(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043105
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】飛散防護カバー及び刈払機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/90 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
A01D34/90 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150646
(22)【出願日】2021-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】300014462
【氏名又は名称】株式会社北村製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 清司
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA12
2B083GA02
2B083HA24
2B083HA37
2B083HA52
(57)【要約】
【課題】飛散防護カバーを、多様な径の主軸に対しても簡単に装着可能とする。
【解決手段】飛散防護カバー8は、刈払機9の主軸92の軸方向の一部の外周面925を挟持することで主軸92に装着される装着部1と、装着部1を介して主軸92に取り付けられるカバー本体部2とを備える。装着部1は、主軸92の外周面925に押し当たる内周面125を有し、かつ、内周面125の内径を複数段階で切り替え可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈払機の主軸に装着される飛散防護カバーであって、
前記主軸の軸方向の一部の外周面を挟持することで、前記主軸に装着される装着部と、
前記装着部を介して前記主軸に取り付けられるカバー本体部と、を備え、
前記装着部は、前記主軸の前記外周面に押し当たる内周面を有し、かつ、前記内周面の内径を複数段階で切り替え可能に構成されている、
飛散防護カバー。
【請求項2】
前記装着部は、
前記内周面を有する変形可能な連結具と、
前記連結具に取り付けられたフックと、
前記連結具に設けられ、前記フックが択一的に引っ掛かるように構成された複数の引っ掛け部と、を含む、
請求項1の飛散防護カバー。
【請求項3】
前記装着部は、
前記フックと前記連結具との間に介在するレバーを、更に含み、
前記レバーは、前記連結具に対して変位可能に設けられている、
請求項2の飛散防護カバー。
【請求項4】
前記連結具は、C字状であるとともに第1端部及び第2端部を有し、
前記第1端部に、前記レバーが回転可能に設けられ、
前記第2端部に、前記複数の引っ掛け部が設けられている、
請求項3の飛散防護カバー。
【請求項5】
前記複数の引っ掛け部は、
並んで位置する複数の溝で、構成されている、
請求項2から4のいずれか一項の飛散防護カバー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項の前記飛散防護カバーと、
前記飛散防護カバーが装着される前記主軸と、を備えた、
刈払機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛散防護カバーとこれが装着された刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機用の飛散防護カバーが、従来公知である(特許文献1等参照)。この種の飛散防護カバーを、刈払機の主軸に装着することにより、刈り草や小石(以下「刈り草等」という。)が使用者に向けて飛散することを防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の飛散防護カバーは、特定の径を有する主軸に対して、装着可能に構成されている。つまり、従来の飛散防護カバーは、装着可能な主軸の径が1つに設定されており、径が異なる主軸に対しては装着が困難であった。
【0005】
本開示は、飛散防護カバーを、多様な径の主軸に対しても簡単に装着可能とすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る飛散防護カバーは、刈払機の主軸に装着される飛散防護カバーであって、前記主軸の軸方向の一部の外周面を挟持することで、前記主軸に装着される装着部と、前記装着部を介して前記主軸に取り付けられるカバー本体部とを備える。前記装着部は、前記主軸の前記外周面に押し当たる内周面を有し、かつ、前記内周面の内径を複数段階で切り替え可能に構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る刈払機は、前記飛散防護カバーと、前記飛散防護カバーが装着される前記主軸とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、飛散防護カバーを、多様な径の主軸に対しても簡単に装着することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の飛散防護カバーの斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の飛散防護カバーの上面図である。
【
図5】
図5は、同上の飛散防護カバーが備えるカバー本体部の要部斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の飛散防護カバーが備える装着部に含まれる連結具の斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の飛散防護カバーを刈払機に装着して使用する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.全体構造
図9には、一実施形態の飛散防護カバー8を、刈払機9の主軸92に装着した状態を示している。
【0011】
刈払機9は、中空の主軸92と、主軸92の軸方向の第1端側に取り付けられた複数の線状カッター94と、主軸92の軸方向の第2端側に搭載されたエンジン96と、主軸92の軸方向の中間部分に連結されたハンドル98とを備える。主軸92の軸方向の第1端側は、言い換えれば主軸92の前端側であり、主軸92の軸方向の第2端側は、言い換えれば主軸92の後端側である。ここでの前後方向は、刈払機9を使用するときの使用者を基準とする。
【0012】
主軸92の内部には、図示略の回転軸が挿通されており、エンジン96の駆動によって回転軸を回転させると、この回転が伝達されることによって複数の線状カッター94が回転駆動される。各線状カッター94は、例えばナイロン等の合成樹脂製の線状カッターである。これら線状カッター94に代えて、又はこれら線状カッター94に加えて、主軸92の軸方向の第1端側にチップソー等の回転刃を取り付けることも可能である。
【0013】
主軸92には、更に肩紐97が取り付けられており、使用者は、肩紐97を肩に掛けたうえでハンドル98を持ち、刈払機9を左右に揺動させながら草刈りを行うことができる。
【0014】
飛散防護カバー8は、主軸92の軸方向の一部に装着されている。飛散防護カバー8は、装着部1、カバー本体部2及び中間部3で主体が形成されている。装着部1は、主軸92に対して着脱自在に装着される部分であり、カバー本体部2は、刈り草等を受けるための部分である。中間部3は、装着部1とカバー本体部2とをつなぐ部分である。つまり、カバー本体部2は、中間部3及び装着部1を介して、主軸92に対して着脱可能に取り付けられている。
【0015】
以下においては、飛散防護カバー8の各構成について、更に詳細に説明する。
【0016】
1-2.装着部
装着部1は、連結具12、レバー14、フック16及び複数の引っ掛け部18を有する。
【0017】
図1、
図6等に示すように、連結具12は、滑らかに凹曲した内周面125を有するC字状の部材である。連結具12は、例えば合成樹脂製であって弾性を有する。連結具12の内周面125は、円弧状に湾曲した凹曲面である。連結具12の内周面125の内径は、連結具12の変形によって変更可能である。
【0018】
一実施形態の飛散防護カバー8においては、連結具12の内周面125が、主軸92の軸方向の一部の外周面925(
図9参照)に押し当たり、該一部の外周面925を挟持するように設けられている。これにより、連結具12は主軸92に対して装着される。
【0019】
C字状である連結具12は、互いに反対側に位置する第1端部121と第2端部122とを有する。第1端部121と第2端部122は、ともに使用状態において上方に突出するように設けられた端部であり、外力が加わっていない状態で、第1端部121と第2端部122は互いに近づく向きに傾いている。第1端部121と第2端部122との間には、両者を分断する隙間128が設けられている。
【0020】
第1端部121には、レバー14を連結するための突状の部分123が、設けられている。突状の部分123は、隙間128から離れる向きに突出しており、その突先部分に、レバー14を連結するための凹状の連結部124が形成されている。
【0021】
第2端部122には、突状の部分126が設けられている。第2端部122の突状の部分126には、複数の引っ掛け部18が形成されている。第2端部122の突状の部分126が突出する向きは、第1端部121の突状の部分123が突出する向きと同じである。第2端部122の突状の部分126は、第1端部121の突状の部分123と同様に、隙間128から離れる向きに突出している。距離をあけて位置する2つの突状の部分123,126は、互いに平行である。2つの突状の部分123,126は、使用状態において、上方に向けて突出する。本文中において用いる平行の文言は、厳密な意味での平行に限定されず、略平行な場合も含む。
【0022】
図1、
図8等に示すように、レバー14は、例えば合成樹脂製の部材であって、短辺部141と長辺部142とがL字状に交差した形状を有する。短辺部141の突先部分には、連結具12の連結部124に対して回転可能に連結するための連結部144が形成されている。連結部124,144同士が回転可能に嵌まり合うことで、レバー14は、連結具12の突状の部分126ひいては第1端部121に対して、回転可能に連結されている。レバー14は、連結具12に対して変位可能である。
【0023】
長辺部142は、使用者がレバー操作するための部分であり、その突先部分には、使用者が指を掛けやすいように反りが設けられている。長辺部142の突先部分が反る向きは、長辺部142に対して短辺部141が位置する向きと反対である。
【0024】
フック16は、レバー14のうち連結部144から離れた部分146に、回転可能に連結されている。一実施形態の飛散防護カバー8において、フック16が連結される部分146は、短辺部141と長辺部142との交差部分である。フック16は、台形状に折り曲げられた針金で構成されており、具体的には、引っ掛け部18に係止可能な直線状の部分161と、この部分161の両端からそれぞれ延長された一対の延長部分162とを含む(
図2参照)。一対の延長部分162は、直線状の部分161から離れるほど互いに距離をあけるように傾斜している。各延長部分162の先端部(図示略)が、レバー14の部分146に対して回転可能に連結されている。一実施形態の飛散防護カバー8において、フック16は、レバー14を介して連結具12に取り付けられている。
【0025】
図8に示すように、複数の引っ掛け部18は、複数の溝181,182,183で構成されている。一実施形態の飛散防護カバー8において、複数の溝181,182,183は、並んで位置する3つの溝181,182,183であり、互いに平行に位置している。3つの溝181,182,183は、フック16の先端の部分161が択一的に引っ掛かるように設けられている。
【0026】
3つの溝181,182,183が開口する向きは、連結具12の第2端部122に対して第1端部121が位置する向きとは反対の向きであり、言い換えれば、3つの溝181,182,183が形成される突状の部分126に対して、レバー14が連結される突状の部分123が位置する向きとは、反対の向きである。
【0027】
3つの溝181,182,183は、主軸92が比較的小径である場合(例えば径が24mmである場合)に用いられる第1溝181と、主軸92が標準的な径である場合(例えば径が25mmである場合)に用いられる第2溝182と、主軸92が比較的大径である場合(例えば径が26mmである場合)に用いられる第3溝183である。
【0028】
第1溝181、第2溝182及び第3溝183の溝底と、連結具12に含まれる連結部124との距離は、互いに相違している。具体的には、第1溝181の溝底と連結部124との距離は、第2溝182の溝底と連結部124との距離よりも、大きく設定されている。第2溝182の溝底と連結部124との距離は、第3溝183の溝底と連結部124との距離よりも、大きく設定されている。
【0029】
一実施形態の飛散防護カバー8では、装着部1のフック16を第1、第2及び第3溝181,182,183のいずれに引っ掛けるかで、装着部1の内径(つまり弾性を有する連結具12の内径)が、複数段階で切り替わるように構成されている。装着部1のフック16を第1溝181に引っ掛けたときには、連結具12、レバー14及びフック16の幾何的な関係により、連結具12は、比較的小径(例えば24mm径)の主軸92を挟持するように、比較的大きく弾性変形する。フック16を第2溝182に引っ掛けたとき、連結具12は、標準的な径(例えば25mm径)の主軸92を挟持するように弾性変形する。フック16を第3溝183に引っ掛けたとき、連結具12は、比較的大径(例えば26mm径)の主軸92を挟持するように、比較的小さく弾性変形する。
【0030】
1-3.カバー本体部
図1等に示すように、カバー本体部2は、例えば合成樹脂製の部材であり、ボウル状の部材を上下に半割りした上側半部のような形状を有する。カバー本体部2には、刈り草等を受けて飛散を防ぐための受け面21が、設けられている。受け面21は、使用状態において主軸92の前端側を向く面であり、言い換えれば、使用状態においてカバー本体部2に対して使用者が位置する側とは反対側を向く面である。
【0031】
受け面21は、受け面21の主体を構成する凹曲面215と、受け面21の周縁部を構成する抑え面217とを含む。凹曲面215と抑え面217とは直接的に連続しているが、凹曲面215と抑え面217との間に他の面が介在してもよい。
【0032】
凹曲面215は、後方に向けて(つまり使用状態では使用者側に向けて)凹んだ面である。
図3に示すように、凹曲面215の縦断面は、後方に向けて凹んだ円弧状の断面である。また、
図4に示すように、凹曲面215の横断面は、後方に向けて凹んだ円弧状の断面である。ここでの後方は、使用状態での使用者を基準としたものである。
【0033】
凹曲面215の縦断面の曲率半径は、凹曲面215の横断面の曲率断面よりも大きく設定されている。なお、凹曲面215の全部が厳密な意味で凹曲面であることは要求されず、例えばその一部に平坦又は凸状の面が含まれていてもよく、全体として凹曲面であればよい。
【0034】
凹曲面215には、刈り草等の飛散を更に効果的に抑えるための複数の窪み部23が、互いに距離をあけて設けられている。複数の窪み部23は、凹曲面215の全面にわたって分散配置された、多数の窪み部23である。
【0035】
カバー本体部2の受け面21の裏側の面(つまり、使用状態において使用者の側を向く面)は、後方に向けて滑らかに膨らんだ面であり、カバー本体部2のうち窪み部23が設けられている部分の厚みは、カバー本体部2のうち窪み部23が設けられていない部分の厚みよりも、薄くなっている(
図3等参照)。
【0036】
各窪み部23は、円形状の窪みであって、円形状の開口を有し、かつ該開口よりも小さな円形状の底面を有している。なお、窪み部23の形状はこれに限定されず、楕円形状、多角形状、及びこれらが組み合わされた形状等の、他の形状を有してもよい。また、一実施形態の飛散防護カバー8では、複数の窪み部23が互いに同一の寸法形状を有しているが、互いの寸法が相違してもよいし、互いの形状が相違してもよい。一例として、凹曲面215の上部領域に配された複数の窪み部23と、下部領域に配された複数の窪み部23とで、寸法及び形状の一方又は両方が相違してもよいし、凹曲面215の中央領域に配された複数の窪み部23と、中央領域を囲む周辺領域に配された複数の窪み部23とで、寸法及び形状の一方又は両方が相違してもよい。
【0037】
次に、抑え面217について説明する。抑え面217は、刈り草等の飛散をより確実に抑えるために、凹曲面215よりも前方に(つまり使用状態では使用者から離れた側に)位置するように設けられている。抑え面217は、凹曲面215の周縁部分よりも更に内側に倒れた角度を有する。抑え面217は、上に凸の円弧状の輪郭を有している。
【0038】
更に、一実施形態の飛散防護カバー8においては、カバー本体部2の下部に、可撓性の延長カバー7を固定して吊るすための固定部25が、設けられている。固定部25は、後方に向けて滑らかに膨らんだ円弧状の部分である。カバー本体部2のうち凹曲面215が設けられた部分と、その下方に位置する固定部25とは、直接的に連続しているが、他の部分を介して連続しても構わない。
【0039】
固定部25は、延長カバー7の上端部を固定できるのであれば、適宜の構造が採用可能であるが、消耗品である延長カバー7の交換を簡単に行うためには、延長カバー7を着脱自在に固定する構造が採用されることが好ましい。
【0040】
延長カバー7は、可撓性を有する合成樹脂製のカバーである。延長カバー7は、透明または半透明であってもよいし、色が付けられていてもよい。延長カバー7には、延長カバー7の下端縁から上に向けて切り欠かれた複数のスリット72が、設けられている。複数のスリット72は、それぞれ直線状であり、互いに平行である。延長カバー7のうち複数のスリット72によって仕切られた各部分が、可撓性を有する短冊状の部分74を構成している。一実施形態の飛散防護カバー8においては、延長カバー7の下部(つまり複数の短冊状の部分74)を地面に摺らせ、刈り草等の飛散をより確実に抑えることができる。
【0041】
1-4.中間部
中間部3は、装着部1の側に設けられた第1中間部31と、カバー本体部2の側に設けられた第2中間部32とで、構成されている。第2中間部32は、第1中間部31に対して回転可能に連結している。装着部1に対するカバー本体部2の相対的な角度(以下「相対角度」という。)は、第1中間部31及び第2中間部32を介して変更自在である。
【0042】
第1中間部31は、連結具12の第2端部122の外側面に設けられている(
図6、
図7等参照)。第1中間部31は、合成樹脂によって連結具12と一体に成形されている。第1中間部31は、連結具12の外側面から突出した円形状の主体部311と、主体部311の中心を貫通する挿通孔313とを有する。
【0043】
第2中間部32は、カバー本体部2の下部の外側面に設けられている(
図5等参照)。第2中間部32は、合成樹脂によってカバー本体部2と一体に成形されている。第2中間部32は、カバー本体部2の下部の外側面から突出した円柱状の回転軸321と、カバー本体部2の下部の外側面から突出した円環状の周壁部323とを有する。周壁部323は、回転軸321を全周にわたって囲むように位置する。回転軸321は、軸方向に貫通した円筒状の軸体で構成されている。
【0044】
中間部3においては、第2中間部32の回転軸321が、第1中間部31の挿通孔313に回転可能に挿し通され、かつ、第2中間部32の周壁部323の内側に第1中間部31の主体部311が回転可能に嵌まり込んだ状態で、第1中間部31と第2中間部32とが相対的に回転可能に連結される。
【0045】
一実施形態の飛散防護カバー8において、中間部3は、カバー本体部2の相対角度を固定するロック構造と、カバー本体部2に対してばね力を付与するばね構造と、カバー本体部2の相対角度を所定範囲内に規制する回転規制構造とを、更に含んでいる。以下においては、ロック構造、ばね構造及び回転規制構造について、順に詳しく説明する。
【0046】
ロック構造は、装着部1の側に一体に設けられた第1係合部41と、カバー本体部2の側に一体に設けられた第2係合部42とを含む。第1係合部41と第2係合部42は、複数段階の回転角度で、互いに係合可能に構成されている。
【0047】
第1係合部41は、第1中間部31の主体部311の外周縁部に設けられた複数対の係合溝411,412,413で、構成されている。一実施形態の飛散防護カバー8において、複数対の係合溝411,412,413は、主体部311の周方向に並んで位置する三対の係合溝411,412,413であり、より具体的には、主体部311の中心(言い換えれば挿通孔313)を基準として互いに反対側に位置する一対の第1係合溝411と、同じく主体部311の中心を基準として互いに反対側に位置する一対の第2係合溝412と、主体部311の中心を基準として互いに反対側に位置する一対の第3係合溝413である。一対の第1係合溝411と一対の第2係合溝412は、一対一で周方向に隣接して位置し、一対の第2係合溝412と一対の第3係合溝413は、一対一で周方向に隣接して位置している。
【0048】
第2係合部42は、第2中間部32の中心(言い換えれば回転軸321)を基準として互いに反対側に位置する一対の係合突起421で、構成されている。一対の係合突起421は、三対の係合溝411,412,413のうちいずれか一対に対して、選択的に係合する。一対の係合突起421が、三対の係合溝411,412,413のうち、どの一対に係合するかで、カバー本体部2の相対角度が決定される。
【0049】
上記のロック構造は、カバー本体部2を所定の向き(以下「第1の向き」という。)に移動させることで、カバー本体部2の相対角度の固定を解除するように構成されている。第1の向きは、カバー本体部2の回転中心軸に沿って(言い換えれば回転軸321の軸方向に沿って)装着部1から離れる向きである。
【0050】
つまり、三対の係合溝411,412,413は、いずれも第1の向きに開放されているので、カバー本体部2を第1の向きに移動させれば、一対の係合突起421と、三対の係合溝411,412,413のうちいずれか一対との係合は、円滑に解除される。一対の係合突起421の係合を解除した後で、カバー本体部2を回転させ、カバー本体部2を第1の向きとは反対の向き(以下「第2の向き」という。)に移動させれば、カバー本体部2の相対角度を変更したうえで、一対の係合突起421を、三対の係合溝411,412,413のうちの別の一対と係合させることが可能である。
【0051】
次に、ばね構造について説明する。ばね構造は、第1中間部31と第2中間部32との間に収容されたコイルスプリング52を含む(
図4参照)。コイルスプリング52は、圧縮ばねである。コイルスプリング52は、第2中間部32が有する回転軸321の貫通孔内にねじ込まれたボルト325のヘッド部分と、第1中間部31の主体部311との間に、圧縮状態で配されている。圧縮状態のコイルスプリング52が、第1及び第2中間部31,32を介してカバー本体部2に付与するばね力は、カバー本体部2を第2の向きに付勢するばね力である。
【0052】
そのため、第1係合部41と第2係合部42との係合を解除するには、例えばカバー本体部2を手で掴んで、ばね力に抗して第1の向きに移動させればよい。カバー本体部2を回転させたうえで手を離せば、ばね力によってカバー本体部2は第2の向きに移動する。これにより、一対の係合突起421を、三対の係合溝411,412,413のうちの別の一対に対して、簡単かつ安定的に係合させることが可能である。
【0053】
次に、回転規制構造について説明する。回転規制構造は、第1中間部31に設けられた(つまり装着部1の側に一体に設けられた)第1回転規制部61と、第2中間部32に設けられた(つまりカバー本体部2の側に一体に設けられた)第2回転規制部62とを含む。カバー本体部2の相対角度は、第1回転規制部61と第2回転規制部62とが嵌まり合う範囲内で、変更可能である。
【0054】
第1回転規制部61は、主体部311に形成された規制溝615で、構成されている。規制溝615は、円形状である主体部311の中心まわりに(言い換えれば挿通孔313を中心として)円弧状に形成された溝である。規制溝615は、第1係合部41の各係合溝411,412,413と同様に、第1の向きに開放されている(
図6参照)。第1の向きにおける規制溝615の深さの寸法は、第1の向きにおける各係合溝411,412,413の深さの寸法よりも、充分に大きく設定されている。
【0055】
第2回転規制部62は、第2中間部32の回転軸321と周壁部323との間に位置する規制突起625で、構成されている(
図5等参照)。規制突起625は、回転軸321及び周壁部323の中心まわりに(言い換えれば回転軸321を中心として)円弧状に形成された突起である。規制突起625は、回転軸321及び周壁部323と同じ向きに突出している。規制突起625の突出量は、回転軸321の突出量よりも小さく、かつ、一対の係合突起の421の突出量よりも大きく設定されている。ここでの突出量は、カバー本体部2の回転中心軸に沿った突出量である。
【0056】
規制突起625は、規制溝615の内側に挿し込まれた状態で、回転軸321及び周壁部323の中心まわりの所定範囲内で移動可能な寸法形状を有する(
図7参照)。規制突起625と規制溝615との嵌まり合いでカバー本体部2の相対角度が規制される範囲内において、第2係合部42の一対の係合突起421は、三対の係合溝411,412,413のうちいずれの一対に対しても係合可能である。
【0057】
1-5.使用形態
上記の構成を備える飛散防護カバー8を、刈払機9の主軸92に装着するには、
図8Aに示すように、C字状の連結具12内に主軸92を挿し入れたうえで、レバー14を連結具12から離れる向きに操作して、フック16の先端側の部分161を、3つの溝181,182,183のうち適切な溝に対して引っ掛ける。次いで、
図8Bに示すように、レバー14を連結具12に近づく向きに操作し、金属製のフック16を介して、合成樹脂製の連結具12の全体を弾性的に撓ませる。これにより、連結具12の内周面125が、主軸92の軸方向の一部の外周面925を挟持する。フック16を、3つの溝181,182,183のいずれに引っ掛けるかは、主軸92の径に応じて決定される。
【0058】
一実施形態の飛散防護カバー8では、これを刈払機9の主軸92に装着した状態のまま、カバー本体部2の相対角度をワンタッチで複数段階に変更することができる。つまり、上記したように、使用者がカバー本体部2を手で掴み、コイルスプリング52のばね力に抗して、カバー本体部2を装着部1から離れる第1の向きに移動させることで、カバー本体部2の相対角度の固定は解除される。
【0059】
そのままカバー本体部2を回転させて相対角度を変更し、コイルスプリング52のばね力を利用して、装着部1に近づく第2の向きにカバー本体部2を移動させれば、変更後の相対角度が固定される。カバー本体部2の回転は、主軸92の中心軸とは非平行な軸(使用状態において左右に延びる軸)まわりに行われる。
【0060】
そして、カバー本体部2を適切な相対角度に設定したうえで、刈払機9で草刈り作業を行うことで、刈り草等が使用者に向けて飛散することを、効果的に抑制することが可能である。特に、複数の線状カッター94を用いて草刈りを行った場合には、刈り草等は広範な範囲に飛散するという特徴があるが、この種の草刈り作業に適した一実施形態の飛散防護カバー8が装着されていることにより、刈り草等が使用者に向けて飛散することは大幅に抑制される。
【0061】
つまり、切断後に使用者に向けて飛散した刈り草等は、カバー本体部2の凹曲面215に当たることによって、周囲に広く飛散することが抑えられる。凹曲面215には複数の窪み部23が分散配置されており、これによって、刈り草等が跳ね返るときの勢いが効果的に減じられる。また、カバー本体部2の凹曲面215の周囲に抑え面217が設けられていることで、刈り草等が広く飛散することは一層効果的に抑えられる。
【0062】
2.変形例
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は前記実施形態に限定されない。本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【0063】
一例として、装着部1は、C字状の連結具12、フック16及び複数の引っ掛け部18を含むが、これに限定されず、主軸92の外周面925に押し当たる内周面125を有し、かつ、内周面125の内径を複数段階で切り替え可能に構成されていればよい。レバー14を介さずに、フック16と連結具12とが直接的に連結されることも有り得る。
【0064】
また、複数の引っ掛け部18は、3つの溝181,182,183で構成されているが、各引っ掛け部18が溝以外の形態を有してもよいし、引っ掛け部18の数も3つに限定されない。引っ掛け部18が2つの場合は、連結具12の内周面125の内径は2段階で切り替え可能であるし、引っ掛け部18が4つ以上の場合は、連結具12の内周面125の内径は4つ以上の段階で切り替え可能である。
【0065】
また、カバー本体部2の凹曲面215には複数の窪み部23が設けられているが、これらの窪み部23が設けられないことも有り得る。
【0066】
3.作用効果
上記の実施形態及び変形例に基づいて説明したように、本開示の飛散防護カバー(8)は、刈払機(9)の主軸(92)に装着される飛散防護カバー(8)であって、主軸(92)の軸方向の一部の外周面(925)を挟持することで主軸(92)に装着される装着部(1)と、装着部(1)を介して主軸(92)に取り付けられるカバー本体部(2)とを備える。装着部(1)は、主軸(92)の外周面(925)に押し当たる内周面(125)を有し、かつ、内周面(125)の内径を複数段階で切り替え可能に構成されている。
【0067】
したがって、本開示の飛散防護カバー(8)によれば、装着部(1)の内周面(125)の内径を複数段階で切り替えることによって、飛散防護カバー(8)を、多様な径の主軸(92)に対しても簡単に装着することができる。
【0068】
また、本開示の飛散防護カバー(8)において、装着部(1)は、内周面(125)を有する変形可能な連結具(12)と、連結具(12)に取り付けられたフック(16)と、連結具(12)に設けられ、フック(16)が択一的に引っ掛かるように構成された複数の引っ掛け部(18)とを含む。
【0069】
したがって、本開示の飛散防護カバー(8)によれば、複数の引っ掛け部(18)のいずれにフック(16)を引っ掛けるかを選択することによって、装着部(1)の内周面(125)の内径を簡単に切り替えることができる。
【0070】
また、本開示の飛散防護カバー(8)において、装着部(1)は、フック(16)と連結具(12)との間に介在するレバー(14)を、更に含む。レバー(14)は、連結具(12)に対して変位可能に設けられている。
【0071】
したがって、本開示の飛散防護カバー(8)によれば、複数の引っ掛け部(18)のいずれかにフック(16)を引っ掛ける作業を、レバー(14)の操作によって簡単に行うことができ、また、フック(16)を引っ掛け部(18)から外す作業を、レバー(14)の操作によって簡単に行うことができる。
【0072】
また、本開示の飛散防護カバー(8)において、連結具(12)は、C字状であるとともに第1端部(121)及び第2端部(122)を有する。第1端部(121)に、レバー(14)が回転可能に設けられ、第2端部(122)に、複数の引っ掛け部(18)が設けられている。
【0073】
したがって、本開示の飛散防護カバー(8)によれば、連結具(12)、レバー(14)及び複数の引っ掛け部(18)がコンパクトかつ有効に配置される。
【0074】
また、本開示の飛散防護カバー(8)において、複数の引っ掛け部(18)は、並んで位置する複数の溝(181,182,183)で、構成されている。
【0075】
したがって、本開示の飛散防護カバー(8)によれば、並んで位置する複数の溝(181,182,183)のいずれにフック(16)を引っ掛けるかを選択することによって、装着部(1)の内周面(125)の内径を簡単に切り替えることができる。
【0076】
本開示の刈払機(9)は、上記した本開示の飛散防護カバー(8)と、飛散防護カバー(8)が装着される主軸(92)とを備える。
【0077】
したがって、本開示の刈払機(9)によれば、装着部(1)の内周面(125)の内径を複数段階で切り替えることによって、主軸(92)の径に対応して飛散防護カバー(8)を簡単に装着することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 装着部
12 連結具
125 内周面
14 レバー
16 フック
18 引っ掛け部
181 溝
182 溝
183 溝
2 カバー本体部
8 飛散防護カバー
9 刈払機
92 主軸