(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043094
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】充填装置、及び、充填方法
(51)【国際特許分類】
B65B 39/00 20060101AFI20230320BHJP
B67C 3/28 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
B65B39/00 B
B67C3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150612
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】591163650
【氏名又は名称】日本化工塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敬太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 善行
【テーマコード(参考)】
3E055
3E079
【Fターム(参考)】
3E055AA02
3E055BB07
3E055CB10
3E055DA03
3E055DA12
3E055EB01
3E055FA04
3E079AA07
3E079AB03
3E079BB09
3E079DD06
3E079DD35
3E079DD43
3E079DE13
(57)【要約】
【課題】不活性ガス封入時の作業性と充填効率に優れる充填装置、及び、充填方法を提供すること。
【解決手段】充填装置1は、充填物を容器に吐出可能であって、吐出端に弁座20が設けられた筒部10と、筒部10の中空部14を進退可能な弁体30と、弁座20の外周に組み付けられた治具40と、を備え、弁体30が弁座20に着座した閉弁状態にて前記充填物の吐出が不能であるとともに、弁体30が弁座20から離間した開弁状態にて充填物の吐出が可能である、ように構成され、充填物の吐出と同期して気体を容器に噴出可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物を容器に吐出可能な充填装置であって、
吐出端に弁座が設けられた筒部と、
前記筒部の中空部を進退可能な弁体と、
前記弁座の外周に組み付けられた治具と、を備え、
前記治具は、
前記充填物の吐出方向に貫通して、前記吐出方向に気体の噴出が可能な噴出口が設けられ、
当該充填装置は、
前記弁体が前記弁座に着座した閉弁状態にて前記充填物の吐出が不能であるとともに、前記弁体が前記弁座から離間した開弁状態にて前記充填物の吐出が可能である、ように構成され、
前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出可能に構成される、
充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充填装置において、
前記治具は、
前記弁座の吐出端が挿通される挿通口と、
前記挿通口を囲むように配置された複数の前記噴出口と、を有する、
充填装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の充填装置において、
前記治具は、前記弁座に対して着脱可能である、
充填装置。
【請求項4】
充填装置を用いた充填物の充填方法であって、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の充填装置を備え、
前記開弁状態にて前記充填物を前記容器に吐出し、前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出する工程を含む、
充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填装置、及び、充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料等の充填物をドラム缶等の容器に充填するための充填装置が提案されている。従来の充填装置の一つには、外管と、外管の中空部に配置された内管と、からなる二重管構造を有する充填装置(以下、「従来装置」ともいう。)が開示されている。従来装置では、装置外部から供給された充填物が、外管と内管との間を通過して容器に吐出するように構成されている(例えば、特許文献1~2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-321093号公報
【特許文献2】特開2008-110770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充填物によっては、湿気等の影響によって充填後に容器内部で硬化するおそれがあり、これを抑制するため、充填物の充填時又は充填後に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を容器内に噴出して封入することがある。容器内への不活性ガスの噴出方法としては、充填装置とは異なる不活性ガスの噴出装置を用いる方法があるが、この方法では、充填物の充填工程と不活性ガスの封入工程の2工程を要することになり、作業性(作業効率)の観点から好ましくない。
【0005】
一方、特許文献1~2に開示された従来装置では、容器への充填物の充填と同時に内管から不活性ガスを噴出する方法が採られている。しかしながら、内管から不活性ガスを噴出する方法では、吐出された充填物の中央付近に不活性ガスが噴出されるので、容器へ流入中の充填物に不活性ガスのいわゆる噴出圧が掛かってしまう。充填物に不活性ガスの噴出圧が掛かると、充填物が低粘度の場合には、充填物が容器外へと飛散して容器の表面や周囲を汚すことがあるため、不活性ガスの圧力を上げられず、逆に充填物が高粘度の場合には、不活性ガスが充填物から抜けきらずに容器内で泡となるため、充填速度が上げられないという問題があった。このように、従来の充填装置においては、不活性ガス封入時の作業性と充填効率との両立が困難であった。
【0006】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、不活性ガス封入時の作業性と充填効率に優れる充填装置、及び、充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る充填装置は、下記を特徴としている。
【0008】
充填物を容器に吐出可能な充填装置であって、
吐出端に弁座が設けられた筒部と、
前記筒部の中空部を進退可能な弁体と、
前記弁座の外周に組み付けられた治具と、を備え、
前記治具は、
前記充填物の吐出方向に貫通して、前記吐出方向に気体の噴出が可能な噴出口が設けられ、
当該充填装置は、
前記弁体が前記弁座に着座した閉弁状態にて前記充填物の吐出が不能であるとともに、前記弁体が前記弁座から離間した開弁状態にて前記充填物の吐出が可能である、ように構成され、
前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出可能に構成される、
充填装置であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る充填装置について以下に述べる。
本構成の充填装置は、筒部の中空部にて弁体が進退して、筒部における充填物の吐出端に設けられた弁座に離間又は着座することによって、容器への充填物の吐出及び遮断が制御されている。具体的には、弁体が弁座に着座した閉弁状態にて充填物の吐出が不能であるとともに、弁体が弁座から離間した開弁状態にて充填物の吐出が可能である、ように構成されている。そして、開弁状態にて充填物が吐出される際、これに同期して、弁座の外周に組み付けられた治具の噴出口から気体(例えば、不活性ガス)が容器に噴出される。
【0010】
このように、本構成の充填装置は、充填物の充填工程と気体の噴出工程が一体化されることによって、作業性に優れる。加えて、容器に噴出される気体は、弁座の外周に組み付けられた治具から噴出されるため、従来装置のように内管から気体が噴出される場合に比べて、充填物が容器外へ飛散したり、容器内で発泡したりし難い。
【0011】
したがって、本構成の充填装置は、従来装置に比べて、気体封入時の作業性に優れるとともに充填効率に優れている。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る充填構造の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、開弁状態における
図1に示す充填装置の要部断面図である。
【
図3】
図3は、閉弁状態における
図1に示す充填装置の要部断面図である。
【
図4】
図4は、小口径缶用の治具を装着した場合の充填装置の
図3に相当する図である。
【
図5】
図5(a)は、
図1に示す充填装置の治具の斜視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の正面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5に示す治具の他の例を示す斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る充填構造100について説明する。
図1に示すように、充填構造100は、充填装置1、充填装置1に開弁用のエアを供給する第一装置2、治具40に不活性ガス(例えば窒素ガス)を供給する第二装置3、制御部4、及び充填装置1に充填物を供給する第三装置5を含んで構成される。なお、不活性ガスは、本発明の「気体」に対応している。
【0015】
以下、説明の便宜上、「上下方向」、「上」、及び「下」を定義する。上下方向は、筒部10の中空部14にて弁体30が進退する方向と一致しており、充填物の吐出端側を「下側」と呼び、吐出端側とは反対側を「上側」と呼ぶ。また、以下でいう「周方向」は、充填装置1の周方向であり、「径方向」は、充填装置1の径方向である。
【0016】
充填装置1、第一装置2、第二装置3、及び制御部4は、それぞれ、ホース等(図示省略)を介して接続されている。換言すると、充填装置1、第一装置2、第二装置3、及び制御部4を、それぞれ、接続するホース等は、エア又は不活性ガスの通気路である。同様に、充填装置1、及び第三装置5は、ホース等(図示省略)を介して接続されている。換言すると、充填装置1、及び第三装置5を接続するホース等は、充填物の流路である。
【0017】
なお、開弁用のエアを供給する第一装置2、及び不活性ガスを供給する第二装置3は、共通の制御部4によって制御されている。制御部4としては、例えば電磁弁や空気弁等を用いることができるが、塗料などの危険物を充填するラインでは安全性の面から空気弁を用いることが好ましい。また、不活性ガスを供給する第二装置3と制御部4との間には、レギュレータ等(図示省略)が設けられて、不活性ガスの供給時の圧力が調整される。
【0018】
充填装置1は、充填物の吐出端に弁座20が設けられた筒部10と、筒部10の中空部14を進退可能な弁体30と、弁座20の外周に組み付けられた治具40と、を備えている。換言すると、筒部10、弁体30、及び治具40は、充填装置1である。以下、充填装置1を構成する各部品の構成について順に説明する。なお、充填装置1は、エアシリンダ60と、第一装置2及び制御部4と接続されたホース等が接続されるソケット61と、を更に備えている。
【0019】
まず、筒部10について説明する。
図2~
図3に示すように、筒部10は、略円筒状の形状を有し、周壁11と、周壁11から径方向外側に突出するソケット12と、筒部10の下端(即ち、吐出端)に設けられた弁座20と、を含んで構成されている。
【0020】
筒部10は、周壁11、ソケット12、及び弁座20によって、後述する弁体30が上下方向の変位(即ち、昇降)可能な空間である中空部14が画成されている。加えて、ソケット12には、第三装置5に接続されたホース等が接続される。つまり、中空部14は、ホース等を介して第三装置5からソケット12に向けて供給された充填物が、後述する吐出口23から容器(図示省略)に向けて吐出されるまでの充填装置1(即ち、筒部10)内の流路である。
【0021】
弁座20は、周壁11の下端側(即ち、吐出端側)に位置する接続部13と接続される接続部21と、接続部21と連続するとともに下側に向かうにつれて径が小さくなるテーパ状の筒状部22と、筒状部22と連続するとともに略円筒状の形状を有する吐出口23と、を含んで構成されている。吐出口23の内周面23aは、後述する弁体30の当接部33の外周面33aと当接可能に構成されている。
【0022】
周壁11の接続部13と弁座20の接続部21との間には、パッキン50が配置されている。パッキン50は、接続部13の下端面及び接続部21の上端面と液密的に当接し、接続部13及び接続部21の接続箇所を止水する役割を果たしている。
【0023】
次いで、弁体30について説明する。弁体30は、上端部(図示省略)がエアシリンダ60のロッド(図示省略)と連結されて、エアシリンダ60が作動することによって筒部10の中空部14内を上下方向に変位(即ち、昇降)する。
【0024】
図2~
図3に示すように、弁体30は、略円筒状の弁棒31と、弁棒31よりも下側に位置する本体部32と、を含んで構成されている。本体部32は、下端に略円筒状の当接部33を有している。当接部33の外周面33aは、吐出口23の内周面23aと当接可能に構成されている。
【0025】
本体部32と当接部33との間には、環状のパッキン34が装着されている。パッキン34は、後述する充填装置1の閉弁状態にて、筒状部22の下端部の内周面と液密的に当接し、充填物を充填装置1の外部へと漏出させない役割を果たしている。
【0026】
次いで、治具40について説明する。
図2~
図3、及び
図5に示すように、治具40は、略円形状の底壁41と、底壁41から上側に向かって延びる略円筒状の周壁42と、周壁42から径方向外側に突出するソケット43と、を含んで構成されている。周壁42は、内径が接続部13及び接続部21の外径とおおよそ等しく構成されている。このため、治具40は、弁座20(即ち、接続部21)に嵌め込むように組み付け可能である。
【0027】
底壁41の外径は、充填しようとする容器の口径とおおよそ等しくなるように構成されており、略中央部分に上下方向に貫通する挿通口44が設けられるとともに、径方向に沿って挿通口44を挟み込むように配置された一対の噴出口45が設けられている(
図5参照)。挿通口44は、内径が弁座20の吐出口23の外径とおおよそ等しく構成されている。このため、挿通口44に弁座20の吐出口23(即ち、吐出端)を嵌め込むことで、治具40は弁座20に組み付け可能である。ここで、
図2~
図3に示す治具40は、ドラム缶などの大口径容器に充填する場合に用いられる治具である。なお、挿通口44及び噴出口45は、上下方向に貫通する貫通孔である。
【0028】
治具40が弁座20に組み付けられると、弁座20の外周面、底壁41、及び周壁42によって、空間Sが画成される。加えて、ソケット43には、第二装置3及び制御部4に接続されたホース等が接続される。つまり、空間Sは、ホース等を介して第二装置3及び制御部4からソケット43に向けて供給された不活性ガスが、噴出口45から容器(図示省略)に向けて噴出されるまでの充填装置1(即ち、治具40)内の通気路である。以上、充填装置1を構成する各部品の構成について説明した。
【0029】
次いで、弁座20に対する治具40の組み付け方法について説明する。はじめに、治具40を弁座20の下側、且つ、治具40の挿通口44が弁座20の吐出口23に対応するように配置する。次に、治具40を弁座20に向けて近づけるように移動させると、挿通口44に吐出口23が進入する。この移動は、治具40が弁座20に対して所定の位置に到達するまで続けられる。
【0030】
治具40が弁座20に対して所定の位置まで到達すると、挿通口44に吐出口23が嵌め込まれるとともに、治具40の周壁42が弁座20の外周面に密着するように組み付けられる。
【0031】
治具40の固定方法について特段の制限は無く、不活性ガス噴出時の圧力で治具40が脱落しない程度に固定されていれば良い。例えば、治具40の挿通口44に弁座20の吐出口23を所定の位置まで嵌め込んだ後、弁座20及び治具40の双方の外周面に粘着テープ(例えば、アルミ粘着テープ等)を巻き付けて、治具40が弁座20から離脱しないように固定することができる。このようにして、治具40は、弁座20に組み付けられる(
図2~
図4参照)。なお、弁座20に対する治具40の組み付けはこれに限られるものではなく、例えば、弁座20及び治具40の双方に係止部を設けて、係止部同士を係止させることによって、組み付けられてもよい。
【0032】
治具40が弁座20に組み付けられた状態では、弁座20の外周面と治具40の周壁42とが当接している。しかしながら、弁座20の外周面及び治具40の内周面の当接箇所の僅かな隙間から、不活性ガスが漏出するおそれがあるため、例えば、粘着テープを巻き付ける際に、治具40の上側の開口を塞ぐように粘着テープを巻き付けることによって、不活性ガスの漏出を抑制できる。
【0033】
なお、弁座20に組み付けられた治具40は、巻き付けられた粘着テープを剥がし、下側に向けて引っ張るように力を掛けることで、弁座20から取り外すことができる。換言すると、治具40は、弁座20に対して着脱可能に組み付けられている。以上、弁座20に対する治具40の組み付け方法について説明した。
【0034】
次いで、充填装置1及び充填構造100の動作例について説明する。充填装置1の下側に容器等が設置されて充填物の充填が開始されると、第一装置2から充填装置1のエアシリンダ60に向けてエアが供給される。同様に、充填開始時には、第三装置5から充填装置1の筒部10(具体的には、中空部14)に向けて充填物が供給され、これに同期して第二装置3から充填装置1の治具40(具体的には、空間S)に向けて不活性ガスが供給される。
【0035】
第一装置2から供給されたエアは、制御部4を通過して、エアシリンダ60へと到達するとエアシリンダ60が上昇する。これにより、エアシリンダ60のロッドに連結された弁体30も同様に上昇し、弁体30(具体的には、当接部33)が弁座20(具体的には、吐出口23)から離間して、充填装置1は開弁状態となる(
図2参照)。
【0036】
開弁状態では、第三装置5から充填装置1に向けて供給された充填物が中空部14を通り、吐出口23から容器に向けて吐出される。同様に、第二装置3から充填装置1に向けて供給された不活性ガスは、治具40の空間Sを通り、噴出口45から容器に向けて噴出される。充填構造100では、このようにして容器に充填物が充填される。なお、充填物が吐出される方向と不活性ガスが噴出される方向とは略平行(ともに上下方向)である。
【0037】
容器に所定量の充填物が充填されると、充填装置1から充填物の吐出を遮断すべく、例えば第一装置2からエアシリンダ60へのエアの供給を停止することによって、エアシリンダ60が下降する。これにより、弁体30も同様に下降し、弁体30が弁座20に当接(即ち、着座)して、充填装置1は閉弁状態となる(
図3参照)。
【0038】
閉弁状態では、弁体30における当接部33の外周面33aが、弁座20における吐出口23の内周面23aと当接(好ましくは面接触)し、更には、パッキン34が筒状部22の下端部の内周面と液密的に当接する。これにより、充填装置1では、充填物の外部への漏出が抑制される。
【0039】
一般に、閉弁状態にて外部への吐出が抑制されるのは、充填物のみであり、従来の充填装置では、閉弁状態にて不活性ガスが無意味に噴出され続けることもあった。しかしながら、本実施形態に係る充填構造100では、不活性ガスを供給する第二装置3は、エアを供給する第一装置2と共通の制御部4に接続されている。
【0040】
このため、制御部4によって、上述した第一装置2のエアの供給を停止する制御が行われると、この制御と同時に第二装置3の不活性ガスの供給の制御も行われる。つまり、第一装置2からエアの供給が停止されると同時に、第二装置3からの不活性ガスの供給が停止されるため、従来の充填装置のような不活性ガスの無意味な噴出が抑制される。なお、このとき、充填装置1は、第三装置5からの充填物の供給も停止されている。
【0041】
ここで、上記では、エアシリンダ60にエアが供給されると充填装置1が開弁状態となり、エアの供給が停止されると充填装置1が閉弁状態となる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、エアシリンダ60にエアが供給されると充填装置1が閉弁状態となり、エアの供給が停止されると充填装置1が開弁状態となってもよい。以上、充填装置1及び充填構造100の動作例について説明する。
【0042】
<作用・効果>
本実施形態に係る充填装置1によれば、閉弁状態にて充填物の吐出が不能であるとともに開弁状態にて充填物の吐出が可能であり、且つ、開弁状態にて充填物が吐出される際、これに同期して、弁座20に組み付けられた治具40の噴出口45から不活性ガスが容器に向けて噴出される。このように、充填物の充填工程と不活性ガスの噴出工程が一体化されることによって作業性に優れる。加えて、不活性ガスは、弁座20に組み付けられた治具40の噴出口45から噴出されるため、従来の充填装置のように内管から気体が噴出される場合に比べて、充填物が容器外へ飛散したり、容器内で発泡したりし難い。
【0043】
更に、本実施形態に係る充填装置1によれば、治具40は、弁座20の吐出口23が挿通される挿通口44と、挿通口44を囲むように(具体的には、径方向に沿って挿通口44を挟み込むように)配置された複数(
図4は一対、
図5は二対の例)の噴出口45と、を有する。これにより、吐出口23から吐出された充填物には、挿通口を囲む一対の噴出口45からの不活性ガスの噴出圧が均一に掛かるため、充填物の容器外への飛散が抑制されるとともに、充填物が吐出直後から不活性ガスに囲まれて充填されるため充填時の環境影響(湿度など)を受け難くなる。噴出口45の数が多いほどこの効果は高くなる。
【0044】
更に、本実施形態に係る充填装置1によれば、治具40は、弁座20に対して着脱可能である。これにより、例えば治具40に充填物の汚れが付着しても、治具40を取り換えればよく、充填装置1の取り扱いが容易となる。
【0045】
このように、本実施形態に係る充填装置1は、従来装置に比べて、作業性に優れるとともに充填物の飛散が抑制される。なお、本実施形態に係る充填方法についても上記同様の作用・効果を奏し得る。
【0046】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0047】
図4を参照して、治具140について説明する。ただし、
図2~
図3に示す治具40と同様の構成については、同様の符号を付して、できる限り説明を省略する。
【0048】
治具140は、例えば、石油缶などの小口径缶に充填する場合に用いられる治具である。治具140は、略円形状の底壁141と、底壁141から上側に向かって延びる略円筒状の周壁142と、周壁142から径方向外側に突出するソケット43と、を含んで構成されている。周壁142は、内径及び外径が接続部13及び接続部21の外径よりも小さく構成されている。
【0049】
底壁141の外径は、充填しようとする容器の口径とおおよそ等しくなるように構成されており、略中央部分に上下方向に貫通する挿通口44が設けられるとともに、径方向に沿って挿通口44を挟み込むように配置された一対の噴出口45が設けられている。この点については、治具40と同様である。ただし、底壁141の外径は、底壁41の外径よりも小さい。
【0050】
弁座20に対する治具140の組み付け方法について説明する。はじめに、治具140を弁座20の下側、且つ、治具140の挿通口44が弁座20の吐出口23に対応するように配置する。次に、治具140を弁座20に向けて近づけるように移動させると、挿通口44に吐出口23が進入する。この移動は、治具140が弁座20に対して所定の位置に到達するまで続けられる。
【0051】
治具140が弁座20に対して所定の位置まで到達すると、挿通口44に吐出口23が嵌め込まれるとともに、治具140の周壁142の上端面が、周壁142の上端面に対応する位置における弁座20の外周面の下端面に当接する。そして、この状態にて、弁座20及び治具140の双方の外周面に粘着テープTを巻き付けて、治具140が弁座20から離脱しないように固定する。このとき、当接箇所の僅かな隙間から、不活性ガスが漏出しないように、粘着テープTを巻き付ける必要がある。このようにして、治具140は、弁座20に組み付けられる(
図4参照)。上述したように治具140が弁座20に組み付けられると、弁座20の外周面、底壁141、及び周壁142によって、空間Sが画成される。
【0052】
なお、治具140の固定方法について特段の制限は無く、不活性ガス噴出時の圧力で治具140が脱落しない程度に固定されていれば良い。例えば、弁座20及び治具140の双方に係止部を設けて、係止部同士を係止させることによって、組み付けられてもよい。
【0053】
ここで、弁座20に組み付けられた治具140は、巻き付けられた粘着テープTを剥がし、下側に向けて引っ張るように力を掛けることで、弁座20から取り外すことができる。換言すると、治具140は、弁座20に対して着脱可能に組み付けられている。つまり、容器の口径に合わせて治具40と治具140とを簡単に交換できる。これは、充填ラインの生産性向上の観点から重要である。また、装置の洗浄作業性の面からも有効である。
【0054】
つまり、充填装置1は、容器への充填前に、充填しようとする容器の口径に応じて、治具40,140を選択できる。
【0055】
例えば、
図6に示すように、治具40aは、噴出口45が4箇所設けられてもよい。このような場合、複数の噴出口45は、挿通口44を囲むように配置される。なお、複数の噴出口45は、好ましくは略円状に配置される。換言すると、挿通口44の中心から各噴出口45までの距離が等しくなるように配置されることが好ましい。これにより、吐出された充填物が、不活性ガスの噴出圧によって容器外へと飛散することが抑制される。
【0056】
ここで、上述した本発明に係る充填装置、及び、充填方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
充填物を容器に吐出可能な充填装置(1)であって、
吐出端に弁座(20)が設けられた筒部(10)と、
前記筒部の中空部を進退可能な弁体(30)と、
前記弁座の外周に組み付けられた治具(40)と、を備え、
前記治具(40)は、
前記充填物の吐出方向に貫通して、前記吐出方向に気体の噴出が可能な噴出口(45)が設けられ、
当該充填装置(1)は、
前記弁体(30)が前記弁座(20)に着座した閉弁状態にて前記充填物の吐出が不能であるとともに(
図3参照)、前記弁体(30)が前記弁座(20)から離間した開弁状態にて前記充填物の吐出が可能である(
図2参照)、ように構成され、
前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出可能に構成される、
充填装置(1)。
[2]
上記[1]に記載の充填装置(1)において、
前記治具(40)は、
前記弁座の吐出端が挿通される挿通口(44)と、
前記挿通口を囲むように配置された複数の前記噴出口(45)と、を有する、
充填装置(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の充填装置(1)において、
前記治具(40)は、前記弁座(20)に対して着脱可能である、
充填装置(1)。
[4]
充填装置を用いた充填物の充填方法であって、
上記[1]から上記[3]の何れか一つに記載の充填装置(1)を備え、
前記開弁状態にて前記充填物を前記容器に吐出し、前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出する工程を含む、
充填方法。
[5]
上記[4]に記載の充填方法において、
前記開弁状態にて前記充填物を前記容器に吐出し、前記充填物の吐出と同期して前記気体を前記容器に噴出する工程の前に行われ、前記治具の吐出端部の外径(底壁41,141の外径)が異なる複数の前記治具(40,140)の中から、前記容器の口径に対応する一の前記治具を選択する工程を更に含む、
充填方法。
【符号の説明】
【0057】
1 充填装置
2 第一装置
3 第二装置
4 制御部
5 第三装置
10 筒部
11,42,142 周壁
12,43,61 ソケット
13 接続部
14 中空部
20 弁座
21 接続部
22 筒状部
23 吐出口
23a 内周面
30 弁体
31 弁棒
32 本体部
33 当接部
33a 外周面
34,50 パッキン
40,40a,140 治具
41,141 底壁
44 挿通口
45 噴出口
60 エアシリンダ
100 充填構造
S 空間
T 粘着テープ