(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043062
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ボビン及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 5/02 20060101AFI20230320BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20230320BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230320BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20230320BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20230320BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H01F5/02 B
H01F30/10 E
H01F27/28 131
H01F27/28 K
H01F27/30 130
H01F27/32 150
H01F37/00 N
H01F37/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150557
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 定勝
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043BA04
5E044BA01
5E044BB05
(57)【要約】
【課題】低背化を図ると共に、巻線の巻き崩れを防止することができるボビン及びコイル装置を得る。
【解決手段】コイル装置の備えるボビン10は、巻線が巻き付けられる筒部12と、筒部12の軸方向の両側にそれぞれ形成された上鍔部14と下鍔部16とを有し、上鍔部14と下鍔部16の間において筒部12に巻線3が渦巻き状に巻き付けられ、筒部12に巻き付けられる一巻き目の巻線の周方向に沿って二巻き目の巻線を案内する巻線ガイド部12Aを備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻き付けられる筒部と、前記筒部の軸方向の両側にそれぞれ形成された二つの鍔部とを有し、前記二つの鍔部の間において前記筒部に巻線が渦巻き状に巻き付けられるボビンであって、
前記筒部に巻き付けられる一巻き目の巻線の周方向に沿って二巻き目の巻線を案内する巻線ガイド部を備えるボビン。
【請求項2】
前記巻線ガイド部は、前記一巻き目の巻線の巻き始めに隣接して設けられている、請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
前記一巻き目の巻線の端部を前記二巻き目の巻線に対して前記筒部の軸方向の一方側へ引き出す巻線引き出し部を備える請求項1又は2に記載のボビン。
【請求項4】
前記鍔部の端部に形成され、前記筒部の軸方向の一方側へ延びる壁部を有し、
前記巻線引き出し部は、前記壁部に形成された溝部によって構成されている請求項3に記載のボビン。
【請求項5】
前記溝部は、前記鍔部に対して前記筒部の軸方向の一方側へ傾斜した第1溝部と、前記第1溝部から前記筒部の径方向外側へ延び、前記壁部の端部に至る第2溝部と、を有する請求項4に記載のボビン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のボビンと、
前記筒部に巻き付けられた巻線と、
前記筒部に挿通されたコアと、を備えるコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン及びコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、巻線が巻き付けられた筒状の巻胴部と、巻胴部の両端に鍔状のフランジ部を有する樹脂ボビンが開示されている。この樹脂ボビンは、上フランジ側に組付けられた上コアと下フランジ側に組付けられた下コアと共にコイル装置を構成し、巻胴部内が磁気ギャップのみとなるように、巻胴部内にコアを配置しない設計とすることで、コイル装置の低背化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コイル装置の高さ寸法は、巻線の巻き付け方によっても大きく異なる。例えば、巻線を、ボビンの筒部に渦巻き状に巻き付ける方法がある。この方法では、コイル装置の高さ方向(軸方向)に一層構造を成す巻線を形成することができるため、巻線を多層構造に巻き付ける方法と比較してボビンの低背化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、渦巻状に巻線を巻き付ける場合、一巻き目の巻き始めと交差するようにして二巻き目が巻き付けられるため、二巻き目の巻き始めが安定して支持されず、巻き崩れが起こりやすくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、低背化を図ると共に、巻線の巻き崩れを防止することができるボビン及びコイル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るボビンは、巻線が巻き付けられる筒部と、前記筒部の軸方向の両側にそれぞれ形成された二つの鍔部とを有し、前記二つの鍔部の間において前記筒部に巻線が渦巻き状に巻き付けられるボビンであって、前記筒部に巻き付けられる一巻き目の巻線の周方向に沿って二巻き目の巻線を案内する巻線ガイド部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るボビンでは、巻線が巻き付けられる筒部を備え、筒部の軸方向の両側に形成された二つの鍔部との間で、巻線が渦巻き状に巻き付けられている。従って、巻線が一層構造となり、ボビンの低背化を図ることができる。ここで、ボビンには、筒部に巻き付けられる一巻き目の巻線の周方向に沿って二巻き目の巻線を案内する巻線ガイド部が設けられている。これにより、一巻き目の巻線の巻き始めに交差して配置される二巻き目の巻線が、巻線ガイド部によって安定して支持されるため、巻線の巻き崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のII-II線に沿って切断した状態を示すコイル装置の断面図である。
【
図3】実施形態に係るコイル装置の分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係るボビンの平面側斜視図である。
【
図5】実施形態に係るボビンの底面側斜視図である。
【
図6】実施形態に係るボビンを後方側から見た側面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿って切断した状態を示すボビンの断面図である。
【
図8】実施形態に係るボビンの第1の変形例を示す平面側斜視図である。
【
図9】実施形態に係るボビンの第2の変形例を示す平面側斜視図である。
【
図10】実施形態に係るボビンの第3の変形例を示す側面図であり、ボビンを右方側から見た側面図が示されている。
【
図11】実施形態に係るボビンの第3の変形例を示す側面図であり、(A)には、ボビンを前方側から見た側面図が示されており、(B)には、ボビンを後方側から見た側面図が示されている。
【
図12】実施形態に係る巻線ガイド部の変形例を示す
図7に対応する断面の部分断面図であり、(A)には、巻線ガイド部の第1の変形例が示されており、(B)には、巻線ガイド部の第2の変形例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るコイル装置1と、コイル装置1に用いられるボビン10について
図1~
図7を参照して説明する。本実施形態では、説明の便宜上、各図中に適宜示す上下、左右、前後の矢印で示す方向を、それぞれ上下方向、左右方向、前後方向と定義して説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0011】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のコイル装置1は、一例として、チョークコイルを構成している。コイル装置1は、フェライトコア等の磁性材料で形成されたコア2と、コア2が挿通されたボビン10と、ボビン10に巻き付けられた巻線3と、を備えている。
【0012】
コア2は、ボビン10の後部に装着される第1コア2Aと、ボビン10の前部に装着される第2コア2Bを有している。第1及び第2コア2A,2Bはそれぞれ、ボビン10の上方側に配置される上コア21と、ボビン10の下方側に配置される下コア22を備えている。上コア21と下コア22は、それぞれが別々に成形され、ボビン10を上下方向から挟むようにして重ね合わせた状態で接合される。
【0013】
図2及び
図3に示すように、上コア21は、コア側部211と、中脚部212と、外脚部213とを有し、上下左右断面が略E型を成している。コア側部211は、上下方向に所定の厚みを有し、平面視で略矩形状を成す板状に形成されている。中脚部212は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成され、コア側部211の下面から下方側(下コア22側)に立設されている。外脚部213は、上下方向に所定の厚みを有する縦壁状に形成されており、コア側部211の左右両側から下方側に立設されている。上コア21をボビン10に取り付けた状態では、外脚部213の内側にボビン10が収容され、後述するボビン10の筒部4の内側に中脚部212が挿通される。
【0014】
下コア22は、上下方向に所定の厚みを有し、平面視で略矩形状を成す板状に形成されており、上下左右断面が略I型を成している。下コア22は、上コア21の下方側に配置されることにより、その上面が、上コア21の中脚部212及び外脚部213の下面に当接する。上コア21と下コア22は、上下に重ね合わせられた後、図示しない絶縁テープを巻き付けることにより互いに接合される。これにより、第1コア2A及び第2コア2Bでは、上コア21の中脚部212からコア側部211、外脚部213を経て下コア22を巡る閉磁路が形成される。
【0015】
図4及び
図5に示すように、ボビン10は、巻線3が巻き付けられる筒部12と、筒部12の軸方向の両側にそれぞれ形成された二つの鍔部14,16とを有している。ボビン10は、一例として、絶縁性を有する樹脂材料から成り、射出成形による一体成形品で構成されている。
【0016】
図7に示すように、筒部12は、上下方向を軸方向とし、前後方向に長い長円形の円筒状に形成されている。筒部12の外周面には、巻線3が、渦巻き状に巻き付けられる。この巻線3は、一例として、複数の線材(細線)を撚り合わせて構成されたリッツ線で構成されている。巻線3は、筒部12の後端側に一巻き目(1ターン目)の巻き始め3Bが配置される。巻線3は、一巻き目の巻き始め3Bの位置を動かさないようにして筒部12の外周面に時計回りに巻き付けられ、一巻き目の巻き始め3Bと交差する部位が二巻き目の巻き始め3Dとなり、二巻き目の巻線3が一巻き目の巻線3の外周側(径方向外側)に巻き重ねられる。このように、巻線3の巻き目を径方向に複数回巻き重ねることにより渦巻き状の巻線3が形成される。
【0017】
筒部12の一端(
図7では後端)には、径方向外側に突出する巻線ガイド部12Aが一体に設けられている。この巻線ガイド部12Aは、一巻き目の巻線3の周方向に沿って配置されており、筒部12に巻き付けられた一巻き目の巻線3の周方向に沿って二巻き目の巻線3を案内することができる。即ち、筒部12に巻き付けられた一巻き目の巻線3の巻き終わり3Cが巻線ガイド部12Aに沿って一巻き目の外周側に案内されることにより、二巻き目の巻線3の巻き始め3Dが一巻き目の巻線3の周方向に沿って、外周側に案内される。これにより、二巻き目の巻線3の巻き始め3Dが巻線ガイド部12Aによって安定して支持される。
【0018】
また、本実施形態では、巻線ガイド部12Aが一巻き目の巻線3の巻き始め3Bに隣接して設けられている。これにより、二巻き目の巻線3の巻き始め3Dは、一巻き目の巻き始め3Bの径方向外側に並んで配置されるため、二巻き目の巻き始め3Dが一巻き目の巻き始め3Bに乗り上げるようにして重なることを効果的に抑制することができる。即ち、一巻き目の巻線3の巻き始め3Bは、巻き始め3Bから引き出された端部3Aの引き回しにより製造時の工程では形状が安定しないため、巻き始め3Bに二巻き目の巻線3が乗り上げることを回避することにより、二巻き目の巻線3の形状を巻き始め3Dの部位から安定させることができる。
【0019】
筒部12は、筒部12の内側の空間を前後に区画する区画壁部18を更に有している。この区画壁部18によって、筒部12の内側には、ボビン10を上下に貫通する二つの円筒部121,122が形成されている。
図3に示すように、二つの円筒部121,122には、第1及び第2コア2A,2Bの中脚部212がそれぞれ挿通される。
【0020】
図4及び
図5に示すように、筒部12の軸方向の両側に形成された二つの鍔部14,16は、上鍔部14と下鍔部16で構成されている。上鍔部14は、筒部12の上端の外周面から径方向外側に突出しており、平面視で略矩形に形成された板状部材となっている。この上鍔部14の上面には、上鍔部14の前後端部からそれぞれ筒部12の軸方向の一方側(
図4では上方側)に延びる一対の上側壁部26が設けられている。一対の上側壁部26の間には、上鍔部14の上面を前後に仕切る仕切り壁部28が形成されている。仕切り壁部28は、筒部12の内側に形成された二つの円筒部121,122の間に配置され、上鍔部14の上面から上方側に立設されている。ボビン10にコア2を組付けた状態では、仕切り壁部28の両側に第1及び第2コア2A,2Bの上コア21がそれぞれ配置され、第1及び第2コア2A,2Bの上コア21が、一対の上側壁部26及び仕切り壁部28によって前後方向の両側から支持される(
図1参照)。
【0021】
下鍔部16は筒部12の下端の外周面から径方向外側に突出しており、平面視で略矩形に形成された板状部材となっている。この下鍔部16の下面には、上述した上鍔部14と同様に、下鍔部16の前後端部からそれぞれ筒部12の軸方向の一方側(
図5では下方側)に延びる一対の下側壁部30が設けられている。一対の下側壁部30の間には、下鍔部16の下面を前後に仕切る仕切り壁部32が形成されている。仕切り壁部32は、筒部12の内側に形成された二つの円筒部121,122の間に配置され、下鍔部16の下面から下方側に立設されている。ボビン10にコア2を組付けた状態では、仕切り壁部32の両側に第1及び第2コア2A,2Bの下コア22がそれぞれ配置され、第1及び第2コア2A,2Bの下コア22が、一対の下側壁部30及び仕切り壁部32によって前後方向の両側から支持される。
【0022】
図6に示すように、下鍔部16の後端から延びる下側壁部30には、筒部12に巻き付けられた一巻き目の巻線3の端部3Aを引き出す巻線引き出し部40が設けられている。巻線引き出し部40は、下側壁部30に形成された溝部によって構成されており、第1溝部42と第2溝部44を有している。第1溝部42は、下鍔部16の上面から下方側(筒部12の軸方向一方側)に向かって傾斜して延びている。第2溝部44は、第1溝部42と連続して設けられ、第1溝部42から筒部12の径方向外側(
図6では右方側)に向かって延び、下側壁部30の端部に至る(下側壁部30の右側端部から右方に開口した)構成となっている。この第1及び第2溝部44,46には、一巻き目の巻線3の巻き始め3Bから引き出された端部3Aが挿入される。巻線3の端部3Aは、第1溝部42に案内されて、筒部12の軸方向外側(下鍔部16の下方側)に引き出される。そして、第2溝部44に保持された状態で、一巻き目の巻線3の端部3Aから延びる引き出し線の位置を定めることができる。即ち、上鍔部14と下鍔部16の間の区画には、実質的に、渦巻き状に形成された1層構造の巻線3のみが収容される。これにより、筒部12の軸方向の寸法が略巻線径一つ分の高さに抑えられている。
【0023】
上記構成のボビン10によれば、手巻き又は自動巻線機による自動巻きの方法により、筒部12に線材を巻き付けて渦巻き状の巻線3を形成することができる。
図6には、ボビン10の筒部12に巻線3を巻き付ける経過が二点鎖線で示されている。この図に示すように、製造時の工程では、巻線3の端部3Aを巻線引き出し部40の第1溝部42と第2溝部44に挿入する。そうすると、第1溝部42を通って上鍔部14と下鍔部16の間に引き出された部分が一巻き目の巻き始め3Bとなり、巻線3の巻き始め3Bの位置を設定することができる。
【0024】
ここで、巻線3の端部3Aは、巻線引き出し部40の第1溝部42と第2溝部44を経て下側壁部30の端部(
図6では右側端部)から外側に引き出されているため、第2溝部44の延在方向に沿って所定の張力Tを付与した状態で、巻線3の巻き付けを行うことができる。巻線3の巻き終わりの端部3Eは、上鍔部14と下鍔部16の間から、一巻き目の巻線3の端部3Aと同様にボビン10の後方側に引き出されている。
【0025】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態に係るボビン10では、巻線3が巻き付けられる筒部12を備え、筒部12の軸方向の両側に形成された上鍔部14と下鍔部16との間で、巻線3が渦巻き状に巻き付けられている。従って、巻線3が一層構造となり、ボビンの低背化を図ることができる。ここで、
図7に示すように、ボビン10には、筒部12に巻き付けられる一巻き目の巻線3の周方向に沿って二巻き目の巻線3を案内する巻線ガイド部12Aが設けられている。これにより、一巻き目の巻線3の巻き始め3Bに交差して配置される二巻き目の巻線3が、巻線ガイド部12Aによって安定して支持されるため、巻線3の巻き崩れを防止することができる。
【0026】
また、巻線ガイド部12Aは、一巻き目の巻線3の巻き始め3Bに隣接して設けられている。このため、二巻き目の巻き始め3Dが一巻き目の巻き始め3Bの径方向外側に配置されて、一巻き目の巻き始め3Bに乗り上げない。その結果、二巻き目の巻線3の形状を巻き始め3Dから安定させることができ、より効果的に巻線3の巻き崩れを防止することができる。
【0027】
また、本実施形態に係るボビン10には、一巻き目の巻線3から引き出された端部3Aを二巻き目の巻線3に対して筒部12の軸方向の一方側へ引き出す巻線引き出し部40が設けられている。具体的に、巻線引き出し部40は、下鍔部16の端部(後端部)から筒部の軸方向一方側へ伸びる下側壁部30に形成された第1溝部42と第2溝部44によって構成されている。
【0028】
従って、一巻き目の巻線3の端部3Aは、巻線引き出し部40を介して筒部12の軸方向の一方側へ引き出されるため、筒部12の両側に形成された上鍔部14と下鍔部16の間には、渦巻き状の巻線部分だけが収容される。これにより、筒部12の軸方向の寸法を巻線径一つ分の高さに抑えたボビン構造を実現することができるため、ボビン10の低背化が促進される。更に、巻線引き出し部40によって一巻き目の巻線3から引き出される端部3Aの位置を一定にすることができ、端子等に対する巻線3の接続を容易にすることができる。
【0029】
また、巻線引き出し部40を構成する第1及び第2溝部44,46が、下鍔部16の端部から延びる下側壁部30に形成されているため、一巻き目の巻線3の端部3Aが、ボビン10の外表面に沿って配置される。従って、巻線3となる線材を巻き始めの位置に簡単に設定することができ、巻線3の巻き付けを行う際の作業効率を向上させることができる。
【0030】
更に、第1溝部42は、筒部12の軸方向の一方側へ傾斜し、第2溝部44は、第1溝部42から筒部12の径方向外側へ延び、下側壁部30の端部(右側端部)に至る構造となっている。従って、
図6に二点鎖線で示すように、製造時の工程では、巻線3を構成する線材に第2溝部44の延在方向に沿って所定の張力Tを付与した状態で、巻き付けを行うことができる。これにより、巻線3の巻き付けを行う際の作業効率を向上させることができると共に、自動巻線機による自動化も可能になる。
【0031】
更にまた、下側壁部30は、下鍔部16の端部に設けられているため、渦巻き状の巻線3の外周部が、部分的に下鍔部16の端部から外側に露出する。このような構造にすると、下鍔部16の端部から外側に露出した巻線部分の熱を高効率に外部に放熱することができるので、通電時における巻線3の異常発熱を抑制することができる。一方で、巻線3の一部が露出することで、巻き付けの際に形状を安定させることが難しくなる。これに対して、本実施形態では、一巻き目の巻線3の周方向に沿って巻線ガイド部12Aが設けられているため、巻線3の巻き崩れを防止することができ、高効率の放熱性能との両立を図ることができる。
【0032】
[補足説明]
以上、本発明の実施形態に係るコイル装置1と、これに用いるボビン10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0033】
(ボビンの第1の変形例)
例えば、上記実施形態では、ボビン10の上鍔部14及び下鍔部16に一対の上側壁部26と一対の下側壁部30とをそれぞれ設ける構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図8に示す第1の変形例に係るボビン50のように、巻線引き出し部40を備える壁部のみを鍔部の端部に形成してもよい。以下、
図8を参照して、第1の変形例に係るボビン50について説明する。なお、上記実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0034】
第1の変形例に係るボビン50は、巻線3の巻き付けられる円筒状の筒部52と、筒部52の軸方向の両側にそれぞれ形成された上鍔部54及び下鍔部56を有している。筒部52の後端部には、筒部52の外周面に対して径方向外側に突出した巻線ガイド部52Aが設けられている。この巻線ガイド部52Aは、上記実施形態の巻線ガイド部12Aに相当する構成である。また、下鍔部56の後端部には、筒部52の軸方向の一方側(
図8では下方側)に延びる下側壁部58が設けられており、下側壁部58の表面に第1溝部42及び第2溝部44から成る巻線引き出し部40が形成されている。筒部52、上鍔部54、下鍔部56及び下側壁部58の構成は、上記実施形態の筒部12、上鍔部14、下鍔部16及び下側壁部30の構成と同様であるため、詳細な説明を割愛する。当該構成によるボビン50においても、基本的にはボビン10の構成を踏襲しているため、上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0035】
(ボビンの第2の変形例)
また、上記実施形態では、ボビン10の外側に二つのコア(第1コア2A及び第2コア2B)が装着される構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図9に示す第2の変形例に係るボビン60のように、一つのコアが装着される構成としてもよい。以下、
図9を参照して、第2の変形例に係るボビン60について説明する。なお、上記実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0036】
第2の変形例に係るボビン60は、上下方向を軸方向とする円筒状に形成された筒部62と、筒部62の軸方向の両側に形成された上鍔部64及び下鍔部66とを有している。筒部62の後端部には、筒部62の外周面に対して径方向外側に突出した巻線ガイド部62Aが設けられている。この巻線ガイド部62Aは、上記実施形態の巻線ガイド部12Aに相当する構成である。また、上鍔部64の上面には、前後方向の両端部から上方側に延びる一対の上側壁部68が形成されており、一対の上側壁部68によって、上鍔部64の上方側に配置される一つの上コア21の側面を前後両側から支持することができる。下鍔部66の下面には、前後方向の両端部から下方側に延びる一対の下側壁部70が形成されており、一対の下側壁部70によって、下鍔部66の下方側に配置される一つの下コア22の側面を前後両側から支持することができる。また、下鍔部66の後端部から下方側に延びる下側壁部70には、第1溝部42と第2溝部44から成る巻線引き出し部40が形成されている。筒部62、上鍔部64、下鍔部66、上側壁部68及び下側壁部70の構成は、上記実施形態の筒部12、上鍔部14、下鍔部16、上側壁部26及び下側壁部30の構成と同様であるため、詳細な説明を割愛する。当該構成によるボビン60においても、基本的にはボビン10の構成を踏襲しているため、上記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0037】
(ボビンの第3の変形例)
また、上記実施形態のボビン10は、チョークコイルとしてのコイル装置1に用いられる構成であったため、ボビン10に一つの巻線3を巻き付ける構成として説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、
図10及び
図11に示す第3の変形例に係るボビン80のように、二つの巻線を巻き付ける構成にしてもよい。以下、
図10及び
図11を参照して、第3の変形例に係るボビン80について説明する。なお、上記実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0038】
図10には、ボビン80を右方側から見た側面図が示されている。
図11(A)には、ボビン80を前方側から見た側面図が示されており、
図11(B)には、ボビン80を後方側から見た側面図が示されている。これらの図に示すように、第3の変形例に係るボビン80は、上鍔部84と下鍔部86との間に中鍔部92を有しており、中鍔部92の両側に二つの巻線301,302がそれぞれ配置可能に構成される点で上記実施形態と異なる。他の構成については、上記実施形態と同一である。
【0039】
ボビン80は、上下方向を軸方向とする円筒状の筒部82と、筒部82の軸方向の両側にそれぞれ形成される上鍔部84及び下鍔部86を有している。上鍔部84の上面には、前後方向の両端部から上方側に延びる一対の上側壁部88が形成されており、一対の上側壁部88によってボビン80に装着される第1及び第2コア2A,2Bの上コア21の側面が前後両側から支持される。また、下鍔部86の下面には、前後方向の両端部から下方側に延びる一対の下側壁部90が形成されており、一対の下側壁部90によって、第1及び第2コア2A,2Bの下コア22の側面が前後両側から支持される。なお、筒部82、上鍔部84、下鍔部86、上側壁部88及び下側壁部90の構成は、上記実施形態の筒部12、上鍔部14、下鍔部16、上側壁部26及び下側壁部30の構成と同様であるため、詳細な説明を割愛する。
【0040】
ここで、上鍔部84と下鍔部86の間には、筒部82の外周面から突出した中鍔部92が配置されている。中鍔部92は、筒部82の外周面の軸方向の中間部から径方向外側へ鍔状に突出しており、平面視で略矩形に形成された板状部材となっている。中鍔部92の前端部及び後端部は、中鍔部92の両側に巻き付けられる二つの巻線301,302と巻線301,302の端部から引き出された引き出し線との絶縁を確実にするために、上鍔部84の上側壁部88、及び下鍔部86の下側壁部90に対して外側に突出している。この中鍔部92によって、上鍔部84と下鍔部86の間の空間は、軸方向に沿って二つの区画S1,S2に区画される。
【0041】
図11(A)に示すように、中鍔部92の上方側の区画S1には、第1巻線301が配置される。第1巻線301は、上鍔部84と中鍔部92の間において、筒部82に渦巻き状に巻き付けられている。第1巻線301は、巻き始め301Bから引き出された端部301Aが、第1巻線引き出し部110によって筒部82の軸方向上方側に引き出されている。この第1巻線引き出し部110は、上鍔部84の前端部から延びる上側壁部88に形成されている。
【0042】
図11(B)に示すように、中鍔部92の下方側の区画S2には、第2巻線302が配置される。第2巻線302は、下鍔部86と中鍔部92の間において、筒部82に渦巻き状に巻き付けられている。第2巻線302は、巻き始め302Bから引き出された端部302Aが、第2巻線引き出し部130によって筒部82の軸方向下方側に引き出されている。この第2巻線引き出し部130は、下鍔部86の後端部から延びる下側壁部90に形成されている。
【0043】
また、二つの区画S1,S2のそれぞれには、第1及び第2巻線301,302の一巻き目の巻線の周方向に沿って設けられた巻線ガイド部82A,82Bが配置されている。二つの巻線ガイド部82A,82Bは、二つの区画S1,S2のそれぞれにおいて、筒部82の前端部又は後端部からそれぞれ径方向外側に突出して設けられている。二つの巻線ガイド部82A,82Bの構成は、上記実施形態の巻線ガイド部12Aに相当する構成である。
【0044】
第1及び第2巻線引き出し部110,130について詳細に説明する。第1巻線引き出し部110は、上鍔部84の端部(
図11(A)では前端部)から上方側に延びる上側壁部88に形成され、第1巻線引き出し部110によって、第1巻線301の巻き始めの端部301Aが引き出される。第1巻線引き出し部110は、上鍔部84の下面から上方側(筒部82の軸方向一方側)に向かって傾斜した第1溝部112と、第1溝部112から筒部82の径方向外側に向かって延び、上側壁部88の端部に至る第2溝部44によって構成されている。第1巻線301は、一巻き目の巻き始め301Bから引き出された端部301Aが第1溝部112と第2溝部114に案内されて二巻き目の巻線に対して筒部82の軸方向上方側に引き出される。これにより、上鍔部84と中鍔部92の間に形成された区画S1には、渦巻き状の第1巻線301のみが収容される。
【0045】
第2巻線302は、下鍔部86の端部(
図11(B)では後端部)から下方側に延びる下側壁部90に形成され、第2巻線引き出し部130によって、第2巻線302の巻き始めの端部302Aが引き出される。この第2巻線引き出し部130の構成は、上記実施形態の巻線引き出し部40の構成と同様であるため、詳細な説明を割愛する。第2巻線302は、一巻き目の巻き始め302Bから引き出された端部302Aが第1溝部132と第2溝部134に案内されて二巻き目の巻線に対して筒部82の軸方向下方側に引き出される。これにより、下鍔部86と中鍔部92の間に形成された区画S2には、渦巻き状の第2巻線302のみが収容される。
【0046】
上記構成のボビン80は、基本的に上記実施形態に係るボビン10の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。また、上記構成のボビン80では、一つのボビン80に、第1巻線301と第2巻線302から成る二つの巻線を巻き付けることができるため、一次巻線と二次巻線を備えるトランスとしてコイル装置を構成するボビンを構成することができる。また、第1巻線301と第2巻線302の引き出し線をボビン80の前方側と後方側に引き出すことができるため、トランスの一次巻線と接続する回路部品と二次巻線に接続される回路部品とをボビン80の前後に振り分けて配置でき、組立が容易である。
【0047】
なお、本発明はこれに限らず、第1及び第2巻線引き出し部110,130が、ボビン80の前端側又は後端側における上側壁部88及び下側壁部90にそれぞれ形成される構成としてもよい。即ち、トランスの一次巻線及び二次巻線の引き出し線をボビン80の一方側から引き出す構成とすることができる。
【0048】
(巻線ガイド部の変形例)
また、上記実施形態及び各変形例では、巻線ガイド部が、筒部と一体に形成される構成としたが、本発明はこれに限らない。
図12(A)に示す第1の変形例に係る巻線ガイド部140や、
図12(B)に示す第2の変形例に係る巻線ガイド部140のように、筒部12と離間した位置において、一巻き目の巻線3の周方向に沿って設けられる構成としてもよい。
【0049】
図12(A)に示す第1の変形例に係る巻線ガイド部140は、筒部12の径方向外側に離間して配置されており、上鍔部14下面又は下鍔部16の下面から筒部12の軸方向に沿って突出した円柱状に形成されている。
【0050】
また、
図12(B)に示す第2の変形例に係る巻線ガイド部150は、筒部12の径方向外側に離間して配置された壁部によって構成されている。この巻線ガイド部150は、上鍔部14下面又は下鍔部16の下面から筒部12の軸方向に沿って突出し、一巻き目の巻線3の周方向に沿って湾曲した円弧状を成している。
【0051】
なお、上記実施形態では、巻線引き出し部40が下側壁部30に形成される構成としたが、これに限らず、上記第3の変形例に係る第1巻線引き出し部110のように、上側壁部26に巻線引き出し部40を形成する構成としてもよい。
【0052】
なお、上記実施形態では、巻線3の線材としてリッツ線を用いたが、これに限らず単線のワイヤを用いることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1 コイル装置
2 コア
3 巻線
3A 一巻き目の巻線の端部
3B 一巻き目の巻線の巻き始め
10 ボビン
12 筒部
12A 巻線ガイド部
14 上鍔部(鍔部)
16 下鍔部(鍔部)
30 下側壁部(壁部)
40 巻線引き出し部
42 第1溝部
44 第2溝部