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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023043199
(43)【公開日】2023-03-29
(54)【発明の名称】食品保存庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 29/00 20060101AFI20230322BHJP
   F25D 23/00 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
F25D29/00 Z
F25D23/00 301L
F25D23/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021150669
(22)【出願日】2021-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045AA05
3L045BA01
3L045LA09
3L045NA03
3L045NA07
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA30
3L345BB10
3L345DD70
3L345EE04
3L345EE08
3L345EE36
3L345EE45
3L345EE53
3L345FF04
3L345FF13
3L345FF35
3L345FF45
3L345GG18
3L345HH36
3L345HH42
3L345JJ02
3L345KK01
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】本開示は、食品由来のガスによりガスセンサの感知部が飽和することなく確実に食品特性の検知ができる食品保存庫を提供する。
【解決手段】本開示における食品保存庫は、食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知し収納室の外部に設けられたにおいセンサと、においセンサと収納物由来ガスとの接触遮蔽を解除する遮蔽解除手段と、においセンサと遮蔽解除手段の作動を制御する制御手段とを有し、制御手段は遮蔽解除手段を作動させることにより、においセンサと収納物由来ガスとが接触した状態および遮蔽の状態のそれぞれにおいて検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定するものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知し前記収納室の外部に設けられたにおいセンサと、前記においセンサと前記収納物由来のにおいとの接触遮蔽を解除する遮蔽解除手段と、前記においセンサと前記遮蔽解除手段の作動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記遮蔽解除手段を作動させることにより前記においセンサと前記収納物由来のにおいの接触が接触した状態と遮蔽の状態のそれぞれで検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定するようにした食品保存庫。
【請求項2】
前記収納室と前記においセンサとの間には気体を導通させる風路を有し、前記遮蔽解除手段は前記収納室内のガスを排出して前記風路を通じて前記においセンサと接触させるようにした気流発生手段である請求項1に記載の食品保存庫。
【請求項3】
前記収納室は室内と室外との連通部を有し、前記においセンサは前記連通部の外側と内側を移動可能に設けられ、前記遮蔽解除手段は前記においセンサを前記連通部の外側から内側へと移動させるセンサ移動手段である請求項1に記載の食品保存庫。
【請求項4】
前記気流発生手段は前記風路上に設けられた送風手段である請求項2に記載の食品保存庫。
【請求項5】
前記気流発生手段は前記収納室の温度を可変するための変温手段である請求項2または4に記載の食品保存庫。
【請求項6】
前記気流発生手段は前記収納室の扉などの可動部をユーザが操作した際に前記収納室内の気体を排出するようにした可動部連動排気手段である請求項2、4、5のいずれか1項に記載の食品保存庫。
【請求項7】
前記センサ移動手段は前記制御手段により制御されるようにした請求項3に記載の食品保存庫。
【請求項8】
前記センサ移動手段は前記収納室の扉などの可動部をユーザが操作した際に前記においセンサを前記連通部の内側に移動するようにした可動部連動移動手段である請求項3に記載の食品保存庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品を保存する食品保存庫であって、食品の鮮度、熟度などの特性変化を検知する機能を有する食品保存庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガスセンサによるガス濃度測定の基準値がずれていくこと課題に対応した冷蔵庫を開示する。この冷蔵庫は、貯蔵室内に感知部を有するガスセンサと、貯蔵室外の空気を感知部に供給する気体供給部とを備え、まず気体供給部により貯蔵室外の空気を供給することによって基準値を測定し、次に空気供給を止めた際の値を測定し、両者の差に基づいて鮮度判定するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、食品由来のガスによりガスセンサの感知部が飽和することなく確実に食品特性の検知ができる食品保存庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における食品保存庫は、食品などの収納物を収納する収納室と、収納物由来のガス成分を検知し収納室の外部に設けられたにおいセンサと、においセンサと収納物由来ガスとの接触遮蔽を解除する遮蔽解除手段と、遮蔽解除手段の作動を制御しにおいセンサの検知信号を受信する制御手段とを有し、制御手段は遮蔽解除手段を作動させることによりにおいセンサと収納物由来ガスとが接触した状態および遮蔽の状態のそれぞれにおいて検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における食品保存庫は、遮蔽解除手段が不作動の時は、センサは収納室外のガスを測定し基準値を得る。またその際、測定対象ガス濃度は低いので、センサ感知部表面は不飽和状態を保つことができる。そのため、遮蔽解除手段が作動した際には、センサ感知部表面は必ず不飽和状態であるため定量的な応答が可能で、確実に食品特性の検知ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る実施の形態1の冷蔵庫の縦断面を示す断面図
図2】実施の形態1の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図3】実施の形態1の冷蔵庫に設けられた制御部の構成を示すブロック図
図4】実施の形態1の冷蔵庫におけるにおいセンサの作動を示すタイムチャート
図5】実施の形態2の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図6】実施の形態2の冷蔵庫におけるセンサの作動を示すタイムチャート
図7A】実施の形態3の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図7B】実施の形態3の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図8】他の実施の形態1の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図9】他の実施の形態2の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図10】他の実施の形態3の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図11】他の実施の形態4の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図12】他の実施の形態5の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図13A】他の実施の形態6の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
図13B】他の実施の形態6の冷蔵庫における果物熟成室を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
特許文献1に開示された冷蔵庫においては、外部空気の導入という簡便で実用的な方法で基準状態(感知部が不飽和の状態)/応答状態(感知部が部分飽和の状態)を切替えることを意図したものである。しかしながら、センサ感知部が食品収納室内に設けられて比較的高濃度の食品由来ガスに長期間さらされるため、感知部が飽和に近い状態で維持される。外部空気の導入量を十分に多くしないと、センサ感知部が基準状態まで戻らず部分飽和状態となって、検知範囲が狭まってしまう。一方、外部空気の導入量を増やすと、食品収納室のガス濃度が低下するため検知感度が低減するという別の課題が発生する。両課題を解決するバランスの取れた空気導入は理論上可能であるものの、家庭用冷蔵庫などでは収納量によって通風抵抗が変わるために、実用上は解決困難である。
【0009】
そこで、本開示は、センサ感知部を食品収納室の外部に設けることによって、厳密な空気導入量調整を要することなくにおいセンサを基準状態と応答状態に切替えられて、確実で定量的なにおい検知ができる食品保存庫を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1の冷蔵庫を説明する。
【0013】
[1-1.構成]
図1において、左側が冷蔵庫10の正面側であり、右側が冷蔵庫10の背面側である。冷蔵庫10は、主に鋼板により形成された外箱1と、ABSなどの樹脂で成形された内箱2と、外箱1と内箱2との間の空間に充填発泡された断熱材21(例えば、硬質発泡ウレタン)とにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0014】
冷蔵庫10の断熱箱体は複数の貯蔵室を備えており、それぞれの貯蔵室の正面側開口には開閉可能な扉が配設されている。それぞれの貯蔵室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。実施の形態1の冷蔵庫10においては、最上部の貯蔵室が冷蔵室3である。
【0015】
冷蔵室3の直下の両側には、製氷室4と冷凍/解凍室5の2つの貯蔵室が並設されている。更に、製氷室4と冷凍/解凍室5の直下には冷凍室6が設けられており、冷凍室6の直下である最下部には野菜室7が設けられている。実施の形態1の冷蔵庫10における各貯蔵室は、上記の構成を有しているが、この構成は一例であり、各貯蔵室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0016】
冷蔵室3は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度、具体的な温度例としては1℃~5℃の温度帯で維持される。野菜室7は、冷蔵室3と同等もしくは若干高い温度帯、例えば2℃~7℃に維持される。冷凍室6は、冷凍保存のために冷凍温度帯、具体的な温度例としては、例えば-22℃~-15℃に設定される。冷凍/解凍室5は、通常は冷凍室6と同じ冷凍温度帯に維持され、ユーザの解凍指令に応じて、収納されている保存物(冷凍品)を解凍するための解凍処理が行われる。冷凍/解凍室5の構成、及び解凍処理に関する詳細については後述する。
【0017】
冷蔵庫10の上部には、機械室8が設けられている。機械室8には、圧縮機9および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容されている。なお、機械室8の配設位置としては冷蔵庫10の上部に特定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫10の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0018】
冷蔵庫10の下側領域にある冷凍室6と野菜室7の背面側には、冷却室11が設けられている。冷却室11には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器12、および冷却器12が生成した冷気を各貯蔵室(3、4、5、6、7)に送風する冷却ファン13が設けられている。冷却器12が生成した冷気は、冷却ファン13により各貯蔵室に繋がる風路18を流れて、各貯蔵室に供給される。それぞれの貯蔵室に繋がる風路18にはダンパー19が設けられており、圧縮機9と冷却ファン13の回転数制御とダンパー19の開閉制御により、それぞれの貯蔵室が所定の温度帯に維持される。
【0019】
また、風路18内には脱臭フィルター(図示せず)が設けられて、庫内の空気のにおい成分を吸着する。冷却室11の下部には、冷却器12やその周辺に付着する霜や氷を除霜するための除霜ヒータ14が設けられている。除霜ヒータ14の下部には、ドレンパン15、ドレンチューブ16、蒸発皿17が設けられており、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。
【0020】
実施の形態1の冷蔵庫10には操作部(図示せず)が備えられている。ユーザが操作部において冷蔵庫10に対する各種の指令(例えば、各貯蔵室の温度設定、急冷指令、解凍指令、製氷停止指令など)を行うことができる。また、操作部には異常の発生などを報知する表示部20を有している。なお、冷蔵庫10においては、無線通信部を備えて無線LANネットワークに接続して、ユーザの持つ外部端末から各種指令を入力したり、外部端末に表示したりする構成としてもよい。
【0021】
次に、果物熟成室の構成について説明する。
【0022】
図2は冷蔵庫右側面から見た第一の実施形態の果物熟成室30の断面図である。果物熟成室30は冷蔵室3内に設けられ、前面が回転扉22を為し、果物などの食品は回転扉22から収納できる。背面側の、風路18の吐出口31に相対する位置に背面通気口32が設けられる。吐出口31の周辺の冷蔵庫本体に上流においセンサ33が設けられる。
【0023】
また、前面に前面通気口34を有し、前面通気口34周辺の冷蔵庫本体または冷蔵室扉に下流においセンサ35が設けられる。上流においセンサ33と下流においセンサ35は同一の検知特性を持つガスセンサである。両ガスセンサは、例えば半導体式、電気化学式、感応膜を備えたMEMS式等であり、検知対象ガスは、エステル類、アルデヒド類、アルコール類、二酸化炭素、エチレンなど果物の熟成指標となる香り、ガス成分である。
【0024】
図3に示すように、上流においセンサ33、下流においセンサ35の検知情報および冷却ファンのON/OFF情報は制御部に入力されて、制御部はそれらの情報に基づいた出力を冷却手段(圧縮機9、冷却ファン13、冷却ダンパー19)、加熱手段(ヒーター)、表示部20に送信する。
【0025】
[1-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、以下その動作、作用を説明する。上流においセンサ33および下流においセンサ35は果物熟成室30内の果物の熟成状態を検知、判定する目的で用いられる。
【0026】
冷蔵室冷却ダンパーが開かれると、吐出口31から吐出した冷気は、背面通気口32を通って、果物熟成室30内に流入し、果物由来ガスを含んだ空気が前面通気口34から冷蔵室3内に吐出される。図4下部の破線は上流においセンサ33の出力を、実線は下流においセンサ35の出力を示す。
【0027】
両センサの出力は、図4上部に示される冷蔵室冷却ダンパーの開閉によって影響を受ける。すなわち、冷却ダンパーが開状態の時にガス濃度希釈効果などにより上流においセンサ33の出力はやや減少し、閉状態の時にはやや上昇するという周期的な挙動を示す。
【0028】
一方、下流においセンサ35は、冷却ダンパーが開状態の時に果物由来のガスが供給されるため、その出力は一時大きな上昇を示し、ガスの希釈とともに上流においセンサ33と同様の値に落ち着く。
【0029】
上流においセンサ33には果物由来のガスが高濃度で供給されることがなく、かつ脱臭フィルターを通った低濃度の空気が供給されるため、上流においセンサ33は基準値を測定する目的で用いられる。
【0030】
下流においセンサ35は、果物熟成室30の外部に設けられるため、ダンパー閉時は果物由来ガスが高濃度で供給されることなく、不飽和状態を維持できる。ダンパー開時に果物由来ガスにさらされるが、比較的短時間であるためにセンサ感知部が飽和することなく、定量的な応答が可能であり、果物由来ガスを測定する目的で用いられる。図4の矢印で示す両センサ出力の差(応答値-基準値)が、果物由来ガス濃度に比例する。
【0031】
ユーザにお知らせしたいタイミング(例えば、可食、完熟、劣化など)の指標となるガス濃度を予め実験などで決めておくことによって、果物の熟成状態を判定して表示部20でお知らせすることができる。更には、所定の熟成状態を判定したら、冷却デバイスやヒータを制御して果物熟成室30の温度を下げることにより熟成や劣化を遅らせたり、逆に温度を上げて熟成を早めたりする制御も可能である。
【0032】
熱帯果物の場合、保存温度を下げると低温障害の恐れが生じるが、冷却デバイスとヒータを併用して制御することで冷却速度を小さくしたり、温度変動刺激を加えたりすることによって、生物的低温馴化を実現して低温障害を抑制することも可能である。
【0033】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、果物由来のガス成分を検知し果物熟成室30の外部に設けられた上流においセンサ33、下流においセンサ35と、上流においセンサ33と果物由来ガスの遮蔽を解除する遮蔽解除手段である冷蔵室冷却ダンパーと、両においセンサおよび冷蔵室冷却ダンパーの作動を制御する制御手段とを有し、制御手段は冷蔵室冷却ダンパーを開閉することによりにおいセンサと果物由来ガスとが接触した状態および非接触の状態のそれぞれにおいて検知し両者の差を指標として果物の熟成状態を判定する。
【0034】
これにより、冷蔵室冷却ダンパーが閉状態の時は、下流においセンサ35は低濃度ガスにさらされるので不飽和状態を保つことができる。そのため冷蔵室冷却ダンパーが開いた際には、下流においセンサ35感知部は必ず不飽和状態であるため定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。
【0035】
(実施の形態2)
以下、図5図6を用いて実施の形態2を説明する。
【0036】
[2-1.構成]
図5において、前面通気口34と相対する果物熟成室30の外部に下流においセンサ35が設けられる。下流においセンサ35は冷蔵庫10本体あるいは冷蔵室扉の内側などに設置する。
【0037】
[2-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、以下その動作、作用を説明する。冷蔵室冷却ダンパーが開かれると、吐出口31から吐出した冷気は、背面通気口32を通って、果物熟成室30内に流入し、果物由来ガスを含んだ空気が前面通気口34から冷蔵室3内に吐出される。図6下部の曲線は下流においセンサ35の出力を示す。
【0038】
出力は、図6上部に示される冷蔵室冷却ダンパーの開閉によって影響を受ける。すなわち、冷却ダンパーが開状態の時に果物由来のガスが供給されるため、その出力は一時大きな上昇を示し、ガスの希釈とともに低減する。
【0039】
下流においセンサ35は、果物熟成室30の外部に設けられるため、ダンパー閉時は果物由来ガスが高濃度で供給されることなく、不飽和状態を維持できる。従ってダンパー閉時の測定値を基準値として用いることができる。ダンパー開時に果物由来ガスが供給されるが、比較的短時間であるためにセンサ感知部が飽和することなく、定量的な応答が可能であり、果物由来ガスを測定する目的で用いられる。図6の矢印で示す両センサ出力の差(応答値-基準値)が、果物由来ガス濃度に比例する。
【0040】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、果物由来のガス成分を検知し果物熟成室30の外部に設けられた下流においセンサ35、冷蔵室冷却ダンパーと、下流においセンサ35および冷蔵室冷却ダンパーの作動を制御する制御手段とを有し、制御手段は冷蔵室冷却ダンパーを作動することにより下流においセンサ35と果物由来ガスとが接触した状態および非接触の状態のそれぞれにおいて検知した両者の差を指標として果物の熟成状態を判定する。
【0041】
これにより、冷蔵室冷却ダンパーが閉状態の時は、下流においセンサ35は低濃度ガスにさらされるので不飽和状態を保つことができる。そのため冷蔵室冷却ダンパーが開いた際には、下流においセンサ35感知部は必ず不飽和状態であるため定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。実施の形態1に比べると単一のにおいセンサによって検知することができるので構成が簡略であるという長所がある。
【0042】
(実施の形態3)
以下、図7A図7Bを用いて実施の形態3を説明する。
【0043】
[3-1.構成]
図7Aおよび図7Bは、果物熟成室30のみを示すが、実施の形態1,2と同様に冷蔵室3内に収納して用いる前提である。果物熟成室30本体の前面側に開扉センサ37が、回転扉22の端部ににおいセンサ36が設けられる。
【0044】
においセンサ36の取り付け位置は回転軸の近くの端部であり、扉の回転によって熟成室内からの距離が移動する位置に取り付けられる。においセンサ36は閉扉時(図7A)には果物熟成室30の外部に位置するが、開扉時(図7B)には果物熟成室30の内部に対して露出する。
【0045】
[3-2.動作]
以上のように構成された果物熟成室30について、以下その動作、作用を説明する。冷蔵庫内で保存中、開扉センサ37は閉状態を検知し、においセンサ36は高濃度の果物由来ガスに接することがない。この状態で基準値を測定する。次に、ユーザが果物の収納、取出しや熟成状態の確認等のために扉を開けた際に、開扉センサ37が開状態を検知し、においセンサ36は果物熟成室30内部に露出して、果物由来ガスと接触する。開扉センサ37の検知信号を受けて、この状態で応答値を検知する。
【0046】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫10は、追熟中の果物を収納する果物熟成室30と、果物由来のガス成分を検知し果物熟成室30の回転扉22の外部に設けられたにおいセンサ36、においセンサ36と果物由来ガスの遮蔽を解除する遮蔽解除手段としての回転扉22、回転扉22の開扉を検知する開扉センサ37と、制御手段とを有し、制御手段は回転扉22の検知信号を受けてにおいセンサ36と果物由来ガスが接触した状態と遮蔽の状態のそれぞれで検知し両者の差を指標として収納物の状態を判定するようにしたものである。
【0047】
これにより、回転扉22が閉状態の時は、においセンサ36は低濃度ガスにさらされるので不飽和状態を保つことができる。そのため回転扉22が開いた際には、においセンサ36感知部は必ず不飽和状態であるため定量的な応答が可能で、確実に果物熟成度の検知ができる。
【0048】
本実施形態のように、遮蔽解除手段はにおいセンサ36を果物熟成室30の内外を移動可能に設けたセンサ移動手段である回転扉22としてもよい。
【0049】
これにより、においセンサに接触する果物由来ガスは室外空気によって希釈されにくいため、実施の形態1,2に比べてより高感度に果物の熟成変化を検知することが可能である。
【0050】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1~3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0051】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0052】
実施の形態2では、においセンサの一例として、前面通気口34に相対する位置に設けた下流においセンサ35を説明した。においセンサは、ダンパーの開閉(送風の有無)によって果物由来ガスとの接触/非接触が切り替え可能な位置に設けられればよい。
【0053】
したがって、においセンサの位置は、果物熟成室30の下流に限定されない。例えば、図8に示すにおいセンサとして、上流においセンサ33を用いても良い。においセンサを上流側に設け、かつ背面通気口32のサイズを実施の形態2よりも大きく、前面通気口34よりも大きく設けることにより、ダンパー閉時は果物熟成室30から拡散により漏れ出た果物由来ガスと接触して応答値を測定することができる。一方、ダンパー開時には主に脱臭後の空気と接触することにより基準値を測定することができる。
【0054】
冷蔵室の温度変動を減らすためダンパー開閉が少なくなるように設計された冷蔵庫の場合には、ダンパー開の時間が閉時間よりも長くなるため、においセンサの飽和を防ぐためにはこのような実施の形態が実施の形態2よりも適する。
【0055】
実施の形態1、2では、遮蔽解除手段の一例として冷蔵室冷却ダンパーの開閉利用を説明した(図4,6)。遮蔽解除手段は、においセンサ感知部と果物由来ガスとの接触/非接触を切り替え可能な手段であればよい。
【0056】
従って、遮蔽解除手段は冷蔵室冷却ダンパーに限定されない。例えば、図9に示す果物熟成室30の底部に設けた果物熟成ヒータ38を用いてもよい。果物熟成ヒータ38を非通電中は果物由来ガスが果物熟成室30の外に積極的に漏れることはなく、においセンサ36とは非接触である。
【0057】
一方、果物熟成ヒータ38を通電すると果物熟成室30内で対流が活発化して、果物由来ガスを含む比較的高温の空気が室外に排出されてにおいセンサ36と接触する。果物熟成ヒータ38は、果物の熟成を早める目的で用いることもできるため、二つの機能を兼ね備えたものとして他の実施の形態にはない特長を発揮できる。
【0058】
その他の遮蔽解除手段として例えば、図10に示す果物熟成室30の壁面に設けた排気ファン39を用いてもよい。排気ファン39を非動作中は果物由来ガスが果物熟成室30の外に積極的に漏れることはなく、においセンサ36とは非接触である。
【0059】
一方、排気ファン39を動作中は果物由来ガスがにおいセンサ36と接触する。排気ファン39は、エチレンなどの植物ホルモンによる劣化を抑制する目的で用いることもできるため、二つの機能を兼ね備えたものとして他の実施形態にはない特長を発揮できる。
【0060】
その他の遮蔽解除手段として例えば、図11に示す、引き出し扉式に設けられた高気密果物熟成室43であり、背面通気口32の外部ににおいセンサ36を有する高気密果物熟成室43を用いてもよい。引出し扉を開閉しない保存中は果物由来ガスが高気密果物熟成室43の外に積極的に漏れることはなく、においセンサ36とは非接触である。
【0061】
一方、ユーザが引出し扉を開閉する際には、引出しの扉の押込み動作によって果物由来ガスが背面通気口32から吐出されてにおいセンサ36と接触する。高気密果物熟成室43は、室内に果物由来ガスを高気密に貯蔵できるため、他の実施の形態よりも高濃度のガスをにおいセンサ36に供給できる。そのため、より高感度に熟成状態を判定できるというメリットを有する。
【0062】
その他の遮蔽解除手段として例えば、図12に示す、磁性体を備えた開閉壁40と、開閉壁40と相対する冷蔵庫本体側に設けられた電磁コイル41を用いてもよい。電磁コイル41に通電することにより開閉壁40を開閉して、果物由来ガスとにおいセンサ36の接触/非接触を制御する。本実施の形態は、遮蔽解除に特化した手段であるため、他の実施形態に比べて冷蔵庫10や果物熟成室30の制御や運転状態に影響されずに、においを検知できるというメリットを有する。
【0063】
その他の遮蔽解除手段として例えば、図13A図13Bに示す手動でにおいセンサ36を果物熟成室30内に押し込むことのできる手動式センサ移動部42を用いてもよい。
保存中は図13Aで示すように、においセンサ36は室外に出ているため果物由来ガスと接触しない。ユーザが手動式センサ移動部42を室内に押し込むとにおいセンサ36は果物由来ガスと接触する。本実施の形態は、ユーザが熟成情報を知りたいタイミングで検知、判定することができるため、ユーザの希望タイミングに合わせた最新情報を表示できるというメリットがある。
【0064】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の冷蔵庫においては果物熟成室を組み込んだ家庭用冷凍冷蔵庫への応用を念頭に説明したが、それ以外にも、肉類の熟成進捗状況、発酵食品の発酵進捗状況、生鮮および加工食品、ペットフード等の鮮度劣化、油脂の酸化、ハラル食材の品質保持、調理加工後の風味の落ち着き、珈琲豆やワイン、精米などの香りの変化、食物アレルギー成分の検知などの機能を有する家庭用、業務用保存庫に対しても有用性を発揮するものと考える。
【符号の説明】
【0066】
1 外箱
2 内箱
3 冷蔵室
4 製氷室
5 冷凍/解凍室
6 冷凍室
7 野菜室
8 機械室
9 圧縮機
10 冷蔵庫
11 冷却室
12 冷却器
13 冷却ファン
14 除霜ヒータ
15 ドレンパン
16 ドレンチューブ
17 蒸発皿
18 風路
19 ダンパー
20 表示部
21 断熱材
22 回転扉
30 果物熟成室
31 吐出口
32 背面通気口
33 上流においセンサ
34 前面通気口
35 下流においセンサ
36 においセンサ
37 開扉センサ
38 果物熟成ヒータ
39 排気ファン
40 開閉壁
41 電磁コイル
42 手動式センサ移動部
43 高気密果物熟成室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B