸線方向Xにおいて、防音板50Bの背面51bの外周部分51cと対向する。段差面47は、軸線方向Xに交差する面を形成する。段差面47は、
図8に示されるように、周方向Sにおいて全周にわたり形成されている。段差面47は、径方向Rにおいて、保持部42よりも内側に位置する。段差面47は、径方向Rに沿って所定の幅を有する。
【0041】
段差面47には、複数の回り止め58をそれぞれ受ける複数の凹部48が形成されている。複数の凹部48は、周方向Sにおいて等間隔で配置されている。複数の凹部48は、周方向Sにおいて互いに180度ずれた位置に配置されている。凹部48は、軸線方向Xから見て、例えば円形を成している。防音板50Bが保持部42に保持されている状態にいて、回り止め58は、凹部48に嵌る。回り止め58の外周面は、凹部48を画定する内周面に当接する。
【0042】
図8に示されるように、ダンパーマス40の段差面47には、ダンパーマス40の回転におけるバランス調整のためのバランス穴49が形成されている。バランス穴49は、例えば軸線方向Xから見て円形の穴である。バランス穴49の直径及び/深さを調整することで、ダンパーマス40の回転におけるバランスを調整できる。バランス穴49は、周方向Sにおいて、複数の凹部48間の中間に位置する。バランス穴49は、周方向Sにおいて、凹部48に対して90度ずれた位置に配置されている。複数の凹部48、及びバランス穴49は、中心軸Oを中心とする仮想円C1上に位置する。
【0043】
次に、特開2017―106563号公報(以下「特許文献2」と記載する)に記載された従来技術について説明する。特許文献2に記載の従来技術では、遮音カバーの背面から軸線方向に延びる突起が設けられている。特許文献2に記載の従来技術では、遮音カバーに設けられた突起がハブに設けられた篏合孔に嵌っている。このような従来技術では、ハブの軸線方向の振動が遮音カバーに伝達され、遮音カバーがスピーカーの振動板のように励起され放射音を発するという課題が生じる。
【0044】
一方、トーショナルダンパー10Bでは、防音板50Bに設けられた回り止め58がダンパーマス40Bの段差面47に形成された凹部48に嵌るので、防音板50Bが、ハブ20と接触しないようにできる。ダンパーマス40Bは、ゴムリング30を介して、ハブ20に装着されている。軸線方向Xにおけるハブ20の振動はゴムリング30によって抑制されるので、ダンパーマス40Bの軸線方向Xの振動は、ハブ20の軸線方向Xの振動と比較して弱い。
【0045】
トーショナルダンパー10Bでは、軸線方向Xにおいて、防音板50Bとハブ20との間には隙間が形成されている。このようなトーショナルダンパー10Bでは、ハブ20の軸線方向Xの振動が防音板50Bに直接伝達されない。従って、トーショナルダンパー10Bでは、防音板50Bが放射音を発するという従来技術の課題が解決される。
【0046】
このようなトーショナルダンパー10Bは、上記の第1実施形態に係るトーショナルダンパー10と同様の作用効果を奏する。
【0047】
<第2実施形態>
次に、
図11を参照して、第2実施形態に係るトーショナルダンパー10Cについて説明する。
図11は、第2実施形態に係るトーショナルダンパー10Cを示す断面図である。
図12は、緩衝材70が設けられた防音板を示す背面図である。
図11に示されるトーショナルダンパー10Cが、第1実施形態に係るトーショナルダンパー10と違う点は、主に、防音板50Cがハブ20Cに保持されている点、及び防音板50Cの背面51bに緩衝材70が設けられている点である。なお、トーショナルダンパーCの説明において、上述したトーショナルダンパー10,10Bと同様の説明は省略する。
【0048】
トーショナルダンパー10Cは、ハブ20Cと、ゴムリング30と、ダンパーマス40Cと、防音板50Cとを備える。ハブ20Cは、ボス21と、連結部22と、リム23と、保持部25とを有する。
【0049】
ハブ20Cは、シャフト2の端部2aに取り付けられる。シャフト2は、エンジンのクランクシャフトである。シャフト2は、本体2bと、本体2bよりも小さな外径を有する端部2aとを有する。端部2aには、センターボルト60が取り付けられるセンター穴2dが形成されている。端部2aは、本体2bと同じ外径でもよい。
【0050】
端部2acは、軸線方向Xにおいてエンジンフロントカバー5よりも外部に位置する。エンジンフロントカバー5には、端部2aが挿通される開口部が形成され、この開口部には、シール6が設けられている。シール6は、ボス21とエンジンフロントカバー5との間の隙間を封止する。
【0051】
ボス21は、シャフト2の端部2aに装着される。シャフト2の端部2aは、ボス21の開口内に挿入される。軸線方向Xにおいて、ボス21の一方の端部21cは、エンジンフロントカバー5の開口部を通過し、エンジン内に位置する。ボス21の他方の端部21dは、軸線方向Xにおいて防音板50Cに近い方に位置する。
【0052】
センターボルト60は、シャフト2と同軸に配置され、シャフト2のセンター穴2dに挿通されて、シャフト2に固定される。軸線方向Xにおいて、ボス21とシャフト2の本体2bとの間には、スリーブ7が配置されている。スリーブ7は、シャフト2の端部2aに装着されている。センターボルト60をねじ込むことにより、ボス21及びスリーブ7が軸線方向Xに移動し、本体2bに押し当てられる。これにより、ボス21はシャフト2の端部2aに固定される。
【0053】
防音板50Cを保持する保持部25は、ハブ20のリム23から軸線方向Xにおいてシャフト2とは反対側に張り出す。保持部25は、径方向Rにおいて、防音板50Cの外周面50aに対向する内周面25aを有する。保持部25の内周面25aには、防音板50Cの係合突起54を受ける係合溝26が形成されている。保持部25及び係合溝26の構造は、第1実施形態の保持部42及び係合溝44と同様である。
【0054】
図11及び
図12に示される防音板50Cは円盤状を成す。防音板50Cの外径は、リム23Bの外径よりも小さい。防音板50Cは、円盤状の本体51Cを有する。防音板50Cは、蛇腹構造を有していない。本体51Cは、径方向Rにおいて複数の板厚を有する。本体51Cは、第1部分51d、第2部分51e及びリム51fを含む。第1部分51dは、軸線方向Xから見て円形を成し、径方向Rにおいて中央に位置する。第2部分51eは、径方向Rにおいて第1部分51dの外側に位置し、第1部分51dを包囲する。第2部分51eは、リング状を成し、径方向Rにおいて、第1部分51dとリム51fとの間に位置する。第1部分51dの板厚は、第2部分51eの板厚よりも厚い。
【0055】
リム51fの軸線方向Xに沿う長さは、本体51の第1部分51dの板厚よりも大きい。リム51fは、本体51の第1部分51dの背面51bよりもシャフト2に近い方に張り出している。本体51の第1部分51dの背面51bとセンターボルト60のヘッドの端面60aとは、軸線方向Xにおいて離間する。センターボルト60のヘッドの端面60aは、軸線方向Xにおいて、シャフト2とは反対側の端面である。本体51の背面51bは、軸線方向Xにおいて、センターボルト60の端面60aよりもシャフト2とは反対側に位置する。
【0056】
防音板50Cの本体51の背面51bには、緩衝材70が設けられている。緩衝材70は、軸線方向Xから見て、センターボルト60の端面60aと重なる位置に配置されている。緩衝材70は例えば円盤状を成す。緩衝材70は、例えば発砲ウレタンから形成されている。緩衝材70の材料は、発砲ウレタンに限定されず、その他のものでもよい。緩衝材70は、防音板50Cよりも柔らかく弾力性を有する材料から形成される。緩衝材70の軸線方向Xに沿う板厚は、例えば防音板50Cの本体51の第1部分51dの板厚よりも薄い。緩衝材70の板厚は、防音板50Cの本体51の第1部分51dの板厚と同程度でもよく、厚くてもよい。
【0057】
緩衝材70は、例えば接着剤により防音板50Cに接着されていてもよい。緩衝材70は、その他の方法によって防音板50Cに取り付けられていてもよい。緩衝材70は、例えば粘着により防音板50Cに取り付けられていてもよい。例えば、防音板50Cの背面に、緩衝材70が嵌る凹部が設けられ、この凹部に緩衝材が嵌る構造でもよい。緩衝材70は、例えば、他の部材を介して、防音板50Cに取り付けられていてもよい。緩衝材70は、軸線方向Xにおいて、センターボルト60と接触していてもよく、接触していなくてもよい。
【0058】
次に、トーショナルダンパー10Cの動作について説明する。トーショナルダンパー10Cは、シャフト2の回転に伴って中心軸Oを中心として回転する。ダンパーマス40Cは、所定の質量を有する慣性マスとして機能する。ダンパーマス40Cが、ゴムリング30を介してハブ20に連結されているので、シャフトのねじり振動を抑制させる。
【0059】
防音板50Cは、蛇腹構造を有していないので、ハブ20に対して、防音板50Cの相対的な位置ずれが抑制される。その結果、従来の蛇腹構造を有する防音板と比較して、トーショナルダンパー10Cの防音板50Cの偏心が抑制される。トーショナルダンパー10Cが高速で回転した場合において、防音板50Cの偏心が抑制されるので、防音板50Cがダンパーマス40から脱落するおそれが低い。
【0060】
トーショナルダンパー10Cは、ハブ20Cに保持された防音板50Cを備え、軸線方向Xにおいてシャフト2とは反対側からボス21、連結部22及びセンターボルト60を覆うことができる。これにより、シャフト2から軸線方向Xに放出される音を遮音できる。
【0061】
次に、従来技術における課題について説明する。特許文献1の特開2009-8237号公報には、蛇腹構造を有する防音カバーを備えるトーショナルダンパーが記載されている。トーショナルダンパーは、例えば自動車等の移動体のエンジンのクランクシャフトに取り付けられる。エンジンは車両の前部に位置するエンジンルームに配置され、トーショナルダンパーは、エンジンの前面に位置する。このような場合、車両の走行中にエンジンルームに流入する空気がトーショナルダンパーの防音板の正面に当たり、防音カバーがセンターボルト又はハブ等に押し付けられるおそれがある。
【0062】
防音カバーがセンターボルト又はハブ等に押し付けられている場合には、シャフトの軸線方向Xの振動がセンターボルト又はハブを介して、防音カバーに伝達されることになる。このように、軸線方向Xの振動が防音カバーに伝達されると、防音カバーが、スピーカーの振動板のように機能して、大きな放射音を発生させるおそれがある。
【0063】
しかしながら、本実施形態に係るトーショナルダンパー10Cでは、防音板50Cの背面51bに緩衝材70が設けられ、センターボルト60が、防音板50Cに直接当たらないので、センターボルト60の軸線方向Xの振動が防音板50Cに伝達されにくくなる。センターボルト60の軸線方向Xの振動が防音板50Cに伝達されることが抑制される。従って、トーショナルダンパー10Cでは、防音板50Cが放射音を発するという従来技術の課題が解決される。
【0064】
なお、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【0065】
上記の実施形態では、防音板50は、径方向Rにおいて同一の板厚を有するとして例示しているが、防音板50の形状は、その他の形状を含んでもよい。防音板50は、例えば、生産性、着脱性、機能面の都合によって湾曲などの三次元的な形状を有するものでもよい。なお、防音板50は、従来の蛇腹構造(形状によるばね要素)を含まない。防音板50は、従来の蛇腹構造を含まないので、トーショナルダンパー10の高速回転時において、防音板50の偏心が抑制される。
【0066】
上記の実施形態では、防音板50の外周面50aに係合突起54が設けられ、ダンパーマス40の保持部42に、係合突起54を受ける係合溝44が形成されているが、防音板50を保持する構造はこれに限定されない。例えば、保持部42の内周面に、係合突起が形成され、防音板50の外周面に係合突起を受ける係合溝が形成されている構造でもよい。防音板50の外周面50aには、係合溝又は係合突起などの係合部が形成されていなくてもよい。トーショナルダンパー10は、係合部が形成されていない防音板50が保持部42に嵌る構造でもよい。
【0067】
上記の実施形態では、防音板50Cの背面51bに緩衝材70が設けられている構成について例示しているが、防音板50,50Bの背面51bに緩衝材70が設けられていてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、空転防止突起56が形成されている防音板50について説明しているが、防音板50に空転防止突起56が設けられていなくてもよい。同様に保持部42には、空転防止突起56を受ける切欠き46が設けられていなくてもよい。
【0069】
例えば、防音板50Cに空転防止突起が設けられ、保持部25に空転防止突起を受ける切欠きが形成されていてもよい。
【0070】
上記の実施形態では、防音板50Cに設けられた緩衝材70が、軸線方向Xから見た場合に、センターボルト60の端面60aに重なる位置に配置されているが、緩衝材70の位置はこれに限定されない。緩衝材70は、センターボルト60と重ならない位置に配置されていてもよい。例えば、ハブ20から防音板50Cに近い方に突出する突出部を備える構成において、軸線方向Xから見て、この突出部に重なる位置に緩衝材70が配置されていてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、トーショナルダンパー10が適用されるシャフト2として、自動車用のエンジンのクランクシャフトを例示しているが、シャフト2はこれに限定されない。トーショナルダンパー10は、例えば、農業機械、工業機械、小型船舶などのエンジンのシャフトに適用できる。トーショナルダンパー10は、その他の回転機械のシャフトに適用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
2…シャフト
10,10B,10C…トーショナルダンパー
20…ハブ
21…ボス
22…連結部
23…リム
25…保持部
26…係合溝
30…ゴムリング(リング状の弾性体)
40,40C…ダンパーマス
42…保持部
42a…内周面
44…係合溝
47…段差面
48…凹部
49…バランス穴
50,50B,50C…防音板
50a…外周面
51a…正面(防音板の正面)
51b…背面(防音板の背面)
51c…背面の外周部分
54…係合突起
58…回り止め
60…センターボルト
70…緩衝材
S…周方向
R…径方向
X…軸線方向