(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004308
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電動機及びそれを備えた電気機器
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20230110BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230110BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230110BHJP
【FI】
H02K5/16 A
H02K7/14 A
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105913
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】514036900
【氏名又は名称】WOLONGモーター制御技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】前谷 達男
(72)【発明者】
【氏名】磯村 宣典
(72)【発明者】
【氏名】フ フェン
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB30
5H605GG21
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607FF04
5H607GG08
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】本開示は、電動機における軸受の電食の発生を抑制することを図る。
【解決手段】
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、マグネットと、回転体と、シャフトと、回転子と、第1の軸受と第2の軸受と、前記第1の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記第2の軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって、前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケットと、前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとの接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する時、前記軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量C
nの容量性部材が設けられた電動機。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する第1の軸受と第2の軸受と、
前記第1の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記第2の軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケットと、前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとの接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する時、
前記軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量Cnの容量性部材が設けられた電動機。
【請求項2】
第1の導電部材を用いて、前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
第2の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続された請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
第2の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
第3の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第1の金属ブラケットとが電気的に接続された請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記駆動回路のゼロ基準電位は、大地アースと絶縁されている請求項1乃至3のいずれかに記載の電動機。
【請求項5】
前記回転子の静電容量の範囲が0.2pF以上2000pF以下において、前記容量性部材は、前記軸受外輪の接続点の電圧と、前記第1の軸受及び前記第2の軸受の軸受内輪の電圧との電位差が、絶対値で5V以下を満たす前記静電容量Cnを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の電動機。
【請求項6】
前記容量性部材を用いて、前記軸受外輪の接続点の電圧を減少して、前記軸受外輪の接続点の電圧と前記軸受内輪の電圧との電位差を減少している請求項1乃至5のいずれかに記載の電動機。
【請求項7】
前記容量性部材が、前記電動機の外部に設けられた請求項1乃至6のいずれかに記載の電動機。
【請求項8】
前記容量性部材が、前記電動機の内部に設けられた請求項1乃至6のいずれかに記載の電動機。
【請求項9】
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の外部に設けられた請求項1乃至8のいずれかに記載の電動機。
【請求項10】
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の内部に設けられた請求項1乃至8のいずれかに記載の電動機。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及びその電動機を備えた電気機器に関し、軸受の電食の発生を抑制するように改良された電動機及びその電動機を備えた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)方式(以下、適宜、PWM方式という)のインバータにより駆動する方式を採用するケースが多くなってきている(例えば、特許文献1)。
PWM方式のインバータにより駆動される電動機は、例えば、エアコンの室内機、エアコンの室外機、給湯器などの電気機器で使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「インバータ駆動ブラシレスDCモータの非接地コモンモード等価回路に基づく軸電圧抑制」電気学会論文誌D,2012年,Vol.132,No6,pp.666-672
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様に係る電動機は、
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する第1の軸受と第2の軸受と、
前記第1の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記第2の軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケットと、前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとの接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する時、
前記軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量Cnの容量性部材が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、電動機及びその電動機を備えた電気機器に関し、軸受の電食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一態様である実施形態1における電動機の断面の概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の電動機の静電容量分布のモデル図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の電動機のブラケットとグランド間の静電容量と軸電圧の関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態1の電動機の変形例を示すである。
【
図5】
図5は、
図4の電動機の静電容量分布のモデル図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の電動機の別の変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の電動機の静電容量分布のモデル図である。
【
図8】
図8は、本開示の別の一態様である実施形態1における電動機の断面の概略構成図である。
【
図9】
図9は、本開示の別の一態様である実施形態1における電動機の断面の概略構成図である。
【
図10】実施形態1の電動機を用いた電気機器の一態様の斜視図である。
【
図11】実施形態1の電動機を用いた別の電気機器の一態様の斜視図である。
【
図12】実施形態1の電動機を用いた別の電気機器の一態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
PWM方式のインバータにより電動機が駆動される場合、固定子巻線の中性点電位がパワー素子のスイッチングによって変動する。
特許文献1には、軸受の電食を抑制するために、軸電圧を低減することで、軸受内部のグリースの油膜を絶縁破壊電圧以下にして、軸受のグリースの油膜の絶縁破壊を起こさない対策が、考案されている。又、軸電圧を低減することで軸受内部のグリースの油膜の絶縁破壊による放電エネルギーを小さくして、軸受内部の金属表面の損傷を小さくする対策が、以下の特許文献1に考案されている。
【0009】
以下、特許文献1について、詳細に説明する。
図13は、特許文献1のインナーロータ型でブラシレスラジアル型の電動機50の断面の概略構成図である。特許文献1と非特許文献1とは、同じ構成である。
図13に示すように、電動機50は、電動機50の両端に配置された第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2と、一対の軸受と(第1の軸受5a及び第2の軸受5b)、シャフト4、回転子10と、固定子18とを有する。
回転体9は、回転子鉄心8と永久磁石であるマグネット11とを有する。回転子10は、回転体9とシャフト4とを有する。固定子18は、固定子鉄心6と固定子巻線3とを有する。
【0010】
図13に示すように、第1の軸受5aの外輪は第1金属ブラケット1に接続され、第2の軸受5bの外輪は第2の金属ブラケット2に接続されている。第1の軸受5aの内輪と第2の軸受5bの内輪とは、シャフト4によって接続され、電気的に導通している。導通部材13で、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とを電気的に短絡している。
【0011】
特許文献1は、導通部材13で、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とを電気的に短絡させ、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2との静電容量を一致させている。さらに、特許文献1は、回転体9に誘電体層20を設け、回転体9の静電容量を変化させて軸電圧を低減する方法である。
特許文献1には、誘電体層20により、一般的な軸受の油膜の絶縁破壊電圧以下の目安である5V以下とすることが可能であるということが開示されている。
【0012】
特許文献1について、本発明者らは、詳細に検討を行った。
図14は、
図13についての特許文献1の電動機50の静電容量分布のモデル図である。特許文献1の電動機50においては、固定子鉄心6を基準に静電容量分布を考察するに当たり、電動機50の電圧分布は、インピーダンスにおいて逆数となる容量性リアクタンスの影響が支配的であるため、非特許文献1の
図5に記載されているように、静電容量分布のモデルを参考にして説明を行う。
固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量C
sb1は、第1の軸受5aの電荷が貯まり、第1の軸電圧V
sh1が上がることを模式的に表現している。第1の軸電圧V
sh1が上がり、軸受内部のグリース油膜の絶縁破壊電圧に達すると、絶縁破壊が発生する。固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量C
sb2も静電容量C
sb1同様、第2の軸受5bの電荷が貯まり、第2の軸電圧V
sh2が上がることを模式的に表現している。第2の軸電圧V
sh2が上がると、絶縁破壊が発生する。
【0013】
第1の軸受5aの外輪側及び第2の軸受5bの外輪側と駆動回路のゼロ電位基準N(12)とに生じる電圧は、駆動回路のゼロ基準電位Nと固定子巻線3の中性点電位Sとの間に発生する電圧V
comに対して、固定子側の静電容量分布により分圧された値となる。
第1の軸受5aの内輪側及び第2の軸受5bの内輪側(
図14の4の箇所)と駆動回路のゼロ電位基準N(12)とに生じる電圧は、駆動回路のゼロ電位基準N(12)と固定子巻線3の中性点電位Sとの間に発生する電圧V
comに対して、回転子側の静電容量分布により分圧された値となる。
【0014】
本発明者らは、
図14の静電容量分布のモデル図を考案し、これを考察することで、以下の知見を見出した。第1の軸電圧V
sh1及び第2の軸電圧V
sh2は、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの外輪側に発生する電圧と内輪側に発生する電圧との差となる。従って、第1の軸電圧V
sh1及び第2の軸電圧V
sh2を低減するには、固定子側の静電容量分布と回転子側の静電容量分布を一致もしくは近似させることが有効であるということを見出した。
【0015】
第1の軸受5aの外輪側及び第2の軸受5bの外輪側と駆動回路のゼロ電位基準N(12)とに生じる電圧は、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量Csb1及び固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量Csb2の合成静電容量A2と、駆動回路のゼロ基準電位N(12)と第1の金属ブラケット1間の静電容量Cnb2との分圧比RA2(合成静電容量A2/Cnb2)の逆数に電圧Vcomを掛けた電圧となる。
又、第1の軸受5aの内輪側及び第2の軸受5bの内輪側と駆動回路のゼロ電位基準N(12)とに生じる電圧は、固定子巻線3と固定子鉄心6との間の静電容量Ciと、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量Cgと、固定子巻線3とマグネット11との間の静電容量Csmと、マグネット11の静電容量Cmgとを含む回転子10の静電容量Cmである合成静電容量B2と、駆動回路のゼロ基準電位Nとシャフト4間の静電容量Cnsとの分圧比RB2(合成静電容量B2/Cns)の逆数に電圧Vcomを掛けた電圧となる。
【0016】
つまり、第1の軸電圧Vsh1及び第2の軸電圧Vsh2を低減するには、固定子側の静電容量分布と回転子側の静電容量分布を一致もしくは近似させること、つまり、上記の分圧比RA2(合成静電容量A2/Cnb2)と分圧比RB2(合成静電容量B2/Cns)とを一致もしくは近似させることが必要であることを見出した。この分圧比RA2と分圧比RB2とを一致もしくは近似させることを、以下、単に整合と呼ぶ。
【0017】
特許文献1では、
図13において、回転子10側の静電容量分布を回転体9に誘電体層20を設け、静電容量C
dを形成している。この誘電体層20の静電容量C
dは、静電容量分布のモデル図である
図14において、回転子10の静電容量C
m(合成静電容量B2)の中に、直列に静電容量C
dが挿入されたことになり、合成静電容量B2を小さくすることで、固定子側の静電容量分布と整合をとり、結果的に、第1の軸電圧V
sh1及び第2の軸電圧V
sh2が低くなっていることが分かった。
【0018】
誘電体層20の静電容量C
dは、誘電体層20の厚み方向の距離(
図13における誘電体層20の短い方向の距離)に反比例し、長さ(
図13における誘電体層20の長手方向の距離)に比例する。従って、静電容量C
dを下げるには、誘電体層20の幅(誘電体層20の厚み方向の距離)を広げる必要がある。
【0019】
しかしながら、
図13に示すように、特許文献1には、回転体9に誘電体層20を設けるには、回転体9の金型が誘電体層20を挟み込むために複雑となるという課題がある。そして、特許文献1には、誘電体層20を挟み込むことによって、回転体9の強度が低下するという課題がある。つまり、誘電体層20には回転トルクとして応力がかかるため、その強度の確保のために誘電体層20の幅の制約を受ける場合が生じる。その場合、必要とされる静電容量が得られず、軸電圧が下がりきらない可能性も考察された。又、特許文献1では、径方向で中央からスポーク状に複数の永久磁石(マグネット)を保持する回転体9を用いた電動機50においては、誘電体層20の幅を取ることによって永久磁石(マグネット)11の長さを短くする必要が生じ、電動機50の性能が悪化するという課題があった。
【0020】
本発明者らは、上記した課題を見出し、その課題解決について鋭意研究を図り、その課題解決となる考案を見出した。
図1は、本開示の電動機50の断面の概略構成図である。
図1に示すように、電動機50は、電動機50の両端に配置された第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2と、第1の軸受5a及び第2の軸受5b、シャフト4、回転子10と、固定子18とを有する。
第1の金属ブラケット1の中央部には、第1の金属ブラケット1に固定された第1の軸受5aが配置されている。第2の金属ブラケット2の中央部には、第2の金属ブラケット2に固定された第2の軸受5bが配置されている。シャフト4は、第1の軸受5aと第2の軸受5bとにより、支持され回転する。
回転体9は、回転子鉄心8と永久磁石であるマグネット11とを有する。回転子10は、回転体9とシャフト4とを有する。固定子18は、固定子鉄心6と固定子巻線3とを有する。
本開示の電動機50は、固定子鉄心6と、第1の金属ブラケット1と、第2の金属ブラケット2とが電気的に接続されている。
図1の場合は、第1の導電部材13aを用いて、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とが電気的に接続されている。又、第2の導電部材13bを用いて、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6とが電気的に接続されている。
固定子鉄心6と、第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2との接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する
図1の場合は、第1の金属ブラケット1と、第1の導電部材13aと、第2の導電部材13bとの接続点が軸受外輪の接続点Aとなる。ここで、軸受外輪の接続点Aは、第1の金属ブラケット1に電気的に接続する箇所であればよく、その箇所は限定されない。
第1の軸受5aの内輪部及び第2の軸受5bの内輪部を軸受内輪の接続点Bと定義する。
本開示の電動機50は、軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、固定子巻線3に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量C
nの容量性部材15が設けられている。
【0021】
図2は、本開示の電動機50の静電容量分布のモデル図である。
左側の固定子18側において、固定子巻線3と第1の金属ブラケット1との間の静電容量は、C
sb1である。固定子巻線3と第2の金属ブラケット2との間の静電容量は、C
sb2である。第1の金属ブラケット1とゼロ基準電位N(12)との間の静電容量は、C
nb1である。
図2に示すように、第2の導電部材13bを用いて、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6とが電気的に短絡されている。第1の導電部材13aを用いて、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とが電気的に短絡されている。軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、駆動回路のゼロ基準電位N(12)との間に、静電容量Cnの容量性部材15が設けられている。軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所とは、第1の金属ブラケット1と、第1の導電部材13aと、第2の導電部材13bと、第2の金属ブラケット2と電気的に導通する箇所のことである。
【0022】
上記のメカニズムについて、
図2を用いて説明する。
第1の導電部材13a及び第2の導電部材13bにより、固定子鉄心6と、第1のブラケット1と、第2のブラケット2とを電気的に接続すると、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2の電位が、中性点電位S(3)の値に近くなる。つまり、軸受外輪の接続点Aの電位が高くなる。
軸受内輪の電位部Bは、軸受外輪接続点Aを基準に考えると、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量C
g部の電位とマグネットの静電容量C
mg部の電位との差となる。この電位差が軸電圧となる。
【0023】
軸受外輪の接続点Aの電位の方が軸受内輪の電位部Bの電位より高いため、容量性部材15の静電容量Cnにて、静電容量分布を調整し、軸受外輪の接続点Aの電位を下げる。軸受内輪の電位Bも下がるが、固定子巻線3と固定子鉄心6との間の静電容量Ciと固定子巻線3と回転子10との間の静電容量Csmにより、電圧の低下が抑制される。そのことにより、容量性部材15の静電容量Cnの値を大きくすることにより、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の電位部Bとの電位差は、徐々に小さくなる。さらに、容量性部材15の静電容量Cnの値を大きくすると、電位部Bの電圧低下が抑制されることにより電位差が逆転し、極性が反転する。
従って、回転子10の静電容量Cmの値に応じて、適正な容量性部材15の静電容量Cnを選定することで、軸電圧の低減が可能となる。
以上、本開示の電動機50は、第1の導電部材13aを用いて、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とが電気的に短絡され、第2の導電部材13bを用いて、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6とが電気的に短絡され、軸受外輪の接続点Aと、駆動回路のゼロ基準電位N(12)との間に、静電容量Cnの容量性部材15が設けられている。
第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2と固定子鉄心と6を接続することにより、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
以上の考察に基づき、本発明者らは、以下に説明する本開示の態様に想到した。
【0024】
本開示の一態様に係る電動機は、
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する第1の軸受と第2の軸受と、
前記第1の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記第2の軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケットと、前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとの接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する時、
前記軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量Cnの容量性部材が設けられている。
上記態様によれば、容量性部材の静電容量Cnb1により、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
【0025】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0026】
(実施形態1)
以下、本開示の一態様を示す電動機について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、本開示の一態様を示すインナーロータ型でブラシレスラジアル型の電動機50の断面の概略構成図である。
図1に示すように、電動機50の両端には、導電性を有する第1の金属ブラケット1と導電性を有する第2の金属ブラケット2とが配置されている。
そのことにより、安定に軸受が支承されシャフト4を回転できる。
第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2の中央部には、第1の金属ブラケット1に固定された第1の軸受5aと、第2の金属ブラケット2に固定された第2の軸受5bが配置されている。シャフト4は、軸受5aと軸受5aとにより、支持され回転する。シャフト4は、第1の金属ブラケット1から突出している。
固定子18は、回転磁界を発生させ、回転磁界により回転子10を回転させるものである。固定子18の内側には、固定子18と空隙を介して回転子10が挿入されている。
固定子18は、固定子鉄心6と巻線である固定子巻線3とを有する。固定子鉄心6には、固定子鉄心6を絶縁するための樹脂7が介在して、固定子巻線3が巻装されている。そして、固定子18は、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2等の他の固定部材ともに樹脂でモールド成型されている。実施形態1では、これらの部材をこのようにモールド一体成型することにより、外形が概略円筒形状をなす固定子が構成されている。モールド一体成型したものは、電動機5の筐体としての機能としても働く。又、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2は、固定子鉄心6と、空間により絶縁されていてもよい。
回転子10は、電動機50において回転するもので、シャフト4と回転体9とを有する。回転体9は、回転子鉄心8とフェライト磁石である永久磁石のマグネット11とを有する。回転子10は、回転子鉄心8の外周に複数のマグネット11を保持し、回転子鉄心8の中央を貫通するようにシャフト4を有する。又、回転子10は、固定子18に対向して中央からスポーク状に配置される複数のマグネット11を保持していてもよい。
【0028】
シャフト4には、シャフト4を支持する第1の軸受5a及び第2の軸受5bが取り付けられている。第1の軸受5a及び第2の軸受5bは、複数の鉄ボールを有した円筒形状のベアリングであり、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの内輪側が、シャフト4に固定されている。
【0029】
そして、第1の軸受5a及び第2の軸受5bは、それぞれ導電性を有した第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2により、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの外輪側が固定されている。
図1では、第1の金属ブラケット1に第1の軸受5aが固定され、第2の金属ブラケット2に第2の軸受5bが固定され、シャフト4は第1の軸受5a及び第2の軸受5bに支持され、回転子10が回転自在に回転する。シャフト4と、第1の軸受5aの内輪と、第2の軸受5bの内輪とは、電気的に導通している。
【0030】
さらに、この電動機50の内部に、回転磁界を発生させる駆動回路(図示せず)を実装したプリント基板12が、回転子10と第1の金属ブラケット1との間に配置されている。例えば、駆動回路には、固定子巻線3に電圧を印加するためにインバータ回路等が実装されている。
【0031】
以上のように構成された電動機50に対して、駆動回路より電圧を固定子巻線3に印加することにより、固定子巻線3に電流が流れ、固定子鉄心6から磁界が発生する。そして、固定子鉄心6からの回転磁界とマグネット11から磁界とにより、それらの磁界の極性に応じて吸引力および反発力が生じ、これらの力によってシャフト4を中心に回転子10が回転する。
【0032】
そして、
図1に示すように、短絡線である第1の導通部材13aの一方の端部が第1の金属ブラケット1に接続され、第1の導通部材13aの他方の端部が第2の金属ブラケット2に接続されている。短絡線である第2の導電性部材13bの一方の端部が第1の金属ブラケット1に接続され、第2の導電部材13bの他方の端部が固定子鉄心6に接続されている。そのことにより、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2と固定子鉄心6とが同電位となる。
ここで、固定子鉄心6と、第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2との接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する。
図1に場合は、第1の金属ブラケット1と、第1の導電部材13aと、第2の導電部材13bとの接続点が軸受外輪の接続点Aとなる。
軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、駆動回路の基準電位N(12)となるグランドとの間に、静電容量C
nの容量性部材15が接続されている。軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所とは、第1の金属ブラケット1と、第1の導電部材13aと、第2の導電部材13bと、第2の金属ブラケット2と電気的に導通する箇所のことである。上記グランドと大地アースとは絶縁されている。
【0033】
容量性部材15は、例えば、セラミックコンデンサである。又、容量性部材15は、例えば、PBT等の樹脂の両側に電極を設けた成型品である。容量性部材15は、電荷を蓄えるものであればよく、特に形態は限定されない。容量性部材15は、電動機50の内部であればどこに配置されていてもよく、例えば、駆動回路が実装されたプリント基板12上に配置されている。
【0034】
図2は、実施形態1の静電容量分布のモデル図である。
図2において、中央に位置する第1の軸受5a及び第2の軸受5bを境にして、左側が固定子18側の静電容量分布を表し、右側が回転子10側の静電容量分布を表している。
駆動回路により固定子巻線3に印加される電圧V
comは、中性点電位S(3)とゼロ基準電位N(12)との電位差である。
第1の金属ブラケット1と、第2の金属ブラケット2と、固定子鉄心6とが、第1の導電部材13a及び第2の導電部材13bにより短絡され、短絡された箇所が軸受外輪の接続点Aとなる。軸受外輪の接続点Aと駆動回路の基準電位N(12)となるグランドとの間に、静電容量C
nの容量性部材15が接続される。
左側の固定子18側において、合成静電容量A1aは、静電容量C
sb1と静電容量C
sb2との合成静電容量で、合成静電容量A1bは、静電容量C
nb1と静電容量C
nとの合成静電容量である。
右側の回転子10側において、合成静電容量B1は、固定子巻線3と固定子鉄心6との間の静電容量C
iと、固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量C
gと、固定子巻線3とマグネット11間の静電容量C
smと、マグネット11の静電容量C
mgとの合成静電容量である。
シャフト4と駆動回路のゼロ基準電位N(12)との間の静電容量は、C
nsである。
【0035】
図3は、容量性部材15の静電容量C
nの値を変えて、第1の軸受5aの軸電圧V
sh1及び第2の軸受5bの軸電圧V
sh2を算出したシミュレーション結果である。第1の軸受5a及び第2の軸受5bの両軸受は短絡されているため同電位となるため、単に軸電圧はV
shとして表記する。
【0036】
図3において、横軸は、容量性部材15の静電容量C
nの値、左側の縦軸は、軸電圧V
shである。軸電圧V
shは、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの外輪を基準に内輪の電圧を測定し、外輪に対し内輪の電圧が高い場合をプラス、外輪に対し内輪の電圧が低い場合をマイナスとした。
【0037】
非特許文献1において、軸電圧Vshの絶対値が5V以下の回転子10の静電容量Cmの値の例として、約2pF~20pF程度であると示されている。電動機50として、回転子10の静電容量Cmが十分に取り得る範囲を考慮して、2pFと20pFに加え、最低値2pFの1/10の値の0.2pFと、最大値20pFの10倍の200pFと、100倍の2000pFとの場合のシミュレーションを行った。
【0038】
回転子10の静電容量Cmが0.2pFの場合のグラフは、実線の黒丸のグラフである(以下、グラフ1と呼ぶ)。容量性部材の静電容量Cnが増加するにつれ、上記グラフは、左下から右上に増加し、軸電圧Vshは、一定の電圧(例えば、約-0.5V)で飽和する。静電容量Cnが、1500pFの時、軸電圧Vshが約-4Vとなり、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る。さらに、静電容量Cnを増加しても、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る。
回転子10の静電容量Cmが2pFの場合のグラフは、実線の四角のグラフである(以下、グラフ2と呼ぶ)。グラフ2の挙動は、グラフ1とほぼ同様で、グラフ1を少し上へシフトしたものである。
回転子10の静電容量Cmが20pFの場合のグラフは、実線の三角のグラフである(以下、グラフ3と呼ぶ)。グラフ3は、静電容量Cnが500pFの時、軸電圧Vshが約-4Vとなり、静電容量Cnが5000pFの時、軸電圧Vshが5Vを超える。静電容量Cnが5000pFを超えると、軸電圧Vshが5Vを超え、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲を超える。グラフ3において、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る静電容量Cnの範囲は、例えば、500pF~5000pFであり、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る静電容量Cnが存在する。
回転子10の静電容量Cmが200pFの場合のグラフは、点線の黒丸のグラフである(以下、グラフ4と呼ぶ)。グラフ4は、静電容量Cnが250pFの時、既に、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入っている。グラフ4は、静電容量Cnが1000pFの時、軸電圧Vshが5Vを超える。グラフ4もまた、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る静電容量Cnが存在する。
回転子10の静電容量Cmが2000pFの場合のグラフは、点線の四角のグラフである(以下、グラフ5と呼ぶ)。グラフ5は、静電容量Cnが250pFの時、既に、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入っている。グラフ5は、静電容量Cnが800pFの時、軸電圧Vshが5Vを超える。グラフ5もまた、軸電圧Vshが絶対値|5V|の範囲に入る静電容量Cnが存在する。
【0039】
以上、
図3から明らかなように、回転子10の静電容量C
mが小さな値から大きな値の範囲において、軸電圧V
shの絶対値が5V以下にすることが可能な静電容量C
nが存在することが分かる。
具体的には、回転子10の静電容量Cmの範囲が0.2pF以上2000pF以下において、静電容量C
nが、例えば、250pF以上5000pFの間で、軸電圧V
shの絶対値が5V以下の範囲に入る静電容量C
nが存在する。
従って、本開示の電動機50は、特許文献1のように、回転子10に誘電体層20を配置して、回転子10側の静電容量分布を調整する必要はない。つまり、回転子10に誘電体層20を配置しない一般的な構造の回転子10においても、軸電圧を減少させて、軸受の電食の発生を抑制することが可能である。
【0040】
上記のメカニズムについて、
図2を用いて詳細に説明する。
第1の導電部材13a及び第2の導電部材13bにより、固定子鉄心6と、第1のブラケット1と、第2のブラケット2とを電気的に接続すると、第1の金属ブラケット1及び第2の金属ブラケット2の電位が、中性点電位S(3)の値に近くなる。つまり、軸受外輪の接続点Aの電位が高くなる。
軸受内輪の電位部Bは、回転子10側の静電容量の分布による分圧比にて決まる。固定子鉄心6とマグネット11との間の静電容量C
gとマグネット11の静電容量C
mgとにより、軸受内輪の電位部Bは、軸受外輪の接続点Aより低い値となる。そして、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の電位部Bとの電位差は、回転子10の静電容量C
mの値で変動する(
図3参照)。
【0041】
軸受外輪の接続点Aの電位の方が軸受内輪の電位部Bの電位より高いため、容量性部材15の静電容量Cnにて固定子側の静電容量分布を調整し、軸受外輪の接続点Aの電位を下げる。そのことにより、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の電位Bとの電位差は、小さくできる。
回転子10の静電容量Cmの値を大きくしていくと、軸受外輪の接続点Aの電位が軸受内輪の電位部Bの電位に近づき、その後、極性が反転する。
さらに、容量性部材15の静電容量Cnを大きくしていくと、今度は電位差が大きくなっていく。
【0042】
従って、回転子10の静電容量C
mの値によって、適正な容量性部材15の静電容量Cnを選定することで、軸電圧の低減が可能となる。
以上、本開示の電動機50は、第1の導電部材13aを用いて、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とが電気的に短絡され、第2の導電部材13bを用いて、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6とが電気的に短絡され、軸受外輪の接続点Aと、駆動回路のゼロ基準電位N(12)との間に、静電容量Cnの容量性部材15が設けられている。
その状態で、容量性部材15により、軸受外輪の接続点Aと軸受内輪の接続点Bの電位差が小さくなるように、容量性部材15の静電容量C
nの値を調整し、軸電圧V
shを低減するものである。
尚、
図1において、第1の導電部材13aを用いて、第1の金属ブラケット1と第2の金属ブラケット2とを接続し、電気的に短絡させている。第2の導電部材13bを用いて、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6とを接続し、電気的に短絡させている。
上記構成は、第1の金属ブラケット1と、第2の金属ブラケット2と、固定子鉄心6とが接続され、同電位となる構成である。
この同電位となる構成は、
図1の形態の他に、以下の変形例1及び変形例2の形態がある。
【0043】
変形例1について説明する。
(変形例1)
図4は、
図1の電動機50の変形例を示す図である。
図1と異なる点は、第2の導電部材13bが、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2との間に配置され、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2とを電気的に導通する点である。
図4の場合、軸受外輪の接続点Aは、第2の導電部材13bと第2の金属ブラケット2との接続点A(
図4の右側のA)となる。
図5は、
図4の電動機50の静電容量分布のモデル図である。
図2と異なる点は、第2の導電部材13bが、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2とを電気的に導通し、短絡している点である。固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2との短絡点が、軸受外輪の接続点Aとなる。
変形例1は、
図1及び
図2と同様の作用・効果が得られる。
【0044】
(変形例2)
変形例2について説明する。
図6は、
図1の電動機50の別の変形例を示す図である。
図1及び
図4と異なる点は、第1の導電部材13aを無くし、替りに第3の導電部材13cを配置した点である。
第2の導電部材13bが、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2との間に配置され、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2とを電気的に導通する。
第3の導電部材13cが、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1との間に配置され、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1とを電気的に導通する。
図6の場合、軸受外輪の接続点Aは、2個所となる。(1)1個所目は、第2の導電部材13bと第2の金属ブラケット2との接続点A(
図6の右側のA)、(2)2個所目は、第3の導電部材13cと第1の金属ブラケット1との接続点A(
図6の左側のA)、となる。
図6の場合、軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所とは、第1の金属ブラケット1と、第2の導電部材13bと、第3の導電部材13cと、第2の金属ブラケット2とを電気的に導通する箇所のことである。
【0045】
図7は、
図6の電動機50の静電容量分布のモデル図である。
図2及び
図5と異なる点は、第2の導電部材13bが、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2とを電気的に導通し、第3の導電部材13cが、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1とを電気的に導通し、短絡している点である。これらの短絡点が、軸受外輪の接続点Aとなる。
変形例2は、
図1及び
図2と同様の作用・効果が得られる。
【0046】
(変形例3)
図8は、
図1の電動機50の別の変形例を示す図である。
図1と異なる点は、第2の金属ブラケット2と回転体9との間に、駆動回路(図示せず)を実装したプリント基板12が配置されている点である。
図8は、第2の導電部材13bが、第2の金属ブラケット2と固定子鉄心6との間に配置され、固定子鉄心6と第2の金属ブラケット2とを電気的に導通している。
変形例3は、
図1及び
図2と同様の作用・効果が得られる。
尚、変形例3は、
図1のように、第2の導電部材13bが、第1の金属ブラケット1と固定子鉄心6との間に配置し、固定子鉄心6と第1の金属ブラケット1とを電気的に導通してもよい。
【0047】
(実施形態2)
本開示にかかる電気機器の例として、エアコン室内機の構成を実施形態2として、詳細に説明する。本開示にかかる電気機器は、必ずしもこれらの一例に限定されるものではない。
【0048】
図10において、エアコン室内機110の筐体111内には、ブラシレスモータ101が備えられている。そのブラシレスモータ101の回転軸には、送風ファンであるクロスフローファン112が取り付けられている。ブラシレスモータ101は、モータ駆動装置113によって駆動される。モータ駆動装置113からの通電により、ブラシレスモータ101が回転し、それに伴いクロスフローファン112が回転する。そのクロスフローファン112の回転により、室内機用熱交換器(図示せず)によって、空気調和された空気を室内に送風する。ここで、ブラシレスモータ101は、例えば、上記した実施形態1の電動機50が適用できる。
【0049】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機を採用したものである。
【0050】
(実施形態3)
本開示にかかる電気機器の例として、エアコン室外機の構成を実施形態3として、詳細に説明する。
【0051】
図11において、エアコン室外機201は、筐体211の内部にブラシレスモータ208を備えている。そのブラシレスモータ208は、回転軸に送風ファン212を取り付けている。
【0052】
エアコン室外機201は、筐体211の底板202に立設した仕切り板204により、圧縮機室206と熱交換器室209とに区画されている。圧縮機室206には、圧縮機205が設けられている。熱交換器室209には、熱交換器207及び送風ファンモータ208が配設されている。仕切り板204の上部には電装品箱210が設けられている。
【0053】
その送風用ファンモータ208は、電装品箱210内に収容されたモータ駆動装置により、駆動されるブラシレスモータ208の回転に伴い、送風ファン212が回転し、熱交換器207を通して熱交換器室209に送風する。ここで、ブラシレスモータ208は、例えば、上記した実施形態1の電動機50が適用できる。
【0054】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機50を採用したものである。
【0055】
(実施形態4)
本開示にかかる電気機器の例として、給湯機の構成を実施形態4として、詳細に説明する。
【0056】
図12において、給湯器330の筐体331内にはブラシレスモータ333が備えている。そのブラシレスモータ333の回転軸には、送風ファン332が取り付けられている。
【0057】
ブラシレスモータ333は、モータ駆動装置334によって駆動される。モータ駆動装置334からの通電により、ブラシレスモータ333が回転し、それに伴い送風ファン332が、回転する。その送風ファン332の回転により、燃料気化室(図示せず)に対して燃焼に必要な空気を送風する。ここで、ブラシレスモータ333は、例えば、上記した実施の形態1の電動機50が適用できる。
【0058】
本開示の電気機器は、ブラシレスモータと、そのブラシレスモータが搭載された筐体とを備え、ブラシレスモータとして、上記した実施形態1の電動機50を採用したものである。
【0059】
尚、実施形態1の
図1において、容量性部材15を電動機50の内部に配置したが、
図9に示すように、容量性部材15は、電動機50の開口部(図示せず)を通って、外部に配置してもよい。容量性部材15は、電動機50の外部であればどこに配置されていてもよく、例えば、電動機50の筐体の外壁に配置されている。又、容量性部材15は、例えば、電動機50から離れた位置に設けてもよい。このことにより、さらに電動機50をコンパクトにできる。
図9の態様は、実施形態1に限られることなく、実施形態2~4にも適用可能である。
【0060】
尚、実施形態1の
図1において、駆動回路を備えたプリント基板12を電動機50の内部に設けたが、駆動回路を備えたプリント基板12を電動機50の外部に設けてもよい。その場合、電動機50をコンパクトにできる。
【0061】
尚、実施形態2~4に、電動機50が回転するものとして、送風ファンを使用したが、電動機50で回転されるものであればよく、特に限定されない。
尚、実施形態1~4に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【0062】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の電動機及びその電動機を備えた電気機器を含む。
【0063】
〔項目1〕
固定子巻線を巻装した固定子鉄心を含む固定子と、
前記固定子に対向して周方向に複数のマグネットを保持する、又は、中央からスポーク状に複数のマグネットを保持する回転体と、
前記回転体と、前記回転体の中央を貫通するように前記回転体を締結したシャフトとを含む回転子と、
前記回転体を支持する第1の軸受と第2の軸受と、
前記第1の軸受を固定する第1の金属ブラケットと、前記第2の軸受を固定する第2の金属ブラケットとを備えた電動機であって、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケットと、前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
前記固定子鉄心と、前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとの接続点を軸受外輪の接続点Aと定義する時、
前記軸受外輪の接続点Aと同電位の箇所と、前記固定子巻線に電圧を加える駆動回路のゼロ基準電位との間に、静電容量Cnの容量性部材が設けられた電動機。
上記態様によれば、第1の金属ブラケット1と、第2の金属ブラケット2と、固定子鉄心6とを接続することにより、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
【0064】
〔項目2〕
第1の導電部材を用いて、前記第1の金属ブラケットと前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
第2の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第1の金属ブラケット又は前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続された項目1に記載の電動機。
上記態様によれば、第1の導電部材及び第2の導電部材を用いて、第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2と固定子鉄心と6を接続することにより、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
【0065】
〔項目3〕
第2の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第2の金属ブラケットとが電気的に接続され、
第3の導電部材を用いて、前記固定子鉄心と前記第1の金属ブラケットとが電気的に接続された項目1に記載の電動機。
上記態様によれば、第2の導電部材及び第3の導電部材を用いて、第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2と固定子鉄心と6を接続することにより、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
【0066】
〔項目4〕
前記駆動回路のゼロ基準電位は、大地アースと絶縁されている項目1乃至3のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、前記駆動回路のゼロ基準電位は、大地アースと絶縁されている。この場合、前記固定子巻線の中性点電位がパワー素子のスイッチングによって変動するので、軸電圧の増加を招く。上記態様により、軸電圧を低減することができる。
【0067】
〔項目5〕
前記回転子の静電容量の範囲が0.2pF以上2000pF以下において、前記容量性部材は、前記軸受外輪の接続点の電圧と、前記第1の軸受及び前記第2の軸受の軸受内輪の電圧との電位差が、絶対値で5V以下を満たす前記静電容量Cnを有する項目1乃至4のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、前記回転子の静電容量の範囲が0.2pF以上2000pF以下において、軸電圧が絶対値で5V以下を満たす前記静電容量Cnを有する。
【0068】
〔項目6〕
前記容量性部材を用いて、前記軸受外輪の接続点の電圧を減少して、前記軸受外輪の接続点の電圧と前記軸受内輪の電圧との電位差を減少している項目1乃至5のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、第1の金属ブラケット1又は第2の金属ブラケット2と固定子鉄心6とを接続することにより、固定子18側の静電容量分布と回転子10側の静電容量分布を、第1の軸受5a及び第2の軸受5bの静電容量を介して分離した形態から混合した形態とする。そのことで、軸受外輪の接続点Aの電位と軸受内輪の接続点Bの電位とを近づけ、その状態で、さらに容量性部材15により、接続点Aの電位と接続点Bの電位との電位差が小さくなるようにし、軸電圧を低減することができる。
【0069】
〔項目7〕
前記容量性部材が、前記電動機の外部に設けられた項目1乃至6のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、容量性部材のスペースの制約を受けず、電動機をコンパクトにできる。
【0070】
〔項目8〕
前記容量性部材が、前記電動機の内部に設けられた項目1乃至6のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機外部のスペースに影響を与えない。
【0071】
〔項目9〕
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の外部に設けられた項目1乃至8のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機をコンパクトにでき、電動機の内部のスペースに影響を与えない。
【0072】
〔項目10〕
前記駆動回路を備えたプリント基板が、前記電動機の内部に設けられた項目1乃至8のいずれかに記載の電動機。
上記態様によれば、電動機の外部のスペースに影響を与えない。
【0073】
〔項目11〕
項目1乃至10のいずれかに記載の電動機と前記電動機により駆動される送風ファンとを搭載した電気機器。
上記態様によれば、送風ファンを備えた電気機器の電動機の軸受の電食の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 第1の金属ブラケット
2 第2の金属ブラケット
3 固定子巻線
4 シャフト
5a 第1の軸受
5b 第2の軸受
6 固定子鉄心
7 樹脂
8 回転子鉄心
9 回転体
10 回転子
12 プリント基板
13 短絡部材
13a 第1の導電部材
13b 第2の導電部材
13c 第3の導電部材
15 容量性部材
18 固定子
20 誘電体層
50 電動機