(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043081
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】収容庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20230320BHJP
A23L 3/32 20060101ALN20230320BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
A23L3/32
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150590
(22)【出願日】2021-09-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000208709
【氏名又は名称】第一施設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506070143
【氏名又は名称】住商グローバル・ロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】目良 聡
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄輔
【テーマコード(参考)】
3L345
4B021
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA12
3L345AA13
3L345AA14
3L345AA25
3L345BB01
3L345GG26
3L345KK01
3L345KK04
4B021LA41
4B021LP10
(57)【要約】
【課題】漏れ電流を抑制しつつ、より均一な電界を形成することが可能な収容庫を提供する。
【解決手段】収容庫は、収容室S10を内部に有する収容庫本体20と、収容室S10に配置される電極部材70と、電極部材70とは別体からなり、収容庫本体20の内面と電極部材70との間に配置される中間部材60とを備える。電極部材70は、電圧の印加に基づき収容室の内部に電界を形成する電極本体と、電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、中間部材60に固定されている。中間部材60は絶縁材料により形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室に配置される電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成されている
収容庫。
【請求項2】
前記電極本体及び前記絶縁部材は一体成形されている
請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記絶縁部材は樹脂により形成されている
請求項1又は2に記載の収容庫。
【請求項4】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室に配置される電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を厚さ方向に挟み込む第1絶縁部材及び第2絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成されている
収容庫。
【請求項5】
前記中間部材は、矩形状に形成されており、
前記電極部材は、前記中間部材の底面に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項6】
前記中間部材は、平坦な底部と、前記底部から連続して形成される一対の脚部とを有する断面ハット状に形成されており、
前記電極部材は、前記中間部の前記底部に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項7】
前記電極に電圧を印加する変圧器と、
前記変圧器を制御する制御盤と、を備え、
前記変圧器の総重量は36[kg]未満である
請求項1~6のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項8】
当該収容庫は、新品又は中古品である
請求項1~7のいずれか一項に記載の収容庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の収容庫がある。特許文献1に記載の収容庫は、その内部に配置される電極と、電極に電圧を印加する電源とを備えている。収容庫は矩形箱状に形成されている。電極は収容庫の一側壁部の内面に固定されており、電源から印加される電圧に基づいて収容庫の内部に静電界の雰囲気を形成する。これにより、収容庫内に静電界が形成されていない場合と比較すると、収容庫に収容されている生鮮食品等の鮮度を長く保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収容庫では、収容庫の内部空間に電極が剥き出しの状態で配置されているため、例えば電極の外面に付着する異物を介して電極から収容庫の内壁面に意図しない電流が流れる、いわゆる漏れ電流が発生する可能性がある。電極の外面に付着する異物とは、収容庫の内部空間に存在する水成分や、収容庫の内部に形成される霜、時間の経過に伴って電極の外面に付着する埃等である。漏れ電流が発生すると、電圧印可装置の電流値が上昇するため、消費電力が増加する等の不都合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、漏れ電流を抑制しつつ、より均一な電界を形成することが可能な収容庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する収容庫は、収容室を内部に有する収容庫本体と、収容室に配置される電極部材と、電極部材とは別体からなり、収容庫本体の内面と電極部材との間に配置される中間部材と、を備える。電極部材は、電圧の印加に基づき収容室の内部に電界を形成する電極本体と、電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、中間部材に固定されている。中間部材は、絶縁材料により形成されている。
【0007】
この構成のように電極本体の周囲が絶縁部材により囲繞されていれば、電極本体の外面に異物が直接接触し難くなる。そのため、異物を介して電極本体に漏れ電流が発生することを抑制できる。また、収容庫本体の内面と電極部材との間に中間部材が配置されているため、収容庫本体の内面から電極部材を離間させることができる。これにより、電極部材から、収容庫本体の内部に向かうことなく、収容庫本体の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。しかも、中間部材が絶縁材料により形成されているため、この構成によっても、電極部材から収容庫本体の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。よって、より均一な電界を収容庫本体の内部に形成することが可能となる。
【0008】
上記の収容庫において、電極本体及び絶縁部材は一体成形されていることが好ましい。
この構成によれば、絶縁部材により電極本体を補強できるため、電極本体を可能な限り薄型化することができる。そのため、電極部材を軽量化することが可能となる。
【0009】
上記の収容庫において、絶縁部材は樹脂により形成されていることが好ましい。
この構成によれば、電極本体及び絶縁部材を容易に一体化させることが可能となる。
上記課題を解決する他の収容庫は、収容室を内部に有する収容庫本体と、収容室に配置される電極部材と、電極部材とは別体からなり、収容庫本体の内面と電極部材との間に配置される中間部材と、を備える。電極部材は、電圧の印加に基づき収容室の内部に電界を形成する電極本体と、電極本体を厚さ方向に挟み込む第1絶縁部材及び第2絶縁部材と、を有するとともに、中間部材に固定されている。中間部材は、絶縁材料により形成されている。
【0010】
この構成のように第1絶縁部材及び第2絶縁部材により電極本体が挟み込まれていれば、電極本体の外面の殆どを第1絶縁部材及び第2絶縁部材により覆うことができる。よって、電極本体の外面に異物が直接接触し難くなるため、異物を介して電極本体に漏れ電流が発生することを抑制できる。また、収容庫本体の内面と電極部材との間に中間部材が配置されているため、収容庫本体の内面から電極部材を離間させることができる。これにより、電極部材から、収容庫本体の内部に向かうことなく、収容庫本体の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。しかも、中間部材が絶縁材料により形成されているため、この構成によっても、電極部材から収容庫本体の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。よって、より均一な電界を収容庫本体の内部に形成することが可能となる。
【0011】
上記の収容庫において、中間部材は、矩形状に形成されており、電極部材は、中間部材の底面に固定されていることが好ましい。
上記の収容庫において、中間部材は、平坦な底部と、底部から連続して形成される一対の脚部とを有する断面ハット状に形成されており、電極部材は、中間部の底部に固定されていることが好ましい。
【0012】
上記の収容庫において、電極に電圧を印加する変圧器と、変圧器を制御する制御盤と、を備え、変圧器の総重量は36[kg]未満であることが好ましい。
上記の収容庫は、新品又は中古品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の収容庫によれば、漏れ電流を抑制しつつ、より均一な電界を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の収容庫の斜視構造を示す斜視図。
【
図2】
図1のII-II線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図3】第1実施形態の電極部材の平面構造を示す平面図。
【
図4】第1実施形態の電極部材の側面構造を示す側面図。
【
図5】(A)は、比較例の電極部材及び第1実施形態の電極部材のそれぞれの電流値、表面積、及び単位表面積当たりの電流値の測定結果を示す図表。(B)は、比較例の電極部材及び第1実施形態の電極部材のそれぞれの電流値の測定結果を示す図表。
【
図6】比較例の収容庫及び第1実施形態の収容庫のそれぞれの電極本体、電圧印加装置、及びそれらの合計の測定結果を示す図表。
【
図7】第1実施形態の電極部材の変形例の側面構造を示す側面図。
【
図8】第2実施形態の中間部材及び電極部材の斜視構造を示す斜視図。
【
図9】第2実施形態の中間部材及び電極部材の平面構造を示す平面図。
【
図10】第2実施形態の収容庫の断面構造を示す断面図。
【
図11】第2実施形態の変形例の中間部材及び電極部材の平面構造を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、収容庫の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示される収容庫10は、その内部に収容される物品を冷蔵保存する冷蔵庫として用いられる。収容庫10に収容される物品は生鮮食品や乳製品、麺類等である。生鮮食品は、例えば魚や貝等の魚介類、いちごやりんご等の果物、キャベツやトマト等の野菜、牛肉や豚肉等の食肉、エッグ、並びにそれらの加工食品である。乳製品は牛乳やチーズ等である。麺類は、小麦粉やそば粉等の穀物の粉体から作られるものである。なお、収容庫10に収容される物品は、食品に限らず、生花や薬品、臓器等であってもよい。
【0016】
収容庫10は固定型冷蔵庫や移動型冷蔵庫等として用いることができる。固定型冷蔵庫は、食品の加工工場や保管庫等の屋内に設置される冷蔵庫である。移動型冷蔵庫は、船舶や飛行機等の移動体に積み込まれる冷蔵庫である。また、収容庫10は輸送用その他のコンテナや、プレハブ倉庫等の移動不可能な倉庫であってもよい。さらに、収容庫10は新品及び中古品のいずれであってもよい。
【0017】
図1に示されるように、収容庫10は、物品を内部に収容可能な収容庫本体20と、収容庫本体20に内蔵される冷却装置30とを備えている。なお、
図1では、鉛直方向上方が矢印Z1で示され、鉛直方向下方が矢印Z2で示されている。
収容庫本体20は、箱体40と、一対の扉部50とを有している。箱体40及び扉部50はアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料により形成されるとともに、電気的に接地されている。
【0018】
箱体40は、正面に開口部を有する矩形箱状に形成されている。箱体40の正面の開口部は一対の扉部50により閉塞されている。箱体40の内面及び扉部50の内面により囲まれる空間は、
図2に示される収容庫本体20の内部空間である収容室S10を形成している。以下では、
図2に示される箱体40の外壁を構成する複数の壁部のうち、鉛直方向上方Z1に配置される壁部41を「上壁部41」と称し、扉部50から見たときに右側に配置される壁部42を「右側壁部42」と称し、扉部50から見たときに左側に配置される壁部43を「左側壁部43」と称し、鉛直方向下方Z2に配置される壁部44を「底壁部44」と称する。収容室S10は、物品が収容される空間である。収容庫10の冷蔵性能を高めるために、箱体40及び扉部50のそれぞれの内部には、収容室S10から収容庫10の外部への熱伝達を抑制するための断熱材が埋め込まれている。
【0019】
図1に示されるように、一対の扉部50は、箱体40に対して開閉自在に連結されている。収容庫10では、扉部50を開くことにより収容室S10に任意の物品を入れたり、収容室S10に収容されている物品を外部に持ち出したりすることが可能となる。また、扉部50を閉じることにより収容室S10が閉空間となり、収容室S10の内部の物品が冷却環境下で保存される。
【0020】
冷却装置30は、電力の供給に基づいて駆動することにより収容室S10に冷風を供給して、収容室S10内を冷却する。
図2に示されるように、収容庫10は、収容庫本体20の上壁部41の内面付近に配置される中間部材60及び電極部材70を更に備えている。
【0021】
中間部材60は、樹脂等の絶縁材料により矩形状に形成されている。中間部材60は電極部材70とは別体である。収容庫本体20の右側壁部42の上部及び左側壁部43の上部には載置部材80,81が固定してそれぞれ設けられている。載置部材80,81は、樹脂等の絶縁材料により略L字状に形成されている。なお、載置部材80,81は、絶縁性を有していない材料、例えば金属により形成されていてもよい。載置部材80,81に中間部材60の両端部がそれぞれ載せられることにより、収容室S10の上方に中間部材60が設置されている。中間部材60の底面には、電極部材70が固定して設けられている。中間部材60は、収容庫本体20の上壁部41の内面と電極部材70との間に配置されている。
【0022】
図3及び
図4に示されるように、電極部材70は矩形板状に形成されている。なお、
図3及び
図4等では、電極部材70の長手方向が矢印Xで示され、その短手方向が矢印Yで示されている。電極部材70は、電極本体71と、絶縁部材72と、配線75とを有している。
電極本体71は、鋼材等の金属材料により薄板状に形成されている。電極本体71は絶縁部材72により囲繞されている。電極本体71の外面は、配線75が接続されている部分を除き、全面に亘って絶縁部材72により覆われている。
【0023】
絶縁部材72は、樹脂等の絶縁材料により板状に形成されている。
図3に示されるように、絶縁部材72には、その厚さ方向に貫通する挿入孔720が外縁部及び中央部に沿って複数形成されている。電極部材70は、挿入孔720に挿入されるねじ等により、
図2に示される中間部材60に固定して組み付けられている。
【0024】
図3及び
図4に示されるように、配線75は、電極本体71の一端部から絶縁部材72を貫通して外部に露出するように形成されている。配線75は、電極本体71に電圧を印加するためのものである。
電極部材70の製造の際に電極本体71及び絶縁部材72は一体成形される。例えば、電極部材70に対応したキャビティを有する金型を用いる場合には、配線75が接続された電極本体71を金型の内部に配置した後、その金型の内部に溶融樹脂を流し込む。続いて、金型を冷却した後、その金型を樹脂成形品から取り外せば、樹脂からなる絶縁部材72が電極本体71を囲繞するように一体成形された電極部材70を製造することができる。
【0025】
図3に示されるように、配線75は、収容庫本体20の内部又は外部に設けられる電圧印加装置90に接続されている。電圧印加装置90は、変圧器91及び制御盤92等を有して構成されており、所定の高電圧を電極本体71に配線75を介して印加する。変圧器91は、電源から供給される電圧を昇圧して電極本体71に印加する。制御盤92は、変圧器91を制御するための各種回路等を有している。電圧印加装置90から電極本体71に印加される高電圧は、例えば時間の経過に伴って周期的に大きさや向きが変化する交番電圧であってもよいし、時間の経過に伴って大きさや向きが変化しない一定の電圧であってもよい。電極本体71は、電圧印加装置90により印加される高電圧に基づいて収容室S10内に電界を形成する。
【0026】
次に、本実施形態の収容庫10の作用及び効果について説明する。なお、以下では、収容室S10に収容されている物品を収容物とも称する。
収容室S10内に電界が形成されることにより、収容室S10内の収容物に殺菌処理を施すことができるとともに、収容物の熟成を促進させることもできる。そのため、鮮度を保ったまま収容物を長期間に亘って保存することができるとともに、収容物の旨味を増幅させることができる。また、所定の電界の環境下に収容物が存在することにより収容物の凍結点を下げることができるため、より低温の環境下、例えばマイナス温度の環境下であっても凍結することなく収容物を保存することができる。そのため、収容物の鮮度をより長期間に亘って維持することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の収容庫10では、電極本体71が絶縁部材72により囲繞されているため、電極本体71の外面に異物が直接接触し難くなる。よって、異物を介して電極本体71に漏れ電流が発生することを抑制できる。
図5(A)は、比較例の電極部材を用いたときの漏れ電流と、本実施形態の電極部材70を用いたときの漏れ電流とを実験的に測定することにより得られた図表である。比較例の電極部材は、電極本体が露出している構造、換言すれば電極本体が絶縁部材により囲繞されていない構造を有している。比較例の電極部材の表面積は「16.32[m
2]」に設定されている。これに対し、本実施形態の電極部材70の表面積は「14.48[m
2]」に設定されている。この実験では、比較例の電極部材を用いた場合に「18[mA]」の漏れ電流が測定され、実施形態の電極部材70を用いた場合に「8[mA]」の漏れ電流が測定された。したがって、比較例の電極部材と比較すると、本実施形態の電極部材70では約41[%]の漏れ電流を削減することが可能である。ちなみに、単位表面積当たりの電流値に関しても、比較例の電極部材よりも、本実施形態の電極部材70の方が小さくなる。
【0028】
図5(B)は、比較例の電極部材及び本実施形態の電極部材70のそれぞれの表面積を同一の値に設定したときの漏れ電流を実験的に測定することにより得られた図表である。なお、比較例の電極部材及び比較例の電極部材70のそれぞれの表面積は共に「500[mm]×400[mm]に設定した。この実験では、比較例の電極部材を用いた場合に[0.15[mA]]の漏れ電流が検出され、本実施形態の電極部材70を用いた場合に「0.09[mA]」の漏れ電流が検出された。この実験でも、比較例の電極部材と比較すると、本実施形態の電極部材70では約40[%]の漏れ電流を削減可能であることが確認された。このように漏れ電流が削減されることにより、電極部材70に供給すべき電流値を低減することができるため、結果として、より小さい変圧器91を用いることができる。よって、収容庫10の全体の重量を従来の収容庫よりも軽くすることが可能である。
【0029】
また、
図2に示されるように、収容庫本体20の上壁部41の内面と電極部材70との間に中間部材60が配置されているため、収容庫本体20の上壁部41の内面から電極部材70を離間させることができる。これにより、電極部材70から、収容庫本体20の内部に向かうことなく、収容庫本体20の上壁部41の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。しかも、中間部材60が絶縁材料により形成されているため、この構成によっても、電極部材70から収容庫本体20の上壁部41の内面に直接向かうような電界が形成され難くなる。よって、より均一な電界を収容庫本体20の内部に形成することが可能となる。さらに、本実施形態のように収容庫本体20の上壁部41の内面と電極部材70との間に中間部材60が配置されている構成であれば、収容庫本体20の上壁部41の内面と電極部材70との間に単にスペースが形成されている構成と比較すると、構造的な強度を高めることが可能である。
【0030】
一方、本実施形態の収容庫10では、電極本体71及び絶縁部材72が一体成形されている。この構成によれば、絶縁部材72により電極本体71を補強できるため、電極本体71を可能な限り薄型化することができる。そのため、電極部材70を軽量化することが可能となる。
【0031】
図6は、比較例の収容庫の電極部材の重量及び本実施形態の収容庫10の電極部材70の重量を実験的に計測することにより得られた図表である。比較例の収容庫は、電極本体が絶縁部材により囲繞されていない構造を有しているため、その電極本体に所要の剛性が必要となる。そのため、電極本体の重量が大きくなり易い。この点、本実施形態の収容庫10では、絶縁部材72により電極本体71を補強できるため、
図6に示されるように、比較例の収容庫と比較すると、本実施形態の収容庫10では電極部材の重量を「400[kg]」程度軽量化することが可能である。電極部材の軽量化により、本実施形態の収容庫10では、比較例の収容庫に対して載積重量を増加させることができる。
【0032】
また、上述の通り、本実施形態の電極部材70では漏れ電流を削減することができるため、電圧印加装置90を軽量化することもできる。具体的には、
図6に示されるように、比較例の収容庫と比較すると、本実施形態の収容庫10では電圧印加装置の重量を「80[kg]」程度軽量化することが可能である。結果として、収容庫全体として見たときに、比較例の収容庫と比較すると、本実施形態の収容庫10では「480[kg]」程度軽量化が可能である。
【0033】
一方、従来の収容庫では、生鮮食品の鮮度の確保等に関してより高い効果を得るためには、より強度の高い電界を形成する必要がある。すなわち、より高い電圧を電極に印加する必要がある。このような要求に対応するために、電圧印加装置から電極に印加される電圧のパターンには、低電圧に対応した電圧パターンだけでなく、高電圧に対応した電圧パターン等の複数のパターンが設けられている。複数の電圧パターンを実現するためには、それらに対応した変圧器の容量が必要となる。結果的に従来の収容庫では複数の変圧器を搭載しなければならなくなっている。これが電圧印加装置の重量を増加させ、ひいては収容庫全体の重量を増加させる要因になっている。
【0034】
これに対して、本実施形態の収容庫10では、上述の通り、より均一な電界を収容庫10内に形成することが可能であるため、電圧パターンの数を減らしたとしても、十分な電界強度を得られる可能性が高い。電圧パターンの数を減らすことができれば、変圧器の容量を減少させることができる。すなわち、変圧器91の数を減らすことができる。したがって、本実施形態の収容庫10では変圧器91の総重量及び総体積を従来の収容庫よりも減らすことが可能である。
【0035】
具体的には、従来の収容庫では、電圧印加装置から電極に印加される電圧パターンとして、例えば2[kV]から7[kV]の範囲で1[kV]毎に設定される電圧パターンが用いられており、合計6つの電圧パターンが用いられている。この6つの電圧パターンを実現するためには、電圧印加装置に6つの変圧器が必要となる。したがって、1つの変圧器当たりの重量が「6[kg]」であるとすると、変圧器の総重量が「36[kg](=6[kg]×6)」となる。これに対して、本実施形態の収容庫10では、変圧器91の数を6つよりも減らすことができるため、変圧器の総重量を「36[kg]」未満にすることが可能である。
【0036】
同様に、一つの変圧器当たりの体積が「0.00594[m3]」であるとすると、従来の収容庫では、変圧器の総体積が「0.03564[m3](=0.00594[m3]×6)」となる。これに対して、本実施形態の収容庫10では、変圧器91の数を6つよりも減らすことができるため、変圧器91の総体積を「0.03564[m3]」未満にすることが可能である。
【0037】
また、本実施形態の収容庫10では、電極部材70の絶縁部材72が樹脂により形成されている。この構成によれば、上述した製造方法を用いることにより電極本体71及び絶縁部材72を容易に一体化させることができる。
(変形例)
次に、第1実施形態の収容庫10の変形例について説明する。
【0038】
図7に示されるように、本変形例の電極部材70は、電極本体71と、第1絶縁部材73と、第2絶縁部材74とを有している。第1絶縁部材73及び第2絶縁部材74は、樹脂等の絶縁材料により平板状に形成されている。電極本体71は第1絶縁部材73及び第2絶縁部材74により挟み込まれている。電極本体71の板厚方向の一方の外面710は全面に亘って第1絶縁部材73により覆われている。電極本体71の板厚方向の他方の外面711は全面に亘って第2絶縁部材74により覆われている。各絶縁部材73,74は電極本体71に接着等により固定されている。
【0039】
この構成のように第1絶縁部材73及び第2絶縁部材74により電極本体71が厚さ方向に挟み込まれていれば、電極本体71の外面の殆どを第1絶縁部材73及び第2絶縁部材74により覆うことができる。よって、電極本体71の外面に異物が直接接触し難くなるため、異物を介して電極本体71に漏れ電流が発生することを抑制できる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の収容庫10について説明する。以下、第1実施形態の収容庫10との相違点を中心に説明する。
本実施形態の収容庫10では、
図8に示される複数の中間部材60が用いられている。
図8に示されるように、中間部材60はY方向に延びるように形成されている。中間部材60は、Y方向に直交する断面がハット状に形成される形状を有しており、平坦な底部61と、底部61から連続して形成される一対の脚部62,63とを有している。
【0041】
図9に示されるように、各中間部材60の底部61には複数の貫通孔610が形成されている。中間部材60に形成される複数の貫通孔610のそれぞれの位置は、
図3に示される電極部材70においてY方向に並ぶ複数の挿入孔720のそれぞれの位置と一致している。互いに位置が一致する中間部材60の貫通孔610及び電極部材70の挿入孔720にねじ等がねじ込まれることにより、一つの電極部材70に複数の中間部材60が締結されて固定されている。
【0042】
各中間部材60の一対の脚部62,63の先端部には複数の貫通孔620,630がそれぞれ形成されている。複数の貫通孔620,630のそれぞれにリベットが挿入されることにより、各中間部材60は、
図10に示されるように収容庫本体20の上壁部41の内面に固定されている。したがって、電極部材70は、収容庫本体20の上壁部41の内面に複数の中間部材60を介して固定されている。
【0043】
本実施形態のような中間部材60を用いた場合であっても、第1実施形態の収容庫10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
また、各中間部材60をY方向に更に延ばすことにより、
図11に示されるように各中間部材60に複数の電極部材70を固定することも可能である。これにより、例えば収容庫本体20がY方向に長く形成されている場合であっても、上壁部41の内面の全体に電極部材70を容易に配置することが可能である。
【0044】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・
図3及び
図4に示される電極部材70は、絶縁部材72により電極本体71が囲繞されている構造であれば、例えば箱状に形成される絶縁部材72の内部に電極本体71が接着等により固定された構造を有するものであってもよい。
【0045】
・
図7に示される電極部材70では、電極本体71と絶縁部材73,74とが一体成形されていてもよい。
・収容庫本体20の構造は適宜変更可能である。例えば収容庫本体20の内部には複数の収容室が形成されていてもよい。また、収容庫本体20は、前面に扉部50を有する構造に限らず、上面に扉部50を有する構造であってもよい。さらに、収容庫本体20は、一対の扉部50を有する構造に限らず、一つの扉部のみを有する構造や、3つ以上の扉部を有する構造であってもよい。
【0046】
・収容庫10は、冷蔵庫に限らず、常温庫や加温庫、冷凍庫、凍結庫等であってもよい。また、輸送用その他のコンテナであってもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0047】
S10…収容室、10…収容庫、20…収容庫本体、61…底部、62,63…脚部、70…電極部材、71…電極本体、72…絶縁部材、73…第1絶縁部材、74…第2絶縁部材、91…変圧器、92…制御盤。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室に配置される電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成されている
収容庫。
【請求項2】
前記電極本体及び前記絶縁部材は一体成形されている
請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記絶縁部材は樹脂により形成されている
請求項1又は2に記載の収容庫。
【請求項4】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室に配置される電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を厚さ方向に挟み込む第1絶縁部材及び第2絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成されている
収容庫。
【請求項5】
前記中間部材は、矩形状に形成されており、
前記電極部材は、前記中間部材の底面に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項6】
前記中間部材は、平坦な底部と、前記底部から連続して形成される一対の脚部とを有する断面ハット状に形成されており、
前記電極部材は、前記中間部材の前記底部に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項7】
前記電極部材は、前記収容庫本体の内面から離間して配置されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項8】
前記電極に電圧を印加する変圧器と、
前記変圧器を制御する制御盤と、を備え、
前記変圧器の総重量は36[kg]未満である
請求項1~7のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項9】
当該収容庫は、新品又は中古品である
請求項1~8のいずれか一項に記載の収容庫。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室に配置される電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材の一方の外面に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成され、
前記中間部材の前記一方の外面とは反対側の外面は、前記収容庫本体の内面に対向している
収容庫。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記電極に電圧を印加する変圧器と、
前記変圧器を制御する制御盤と、を備え、
前記変圧器の総重量は36kg未満である
請求項1~7のいずれか一項に記載の収容庫。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容庫本体の外壁を構成する複数の壁部のうち、前記収容室を挟んで互いに対向して配置される2つの壁部を第1壁部及び第2壁部とするとき、前記収容室に配置され、前記第2壁部よりも前記第1壁部に近接して設けられる電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の前記第1壁部の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記中間部材の外面のうち、前記収容庫本体の前記第1壁部の内面に対向する外面を第1外面とし、前記収容庫本体の前記第2壁部の内面に対向する外面を第2外面とするとき、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を囲繞する絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材の前記第2外面に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成され、
前記中間部材の前記第2外面と前記収容庫本体の前記第2壁部の内面との間に、前記収容室内に収容された物品を配置するための空間が形成されている
収容庫。
【請求項2】
前記電極本体及び前記絶縁部材は一体成形されている
請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記絶縁部材は樹脂により形成されている
請求項1又は2に記載の収容庫。
【請求項4】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容庫本体の外壁を構成する複数の壁部のうち、前記収容室を挟んで互いに対向して配置される2つの壁部を第1壁部及び第2壁部とするとき、前記収容室に配置され、前記第2壁部よりも前記第1壁部に近接して設けられる電極部材と、
前記電極部材とは別体からなり、前記収容庫本体の前記第1壁部の内面と前記電極部材との間に配置される中間部材と、を備え、
前記中間部材の外面のうち、前記収容庫本体の前記第1壁部の内面に対向する外面を第1外面とし、前記収容庫本体の前記第2壁部の内面に対向する外面を第2外面とするとき、
前記電極部材は、電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電界を形成する電極本体と、前記電極本体を厚さ方向に挟み込む第1絶縁部材及び第2絶縁部材と、を有するとともに、前記中間部材の前記第2外面に固定されており、
前記中間部材は、絶縁材料により形成され、
前記中間部材の前記第2外面と前記収容庫本体の前記第2壁部の内面との間に、前記収容室内に収容された物品を配置するための空間が形成されている
収容庫。
【請求項5】
前記中間部材は、矩形状に形成されており、
前記中間部材の前記第2外面は、前記中間部材の底面であり、
前記電極部材は、前記中間部材の底面に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項6】
前記中間部材は、平坦な底部と、前記底部から連続して形成される一対の脚部とを有する断面ハット状に形成されており、
前記中間部材の前記第2外面は、前記中間部材の前記底部の底面であり、
前記電極部材は、前記中間部材の前記底部の前記底面に固定されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項7】
前記電極部材は、前記収容庫本体の前記第1壁部の内面から離間して配置されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項8】
前記電極に電圧を印加する変圧器と、
前記変圧器を制御する制御盤と、を備え、
前記変圧器の総重量は36kg未満である
請求項1~7のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項9】
当該収容庫は、新品又は中古品である
請求項1~8のいずれか一項に記載の収容庫。