(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043096
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】試用塗布具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A45D34/04 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150615
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】清水 らな
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅史
(57)【要約】
【課題】本製品と同じ使用感が得られかつ試用のための使い切りを目的とした試用塗布具を、安価に且つ簡易な方法により製造可能な試用塗布具の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布物を塗布する塗布部及び把持用の軸部を有する塗布体の塗布部に、塗布すべき塗布物を付着させる付着工程と、付着工程において塗布物が付着された塗布部を、しごき部材に挿通してしごくしごき工程と、しごき工程においてしごかれた塗布体を包装体で包装する包装工程と、を有し、しごき部材の内側仕様は、本製品塗布具で採用されるしごき部材の仕様と同一であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布物を塗布する塗布部及び把持用の軸部を有する塗布体の前記塗布部に、塗布すべき塗布物を付着させる付着工程と、
前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部を、しごき部材に挿通してしごくしごき工程と、
前記しごき工程においてしごかれた前記塗布体を包装体で包装する包装工程と、を有し、
前記しごき部材の内側仕様は、本製品塗布具で採用されるしごき部材の仕様と同一であること
を特徴とする試用塗布具の製造方法。
【請求項2】
前記塗布部の仕様は、本製品塗布具で採用される塗布部の仕様と同一であることを特徴とする請求項1に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項3】
前記付着工程の前に、前記塗布体の前記塗布部と前記軸部との間に前記しごき部材を装着する装着工程を有し、
前記しごき工程は、前記しごき部材の貫通孔部を前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部が通過するように、前記しごき部材を前記塗布体から抜脱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項4】
前記付着工程は、前記塗布部を塗布物のバルクにどぶ漬けして当該塗布部全体に塗布物を含浸させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項5】
前記しごき工程の前に、前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部を予備的にしごく前しごき工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項6】
前記包装体の外側には、包装後の前記塗布体の向きを確認するための表示が設けられ、前記包装工程においては、前記表示に対応するように、前記塗布体を前記包装体で包装することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項7】
前記包装工程の後、前記包装体のうち、前記軸部が存在する側に開封構造を設ける工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の試用塗布具の製造方法。
【請求項8】
前記包装体は一辺が開口した袋体であり、前記包装工程は、前記しごき工程においてしごかれた前記塗布体を前記袋体に装填した後に前記袋体を密封することを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1に記載の試用塗布具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試用塗布具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状やペースト状の化粧料と、化粧料を塗布するためのブラシ等の塗布部とを同一パッケージ内に収容し、一回の使用若しくは少回数の使用を目的として例えば化粧品の試供品として製造される袋詰め化粧料が知られている。このような袋詰め化粧料に関し、各種の発明がなされてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、袋部と塗布部とを有する塗布具において、塗布具は、後部が把持可能な剛性を有し、前部が対象部に当接されて塗布物を塗布するものであり、袋部は、仕切り構造によって仕切られた2つの収容室以上の内部空間を有し、少なくとも1つの収容室内に塗布物を収容し、仕切り構造を挟んだ2つの収容室に亘って塗布部が収容されている塗布具に関する技術が開示されている。特許文献1に係る塗布具によれば、袋内の少量の塗布物を塗布する際に、手指に塗布物が付きにくく衛生的でかつ手指の汚れを防止することができる。
【0004】
特許文献2には、含浸体に化粧料を保持させ、この含浸体を密封袋の内面に接着状態で係止させた袋詰め化粧料に係る技術が開示されている。特許文献2に係る袋詰め化粧料によれば、含浸体面が指や手に触れることがないので、汚れにくく使用性が向上し、使用後はそのまま廃棄できるという優れた効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-199281号公報
【特許文献2】特開平9-10033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一回の使用等を目的として製造されるいわゆる化粧品の試供品は、一般的には消費者が実際に商品(以下「本製品」ともいう。)を購入するかどうかを検討するに際して商品の効用を試すために使用されるものである。従って、特にマスカラのようにブラシと把持棒とからなる塗布体を使用する化粧品においては、消費者にとっては試供品と本製品とで塗布体の使用感が同じであることが望ましい。また、例えば一回の使用を目的として製造される化粧品の試供品では、一品当たりに収容させる化粧料の量を一回の使用(試用のための使い切り)に必要程度の量とすることが、製造コストを抑える観点からも望ましい。
【0007】
しかしながら、上記従来技術に係る試用化粧品では、上記の問題点、すなわち、試供品と本製品とで塗布体の使用感が同じであることや、一品当たりに収容させる化粧料の量を一回の使用(試用のための使い切り)に必要程度の量とすることについては考慮されていなかった。そのため、本製品と同じ使用感の塗布体を使用して化粧品商品の効用を試すためには、化粧品商品(本製品)そのものや、化粧品商品(本製品)の試用のために小型に製作された小型サンプルをテスターとして使わせてもらうことができる化粧品店舗に行く必要がある等、消費者にとって必ずしも利便性が高いものとなっていなかった。また、本製品そのものや前記小型サンプルをテスターとして用いる場合、試用のために必要な量よりも多い余分な量の化粧料が収容され、製造コストが高くなってしまう問題があった。
【0008】
一方、本製品そのものや前記小型サンプルをテスターとして提供することは、化粧品店舗としてはコストがかかるものであった。また、本製品そのものや前記小型サンプルをテスターとして提供する店舗において、同一のテスターを不特定多数の試用者に対して繰り返し用いられた場合には衛生面で好ましくなく、特にマスカラのように粘膜周囲に塗布する化粧品にあっては顕著な問題点である。そのため、本製品と同一の使用感を得ることができかつ低コストで衛生面に優れた試供品が要望されていた。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、本製品と同じ使用感が得られかつ試用のための使い切りを目的とした試用塗布具を、安価に且つ簡易な方法により製造可能な試用塗布具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る試用塗布具の製造方法は、塗布物を塗布する塗布部及び把持用の軸部を有する塗布体の前記塗布部に、塗布すべき塗布物を付着させる付着工程と、前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部を、しごき部材に挿通してしごくしごき工程と、前記しごき工程においてしごかれた前記塗布体を包装体で包装する包装工程と、を有し、前記しごき部材の内側仕様は、本製品塗布具で採用されるしごき部材の仕様と同一であることを特徴とする。
【0011】
また上記の目的を達成するために、前記塗布部の仕様は、本製品塗布具で採用される塗布部の仕様と同一であることを特徴とする。
【0012】
また上記の目的を達成するために、前記付着工程の前に、前記塗布体の前記塗布部と前記軸部との間に前記しごき部材を装着する装着工程を有し、前記しごき工程は、前記しごき部材の貫通孔部を前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部が通過するように、前記しごき部材を前記塗布体から抜脱することを特徴とする。
【0013】
また上記の目的を達成するために、前記付着工程は、前記塗布部を塗布物のバルクにどぶ漬けして当該塗布部全体に塗布物を含浸させることを特徴とする。
【0014】
また上記の目的を達成するために、前記しごき工程の前に、前記付着工程において塗布物が付着された前記塗布部を予備的にしごく前しごき工程を有することを特徴とする。
【0015】
また上記の目的を達成するために、前記包装体の外側には、包装後の前記塗布体の向きを確認するための表示が設けられ、前記包装工程においては、前記表示に対応するように、前記塗布体を前記包装体で包装することを特徴とする。
【0016】
また上記の目的を達成するために、前記包装工程の後、前記包装体のうち、前記軸部が存在する側に開封構造を設ける工程を有することを特徴とする。
【0017】
また上記の目的を達成するために、前記包装体は一辺が開口した袋体であり、前記包装工程は、前記しごき工程においてしごかれた前記塗布体を前記袋体に装填した後に前記袋体を密封することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本製品と同じ使用感が得られかつ試用のための使い切りを目的とした試用塗布具を、安価に且つ簡易な方法により製造可能な試用塗布具の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る試用塗布具の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本実施形態に係るしごき部の一例を説明する図であり、(a)は
図2のA-A線におけるしごき部材の断面図、(b)は
図2のしごき部材をX方向から見た図である。
【
図7】前しごき工程において用いる塗布物容器及び蓋を説明する図である。
【
図9】前しごき工程及びしごき工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る試用塗布具の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下、
図1に示す各工程について適宜
図2~
図6を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態において説明する製造方法により製造される試用塗布具1は、塗布体2、及び、包装体としての袋体6を有する(
図6参照)。この試用塗布具1は、一回の使用若しくは少回数の使用を目的として製造される例えばマスカラの試用化粧品である。
【0023】
まずステップS11において、塗布体2に、しごき部材3を装着する(S11。装着工程。)。以下、
図2及び
図3を用いてステップS11について説明を行う。
【0024】
【0025】
ステップS11における塗布体2は、
図2に示すように、塗布部21及び軸部22からなり、使用者が塗布の際に把持して塗布物であるマスカラの塗布に使用する所謂アプリケーターと呼ばれるものである。この塗布体2は、試用塗布具1(
図6参照)が備える構成要素の一つである。塗布部21は、塗布対象部位すなわち使用者のまつ毛に当接されて当該塗布物を塗布するブラシ部分である。軸部22は、塗布部21に連結され、使用者が把持するための棒状の部材である。
【0026】
本実施形態によれば、この塗布体2では、塗布部21の仕様すなわちブラシ部分の形状、構造、寸法、性能、材質、毛量等が、実際に商品として量産販売される製品(以下、試用品である試用塗布具と対比させて、「本製品塗布具」ともいう。)で採用される塗布部のブラシ部分の仕様と同一であるよう構成される。これにより、使用者は本製品と同じ使用感で塗布部21の作用を試すことができる。なお、軸部22の仕様も、本製品塗布具で採用される軸部の仕様と同一であることが好ましい。
【0027】
一方、しごき部材3は、塗布部21並びに軸部22を挿通可能な貫通孔部31を有し、後述のどぶ漬けにより塗布部21に含浸される塗布物をしごいて適量にするためのゴム等の弾性体により形成された部材である。貫通孔部31は概略形状が円柱孔状に形成されており、軸部22の側から塗布体2を挿通することで、塗布部21と軸部22との間にしごき部材3が配設された状態(
図4参照)となる。なお、貫通孔部31の内側の詳細形状については、
図3を用いて後述する。
【0028】
本実施形態によれば、このしごき部材3の内側仕様、特に塗布部21の通過部分である貫通孔部31の形状、構造、寸法等は、上述の本製品塗布具で採用されるしごき部材の仕様と同一であるよう構成される。これにより、使用者は本製品塗布具と同じ使用感でしごき部材3の作用を試すことができる。
【0029】
但し、このしごき部材3の外側仕様、特に外形の形状、構造、寸法等は、本製品塗布具で採用されるしごき部材の仕様と同一である必要はなく、ステップS11~S13に係る工程における使用者の操作性に応じて適宜変更可能である。
【0030】
図3は、本実施形態に係るしごき部の一例を説明する図である。なお、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0031】
図3(a)では、
図2のA-A線におけるしごき部材3の断面図を示している。しごき部材3が塗布体2に装着される際には、図中下方が塗布部21側に配設され、図中上方が軸部22側に配設される。
図3(b)では、
図2のしごき部材3をX方向から見た図を示している。
【0032】
図3(a)に示すしごき部材3の内側面3aは、貫通孔部31の外周面を形成している。この内側面3aには、塗布部21側に向かって斜め方向に伸びる爪部3bが全周(
図3(b)参照)に亘って形成されている。また、
図3(b)に示すように、空気穴としてのスリット3cが一か所形成されている。この爪部3bが、貫通孔部31を通過する塗布部21に含浸した塗布物の量が一回の使用に適した量となるべく塗布部21をしごく。但し、しごき部材3において、スリット3cを設けることやその数は、本製品塗布具で採用されるしごき部材に準拠されるものである。
【0033】
なお、
図3(a)に示すしごき部材3は、本製品塗布具に採用されるしごき部材の一例を示すものであり、本製品塗布具の有底円筒形状のケース(不図示)に装着可能な外形の形状及び構造を備えている。例えば、塗布部21側の端部3d及び軸部22側の端部3eはそれぞれ径長が長く形成されており、更にこれら端部3dと端部3eの形状とが互いに異なっている。このような外形の形状及び構造を備えた、本製品に採用されるしごき部材3をそのまま用いることにより、製造作業者はどちらが塗布部21側若しくは軸部22側であるかを容易に認識することができる。
【0034】
図1に戻り、ステップS11では、以上説明を行ってきた塗布体2に、以上説明を行ってきたしごき部材3が装着される(
図2参照)。
【0035】
次にステップS12に進み、塗布部21に、塗布物5を付着させる(S12。付着工程。)。以下、
図4を用いてステップS12について説明を行う。
【0036】
【0037】
ステップS12における塗布物5とは、塗布部21によって塗布すべき塗布物であって、
図4に示すように、例えば所定の塗布物容器4内に予め貯留されるマスカラの化粧料のバルクである。このステップS12では、製造作業者がしごき部材3を把持し、塗布部21を塗布物5にどぶ漬けさせることでブラシ全体に塗布物5を予め含浸させる。製造作業者はしごき部材3を把持しているため、手指の汚れを防止することができる。なお、製造作業者は軸部22を把持しても良い。
【0038】
続いてステップS13に進み、塗布体2から、しごき部3を抜脱する(S13。しごき工程。)。以下、
図5を用いてステップS13について説明を行う。
【0039】
【0040】
ステップS13では、ステップS12(付着工程)において塗布物が付着された塗布部21を、しごき部材3に挿通してしごく。より具体的には、ステップS13では、
図5に示すように、製造作業者が片方の手でしごき部材3を把持するとともに、他方の手で軸部22を引っ張る。このとき、塗布部21が塗布物容器4の内側を向くような態様で軸部22を引っ張る。そうすると、塗布部21は貫通孔部31を通過してしごき部材3から抜脱される。この通過の際にしごき部材3は、塗布部21に含浸した塗布物の量が一回の使用に適した量となるべく塗布部21をしごくとともに、余分な塗布物5は塗布物容器4内に戻されることとなる。
【0041】
最後にステップS14に進み、包装体としての袋体6に塗布体2を装填し、包装する(S14。包装工程。)。以下、
図6を用いてステップS14について説明を行う。
【0042】
【0043】
図6では、包装体の一例として、一辺が開口した長方形型の袋状の袋体6を図示しており、袋体6の開口に対し、製造作業者が軸部22を把持した状態で塗布体2を装填する動作を示している。製造作業者は軸部22を把持するのみで当該動作を行うことができるため、引き続き手指の汚れを防止することができる。その後、袋体6の開口が例えばヒートシール等の手段で閉塞されることにより袋体6は密封される。これにより、一回の使用に適した量の塗布物5を含浸した塗布体2が袋体6によって包装された試用塗布具1が製造される。
【0044】
なお、包装体としての袋体6の外側には、包装後の塗布体2の向きを確認するための表示、例えば、袋体6の長手方向に沿ってプリントされた塗布体の図形(不図示)を設けておき、ステップS14においては、前記表示に対応するように、塗布体2を袋体6に装填するようにしてもよい。また、ステップS14の後、密封された袋体6に対して、軸部22が存在する側に開封構造、例えば開封用切り込み(不図示)を設ける工程を追加してもよい。これらによって、試用塗布具1の使用者が、袋体6を塗布部21側から開封することが予防され、塗布部21に付着された塗布物によって手指を汚すことが防止され、利便性が更に向上する。
【0045】
上記説明したステップS12(付着工程)及びステップS13(しごき工程)の間には、以下のような前しごき工程を介在させてもよい。以下、
図7~
図9を用いて前しごき工程について説明を行う。
【0046】
図7は、前しごき工程において用いる塗布物容器及び蓋を説明する図、
図8は、付着工程を説明する図、
図9は、前しごき工程及びしごき工程を説明する図である。なお、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0047】
図7に示すように、マスカラの化粧料のバルクである塗布物5が貯留された塗布物容器4の開口部に、1つ以上の孔部71を有する蓋7が装着される。蓋7の孔部71の直径は、しごき部材3の貫通孔部31の直径よりも大きく、塗布部21の直径と同程度に設定されている。これにより、蓋7の孔部71は、孔部71を通過する塗布部21に大量に付着した塗布物を一定程度落とすべく塗布部21をしごくことができる。なお、蓋7は、塗布物容器4の開口部に対して嵌合する構造を備えるのが好適である。
【0048】
製造作業者がしごき部材3を把持して、
図8に示す矢印方向に、塗布部21を、塗布物容器4に装着された蓋7の孔部71に挿通し、塗布物容器4に貯留された塗布物5へどぶ漬けさせることで、ブラシ全体に塗布物5を含浸させる(ステップS12参照。付着工程。)。
【0049】
次に、
図9に示す矢印方向に、製造作業者が塗布部21を蓋7の孔部71から引き抜く(前しごき工程)。このとき、塗布部21は蓋7の孔部71を通過の際に、孔部71によって、前記どぶ漬けにより塗布部21に大量に付着した塗布物を一定程度落とす予備的な仮しごきが行われ、余分な塗布物5は塗布物容器4内に戻される。
【0050】
その後、
図9に示すように、製造作業者が片方の手でしごき部材3を把持するとともに、他方の手で軸部22を引っ張ることにより、塗布部21は貫通孔部31を通過してしごき部材3から抜脱される(ステップS13参照。しごき工程)。この通過の際にしごき部材3は、塗布部21に含浸した塗布物の量が一回の使用に適した量となるべく塗布部21をしごくとともに、余分な塗布物5は、蓋7の孔部71を通じて塗布物容器4内に戻されることとなる。
【0051】
以上のように、ステップS12(付着工程)及びステップS13(しごき工程)の間に、前しごき工程を介在させることにより、塗布部21に大量に付着した塗布物を一定程度落とすことができるため、その後のしごき部材3によるしごき工程における作業性が向上する。
【0052】
以上に示す各工程により、本実施形態に係る試用塗布具1の製造方法によれば、塗布体2を使用した一回使い切り用の簡易な包装の化粧品装填品を省工数で製造することができる。また、ステップS12以降の工程において、製造作業者は軸部22又はしごき部材3のみを把持すればよいため、手指の汚れを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る試用塗布具1の製造方法によれば、予めしごき部材3を装着した塗布体2の塗布部21に塗布物5を付着させるとともに、包装前にしごき部材3を用いて塗布部21をしごくことにより余分に付着した塗布物5を落としている。これにより、一回の使用に必要程度の量の塗布物5を塗布部21に付着させ、一品当たりの製造コストを抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る試用塗布具1の製造方法により製造された試用塗布具1は、本製品塗布具と同一の仕様である塗布部21を備えた塗布体2、本製品塗布具と同一の仕様であるしごき部材3を有する。そのため、一回の使用を目的として製造される試用の塗布具であるが、本製品塗布具と同じ使用感で本製品塗布具と同様の効用を試すという利便性の高さを実現することができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0056】
例えば、上記説明においては、
図1のステップS14において袋体6に塗布体2を装填する場合を例に説明を行ったが、包装体であれば袋体に限定されるものではなく、例えば箱型の容器に塗布体2を装填してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 試用塗布具
2 塗布体
3 しごき部材
3a 内側面
3b 爪部
3c スリット
3d 端部
3e 端部
4 塗布物容器
5 塗布物
6 袋体(包装体)
7 蓋
21 塗布部
22 軸部
31 貫通孔部
71 孔部