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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043075
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】溝蓋
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
E03F5/04 D
E03F5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150579
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆男
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆尚
(72)【発明者】
【氏名】上甲 信
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CB06
(57)【要約】
【課題】非常事態において排水溝から排水を溢れさせずに長時間に亘って排水溝に漏れ出た液状油の下流側への流出を防ぐことが可能な溝蓋を提供する。
【解決手段】溝蓋1は、排水溝G1を覆う溝蓋本体2と、一端が回動軸4を中心として回動可能に溝蓋本体2の裏面に軸支された排水堰止板3とを備え、排水堰止板3は、溝蓋本体2の裏面に沿う第1姿勢P1から下方に回動させた際、排水溝G1の通路を遮って堰き止める第2姿勢P2となるよう構成される。排水堰止板3は、複数の貫通孔33aが形成された孔形成領域R1を有する本体部30と、本体部30の第2姿勢P2における溝通路方向上流側に位置するカバー部35とを備える。カバー部35は、本体部30との間に空間S1が形成されるように孔形成領域R1を覆うとともに外周部分が回動軸4側の領域を除いて本体部30に隙間無く接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝の上部解放領域を覆う溝蓋本体と、一端が前記排水溝の溝幅方向に延びる回動軸を中心として回動可能に前記溝蓋本体の裏面に軸支され、当該溝蓋本体の裏面に沿う第1姿勢から他端側が下方に移動するよう回動させた際、前記排水溝の通路を遮って排水を堰き止める第2姿勢となるよう構成された排水堰止板とを備えた溝蓋であって、
前記排水堰止板は、前記排水溝における第2姿勢の前記排水堰止板の上流側領域と下流側領域とを連通させる孔が少なくとも1つ形成された孔形成領域を有する板状の本体部と、該本体部の前記第2姿勢における溝通路方向上流側に位置し、且つ、前記本体部との間に所定の空間が形成されるように前記孔形成領域を覆うとともに外周部分が前記回動軸側の領域を除いて前記本体部に隙間無く接続されたカバー部とを備えていることを特徴とする溝蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の溝蓋において、
前記本体部の周縁部には、前記排水堰止板が第2姿勢の際、前記排水溝の内周面との隙間を埋めるシール部材が設けられていることを特徴とする溝蓋。
【請求項3】
請求項2に記載の溝蓋において、
前記シール部材は、スポンジ材で形成されていることを特徴とする溝蓋。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の溝蓋において、
前記溝蓋本体には、溝通路方向に所定の間隔をあけて複数並設され、上下に幅広な板状をなすベアリングバーと、前記排水堰止板を第1姿勢で固定するロック位置と前記排水堰止板の第1姿勢の固定を解除して当該排水堰止板を回動可能にするロック解除位置とにそれぞれ切替可能なロック操作部材を有するロック機構とが設けられ、
前記ロック操作部材は、隣り合う2つの前記ベアリングバーの間に配設され、溝幅方向にスライドさせることにより前記排水堰止板のロック位置とロック解除位置とにそれぞれ切り替えるよう構成されていることを特徴とする溝蓋。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の溝蓋において、
前記回動軸には、前記排水堰止板を前記溝蓋本体から離間する方向に付勢する捩じりバネが巻装されていることを特徴とする溝蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に溜まった雨水等を排水する排水溝を覆う溝蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路脇に形成されている雨水を排水する排水溝には、歩行者や自動車等が落ちないように溝蓋がその上部開口領域を覆うように取り付けられている。
【0003】
ところで、工場等では、予期せぬ非常事態が発生した際、取り扱う液状油が意に反して屋外に漏れ出て上述の如き雨水用の排水溝に流れ出てしまうことがある。このような漏れ出た液状油が排水溝を介して雨水とともに排水施設まで流れ着いてしまうと、海や河川等の公共用水域の水質が悪化してしまうおそれがある。
【0004】
これを回避するために、工場等から屋外に漏れ出た液状油を排水溝より下流側に流出させないような取り組みが一般的になされている。例えば、特許文献1に開示されている排水溝を覆う溝蓋は、金属フレームが平面視で格子状に延びる溝蓋本体を備え、該溝蓋本体の裏面側には、長方形板状をなす排水堰止板が配設されている。該排水堰止板は、その長手方向一端が排水溝の溝幅方向に延びる回動軸により溝蓋本体の裏面に軸支され、回動軸を中心として上下に回動可能になっている。溝蓋本体には、ロック操作部材を有するロック機構が設けられ、該ロック機構は、排水堰止板を溝蓋本体の裏面に沿う姿勢で固定可能になっている。そして、工場等において非常事態になった際、作業員等がロック操作部材を操作してロック機構による排水堰止板の固定を解除すると、当該排水堰止板が回動軸を中心に下方に回動して排水溝の通路を遮る姿勢になり、工場等から屋外に漏れ出た液状油を排水堰止板で堰き止めて液状油のそれ以上の下流側への流出を防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-25102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の場合、排水堰止板を排水溝の通路を遮る姿勢にすると、排水堰止板が排水溝における通路断面の全領域を遮るので、排水溝の排水機能が完全に無くなってしまう。したがって、ロック機構を操作した直後においては、工場等から漏れ出た液状油のそれ以上の下流側への流出を防ぐことができるようにはなるものの、対応が長時間に亘ると、排水溝における排水堰止板の上流側領域に排水が次第に溜まっていき、ひいては排水が溝蓋本体を介して排水溝から溢れ出て道路等を汚してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非常事態において排水溝から排水を溢れさせずに長時間に亘って排水溝に漏れ出た液状油の下流側への流出を防ぐことが可能な溝蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、排水堰止板で排水溝の通路を遮ったときに液状油を除く排水だけが排水堰止板を通過可能となるように工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、排水溝の上部解放領域を覆う溝蓋本体と、一端が前記排水溝の溝幅方向に延びる回動軸を中心として回動可能に前記溝蓋本体の裏面に軸支され、当該溝蓋本体の裏面に沿う第1姿勢から他端側が下方に移動するよう回動させた際、前記排水溝の通路を遮って排水を堰き止める第2姿勢となるよう構成された排水堰止板とを備えた溝蓋を対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、前記排水堰止板は、前記排水溝における第2姿勢の前記排水堰止板の上流側領域と下流側領域とを連通させる孔が少なくとも1つ形成された孔形成領域を有する板状の本体部と、該本体部の前記第2姿勢における溝通路方向上流側に位置し、且つ、前記本体部との間に所定の空間が形成されるように前記孔形成領域を覆うとともに外周部分が前記回動軸側の領域を除いて前記本体部に隙間無く接続されたカバー部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記本体部の周縁部には、前記排水堰止板が第2姿勢の際、前記排水溝の内周面との隙間を埋めるシール部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、前記シール部材は、スポンジ材で形成されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記溝蓋本体には、溝通路方向に所定の間隔をあけて複数並設され、上下に幅広な板状をなすベアリングバーと、前記排水堰止板を第1姿勢で固定するロック位置と前記排水堰止板の第1姿勢の固定を解除して当該排水堰止板を回動可能にするロック解除位置とにそれぞれ切替可能なロック操作部材を有するロック機構とが設けられ、前記ロック操作部材は、隣り合う2つの前記ベアリングバーの間に配設され、溝幅方向にスライドさせることにより前記排水堰止板のロック位置とロック解除位置とにそれぞれ切り替えるよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第1から第4いずれか1つの発明において、前記回動軸には、前記排水堰止板を前記溝蓋本体から離間する方向に付勢する捩じりバネが巻装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、比重が1以下の液状油が工場等から屋外に漏れ出て排水溝に流れ出た際、排水溝を流れる排水の液面側に液状油が浮き上がるので、排水堰止板を第2姿勢にして排水を堰き止めると、堰き止められた液状油を含む排水はカバー部に接触しながら当該カバー部の回動軸側を乗り越えるようになる。このとき、液状油の比重が1以下であるので、液状油は排水の液面側に留まろうとする一方、液状油を除く排水は、本体部とカバー部との間に入り込むとともに本体部に形成された孔を通過して排水溝における下流側へと流れていくようになる。一方、比重が1以上の液状油が工場等から屋外に漏れ出て排水溝に流れ出た際、排水溝を流れる排水と共に排水溝の底面側に液状油が位置するようになるので、排水堰止板を第2姿勢にして排水を堰き止めると、堰き止められた排水に含まれる液状油がカバー部に堰き止められて排水溝の下流側への流出が防がれるようになる。そして、液状油を除く排水は、カバー部に接触しながら当該カバー部の回動軸側を乗り越えるとともに、本体部とカバー部との間に入り込み、且つ、本体部に形成された孔を通過して排水溝における下流側へと流れていくようになる。このように、液状油の比重に関わらず、排水堰止板を利用して液状油だけを堰き止めて液状油を含まない排水を排水溝の下流側へと流すことができるようになり、堰き止められた排水が排水堰止板の上流側に次第に溜まっていくとともに溝蓋本体を介して排水溝から溢れ出て道路等を汚してしまうといったことを防ぐことができる。
【0016】
第2の発明では、排水堰止板が第2姿勢になると、シール部材が排水堰止板と排水溝の内周面との間の隙間を無くすようになる。したがって、非常事態時において排水に混ざる液状油が勢い余って排水堰止板の外側を通り抜けて下流側へと流れ出てしまうのを防ぐことができる。
【0017】
第3の発明では、排水堰止板を第2姿勢にして排水を堰き止めた際、スポンジ材が排水を吸収して膨張するようになる。したがって、排水堰止板と排水溝の内周面との間の隙間が完全に塞がれた状態になるので、排水に混ざる液状油の下流側への流出を確実に防ぐことができる。
【0018】
第4の発明では、ロック機構におけるロック操作部材をロック解除位置にすると、排水堰止板の第1姿勢の固定が解除されて排水堰止板が下方に回動して第2姿勢になるので、非常事態において簡単な操作で排水堰止板を堰き止め状態に変化させることができる。また、ロック操作部材の操作方向が隣り合うベアリングバーの間における干渉部分の無い溝幅方向であるので、ロック操作部材の操作時における移動量を大きくすることが可能になる。したがって、ロック位置におけるロック操作部材の排水堰止板との係止部分の幅寸法を広く設定することが可能になり、溝蓋のロック機構に不意に力が加わってもロック状態が解除されぬようロック位置において安定したロック状態を実現することができる。
【0019】
第5の発明では、捩じりバネの内側に回動軸が位置するので、捩じりバネ及び回動軸の占有するスペースが略同じになる。したがって、捩じりバネと回動軸とが別々のスペースを占有して構造が大型化してしまうのを回避することができ、全体がコンパクトな構造にすることができる。また、捩じりバネの付勢力によって排水堰止板に対して溝蓋本体から離間する方向への力が加わるようになる。したがって、排水堰止板を第2姿勢にした際、排水堰止板が排水溝の底部に強く押し付けられるようになり、第2姿勢の排水堰止板における排水の堰き止め状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る溝蓋の一部裏面側の構造が見えるようにした平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】比重が1以下の液状油を含んだ排水を排水堰止板が堰き止めている状態を示す図2相当図である。
図4】比重が1以上の液状油を含んだ排水を排水堰止板が堰き止めている状態を示す図2相当図である。
図5図3のIV矢視図である。
図6図1のV-V線における断面図である。
図7図1のVI-VI線における断面図である。
図8】本発明の実施形態2の図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
《発明の実施形態1》
図1乃至図4は、本発明の実施形態1に係る溝蓋1を示す。該溝蓋1は、道路に溜まる雨水等を排水する断面U字状をなす排水溝G1に掛け渡されて使用されるものであり、該排水溝G1の上部解放領域を覆う溝蓋本体2を備えている。
【0023】
溝蓋本体2は、溝幅方向に所定の間隔をあけて溝通路方向に互いに平行に延びる一対の帯板状をなすエンドプレート2aと、溝通路方向に所定の間隔をあけて複数並設され、且つ、溝幅方向に延びて両エンドプレート2aを繋ぐ断面略I字状をなすベアリングバー2bと、角鋼を捩って製造され、溝幅方向に所定の間隔をあけて複数並設されるとともに、溝通路方向に延びて各ベアリングバー2bの上側部分を連結する複数のツイストバー2cとを備え、各ベアリングバー2bと各ツイストバー2cとは、平面視で格子状に延びる配置になっている。
【0024】
溝蓋本体2の溝通路方向下流側における下部には、図6に示すように、断面L字状をなす支持ブラケット2dが溝幅方向に所定の間隔をあけて固定され、両支持ブラケット2dには、溝幅方向に延びる回動軸4が両支持ブラケット2dを橋絡するように取り付けられている。
【0025】
溝蓋本体2の略中央下側には、略矩形板状をなす排水堰止板3が溝蓋本体2に沿うように配設されている。
【0026】
該排水堰止板3は、図5に示すように、板厚方向に見て略凸形状をなす本体部30を備え、該本体部30は、長手方向一端に位置する取付部31と、長手方向一端側領域から他端に亘って延びる堰止部32とを有している。
【0027】
堰止部32は、幅方向の寸法が排水溝G1の幅寸法に対応する形状をなしており、板厚方向に見て矩形状をなす板状フレーム33と、該板状フレーム33の周縁部に取り付けられたスポンジ材からなるシール部材34とを備えている。
【0028】
該シール部材34は、断面矩形状をなすとともに、板状フレーム33の板厚方向に見て当該板状フレーム33の長手方向一端側に開放するU字状に延びる形状をなしており、その厚みは、板状フレーム33の板厚よりも大きく設定されている。
【0029】
板状フレーム33の長手方向中央から他端寄りの位置に亘る領域には、板厚方向に貫通する円形状をなす複数の貫通孔33aが格子点状に並んで形成されている。
【0030】
すなわち、板状フレーム33は、複数の貫通孔33aが集まる孔形成領域R1を有している。
【0031】
板状フレーム33の長手方向中央の一端寄りの位置には、溝蓋本体2側に突出するとともにその突出端から板状フレーム33の長手方向他端側に向かって突出する断面L字状をなす引掛部36が取り付けられている。
【0032】
また、板状フレーム33の長手方向他端寄り中央には、板状フレーム33の幅方向に貫通する第1通し孔37aを有する第1固定板部37が溝蓋本体2側に突設されている。
【0033】
さらに、板状フレーム33の長手方向一端寄り中央には、図2乃至図4に示すように、板状フレーム33の幅方向に貫通する第2通し孔38aを有する第2固定板部38が溝蓋本体2の反対側に突設されている。
【0034】
板状フレーム33の溝蓋本体2側には、当該板状フレーム33との間に所定の空間S1が形成されるように孔形成領域R1を覆うパネル状のカバー部35が設けられ、該カバー部35は、その外周部分が取付部31側の領域を除いて板状フレーム33に隙間無く接続されている。
【0035】
すなわち、板状フレーム33とカバー部35との間に形成される空間S1は、取付部31側に開口している。
【0036】
取付部31の溝蓋本体2側の板状フレーム33寄りの位置には、溝幅方向に延びる細長い丸棒部材31aが固定されている。
【0037】
また、取付部31の溝蓋本体2側には、図6に示すように、一対のL字フレーム39が溝幅方向の各端部に離間して固定され、該各L字フレーム39が回動軸4に軸支されることにより、排水堰止板3が回動軸4を中心として回動するようになっている。
【0038】
すなわち、排水堰止板3は、図2乃至図4に示すように、長手方向一端が排水溝G1の溝幅方向に延びる回動軸4を中心として回動可能に溝蓋本体2の裏面に軸支されていて、溝蓋本体2の裏面に沿う第1姿勢P1と、回動軸4から排水溝G1における溝通路方向上流側の斜め下方に向かって延びる第2姿勢P2との間を回動するようになっている。尚、カバー部35は、本体部30の第2姿勢P2における溝通路方向上流側に位置している。
【0039】
そして、排水堰止板3は、第2姿勢P2になった際、排水溝G1の通路を遮って排水W1を堰き止めるようになっていて、シール部材34は、排水堰止板3が第2姿勢P2になった際に排水溝G1の内周面との隙間を埋めるようになっている。
【0040】
また、各貫通孔33aは、排水堰止板3が第2姿勢P2になった際、排水溝G1における第2姿勢P2の排水堰止板3の上流側領域と下流側領域とを連通させるようになっている。
【0041】
回動軸4には、図6に示すように、5つの捩じりバネ41が巻装され、各捩じりバネ41は、回動軸4に沿って所定の間隔をあけて配設されている。
【0042】
各捩じりバネ41の一端は、丸棒部材31aに当接する一方、他端は、各ベアリングバー2bのうちの1つに当接していて、各捩じりバネ41は、排水堰止板3を溝蓋本体2から離間する方向に付勢している。
【0043】
溝蓋本体2の長手方向中央部分には、図1乃至図4に示すように、ロック機構5が設けられ、該ロック機構5は、図7に示すように、溝幅方向に延びるスライドレール51と、該スライドレール51にスライド可能に取り付けられたロック操作部材52とを備えている。
【0044】
ロック操作部材52は、隣り合う2つのベアリングバー2bの間に位置しており、その上半部分が溝通路方向に見て溝幅方向に幅広な上方に開放する略U字状をなしている。
【0045】
ロック操作部材52の下面には、下方に突出するとともにその突出端から溝通路方向下流側に向かって突出する断面L字状をなす係合フック53が取り付けられている。
【0046】
該係合フック53は、排水堰止板3が第1姿勢P1の際、引掛部36に対応する位置になっていて、図7に示すように、ロック操作部材52を溝幅方向の一側にスライドさせた際、引掛部36の下側に潜り込んで当該引掛部36に係合して排水堰止板3を第1姿勢P1で保持する一方、ロック操作部材52を溝幅方向の他側にスライドさせた際、引掛部36に対応しない位置になって引掛部36から外れるようになっている(図7の破線参照)。
【0047】
すなわち、ロック操作部材52は、溝幅方向の一側と他側とにそれぞれスライドさせることにより、排水堰止板3を第1姿勢P1で固定するロック位置と排水堰止板3の第1姿勢P1の固定を解除して当該排水堰止板3を回動可能にするロック解除位置とにそれぞれ切り替わるようになっていて、ロック操作部材52がロック解除位置になると、捩じりバネ41の付勢力により排水堰止板3が下方に回動して第2姿勢P2となるようになっている。
【0048】
溝蓋本体2の長手方向中央部分におけるロック機構5よりも長手方向他端側には、図2乃至図4に示すように、格納機構6がロック機構5に隣接する位置に配設されている。
【0049】
該格納機構6は、溝通路方向に見て略T字状をなす第1操作ハンドル6aと、該第1操作ハンドル6aと排水堰止板3の第1固定板部37とを繋ぐ第1チェーン6bと、隣り合う2つのベアリングバー2bの間に設けられ、第1操作ハンドル6aを下方から支持する第1支持フレーム6cとで構成され、排水堰止板3が第2姿勢P2の際に第1操作ハンドル6aを持ち上げると、第1チェーン6bを介して排水堰止板3を各捩じりバネ41の付勢力に抗して回動させて第1姿勢P1となるまで持ち上げることができるようになっている。
【0050】
また、溝蓋本体2の回動軸4よりも長手方向他端側中央には、回動補助機構7が回動軸4に隣接する位置に配設されている。
【0051】
該回動補助機構7は、溝通路方向に見て略T字状をなす第2操作ハンドル7aと、該第2操作ハンドル7aと排水堰止板3の第2固定板部38とを繋ぐ第2チェーン7bと、隣り合う2つのベアリングバー2bの間に設けられ、第2操作ハンドル7aを下方から支持する第2支持フレーム7cと、第2チェーン7bの第2操作ハンドル7aとの接続部分を囲うチェーンガイド部7dとで構成され、排水堰止板3が第1姿勢P1から第2姿勢P2へと回動する途中で回動が停止した際、第2操作ハンドル7aを持ち上げると、第2チェーン7bを介して排水堰止板3を下方に回動させて第2姿勢P2となるまで引っ張ることができるようになっている。
【0052】
次に、予期せぬ非常事態が発生した際の本発明の実施形態1に係る溝蓋1における操作について説明する。
【0053】
例えば、工場等から液状油X1が屋外に漏れ出た際、作業者は、溝蓋1のロック操作部材52を溝幅方向の他側にスライドさせる。すると、図2乃至図4に示すように、ロック操作部材52がロック解除位置となって、係合フック53が引掛部36から外れ、重力と捩じりバネ41の付勢力とにより排水堰止板3が下方に回動して第2姿勢P2となって排水溝G1の通路を遮るようになる。
【0054】
この作業者によるロック解除操作の際、もし仮に捩じりバネ41が錆び付いている等の原因で排水堰止板3が第2姿勢P2の位置まで回動せずに途中で停止してしまった場合には、回動補助機構7の第2操作ハンドル7aを上方に引っ張る。すると、排水堰止板3が第2チェーン7bを介して引っ張られて第2姿勢P2となるまで下方に回動する。
【0055】
例えば、比重が1以下の液状油X1が工場等から屋外に漏れ出て排水溝G1に流れ出た際、図3に示すように、排水溝G1を流れる排水W1の液面側に液状油X1が浮き上がるので、排水堰止板3を第2姿勢P2にして排水W1を堰き止めると、堰き止められた液状油X1を含む排水W1はカバー部35に接触しながら当該カバー部35の回動軸4側を乗り越えるようになる。このとき、液状油X1の比重が1以下であるので、液状油X1は排水W1の液面側に留まろうとする一方、液状油X1を除く排水W1は、本体部30とカバー部35との間の空間S1に入り込むとともに本体部30に形成された各貫通孔33aを通過して排水溝G1における下流側へと流れていくようになる。
【0056】
一方、比重が1以上の液状油X1が工場等から屋外に漏れ出て排水溝G1に流れ出た際、図4に示すように、排水溝G1を流れる排水W1と共に排水溝G1の底面側に液状油X1が位置するようになるので、排水堰止板3を第2姿勢P2にして排水W1を堰き止めると、堰き止められた排水W1に含まれる液状油X1がカバー部35に堰き止められて排水溝G1の下流側への流出が防がれるようになる。そして、液状油X1を除く排水W1は、カバー部35に接触しながら当該カバー部35の回動軸4側を乗り越えるとともに、本体部30とカバー部35との間に入り込み、且つ、本体部30に形成された各貫通孔33aを通過して排水溝G1における下流側へと流れていくようになる。
【0057】
このように、液状油X1の比重に関わらず、排水堰止板3を利用して液状油X1だけを堰き止めて液状油X1を含まない排水W1を排水溝G1の下流側へと流すことができるようになり、堰き止められた排水W1が排水堰止板3の上流側に次第に溜まっていくとともに溝蓋本体2を介して排水溝G1から溢れ出て道路等を汚してしまうといったことを防ぐことができる。
【0058】
作業者は、排水溝G1に流れる排水W1に液状油X1が混ざらない状態になったことを確認すると、格納機構6の第1操作ハンドル6aを上方に引っ張る。そして、第1チェーン6bを介して排水堰止板3を各捩じりバネ41の付勢力に抗して回動させて第1姿勢P1となるまで持ち上げ、その状態においてロック操作部材52を溝幅方向一側にスライドさせる。すると、ロック操作部材52がロック位置となって、係合フック53が引掛部36に係合して排水堰止板3が第1姿勢P1で再び固定される。
【0059】
このように、本発明の実施形態1によると、非常事態において排水W1に混ざる液状油X1のみを排水堰止板3にて堰き止めて液状油X1を含まない排水W1を排水溝G1の下流側に流すことができる。
【0060】
また、排水堰止板3が第2姿勢P2になると、シール部材34が排水堰止板3と排水溝G1の内周面との間の隙間を無くすようになる。したがって、非常事態時において排水W1に混ざる液状油X1が勢い余って排水堰止板3の外側を通り抜けて下流側へと流れ出てしまうのを防ぐことができる。
【0061】
また、排水堰止板3を第2姿勢P2にして排水W1を堰き止めた際、スポンジ材からなるシール部材34が排水W1を吸収して膨張するようになる。したがって、排水堰止板3と排水溝G1の内周面との間の隙間が完全に塞がれた状態になるので、排水W1に混ざる液状油X1の下流側への流出を確実に防ぐことができる。
【0062】
また、ロック機構5におけるロック操作部材52をロック解除位置にすると、排水堰止板3の第1姿勢P1の固定が解除されて排水堰止板3が下方に回動して第2姿勢P2になるので、非常事態において簡単な操作で排水堰止板3を堰き止め状態に変化させることができる。また、ロック操作部材52の操作方向が隣り合うベアリングバー2bの間における干渉部分の無い溝幅方向であるので、ロック操作部材52の操作時における移動量を大きくすることが可能になる。したがって、ロック位置におけるロック操作部材52の排水堰止板3との係止部分の幅寸法を広く設定することが可能になり、溝蓋1のロック機構5に不意に力が加わってもロック状態が解除されぬようロック位置において安定したロック状態を実現することができる。
【0063】
また、捩じりバネ41の内側に回動軸4が位置するので、捩じりバネ41及び回動軸4の占有するスペースが略同じになる。したがって、捩じりバネ41と回動軸4とが別々のスペースを占有して構造が大型化してしまうのを回避することができ、全体がコンパクトな構造にすることができる。
【0064】
また、捩じりバネ41の付勢力によって排水堰止板3に対して溝蓋本体2から離間する方向への力が加わるようになる。したがって、排水堰止板3を第2姿勢P2にした際、排水堰止板3が排水溝G1の底部に強く押し付けられるようになり、第2姿勢P2の排水堰止板3における排水W1の堰き止め状態を安定させることができる。
【0065】
《発明の実施形態2》
図8は、本発明の実施形態2の排水堰止板3を示す。この実施形態2では、貫通孔33aの形状が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じである為、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0066】
実施形態2の貫通孔33aは、板状フレーム33の長手方向中央から他端寄りの位置に亘る領域において1つ形成され、板状フレーム33の長手方向他側略半分の領域の大半を占める矩形状をなしている。すなわち、板状フレーム33の長手方向他側略半分は、矩形枠状をなしている。
【0067】
以上より、本発明の実施形態2の貫通孔33aは、実施形態1の各貫通孔33aが占める合計の領域よりも大きな開口領域であるので、液状油X1を除く排水W1を通過させやすくなり、使用時において貫通孔33aに物が詰まるのを防ぐことができる。
【0068】
尚、本発明の実施形態1,2では、各貫通孔33aが円形状及び矩形状をなしているが、その他の形状であってもよく、例えば、角形状や楕円形状、三角形状、多角形状、星形形状であってもよい。
【0069】
また、本発明の実施形態1,2では、シール部材34をスポンジ材で形成しているが、これに限らず、例えば、ゴム材で形成してもよいし、樹脂材で形成したものであってもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態1,2では、回動軸4に捩じりバネ41が5つ巻装されているが、1~4つの捩じりバネ41を巻装させるような構成であってもよいし、6つ以上の捩じりバネ41を巻装させるような構成であってもよい。
【0071】
また、本発明の実施形態1,2では、排水堰止板3を下側に付勢する部材として捩じりバネ41を適用しているが、これに限らず、排水堰止板3を下方に付勢できるのであれば、その他の種類のバネ部材であってもよいし、その他の種類の付勢部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、道路に溜まった雨水等を排水する排水溝を覆う溝蓋に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 溝蓋
2 溝蓋本体
2b ベアリングバー
3 排水堰止板
30 本体部
33a 貫通孔
34 シール部材
35 カバー部
4 回動軸
41 捩じりバネ
5 ロック機構
52 ロック操作部材
G1 排水溝
P1 第1姿勢
P2 第2姿勢
R1 孔形成領域
S1 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8