IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 鹿児島大学の特許一覧 ▶ オーシャンソリューションテクノロジー株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社リリーの特許一覧

特開2023-43186データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法
<>
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図1
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図2
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図3
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図4
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図5
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図6
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図7
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図8
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図9
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図10
  • 特開-データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043186
(43)【公開日】2023-03-28
(54)【発明の名称】データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/06 20220101AFI20230320BHJP
【FI】
H04L67/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146069
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021150442
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】518128218
【氏名又は名称】オーシャンソリューションテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517414990
【氏名又は名称】株式会社リリー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】水上 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野崎 弘幸
(57)【要約】
【課題】配信されたデータが有効に活用されているか否かを把握することができ、且つ有効に活用される可能性の低いデータの配信を停止することができる技術を提供する。
【解決手段】データ配信部110は、利用者に対して、複数セットのデータDTAを、1セットのデータDTAずつ期間をおいて間欠的に配信する。利用者用登録装置200は、データDTAを用いて得られる派生データが利用者によって作成されるたびに、その派生データが作成された旨を表す派生データ作成履歴情報420を履歴管理データベース400に登録する。派生データ作成履歴情報監視部130は、予め定められたタイミングで、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420が登録されているか否かを調べ、派生データ作成履歴情報420が登録されていない場合に、その後のデータ配信部110から利用者へのデータDTAの配信を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信部を有するデータ配信装置と、
前記データ配信部から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報を、前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースに登録する利用者用登録装置と、
を備え、
前記データ配信装置が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信部から該利用者への前記データの配信を停止させる派生データ作成履歴情報監視部、
を有する、データ配信システム。
【請求項2】
前記データ配信装置が、
前記データ配信部から前記利用者への1セットの前記データの配信が完了するたびに、該利用者への該データの配信が完了した旨を表すデータ配信履歴情報を、前記履歴管理データベースに登録するデータ配信履歴情報登録部、
をさらに有する、請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項3】
前記データ配信履歴情報には、
前記データを準備した提供者を特定する提供者特定情報と、
該データの配信を受けた前記利用者である取得者を特定する取得者特定情報と、
該データを特定するデータ特定情報と、
該提供者から該取得者に該データが配信されたことを証明するための、該提供者の電子署名及び該取得者の電子署名と、
が含まれる、請求項2に記載のデータ配信システム。
【請求項4】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記データ配信履歴情報登録部が、前記利用者への前記データの配信が完了した旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記データ配信履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化される、
請求項2又は3に記載のデータ配信システム。
【請求項5】
前記派生データ作成履歴情報には、
前記派生データを作成した前記利用者である作成者を特定する作成者特定情報と、
該派生データを特定する派生データ特定情報と、
該作成者が該派生データを作成したことを証明するための、該作成者の電子署名と、
該派生データの作成に用いられた前記データが該作成者に配信されたことを表す前記データ配信履歴情報を、前記履歴管理データベース内で特定する使用データ特定情報と、
が含まれる、請求項2に記載のデータ配信システム。
【請求項6】
前記データ配信部から前記利用者に対して配信された前記データと、過去に作成された前記派生データである親派生データとを用いて、前記親派生データとは異なる前記派生データである子派生データが該利用者によって作成され、
前記子派生データについての前記派生データ作成履歴情報には、
該子派生データの作成に用いられた前記親派生データが作成された旨を表す前記派生データ作成履歴情報を、前記履歴管理データベース内で特定する親派生データ特定情報、
が含まれる、請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項7】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記利用者用登録装置が、前記派生データが前記利用者によって作成された旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記派生データ作成履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化される、
請求項1、5、又は6に記載のデータ配信システム。
【請求項8】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記利用者用登録装置が、前記利用者によって作成された前記派生データが外部に配信されるたびに、該派生データの配信が行われた旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである派生データ配信履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化される、
請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項9】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記データ配信装置が、
提供者によって1セットの前記データが前記利用者へ配信可能な状態に準備されるたびに、該提供者によって該データが準備された旨を表すデータ準備履歴情報を、前記履歴管理データベースに登録するデータ準備履歴情報登録部、
をさらに有し、
前記データ準備履歴情報登録部が、前記データが前記提供者によって準備された旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記データ準備履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化される、
請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項10】
前記データ配信装置が、
共通の1セットの元データを、前記利用者の人数に等しいセット数の前記元データへと複製することにより、前記利用者ごとに前記元データを準備し、且つ前記利用者ごとに準備された前記元データの各々に対して、該利用者に固有のデータ加工を施すことにより、前記利用者ごとに異なる前記データを作成するデータ加工部、
をさらに有し、
前記データ加工部によって前記利用者ごとに作成された前記データが、前記データ配信部によって、対応する前記利用者に配信される、
請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項11】
前記データ配信装置が、
前記データ配信部から前記利用者への前記データの配信が完了した場合、又は前記データを用いて前記派生データを作成した前記利用者から該派生データが販売された旨を表す販売報告情報を取得した場合に、該利用者に対して、該データの対価を課金する課金処理を行う課金処理部、
をさらに有する、請求項1に記載のデータ配信システム。
【請求項12】
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信部と、
前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースであって、前記データ配信部から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報が登録される前記履歴管理データベースにアクセスする派生データ作成履歴情報監視部と、
を備え、
前記派生データ作成履歴情報監視部が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信部から該利用者への前記データの配信を停止させる、
データ配信装置。
【請求項13】
コンピュータに、
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信機能と、
前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースであって、前記データ配信機能によって前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報が登録される前記履歴管理データベースにアクセスする派生データ作成履歴情報監視機能と、
を実現させ、
前記派生データ作成履歴情報監視機能が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信機能による該利用者への前記データの配信を停止させる、
データ配信プログラム。
【請求項14】
データ配信装置が、利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信ステップと、
利用者用登録装置が、前記データ配信装置から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報を、前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースに登録する派生データ作成履歴情報登録ステップと、
前記データ配信装置が、予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の該利用者への前記データの配信を停止する派生データ作成履歴情報監視ステップと、
を有する、データ配信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ配信システム、データ配信装置、データ配信プログラム、及びデータ配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、データの配信の履歴を、ブロックチェーンよりなる履歴管理データベースを用いて管理するデータ配信装置が知られている。
【0003】
このデータ配信装置は、データが配信されるたびに、そのデータのハッシュ値と、そのデータに付随するメタデータとに、データを準備した提供者の電子署名を付したものを履歴管理データベースに登録する。メタデータには、データの提供者を特定する情報、データの取得者を特定する情報、及びデータが作成された日時を表す情報が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-204706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る手法では、データの提供者は、配信されたデータが取得者によって有効に活用されているか否かということまでは把握できない。特に、データが学習済みモデルその他の派生データの作成に利用される場合には、より有用性の高いデータを準備するために、データが有効に活用されているか否かを提供者において把握したい場合がある。
【0006】
また、データが有効に活用される可能性が低い場合は、データの配信を停止することが望まれる。有効に活用されないデータを無駄に配信し続けることは、そのデータが漏洩する危険の増大につながるためである。本発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものである。
【0007】
本発明の目的は、配信されたデータが有効に活用されているか否かを把握することができ、且つ有効に活用される可能性の低いデータの配信を停止することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデータ配信システムは、
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信部を有するデータ配信装置と、
前記データ配信部から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報を、前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースに登録する利用者用登録装置と、
を備え、
前記データ配信装置が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信部から該利用者への前記データの配信を停止させる派生データ作成履歴情報監視部、
を有する。
【0009】
前記データ配信装置が、
前記データ配信部から前記利用者への1セットの前記データの配信が完了するたびに、該利用者への該データの配信が完了した旨を表すデータ配信履歴情報を、前記履歴管理データベースに登録するデータ配信履歴情報登録部、
をさらに有してもよい。
【0010】
前記データ配信履歴情報には、
前記データを準備した提供者を特定する提供者特定情報と、
該データの配信を受けた前記利用者である取得者を特定する取得者特定情報と、
該データを特定するデータ特定情報と、
該提供者から該取得者に該データが配信されたことを証明するための、該提供者の電子署名及び該取得者の電子署名と、
が含まれてもよい。
【0011】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記データ配信履歴情報登録部が、前記利用者への前記データの配信が完了した旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記データ配信履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化されてもよい。
【0012】
前記派生データ作成履歴情報には、
前記派生データを作成した前記利用者である作成者を特定する作成者特定情報と、
該派生データを特定する派生データ特定情報と、
該作成者が該派生データを作成したことを証明するための、該作成者の電子署名と、
該派生データの作成に用いられた前記データが該作成者に配信されたことを表す前記データ配信履歴情報を、前記履歴管理データベース内で特定する使用データ特定情報と、
が含まれてもよい。
【0013】
前記データ配信部から前記利用者に対して配信された前記データと、過去に作成された前記派生データである親派生データとを用いて、前記親派生データとは異なる前記派生データである子派生データが該利用者によって作成され、
前記子派生データについての前記派生データ作成履歴情報には、
該子派生データの作成に用いられた前記親派生データが作成された旨を表す前記派生データ作成履歴情報を、前記履歴管理データベース内で特定する親派生データ特定情報、
が含まれてもよい。
【0014】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記利用者用登録装置が、前記派生データが前記利用者によって作成された旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記派生データ作成履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化されてもよい。
【0015】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記利用者用登録装置が、前記利用者によって作成された前記派生データが外部に配信されるたびに、該派生データの配信が行われた旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである派生データ配信履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化されてもよい。
【0016】
前記履歴管理データベースが、ブロックチェーンによって実現されており、
前記データ配信装置が、
提供者によって1セットの前記データが前記利用者へ配信可能な状態に準備されるたびに、該提供者によって該データが準備された旨を表すデータ準備履歴情報を、前記履歴管理データベースに登録するデータ準備履歴情報登録部、
をさらに有し、
前記データ準備履歴情報登録部が、前記データが前記提供者によって準備された旨の検証をリクエストするトランザクションを、前記ブロックチェーン上に発行し、
発行された前記トランザクションが前記ブロックチェーン上でマイナーによって検証され、検証された前記トランザクションの内容が、前記ブロックチェーンに保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである前記データ準備履歴情報として、前記ブロックチェーン上で確定化されてもよい。
【0017】
前記データ配信装置が、
共通の1セットの元データを、前記利用者の人数に等しいセット数の前記元データへと複製することにより、前記利用者ごとに前記元データを準備し、且つ前記利用者ごとに準備された前記元データの各々に対して、該利用者に固有のデータ加工を施すことにより、前記利用者ごとに異なる前記データを作成するデータ加工部、
をさらに有し、
前記データ加工部によって前記利用者ごとに作成された前記データが、前記データ配信部によって、対応する前記利用者に配信されてもよい。
【0018】
前記データ配信装置が、
前記データ配信部から前記利用者への前記データの配信が完了した場合、又は前記データを用いて前記派生データを作成した前記利用者から該派生データが販売された旨を表す販売報告情報を取得した場合に、該利用者に対して、該データの対価を課金する課金処理を行う課金処理部、
をさらに有してもよい。
【0019】
本発明に係るデータ配信装置は、
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信部と、
前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースであって、前記データ配信部から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報が登録される前記履歴管理データベースにアクセスする派生データ作成履歴情報監視部と、
を備え、
前記派生データ作成履歴情報監視部が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信部から該利用者への前記データの配信を停止させる。
【0020】
本発明に係るデータ配信プログラムは、
コンピュータに、
利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信機能と、
前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースであって、前記データ配信機能によって前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報が登録される前記履歴管理データベースにアクセスする派生データ作成履歴情報監視機能と、
を実現させ、
前記派生データ作成履歴情報監視機能が、
予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の前記データ配信機能による該利用者への前記データの配信を停止させる。
【0021】
本発明に係るデータ配信方法は、
データ配信装置が、利用者に対して、互いに内容の異なる複数セットのデータを、1セットの前記データずつ期間をおいて間欠的に配信するデータ配信ステップと、
利用者用登録装置が、前記データ配信装置から前記利用者に対して前記データが配信され且つ該データを用いて得られる派生データが該利用者によって作成されるたびに、該派生データが該利用者によって作成された旨を表す派生データ作成履歴情報を、前記データの利用の履歴を管理するための履歴管理データベースに登録する派生データ作成履歴情報登録ステップと、
前記データ配信装置が、予め定められたタイミングで、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されているか否かを調べ、前記履歴管理データベースに前記派生データ作成履歴情報が登録されていない場合に、その後の該利用者への前記データの配信を停止する派生データ作成履歴情報監視ステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、利用者が履歴管理データベースへの派生データ作成履歴情報の登録を怠ると、その利用者へのデータの配信が停止される。このため、利用者によってデータが派生データの作成に活用された場合に、履歴管理データベースへの派生データ作成履歴情報の登録が促される。この結果、データの提供者は、履歴管理データベースに派生データ作成履歴情報が登録されているか否かによって、配信されたデータが有効に活用されているか否かを把握することができる。
【0023】
また、配信されたデータが派生データの作成に活用されない場合は、履歴管理データベースへの派生データ作成情報の登録がなされないため、自ずと、利用者へのデータの配信が停止される。このようにして、有効に活用される可能性の低いデータの配信を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るデータ配信システムの構成を示す概念図。
図2】第1実施形態に係るデータと派生データとの関係を示す概念図。
図3】第1実施形態に係る配信先管理表の構成を示す概念図。
図4】第1実施形態に係るデータ配信履歴情報の作成手順を示すフローチャート。
図5】第1実施形態に係る履歴管理データベース内における、データ配信履歴情報及び派生データ作成履歴情報のつながりを示す概念図。
図6】第1実施形態に係るデータ配信可否管理処理を示すフローチャート。
図7】第1実施形態に係るデータ配信処理を示すフローチャート。
図8】第1実施形態に係るデータ配信装置の構成を示す概念図。
図9】第2実施形態に係るデータ加工部の構成を示す概念図。
図10】第3実施形態に係るデータ配信システムの構成を示す概念図。
図11】第4実施形態に係るデータ配信システムの構成を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、実施形態に係るデータ配信システムについて説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0026】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係るデータ配信システム300は、派生データを作成するための素材として用いられるデータDTAを配信するデータ配信装置100と、それぞれ通信回線CLを介してデータ配信装置100に通信可能に接続された第1利用者用登録装置200A、第2利用者用登録装置200B、及び第3利用者用登録装置200Cとを備える。
【0027】
データ配信装置100は、データDTAを準備し且つ提供する提供者が備える。データDTAを準備する者と、準備されたデータDTAの提供を行う者とが異なる場合でも、それらの者を総称して提供者と呼ぶことにする。
【0028】
第1利用者用登録装置200A、第2利用者用登録装置200B、第3利用者用登録装置200Cは、それぞれ提供者から、配信によりデータDTAの提供を受ける第1利用者、第2利用者、第3利用者が備える。第1利用者、第2利用者、第3利用者の各々は、提供者から取得したデータDTAを用いて派生データを作成する。
【0029】
本実施形態では、データDTAは、海洋その他の環境、物体、生体等の対象物を測定した結果を表す測定データであり、派生データを作成する目的で、加工、分析、統合等に供される。即ち、派生データは、データDTAに基づいて得られるデータ、具体的には、データDTAを素材として用い、データDTAに加工、分析、統合等を施すことにより得られるデータを指す。派生データの概念には、ソフトウエアプログラムも含まれる。
【0030】
以下、図2を参照し、データDTA及び派生データの一具体例について説明する。
【0031】
図2に示すように、派生データDTBは、具体的には、学習済みモデルである。その学習済みモデルの作成に用いる教師データが、上述したデータDTAである。即ち、上述した第1利用者から第3利用者の各々は、提供者から取得したデータDTAを教師データとする教師あり機械学習によって、学習済みモデルとしての派生データDTBを作成する。なお、機械学習には、ニューラルネットワーク等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0032】
教師データとしてのデータDTAは、互いに相関関係を有する入力データDTAa及び出力データDTAbを含む。
【0033】
入力データDTAaは、漁獲時の海況を表すデータである。具体的には、海況に関するデータには、漁獲を行った地理的なポイントを表すデータ、そのポイントの海水温を表すデータ、そのポイントの海流を表すデータ、そのポイントの海水の塩分濃度を表すデータ、漁獲を行った時点の潮汐や月齢を表すデータ等が含まれる。
【0034】
出力データDTAbは、対応する入力データDTAaが表す海況下で漁獲を行った場合の漁獲量を表すデータである。
【0035】
提供者は、海況を観測する観測機器を備えた漁船によって、漁獲の過程で、上述した入力データDTAa及び出力データDTAbを取得する。このような入力データDTAa及び出力データDTAbを含むデータDTAを教師データとして用いる。これにより、海況に関するデータを入力すると、その場合の漁獲量の推定値を出力する学習済みモデルとしての派生データDTBが得られる。
【0036】
図1に戻り、説明を続ける。データ配信装置100は、上述したデータDTAを配信するデータ配信部110を有する。データ配信部110は、第1利用者から第3利用者の各々に対して、継続的に発生するデータの集合(以下、ストリーミングデータ群と記す)を構成する、互いに内容の異なる複数セットのデータDTAを、1セットのデータDTAずつ期間をおいて間欠的に配信する。
【0037】
ここで“期間をおいて間欠的に”とは、必ずしも周期的である必要はなく、本実施形態では“1日から数日おきに”という意味とする。即ち、提供者は、1日から数日おきに、海況を観測する観測機器を備えた漁船で出漁し、出漁のたびに観測機器を用いて上記教師データとしてのデータDTAを1セット得る。提供者は、このようにして、1日から数日おきに、前回のものとは内容の異なる新たなデータDTAを1セット準備する。そして、提供者は、新たなデータDTAを1セット準備するたびに、その1セットのデータDTAを、データ配信部110を通じて第1利用者から第3利用者に配信する。
【0038】
第1利用者は、データ配信部110によって配信されるデータDTAを取得するに際し、第1利用者用登録装置200Aを用い、通信回線CLを介してデータ配信部110にアクセスする。
【0039】
すると、データ配信部110は、第1利用者であることを確認するための情報、具体的には、第1利用者のユーザID及びパスワードの入力を求める画面を、第1利用者用登録装置200Aに表示させる。その画面において、第1利用者が自己のユーザID及びパスワードを、第1利用者用登録装置200Aを用いて入力する。
【0040】
データ配信部110は、入力されたユーザID及びパスワードによって第1利用者であることを確認すると、第1利用者によるデータDTAのダウンロードを許可する。その後、第1利用者は、データ配信部110からダウンロードしたデータDTAを用いて、派生データDTBの作成にとりかかる。
【0041】
第2利用者、第3利用者も同様にして、それぞれ第2利用者用登録装置200B、第3利用者用登録装置200Cを用いてデータDTAをダウンロードし、ダウンロードしたデータDTAを用いて派生データDTBを作成する。
【0042】
データ配信部110は、以上説明したデータDTAの配信において、配信先を確認するために配信先管理表111を備える。以下、図3を参照し、配信先管理表111の構成について説明する。
【0043】
図3に示すように、配信先管理表111は、第1利用者から第3利用者の各々について、その者を識別する登録ユーザID111aと、その者が真正であることを証明する登録パスワード111bと、配信可否情報111cとが対応付けられたデータである。登録ユーザID111a及び登録パスワード111bは、データDTAの配信に先立ち予め登録される。
【0044】
データ配信部110は、自己に送信されたユーザID及びパスワードの組み合わせが、配信先管理表111に登録されている登録ユーザID111a及び登録パスワード111bの組み合わせと一致することをもって、自己にアクセスした者が第1利用者から第3利用者のいずれかであることを確認できる。なお、配信可否情報111cについては、後述する。
【0045】
図1に戻り、説明を続ける。データ配信装置100は、以上説明した要領で1セットのデータDTAの配信が完了するたびにその旨を履歴管理データベース400に登録するデータ配信履歴情報登録部120も備える。
【0046】
履歴管理データベース400は、データDTAの利用の履歴を管理するためのデータベースである。
【0047】
履歴管理データベース400は、データDTAの提供者及び第1利用者から第3利用者以外の、特定の第三者によって管理される公的なデータベースであってもよい。その場合、履歴管理データベース400は、その特定の第三者が備える、データ配信装置100、第1利用者用登録装置200A、第2利用者用登録装置200B、及び第3利用者用登録装置200C以外のサーバによって保持される。
【0048】
また、履歴管理データベース400は、図示せぬネットワークに参加する複数のノードによって分散的に共有されるデータベース、具体的にはブロックチェーンであってもよい。その場合、ノードの概念には、データ配信装置100、第1利用者用登録装置200A、第2利用者用登録装置200B、及び第3利用者用登録装置200Cも含まれうる。
【0049】
データ配信履歴情報登録部120は、具体的には、データ配信部110から、第1利用者、第2利用者、及び第3利用者のうちのいずれかの者への1セットのデータDTAの配信が完了するたびに、その者へのデータDTAの配信が完了した旨を表す証拠としてのデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400に登録する。
【0050】
データ配信履歴情報登録部120によってデータ配信履歴情報410が履歴管理データベース400に登録される際、そのデータ配信履歴情報410を履歴管理データベース400内で特定する情報(以下、データ配信履歴情報登録IDと記す。)が付与される。つまり、データ配信履歴情報410は、データ配信履歴情報登録IDと共に履歴管理データベース400に登録される。
【0051】
データ配信履歴情報410には、以下の情報(A)-(E)が含まれる。なお、以下では、第1利用者、第2利用者、及び第3利用者を“利用者”と総称する。
【0052】
(A)データDTAを準備した提供者を特定する提供者特定情報。提供者特定情報としては、例えば、提供者のユーザIDが挙げられる。提供者特定情報により、誰がデータDTAを配信したのかが明確化される。
【0053】
(B)データDTAの配信を受けた利用者である取得者を特定する取得者特定情報。取得者特定情報としては、例えば、取得者のユーザIDが挙げられる。取得者特定情報により、誰がデータDTAを取得したのかが明確化される。
【0054】
(C)提供者から取得者に配信されたデータDTAを特定するデータ特定情報。データ特定情報としては、例えば、以下の情報(C1)-(C3)の少なくともいずれかを用いることができる。
【0055】
(C1)データDTAのハッシュ値。
(C2)データDTA又は暗号化したデータDTAの、ネットワーク上のアクセス場所を表すアクセス場所情報。アクセス場所情報は、例えば、URLである。データDTAを暗号化する場合は、その内容を確認するためのアクセスキー、パスワード等の認証情報を付随させることが好ましい。
(C3)暗号化したデータDTAそのもの。この場合も、暗号化したデータDTAの内容を確認するための認証情報を付随させることが好ましい。
【0056】
また、データ特定情報(C)として、上記情報(C1)-(C3)の少なくともいずれかに加えて、以下の情報(C4)、(C5)の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0057】
(C4)データDTAの内容を説明するデータ説明情報。データ説明情報としては、例えば、データDTAの内容を自然言語で説明したテキストデータが挙げられる。
(C5)データDTAの形式を表現する識別子を表す情報。この識別子を表す情報としては、例えばメディアタイプを表す情報が挙げられる。
【0058】
(D)データDTAが提供者から取得者に配信された日時を特定するデータ配信日時情報。データ配信日時情報としては、例えば、タイムスタンプが挙げられる。
【0059】
(E)そのデータDTAの1回前に配信された、前回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400内で特定する前回データ特定情報。この前回データ特定情報には、前回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報登録IDが用いられる。
【0060】
既述のように、データ配信部110が間欠的に提供する複数セットのデータDTAの集合は、1つのストリーミングデータ群を構成する。そこで、共通のストリーミングデータ群を構成するデータDTAについてのデータ配信履歴情報410が履歴管理データベース400内で互いに関連付けされていると便利である。そこで、データ配信履歴情報410には、前回データ特定情報も含める。
【0061】
(F)提供者から取得者にデータDTAが提供されたことを証明するための、提供者の電子署名及び取得者の電子署名。これらの電子署名は、上記の(A)-(E)よりなる情報(以下、データ配信確認情報と記す。)の内容について、提供者と取得者との双方の合意を表す。
【0062】
以下、図4を参照し、提供者の電子署名及び取得者の電子署名を得る手順を説明する。以下に述べる具体例では、公開鍵暗号方式を用いて電子署名を形成する。前提として、取得者は、自己の秘密鍵の他、提供者の公開鍵を予め有しているものとする。同様に、提供者は、自己の秘密鍵の他、取得者の公開鍵を予め有しているものとする。
【0063】
図4に示すように、まず、提供者は、既述の情報(A)-(E)よりなるデータ配信確認情報を表す平文と、その平文を提供者の秘密鍵で暗号化した第1暗号化データ配信確認情報とを、取得者に送信する(ステップS11)。この第1暗号化データ配信確認情報は、提供者の電子署名に相当する。
【0064】
なお、ステップS11での暗号化及び送信は、データ配信部110により行われる。送信先は、第1利用者用登録装置200Aから第3利用者用登録装置200Cのうちの、取得者が所有するもの(以下、利用者用登録装置200と記す。)である。
【0065】
次に、取得者は、提供者から送信された情報を、提供者の公開鍵を用いて確認する(ステップS12)。具体的には、上述したデータ配信確認情報を表す平文の内容を確認し、且つその平文のハッシュ値が、上述した第1暗号化データ配信確認情報を提供者の公開鍵で復号化したもののハッシュ値と一致するか否かを確認する。なお、このステップS12での動作、即ち、ハッシュ値の算出及び一致の確認、並びに第1暗号化データ配信確認情報の復号化は、利用者用登録装置200により行われる。
【0066】
そして、ハッシュ値が一致することが確認された場合、取得者は、データ配信確認情報を表す平文と、その平文を自己の秘密鍵で暗号化した第2暗号化データ配信確認情報とを、提供者に返信する(ステップS13)。この第2暗号化データ配信確認情報が、取得者の電子署名に相当する。なお、ステップS13での返信は、利用者用登録装置200により行われる。
【0067】
次に、提供者は、取得者から返信された情報を、取得者の公開鍵を用いて確認する(ステップS14)。具体的には、上述したデータ配信確認情報を表す平文の内容を確認し、且つその平文のハッシュ値が、上述した第2暗号化データ配信確認情報を取得者の公開鍵で複合化したもののハッシュ値と一致するか否かを確認する。なお、このステップS14での動作、即ち、ハッシュ値の算出及び一致の確認、並びに第2暗号化データ配信確認情報の復号化は、データ配信部110により行われる。
【0068】
そして、ハッシュ値が一致することが確認された場合、提供者は、ステップS11で作成した第1暗号化データ配信確認情報よりなる自己の電子署名と、ステップS14で取得した第2暗号化データ配信確認情報よりなる取得者の電子署名と、上述したデータ配信確認情報とによって構成されるデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400に登録する(ステップS15)。
【0069】
既述のように、データ配信履歴情報410は、そのデータ配信履歴情報410を履歴管理データベース400内で特定するためのデータ配信履歴情報登録IDと共に、履歴管理データベース400に登録される。なお、この登録は、データ配信履歴情報登録部120により行われる。
【0070】
図1に戻り、説明を続ける。以上のようにして、データ配信履歴情報登録部120によってデータ配信履歴情報410が履歴管理データベース400に登録される一方で、データ配信部110から1セットのデータDTAの配信を受けた取得者は、その1セットのデータDTAを用いて、既述の派生データDTBを作成する。
【0071】
なお、その派生データDTBの作成には、取得者が所有する利用者用登録装置200が用いられてもよいし、利用者用登録装置200とは別の装置が用いられてもよい。
【0072】
利用者用登録装置200は、以上のようにして、データ配信部110から取得者に対してデータ1セットのDTAが配信され且つその1セットのデータDTAを用いて得られる派生データDTBが取得者によって作成されるたびに、その派生データDTBが作成された旨を表す証拠としての派生データ作成履歴情報420を、履歴管理データベース400に登録する。
【0073】
派生データ作成履歴情報420には、以下の情報(a)-(e)が含まれる。
【0074】
(a)派生データDTBを作成した取得者である作成者を特定する作成者特定情報。作成者特定情報としては、例えば、作成者のユーザIDが挙げられる。作成者特定情報により、誰が派生データDTBを作成したのかが明確化される。
【0075】
(b)作成された派生データDTBを特定する派生データ特定情報。派生データ特定情報としては、例えば、以下の情報(b1)-(b3)の少なくともいずれかを用いることができる。
【0076】
(b1)派生データDTBのハッシュ値。
(b2)派生データDTB又は暗号化した派生データDTBの、ネットワーク上のアクセス場所を表すアクセス場所情報。アクセス場所情報は、例えば、URLである。派生データDTBを暗号化する場合は、その内容を確認するためのアクセスキー、パスワード等の認証情報を付随させることが好ましい。
(b3)暗号化した派生データDTBそのもの。この場合も、暗号化した派生データDTBの内容を確認するための認証情報を付随させることが好ましい。
【0077】
また、データ特定情報(b)として、上記情報(b1)-(b3)の少なくともいずれかに加えて、以下の情報(b4)、(b5)の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0078】
(b4)派生データDTBの内容を説明する派生データ説明情報。派生データ説明情報としては、例えば、派生データDTBの内容を自然言語で説明したテキストデータが挙げられる。
(b5)派生データDTBの形式を表現する識別子を表す情報。この識別子を表す情報としては、例えばメディアタイプを表す情報が挙げられる。
【0079】
(c)派生データDTBが作成された日時を特定する派生データ作成日時情報。派生データ作成日時情報としては、例えば、タイムスタンプが挙げられる。
【0080】
(d)その派生データDTBを作成者が作成したことを証明するための、その作成者の電子署名。この電子署名は、上記の(a)-(c)よりなる情報(以下、派生データ作成確認情報と記す。)の内容について、作成者自身の是認を表す。具体的には、この作成者の電子署名には、派生データ作成確認情報を表す平文を、作成者の秘密鍵で暗号化した暗号化派生データ作成確認情報を用いることができる。
【0081】
(e)その派生データDTBの作成に用いられたデータDTAがその作成者に配信された証拠を表すデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400内で特定する使用データ特定情報。この使用データ特定情報には、派生データDTBの作成に用いられたデータDTAについての、既述のデータ配信履歴情報登録IDが用いられる。
【0082】
以上説明した派生データ作成履歴情報420が利用者用登録装置200によって履歴管理データベース400に登録される際、その派生データ作成履歴情報420を履歴管理データベース400内で特定する情報(以下、派生データ作成履歴情報登録IDと記す。)が付与される。つまり、派生データ作成履歴情報420は、派生データ作成履歴情報登録IDと共に履歴管理データベース400に登録される。
【0083】
また、今回取得したデータDTAと、過去に作成された派生データDTB(以下、親派生データと記す。)とを用いて、その親派生データとは異なる派生データDTB(以下、子派生データと記す。)が、作成者によって作成される場合もある。
【0084】
例えば、今回取得したデータDTAを教師データとして用いて、親派生データとしての学習済みモデルをさらに学習させ、更新された学習済みモデルとしての子派生データを得る場合である。このような場合、子派生データについての派生データ作成履歴情報420には、以下の情報(f)がさらに含まれるものとする。
【0085】
(f)その子派生データの作成に用いられた親派生データが作成された旨を表す派生データ作成履歴情報420を、履歴管理データベース400内で特定する親派生データ特定情報。
【0086】
これにより、親子関係のつながりをもつ複数の派生データDTBについての派生データ作成履歴情報420が、履歴管理データベース400内で紐付けされることになる。ここで“親子関係のつながりをもつ複数の派生データDTB”とは、或る派生データを親派生データとみたときの子派生データみのならず、その子派生データを親派生データとみたときの子派生データである孫派生データ、さらにその孫派生データを親派生データとみたときの子派生データであるひ孫派生データ等も含む意味である。
【0087】
以下、図5を参照し、履歴管理データベース400内における、データ配信履歴情報410及び派生データ作成履歴情報420の紐付けの態様について説明する。
【0088】
図5に示すように、まず、今回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報410_jには、前回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報410_j-1を特定する、既述の前回データ特定情報(E)としての、データ配信履歴情報登録ID411が含まれる。このため、今回の1セットのデータDTAと、前回の1セットのデータDTAとが共通のストリーミングデータ群を構成していることが、明確になる。
【0089】
また、親派生データについての派生データ作成履歴情報420_k-1と、子派生データについての派生データ作成履歴情報420_kとの各々には、その派生データの作成に用いられたデータDTAについてのデータ配信履歴情報410を特定する、既述の使用データ特定情報(e)としての、データ配信履歴情報登録ID421が含まれる。
【0090】
さらに、子派生データについての派生データ作成履歴情報420_kには、その子派生データの作成に用いられた親派生データについての派生データ作成履歴情報420_k-1を特定する、既述の親派生データ特定情報(f)としての、データ配信履歴情報登録ID422も含まれる。このようにして、親子関係のつながりをもつ複数の派生データDTBが明確に紐付けされる。
【0091】
図1に戻り、説明を続ける。以上説明したように、利用者は、利用者用登録装置200を通じて、データ配信部110からデータDTAの配信を受ける。利用者用登録装置200は、利用者によって派生データDTBが作成されるたびに、その利用者がその派生データDTBを作成したことを証明する派生データ作成履歴情報420を、履歴管理データベース400に登録する。
【0092】
一方、データ配信装置100は、利用者へのデータDTAの配信の可否を管理するデータ配信可否管理処理を行う派生データ作成履歴情報監視部130も備える。
【0093】
データ配信可否管理処理とは、予め定められたタイミングで、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420が登録されているか否かを調べ、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420が登録されていない場合に、その後のデータ配信部110から利用者へのデータDTAの配信を停止させる処理である。
【0094】
以下、図6を参照し、派生データ作成履歴情報監視部130によって行われるデータ配信可否管理処理を具体的に説明する。
【0095】
図6に示すように、まず、派生データ作成履歴情報監視部130は、派生データ作成履歴情報420が登録済であることを確認するための、予め定められたタイミングが到来したか否かを判定する(ステップS21)。派生データ作成履歴情報監視部130は、予め定められたタイミングが到来していなければ(ステップS21;NO)、再びステップS21に戻る。
【0096】
ここで“予め定められたタイミング”とは、本実施形態では、データ配信部110による利用者へのデータDTAの配信が直近に完了した時点から起算して、所定の期間(以下、派生データ作成所要期間と記す。)が経過した時点とする。
【0097】
既述のように、ストリーミングデータ群は、データ配信部110によって1セットのデータDTAずつ間欠的に配信される。その1セットのデータDTAの配信と、次の1セットのデータDTAの配信との時間的な間隔をデータ配信間隔と呼ぶことにする。上述した派生データ作成所要期間は、データ配信間隔よりも短い。具体的には、本実施形態では、派生データ作成所要期間は1日とする。
【0098】
派生データ作成履歴情報監視部130は、上記の予め定められたタイミングが到来すると(ステップS21;YES)、履歴管理データベース400にアクセスし、上記利用者によって派生データDTBが作成されたことを表す派生データ作成履歴情報420の、新規の登録が履歴管理データベース400においてなされているか否かを調べる(ステップS22)。
【0099】
ここで“新規の登録”とは、上記利用者に対して直近に配信されたデータDTAに基づく派生データDTBが作成されたことを表す派生データ作成履歴情報420の登録を意味する。つまり、ステップS22の判定は、上記利用者に対して直近に配信されたデータDTAが、上記利用者によって派生データDTBの作成にきちんと活用されたか否かを確認する操作に相当する。
【0100】
派生データ作成履歴情報監視部130は、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420の新規の登録がなされていない場合は(ステップS22;NO)、上記利用者に対して直近に配信されたデータDTAが派生データDTBの作成に活用されていないので、その後のデータ配信部110から利用者へのデータDTAの配信を停止させる(ステップS23)。
【0101】
図3を参照し、ステップS23の処理を具体的に説明する。図3に示す配信先管理表111は、既述のとおり、データ配信部110が、データDTAの配信を求めて自己にアクセスした者が真正な利用者であるか否かを認証するためのものである。
【0102】
この配信先管理表111は、利用者の認証に用いる情報である登録ユーザID111a及び登録パスワード111bの他、その利用者へのデータDTAの配信が許可されているか否かを表す情報である配信可否情報111cも格納されている。
【0103】
データ配信部110は、登録ユーザID111a及び登録パスワード111bによって利用者を認証した後、配信可否情報111cが、その利用者へのデータDTAの配信を許可する旨を表している場合に限り、その利用者にデータDTAを配信する。配信可否情報111cが、その利用者へのデータDTAの配信を禁止する旨を表す場合、データ配信部110は、その利用者へのデータDTAの配信は行わない。
【0104】
予め、配信可否情報111cとして、利用者へのデータDTAの配信が許可されている旨を表す情報が格納されているものとする。配信可否情報111cは、派生データ作成履歴情報監視部130によって書き換えられる。
【0105】
即ち、上述したステップS23では、派生データ作成履歴情報監視部130が、上記利用者についての配信可否情報111cを、その利用者へのデータDTAの配信を禁止する旨に書き換える。これにより、その書き換えの後は、データ配信部110からその利用者へのデータDTAの配信が停止される。
【0106】
図6に戻り、説明を続ける。派生データ作成履歴情報監視部130は、ステップS23で配信可否情報111cを書き換えた後は、再びステップS21に戻る。
【0107】
また、派生データ作成履歴情報監視部130は、ステップS22で、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420の新規の登録がなされている場合は(ステップS22;YES)、上記利用者に対して直近に配信されたデータDTAが派生データDTBの作成に活用されているので、配信可否情報111cを書き換えることなく、再びステップS21に戻る。
【0108】
続けて、図7を参照し、データ配信部110及びデータ配信履歴情報登録部120によって行われるデータ配信処理を説明する。
【0109】
図7に示すように、データ配信部110は、前回の1セットのデータDTAの配信の完了から既述のデータ配信間隔が経過し、提供者によって新しい次の1セットのデータDTAが準備されると(ステップS31;YES)、利用者用登録装置200を用いた利用者から自己へのアクセスがあるか否かを判定する(ステップS32)。
【0110】
データ配信部110は、利用者用登録装置200を用いた利用者から自己へのアクセスがあると(ステップS32;YES)、まず、その利用者が真正であるか否かを判定する(ステップS33)。具体的には、データ配信部110は、利用者用登録装置200を用いて利用者が入力したユーザID及びパスワードと、配信先管理表111に予め格納されている登録ユーザID111a及び登録パスワード111bとが一致するか否かを判定する。
【0111】
次に、データ配信部110は、その利用者が真正であることを確認すると(ステップS33;YES)、その利用者へのデータの配信が許可されているか否かを判定する(ステップS34)。具体的には、データ配信部110は、配信先管理表111に格納されている配信可否情報111cが、その利用者へのデータDTAの配信を許可する旨を表しているか否かを判定する。
【0112】
そして、データ配信部110は、配信可否情報111cがその利用者へのデータDTAの配信を許可する旨を表している場合に限り(ステップS34;YES)、その利用者にデータDTAを配信する(ステップS35)。即ち、利用者の利用者用登録装置200へのデータDTAのダウンロードを許可する。
【0113】
次に、データ配信部110は、図4を参照して説明した要領で、その利用者から電子署名を取得した後、その利用者へのデータDTAの配信が完了した旨を表すデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400に登録する(ステップS36)。その後、再びステップS31に戻る。
【0114】
また、データ配信部110は、ステップS33で、利用者が真正であることが確認されない場合は(ステップS33;NO)、その者へのデータDTAの配信を行うことができないので、利用者用登録装置200にエラーを表示させ(ステップS37)、ステップS31に戻る。
【0115】
また、データ配信部110は、ステップS34で、配信可否情報111cが利用者へのデータDTAの配信を禁止する旨を表す場合も(ステップS34;NO)、その利用者へのデータDTAの配信を行うことができないので、利用者用登録装置200にエラーを表示させ(ステップS37)、ステップS31に戻る。
【0116】
以上、データ配信装置100の機能について説明した。最後に、図8を参照し、データ配信装置100のハードウエアの構成について説明する。
【0117】
図8に示すように、データ配信装置100は、外部の機器との通信を担う通信装置100aを備える。具体的には、通信装置100aは、図1に示した利用者用登録装置200との間の通信、及び履歴管理データベース400へのアクセスを担う。
【0118】
また、データ配信装置100は、既述の配信先管理表111及びデータDTAを記憶する記憶装置100bを備える。提供者によって、既述のデータ配信間隔ごとに、新しい1セットのデータDTAが記憶装置100bに準備される。このようにして、データ配信間隔ごとに1セットのデータDTAが記憶装置100bにアップロードされる。また、記憶装置100bには、データ配信装置100の機能を規定したデータ配信プログラム100cも記憶されている。
【0119】
また、データ配信装置100は、データ配信プログラム100cを実行するプロセッサ100dを備える。プロセッサ100dがデータ配信プログラム100cを実行することにより、図1に示したデータ配信部110、データ配信履歴情報登録部120、及び派生データ作成履歴情報監視部130の機能、特に図6に示したデータ配信可否管理処理、図7に示したデータ配信処理が実現される。
【0120】
以上、第1実施形態について説明した。第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0121】
データ配信装置100によってデータ配信可否管理処理が行われるので、利用者が履歴管理データベース400への派生データ作成履歴情報420の登録を怠ると、その利用者へのデータDTAの配信が停止される。このため、利用者によってデータDTAが派生データDTBの作成に活用された場合に、履歴管理データベース400への派生データ作成履歴情報420の登録が促される。この結果、データDTAの提供者は、履歴管理データベース400に派生データ作成履歴情報420が登録されているか否かによって、配信されたデータDTAが有効に活用されているか否かを把握することができる。
【0122】
また、配信されたデータDTAが派生データDTBの作成に活用されない場合は、履歴管理データベース400への派生データ作成履歴情報420の登録がなされないため、自ずと、利用者へのデータDTAの配信が停止される。このようにして、データDTAの提供者は、有効に活用される可能性の低いデータDTAの配信を停止することができる。このことは、データDTAの漏洩の抑制に寄与する。
【0123】
また、利用者によって派生データDTBが作成された場合に、履歴管理データベース400に登録される派生データ作成履歴情報420には、その派生データDTBの作成に用いられたデータDTAについてのデータ配信履歴情報410を特定する使用データ特定情報(e)が含まれる。このため、個々の派生データDTBについて、その派生データDTBの作成にどのデータDTAが利用されたかという履歴を、履歴管理データベース400においてきちんと管理することができる。
【0124】
また、データDTAと、過去に作成された派生データDTBである親派生データとを用いて、親派生データとは異なる派生データDTBである子派生データが利用者によって作成された場合には、その子派生データについての派生データ作成履歴情報420_kに、親派生データについての派生データ作成履歴情報420_k-1を特定する親派生データ特定情報(f)が含まれる。このため、個々の派生データDTBについて、その派生データDTBがどの親派生データから派生したものであるかという履歴を、履歴管理データベース400においてきちんと管理することができる。
【0125】
また、データ配信部110から利用者への1セットのデータDTAの配信が完了するたびに、その利用者にそのデータDTAが配信されたことを証明する証拠としてのデータ配信履歴情報410が履歴管理データベース400に登録される。このため、個々の1セットのデータDTAがどの利用者に譲渡されたかという履歴を、履歴管理データベース400においてきちんと管理することができる。
【0126】
また、今回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報410_jには、前回の1セットのデータDTAについてのデータ配信履歴情報410_j-1を特定する前回データ特定情報(E)が含まれる。このため、ストリーミングデータ群を構成する複数のデータDTAの、時系列における局所的な前後関係及び大局的な一連のつながりの関係を、履歴管理データベース400においてきちんと管理することができる。
【0127】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、ストリーミングデータ群を構成する1セットのデータDTAが提供者によって準備されると、その1セットのデータDTAの複製をそのまま第1利用者から第3利用者に配信することとした。つまり、1セットのデータDTAが準備されたときに第1利用者から第3利用者に配信されるデータDTAは、互いに同じものであった。
【0128】
これに対し、第1利用者から第3利用者に対し、互いに内容は実質的に同じでも、形式的には異なるデータDTAが配信されることとしてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0129】
図9に示すように、本実施形態に係るデータ配信装置100は、データDTAの元となる元データDTOを用いて、利用者ごとに異なるデータDTAを作成するデータ加工部140をさらに備える。なお、図9では、理解を容易にするために、データ配信部110と利用者用登録装置200との間に介在する通信回線CLの図示を省略している。
【0130】
データ加工部140は、共通の1セットの元データDTOを、利用者の人数に等しいセット数、即ち本実施形態では3セットの元データDTOへと複製することにより、利用者ごとに元データを準備し、且つ利用者ごとに準備された元データDTOの各々に対して、利用者に固有のデータ加工を施すことにより、利用者ごとに異なるデータDTAを作成する。このようにして利用者ごとに作成されたデータDTAが、データ配信部110によって、対応する利用者に配信される。
【0131】
具体的には、データ加工部140は、第1データ加工部141、第2データ加工部142、及び第3データ加工部143を備える。
【0132】
第1データ加工部141は、第1利用者向けに複製した元データDTOに対して、第1利用者に固有のデータ加工を施すことにより、第1利用者に配信すべき第1利用者用データDTA1を作成する。第1利用者用データDTA1は、データ配信部110によって、第1利用者の第1利用者用登録装置200Aに配信される。
【0133】
第2データ加工部142は、第2利用者向けに複製した元データDTOに対して、第2利用者に固有のデータ加工を施すことにより、第2利用者に配信すべき第2利用者用データDTA2を作成する。第2利用者用データDTA2は、データ配信部110によって、第2利用者の第2利用者用登録装置200Bに配信される。
【0134】
第3データ加工部143は、第3利用者向けに複製した元データDTOに対して、第3利用者に固有のデータ加工を施すことにより、第3利用者に配信すべき第3利用者用データDTA3を作成する。第3利用者用データDTA3は、データ配信部110によって、第3利用者の第3利用者用登録装置200Cに配信される。
【0135】
以下、データ加工部140が行うデータ加工の一具体例を述べる。元データDTOは、各々漁獲を行った海上のポイントを表す複数ポイントの地理データと、各々のポイントにおける漁獲量とを対応付けた漁獲データを含む。地理データは、各々のポイントの緯度及び経度を表すデータである。
【0136】
この場合、データ加工部140が行うデータ加工とは、地理データが表す各々のポイントの緯度及び経度を、誤差として許容される範囲内で僅かにずらす操作を指す。そのずらし方、具体的には、ベクトルとしてのずらし量を表す、緯度のずらし量と経度のずらし量との組み合わせを、第1利用者から第2利用者の間で異ならせる。
【0137】
即ち、元データDTOとしての漁獲データに対して地理データをずらす操作が施された結果である第1利用者用データDTA1から第3利用者用データDTA3は、互いの漁獲データは同じであるが、互いの地理データが微妙に異なる。このため、地理データと利用者とが1:1に対応している。従って、データDTAと利用者とが1:1に対応している。
【0138】
また、既述のとおり、図1に示した履歴管理データベース400に登録されるデータ配信履歴情報410には、利用者に配信されたデータDTAを特定するデータ特定情報(C)が含まれる。このデータ特定情報(C)は、第1利用者用データDTA1から第3利用者用データDTA3の各々を区別する内容をもつ。
【0139】
このため、第1利用者から第3利用者の各々に、第1利用者用データDTA1から第3利用者用データDTA3のいずれが配信されたかという証拠が、データ配信履歴情報410として履歴管理データベース400に蓄積されてゆく。
【0140】
従って、本実施形態によれば、仮に、第1利用者から第3利用者のいずれかがデータDTAを流出させた場合に、提供者は、第1利用者から第3利用者のいずれがそのデータDTAを流出させたかを、その流出されたデータDTAを用いて特定することができる。
【0141】
具体的には、提供者は、流出されたデータDTAのハッシュ値等によってデータ特定情報(C)を求め、そのデータ特定情報(C)を有するデータ配信履歴情報410を、履歴管理データベース400から抽出する。すると、提供者は、その抽出したデータ配信履歴情報410に含まれる取得者特定情報(B)によって、そのデータDTAの取得者が第1利用者から第3利用者のいずれであるかを特定することができる。データDTAと、データDTAの取得者が1:1に対応するので、提供者は、第1利用者から第3利用者のいずれがデータDTAを流出させたかを特定することができる。
【0142】
以上のとおり、本実施形態によれば、仮に利用者がデータDTAを流出させた場合には、その利用者が特定される。このため、利用者よってデータDTAが流出されることを抑制することができる。他の構成及び効果は、第1実施形態と同じである。
【0143】
[第3実施形態]
図1に示した第1実施形態に係るデータ配信システム300は、利用者に対してデータDTAが配信されるたびに、又は利用者によって作成された派生データDTBが販売されるたびに、提供者からその利用者に対してデータDTAの対価を課金する構成をさらに備えてもよい。以下、その具体例を述べる。
【0144】
図10に示すように、本実施形態に係るデータ配信装置100は、利用者に対してデータDTAの対価を課金する課金処理を行う課金処理部150をさらに備える。課金処理とは、具体的には、利用者の金融機関口座を管理する金融機関のサーバに対して、その利用者の口座からデータDTAの対価を引き落とす要求を送信し、且つそのサーバから引き落としの確定を受信する処理をいう。
【0145】
課金処理部150は、データ配信部110から利用者へのデータDTAの配信が完了した場合に、その利用者に対して、そのデータDTAの対価を課金する課金処理を行う。この場合、データ配信履歴情報410には、配信したデータDTAの対価の課金が済んだ旨を表す課金完了情報を含めてもよい。
【0146】
また、課金処理部50は、データDTAを用いて派生データDTBを作成した利用者の利用者用登録装置200から、その派生データDTBが販売された旨を表す販売報告情報を取得した場合に、その利用者に対して、そのデータDTAの対価を課金する課金処理を行う。
【0147】
この場合、課金処理部50は、課金処理に先立って、履歴管理データベース400に蓄積されている派生データ作成履歴情報420にアクセスし、その派生データDTBの作者者が確かにその利用者であることを作成者特定情報(a)、派生データ特定情報(b)、及び作成者の電子署名(d)で確認し、且つそのデータDTAがその派生データDTBの作成に確かに用いられたことを使用データ特定情報(e)で確認してもよい。
【0148】
[第4実施形態]
図1に示した履歴管理データベース400は、ブロックチェーン(blockchain)であってもよい。なお、本明細書において“データベース”とは、電子的に保存され、アクセスできる組織化されたデータの集合を指し、ブロックチェーンも含まれる概念とする。
【0149】
履歴管理データベース400がブロックチェーンである場合、例えば、データ配信履歴情報410を登録するトランザクション及び派生データ作成履歴情報420を登録するトランザクション等がそれぞれ各ノードにブロードキャストされ、1つ又は複数のブロックにまとめられてブロックチェーンに登録されてもよい。
【0150】
以下、履歴管理データベース400がブロックチェーンである場合の具体的を述べる。なお、ブロックチェーンのプラットフォームとしては、Ethereum(登録商標)が例示される。以下の本実施形態の説明では、ブロックチェーンとしての履歴管理データベース400を、単にブロックチェーン400と記す。
【0151】
図11に示すように、本実施形態では、(1)データDTAが配信可能に準備された段階、(2)データDTAが配信された段階、(3)派生データDTBが作成された段階、及び(4)派生データDTBが配信された段階において、それぞれトランザクションTR1、TR2、TR3、TR4がブロックチェーン400上に発行される。以下、各段階について具体的に説明する。
【0152】
(1)まず、データ配信装置100において、提供者によって1セットのデータDTAが利用者へ配信可能な状態に準備されるたびに、ブロックチェーン400上にトランザクションTR1が発行される。本実施形態に係るデータ配信装置100は、そのトランザクションTRを発行するデータ準備履歴情報登録部160を備える。
【0153】
即ち、データ準備履歴情報登録部160は、データDTAが提供者によって準備された旨の検証をリクエストするトランザクションTR1を、ブロックチェーン400上に発行する。発行されたトランザクションTR1は、ブロックチェーン400上でマイナーによって検証される。つまり、そのデータDTAがその提供者によって正当に準備された旨が検証される。なお、最初に検証を実行したマイナーはブロック報酬、具体的には、Ethereum(登録商標)におけるGasを得る。
【0154】
具体的には、トランザクションTR1には、認証を受けたい内容を表す平文と、その平文を提供者の秘密鍵で暗号化した電子署名とが含まれる。マイナーによる検証とは、トランザクションTR1に含まれる平文と、トランザクションTR1に含まれる電子署名を公開鍵で復号化したものとの一致の確認を指す。後述するトランザクションTR2-TR4についても同様である。
【0155】
そして、検証されたトランザクションTR1の内容が、ブロックチェーン400に保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token)であるデータ準備履歴情報430として、ブロックチェーン400上で確定化される。なお、非代替性トークンは、規格ERC-71に準拠する。
【0156】
以上のようにして、データ準備履歴情報登録部160は、提供者によって1セットのデータDTAが利用者へ配信可能な状態に準備されるたびに、トランザクションTR1の発行を通じて間接的に、ブロックチェーン400にデータ準備履歴情報430を登録する。データ準備履歴情報430は、その提供者によってそのデータDTAが準備された旨、即ちそのデータDTAの作成者がその提供者である旨を証明するものである。
【0157】
(2)次に、データ配信装置100から利用者への1セットのデータDTAの配信が完了するたびに、データ配信履歴情報登録部120が、ブロックチェーン400上にトランザクションTR2を発行する。
【0158】
トランザクションTR2は、データDTAを提供する提供者の電子署名と、そのデータDTAを受け取る利用者の電子署名とを含んでおり、提供者から利用者へのデータDTAの配信が完了した旨の検証をリクエストするものである。
【0159】
発行されたトランザクションTR2は、ブロックチェーン400上でマイナーによって検証される。つまり、そのデータDTAがその提供者からその利用者に正当に配信された旨が検証される。なお、最初に検証を実行したマイナーはブロック報酬を得る。
【0160】
そして、検証されたトランザクションTR2の内容が、ブロックチェーン400に保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである既述のデータ配信履歴情報410として、ブロックチェーン400上で確定化される。
【0161】
以上のようにして、データ配信履歴情報登録部120は、提供者から利用者への1セットのデータDTAの配信が完了するたびに、トランザクションTR2の発行を通じて間接的に、ブロックチェーン400に既述のデータ配信履歴情報410を登録する。データ配信履歴情報410は、そのデータDTAがその提供者からその利用者に正当に配信された旨を証明するものである。
【0162】
(3)次に、利用者によってデータDTAを用いて派生データDTBが作成されるたびに、利用者用登録装置200が、ブロックチェーン400上にトランザクションTR3を発行する。
【0163】
トランザクションTR3は、派生データDTBを作成した利用者の電子署名を含んでおり、派生データDTBが利用者によって作成された旨の検証をリクエストするものである。発行されたトランザクションTR3は、ブロックチェーン400上でマイナーによって検証される。つまり、その派生データDTBがその利用者によって作成された旨が検証される。なお、最初に検証を実行したマイナーはブロック報酬を得る。
【0164】
そして、検証されたトランザクションTR3の内容が、ブロックチェーン400に保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである既述の派生データ作成履歴情報420として、ブロックチェーン400上で確定化される。
【0165】
以上のようにして、利用者用登録装置200は、派生データDTBが利用者によって作成されるたびに、トランザクションTR3の発行を通じて間接的に、ブロックチェーン400に既述の派生データ作成履歴情報420を登録する。派生データ作成履歴情報420は、その派生データDTBがその利用者によって作成された旨を証明するものである。
【0166】
(4)次に、利用者によって作成された派生データDTBが外部に配信されるたびに、利用者用登録装置200が、ブロックチェーン400上にトランザクションTR4を発行する。ここで“外部”とは、具体的には、データ配信装置100及び利用者用登録装置200以外の図示せぬ装置を指す。
【0167】
トランザクションTR4は、派生データDTBを配信する利用者の電子署名と、派生データDTBを取得する取得者の電子署名とを含んでおり、外部への派生データDTBの配信が行われた旨の検証をリクエストするものである。
【0168】
発行されたトランザクションTR4は、ブロックチェーン400上でマイナーによって検証される。つまり、その派生データDTBがその外部に配信された旨が検証される。なお、最初に検証を実行したマイナーはブロック報酬を得る。
【0169】
そして、検証されたトランザクションTR4の内容が、ブロックチェーン400に保持されたスマートコントラクトによって、非代替性トークンである派生データ配信履歴情報440として、ブロックチェーン400上で確定化される。
【0170】
以上のようにして、利用者用登録装置200は、派生データDTBが外部に配信されるたびに、トランザクションTR4の発行を通じて間接的に、ブロックチェーン400に派生データ配信履歴情報440を登録する。派生データ配信履歴情報440は、その派生データDTBがその外部に配信された旨を証明するものである。
【0171】
以上、第1-第4実施形態について説明した。以下に述べる変形も可能である。
【0172】
第1実施形態では、1セットのデータDTAごとに派生データDTBが作成されることを想定し、図6のステップS21に示す“予め定められたタイミング”が、利用者への1セットのデータDTAの配信が直近に完了した時点から派生データ作成所要期間が経過した時点である場合を例示的に述べた。一方、複数セットのデータDTAを用いて派生データDTBを作成してもよく、その場合、“予め定められたタイミング”とは、利用者への複数セット、例えば3セット前のデータDTAの配信が直近に完了した時点から、派生データ作成所要期間としての例えば3日が経過した時点であってもよい。
【0173】
第1-第3実施形態では、データDTAを利用する利用者が、第1利用者から第3利用者の3人である場合について例示的に述べたが、利用者は1人であってもよいし4人以上であってもよい。また、既述のとおり、利用者は複数の者によって構成されていてもよい。例えば、データ配信装置100を用いてデータDTAの配信を実際に行う配信業者が、データDTAを準備する準備業者からデータ配信の委託を受けた者であってもよく、その場合でも、配信業者と準備業者とを総称して“提供者”と呼ぶものとする。
【0174】
第1実施形態では、図2に示した教師データとしてのデータDTAが、漁獲時の海況を表すデータと、その海況下における漁獲量を表すデータとを対応付けた漁獲データであり、派生データTDBが、出漁の可否判定又は漁獲量の推定を行うための学習済みモデルである場合を例示的に述べた。教師データとしてのデータDTAと、学習済みモデルとしての派生データDTBとの組み合わせは、特にこれらに限られない。例えば、データDTAが、稼働状態のエンジンにおける各種物理量を表すデータと、その状態におけるエンジンの健全性を表すデータとを対応付けたエンジン状態データであり、派生データTDBが、エンジンの健全性の判定を行うための学習済モデルであってもよい。
【0175】
また、派生データDTBは、特に学習済みモデルに限られず、データDTAを素材として用いて作成される、学習済みモデル以外のアプリケーションソフトウエアであってもよい。
【0176】
図8に示したデータ配信プログラム100cを、既存のスマーフォン、タブレット、その他のコンピュータにインストールすることで、そのコンピュータにデータ配信装置100の機能を実現させることもできる。データ配信プログラム100cは、通信回線を通じて配布することもできるし、記録媒体に格納して配布することもできる。
【符号の説明】
【0177】
100…データ配信装置、
100a…通信装置、
100b…記憶装置、
100c…データ配信プログラム、
100d…プロセッサ、
110…データ配信部、
111…配信先管理表、
111a…登録ユーザID、
111b…登録パスワード、
111c…配信可否情報、
120…データ配信履歴情報登録部、
130…派生データ作成履歴情報監視部、
140…データ加工部、
141…第1データ加工部、
142…第2データ加工部、
143…第3データ加工部、
150…課金処理部、
160…データ準備履歴情報登録部、
200…利用者用登録装置、
200A…第1利用者用登録装置、
200B…第2利用者用登録装置、
200C…第3利用者用登録装置、
300…データ配信システム、
400…履歴管理データベース(ブロックチェーン)、
410…データ配信履歴情報、
410_j…データ配信履歴情報、
410_j-1…データ配信履歴情報、
411…データ配信履歴情報登録ID(前回データ特定情報)、
420…派生データ作成履歴情報、
420_k…派生データ作成履歴情報、
420_k-1…派生データ作成履歴情報、
421…データ配信履歴情報登録ID(使用データ特定情報)、
422…データ配信履歴情報登録ID(親派生データ特定情報)、
430…データ準備履歴情報、
440…派生データ配信履歴情報、
CL…通信回線、
DTA…データ、
DTAa…入力データ、
DTAb…出力データ、
DTA1…第1利用者用データ、
DTA2…第2利用者用データ、
DTA3…第3利用者用データ、
DTB…派生データ、
DTO…元データ、
TR1,TR2,TR3,TR4…トランザクション。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11