(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043060
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】静電容量型圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
G06F3/041 602
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150553
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】井出 聡史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 文啓
(72)【発明者】
【氏名】今城 一貴
(57)【要約】
【課題】操作性と操作面の見栄えが良い静電容量型圧力センサを提供する。
【解決手段】静電容量型圧力センサ1は相互容量方式であり、誘電体層2と接地電極3と電極基板7に設けられた送信電極4及び受信電極5と制御部6を有する。送信電極4と受信電極5はマトリクス構造(
図3)である。制御部の駆動で送信電極と受信電極の間に電界が生成される。接地電極への圧力で誘電体層が変形すると、電界の変化で静電容量が変化する。制御部は静電容量が変化した単位検出領域10(
図4)の位置と、静電容量の変化に対応する圧力を検出する。検出用の電極は誘電体層の下面に集約されるので製造が簡単になる。操作時に誘電体層が変形し易く検出が確実で操作性良好である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互容量方式の静電容量型圧力センサであって、
誘電体層と、
前記誘電体層の第1面に設けられて任意の位置に圧力を受ける接地電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向に平行となるように所定間隔をおいて配置された複数の送信電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向と交差する第2方向に平行となるように所定間隔をおいて前記送信電極と絶縁状態で交差するように配置された複数の受信電極と、
前記送信電極を駆動することにより前記送信電極と前記受信電極の間に電界を生成するとともに、前記接地電極の任意の位置に加えられた圧力によって前記誘電体層が変形した際に、前記誘電体層の静電容量に関する測定値を検出する制御部と、
を有することを特徴とする静電容量型圧力センサ。
【請求項2】
前記送信電極と前記受信電極が透光性を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項3】
前記接地電極が、前記誘電体層の第1面に隙間なく均一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項4】
前記送信電極と前記受信電極が、前記誘電体層の第2面に設けられた電極基板の表面と裏面にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項5】
前記送信電極と前記受信電極が、前記誘電体層の第2面に設けられた電極基板の面に絶縁層を間に挟んで重ねて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層に送信電極と受信電極が設けられ、圧力によって誘電体層が変形した際の電極間の静電容量の変化を検出することにより、平面内の位置検出と当該位置における圧力検出の両方を行える相互容量方式の静電容量型圧力センサに係り、特に操作性と操作面の見栄えが良好な静電容量型圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相互容量方式の静電容量型センサの発明が開示されている。この発明の静電容量型センサは、誘電層30と、誘電層30の表側に配置される表側電極部32Xと、誘電層30の裏側に配置される裏側電極部33Yとを有している。表側電極部32Xは、表側基材32の下面に設けられて誘電層30の表側に取り付けられており、裏側電極部33Yは、裏側基材38の上面に設けられて誘電層30の裏側に取り付けられている。そして、制御装置20は、電圧が印加されている表側電極部32Xと、裏側電極部33Yとの間の静電容量を検出しており、誘電体層30が圧力を受けて変形した際の静電容量の変化から圧力を測定できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の相互容量方式の静電容量型センサでは、操作面側の電極である表側電極部32Xは、表側基材32の下面に設けられている。すなわち、操作面と、操作によって変形すべき誘電層30の間に表側基材32が介在する構造となっている。このため、例えばユーザーが操作面を押圧しても、表側基材32があるため誘電層30が変形しにくく、精密な圧力検出が行いにくいという問題があった。
【0005】
また、この種の静電容量型センサは、操作性を向上させる等のために、操作面にアイコンを表示させる構造を備えている場合がある。しかしながら、特許文献1に開示された静電容量型センサでは、表側電極部32Xと裏側電極部33Yによって誘電層30を挟む構造となっているため、層構造の中途に介在させたアイコンの表示層を操作面に浮き上がらせるため、静電容量型センサの下方に光源を設けて上方に向けて光を照射した場合、少なくとも操作者に最も近い操作面の直下の表側電極部32Xが容易に視認されてしまい、表示の妨げになる又は表示の品位が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上説明した従来の技術の課題に鑑みてなされたものであって、操作性と操作面の見栄えが良好な相互容量方式の静電容量型圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された静電容量型圧力センサは、
相互容量方式の静電容量型圧力センサであって、
誘電体層と、
前記誘電体層の第1面に設けられて任意の位置に圧力を受ける接地電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向に平行となるように所定間隔をおいて配置された複数の送信電極と、
前記誘電体層の第2面に設けられ、第1方向と交差する第2方向に平行となるように所定間隔をおいて前記送信電極と絶縁状態で交差するように配置された複数の受信電極と、
前記送信電極を駆動することにより前記送信電極と前記受信電極の間に電界を生成するとともに、前記接地電極の任意の位置に加えられた圧力によって前記誘電体層が変形した際に、前記誘電体層の静電容量に関する測定値を検出する制御部と、
を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された静電容量型センサは、請求項1に記載の静電容量型センサにおいて、
前記送信電極と前記受信電極が透光性を有することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された静電容量型センサは、請求項1に記載の静電容量型センサにおいて、
前記接地電極が、前記誘電体層の第1面に隙間なく均一に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載された静電容量型センサは、請求項1に記載の静電容量型センサにおいて、
前記送信電極と前記受信電極が、前記誘電体層の第2面に設けられた電極基板の表面と裏面にそれぞれ設けられたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載された静電容量型センサは、請求項1に記載の静電容量型センサにおいて、
前記送信電極と前記受信電極が、前記誘電体層の第2面に設けられた電極基板の面に絶縁層を間に挟んで重ねて形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された静電容量型圧力センサによれば、制御部が送信電極を駆動すると、送信電極と受信電極の間に電界が生成される。接地電極に圧力が加えられると、この圧力によって誘電体層が変形し、送信電極と受信電極の間に生成されている電界が変化し、誘電体層の変形した部分に対応した位置にある送信電極と受信電極の間の静電容量が変化する。制御部は、静電容量の変化が検出された位置と、静電容量の変化に対応する値として当該位置での圧力を検出することができる。
【0013】
この相互容量方式の静電容量型圧力センサは、送信電極と受信電極が誘電体層の第2面に集約して設けられているため、誘電体層の両面にそれぞれ電極を形成する場合に較べると、送信電極と受信電極を設けるための基板を2枚から1枚に削減することができ、製造工程が比較的簡単になるとともに、2つの電極の位置合わせも比較的容易である。また、操作面であるセンサ表面は接地電極で構成され、誘電体層の表面には接地電極が直接設けられているので、接地電極を操作した場合に誘電体層が圧力で変形しやすく、圧力及び位置の検出が確実であるとともに、操作感も良好である。
【0014】
請求項2に記載された静電容量型センサによれば、操作面となる接地電極とは反対側であるセンサ裏面側から光を照射すると、光は送信電極と受信電極を透過するので、誘電体層と接地電極を透光性の材料で構成すれば、センサ表面から光が視認できる構成となり、操作面であるセンサ表面が光るために静電容量型センサ及びその操作面の位置を認識し易く、操作性が向上する。また、接地電極よりも下方の層構造の何れかの位置に表示パターン層を設けておけば、操作面であるセンサ表面に所望のパターンを表示することができる。
【0015】
請求項3に記載された静電容量型センサによれば、操作面であるセンサ表面を構成する接地電極が誘電体層の第1面に隙間のない均一なパターン、例えば薄い平面状の膜等として形成されているため、接地電極を押圧した場合に、その押圧する位置に関わらず、押圧力に対する誘電体層の変形の度合いが均一となり、圧力と位置の検出の確実性及び操作感が一層良好となる。
【0016】
請求項4に記載された静電容量型センサによれば、1枚の電極基板の表面と裏面に送信電極と受信電極をそれぞれ設け、この電極基板を誘電体層の第2面に設けた構造となっているため、送信電極と受信電極を絶縁する絶縁構造を設ける必要がない。このため、電極基板の一方の面に送信電極と受信電極を設け、送信電極と受信電極の間に絶縁構造を設ける場合に較べて、製造コストをその分だけ低減することができる。
【0017】
請求項5に記載された静電容量型センサによれば、誘電体層の第2面に設ける電極基板の片方の面に、送信電極と絶縁層と受信電極を重ねて形成した構造となっている。このため、送信電極と受信電極の位置決めを、薄膜形成技術を用いて高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態の相互容量方式の静電容量型圧力センサにおける静電容量の変化の検出原理を説明する模式図である。
【
図2】実施形態の静電容量型圧力センサの構造を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態の静電容量型圧力センサの電極パターンを示す平面図である。
【
図4】実施形態の静電容量型圧力センサの電極パターンが構成する操作領域において、位置の識別が可能な単位検出領域を示す平面図である。
【
図5】実施形態の相互容量方式の静電容量型圧力センサであって、アイコンシートを設けた変形例の模式図である。
【
図6】実施形態の相互容量方式の静電容量型圧力センサであって、ウレタンフィルムからなるシート材料を設けた変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態である相互容量方式の静電容量型圧力センサ1について、
図1~
図4を参照して説明する。
最初に
図1を参照して、相互容量方式の静電容量型圧力センサ1の基本的構造と、位置及び圧力の検出原理を説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、この静電容量型圧力センサ1は、誘電体層2と、誘電体層2の第1面である上面に設けられた接地電極3と、誘電体層2の第2面である下面に互いに絶縁状態で設けられた送信電極4及び受信電極5と、送信電極4を駆動するとともに受信電極5からの信号によって送信電極4及び受信電極5の間の静電容量に関する測定値を検出する制御部6(
図1(a)では不図示、
図2参照)を備えている。
【0021】
制御部6が送信電極4を矩形波によって駆動すると、送信電極4と受信電極5の間には、
図1(a)中に破線で示すような電気力線が発生し、電界が生成される。電気力線は接地電極3を通過することはできず、電界の生成は誘電体層2の内部に限定される。
図1において、電気力線が接地電極3に遮断されている箇所を×印で示す。
【0022】
図1(b)に示すように、センサの使用者が、例えば指Fで接地電極3に圧力を加えると、この圧力により誘電体層2は潰れて厚さが減少する。このため、接地電極3と、送信電極4及び受信電極5との距離が減少し、接地電極3に遮られる電気力線が増加して誘電体層2内の電界は弱まり、送信電極4と受信電極5の間の静電容量が小さくなる。制御部6は、静電容量の変化に対応する検知信号の変化から,当該位置での圧力を検出する。
【0023】
図1は、静電容量型圧力センサ1の構造の一部を簡略化して模式的に示した図である。このため、送信電極4と受信電極5は1対しか示されておらず、押された位置を検出できる接地電極3上の位置は、送信電極4と受信電極5の中間位置の真上の1カ所だけである。しかしながら、後に
図2~
図4を参照して説明するように、
図1のような送信電極4と受信電極5の組が接地電極3の範囲内に複数対設けてあれば、接地電極3が押された箇所に対応する位置にある送信電極4と受信電極5の間の静電容量が変化し、他の送信電極4と受信電極5の間の静電容量は変化しないので、制御部6は、接地電極3が押された箇所の位置を検出することができる。
【0024】
次に、
図2~
図4を参照して、相互容量方式の静電容量型圧力センサ1の具体的な構造を説明する。
図2の分解斜視図に示すように、静電容量型圧力センサ1は、誘電体層2を有している。誘電体層2の材料としては、弾性材料であるゴム、スポンジ等の発泡材料を使用できるが、押圧した場合に誘電体層2が変形しやすければ、位置及び圧力の検出には有利なので、ゴムよりは発泡材料がより好ましい。また、この実施形態では、誘電体層2を構成するスポンジ等の材料は、必要な透光性を有するものとする。
【0025】
誘電体層2の第1面である上面には、接地電極3が設けられている。接地電極3は、可撓性又は弾性を有する導電性の均一なシート状部材、例えば導電布によって構成できる。この実施形態では、接地電極3は必要な透光性を有するものとする。
【0026】
誘電体層2の第2面である下面には、誘電体層2と略同一の外形である剛性を備えた絶縁性の電極基板7が取り付けられている。この電極基板7の下面には送信電極4が設けられ、上面には受信電極5が設けられている。送信電極4と受信電極5は、メッシュ状等の透光性の構造、又は透光性を有する導電材料、又は透光性の構造を有する透光性の導電材料から構成されている。なお、電極基板7の下面に設けられた送信電極4は、図示しない絶縁膜で被覆されている。この実施形態では、電極基板7と送信電極4と受信電極5は、必要な透光性を有するものとする。
【0027】
また、送信電極4と受信電極5には制御部6が接続されている。制御部6は、送信電極4を駆動するとともに、受信電極5からの信号によって送信電極4及び受信電極5の間の静電容量に関する測定値を検出する。
【0028】
以上の構成によれば、静電容量型圧力センサ1の接地電極3の側が、ユーザーが指等で触れて圧力を加える操作領域としてのセンサ面となる。静電容量型圧力センサ1のセンサ面の側をセンサ表面側と称し、電極基板7の受信電極5の側をセンサ裏面側と称する。
【0029】
図3は、送信電極4と受信電極5の電極パターンの一例を示す平面図である。
図3中、送信電極4を薄い灰色で示す。送信電極4は、正方形(又は菱形)の第1単位電極4aと、当該正方形の半分の形状である三角形の第2単位電極4bから構成されている。電極パターンの並び方を、
図3において横方向(第1方向と称する)の並びである行と、縦方向(第2方向と称する)の並びである列とによって表現すると、送信電極4の第1単位電極4aと第2単位電極4bは、3行×5列の配置で規則的に配置されており、3つの行の各両端が第2単位電極4bとなっている。そして、各行の5個の第1及び第2単位電極4a,4bが、図中横方向に延設された3本の配線4cによって導通され、制御部6に接続されている。なお、第1及び第2単位電極4a,4bの個数は例示にすぎず、また第1及び第2単位電極4a,4bは他の形状でもよい。
【0030】
図3中、受信電極5を濃い灰色で示す。受信電極5は、正方形(又は菱形)の第1単位電極5aと、当該正方形の半分の形状である三角形の第2単位電極5bから構成されている。電極パターンの並び方を、送信電極4の場合と同様に行及び列で表現すると、受信電極5の第1単位電極5aと第2単位電極5bは、4行×4列の配置で規則的に配置されており、4つの列の各両端が第2単位電極5bとなっている。そして、各列の4個の第1及び第2単位電極5a,5bが、図中縦方向に延設された4本の配線5cによって導通され、制御部6に接続されている。なお、第1及び第2単位電極5a,5bの個数は例示にすぎず、また第1及び第2単位電極5a,5bは他の形状でもよい。また、送信電極4と受信電極5の電極パターンは同じ形状であったが、異なる電極パターンであってもよい。
【0031】
このように、送信電極4の電極パターンは、
図3において横の行方向(第1方向)に並んだ電極が配線4cで接続された構造であり、受信電極5の電極パターンは、
図3において縦の列方向(第2方向)に並んだ電極が配線5cで接続された構造であり、送信電極4の複数本の行と受信電極5の複数本の列が、相互に交差してマトリクスを構成している。
【0032】
図4は、上述した送信電極4と受信電極5のマトリクス構造によって構成されるセンサ面(操作領域)において、位置の識別が可能な最小単位である単位検出領域10を示す平面図である。単位検出領域10は、便宜上示した破線で区画される正方形の領域である。前述した
図1は、1個の単位検出領域10における送信電極4と受信電極5の構造を模式的に表現したものである。
図4に示す複数の単位検出領域10の配列を、送信電極4及び受信電極5の場合と同様に行及び列で表現すると、6行8列となり、単位検出領域10の総数は48個となる。各単位検出領域10では、送信電極4と受信電極5は、空隙Sをもって対向している。空隙Sは、所定の間隔及び所定の長さとなるように設定されている。各単位検出領域10では、送信電極4と受信電極5の間の静電容量は、空隙Sの前記間隔及び前記長さ、誘電体層2の材質、そして送信電極4及び受信電極5と接地電極3との距離によって定められる。
【0033】
次に、静電容量型圧力センサ1の作用及び効果について説明する。
制御部6が送信電極4を矩形波によって駆動すると、送信電極4と受信電極5の間には、先に
図1(a)を参照して説明したように電気力線が発生し、誘電体層2内には電界が生成される。電気力線は接地電極3で遮断されるため、電界が発生するのは誘電体層2の内部のみである。ここで、センサの使用者が、指で接地電極3に圧力を加えると、この圧力により誘電体層2は潰れて厚さが減少する。このため、接地電極3と、送信電極4及び受信電極5との距離が減少し、接地電極3に遮られる電気力線が増加し、誘電体層2内の電界が弱まり、送信電極4と受信電極5の間の静電容量が小さくなる。制御部6は、静電容量の変化に対応する検知信号の変化から当該位置での圧力を検出して出力する。
【0034】
接地電極3が押されると、押された位置に対応する単位検出領域10において、送信電極4と受信電極5の間の静電容量が変化するため、送信電極4と受信電極5のマトリクス構造によって押された位置を特定することができる。なお、2点以上の同時検出も可能であり、圧力の検出であれば、検出結果の2次元データの個々の値を色や濃淡表示で可視化したヒートマップとして出力することもできる。従って、制御部6は、接地電極3が押されて圧力が検出された箇所の位置をも検出することができる。特に、この静電容量型センサ1では、センサ表面を構成する接地電極3が、誘電体層2の第1面に隙間のない均一なパターン、すなわち薄い平面状の膜として形成されているため、接地電極3を押圧した場合に、その押圧する位置に関わらず、押圧力に対する誘電体層2の変形の度合いが均一となるため、圧力と位置の検出の確実性及び操作感は一層良好となる。
【0035】
また、この静電容量型圧力センサ1によれば、送信電極4と受信電極5がマトリクス構造であるため、自己容量方式の静電容量型圧力センサに較べ、センサ面の複数箇所を同時に押圧した場合でも、ゴーストが発生しないという効果を得ることができる。
【0036】
また、この静電容量型圧力センサ1は、
図2に示すように誘電体層2の下面に取り付ける電極基板7の表裏面に、それぞれ受信電極5と送信電極4を形成している。誘電体層2の両面にそれぞれ電極を形成する場合であれば、従来技術で説明したように、各電極を別々の基板に形成し、誘電体層2の表裏面に各基板をそれぞれ取り付けることになり、部品点数が増し、工程も増加する。これに較べると、この静電容量型圧力センサ1は、電極基板7は1枚で済み、製造工程数も少なくなるとともに、1枚の電極基板7に対する2つの電極の位置合わせも比較的容易に行える。
【0037】
この静電容量型圧力センサ1は、誘電体層2の表面に接地電極3を直接設けてセンサ面としているため、センサ面を押圧した場合に誘電体層2が圧力で変形しやすく、圧力及び位置の検出が確実であるとともに、操作感も良好になる。
【0038】
また、この静電容量型センサ1によれば、センサ裏面側から光を照射すると、光は送信電極4と電極基板7と受信電極5を透過し、さらに誘電体層2と接地電極3を透過してセンサ表面側に射出される。ここで、センサ電極として必要な送信電極4と受信電極5は、センサ面から遠い誘電体層2の下面に集約されており、しかもこれら電極は透光性であり、さらに誘電体層2の上面にある接地電極3は平坦で特定のパターンを持たないため、使用者はセンサ表面側において均一な面状の発光を視認できる。すなわち、操作面であるセンサ表面の全体が均一に光るため、暗所であっても、静電容量型センサ自体の存在及びその操作面の位置を認識し易く、操作性が向上する。また、接地電極3よりも下方の層構造の何れかの位置にアイコンシート(表示パターン層)を設けておけば、操作面であるセンサ表面に所望の形状のアイコンを表示することもできる。
図5に、実施形態の静電容量型圧力センサ1において、誘電体層2と接地電極3の間に、アイコンシート11を設けた変形例の模式図を示す。接地電極3よりも下方の層にアイコンシート11を設ければアイコン表示が可能であるが、誘電体層2よりも下方の層では光が拡散してしまうため、アイコンシート11を設ける位置としては、
図5に示すように接地電極3より下方かつ誘電体層2より上方に設けることが望ましい。なお、アイコン表示のためには、必ずしもアイコンシート11を設ける必要はなく、接地電極3の裏側にアイコンを印刷する手法でもよい。
【0039】
また、この静電容量型センサ1によれば、接地電極3を押して誘電体層2が圧縮され、誘電体層2の厚さが小さくなると、接地電極3と、送信電極4及び受信電極5が限度を越えて接近しすぎ、その結果として送信電極4及び受信電極5の間の静電容量の検出ができなくなってしまう場合が考えられる。これを防止するためには、
図6に示す変形例のように、例えば、透明なウレタンフィルムを積層した適当な厚さのシート材料12を、誘電体層2の下面と、電極基板7の間に設けておくとよい。ウレタンフィルムからなるシート材料12は、発泡体からなる誘電体層2に較べて固く、潰れにくいので、誘電体層2が圧縮された場合であってもシート材料12が潰れて厚さが減少することはなく、接地電極3と、送信電極4及び受信電極5との距離を、必要な一定の値に保つことができる。なお、ウレタンフィルムのシート材料12を、誘電体層2の上面と、接地電極3の間に設けると、固く潰れにくいウレタンフィルムの性質のため、接地電極3を押す力が誘電体層2に伝わりにくく、誘電体層2が変形しにくくなり、前記静電容量の検出に支障がでてしまうので避けた方がよい。
【0040】
以上説明した実施形態の静電容量型センサ1では、電極基板7の表裏面に受信電極5と送信電極4をそれぞれ設けたが、電極基板7の表裏面の何れか一方に、送信電極4と受信電極5を、絶縁層を挟んで設ける構造としてもよい。この場合、送信電極4と受信電極5の位置決めを、薄膜形成技術を用いて前記実施形態よりもさらに高精度に行うことができる。
【0041】
以上説明したように、静電容量型圧力センサ1は、X座標及びY座標を用いたセンサ面上の位置情報とともに、ユーザーが触れたセンサ面上の位置における圧力を検知する複合的な機能を備えているので、種々の電子機器等の表示部を兼ねた入出力装置として、次のような多様な用途に応用できる。例えば、X座標及びY座標を利用してユーザーの触れたセンサ面内の位置を検出するとともに、Z座標を利用してユーザーがセンサ面に触れる際のジェスチャーを検知できる。すなわち、ユーザーが所期の目的をもってセンサ面上のある位置を押した場合には、静電容量型圧力センサ1は触れられた位置に対応する位置情報を信号として出力するが、ユーザーによる操作の確かさを確認する等の目的がある場合には、ユーザーがセンサ面に触れた際の圧力を検出し、所定の圧力を越えて強く押したときにのみ、触れられた位置に対応する信号を出力するものとすることができる。また、他の応用例としては、センサ面に加わる圧力の分布を検出する使用例が考えられる。例えば、この静電容量型圧力センサ1を、ロボットハンドの挟持領域に設けておき、ロボットハンドが物を掴んだ際に、ロボットハンドの挟持領域内での圧力分布データを取得して、掴んだ物の形状の検出や、挟持動作の調整に利用できる。また、この静電容量型圧力センサ1をベッドに設け、ベッドの就寝範囲内での人物による圧力分布を経時的に検出すれば、当該人物の寝返り等の動作を測定することができ、介護や医療の分野において有効である。
【符号の説明】
【0042】
1…静電容量型圧力センサ
2…誘電体層
3…接地電極
4…送信電極
4a…送信電極の第1単位電極
4b…送信電極の第2単位電極
4c…送信電極の配線
5…受信電極
5a…受信電極の第1単位電極
5b…受信電極の第2単位電極
5c…受信電極の配線
6…制御部
7…電極基板
10…単位検出領域
S…空隙