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特開2023-43069ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043069
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/22 20060101AFI20230320BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20230320BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230320BHJP
   B21J 5/02 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
F16H55/22
F16H55/06
B29C45/14
B21J5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150566
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 晴彦
【テーマコード(参考)】
3J030
4E087
4F206
【Fターム(参考)】
3J030BA01
3J030BB09
3J030BB17
3J030BC01
3J030BC02
3J030BC06
3J030BC08
4E087CB01
4E087CB03
4E087HA02
4E087HA82
4F206AD03
4F206AH12
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】芯金の径方向外側端部に樹脂ギヤを射出成形してウォームホイールを製造する場合に、成形不良の発生がより少ない、ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法を提供すること。
【解決手段】ウォームホイールは、第1環状部と、第1環状部の径方向外側に位置する第2環状部と、第2環状部の径方向外側に位置する環状の芯金と、第3環状部に取り付けられる樹脂ギヤとを備える。第1環状部には、環状の第1平面部が設けられ、第2環状部には、第2平面部が設けられ、第3環状部には、第1平面部よりも軸方向の他方側に位置する環状の第3平面部が設けられる。第2平面部は、金型の当接部位が当接可能であり、中心軸に直交する径方向に沿って延びる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金と、
前記第3環状部に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を備え、
前記第2環状部における軸方向の一方側には、環状の第2平面部が設けられ、
当該第2平面部は、前記中心軸に直交する径方向に沿って延びる、
ウォームホイール。
【請求項2】
前記第2平面部は、機械加工された平面である、
請求項1に記載のウォームホイール。
【請求項3】
前記第1環状部における軸方向の一方側には、環状の第1平面部が設けられ、
前記第3環状部における軸方向の一方側には、前記第1平面部よりも軸方向の他方側に位置する環状の第3平面部が設けられ、
前記芯金を前記中心軸の軸回りに1回転させた場合に、前記第2平面部の最も軸方向の一方側の軸方向位置と最も軸方向の他方側の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第1変動距離は、
前記芯金を前記中心軸の軸回りに1回転させた場合に、前記第3平面部の最も軸方向の一方側の軸方向位置と最も軸方向の他方側の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第2変動距離よりも小さい、
請求項1または2に記載のウォームホイール。
【請求項4】
前記第2環状部における軸方向の他方側には、環状の第4平面部が設けられ、
前記第3環状部における軸方向の他方側には、環状の第5平面部が設けられ、
前記第1平面部と前記第4平面部との軸方向の離隔距離は、第3距離であり、
前記第1平面部と前記第5平面部との軸方向の離隔距離は、前記第3距離よりも小さい第4距離である、
請求項3に記載のウォームホイール。
【請求項5】
前記第2平面部における表面には、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる凹凸が複数設けられる、
請求項2に記載のウォームホイール。
【請求項6】
前記第2平面部は、表面処理された平面である、
請求項2または5に記載のウォームホイール。
【請求項7】
中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金の製造方法であって、
鍛造材料を準備する準備ステップと、
前記準備ステップの後に、前記鍛造材料を鍛造してワークを製造する鍛造ステップと、
前記鍛造ステップの後に、前記ワークを前記中心軸の軸回り方向に回転させながら、前記第2環状部における軸方向の一方側に機械加工を施す加工ステップと、を含む、
環状の芯金の製造方法。
【請求項8】
中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金と、
前記第3環状部に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を備えるウォームホイールを製造するウォームホイールの製造方法であって、
鍛造材料を準備する準備ステップと、
前記準備ステップの後に、前記鍛造材料を鍛造してワークを製造する鍛造ステップと、
前記鍛造ステップの後に、前記ワークを前記中心軸の軸回り方向に回転させながら、前記第2環状部における軸方向の一方側に機械加工を施して芯金を作製する加工ステップと、
前記加工ステップの後に、前記芯金を射出成形型の内部に配置し、前記芯金の前記第2環状部における軸方向の一方側に射出成形型の一部を当接させる当接ステップと、
前記当接ステップの後に、前記射出成形型の内部に樹脂を充填する充填ステップと、
を含む、
ウォームホイールの製造方法。
【請求項9】
中心軸の軸回りの周方向に延びる環状の芯金と、前記芯金の径方向外側部分に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を有するウォームホイールと、
前記ウォームホイールを収納するハウジングと、を備え、
前記芯金は、
前記周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有し、当該第3環状部に前記樹脂ギヤが取り付けられており、前記第2環状部における軸方向の一方側には、環状の第2平面部が設けられ、
前記ハウジングは、前記第2平面部に向けて延び、且つ、先端が前記第2平面部に軸方向で対向する突出部を有する、
ウォーム減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のウォームホイールは、芯金と樹脂ギヤとを有し、樹脂ギヤの歯がウォームシャフトの歯と噛み合う。ウォームシャフトが回転すると樹脂ギヤを介してウォームホイールが回転する。
【0003】
特許文献1のウォームホイールは、芯金の径方向外側端部に樹脂ギヤを射出成形(インサート成形)して製造される。具体的には、金型を開いて芯金を収容し、金型を閉じる際に、金型の一部を芯金の側面に当接させることにより、芯金の径方向外側端部の周囲にキャビティ(空隙)を形成する。その後、当該キャビティに樹脂を充填および硬化させることにより、芯金の径方向外側端部に樹脂ギヤが射出成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017-135140号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形時に、金型の一部と芯金の側面との間に間隙がある場合、当該間隙から樹脂が漏れて成形不良になる可能性がある。
【0006】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、芯金の径方向外側端部に樹脂ギヤを射出成形する際の成形不良がより少ない、ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、一態様に係るウォームホイールは、中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金と、前記第3環状部に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を備え、前記第2環状部における軸方向の一方側には、金型の当接部位が当接可能な環状の第2平面部が設けられ、当該第2平面部は、前記中心軸に直交する径方向に沿って延びる。
【0008】
金型の部位のうち、第2平面部に当接する当接部位は、通常、中心軸に直交する平面を有する。本開示では、第2平面部は、中心軸に直交する径方向に沿って延びる。従って、芯金を金型に設置した状態では、金型の当接部位は、芯金の第2平面部に密着して接する。このため、金型に樹脂を充填した場合に、金型の当接部位と芯金の第2平面部との当接部分から樹脂が漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0009】
望ましい態様として、前記第2平面部は、機械加工された平面であるため、機械加工されていない平面に対して、より平滑になる。従って、金型と第2平面部との間に隙間が更に生じにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0010】
望ましい態様として、前記芯金を前記中心軸の軸回りに1回転させた場合に、前記第2平面部の最も軸方向の一方側の軸方向位置と最も軸方向の他方側の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第1変動距離は、前記芯金を前記中心軸の軸回りに1回転させた場合に、前記第3平面部の最も軸方向の一方側の軸方向位置と最も軸方向の他方側の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第2変動距離よりも小さい。
【0011】
金型の部位のうち、第2平面部に当接する部位が平面の場合、変動距離が小さい方が、金型と第2平面部との隙間がより小さくなる。従って、金型と第2平面部との間から樹脂が更に漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0012】
望ましい態様として、前記第2環状部における軸方向の他方側には、環状の第4平面部が設けられ、前記第3環状部における軸方向の他方側には、環状の第5平面部が設けられ、前記第1平面部と前記第4平面部との軸方向の離隔距離は、第3距離であり、前記第1平面部と前記第5平面部との軸方向の離隔距離は、前記第3距離よりも小さい第4距離である。
【0013】
このように、第5平面部の方が第4平面部よりも軸方向の一方側に位置する。また、第5平面部の反対側の第3平面部は、第4平面部の反対側の第2平面部よりも軸方向の一方側に位置する。従って、第5平面部が第4平面部よりも軸方向の他方側に位置する場合よりも、第3環状部の軸方向厚さが小さくなるため、ウォームホイール全体の重量が軽減される。
【0014】
望ましい態様として、前記第2平面部における表面には、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる凹凸が複数設けられる。この凹凸は、例えば、切削加工、研削加工および研磨加工などの機械加工による加工痕である。機械加工によって第2平面部がより平滑になり、金型と第2平面部との間から樹脂が更に漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0015】
望ましい態様として、前記第2平面部は、表面処理された平面である。表面処理は、例えばショットボラストやショットピーニングなどの物理的処理、および、メッキ処理などが適用可能である。ショットボラストやショットピーニングなどによって、第2平面部の硬度を高めることができ、メッキ処理によって防錆性能が向上する。
【0016】
一態様に係る環状の芯金の製造方法は、中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金の製造方法であって、鍛造材料を準備する準備ステップと、前記準備ステップの後に、前記鍛造材料を鍛造してワークを製造する鍛造ステップと、前記鍛造ステップの後に、前記ワークを前記中心軸の軸回り方向に回転させながら、前記第2環状部における軸方向の一方側に機械加工を施す加工ステップと、を含む。これによれば、比較的に簡単な作業によって、芯金の第2環状部に第2平面部を形成することができる。
【0017】
一態様に係るウォームホイールの製造方法は、中心軸の軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有する環状の芯金と、前記第3環状部に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を備えるウォームホイールを製造するウォームホイールの製造方法であって、鍛造材料を準備する準備ステップと、前記準備ステップの後に、前記鍛造材料を鍛造してワークを製造する鍛造ステップと、前記鍛造ステップの後に、前記ワークを前記中心軸の軸回り方向に回転させながら、前記第2環状部における軸方向の一方側に機械加工を施して芯金を作製する加工ステップと、前記加工ステップの後に、前記芯金を射出成形型の内部に配置し、前記芯金の前記第2環状部における軸方向の一方側に射出成形型の一部を当接させる当接ステップと、前記当接ステップの後に、前記射出成形型の内部に樹脂を充填する充填ステップと、を含む。これによれば、平滑な第2平面部を有する芯金に樹脂ギヤを容易に成形することができる。また、樹脂ギヤを成形する際に、射出成形型の一部と第2環状部の第2平面部との間から樹脂が漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0018】
一態様に係るウォーム減速機は、中心軸の軸回りの周方向に延びる環状の芯金と、前記芯金の径方向外側部分に取り付けられ、且つ、前記周方向に沿って延びる樹脂ギヤと、を有するウォームホイールと、前記ウォームホイールを収納するハウジングと、を備え、前記芯金は、前記周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔が貫通して設けられる第1環状部と、前記第1環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第2環状部と、前記第2環状部の径方向外側に位置し、且つ、前記周方向に延びる第3環状部と、を有し、当該第3環状部に前記樹脂ギヤが取り付けられており、前記第2環状部における軸方向の一方側には、環状の第2平面部が設けられ、前記ハウジングは、前記第2平面部に向けて延び、且つ、先端が前記第2平面部に軸方向で対向する突出部を有する。
【0019】
このように、ハウジングは突出部を有し、突出部の先端は、第2平面部に軸方向で対向する。ここで、第2平面部は、第3平面部よりも軸方向の他方側に位置するため、突出部の先端を第2平面部により近づけて配置することができる。なお、第2平面部の平滑度合いがより高い場合は、更に、突出部の先端を第2平面部に近づけることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、芯金の径方向外側端部に樹脂ギヤを射出成形してウォームホイールを製造する場合に、成形不良の発生がより少ない、ウォームホイール、ウォームホイールの製造方法、ウォーム減速機および環状の芯金の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2図2は、図1の一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るウォームホイールを示す斜視図である。
図4図4は、図3の正面図である。
図5図5は、図4のV-V線による断面図である。
図6図6は、ウォームホイールの芯金の斜視図である。
図7図7は、図6の正面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線による断面図である。
図9図9は、芯金を中心軸の軸回りに1回転させた場合の第1変動距離および第2変動距離を示す概念図である。
図10図10は、環状の芯金の製造方法を示すフローチャートである。
図11図11は、ウォームホイールの製造方法を示すフローチャートである。
図12図12は、金型を用いて、芯金に樹脂を射出成形している状態を示す断面図である。
図13図13は、第2実施形態に係るウォームホイールを射出成形で製造している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、図面において、上側(軸方向の一方側)をD1で示し、下側(軸方向の他方側)をD2で示す。また、実施形態の記載においても、上側(軸方向の一方側)をD1側、下側(軸方向の他方側)をD2側と称する場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【0024】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、第2ステアリングシャフト83と、ピニオン軸1と、ウォーム減速機400と、ラック軸2と、タイロッド84と、ECU89と、電源装置90と、を備える。
【0025】
第1ステアリングシャフト82は、ステアリングホイール81と連結される。第1ステアリングシャフト82は、回転可能に支持される。第1ステアリングシャフト82は、ステアリングホイール81を操舵するトルクによって回転する。具体的には、運転者がステアリングホイール81を把持して回転させると、その回転トルク(操舵トルク)が第1ステアリングシャフト82に伝わり、第1ステアリングシャフト82が回転する。
【0026】
第2ステアリングシャフト83は、第1ユニバーサルジョイント85を介して第1ステアリングシャフト82と連結される。第2ステアリングシャフト83は、回転可能に支持される。第1ステアリングシャフト82の回転トルクが第1ユニバーサルジョイント85を介して第2ステアリングシャフト83に伝わり、第2ステアリングシャフト83が回転する。
【0027】
ここで、ハウジング87は、第1ハウジング871と、第2ハウジング872と、第3ハウジング873と、を有する。
【0028】
第2ハウジング872は、第1ハウジング871の下側(D2側、軸方向の他方側)に位置し、第3ハウジング873は、第2ハウジング872の下側(D2側)に位置する。即ち、第1ハウジング871は、ハウジング87の部位のうち上部に位置し、第2ハウジング872は、ハウジング87の部位のうち中間部に位置し、第3ハウジング873は、ハウジング87の部位のうち下部に位置する。
【0029】
図1に示すように、ピニオン軸1は、第2ユニバーサルジョイント86を介して第2ステアリングシャフト83と連結される。第2ステアリングシャフト83の回転トルクが第2ユニバーサルジョイント86を介してピニオン軸1に伝わり、ピニオン軸1は回転する。ピニオン軸1は、中心軸AXの軸方向に延びる。ピニオン軸1は、中心軸AXの軸回り方向に回転する。ピニオン軸1には、ピニオン歯120が設けられる。ピニオン軸1は、第2軸受91と第1軸受92とを介してハウジング87に回転可能に支持される。第2軸受91は、ピニオン軸1の上部を支持する。第1軸受92は、ピニオン軸1の下部を支持する。具体的には、ピニオン歯120の上側(D1側、軸方向の一方側)の円筒面128に第2軸受91が設けられる。
【0030】
第2ハウジング872の内側には、ラック軸2が収容される。ラック軸2は、車両の車幅方向(左右方向)に延びる。ラック軸2の側部には、ラック歯21が設けられる。ラック歯21は、ピニオン軸1のピニオン歯120と噛み合う。タイロッド84は、ラック歯21の左右両側に一対に設けられる。タイロッド84は、車輪88に連結される。従って、ピニオン軸1が回転すると、ピニオン歯120と噛み合うラック歯21に対して車幅方向の力が伝わり、ラック軸2が左右に移動する。これにより、タイロッド84が左右方向に移動し、車輪88が傾いて車両の進行方向が変わる。
【0031】
ウォーム減速機400は、ウォームシャフト71と、ウォームホイール3と、第3ハウジング873と、を備える。即ち、ウォームシャフト71およびウォームホイール3は、第3ハウジング873の内側に収容される。ウォームシャフト71は、電動モータ72の出力軸に設けられる。ウォームシャフト71は、ウォームホイール3と噛み合う。ウォームホイール3は、ピニオン軸1の下端部に固定される。従って、電動モータ72を作動させるとウォームシャフト71が回転し、ウォームシャフト71と噛み合うウォームホイール3がピニオン軸1と共に回転する。これにより、ステアリングホイール81の操舵に要する力が小さくなる。なお、ウォーム減速機400については、詳細に後述する。
【0032】
ECU89は、電源装置90(例えば車載のバッテリ)と接続され、電源装置90から電力がECU89に供給される。ECU89は、電動モータ72の動作を制御する。ECU89は、図外のトルクセンサおよび車速センサから信号を取得する。ECU89は、操舵トルクおよび車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU89は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ72へ供給する電力値を調節する。ECU89は、電動モータ72から誘起電圧の情報または電動モータ72に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU89が電動モータ72の動作を制御することで、前述したように、ステアリングホイール81の操舵に要する力が小さくなる。
【0033】
図2は、図1の一部を拡大して示す断面図である。ピニオン軸1は、入力軸11と、出力軸12と、トーションバー13と、を有する。入力軸11は、出力軸12よりも上側(D1側)に位置する。入力軸11と出力軸12とは、トーションバー13を介して連結される。図2においては、出力軸12の上端部に凹部12aが設けられ、凹部12aにトーションバー13の下端部が嵌合される。第2軸受91は、例えば、複数のニードル91aを有するニードルベアリングであるが、通常の深溝玉軸受であってもよい。第2ハウジング872の内側に出力軸12が収容され、出力軸12は第2軸受91を介して第2ハウジング872に対して回転可能に支持される。
【0034】
図2に示すように、第2ハウジング872には、貫通孔872aが形成され、貫通孔872aには、ラック軸2と、押圧部材22と、バネ23と、封止部材24と、が収容される。ラック軸2の径方向外側には、押圧部材22が配置され、押圧部材22の径方向外側には、封止部材24が配置され、押圧部材22と封止部材24とのとの間にはバネ23が設けられる。これにより、ラック軸2は、バネ23の弾性力によって出力軸12のピニオン歯120に押し付けられる。
【0035】
ラック軸2には、出力軸12側の側面にラック歯21が設けられる。ラック歯21は、図2の紙面の前後方向に沿って複数設けられる。出力軸12の外周には、ピニオン歯120が設けられる。ピニオン歯120は、中心軸AXの軸方向に行くに従って螺旋状に延びる。ピニオン歯120は、ラック歯21に噛み合う。即ち、ピニオン軸1およびピニオン歯120が中心軸AXの軸回り方向に回転すると、ピニオン歯120に噛み合ったラック歯21およびラック軸2が車幅方向に移動する。
【0036】
図2に示すように、ピニオン軸1の部位のうちピニオン歯120の下側(D2側)には、円筒面126が設けられ、円筒面126の下側(D2側)には、円筒面127が設けられる。円筒面126には、第1軸受92が取り付けられる。また、第3ハウジング873の内側には、軸受収容部873aが設けられ、軸受収容部873aに第1軸受92が収容される。また、第3ハウジング873における下側(D2側)には、D2側に突出する突出部873bを有する。突出部873bの内周には、支持部材93が締結されている。具体的には、突出部873bの内周に雌ねじが切ってあり、支持部材93の外周に雄ねじが切ってあり、突出部873bの内周の雌ねじに、支持部材93の外周の雄ねじが噛み合っている。これにより、第1軸受92は、軸受収容部873aと、支持部材93とによって軸方向に挟持される。
【0037】
なお、円筒面127には、ウォームホイール3が取り付けられる。以下に、ウォームホイール3について詳細に説明する。図3は、第1実施形態に係るウォームホイールを示す斜視図である。図4は、図3の正面図である。図5は、図4のV-V線による断面図である。図6は、ウォームホイールの芯金の斜視図である。図7は、図6の正面図である。図8は、図7のVIII-VIII線による断面図である。図9は、芯金を前記中心軸の軸回りに1回転させた場合の第1変動距離および第2変動距離を示す概念図である。
【0038】
図3から図8に示すように、ウォームホイール3は、芯金4と、樹脂ギヤ5と、を備える。
【0039】
芯金4は、中心軸Axの軸回りの周方向に延びる。芯金4は、例えば金属である。芯金4は、第1環状部41と、第2環状部42と、第3環状部43と、フランジ44と、を備える。
【0040】
図8に示すように、第1環状部41は、中心軸Axの軸方向に延びる円筒部411を有する。円筒部411におけるD1側(軸方向の一方側)の端部には、環状の第1平面部412が設けられる。第1平面部412は、中心軸Axに対して直交する。即ち、第1平面部412と中心軸Axとの交差角は、略90度である。円筒部411におけるD2側(軸方向の一方側)の端部には、環状の第6平面部416が設けられる。円筒部411における内周面414の内周側には、シャフト挿入孔415が設けられる。シャフト挿入孔415には、図2に示したピニオン軸1の円筒面127が挿入される。円筒面127に、セレーション加工(円周面に鋸刃上の溝を形成する加工)を施し、シャフト挿入孔415に円筒面127を圧入(いわゆるセレーション圧入)することにより、芯金4とピニオン軸1とを固定してもよい。
【0041】
図8に示すように、第2環状部42は、第1環状部41の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる。第2環状部42におけるD1側(軸方向の一方側)の端部には、環状の第2平面部421が設けられる。第2平面部421は、例えば、機械加工された平面である。機械加工は、例えば、切削加工が適用可能である。また、切削加工としては、旋盤加工、フライス加工などが望ましい。旋盤加工では、例えば、材料である芯金4を回転させ、第2環状部42におけるD1側にバイトを押し当てて第2環状部42を加工する。フライス加工では、例えば、固定した芯金4の第2環状部42のD1側に、回転するバイトを押し当てて、第2環状部42を加工する。
【0042】
なお、切削加工以外にも、例えば研削加工や研磨加工などの種々の機械加工が適用可能である。旋盤加工では、例えば、材料である芯金4を回転させ、第2環状部42におけるD1側に砥石を押し当てて第2環状部42を加工する。高速で回転する砥石で芯金4の第2環状部42を少しずつ削り取って加工してもよい。研磨加工では、グラインダーやバレル加工機を用いて、研削加工よりもさらに細かく削ることができる。
【0043】
図8に示すように、第2平面部421は、中心軸Axに対して直交する径方向に沿って延びる。すなわち、第2平面部421は、径方向に沿って、径方向内側端421aから径方向外側端421bまで延びる。換言すると、第2平面部421と中心軸Axとの交差角は、略90度である。なお、好ましくは、第2平面部421は、中心軸Axに対して直交し、第2平面部421と中心軸Axとの交差角は、90度である。第2平面部421は、第1平面部412よりもD2側に位置する。
【0044】
また、径方向内側端421aの径方向内側には、環状面部413が設けられる。環状面部413は、中心軸Axの軸方向に延びる。換言すると、環状面部413は、第2平面部421と直交する。径方向外側端421bの径方向外側には、環状面部433が設けられる。環状面部433は、第2平面部421と、第3平面部431とを連結する。環状面部433は、中心軸Axの軸方向に延びる。換言すると、環状面部433は、第2平面部421と直交する。また、第2環状部42のD2側における径方向外側部分には、環状の第4平面部422が設けられる。即ち、第4平面部422は、第2平面部421の反対側に位置する。なお、第2平面部421のD1側の表面には、中心軸Axの軸回りの周方向に延びる凹凸(図示せず)を複数設けてもよい。この凹凸は、前述した機械加工による加工痕である。さらに、第2平面部421は、表面処理された平面としてもよい。表面処理は、例えばショットボラストやショットピーニングなどの物理的処理、および、錆抑制のためのメッキ処理などが適用可能である。
【0045】
なお、環状面部413および環状面部433は、中心軸Axに対して斜めに交差する傾斜部であってもよい。すなわち、例えば、環状面部413は、径方向内側に行くに従ってD1側に向かうように傾斜してもよい。そして、環状面部433は、径方向外側に行くに従ってD1側に向かうように傾斜してもよい。
【0046】
図8に示すように、第3環状部43は、第2環状部42の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる。第3環状部43におけるD1側(軸方向の一方側)の端部には、環状の第3平面部431が設けられる。第3平面部431は、径方向に沿って、径方向内側端431aから径方向外側端431bまで延びる。第3環状部43のD2側における径方向外側部分には、環状の第5平面部432が設けられる。即ち、第5平面部432は、第3平面部431の反対側に位置する。
【0047】
図8に示すように、フランジ44は、第3環状部43の径方向外側に設けられる。フランジ44におけるD1側(軸方向の一方側)の端部には、環状の平面部441が設けられる。平面部441は、第3平面部431よりもD1側(軸方向の一方側)に位置する。フランジ44の外周面443は、周方向に延びる円筒面である。しかし、図6に示すように、フランジ44の内周面442は、凹溝を有する。なお、フランジ44は、D2側の角に円筒面部444が設けられる。円筒面部444は、中心軸Axに直交する。
【0048】
ここで、図8に示すように、第1平面部412と第2平面部421との軸方向の離隔距離は、第1距離L1である。第1平面部412と第3平面部431との軸方向の離隔距離は、第2距離L2である。第2距離L2は、第1距離L1よりも小さい。
【0049】
さらに、図8に示すように、第1平面部412と第4平面部422との軸方向の離隔距離は、第3距離L3である。第1平面部412と第5平面部432との軸方向の離隔距離は、第4距離L4である。第4距離L4は、第3距離L3よりも小さい。
【0050】
なお、図2を参照して前述したように、第3ハウジング873における下側(D2側)には、D2側に突出する突出部873bを有する。突出部873bは、第2平面部421に向けて延びる。突出部873bの先端874が第2平面部421に軸方向で対向する。先端874は、第2平面部421に近接している。
【0051】
図9に示すように、芯金4を中心軸Axの軸回りに1回転させた場合の第1変動距離L10および第2変動距離L20について説明する。第1変動距離L10は、芯金4を中心軸Axの軸回りに1回転(360度)させた場合において、第2平面部421の最もD1側(軸方向の一方側)の軸方向位置P1と最もD2側(軸方向の他方側)の軸方向位置P11との軸方向に沿った距離である。第2変動距離L20は、芯金4を中心軸Axの軸回りに1回転(360度)させた場合において、第3平面部431の最もD1側(軸方向の一方側)の軸方向位置P2と最もD2側(軸方向の他方側)の軸方向位置P21との軸方向に沿った距離である。
【0052】
図9に示すように、第1変動距離L10および第2変動距離L20の測定には、例えば、変位センサ200、210を適用することができる。変位センサ200によって、第2平面部421の中心軸Axの軸方向の変位を測定することができる。変位センサ210によって、第3平面部431の中心軸Axの軸方向の変位を測定することができる。図9の四角で囲った部位に示すグラフは、縦軸がセンサ変位(軸方向の変動距離)を示し、横軸が芯金4の回転角度θを示す。第1変動距離L10は、図9の下側の四角で囲ったグラフに示すように、軸方向位置P1と軸方向位置P11との差である。第2変動距離L20は、図9の上側の四角で囲ったグラフに示すように、軸方向位置P2と軸方向位置P21との差である。そして、第1変動距離L10は、第2変動距離L20よりも小さい。
【0053】
また、図5に示すように、樹脂ギヤ5は、芯金4の第3環状部43およびフランジ44に設けられる。具体的には、例えば、芯金4の第3環状部43およびフランジ44の外側に樹脂を射出成形することにより、樹脂ギヤ5を成形することができる。図3および図4に示すように、樹脂ギヤ5の外周には、複数の歯部51が設けられる。樹脂ギヤ5の歯部51は、ウォームシャフト71に噛み合う。ウォームシャフト71は、図1を参照して説明したように、電動モータ72によって回転駆動する。
【0054】
次に、環状の芯金の製造方法、およびウォームホイールの製造方法を説明する。図10は、環状の芯金の製造方法を示すフローチャートである。図11は、ウォームホイールの製造方法を示すフローチャートである。図12は、金型を用いて、芯金に樹脂を射出成形している状態を示す断面図である。
【0055】
環状の芯金4の製造方法は、図10に示すように、準備ステップS1と、鍛造ステップS2と、加工ステップS3と、を備える。
【0056】
準備ステップS1においては、鍛造に用いる金属の鍛造材料を準備する。鍛造ステップS2においては、準備ステップS1の後に、鍛造材料に対して鍛造加工を施す。鍛造は、例えば、加熱した鍛造材料に対して鍛造金型で圧力を加えて変形させる熱間鍛造や、ほぼ常温の鍛造材料に対して鍛造金型で圧力を加えて変形させる冷間鍛造によって行う。鍛造ステップS2では、鍛造材料を鍛造してワークを製造する。加工ステップS3においては、鍛造ステップS2の後に、ワークに対して前述した機械加工を行う。機械加工は、旋盤加工、フライス加工などの切削加工である。例えば、ワークを中心軸Axの軸回り方向に回転させながら、第2環状部42におけるD1側(軸方向の一方側)に機械加工を施す。これによって、第2平面部421が形成される。
【0057】
次に、ウォームホイール3の製造方法を説明する。ウォームホイール3の製造方法は、図11に示すように、準備ステップS11と、鍛造ステップS12と、加工ステップS13と、当接ステップS14と、充填ステップS15と、を備える。
【0058】
準備ステップS11、鍛造ステップS12および加工ステップS13は、環状の芯金4の製造方法における準備ステップS1、鍛造ステップS2および加工ステップS3と同じであるため、説明を省略する。なお、加工ステップS13によって、第2平面部421を有する環状の芯金4が形成される。
【0059】
次に、当接ステップS14と、充填ステップS15とを行う。まず、射出成形型である金型6の構造を簡単に説明する。
【0060】
図12に示すように、金型6は、第1型61と、第2型62と、第3型63と、第4型64とを備える。第1型61は、金型6におけるX2側に配置される。第1型61は、固定側の金型であり、第2型62、第3型63および第4型64は可動側の金型である。第4型64は、環状の形状を有し、内周面64aに歯形が設けられる。内周面64aの歯形によって、樹脂ギヤ5の歯部51が成形される。第2型62、第3型63および第4型64は、同軸状に一体に組み付けられている。第2型62、第3型63および第4型64は、一体の状態でX方向にスライド可能である。このため、金型6が閉じるとき、第2型62、第3型63および第4型64は一体で、X2側にスライドし、金型6が開くとき、第2型62、第3型63および第4型64は一体で、X1側にスライドする。
【0061】
第1型61の前面61aは、芯金4よりもX2側に位置する。これにより、第1型61の前面61aと芯金4との間に間隙が生じる。第1型61には、樹脂100の流入路61bが形成される。流入路61bの先端61cから流入路61bに樹脂100が流入可能である。
【0062】
第2型62は、小径部62aと、中径部62bと、大径部62cと、を備える。中径部62bは、小径部62aのX1側に配置され、大径部62cは、中径部62bのX1側に配置される。第2型62におけるX2側の当接部位62dが第2環状部42の第2平面部421に当接する。第2型62には、X方向に沿って貫通孔62eが設けられる。また、小径部62aは、円筒状の外周面62fを有し、中径部62bは、平面状の側面62gと、円筒状の外周面62hとを有する。
【0063】
第3型63は、第2型62の貫通孔62e内に沿って組み付けられている。第3型63は、小径部63aと、大径部63bと、を備える。小径部63aの外周面63cが、円筒部411における内周面414の内周側に挿入される。第4型64の内周面64aは、フランジ44の径方向外側に配置される。
【0064】
以上の構成を有する金型6を用いて、芯金4に熱可塑性樹脂を射出成形する手順を簡単に説明する。芯金4に熱可塑性樹脂を射出成形する手順は、前述のように、当接ステップS14と、充填ステップS15とを含む。
【0065】
まず、図12に示すように、当接ステップS14においては、金型6を開き、金型6の内側に芯金4を配置する。具体的には、前述のように、第2型62、第3型63および第4型64をスライドさせて金型6を開き、芯金4を金型6の内側に収容したのち、第2型62、第3型63および第4型64をスライドさせて金型6を閉じる。すると、第2型62におけるX2側の当接部位62dが第2環状部42の第2平面部421に当接する。当接部位62dは、射出成形型の一部である。
【0066】
次に、充填ステップS15においては、当接ステップS14の後に、金型6の内部に樹脂100を充填する。すなわち、図12における矢印110に示すように、先端61cから流入路61bに樹脂100を注入する。樹脂100は、例えば熱可塑性樹脂であり、高温になって軟化または溶融している。この樹脂100は、流入路61bの内側をX1側に向けて移動したのち、第3型63の小径部63aにおけるX2側の側面63dに当たったのち、芯金4に沿って径方向外側に移動する。そして、樹脂100は、フランジ44の径方向外側からフランジ44の内周面442に回り込んで樹脂の流れが止まる。フランジ44の内周面442は、凹溝を有するため、この凹溝に樹脂100が入り込む。
【0067】
その後、樹脂100が硬化したのち、金型6を開いて成形品を取り出し、ゲートカット部52(図5参照)より軸方向内側の余分な樹脂を削り取ることによって、ウォームホイール3が完成する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によるウォームホイール3は、中心軸Axの軸回りの周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔415が貫通して設けられる第1環状部41と、第1環状部41の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる第2環状部42と、第2環状部42の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる第3環状部43と、を有する環状の芯金4と、第3環状部43に取り付けられ、且つ、周方向に沿って延びる樹脂ギヤ5と、を備える。第1環状部41におけるD1側(軸方向の一方側)には、環状の第1平面部412が設けられ、第2環状部42におけるD1側(軸方向の一方側)には、第1平面部412よりもD2側(軸方向の他方側)に位置する環状の第2平面部421が設けられ、第3環状部43におけるD1側(軸方向の一方側)には、第1平面部412よりもD2側(軸方向の他方側)に位置する環状の第3平面部431が設けられる。第2平面部421は、中心軸Axに直交する径方向に沿って延びる。
【0069】
金型の部位のうち、第2平面部421に当接する当接部位は、通常、中心軸Axに直交する平面を有する。本実施形態では、第2平面部421は、中心軸Axに直交する径方向に沿って延びる。従って、芯金4を金型に設置した状態では、金型6の当接部位は、芯金の第2平面部に密着して接する。このため、金型に樹脂を充填した場合に、金型の当接部位と芯金の第2平面部との当接部分から樹脂が漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0070】
なお、図5に示すように、ウォームホイール3において、樹脂ギヤ5に対してD1側またはD2側に矢印で示すような力Fが加わると、樹脂ギヤ5は、フランジ44から脱離しやすくなる。ここで、前述したように、芯金4には、環状面部433および円筒面部444が設けられる。環状面部433および円筒面部444は、径方向(図5の上下方向)に延びるため、第3平面部431および第5平面部432と直交する。従って、樹脂ギヤ5に対して力Fが加わる場合でも、環状面部433および円筒面部444が樹脂ギヤ5に引っ掛かるため、樹脂ギヤ5がフランジ44から脱離することが抑制される。
【0071】
第2平面部421は、機械加工された平面であるため、機械加工されていない平面に対して、より平滑になる。従って、当接部位62dと第2平面部421との間に隙間が更に生じにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0072】
芯金4を中心軸Axの軸回りに1回転させた場合に、第2平面部421の最もD1側(軸方向の一方側)の軸方向位置と最もD2側(軸方向の他方側)の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第1変動距離L10は、芯金4を中心軸Axの軸回りに1回転させた場合に、第3平面部431の最もD1側(軸方向の一方側)の軸方向位置と最もD2側(軸方向の他方側)の軸方向位置との軸方向に沿った距離である第2変動距離L20よりも小さい。
【0073】
金型6の部位のうち、第2平面部421に当接する部位が平面の場合、変動距離が小さい方が、金型6と第2平面部421との隙間がより小さくなる。従って、金型6と第2平面部421との間から樹脂100が更に漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0074】
第2環状部42におけるD2側(軸方向の他方側)には、環状の第4平面部422が設けられ、第3環状部43におけるD2側(軸方向の他方側)には、環状の第5平面部432が設けられる。第1平面部412と第4平面部422との軸方向の離隔距離は、第3距離L3であり、第1平面部412と第5平面部432との軸方向の離隔距離は、第3距離L3よりも小さい第4距離L4である。
【0075】
このように、第5平面部432の方が第4平面部422よりもD1側(軸方向の一方側)に位置する。また、第5平面部432の反対側の第3平面部431は、第4平面部422の反対側の第2平面部421よりもD1側(軸方向の一方側)に位置する。
【0076】
従って、第5平面部432の方が第4平面部422よりもD2側(軸方向の他方側)に位置する場合よりも、第3環状部43の軸方向厚さが小さくなるため、ウォームホイール3全体の重量が軽減される。
【0077】
第2平面部421における表面には、中心軸Axの軸回りの周方向に延びる凹凸が複数設けられる。この凹凸は、例えば、切削加工、研削加工および研磨加工などの機械加工による加工痕である。機械加工によって第2平面部421がより平滑になり、金型6と第2平面部421との間から樹脂100が更に漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0078】
第2平面部421は、表面処理された平面である。表面処理は、例えばショットボラストやショットピーニングなどの物理的処理、および、メッキ処理などが適用可能である。ショットボラストやショットピーニングなどによって、第2平面部421の硬度を高めることができ、メッキ処理によって防錆性能が向上する。
【0079】
本実施形態に係る環状の芯金4の製造方法は、ワークを中心軸Axの軸回り方向に回転させながら、第2環状部42におけるD1側(軸方向の一方側)に機械加工を施す加工ステップS3を含む。これによれば、比較的に簡単な作業によって、芯金4の第2環状部42に第2平面部421を形成することができる。
【0080】
本実施形態に係るウォームホイールの製造方法は、加工ステップS13の後に、金型6におけるX2側の当接部位62d(射出成形型の一部)を第2環状部42の第2平面部421に当接させる当接ステップS14と、金型6(射出成形型)の内部に樹脂100を充填する充填ステップS15と、を含む。これによれば、平滑な第2平面部421を有する芯金4に樹脂ギヤ5を容易に成形することができる。また、樹脂ギヤ5を成形する際に、当接部位62d(射出成形型の一部)と第2環状部42の第2平面部421との間から樹脂100が漏れにくくなり、成形不良を更に抑制することができる。
【0081】
ウォーム減速機400は、中心軸Axの軸回りの周方向に延びる環状の芯金4と、芯金4の径方向外側部分に取り付けられ、且つ、周方向に沿って延びる樹脂ギヤ5と、を有するウォームホイール3と、ウォームホイール3を収納するハウジング87と、を備える。芯金4は、周方向に延び、且つ、内周にシャフト挿入孔415が貫通して設けられる第1環状部41と、第1環状部41の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる第2環状部42と、第2環状部42の径方向外側に位置し、且つ、周方向に延びる第3環状部43と、を有する。第3環状部43に樹脂ギヤ5が取り付けられており、第2環状部42におけるD1側(軸方向の一方側)には、環状の第2平面部421が設けられる。ハウジング87は、第2平面部421に向けて延び、且つ、先端が第2平面部421に軸方向で対向する突出部873bを有する。
【0082】
このように、ハウジング87は突出部873bを有し、突出部873bの先端は、第2平面部421に軸方向で対向する。ここで、第2平面部421は、第3平面部431よりもD2側(軸方向の他方側)に位置するため、突出部873bの先端を第2平面部421により近づけて配置することができる。なお、第2平面部421の平滑度合いがより高い場合は、更に、突出部873bの先端を第2平面部421に近づけることができる。
【0083】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図13は、第2実施形態に係るウォームホイールを射出成形で製造している状態を示す断面図である。
【0084】
第2実施形態に係る芯金4Aは、第1実施形態に係る芯金4に対してフランジ44Aの形状が相違する。以下に、芯金4Aの形状を簡単に説明する。
【0085】
図13に示すように、フランジ44Aは、肉厚部442Aと、薄肉部444Aと、を有する。フランジ44Aの外周面は、中心軸AXの周方向に沿って延びる円筒面である。肉厚部442Aにおける平面部441Aの径方向距離は、第1実施形態の芯金4のフランジ44における平面部441の径方向距離よりも大きい。また、肉厚部442Aおよび薄肉部444Aの内周面は、芯金4のフランジ44の内周面と同様に凹溝を有する。薄肉部444Aの内周面は、X2側に行くに従って径方向外側に延びる傾斜面である。従って、薄肉部444Aの内周面と第3平面部431との間には、径方向外側に突出する断面三角形状の間隙445Aが形成される。
【0086】
次に、金型6Aの構造を簡単に説明する。
【0087】
金型6Aは、第1型61Aと、第2型62Aと、第3型63Aと、第4型64Aと、を備える。第1型61Aは、金型6AにおけるX2側に配置される。第1型61Aは、固定側の金型であり、第2型62A、第3型63Aおよび第4型64Aは可動側の金型である。第2型62A、第3型63Aおよび第4型64Aは、一体に組み付けられるため、スライドする際も一体である。第4型64Aは、環状の形状を有し、内周面64Aaに歯形が設けられる。内周面64Aaの歯形によって、樹脂ギヤの歯部が成形される。
【0088】
第1型61Aの前面61Aaは、芯金4AよりもX2側に位置する。第2型62Aは、小径部62Aaと、大径部62Abと、を備える。第2型62AにおけるX2側の当接面62Adが第2環状部42の第2平面部421に当接する。
【0089】
第3型63Aは、第2型62Aの貫通孔62Ae内をX方向に沿ってスライド可能である。第3型63Aは、小径部63Aaと、大径部63Abと、を備える。第4型64の内周面64Aaは、フランジ44の径方向外側に配置される。
【0090】
以上の構成を有する金型6Aを用いて、芯金4Aに熱可塑性樹脂を射出成形する手順を簡単に説明する。射出成形の手順は、配置ステップと、充填ステップと、を含む。
【0091】
まず、配置ステップにおいては、金型6Aを開き、金型6Aの内側に芯金4Aを配置したのち、金型6を閉じる。
【0092】
次に、充填ステップにおいては、矢印110に示すように、先端61cから流入路61bに樹脂100を注入する。この樹脂100は、流入路61bの内側をX1側に向けて移動したのち、第3型63Aの小径部63AaにおけるX2側の側面63Acに当たったのち、芯金4AのX2側の面に沿って径方向外側に移動する。そして、樹脂100は、フランジ44Aの外周面443Aから平面部441Aに沿って流れたのち、肉厚部442Aの内周面に至る。ここで、前述したように、肉厚部442Aおよび薄肉部444Aの内周面は凹溝を有するため、この凹溝に樹脂100が入り込んで充填される。そののち、樹脂100は、間隙445Aまで流入して充填される。なお、樹脂100が硬化したのち、金型6Aを開いて成形品を取り出し、ゲートカット部52(図5参照)より軸方向内側の余分な樹脂を削り取ることによって、ウォームホイール3Aが完成する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態において、フランジ44Aは肉厚部442Aと薄肉部444Aと有し、薄肉部444Aの内周面と第3平面部431との間には、径方向外側に突出する断面三角形状の間隙445Aが形成される。
【0094】
図13に示すように、ウォームホイール3Aにおいて、樹脂ギヤに対してX1側またはX2側に矢印で示すような力Fが加わると、樹脂ギヤは、フランジ44Aから脱離しやすくなる。ここで、射出成形によって、間隙445Aの部位にも樹脂100が充填されるため、樹脂ギヤに対して力Fが加わる場合でも、間隙445Aに入り込んだ樹脂100によって、樹脂ギヤがフランジ44Aから脱離することが抑制される。
【0095】
なお、本実施形態は、ウォームホイール3、3Aを第1ステアリングシャフト82に取り付けて、アシストトルクを第1ステアリングシャフト82に発生させる、いわゆるコラムアシスト型の電動パワーステアリングに適用してもよい。この場合においても、ウォームホイール3、3Aを格納するハウジングが、ウォームホイール3,3Aに設けられた第2平面部に向けて延び、且つ、先端が前記第2平面部に軸方向で対向する突出部を備えるように構成されていてもよい。
【0096】
本実施形態は、ハンドルとタイヤとが、機械的に分離されたステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用されてもよい。ステアバイワイヤ方式の操舵装置は、ハンドルに反力を付与する反力装置と、タイヤを転舵させる力を付与する転舵装置を備える。本実施形態に示すウォーム減速機は、反力装置と転舵装置のいずれにも用いることができる。
【0097】
反力装置に用いる場合、ハンドルを支持するコラム軸にウォームホイール3、3Aを取り付けて、コラム軸に反力トルクを付与する。転舵装置に用いる場合、タイヤに転舵力を発生するラックピニオン機構のピニオンにウォームホイール3、3Aを取り付け、ラックピニオン機構を介して、タイヤに転舵力を付与する。
【符号の説明】
【0098】
1 ピニオン軸
2 ラック軸
3、3A ウォームホイール
4、4A 芯金
5 樹脂ギヤ
6、6A 金型
11 入力軸
12 出力軸
12a 凹部
13 トーションバー
21 ラック歯
22 押圧部材
23 バネ
24 封止部材
41 第1環状部
42 第2環状部
43 第3環状部
44、44A フランジ
51 歯部
52 ゲートカット部
61、61A 第1型
61a、61Aa 前面
61b 流入路
62、62A 第2型
62a、62Aa 小径部
62Ab 大径部
62Ad 当接面
62Ae 貫通孔
62b 中径部
62c 大径部
62d 当接部位
62e 貫通孔
62f 外周面
62g 側面
62h 外周面
63、63A 第3型
63a 小径部
63b 大径部
63c 外周面
63Aa 小径部
63Ab 大径部
64、64A 第4型
64a 内周面
64Aa 内周面
71 ウォームシャフト
72 電動モータ
80 電動パワーステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
83 第2ステアリングシャフト
84 タイロッド
85 第1ユニバーサルジョイント
87 ハウジング
88 車輪
89 ECU
90 電源装置
91 第2軸受
91a ニードル
92 第1軸受
93 支持部材
100 樹脂
120 ピニオン歯
126,127 円筒面
200、210 変位センサ
400 ウォーム減速機
411 円筒部
412 第1平面部
413 環状面部
414 内周面
415 シャフト挿入孔
416 第6平面部
421 第2平面部
421a 径方向内側端
421b 径方向外側端
422 第4平面部
431 第3平面部
431a 径方向内側端
432 第5平面部
433 環状面部
441、441A 平面部
442 内周面
442A 肉厚部
443 外周面
444 円筒面部
444A 薄肉部
445A 間隙
871 第1ハウジング
872 第2ハウジング
872a 貫通孔
873 第3ハウジング
873a 軸受収容部
873b 突出部
874 先端
Ax 中心軸
F 力
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 第3距離
L4 第4距離
L10 第1変動距離
L20 第2変動距離
S1 準備ステップ
S2 鍛造ステップ
S3 加工ステップ
S11 準備ステップ
S12 鍛造ステップ
S13 加工ステップ
S14 当接ステップ
S15 充填ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13